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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】ヒーターアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20250221BHJP
   A24F 40/51 20200101ALI20250221BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20250221BHJP
   H05B 3/16 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/51
H05B3/20 310
H05B3/20 316
H05B3/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022534412
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2020085644
(87)【国際公開番号】W WO2021116354
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】19216004.2
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】リーベル,トニー
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171331(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/170893(WO,A1)
【文献】特開昭60-184836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0208894(US,A1)
【文献】中国実用新案第207427495(CN,U)
【文献】米国特許第04761541(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0302023(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0056244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 40/51
H05B 3/20
H05B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成装置用のヒーターアセンブリであって、
可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムと、
前記電気絶縁バッキングフィルムの表面上に支持された可撓性のある加熱要素と、
カバーフィルムと前記バッキングフィルムとの間に前記加熱要素を少なくとも部分的に封入するように、前記電気絶縁バッキングフィルムの前記表面上に配置された前記カバーフィルムであって、前記バッキングフィルム、加熱要素、及びカバーフィルムは共に薄膜ヒーターアセンブリを形成する、カバーフィルムと、
前記薄膜ヒーターアセンブリの外表面に接して配置されるグラファイトの層であって、前記加熱要素と少なくとも部分的に重なるグラファイトの層と、
エアロゾル生成消耗品を収容するように構成された管状加熱チャンバであって、前記管状加熱チャンバの前記外表面の周りに、前記電気絶縁バッキングフィルムを前記加熱チャンバに向けて、前記薄膜ヒーターアセンブリが巻かれている、管状加熱チャンバと、
前記巻き付けられた薄膜ヒーターアセンブリ及び1つ又は複数のグラファイト層の外表面の周りに配置される電気絶縁封止層と、を含むヒーターアセンブリ。
【請求項2】
前記グラファイトの層は、前記薄膜ヒーターアセンブリの前記電気絶縁バッキングフィルムと前記加熱チャンバの前記外表面との間に配置される、請求項1に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項3】
前記グラファイトの層は、前記薄膜ヒーターアセンブリの前記カバーフィルムの前記外表面に接して配置される、請求項1に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項4】
第2のグラファイトの層を更に含み、
第1のグラファイトの層は、前記電気絶縁バッキングフィルムと前記加熱チャンバの前記外表面との間に配置され、
前記第2のグラファイトの層は、前記カバーフィルムの前記外表面に接して配置される、請求項1に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項5】
前記加熱要素は、前記加熱要素の平面内の加熱領域に渡り曲がりくねった経路をたどるヒータートラックを含む平面状の加熱要素であり、
前記グラファイトの層は、前記加熱要素の前記加熱領域に対応する前記薄膜ヒーターアセンブリの前記表面の領域を覆う、請求項1~の何れか一項に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項6】
前記グラファイトの層は、グラファイト層及び少なくとも1つの接着剤層を含む接着性グラファイトシートによって提供される、請求項1~の何れか一項に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項7】
前記接着性グラファイトシートは、5~30ミクロンの間の厚さを有するグラファイト層と、0~35ミクロンの間の厚さを有する接着剤層とを含み、好ましくは、前記グラファイト層は10~12ミクロンの間の厚さを有し、前記接着剤層は5~10ミクロンの間の厚さを有する、請求項に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項8】
前記グラファイト層の熱伝導率は、700~2000W/m.Kの間である、請求項1~の何れか一項に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項9】
前記グラファイト層はグラファイトポリマーフィルムを含む、請求項1~の何れか一項に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項10】
感知部分を備える温度センサを更に含み、前記感知部分は、前記グラファイトの層によって覆われる前記薄膜ヒーターアセンブリの領域内に配置される、請求項1~の何れか一項に記載のヒーターアセンブリ。
【請求項11】
ヒーターアセンブリを製造する方法であって、
可撓性のある誘電体バッキングフィルムの表面上に支持された加熱要素を提供することと、
カバーフィルムと前記誘電体バッキングフィルムとの間に前記加熱要素を少なくとも部分的に封入するように、前記誘電体バッキングフィルムの前記表面に前記カバーフィルムの層を取り付けることであって、前記取り付けられたバッキングフィルム、加熱要素、及びカバーフィルムは共に薄膜ヒーターアセンブリを形成することと、
前記薄膜ヒーターアセンブリの外表面に接して配置されるグラファイトの層を配置することであって、前記グラファイトの層は少なくとも部分的に前記加熱要素と重なることと、
前記薄膜ヒーターアセンブリを、エアロゾル生成消耗品を収容するように構成された管状加熱チャンバの前記外表面の周りに、前記誘電体バッキングフィルムを前記加熱チャンバの前記外表面に向けて、巻き付けることと、
前記巻き付けられた薄膜ヒーターアセンブリ及び1つ又は複数のグラファイト層の外表面の周りに電気絶縁封止層を配置することと、を含む方法。
【請求項12】
前記グラファイトの層は、グラファイト層及び少なくとも1つの接着剤層を含む接着性グラファイトシートによって提供され、前記グラファイトの層を配置するステップは、
前記接着性グラファイトシートを前記誘電体バッキングフィルムに貼り付けること、及び/又は
前記接着性グラファイトシートを前記カバーフィルムに貼り付けること、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
熱収縮層を含むカバーフィルムを提供すること、及び前記薄膜ヒーターアセンブリを加熱して前記熱収縮層を収縮させ、前記管状加熱チャンバに対して前記薄膜ヒーターアセンブリを固定することを更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記薄膜ヒーターアセンブリを管状加熱チャンバの前記外表面の周りに巻き付ける前に、接着性グラファイトシートを前記管状加熱チャンバの前記外表面に貼り付けることを更に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターアセンブリ、より詳細にはエアロゾル生成装置用のヒーターアセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜ヒーターは、一般に、加熱されることになる表面又は物体に適合できる可撓性があり薄型のヒーターを必要とする、幅広い用途に使用される。そのような用途の1つは、電子タバコ及びタバコ蒸気製品を含む低リスクのニコチン送達製品などのエアロゾル生成装置の分野にある。このような装置は、加熱チャンバ内のエアロゾル生成物質を加熱して蒸気を生成する。消耗品を加熱する手段の1つは、加熱チャンバの表面に適合してチャンバ内のエアロゾル生成物質の効率的な加熱を確実にする薄膜ヒーターを備えるヒーターアセンブリを使用することである。
【0003】
薄膜ヒーターは、一般に、可撓性のある電気絶縁薄膜の封止された封入部に内包された抵抗加熱要素を含み、電源に接続するための加熱要素との接点を備え、接点は、通常、加熱要素の露出した部分にはんだ付けされている。
【0004】
このような薄膜ヒーターは、一般に、電気絶縁薄膜支持部上に金属層を堆積させ、薄膜上に支持された金属層を必要な加熱要素の形状にエッチングし、エッチングされた加熱要素上に電気絶縁薄膜の第2の層をかぶせ、加熱要素を電気絶縁薄膜封入部によって封止するためにヒートプレスすることによって製造される。その後、電気絶縁薄膜は、ダイカットされて接点用の開口部が作成され、この接点は、開口部によって露出した加熱要素の部分にはんだ付けされる。
【0005】
次に、絶縁性薄膜封入部内に密封された平面状の加熱要素で形成されたこれらの従来の薄膜ヒーターを、加熱されることになる表面に取り付ける必要がある。エアロゾル生成装置に関連して、この取り付けには、チャンバ内に配置されたエアロゾル生成消耗品に熱を伝達するように、加熱チャンバの外表面に薄膜ヒーターを取り付けてヒーターアセンブリを形成することが含まれる。
【0006】
このような従来の薄膜ヒーター及びヒーターアセンブリには、多くの欠点がある。既知の問題の1つは、加熱が、薄膜ヒーターの全体に渡って均一ではない場合が多いということである。特に、加熱トラックの領域内でホットスポットが発生することがしばしばあり、薄膜ヒーターの加熱領域全体に渡って不均一なヒーター温度がもたらされることがある。金属が熱くなるとヒータートラックの電気抵抗が増加し、これにより影響が悪化し、その結果、これらの領域内で抵抗が大きくなること、及び関連して局所的な抵抗加熱が増加することに起因して、既存のホットスポットが更に熱くなる。場合によっては、このことは、電気絶縁封止層の焼損、及び薄膜ヒーターが装置に適用されたときの性能の低下につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの問題への対処において進歩を遂げて、改良されたヒーターアセンブリ及びヒーターアセンブリを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル生成装置用のヒーターアセンブリが提供され、ヒーターアセンブリは、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムと、電気絶縁バッキングフィルムの表面上に支持された可撓性のある加熱要素と、カバーフィルムとバッキングフィルムとの間に加熱要素を少なくとも部分的に封入するように、電気絶縁バッキングフィルムの表面上に配置されたカバーフィルムであって、バッキングフィルム、加熱要素、及びカバーフィルムは共に薄膜ヒーターアセンブリを形成する、カバーフィルムと、薄膜ヒーターアセンブリの外表面に接して配置されるグラファイトの層であって、加熱要素と少なくとも部分的に重なるグラファイトの層と、エアロゾル生成消耗品を収容するように構成された管状加熱チャンバであって、この管状加熱チャンバの外表面の周りに、電気絶縁バッキングフィルムを加熱チャンバに向けて、薄膜ヒーターアセンブリが巻かれている、管状加熱チャンバと、を含む。
【0009】
このようにして、グラファイト層は、使用中に、加熱要素によって生成された熱を、薄膜ヒーターアセンブリの平面内に均一に分配するように機能する。特に、グラファイトの熱伝導率が高いことは、熱が、薄膜ヒーターアセンブリ内部を横方向に迅速に拡散して、例えば、加熱要素に近い領域中の局所的なホットスポットが防止されることを意味する。グラファイト層を加熱要素と重ね合わせることにより、熱はグラファイト層に迅速に伝導して、その後、グラファイト層に対応する領域に拡散する。これにより、消耗品の局所的な領域が、エアロゾル化のための最適な温度を超過し、場合によっては燃焼し、蒸気中に望ましくない化合物が放出されてユーザが吸入することになるのが防止される。また、グラファイト層は、消耗品の全量が効率的にエアロゾル化されるように、消耗品が均一に加熱されることを確実にし、エアロゾル生成消耗品の不完全な加熱に関連したゴミに関する従来技術による装置における既知の問題を克服する。ゴミ及びホットスポットについての上記の問題を回避するために、エアロゾル生成消耗品の加熱には微細な長さスケールでの均一な加熱が必要であり、よって、これらの用途に加熱アセンブリを使用することが、特に好ましい。
【0010】
薄膜ヒーターアセンブリは、多層平面状アセンブリを提供するために重ね合わせられた複数のフィルム層を含む。「重なり合う」という用語は、複数の層の表面領域が、たとえそれらが1つ又は複数の層によって分離されていても、薄膜ヒーターアセンブリの平面内でどのように重なり合っているかを説明することを意図している。「部分的に重なり合う」とは、グラファイトの層及び加熱要素が、薄膜ヒーターアセンブリの平面内で重なるように配置されていることを意味することを意図している。言い換えると、加熱要素及びグラファイトシートは、(それぞれの層内の)薄膜ヒーターアセンブリの表面領域の対応する部分を覆う。グラファイトの層は加熱要素の加熱領域を覆うことが好ましく、この加熱領域とは、加熱要素のヒータートラックによって画定される表面領域である。これらの定義は、薄膜ヒーターアセンブリが平面状の構成、即ち平坦になっていようと、又は湾曲した加熱チャンバの周りに巻かれていようと、維持される。
【0011】
グラファイトの層は、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムに接して(即ち、薄膜ヒーターアセンブリの第1の側に接して)配置されるか、且つ/又はカバーフィルムに接して(即ち、第1の側とは反対側の、薄膜ヒーターアセンブリの第2の側に接して)配置されることがある。グラファイトの層は、例えば接着剤を用いて、薄膜ヒーターアセンブリの外表面に取り付けられる、即ち、電気絶縁バッキングフィルムか又はカバーフィルムに取り付けられることが好ましい。
【0012】
バッキングフィルムは、Si接着剤層を備えたポリイミド膜などのポリイミドを含むことがある。その代わりに又はこれに加えて、バッキングフィルムは、PTFEなどのフルオロポリマーを含むことがある。バッキングフィルムがフルオロポリマーを含む場合、バッキングフィルムは、例えば、プラズマエッチング及び/又は化学的エッチングなどの表面処理によって形成された、少なくとも部分的に脱フッ素化された表面層を含むことがある。これにより、フルオロポリマーによって提供される極めて低摩擦の表面を考慮すると、別の方法では接着しない処理済表面に接着剤を塗布することが可能となる。これに加えて又はその代わりに、バッキングフィルムはPEEKを含むことがある。好ましくは、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムは、80μm未満、好ましくは50μm未満の厚さを有し、好ましくは、20μmより大きな厚さを有する。
【0013】
カバーフィルムは、熱収縮フィルムを含むことが好ましい。このようにして、熱収縮フィルムは、熱収縮フィルムとバッキングフィルムとの間に加熱要素を密封し、且つ薄膜ヒーターアセンブリが熱収縮によって加熱チャンバに取り付けられるような取り付け機構を提供するように、機能する。熱収縮フィルムは、ポリイミド、PTFEなどのフルオロポリマー、及びPEEKのうちの1つ又は複数を含むことがある。熱収縮フィルムは、一方向に選択的に収縮するように構成された選択的熱収縮フィルムであることが好ましい。例えば、熱収縮フィルムは、Dunstoneにより製造されたポリイミド208xテープであり得る。熱収縮フィルムは、初期には平面状である層の形態、即ち加熱チャンバの周りに巻き付けられるように構成された熱テープ片であってもよく、又は加熱チャンバの周りに渡して(即ち、スリーブ状にして)、加熱して加熱チャンバの表面に収縮させるように構成された管の形態であってもよい。
【0014】
カバーフィルムは、加熱要素を支持する可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムの表面上に設けられた接着剤を使用して取り付けられることが好ましい。接着剤は、例えばシリコン接着剤であり得る。接着剤は、加熱要素及びカバーフィルムをバッキングフィルムに確実に固定する単純明快な手段を提供する。可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムは、接着剤層を含むことがあり、例えば、Si接着剤層を有するポリイミド膜であってもよい。加熱要素は、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム、接着剤層、及び配置された加熱要素をその後加熱し、接着剤を使用して加熱要素を表面に結合することよって、取り付けられることがある。その後の加熱は、熱収縮フィルムを収縮させて加熱チャンバに薄膜ヒーターを取り付けるために使用される加熱ステップであり得る。
【0015】
加熱要素は、可撓性のある平面状の加熱要素であることが好ましい。加熱要素は、加熱要素の平面内の加熱領域に渡る曲がりくねった経路をたどるヒータートラックと、電源に接続するための2つの接触脚であって、加熱要素の平面内においてヒータートラックから外方に延びる接触脚と、を含む平面状の加熱要素であることが好ましい。ヒータートラックは、加熱領域に渡って実質的に均一な加熱をもたらすように構成されることが好ましい。ヒータートラック経路は、加熱領域全体に渡る蛇行経路又は曲がりくねった経路であることがあり、且つヒータートラックは、実質的に均一な幅及び厚さを有することがある。接触脚を露出させたままにして、バッキングフィルムとカバーフィルムとの間にヒータートラックを封入するようにカバーフィルムを取り付けることが好ましい。このようにして、ヒータートラックは、電気絶縁バッキングフィルムと熱収縮フィルムとの間で電気的に絶縁され、一方、接触脚は、電源に接続できるように露出されている。薄膜ヒーターが装置に用いられる場合、接触脚は、電源に直接接続することができるように十分に長いことがある。例えば、接触脚の長さは、加熱領域を規定する寸法の一方又は両方と実質的に等しいか、又はそれより長くてもよい。曲がりくねった経路は、加熱領域内に空の領域を残すように構成されることがある。
【0016】
ヒーターアセンブリは、管状の加熱チャンバを含む。薄膜ヒーターアセンブリは、管状の加熱チャンバの外表面の周りに、電気絶縁バッキングフィルムを加熱チャンバに向けて、巻き付けられる。このようにして、薄膜ヒーターアセンブリをかぶせて加熱チャンバの内容物を加熱することができ、グラファイト層は、加熱要素からの熱を均一に拡散させて、加熱チャンバの加熱の改善をもたらすように機能する。
【0017】
加熱チャンバは、外表面に1つ又は複数の窪みを含み、薄膜ヒーターアセンブリは、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムに取り付けられた温度センサが窪み内に位置決めされるように加熱チャンバに対して位置決めされる、ことが好ましい。この方法は、取り付けられた薄膜ヒーターアセンブリの周囲に更なる電気絶縁フィルムを巻き付けることを更に含むことが好ましい。いくつかの例では、この更なる電気絶縁フィルムは、バッキングフィルムよりも熱伝導が低いことがある。
【0018】
グラファイトの層は、薄膜ヒーターアセンブリの電気絶縁バッキングフィルムと加熱チャンバの外表面との間に配置されることが好ましい。グラファイト層は、薄膜ヒーターアセンブリを加熱チャンバの周りに巻き付ける前に、加熱チャンバに又は薄膜ヒーターアセンブリのバッキングフィルムに取り付けられることがある。これにより、組み立て中にグラファイト層が加熱領域と重なるようにグラファイト層を正確に位置合わせする単純明快な方法が提供される。
【0019】
或いは、グラファイトの層は、薄膜ヒーターアセンブリのカバーフィルムの外表面に接して配置されることがある。このステップは、熱収縮させて薄膜ヒーターアセンブリを加熱チャンバに取り付けた後で、実行されることがある。
【0020】
ヒーターアセンブリは第2のグラファイトの層を含むことが好ましい。ここで、第1のグラファイトの層は電気絶縁バッキングフィルムと加熱チャンバの外表面との間に配置され、第2のグラファイトの層はカバーフィルムの外表面に接して配置される。これにより、更に最適化された熱分布がもたらされる、というのも、加熱要素が2つのグラファイトの層の間に配置されるからであり、これら2つのグラファイトの層は、組み立て中に著しい追加の作業を必要とせずに、薄膜ヒーターアセンブリを介して熱を拡散させるように一緒になって機能する。
【0021】
ヒーターアセンブリは、巻き付けられた薄膜ヒーターアセンブリ及び1つ又は複数のグラファイト層の外表面の周りに配置される電気絶縁封止層を更に含むことが好ましい。これにより断熱が高まり、その結果、熱が加熱チャンバにより効率的に向けられるようになる。更に、薄膜ヒーターは、加熱中に1つ又は複数の副産物が放出されるのを防ぐように密封されることがある。いくつかの例では、薄膜ヒーターの層は、加熱要素から一方向への増大した熱伝達をもたらすように構成される。例えば、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム、第2の可撓性のある電気絶縁フィルム、及び1つ又は複数の封止層のうちの1つ又は複数の厚さ及び/又は材料特性は、使用中に加熱チャンバに向かう方に一致する方向に増大された熱伝達をもたらすように選択される。例えば、絶縁バッキングフィルムは、カバーフィルム層及び/又は封止層と比較して増加した熱伝導率を有することがある。このようにして、加熱チャンバへの熱伝達が促進され、加熱チャンバから失われる熱伝達が減少して、熱損失を軽減する。加熱チャンバに接触するように配置される薄膜ヒーターの側面は、反対の外側よりも高い熱伝導率を有するように構成されることが好ましい。封止層は、バッキングフィルムよりも低い熱伝導率を有することが好ましい。
【0022】
加熱要素は、加熱要素の平面内の加熱領域全体に渡る曲がりくねった経路をたどるヒータートラックを含む平面状の加熱要素であり、ここで、グラファイトの層は、加熱要素の加熱領域に対応する薄膜ヒーターアセンブリの表面の領域を覆う、ことが好ましい。これにより、薄膜ヒーターアセンブリの加熱領域全体に渡って熱が均一に分布することが確実になる。
【0023】
グラファイトの層は、グラファイト層及び少なくとも1つの接着剤層を含む接着性グラファイトシートによって提供されることが好ましい。例えば、グラファイトの層は、接着性グラファイトテープを含むことがある。これは、接着剤層を使用することにより、グラファイト層を所定の位置に固定する単純明快な手段をもたらす。
【0024】
接着性グラファイトシートは、5~30μmの間の厚さを有するグラファイト層と、0~35μmの間の厚さを有する接着剤層とを含むことが好ましく、グラファイト層は10~12μmの間の厚さを有し、接着剤層は5~10μmの間の厚さを有することが好ましい。他の例では、10、17、又は25μmのグラファイト層厚さ及びそれぞれ6、10、又は30μmの接着剤層厚さを有するグラファイトテープを用いることがある。これにより、薄膜ヒーターアセンブリの熱質量が最小限に抑えられ、その結果、加熱チャンバへの熱伝達が最大化される。
【0025】
グラファイト層の熱伝導率は、700~2000W/m.Kの間であることが好ましい。これは、ヒータートラックによって生成された熱を加熱領域全体に効果的に分散させるのに役立つ。グラファイト層は、グラファイトポリマーフィルムを含むことが好ましい。
【0026】
ヒーターアセンブリは、感知部分(以下の説明ではセンサヘッドとも呼ばれる)を含む温度センサを更に備えることが好ましく、この感知部分は、グラファイトの層によって覆われる薄膜ヒーターアセンブリの領域内に配置される。言い換えると、グラファイト層は、薄膜ヒーターの平面内で温度センサの感知部分を覆う。このようにして、ヒーターを正確に制御するために、温度センサを使用して加熱温度を監視することができる。特に、このことは、グラファイトフィルムが加熱要素と温度センサの感知部分との両方に重なり、その結果、加熱要素からの熱が感知部分まで効果的に分散され、それにより温度センサが加熱要素の温度の正確な測定値を提供するようになることを意味する。これにより、加熱要素の過熱が防止される、というのも、加熱要素の正確な温度を監視することができるからである。
【0027】
本発明の別の態様では、ヒーターアセンブリを製造する方法が提供され、この方法は、可撓性のある誘電体バッキングフィルムの表面上に支持された加熱要素を提供することと、カバーフィルムと誘電体バッキングフィルムとの間に加熱要素を少なくとも部分的に封入するように、誘電体バッキングフィルムの表面にカバーフィルムの層を取り付けることであって、取り付けられたバッキングフィルム、加熱要素、及びカバーフィルムは一緒になって薄膜ヒーターアセンブリを形成することと、薄膜ヒーターアセンブリの外表面に接して配置されるグラファイトの層を配置することであって、グラファイトの層は少なくとも部分的に加熱要素と重なることと、を含む。これにより、加熱要素の加熱トラックの近傍の領域での選択的加熱に起因するホットスポットの危険性が低減され、熱特性が向上した、ヒーターアセンブリを提供する単純明快な組み立て方法がもたらされる。また、これにより、グラファイトヒーターを組み立てプロセスの様々な段階で追加して、組み立ての効率を改善することも可能になる。例えば、加熱チャンバの製造中に加熱チャンバの外表面に追加することができ、又は、薄膜ヒーターアセンブリの組み立て中に薄膜ヒーターアセンブリの表面に追加することができ、又は、薄膜ヒーターが加熱チャンバに取り付けられた後の最終ステップとして追加することができる。
【0028】
グラファイトの層は、グラファイト層及び少なくとも1つの接着剤層を含む接着性グラファイトシートによって提供されることが好ましく、グラファイトの層を配置するステップは、接着性グラファイトシートを誘電体バッキングフィルムに貼り付けること、及び/又は、接着性グラファイトシートをカバーフィルムに貼り付けること、を含む。代替のステップでは、接着性グラファイトシートは、加熱チャンバの外表面に直接的に貼り付けられることがある。
【0029】
この方法は更に、薄膜ヒーターアセンブリを、管状加熱チャンバの外表面の周りに、誘電体バッキングフィルムを加熱チャンバの外表面に向けて巻き付けることと、熱収縮層から構成されるカバーフィルムを提供し、薄膜ヒーターアセンブリを加熱して熱収縮層を収縮させ、薄膜ヒーターアセンブリを管状加熱チャンバに対して固定させることと、を含むことが好ましい。
【0030】
この方法は更に、薄膜ヒーターアセンブリを管状加熱チャンバの外表面の周りに巻き付ける前に、接着性グラファイトシートを管状ヒーターチャンバの外表面に貼り付けること、を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の更なる態様では、特許請求の範囲に記載されているようなエアロゾル生成装置ヒーターアセンブリが提供される。このようにして、エアロゾル生成装置は、加熱チャンバ全体に渡ってより均一な加熱温度を提供することにより、改善された加熱を提供することができる。
【0032】
ここで、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】2つの反対側の視野から、本発明によるヒーターアセンブリを概略的に示す。
図1B】2つの反対側の視野から、本発明によるヒーターアセンブリを概略的に示す。
図2A】加熱チャンバの周りに巻かれた薄膜ヒーターアセンブリを含むヒーターアセンブリを示す。
図2B】加熱チャンバの周りに巻かれた薄膜ヒーターアセンブリを含むヒーターアセンブリの断面図を示す。
図3A】加熱チャンバの周りに巻かれた薄膜ヒーターアセンブリを含むヒーターアセンブリを示す。
図3B】それぞれ、本発明によるヒーターアセンブリの2つの例の断面図を示す。
図3C】それぞれ、本発明によるヒーターアセンブリの2つの例の断面図を示す。
図4】本発明によるヒーターアセンブリで使用するためのグラファイト層を概略的に示す。
図5A】本発明によるヒーターアセンブリを組み立てる方法を示す。
図5B】本発明によるヒーターアセンブリを組み立てる方法を示す。
図5C】本発明によるヒーターアセンブリを組み立てる方法を示す。
図5D】本発明によるヒーターアセンブリを組み立てる方法を示す。
図5E】本発明によるヒーターアセンブリを組み立てる方法を示す。
図6】本発明によるヒーターアセンブリを組み立てる方法における代替の組み立てステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1A及び図1Bは、本発明による、エアロゾル生成装置用のヒーターアセンブリ10を概略的に示す。ヒーターアセンブリ10は、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30及び電気絶縁バッキングフィルム30の表面上に支持される可撓性のある加熱要素20を含む。ヒーターアセンブリ10は、カバーフィルム50とバッキングフィルム30との間に加熱要素20を少なくとも部分的に封入するように、電気絶縁バッキングフィルム30の表面上に配置されるカバーフィルム50を更に含む。組み立てられたバッキングフィルム30、加熱要素20、及びカバーフィルム50は、まとめて、薄膜ヒーターアセンブリ100と呼ばれる。ヒーターアセンブリ10は、薄膜ヒーターアセンブリ100の外表面に接して配置されたグラファイトの層40を更に含み、グラファイトの層40は、加熱要素20と少なくとも部分的に重なっている。言い換えると、グラファイトの層40は、薄膜ヒーターアセンブリ100の2つの側面のうちの一方に適用され、ここで、薄膜ヒーターアセンブリ100は、対向するバッキングフィルム30と熱収縮フィルム50との間に封入された可撓性のある加熱要素20を含む。
【0035】
グラファイトの層40は、生成された熱を加熱領域の周りに迅速に拡散させるように機能し、その結果、熱は何れの潜在的なホットスポットからも外方へ分散され、加熱領域全体に渡ってはるかにより均一な加熱温度がもたらされる。グラファイトは、通常は約700~2000W/m.Kの間である高い熱伝導率を有するので、熱は薄膜ヒーターアセンブリ100の平面内を横方向に迅速に分散され、その結果、ホットスポットは形成されず、ヒーターアセンブリ10は、エアロゾル生成装置などの装置に用いられると、より優れた性能をもたらす。これは、グラファイト層40が、1つ又は複数の薄膜層によって加熱要素20から分離されている場合であっても、達成される。
【0036】
図に示した例示的な実施形態では、カバーフィルムは、熱収縮フィルムの層50を含む。これには多くの利点がある。特に、熱収縮フィルムは、バッキングフィルム30と対向する熱収縮フィルムとの間に加熱要素20(の少なくとも一部分)を密封するだけでなく、薄膜ヒーターアセンブリ100を加熱チャンバの表面に取り付けるための取り付け手段としても機能する。従って、それは、加熱要素を取り付ける効果的な方法を提供しながら、追加の材料及び薄膜ヒーターアセンブリの層における関連する熱質量の量を最小限に抑える。この取り付け機構の更なる詳細を、以下に示す。
【0037】
図1の例では、グラファイトの層40は、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30の表面に適用されている。即ち、薄膜ヒーターアセンブリ100は、まず平面状の加熱要素をバッキングフィルムと熱収縮50との間に配置することによって、形成される。この薄膜ヒーターアセンブリは、層と層との間に配置された接着剤を使用して取り付けられることがあり、特に、バッキングフィルムは、加熱要素20及びカバーフィルム50の両方を取り付けるように機能する接着剤の層を含むことがある。次いで、グラファイトの層30は、加熱要素20に対して反対側の表面上に、バッキングフィルム30に接して配置され、その結果、グラファイトの層30は、加熱要素20と少なくとも部分的に重なるようになる。本発明の他の例では、グラファイトの層40は、以下でより詳細に説明するように、薄膜ヒーターアセンブリ100の反対側に、即ち熱収縮フィルムの層50に接して、適用されることがある。
【0038】
図1に示すように、グラファイトの層40の寸法及び形状は、図1Bから最もよく分かるように、加熱要素20の加熱トラック21によって画定される加熱領域22の寸法及び形状と実質的に一致することが好ましい。特に、グラファイト層40は、加熱要素の加熱領域22と実質的に一致する薄膜ヒーターアセンブリ100の外表面上の領域を覆うことが好ましい。このようにして、熱は、意図された加熱領域全体に渡って均一に分散する。
【0039】
図1A及び図1Bの例では、薄膜ヒーターアセンブリは更に、温度感知部分71(「センサヘッド」)及びセンサ接続部72を備えたサーミスタ70の形態をした温度センサ70を含む。重要なのは、センサヘッド71が、グラファイト層40によって覆われた薄膜ヒーターアセンブリ100の領域内に配置されることである。特に、サーミスタは、感知部分が、バッキングフィルム30とカバーフィルム50との間に加熱要素20のヒータートラック21に隣接して配置された状態に配置されることがある。次いで、加熱領域22及びセンサヘッド71の両方を覆うようにグラファイト層40が配置される。このようにして、熱は温度センサヘッド71まで効果的に分散され、その結果、温度センサが、加熱要素20の実際の加熱温度の正確な測定値を提供するようになる。装置に用いられると、これにより、加熱要素の測定温度を使用してヒーターを正確に制御し、正確な加熱温度を提供することが可能になり、また、加熱要素20が過熱しないことが確実になる。過熱は、温度センサが加熱要素20自体の正確な読み取りをもたらすように配置されていない例で生じる可能性がある。
【0040】
図2Aに示すように、薄膜ヒーターアセンブリ100は、加熱領域22全体に渡って加熱チャンバ60の均一な加熱を提供するために、管状加熱チャンバ60の外表面の周りに巻き付けられる。図2Aは、管状加熱チャンバ40の外表面の周りに一緒になって巻き付けられた、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30、可撓性のある加熱要素20、熱収縮フィルムの層50及びグラファイトの層40を含む、組み立てられたヒーターアセンブリ10を示しており、電源が加熱要素20の延在する接触脚23上の接点24に接続されると、チャンバ60に熱を伝達することができる。図2の例は図1のヒーターアセンブリ10を使用しており、この例では、グラファイトの層40は、バッキングフィルムの表面に接して適用されている。
【0041】
次いで、薄膜ヒーターアセンブリ100は、グラファイトの層40及び可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30が、加熱チャンバ60の外表面に隣接するように、加熱チャンバ60の周りに巻き付けられる。これは、図2Bに示す断面に示されている。特に、ヒーターアセンブリ10は、グラファイトの層40が加熱チャンバ60の外表面に接して配置され、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30がグラファイトの層40の周りに配置され、加熱要素20がバッキングフィルム30に接して配置され、最後に熱収縮フィルムの層50が、薄膜ヒーターアセンブリを加熱チャンバ60に固定するように、これらの各層の外表面の周りに巻かれて、配置される。次いで、図2に示すアセンブリ10は、熱収縮フィルム50を収縮させるためにまず加熱されることがあり、薄膜ヒーターアセンブリ100が加熱チャンバ60の外表面に対して密封される。
【0042】
図1及び図2の例では、グラファイトの層40は、薄膜ヒーターアセンブリ100が加熱チャンバ60の周りに巻き付けられる前に、薄膜ヒーターアセンブリ100のバッキングフィルム30の表面に適用されているが、本発明の他の例では、グラファイトの層40は、加熱チャンバの外表面に直接的に適用されることがあり、その後薄膜ヒーターアセンブリ100(バッキングフィルム30、加熱要素20、及び熱収縮フィルム50を含む)がグラファイトの層20及び加熱チャンバ60の周りに巻き付けられて、その結果、グラファイトの層20が、加熱要素20と少なくとも部分的に重なるようになる。
【0043】
図3A図3Cは、本発明の代替例を示しており、この例では、グラファイトの層40は、バッキングフィルム30に接する代わりに、薄膜ヒーターアセンブリ100の熱収縮フィルム50の外表面に接して配置される。特に、図1A及び図1Bに示すようにグラファイトの層40をバッキングフィルム30に接して適用するのではなく、グラファイトの層40は、代わりに、薄膜ヒーターアセンブリ100の反対側に適用され、その結果、グラファイトの層40は、カバーフィルム50(この場合には熱収縮50)に接して位置するものの、依然として図1に示したのと同じ態様で、加熱領域22と重なり合う。次いで、グラファイトの層40が熱収縮フィルム50に取り付けられた状態の薄膜ヒーターアセンブリ100は、図3Aに示すように、管状加熱チャンバ60の周りに巻き付けられる。特に、薄膜ヒーターアセンブリ100は、電気絶縁バッキングフィルム30が加熱チャンバ60の外表面に向けられているものの、グラファイトの層40は熱収縮50の外表面の周りに配置されるように、加熱チャンバ60の周りに依然として巻き付けられている。
【0044】
図3Bは、図3Aの配置を通る断面を示しており、ヒーターアセンブリ10内の層の順序を示している。特に、図3Bに示すように、バッキングフィルム30は加熱チャンバ60の外表面に接して位置し、加熱要素20はバッキングフィルム30の外表面上に支持され、熱収縮フィルム50は加熱要素20の外表面の周りに巻かれて、チャンバ60の外表面に対して薄膜加熱要素20を密封し、グラファイトの層40は巻き付けられたヒーターアセンブリ10の外表面に適用される。この配置では、グラファイト40は、依然として、加熱要素20で生成された熱を平面状の層を通じて横方向に拡散させるのと同じ効果を提供して、熱を分散させ、ホットスポットの形成を防止する。
【0045】
ヒーターアセンブリ10の代替例が、図3Cの断面図に示されている。この例は、(図1に示すような)可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30に接して配置された第1のグラファイトの層41と、図3A及び図3Bに示すような、熱収縮50の表面に接して配置された第2のグラファイトの層42と、を組み込んでいる。グラファイト層41、42は両方とも、熱をヒーターアセンブリ10の層全体を通じて分散させ、特に、熱を横方向に拡散させてホットスポットの発生を防止するために、加熱要素20の加熱領域22と重なるように配置されることが好ましい。特に、図3Cの代替例は、加熱チャンバ60の外表面に直接適用された、又はバッキングフィルム30に直接的に適用された、第1のグラファイトの層41を含み、それにより、第1のグラファイトの層41は、薄膜ヒーターアセンブリ100が加熱チャンバ60の周りに巻き付けられたときに、加熱チャンバ60とバッキングフィルム30との間に位置するようになる。全ての例のように、可撓性のある加熱要素20はバッキングフィルム30上に支持され、熱収縮50は加熱要素20の外表面の周りに巻かれて、バッキングフィルム30と熱収縮50との間に加熱要素20を密封する。第2のグラファイトの層42は、熱収縮50の外表面上に配置される。このようにして、加熱要素20は第1のグラファイト層41と第2のグラファイト層42との間に位置し、これにより、加熱要素20で生成された熱の層全体への拡散が更に最適化され、ホットスポットの発生が防止される。
【0046】
図示された例のそれぞれは、図2B図3B、及び図3Cに示す配置の最も外側の表面の周りに巻き付けることができる電気絶縁封止層(図示せず)を更に含むことがある。ポリイミド薄膜などの電気絶縁封止層は、薄膜ヒーターアセンブリ100が加熱チャンバ60の周りに巻き付けられる前に薄膜ヒーターアセンブリ100に適用されることがある、即ち、図1A及び図1Bに示す平面状のアセンブリに適用されることがある。或いは、電気絶縁封止層は、図2B図3B、及び図3Cに示す配置などの、組み立てられたヒーターアセンブリ10の最も外側の表面の周りに巻き付けられるように、ヒーターアセンブリ10の各層を取り付けた後で適用されることがある。
【0047】
図4は、説明した本発明の例においてグラファイト層40として適用することができるグラファイトフィルムの層40を示す。特に、グラファイトの層40は、グラファイト層43及び少なくとも1つの接着剤層44を含む接着性グラファイトシートによって提供されることがある。図4の例は、グラファイト層43及び単一の接着剤層44を有するグラファイトシート又はテープを示しているが、他の例では、グラファイトテープ40は、複数の接着剤層、特にグラファイト層43の両側にある接着剤層44を含むことがある。接着剤層44は、アクリル性の又はシリコンの接着剤を含むことがあり、グラファイト層の厚さ43tは、5~30ミクロンの間、好ましくは10~12ミクロンの間であることがあり、接着剤層は、0~35ミクロンの間、好ましくは5~10ミクロンの間の厚さ44tを有することがある。この用途に使用することができる市販のグラファイトテープの例としては、Panasonic(商標)が販売するEYGA121801F、及びDSN Thermal Solutions(商標)が販売するDSN5012-05DCが挙げられる。そのようなグラファイトテープは、約10ミクロンのグラファイト層及び約6ミクロンの接着剤層を有している。光学的に好ましい5~10ミクロンの間の厚さ44tを有する接着剤層を備えた約10~12ミクロンのグラファイト層を備えたグラファイトテープ40、特に、グラファイトテープは、加熱チャンバ60と加熱要素20との間に配置される。グラファイトテープ40の熱伝導率は、700~2000W/m.Kの範囲内であり得る。グラファイトテープは、約0.85~0.213g/cmの間の比重を有することがある。テープのグラファイト層43は、特に高配向グラファイトポリマーフィルムから形成された、熱分解性グラファイトシートであり得る。そのようなグラファイト層は、最大で400℃までの温度に耐えることができ、高温が必要とされる加熱チャンバ60内での用途に非常に適している。そのようなグラファイトテープは、接着剤フィルム44を保護し、且つ、グラファイトシート40を薄膜ヒーターアセンブリ100又は加熱チャンバ60に取り付ける前に取り除くことができる、PTE剥離ライナーによって保護されていることがある。
【0048】
ここで、図5及び図6を参照して、本発明によるヒーターアセンブリ10の更なる詳細及びそのようなヒーターアセンブリ10を製造する方法について説明する。
【0049】
図5Aに示すように、第1のステップは、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30の表面上に支持された加熱要素20を提供することを含む。これは、多くの異なる方法で達成されることがある。特に、加熱要素20は、約50μmの薄い金属板、例えば18SR又はSUS304などのステンレス鋼板からエッチングされることがあるが、用途に応じて他の材料及びヒーター厚さを選択してもよい。金属板の特定の金属及び厚さは、結果として得られる加熱要素20が、支持している可撓性薄膜30と共に変形して、加熱されることになる表面の形状に適合できるように可撓性を有するように選択される。金属板は、フィルム上に支持されている間にエッチングされてヒータートラック21パターンを形成する前に、まず可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30の表面上に置かれることがある。代替的に、好ましくは、加熱要素20は、可撓性のある電気絶縁バッキングフィルムとは別個に、金属板からエッチングされることがある。例えば、1つ又は複数の接続された加熱要素20であって、その後引き離されて、電気絶縁バッキングフィルム30の表面上に配置される加熱要素20を提供するために、自立性金属箔が両側から化学的にエッチングされることがある。
【0050】
図に示した例の加熱要素20は、加熱要素20の平面内の加熱領域22に渡り曲がりくねった経路をたどるヒータートラック21を含む平面状の加熱要素20である。加熱要素は、電源への接続を可能にする2つの接触脚23を有し、接触脚23は、加熱要素20の平面内においてヒータートラック21から外方に延びている。接触脚はまた、加熱要素に対して傾いている平面内で延びることもある。ヒータートラック21は、加熱領域22全体に渡って実質的に均一な加熱をもたらすように成形されることが好ましい。特に、ヒータートラックは、鋭利な角部を含まずに均一な厚さ及び幅を有するように成形され、ヒータートラック22の隣接部間の隙間は、加熱領域22内の特定の箇所での過剰な加熱を最小限に抑えるために実質的に一定である。図5Aの例におけるヒータートラック21は、ヒーター領域22全体に渡る蛇行経路をたどり、2つの平行なトラック経路21a及び21bに分割され、その各々が両方の接触脚23に接続される。ヒーター層23は、PCB及び電源へのヒーターの接続を可能にするために、各接触脚23上の接続点24ではんだ付けされることがある。
【0051】
可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30は、好適な特性を有しなければならず、加熱要素20を支持し且つ電気的に絶縁するための可撓性基板を提供する。適切な材料としては、ポリイミド、PEEK、及びPTFEなどのフルオロポリマーが挙げられる。この場合、加熱要素は、37μmのシリコン接着剤層を備えた25μmのポリイミド膜を含む片面ポリイミド/Si接着膜上に支持された50μmのステンレス鋼18SRの層からエッチングされたヒータートラックパターン21を含む。加熱要素20は、バッキングフィルムに加熱要素を取り付けることを可能にするために接着剤上に支持される。図5Aの薄膜ヒーターアセンブリ100は、事前に用意され、且つ加熱要素20を支持する接着表面に取り付けられて接着剤層の使用準備が整うまで接着剤層を保護する剥離層と共に保管されることがある。剥離層は、例えば、ポリエステル又は同様の材料により提供されることがある。次いで、図5Bに示す次の組み立てステップに進むために、剥離層を剥がして、加熱要素を支持する粘着性接着剤層の覆いを取ることができる。
【0052】
ヒーターアセンブリ100を製造するこの例示的な方法における次のステップは、熱収縮フィルム50とバッキングフィルム30との間に加熱要素20を少なくとも部分的に封入するように、熱収縮フィルムの層50を電気絶縁バッキングフィルム30の表面に直接貼り付けることである。熱収縮フィルム50は、バッキングフィルム30と熱収縮50との間に加熱領域20を封入するように、ヒーター要素20の表面上に接着剤で直接取り付けることができる。特に、ヒータートラック21は、接触脚23が電源への接続を可能にするために露出されたままである間、可撓性のあるバッキングフィルム30及び熱収縮50によって形成された密封封入部内で絶縁される。
【0053】
熱収縮50は、直交する2方向51、52において所定の距離だけ加熱要素20を越えて延在するように、バッキングフィルム30及び加熱要素20よりも大きい。加熱要素20に対する熱収縮50のこの位置合わせにより、その後の加熱チャンバ60に対する加熱領域22の位置合わせが可能になる。従って、この段階で熱収縮のこれらの延在部分51、52の大きさを慎重に制御することにより、精密な位置合わせを提供する単純明快な態様で、加熱チャンバ60へのヒーターアセンブリ100の取り付けが可能になる。熱収縮と薄膜ヒーター10との相対的な位置合わせは、多くの異なる方法で達成することができる。熱収縮50は、正しい大きさに事前に切断され、次いで正しい所定の距離51、52の延在部分を提供するために可撓性のある電気絶縁バッキングフィルム30の縁部に位置合わせされることがある。或いは、位置合わせ装置を使用して、この精密な位置合わせを達成することがある。
【0054】
特に、バッキングフィルム30と熱収縮50の両方に一連の対応する位置合わせ穴(図示せず)を設けることがあり、これらの穴を、バッキングフィルム30と熱収縮50との相対的な位置合わせに使用することができる。位置合わせ穴は、バッキングフィルム30の穴が熱収縮50の位置合わせ穴と位置合わせされたとき、熱収縮50が、正しい長さ51、52だけ加熱領域22を越えて延在して、取り付けられたときに加熱チャンバ60に対する加熱要素20の精密な位置合わせを可能にするように、熱収縮50が薄膜ヒーター10に対して精密に正しい位置に位置決めされるように配置される。次いで、熱収縮50は、バッキングフィルム30及び熱収縮50の位置合わせ穴の位置に対する相対的な変位に対応する直立した位置合わせピンを備えた支持面を含む位置決め治具を使用して、薄膜ヒーター10に対して位置合わせされる。次いで、バッキングフィルム30上の加熱要素20及び熱収縮50は、位置合わせピンがバッキングフィルム位置合わせ穴を通って延びて、熱収縮が加熱要素20及びバッキングフィルム30に対して確実に精密に位置合わせされるように、位置合わせ治具の表面上に配置されることがある。
【0055】
熱収縮50は、熱収縮50の位置合わせ領域52を提供するために、接触脚23と反対の方向に加熱領域20を越えて延在する。この位置合わせ領域52は、ヒータートラック21の上端からの位置合わせ領域の所定の長さ52に対応する加熱チャンバの長さに沿った位置に加熱領域20が配置されるように、加熱チャンバ60の上端と位置合わせすることができる。このようにして、ヒーター要素20を加熱チャンバ60に沿った正しい位置に設けることができる。熱収縮50は、取り付け領域51を提供するために、接触脚23の延在方向に直交する方向にヒータートラック21及びバッキングフィルム30を越えて延在する取り付け領域51も有する。加熱要素20から熱収縮50の縁への取り付け領域51の延在方向は、「巻き付け方向」と呼ばれることがある、というのも、熱収縮50のこの部分は、管状加熱チャンバ60の周りに巻き付けられ、その後、熱収縮して、所要の緊密な接続を提供することを可能にするからである。同様に、位置合わせ領域52が加熱要素20から延在する方向におけるヒーター脚23と反対の方向は、頂部開放端に向かう、加熱チャンバ60の長軸と一致する上方向又は位置合わせ方向と呼ばれることがある。これらの延在距離51、52は、電気絶縁バッキングフィルム30の表面に熱収縮50を取り付ける前又は後に熱収縮50を正しい寸法に切断することによって構成されることがある。
【0056】
図5Bに示すように、温度センサ70は、可撓性のあるバッキングフィルム30と熱収縮50との間で薄膜ヒーターアセンブリ100に取り付けられる。この場合、温度センサ70は、局所温度を検出するように構成されたセンサヘッド71と、センサヘッド71からPCBに検知信号を搬送するように構成された温度センサ接続部72とを備えたサーミスタである。ヒータートラック22は、図5Aに最も明確に示されるように、加熱領域22内に空き領域22vを残すように形作られることが好ましい。センサヘッド71は、ヒータートラック21に近接するように、バッキングフィルム30と熱収縮50との間のこの空き領域22v内に配置される。熱収縮50とバッキングフィルム30との間で加熱要素20に近接するようにセンサヘッド71を配置することにより、温度センサ70は、加熱要素に近接して密封されて、加熱領域22の正確な温度測定値を提供する。これは、加熱要素20とセンサヘッド71の両方を覆うグラファイトシート40を設けることにより、更に改善される。
【0057】
図5Bに示すように、熱収縮50は、バッキングフィルム30の自由端領域32が露出されたままになるように配置されることが好ましい。この自由端領域32は、熱収縮フィルム50上に折り返されて、バッキングフィルム30及び熱収縮50の縁を密封し、温度センサ71の上に折り重なってこれを折り畳んだ部分の中に固定する。
【0058】
図5Bに示すように、一旦薄膜ヒーターアセンブリ100が組み立てられると、接着性グラファイトテープの形態をしたグラファイトフィルムの層40が薄膜ヒーターアセンブリ100の外表面に取り付けられ、その結果、グラファイトフィルムの層40は、ヒータートラック21によって画定される加熱領域22と少なくとも部分的に重なるようになる。この例では、グラファイトテープ40は、図5C(及び図1A)に示すように、バッキングフィルム30の露出した面に取り付けられる。グラファイトテープの寸法及び形状は、グラファイトテープが加熱領域22に対応するバッキングフィルム30の領域を覆うように、加熱領域22の寸法及び形状と緊密に一致する。グラファイトテープ40は温度センサの温度感知部分71の上にも延在し、その結果、加熱要素20によって生成された熱が温度センサ70に効果的に分散され、加熱要素20の温度の正確な読み取りがもたらされる。
【0059】
グラファイトテープ10は、バッキングフィルム30に対して接着剤層を有するテープ40を貼り付けることにより、取り付けられる。上述のように、この例では、グラファイトテープはバッキングフィルムの表面に貼り付けられるが、同様に、グラファイトテープを、加熱チャンバの表面に対して接着剤層44を使用して加熱チャンバ60の外表面に貼り付けてグラファイト層43を取り付けることもでき、それにより、グラファイトテープは、薄膜ヒーターアセンブリ100が加熱チャンバ60の周りに巻き付けられたときに加熱要素20と重なるようになる。同様に、その代わりに又はこれに加えて、グラファイト層40は、薄膜ヒーターアセンブリ100が加熱チャンバの周りに巻き付けられたときに、グラファイト層が加熱要素の外側になる(即ち、加熱チャンバ60から半径方向に離れる)ように、熱収縮層50の表面(加熱要素20に接している面と反対側の面)に貼り付けることができる。
【0060】
一旦グラファイト層40が、加熱要素20の加熱領域22と重なるように、薄膜ヒーターアセンブリ100に(又は代替的に加熱チャンバ60の外表面に)取り付けられると、薄膜ヒーターアセンブリは加熱チャンバ60に取り付けられる。これは、2枚の接着剤テープ55a、55bを薄膜ヒーターアセンブリ100に取り付けて、薄膜ヒーターアセンブリが、アセンブリを加熱して熱収縮60を収縮させる前に、正確な位置で加熱チャンバ60にまず取り付けられるようにすることにより、達成することができる。
【0061】
粘着テープ55a、55bは、ポリイミド接着テープ片、例えば12.7マイクロメートルのポリイミド及び12.7マイクロメートルのシリコン接着剤を有する市販の0.5インチのポリイミドテープによって提供されることがある。粘着取り付けテープ55a、55bは、図5Dに示すように、巻き付け方向の先端における熱収縮50の各縁部に沿って配置される。次いで、図5Eに示すように、薄膜ヒーターアセンブリ100は、熱収縮50の上端53を加熱チャンバ60の上端62と位置合わせすることにより、加熱チャンバ60に取り付けられることがある。位置合わせ領域の距離52が慎重に選択されていることを前提として、この位置合わせステップにより、加熱領域22及び対応するグラファイト層40を加熱チャンバ60に沿った正しい位置に配置することが可能となる。特定の消耗品は、特定の位置にエアロゾル生成物質の充填物を含むので、消耗品から蒸気を効率的に放出するようにヒーターチャンバ60の正しい部分を加熱することが重要である。
【0062】
薄膜ヒーターアセンブリ100は、最初に、接着テープ55aを使用して加熱チャンバに取り付けられる。加熱チャンバ60は、ユーザによって吸入されることになる蒸気を生成するために加熱されることになる消耗品を収容するように構成された管状の加熱チャンバ60である。加熱チャンバ60は、位置決めと、チャンバ60内に収容される消耗品への熱伝達とを補助する内部突出部を提供する1つ又は複数の窪み61を外表面に有することが好ましい。加熱チャンバ60の外周は、加熱要素がチャンバ60の周囲に1つの完全な外周ループを提供するように、加熱要素20の幅(接触脚の延在方向に直交する方向における長さ)と厳密に一致することが好ましい。他の例では、ヒーター要素20は、加熱チャンバの外周の周囲に2回以上巻き付くような大きさとされることがある、即ち、加熱要素は、加熱チャンバの外周の周囲の加熱温度にばらつきを生じさせないように、加熱チャンバの周囲に整数の外周ループを提供するような寸法とされることがある。薄膜ヒーターアセンブリ100は、温度センサヘッド71が、加熱チャンバ60の内部温度のより正確な測定値を提供するように、加熱チャンバ60の外表面の窪み61内に位置するように、位置決めされて取り付けられる。図3Cの実施形態の代替形態では、温度センサは、グラファイト層50と熱収縮50との間に配置されることもある。
【0063】
上述のように、代替の方法では、グラファイト層40は、図6に示すように、ヒーターチャンバ60に直接的に取り付けられる。特に、グラファイト層40は、加熱チャンバ60の周りに巻き付けられたときに薄膜ヒーターアセンブリ100の加熱領域22に対応する加熱チャンバ60の長さ部分に渡って配置され、その結果、グラファイト層40は、加熱領域と重なり、加熱領域22全体に渡って生成された熱を均一に拡散させるように機能するようになる。
【0064】
一旦第1の接着テープ部分55aで取り付けられると、次に、薄膜ヒーターアセンブリ100は、図2Aに示すヒーターアセンブリ10(ヒーター要素20と、バッキングフィルム30と、グラファイト層40と、熱収縮フィルム50と、サーミスタ70と、ヒーターチャンバ60とを含む)を提供するために、第2の1枚の取り付けテープ55bによって取り付けられる前に、熱収縮50の延在した取り付け部分51が加熱要素20を熱収縮50で覆うようにチャンバ60の周りに周方向に巻き付いた状態で、加熱チャンバ60の周りに巻回される。取り付け領域51の長さは加熱領域22の長さ(及び加熱チャンバ60の外周)とほぼ同じであるので、取り付け部分51は、周囲に巻き付いて加熱領域22を1回覆い、その結果、ヒーター要素は、図5E及び図6に示す取り付けられたヒーターアセンブリ10における2層の熱収縮フィルムによって絶縁される。取り付け領域51は、加熱要素20の2つ以上の追加の覆いを提供するような大きさとされることがある。例えば、取り付け領域51は、加熱チャンバ60の外周の整数倍に対応する距離だけ加熱要素を越えて延在することがある。
【0065】
図2Aから分かるように、一旦組み立てられると、温度センサ接続部72及びヒーター脚23は、PCBへの接続を容易にするために、この迅速なステップ後に位置合わせされるように配置される。次いで、取り付けられたヒーターアセンブリ10は、図2Aに示すように、加熱チャンバ60に対して熱収縮50を緊密に収縮させるように加熱される。例えば、アセンブリ10をオーブン内で約210℃で10分間加熱してフィルムを収縮させることができるが、時間及び温度は、他の種類の熱収縮部に適合させることができる。このプロセスにより、小型のオーブン内で多数のユニットを同時に熱処理することが可能となる。これは、加熱チャンバに薄膜ヒーターを封着することと、熱収縮にバッキングフィルムを接着することとの両方を同時に行うことができる、唯一の加熱ステップである。
【0066】
最後に、必須ではないが、加熱アセンブリを完成させるために、電気絶縁フィルムの最終封止層が加熱要素の外側の周りに追加されることがある。この最終絶縁層は、例えば、25マイクロメートルのポリイミド及び37マイクロメートルのシリコン接着剤を有する1インチのポリイミドテープなどの接着性ポリイミドの更なる層であり得る。電気絶縁フィルムのこの外層は、更なる絶縁層を提供し、薄膜ヒーターアセンブリ100の加熱チャンバ60への取り付けを更に確実にする。
【0067】
バッキングフィルム30、熱収縮50、及び最終絶縁層の厚さ及び/又は材料は、例えば、低熱伝導率層を加熱要素の外側に設け(すなわち、この例では、熱収縮50及び絶縁層用に)、高熱伝導率層をバッキングフィルムとして設けて、加熱チャンバへの熱伝達を高めるように選択されることがある。
【0068】
一旦電気絶縁フィルムの外側絶縁層が貼り付けられると、アセンブリ10は、再び加熱されることがある。この第2の加熱ステップにより、他の層のみならず、電気絶縁フィルムの外層の更なるガス放出も可能になる。例えば、第2の加熱段階では、加熱温度は、装置の動作温度により近い、熱収縮段階よりも高い温度に引き上げられることがある。これにより、例えば、より低温での熱収縮ステップ中には起こらなかったであろう、接着剤層の更なるガス放出が可能となる。装置の最初の使用時に加熱する前に、熱収縮を動作温度により近い温度にさらすことも有益である。
【0069】
一旦組み立てられると、グラファイト層40は、加熱要素の加熱領域22と位置合わせされるように配置され、且つ、加熱要素20と加熱チャンバ60との間か、加熱要素20がグラファイト層40と加熱チャンバ60との間に配置されるように加熱要素20の周りに、又はその両方で、配置される。グラファイトの熱伝導率のおかげで、グラファイト層は加熱要素20によって生成された熱を平面方向に迅速に拡散させて、グラファイト層40によって覆われる領域全体に渡って均一な加熱温度をもたらし、それによってホットスポットを減らし、局所過熱に起因するフィルム層の損傷の危険性を低減し、加熱チャンバ60に収容された消耗品へのより均一な熱伝達をもたらす。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6