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特許7638298キャビティを有する統合型粒子状物質センサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】キャビティを有する統合型粒子状物質センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20240101AFI20250221BHJP
【FI】
G01N15/06 D
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2022563908
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020082129
(87)【国際公開番号】W WO2021213692
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】20171192.6
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515023349
【氏名又は名称】センシリオン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Sensirion AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グートル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホッベナウ ,ルカス
(72)【発明者】
【氏名】ルーテマン,ルカス
(72)【発明者】
【氏名】プスタン,ダーヴィト
(72)【発明者】
【氏名】フンツィカー,ヴェルナー
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03225977(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0346360(US,A1)
【文献】特開2017-030252(JP,A)
【文献】特開2006-165568(JP,A)
【文献】特表2005-539373(JP,A)
【文献】特開平05-172632(JP,A)
【文献】特開2017-026633(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047547(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(4)を含む基板であって、少なくとも一部が前記半導体チップ(4)自体に形成されるキャビティ(5)を形成する基板と、
前記半導体チップ(4)の表面に統合される少なくとも1つの光検出器(3)と、
前記キャビティ(5)内に配置され、前記キャビティ(5)の第1の端部に向けて、前記キャビティ(5)の外部の粒子状物質(9)に対する検出ボリューム(8)を画定する光ビーム(7)を放出する光源(1)と、
を備え、
少なくとも1つの前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面は、前記検出ボリューム(8)に面し、
少なくとも1つの前記光検出器(3)は、前記検出ボリューム(8)内の粒子状物質(9)によって散乱した光(10)を検出するようになっている、粒子状物質センサー。
【請求項2】
前記半導体チップ(4)は、CMOS積層(24)を有し、
前記CMOS積層(24)の1つ以上の層は、前記キャビティ(5)の第1の端部に架け渡される膜(22)を形成する、請求項1に記載の粒子状物質センサー。
【請求項3】
前記キャビティ(5)の前記第1の端部に配置される光学素子(2)を備え、前記光学素子(2)は、前記光ビーム(7)を整形するように構成され、それにより、前記光ビーム(7)は、前記検出ボリューム(8)を形成する、請求項1又は2に記載の粒子状物質センサー。
【請求項4】
前記光学素子(2)が、前記第1の端部において前記キャビティ(5)の境界を定める、前記光ビーム(7)は、前記検出ボリューム(8)を形成する、請求項3に記載の粒子状物質センサー。
【請求項5】
前記光学素子は、光軸(20)を規定し、前記光軸(20)は、少なくとも1つの前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面に対して垂直である、請求項3又は4に記載の粒子状物質センサー。
【請求項6】
前記光学素子(2)は、前記光ビーム(7)を集束するように構成される、請求項3~5のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項7】
前記光学素子(2)は、少なくとも1つの前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面によって画定される平面内に配置され、及び/又は、
前記光学素子(2)は、前記少なくとも1つの光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面から1mm以下だけ突出する、請求項3~6のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項8】
少なくとも1つの前記光検出器(3)は、前記光学素子(2)から最大2mmの距離に配置される、請求項3~7のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項9】
前記光学素子(2)は、屈折レンズ(12、15、71、72、74)又は回折光学素子(13、73、75)を備える、請求項3~8のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項10】
前記光学素子(2)は、ガラスキャリア基板(23)と、前記ガラスキャリア基板(23)上に形成されるポリマーレンズ(15)とを含み、
記ガラスキャリア基板(23)は、1000μm未満の厚さを有する、請求項3~9のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項11】
前記半導体チップ(4)は、CMOS積層(24)を有し、
前記光学素子(2)は、前記CMOS積層(24)の1つ以上の層によって形成される膜(22)を有し、
光学構造体(71、72、73、74、75)が、前記膜(22)上に配置され、前記膜(22)とともに前記光学素子(2)を形成する、請求項3~10のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項12】
前記半導体チップ(4)は、CMOS積層(24)を有し、
前記光学素子(2)は、前記CMOS積層(24)の1つ以上の層によって形成される膜(22)を有し、
前記膜(22)は、前記光学素子(2)を形成するように構造化された少なくとも1つのCMOS層(76)を含む、請求項3~10のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項13】
前記光学素子(2)上のコーティングによって形成され、前記光ビーム(7)に対するアパーチャーを画定するダイヤフラム(29)を更に備える、請求項3~12のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項14】
前記粒子状物質センサーは、複数の前記光検出器(3)を備え、前記光検出器(3)は、前記キャビティ(5)の周りの異なる場所に配置される、請求項1~13のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項15】
前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面上において、前記光検出器(4)は、導電材料(18)によって分離される、請求項14に記載の粒子状物質センサー。
【請求項16】
少なくとも1つの前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面上に、光学フィルター(28)が配置され、前記光学フィルター(28)は、少なくとも1つの前記光検出器(3)を覆い、前記光学フィルター(28)は、前記光源(1)の主要な波長を含む波長域外の波長を有する光を除去するように構成される、請求項1~15のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項17】
少なくとも1つの前記光検出器(3)に電気的に接続され、前記検出ボリューム(8)内の粒子状物質(9)によって散乱した光(10)によって生じる、少なくとも1つの前記光検出器(3)からの信号を受信し、前記信号に基づいて前記粒子状物質(9)に関連する物理量を求めるようになっている制御ユニット(27)を更に備え、請求項1~16のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項18】
前記制御ユニット(27)が、前記半導体チップ(4)に統合される、請求項17に記載の粒子状物質センサー。
【請求項19】
感光性補助検出器(25)を更に備え、前記感光性補助検出器(25)は、前記半導体チップ(4)に統合され、前記光源(1)から放出され、前記検出ボリューム(8)内の粒子状物質(9)によって散乱していない光を受け取るように構成され、
前記制御ユニット(27)は、前記感光性補助検出器(25)に接続され、前記感光性補助検出器(25)の信号に基づいて前記光源(1)の光出力を求めるように構成され、
前記制御ユニット(27)は、前記粒子状物質に関連する前記物理量を求める際に、求められた前記光出力を考慮に入れるか、又は、求められた前記光出力に応じて前記光源(1)を制御するように構成される、請求項17又は18に記載の粒子状物質センサー。
【請求項20】
前記感光性補助検出器(15)が、フォトダイオードである、請求項19に記載の粒子状物質センサー。
【請求項21】
記粒子状物質センサーは、前記キャビティ(5)の前記第1の端部に配置される光学素子(2)を備え、前記光学素子(2)は、前記光ビーム(7)を整形するように構成され、前記感光性補助検出器(25)は、前記光学素子(2)に隣接して配置され、前記光学素子(2)からの迷光を測定するようになっている、請求項19に記載の粒子状物質センサー。
【請求項22】
前記光検出器(3)は、前記検出ボリューム(8)に面する第1の区画(81)と、前記検出ボリューム(8)内の粒子状物質(9)によって散乱した光(10)から遮蔽される第2の区画(82)とに区画分けされ
前記制御ユニット(27)は、前記第1の区画(81)及び前記第2の区画(82)の示差測定を実行し、それにより、少なくとも1つの前記光検出器(3)との電磁干渉のスプリアス効果を打ち消すように構成される、請求項17~21のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項23】
光遮断素子(41)を更に備え、前記光遮断素子(41)は、少なくとも1つの前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面からの粒子状物質の粒子の距離に応じて決まる、前記光検出器(3b)のうちの1つ以上の一部を、前記検出ボリューム(8)内の前記粒子によって散乱した光から選択的に遮蔽するように、前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面上に配置され、一方、1つ以上の他の光検出器(3a)は、前記光遮断素子(41)によって遮蔽されないようになっている、請求項1~22のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項24】
少なくとも1つの前記光検出器(3)に電気的に接続され、前記検出ボリューム(8)内の粒子状物質(9)によって散乱した光(10)によって生じる、少なくとも1つの前記光検出器(3)からの信号を受信し、前記信号に基づいて前記粒子状物質(9)に関連する物理量を求めるようになっている制御ユニット(27)を備え、
前記制御ユニット(27)は、前記光遮断素子(41)によって部分的に遮蔽される光検出器(3b)からの信号と、前記光遮断素子(41)によって遮蔽されない光検出器(3a)からの信号とを比較することによって、少なくとも1つの前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面からの前記粒子の前記距離の尺度を求めるように構成され、
前記制御ユニット(27)は、前記粒子状物質に関連する前記物理量を求める際に、求められた前記距離を考慮に入れるように構成される、請求項23に記載の粒子状物質センサー。
【請求項25】
前記基板は、前記半導体チップ(4)からなる、請求項1~24のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項26】
前記基板(60)は、スペーサー(61)を備え、前記半導体チップ(4)は、前記スペーサーに接合され、
前記キャビティ(5)は、前記スペーサー(61)内及び前記半導体チップ(4)内の双方に形成される、請求項1~24のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項27】
ベース基板(6)を備え、前記光源(1)は、前記ベース基板(6)上に取り付けられ、
前記キャビティ(5)が形成される前記基板は、前記ベース基板(6)上に配置され、前記キャビティ(5)の第2の端部は、前記ベース基板(6)に向かって開放しており、
前記ベース基板(6)は、前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面に対して平行な平面内に延在する、請求項1~26のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項28】
前記キャビティ(5)は、側壁(26)によって側方の境界を定められ、前記側壁(26)は、前記基板によって形成され、前記側壁(26)の少なくとも一部は、前記半導体チップ(4)によって形成される、請求項1~27のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項29】
前記キャビティ(5)は、対称軸を有し、前記キャビティ(5)は、前記対称軸の周りに回転対称性を有し、前記対称軸は、前記光検出器(3)が統合される前記半導体チップ(4)の前記表面に対して垂直である、請求項1~28のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項30】
不透明コーティング(51、52)を更に備え、前記不透明コーティングは、前記光源(1)からの光が前記キャビティ(5)の少なくとも1つの側壁(26)を通って少なくとも1つの前記光検出器(3)に達することを防止するために前記壁(26)を覆、請求項1~29のいずれか1項に記載の粒子状物質センサー。
【請求項31】
ハウジング(92)と、
前記ハウジング(92)内に配置される流れチャネル(97)と、
前記ハウジング(92)内に配置され、前記流れチャネル(97)を通して空気を移動させるように構成されるファン(99)又はヒーター(93)と、
前記流れチャネル(97)が前記検出ボリューム(8)の少なくとも一部を含むように前記ハウジング(92)内に配置される、請求項1~30のいずれか1項に記載の粒子状物質センサーと、
を備える、粒子状物質センサーモジュール。
【請求項32】
請求項1~30のいずれか1項に記載の粒子状物質センサーを使用して粒子状物質の物理量を求める方法であって、
前記光ビーム(7)を放出するように、前記光源(1)を動作させることと、
前記光ビーム(7)を横切る粒子状物質によって散乱した光を検出するように、少なくとも1つの前記光検出器(3)を動作させることと、
少なくとも1つの前記光検出器(3)からの信号を分析して、前記粒子状物質の前記物理量を示す少なくとも1つのパラメーターを得ることと、
を含む、前記方法。
【請求項33】
請求項1~30のいずれか1項に記載の粒子状物質センサーを製造する方法であって、
a)半導体チップ(4)の表面に少なくとも1つの光検出器(3)を形成する工程と、
b)キャビティ(5)の少なくとも一部を形成するように、前記表面に対して垂直な方向に沿って前記半導体チップ(4)をエッチングする工程と、
c)任意選択的に、前記半導体チップ(4)を、前記キャビティ(5)の別の部分を形成するスペーサー(61)に接合する工程と、
d)前記キャビティ(5)の第1の端部に向かって光ビーム(7)を放出するように構成される光源(1)を、前記キャビティ(5)内に配置する工程と
含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質センサー、及び粒子状物質センサーを備える粒子状物質センサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状物質(PM)とは、流体中の固体粒子及び/又は液滴のことを指す。PMは、例えば吸入されると健康リスクをもたらすおそれがあり、又は、煙霧(haze)と呼ばれる視程不良を引き起こすおそれがある。PMの一般的なカテゴリーとして、PM10及びPM2.5があり、すなわち、それぞれ直径10μm以下及び2.5μm以下の粒子である。
【0003】
従来のPMセンサーモジュールは、検出ボリューム内に光を放出する光源と、検出ボリューム内の粒子状物質によって散乱した光を検出する光検出器とを備える。従来のPMセンサーモジュールは、個別の構成要素、すなわち、レーザーダイオードを備える光源アセンブリ、光学素子、光検出器、プリント回路基板(PCB)、個別の増幅器、マイクロプロセッサ、及びハウジング等から構築される。粒子をサンプリングする空気流は、ファン又は代替的にはヒーター素子を使用して生成される。例えば、特許文献1に例が開示されている。
【0004】
そのようなPMセンサーモジュールは、巨視的スケールのものであり、すなわち、数センチメートル程度の寸法を有する。従来のPMセンサーモジュールのフォームファクター及びサイズの理由は、使用される光電子部品、すなわち、レーザーダイオード、光学素子、取付け補助具、及び光検出器が個別であるという特性に起因する。
【0005】
特許文献2は、本体部分内に互いに隣接して配置される光源と光検出器とを備えるPMセンサーを開示している。光源は、本体部分に導入された空気に向かって光を放出する。光源に配置される光学レンズが放出光を集束する。光検出器によって散乱光を検出する。
【0006】
特許文献3は、粒子状物質を検知するように構成されるモバイル装置を開示している。モバイル装置内のセンサーが、角度をなして配置される発光器及び受光器を備える。
【0007】
特許文献4は、粒子状物質の濃度を測定するモバイル装置を開示している。モバイル装置のフラッシュによって光を放出する。集光レンズによって後方散乱光を集光し、それを光検出器によってフィルタリングし、検出する。
【0008】
本発明の実施形態によって解決すべき課題は、特に信頼性のある高品質な測定値が得られる、小型のPMセンサーを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2018/100209号
【文献】米国特許出願公開第2015/0153275号
【文献】米国特許出願公開第2016/0025628号
【文献】中国特許第106483051号
【発明の概要】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の粒子状物質(PM)センサーによって解決される。有利な実施形態は、従属請求項において得られる。
【0011】
したがって、
半導体チップを含み、少なくとも一部が半導体チップ内に形成されるキャビティ(5)を形成する基板と、
半導体チップの表面に統合される少なくとも1つの光検出器と、
キャビティ内に配置され、キャビティの一端部(以下で「第1の」端部と呼ぶ)に向けて、キャビティの外部の粒子状物質に対する検出ボリュームを画定する光ビームを放出する光源と、
を備え、
少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面は、検出ボリュームに面し、
少なくとも1つの光検出器は、検出ボリューム内の粒子状物質によって散乱した光を検出するようになっている、粒子状物質センサーが提供される。
【0012】
少なくとも1つの光検出器が統合されるものと全く同じ半導体チップ内に少なくとも部分的に形成されるキャビティを設け、キャビティ内に光源を配置することによって、非常に小型のPMセンサーを得ることができる。
【0013】
検出ボリュームは、光ビームのうち、光ビーム内のPMによって散乱した光を少なくとも1つの光検出器によって検出することを可能にするように光の強度が十分高い部分を含む。特に、検出ボリュームは、このボリューム内に存在するPMが、PMセンサーにおけるノイズレベルを超えるクリアな(すなわち、統計的に有意な)信号をもたらす体積として定義することができる。したがって、検出ボリュームは、PMのサイズ、光源の光出力、光ビームの幾何形状等の様々な要因に応じて決まる。
【0014】
いくつかの実施形態において、半導体チップは、CMOS積層を有する。また、CMOS積層の1つ以上の層は、キャビティの第1の端部に架け渡される膜を形成することができる。膜の厚さは、20μm未満、特に10μm未満とすることができる。こうして、膜は、光源を保護することができる。特に、キャビティは、第1の端部において膜によって完全に閉鎖し、キャビティを第1の端部において流体密にすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、粒子状物質センサーは、第1の端部においてキャビティの境界を定める光学素子を備えることができ、光学素子は、光ビームを整形し、検出ボリュームを形成するように構成される。他の実施形態において、光学素子は、省くことができる。例えば、光源自体が、光ビームがキャビティの外部に検出ボリュームを形成するのに十分な強度を有するように、十分にコリメート又は集束された光ビームを生成するように構成することができる。いくつかの実施形態において、光学素子は、CMOS積層の1つ以上の層によって形成される膜を含む。他の実施形態において、キャビティは第1の端部において開放しており、光学素子は、キャビティの開放した第1の端部に配置される。
【0016】
キャビティは、第1の端部とは反対側の第2の端部において開放していることが好ましい。光源は、キャビティの第2の端部においてキャビティ内に配置されることが好ましい。
【0017】
いくつかの実施形態において、基板は、全体的に半導体チップによって形成することができ、すなわち、基板は、半導体チップのみからなることができる。他の実施形態において、以下で更に説明するように、基板は、半導体チップが接合されるスペーサーを備えることができる。
【0018】
基板が半導体チップのみからなる場合、かつ光学素子が存在する場合、粒子状物質センサーは、以下の特徴部、すなわち、
キャビティを形成する半導体チップ、
半導体チップの表面に統合される少なくとも1つの光検出器、
キャビティ内に配置され、光ビームを放出するようになっている光源、
一端部(「第1の」端部)においてキャビティの境界を定める光学素子、
を備えることができ、
光源は、光学素子上に光ビームを向けるように配置され、
光学素子は、光ビームがキャビティの外部の粒子状物質に対する検出ボリュームを形成するように、光ビームを整形するように構成され、
少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面は、検出ボリュームに面し、
少なくとも1つの光検出器は、検出ボリューム内の粒子状物質によって散乱した光を検出するようになっている。
【0019】
PMセンサーの有利な実施形態を以下に説明する。PMセンサーは、通常、以下の要素を含む。
-キャビティを形成する基板:基板は、半導体チップを含むか又は半導体チップからなり、有利には、半導体チップは、相補型金属酸化物半導体(CMOS)積層を含む。したがって、PMセンサー機能は、半導体チップに統合されることが好ましい。キャビティは、基板によって形成される側壁を有する。各側壁の少なくとも一部は、半導体チップによって形成される。キャビティは、例えば、辺の長さが0.3mm~1mmの範囲の直方体の形状を本質的に有することができ、又は、例えば、直径が0.3mm~1mmの範囲の円筒の形状を有することができる。他の実施形態において、キャビティは、円錐台又は角錐台の形状を有することができる。より一般的には、キャビティの各側壁は、光軸又はキャビティの対称軸に対して傾斜する少なくとも1つの傾斜部分を有することができる。キャビティの少なくとも一部は、例えば、好ましくは基板の底側から半導体チップをエッチングするか、又は代替的な処理技法によって製造することができる。いくつかの実施形態において、キャビティは、半導体チップの厚さ全体に達することができ、一方、他の実施形態において、キャビティは、半導体チップの厚さ全体には達せず、半導体チップの残りの部分によって、通常は、CMOS積層の1つ以上の層によって形成される膜によって境界を定められる凹部の形状をとることができる。
-光ビームを放出するようになっている光源:光源は、キャビティ内に配置される。有利な実施形態において、光源は、レーザーダイオード、例えば、垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)である。「光」という用語は、可視光に限定されず、むしろ少なくとも紫外光及び赤外光も含むように意図される。概して、放出光の波長は、500nm~1100nm、特に640nm~950nmの範囲である。光源は、キャビティの第1の端部に向かって光ビームを放出する。光源は、キャビティの第2の端部に配置することができる。
-任意選択的に、第1の端部においてキャビティの境界を定める光学素子:通常、光学素子は、光源とは反対側のキャビティの端部に配置される。光源は、キャビティの少なくとも一部を通して光ビームを光学素子に向けるようにキャビティ内に配置される。光学素子は、光ビームを整形し、それにより、検出ボリュームを形成するようになっている。有利な実施形態において、以下に更に詳細に説明するように、光学素子は光ビームを集束する。
-基板に統合される少なくとも1つの光検出器:少なくとも1つの光検出器が、半導体チップの表面に統合される。少なくとも1つの光検出器は、少なくとも1つのフォトダイオードを含むことができる。少なくとも1つの光検出器は、CMOSプロセスによって半導体チップ内に形成することができる。少なくとも1つの光検出器は、検出ボリュームに面し、検出ボリューム内のPMによって散乱した光を検出するようになっている。特に、少なくとも1つの光検出器は、光学素子から最大2mmの距離(縁部から縁部までを測定)に配置され、より詳細には、光学素子に隣接して配置される。さらに、以下に更に詳述するように、光学素子は、+1mm/-0.1mmの公差内で、少なくとも1つの光検出器によって画定される平面内に配置され、より正確には、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面によって画定される平面内に配置されることが有利である。
【0020】
そのようなPMセンサーは、小さなフォームファクター、すなわち、7mm×7mm×2mm未満、特に5mm×5mm×1.6mm未満で構築することができる。また、PMセンサーは、PMセンサーモジュール、又はスマートフォン若しくはモノのインターネット(IoT)デバイス等の携帯電子デバイスに統合することができる。さらに、そのようなPMセンサーは、電流の消費が少ないという利点を有し、その点でも、バッテリ駆動デバイスに統合するのに十分適したものとなる。
【0021】
いくつかの有利な実施形態において、PMセンサーは、以下を更に備える。
-少なくとも1つの光検出器に電気的に接続される制御ユニット:制御ユニットは、検出ボリューム内のPMによって散乱した光によって生じる少なくとも1つの光検出器からの信号を受け取るようになっている。さらに、制御ユニットは、PMに関連する物理量に関して信号を評価する、すなわち、粒子状物質に関連する物理量を信号に基づいて求めるようになっている。特に、物理量は、PMの個数濃度、サイズ、及びサイズ分布のうちの少なくとも1つを含むことができる。制御ユニットの少なくとも一部は、半導体チップに統合することができることが有利である。特に、制御ユニットの少なくとも一部は、CMOS積層内に形成することができる。より詳細には、制御ユニットの少なくとも一部は、CMOS積層内に形成されるASICとすることができる。制御ユニットは、半導体チップにおいて完全に実装することができるか、又は、制御ユニットの一部を半導体チップとは別個に、例えば、別個の信号プロセッサ若しくは計算ユニットにおいて実装することができる。
【0022】
更なる有利な技術的特徴が以下の説明から明らかになる。当業者であれば、本発明の実施形態を形成するために、これらの特徴を様々な方法で組み合わせることができることが明白である。
【0023】
光源
検出ボリューム内のPMによって散乱し、少なくとも1つの光検出器によって受け取られる光の量は、特に、光源の光出力に応じて決まる。したがって、光出力を定量化することが重要である。以下の実施形態は、光源がVCSELを含む場合に特に有利である。なぜなら、正確な光出力は飛行時間(TOF)測定のような用途には重要でないことから、VCSELの光出力は通常は制御されないためである。
【0024】
光源の光出力を定量化するために、PMセンサーは、光源から放出され、PMによって散乱していない光を受け取るように配置される感光性補助検出器を備えることができる。補助検出器は、半導体チップに統合することができる。補助検出器は、PMによって散乱した光を検出するのに使用される少なくとも1つの光検出器と同じ技術によって製造することができる。補助検出器は、特にフォトダイオード、特に、CMOSプロセスによって製造されるフォトダイオードとすることができる。補助検出器は、光検出器平面において、PMによって散乱した光を検出するのに使用される光検出器の総表面積よりも著しく小さい表面積、例えば、光検出器の表面積の1%以下の表面積を有し、それにより、補助検出器からの信号がPMによって散乱した光によって顕著な影響を受けないことを確実にし、環境光に対する感度を最小限に抑えることができる。
【0025】
補助検出器が、CMOS積層を有する半導体チップに統合される場合、光源と補助検出器との間に少なくとも3つの異なる光路が可能である。第1の光路は、半導体チップを通って延在する。光はシリコン等の半導体によって強力に減衰され得るが、光の侵入深さは、通常、無視できるほど小さくはない。補助検出器が半導体チップにおいてキャビティの壁の十分近く(例えば、200μm以下の側方距離)に配置される場合、十分な量の光が半導体チップを通って補助検出器に達することができる。第2の光路は、導光体として機能することができるCMOS積層を通って延在する。このようにして、迷光は、補助検出器へと横方向に誘導することができる。第3の光路は、存在する場合は光学素子を通って延在する。このようにして、光学素子内又はその表面において散乱した迷光は、補助検出器に達することができる。設計によっては、これらの光路のうちの1つ以上を有効にしてもよい。
【0026】
したがって、第1の実施形態において、補助検出器、特にフォトダイオードは、光学素子に隣接して配置される。このようにして、補助検出器は、光学素子からの迷光を受け取ることができる。補助検出器は、キャビティ内に、例えば、光学素子に面するキャビティの壁に配置することができる。補助検出器を半導体チップに統合することによって、例えば、感光性補助検出器が通常のCMOSプロセス中に形成されることから、製造プロセスは簡略化される。
【0027】
補助検出器は、光学素子からの迷光、すなわち、検出ボリュームに向かって光学素子を出ず、他の方向、例えば逆方向に反射又は散乱する光を測定するようになっている。迷光の量は、光源の光出力を示し、特に光源の光出力に比例することがわかっている。したがって、制御ユニットは、補助検出器に更に電気的に接続され、迷光から光源の光出力を求めるとともに、求められた光出力に応じてPMに関連する物理量を評価するようになっている。代替的又は付加的に、制御ユニットは、求められた光出力に応じて光源を制御するようになっている。
【0028】
第2の実施形態において、補助検出器、特にフォトダイオードは、キャビティ内に又はキャビティに隣接して配置され、光源の自然放出を測定するようになっている。このことは、光源がVCSELである場合に特に重要であり得る。VCSELは、1つ以上の側壁、すなわち、VCSELの主放出表面以外の1つ以上の壁において光の自然放出を呈することがわかっている。さらに、自然放出の量は、ここでも、光源の光出力を示し、特に光源の光出力に比例することがわかっている。したがって、制御ユニットは、フォトダイオードに更に電気的に接続され、測定された自然放出から光源の光出力を求めるとともに、求められた光出力に応じてPMに関連する物理量を評価するようになっている。代替的又は付加的に、制御ユニットは、求められた光出力に応じて光源を制御するようになっている。ここでも、フォトダイオードは、基板に統合されることが有利である。
【0029】
記載の実施形態は、特に、例えばVCSELのように、測定しなければ光源の光出力が未知である場合に、PMに関連する物理量をより正確に測定することを容易にする。
【0030】
光学素子
概して、記載のPMセンサーは、上記で定義したようにPMカウント数が検出ボリュームに正比例することから、大きな検出ボリュームに対して最適化される。上記で説明したように、PM粒子は、少なくとも1つの光検出器によって検出される散乱光からの信号がノイズレベルを超える、例えば暗電流ノイズとなるように、少なくとも1つの光検出器の方向に十分な散乱光を発生させる必要がある。この条件が満たされる体積を検出ボリュームと呼ぶ。PMによって散乱する光は、ミー理論によっておおよそ説明することができる。検出ボリュームの最適化を説明するために、更なる概算が役立ち得る。検出ボリュームは、特に、点源によって放出された又は粒子によって散乱した光の拡散等の幾何学的作用によって制限されることが明白である。この拡散により、光の強度は、出射する球面波の表面の増大に対応して、点源又は散乱粒子からの距離dに伴って、1/dのように減少する。これは、PMセンサー全般、特に光学素子の設計に影響を与える。
【0031】
光学素子は、概して光軸を規定する。光軸は、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面に対して垂直であることが好ましい。有利な実施形態において、光学素子は、例えば、焦点又は集束領域において光ビームを集束する。したがって、光ビームの強度は、円錐状光ビームの表面の減少に対応して、光軸に沿って光学素子から焦点までの距離Iに伴って、Iのように増大する。検出ボリューム内で光の強度が増大するこの作用は、上述したようなPM粒子によって散乱した光の拡散作用に反作用し、或る程度、均衡することを見て取ることができる。このようにして、検出ボリュームは、所与の光源及び所与の光検出器に対して最大化される。
【0032】
したがって、特に、検出ボリュームは、光学素子から少なくとも光ビームの焦点までの範囲である。光学素子と焦点との間の距離Iは、少なくとも1mmとすることができる。通常、最適な焦点距離は、粒子散乱光をノイズに対して分解する少なくとも1つの光検出器の閾値、及び光源の光出力、及び光学素子の開口数に応じて決まる。PM粒子のサイズによっては、検出ボリュームは、焦点を越えて延在する場合もあり、例えば、大きな粒子の場合、Iの1.2倍又は1.5倍となり得る。このようにして、PMセンサーは、光学素子から少なくとも1.5mmの範囲のPMを検出するようになっている。
【0033】
光学素子は、集束の代わりに、光ビームをコリメートする、すなわち、光ビーム内の異なる光線がキャビティの外部で本質的に平行になるように光ビームを整形するようになっていることができる。この場合、光強度は、散乱及び減衰がないと仮定すると、光ビームに沿って理論上は一定を保つ。また、集束光学素子の代わりにコリメート光学素子を伴うそのような構成により、例えば、光学素子から最大3cmという大きな検出ボリュームを得ることができる。
【0034】
再び、検出ボリュームの最大サイズの観点から、光学素子は、少なくとも1つの光検出器と同じ平面(すなわち、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面と同じ平面)に位置するか、又は、上述したようにごく僅か上方若しくは下方に位置することが有利である。したがって、光学素子は、1つの実施形態において、少なくとも1つの光検出器の平面から突出することができ、又は、別の実施形態において、ごく僅かに、例えば、最大0.6mmだけ突出することができる。また、光ビームに対して垂直な光学素子の厚さは小さく、すなわち、2mm未満、特に1mm未満であることが有利である。このようにして、光学素子による、光学素子付近のPM粒子によって散乱した光からの少なくとも1つの光検出器のシャドウイングを防止することができる。換言すれば、検出ボリュームは、光学素子に向かって、又は最適には光学素子に至るまで増大することができる。
【0035】
同時に、キャビティの高さ、すなわち光源と光学素子との間の距離は、少なくとも0.25mm、特に少なくとも0.45mmであることが有利である。これにより、PMセンサーは、最適な寸法からの僅かな偏差等の製造誤差に対してよりロバストとなる。シャドウイングに関する上記の検討事項とともに、光学素子の厚さは有利には小さくすべきであるという結論が導かれる。
【0036】
いくつかの実施形態において、基板は、例えば、ガラス、半導体、セラミック等から作製されるキャリアとすることができるベース基板の上に配置される。そのような実施形態において、キャビティは、一方の(第1の)端部において光学素子によって境界を定めることができ、他方の(第2の)端部においてベース基板によって境界を定めることができる。光源は、ベース基板上に配置することができ、光学素子の方向に光を放出することができる。
【0037】
通常、光学素子は、屈折光学素子、特に、レンズ、又は回折光学素子を形成することができる。屈折光学素子は、屈折によって光ビームを整形し、回折光学素子は、回折によって光ビームを整形する。これらの原理は組み合わせることもできる。いくつかの実施形態において、光学素子は、インプリントポリマーレンズ又は射出成形レンズを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、光学素子は、ガラスキャリア基板と、光学構造体、特に、ガラスキャリア基板上に形成されるポリマーレンズとを備えることができる。光学構造体は、例えば、スタンプによってUV硬化性ポリマーにインプリントし、その後、UV硬化することによって形成することができるか、又はフォトリソグラフィーによって形成することができる。
【0039】
インプリントレンズを製造するプロセスにおいて、ポリマーレンズをガラスキャリア基板上に形成する。特に、複数のポリマーレンズをガラスキャリア基板上に形成することができる。次いで、ガラスキャリア基板をダイシングし、単一のレンズユニットを形成する。その後、ポリマーレンズをガラスキャリア基板とともにキャビティ上に配置する。
【0040】
一実施形態において、ガラスキャリア基板は、1000μm未満、例えば800μm、特に750μm未満又は600μm未満の厚さを有する。
【0041】
他の実施形態において、光学素子は、CMOS積層の1つ以上の層によって形成される膜を含む。光学構造体は、光学素子を形成する膜上に配置することができる。付加的又は代替的に、膜自体が、光学素子を形成するように構造化された少なくとも1つのCMOS層を有することができる。したがって、膜は、回折光学素子(DOE)として機能する。特に、膜は、光ビームに対して透明なメタマテリアルとして機能することができ、メタマテリアルは、光ビームを効果的に整形する構造体を有する。そのようなDOEを生成するために、膜は、例えば薄層の形態の基板から製造され、例えば、基板の前側にキャビティを覆う膜を残すように、底側からほとんど基板の厚さ全体にわたって基板をエッチングすることによって形成される。光ビームを整形する構造体は、CMOS積層の処理中に事前の工程において製造することができ、又は、後続の工程において、例として、例えばエッチングによって膜を構造化することにより、若しくは膜に構造体を適用することにより製造することができる。膜又はメタマテリアルの厚さは、20μm未満、特に10μm未満であることが有利である。
【0042】
通常、上記の実施形態において提案したような薄い光学素子は、散乱光のシャドウイングを最小限にし、したがって、大きな検出ボリュームを提供することを可能にする。換言すれば、薄い光学素子は、シャドウイングを防止しながら、光学素子と少なくとも1つの光検出器との間に必要な距離を最小限にすることを容易にする。また、薄い光学素子は、PMセンサーの全体のフォームファクターを小さくすることを容易にする。
【0043】
光学素子に関連する別の態様は、所望の光ビーム以外の方向に、例えば側方に、特に少なくとも1つの光検出器に向かって光学素子を出る迷光に関する。そのような迷光が少なくとも1つの光検出器に達した場合、ノイズレベルが有意に増大し、それにより、PMセンサーの信号対ノイズ比が減少し、したがって、検出ボリュームが効果的に減少する。
【0044】
光学素子からの、特に少なくとも1つの光検出器に向かう方向の迷光を防止するために、PMセンサーは、光学素子と少なくとも1つの光検出器との間に光バリアを有することが有利である。
【0045】
いくつかの実施形態において、光バリアは、少なくとも1つの光検出器に面する光学素子の側壁の黒色化部又は銀色化部を含む。特に、黒色化部又は銀色化部は、キャリアガラス層のみと反応し、上述したポリマーレンズとは反応しない選択性コーティングを含むことができる。主な例は、既知の硝酸銀プロセスによってミラーリング層を適用することである。「銀色化部」という用語は、光バリアとして機能する反射コーティングとして理解されるが、必ずしも銀からなるわけではない。光の通過を妨げる他の材料を使用してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、光バリアは、光学素子上のコーティングによって形成されるダイヤフラムを含み、ダイヤフラムは、光ビームに対するアパーチャーを画定する。ダイヤフラムは、例えば、ガラスキャリア基板上のクロムコーティングによって形成することができる。特に、ガラスキャリア基板上のインプリントポリマーレンズの場合、アパーチャーを有するダイヤフラムは、ガラスキャリア基板の頂側又は底側のうちの少なくとも一方に配置することができることが有利である。
【0047】
そのような光バリアにより、迷光が少なくとも1つの光検出器に達することを遮断することが可能になる。同時に、光ビームは、妨げられることなく光学ビームを通過する。また、キャビティに向かって光学素子を出る迷光は、光源の光出力を定量化する上述の方法が、そのような実施形態とともに依然として実現可能であるように、大きく影響を受けない状態に保つことができる。
【0048】
本発明は、光学素子がPMセンサーに統合されるか否かにかかわらず、本明細書に記載の光バリアを有する光学素子も提供する。
【0049】
光検出器
1つ以上の光検出器に関連する以下の開示は、PMセンサーとの組合せで開示されるものとみなされるが、同様に、そのようなPMセンサーの適用外、すなわち、PMセンサーとは独立して、むしろ、半導体チップの上にCMOSメタライゼーション及び誘電層を含むことができる、半導体チップ内に統合される光検出器を含む光検出器デバイスとして開示されるものとみなされる。
【0050】
少なくとも1つの光検出器は、任意のタイプの光検出器とすることができるが、シリコンベースの光検出器であることが有利である。そのような光検出器は、好ましくは、好ましいシリコン基板に統合される電子回路部に代表される制御ユニットと同じプロセス工程、例えば、CMOSプロセス工程において製造することができる。そのような光検出器は、他の半導体光検出器よりも製造中の取扱いが容易であり、低コストである。したがって、そのような光検出器は、例えばIoTデバイス向けに多数のPMセンサーを製造することに十分適している。
【0051】
有利な実施形態において、粒子状物質センサーは、半導体チップの同じ表面に統合される複数の光検出器を備える。光検出器は、アレイ状に配置することができ、すなわち、複数の光検出器を規則的パターンに配置することができる。このことは、少なくとも1つの光検出器が広い領域をカバーすると同時に、キャビティの第1の端部まで、特に、存在する場合は光学素子までの距離を最小限に抑えることが所望されることから、有用である。光検出器は、キャビティ又は光学素子の周りの異なる場所に配置することができ、好ましくはキャビティ又は光学素子の直径方向に対向する両側に、より好ましくは、キャビティ又は光学素子の周囲に沿った複数の場所にわたって分散して配置することができる。特に、光検出器が1つ以上のアレイにして配置される場合、単数又は複数のアレイを、キャビティ又は光学素子の周りに分散させることができる。一例として、4つの光検出器を光学素子と同じ平面に分散させることができる。
【0052】
各光検出器は、ピクセルを形成することができる。光検出器ピクセルは、1×1mm未満、好ましくは0.5×0.5mm未満、更により好ましくは0.3×0.3mm未満の平面寸法をそれぞれ有することが好ましい。同じ平方面積が、円形状のピクセル等の正方形でない形状のピクセルの場合にも適用される。
【0053】
このようにして、検出ボリューム内のPMによって散乱し、光検出器に当たる光の収量が最大化される。
【0054】
ここでも、上記の幾何学的な検討事項が適用される。少なくとも1つの光検出器は、キャビティ又は光学素子に可能な限り近付けるものとすることが有利である。このようにして、検出ボリューム内の散乱粒子から少なくとも1つの光検出器までの光路長が最小となり、したがって、信号対ノイズ比が最大となる。
【0055】
任意選択的に、PMセンサーは、少なくとも1つの光検出器上に光学フィルターを備える。これは、光学フィルターが、少なくとも1つの光検出器の基板とは反対側の表面を覆うことを意味する。光学フィルターは、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面上に配置することができる。光学フィルターは、光源の主要な波長域外の光及び放射線を除外することが有利である。このようにして、スプリアス光又は放射線発生が少なくとも1つの光検出器に達しないことから、バックグラウンド除去が達成される。光学フィルターは、異なる屈折率を有し、所望の波長域外の相殺的干渉を引き起こす複数の層を有する干渉フィルターとすることができる。
【0056】
有利な実施形態において、光検出器は、例えば、格子の形状を有する導電材料によって分離され、ここでは、光検出器が格子の空所に、例えば、既に上述したようにタイル又はピクセルの形態で配置される。特に、光検出器は、基板のメタライゼーションによって分離することができる。このようにして、導電材料の製造は、半導体チップの通常の処理に統合することができ、CMOS積層の最上部のメタライゼーションは、このメタライゼーション、特にその区画の境界が、光検出器を分離する導電材料として機能するように製造される。光検出器間のそのような導電材料は、接地することができ、すなわち、ファラデーケージとして機能し、測定体積に向かって露出させることができる。導電材料の接地を可能にするために、導電材料は、センサーデバイスの接地コネクタに接続することができる。特に、導電材料は、光検出器を、例えば、PMセンサーの周囲環境にある他の電子デバイスとの電磁干渉から保護するようになっている。したがって、ピクセル寸法の上記範囲は、メタライゼーション間の距離を規定し、電磁干渉からの遮蔽を促進する。
【0057】
電磁干渉を更に低減するために、少なくとも1つの光検出器は、検出ボリュームに面する第1の区画と、検出ボリューム内のPMによって散乱した光から遮蔽される第2の区画とに区画分けされることが有利である。例えば、第2の区画内の少なくとも1つの光検出器は、少なくとも光源の主要な波長を含む波長範囲において不透明である不透明層によって覆うことができる。不透明層は、双方の区画が同じレベルの電磁干渉にさらされることを確実にするように、電気的に絶縁することが好ましい。例えば、不透明層は、インクジェット印刷によって形成することができる。2つの別個の区画は、望ましくない電磁干渉のみに起因し、検出ボリューム内のPMによって散乱した光に起因しない、光検出器における信号を検出し、打ち消すのに使用することができる。このために、制御ユニットは、第1の区画及び第2の区画の示差測定を実行するようになっている。それにより、特に、少なくとも1つの光検出器の第1の区画及び第2の区画との電磁干渉のスプリアス効果が打ち消される。
【0058】
更なる態様
既に上述したように、基板は、スペーサーを備えることができる。半導体チップは、特に、半導体チップの、光検出器が統合される表面に面しない裏面においてスペーサーに接合することができる。キャビティは、スペーサー内及び半導体チップ内の双方に形成することができる。スペーサーを使用することにより、光源と光学素子との間の距離を増大させることができる。光源と光学素子との間の距離を増大させることにより、焦点距離がより大きい光学素子を使用することが可能になる。これにより、特に、検出ボリュームのサイズ及び製造公差に対する感度にいくつかの有益な効果をもたらすことができる。
【0059】
既に述べたように、PMセンサーは、ベース基板を備えることができる。光源は、ベース基板上に取り付けることができる。基板は、光源がキャビティ内に配置されるように、ベース基板上に配置することもできる。基板が半導体チップからなる場合、半導体チップは、ベース基板に直接接続することができる。基板がスペーサーを備える場合、スペーサーは、ベース基板と半導体チップとの間に配置することができる。ベース基板は、光検出器が統合される半導体チップの表面に対して平行な平面内に延在することが好ましい。ベース基板は、ランドグリッドアレイを形成する又は含むことができる。
【0060】
光源からキャビティの側壁を通して少なくとも1つの光検出器に達する光の量を低減するために、不透明コーティングをキャビティの側壁に施すことができる。同様に、環境光の影響を低減するために、基板又は半導体チップの、少なくとも1つの光検出器が統合される表面に面しない裏面に不透明コーティングを施すことができる。基板が半導体チップ及びスペーサーを備える場合、不透明コーティングは、スペーサーの裏側、半導体チップの裏側、又はその双方に施すことができる。不透明コーティングは、メタライゼーション、及び/又はインクジェットプロセスによって施されるコーティングを含むことができる。
【0061】
キャビティは、対称軸を有することができる。特に、キャビティは、対称軸の周りに離散的又は連続的な回転対称性を有することができる。対称軸は、光検出器が統合される半導体チップの表面に対して垂直であることが好ましい。対称軸は、光学素子によって規定される光軸に対して平行であることが好ましい。対称軸は、光軸と一致することができる。
【0062】
PMセンサーは、光遮断素子を更に備えることができ、光遮断素子は、光検出器が統合される半導体チップの表面上に配置され、光遮断素子は、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面からの粒子状物質の粒子の距離に応じて決まる、光検出器のうちの1つ以上の一部を、検出ボリューム内の粒子によって散乱した光から選択的に遮蔽し、一方、1つ以上の他の光検出器は、光遮断素子によって遮蔽されないようになっている。光遮断素子は、光学素子の非対称拡張部によって形成することができる。制御ユニットは、光遮断素子によって部分的に遮蔽される光検出器からの信号と、光遮断素子によって遮蔽されない光検出器からの信号とを比較することによって、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面からの粒子の距離の尺度を求めるように構成することができる。制御ユニットは、粒子状物質に関連する物理量を求める際に、求められた距離を考慮に入れるように更に構成することができる。特に、PMのサイズパラメーターは、上記距離を考慮に入れることによってより信頼性をもって求めることができる。
【0063】
基板を機械的に保護するために、PMセンサーは、基板の側方を包囲するエンクロージャーを備えることができ、エンクロージャーは、成形材料から作製される。
【0064】
本発明の更なる態様によれば、PMセンサーモジュールが、ハウジングと、ハウジング内に配置される流れチャネルとを備える。さらに、PMセンサーモジュールは、ハウジング内に配置され、流れチャネルを通して空気を移動させるようになっているファン又はヒーターと、上記の実施形態のうちのいずれか又は下記の実施形態のうちの1つに記載されるPMセンサーとを備える。PMセンサーは、流れチャネルの一部が検出ボリュームと一致するようにハウジング内に配置される。
【0065】
別の態様によれば、本発明は、本明細書に記載の粒子状物質センサーを使用して粒子状物質の物理量を求める方法を提供する。本方法は、
光ビームを放出するように、光源を動作させることと、
光ビームを横切る粒子状物質によって散乱した光を検出するように、少なくとも1つの光検出器を動作させることと、
少なくとも1つの光検出器からの信号を分析して、粒子状物質の物理量を示す少なくとも1つのパラメーターを求めることと、
を含む。
【0066】
少なくとも1つのパラメーターを求めることは、上記に説明したように、光源の光出力を求めること、及び/又は、少なくとも1つの光検出器が統合される半導体チップの表面からの粒子の距離を求めること、及び/又は、遮蔽される区画及び遮蔽されない区画からの信号の示差測定を行うことを含むことができる。
【0067】
別の態様によれば、本発明は、本明細書に記載の粒子状物質センサーを製造する方法であって、
a)半導体チップの表面に少なくとも1つの光検出器を形成する工程と、
b)キャビティの少なくとも一部を形成するように、上記表面に対して垂直な方向に沿って半導体チップをエッチングする工程と、
c)任意選択的に、半導体チップを、キャビティの別の部分を形成するスペーサーに接合する工程と、
d)キャビティの第1の端部に向かって光ビームを放出するように構成される光源を、キャビティ内に配置する工程と、
e)任意選択的に、第1の端部においてキャビティの境界を定め、光ビームを整形するように構成される光学素子を、半導体チップ上に設ける工程と、
を含む、方法を提供する。
【0068】
工程b)は、通常、工程a)の後に行われるが、工程a)の前に行うこともできる。工程c)は、存在する場合、通常、工程a)及びb)の後に行われる。工程d)は、通常、工程a)及びb)の後に行われ、存在する場合は工程c)の後に行われる。工程e)は、DOEが、CMOS積層の層によって形成される膜に統合される場合、工程a)及びb)と同時に行うことができ、又は、工程b)~d)のいずれかの後に行うことができる。
【0069】
本方法は、更なる工程、例えば、本明細書に記載の半導体チップにおける制御ユニット、すなわち、ASICの少なくとも一部を形成する工程と、本明細書に記載の半導体チップ上に光学フィルターを配置する工程と、キャビティ壁及び/又は本明細書に記載の半導体チップ及び/又はスペーサーの裏側にコーティングを施す工程と、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって光学素子を形成する工程と、ベース基板上に光源及び基板を配置する工程と、ASICとベース基板との間及び/又は光源とベース基板との間にワイヤボンドを形成する工程と、成形材料から作製されるエンクロージャー内に基板を包囲する工程と、本明細書に記載のPMセンサーモジュール内にPMセンサーを統合する工程とを含むことができる。
【0070】
他の有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明において列挙される。
【0071】
以下の詳細な説明から、本発明がよりよく理解され、上述した以外の対象物が明らかになるであろう。そのような説明は、添付図面を参照して行う。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図2図2は、図1のPMセンサーの斜視図である。
図3図3は、図1のPMセンサーの一態様を示す図である。
図4図4は、図1のPMセンサーの一態様を示す図である。
図5図5は、図1のPMセンサーの一態様を示す図である。
図6図6は、図1のPMセンサーの一態様を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る異なる光学素子のうちの1つを備えるPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る異なる光学素子のうちの1つを備えるPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る異なる光学素子のうちの1つを備えるPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図10図10は、本発明の別の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図11A図11Aは、PMセンサーを図1図10よりも詳細に示す、本発明の一実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図11B図11Bは、図11AのPMセンサーの機能概略図である。
図12】本発明の更に別の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図13A図13Aは、図12に係るPMセンサーの信号処理を示す概略図である。
図13B図13Bは、図12に係るPMセンサーの信号処理を示す概略図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図18図18は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図19図19は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図20図20は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図21図21は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図22図22は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図23図23は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図24図24は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図25図25は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図26図26は、本発明の実施形態に係るPMセンサーを通る長手方向概略断面図である。
図27図27は、光検出器の2つの区画を有するPMセンサーの斜視図である。
図28図28は、第1の実施形態に係るセンサーモジュールを通る長手方向概略断面図である。
図29図29は、第2の実施形態に係るセンサーモジュールを通る長手方向概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、「特に(in particular)」、「好ましくは(preferably)」、及び「任意選択的に(optionally)」という用語は、対応する対象物が任意選択のものであることを表現するように理解されたい。
【0074】
PMセンサーの全体構成(図1及び図2
図1は、一実施形態に係るPMセンサーを通る概略的な断面を示しており、図2は、PMセンサーの斜視図を示している。ベース基板6の上で、本例では半導体チップ4によって形成される基板内に、キャビティ5が形成される。代替的に、ベース基板6も、半導体チップ4の一部とすることができる。キャビティは、基板によって形成される側壁26によって境界を定められる。キャビティ5は、基板の底側(裏側)から形成されることが好ましく、したがって、破線で示されているように傾斜した側壁も示すことができる。光源1が、キャビティ5内の底端部、すなわち、ベース基板6に面する端部に配置される。光源1の一例として、レーザーダイオード、特に、垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)がある。キャビティ5の上端部、すなわち、底端部とは反対側の端部に、任意選択の光学素子2が配置され、したがって、キャビティ5を閉鎖している。光学素子2は、光軸20を規定する。さらに、光検出器3、例えばフォトダイオードが、光学素子2の2つ以上の側部において半導体チップ4に統合される。
【0075】
図1に示されているように、光検出器3は、ベース基板6に面しない半導体チップ4の上面に統合される。この表面は、以下で「光検出器平面」と呼ぶ平面を画定する。光検出器平面は、光軸20に対して垂直に延在する。図1の実施形態において、光学素子2は、本質的に光検出器平面内に配置される。特に、光学素子2は、光検出器平面から上に1mmを超えて突出しないものとする。この理由は、上記で論じてあり、図9に示されている。突出レンズ15は、粒子9よりもはるかにレンズ15に近いPM粒子によって散乱する散乱光パルス10が、光検出器3に達せず、したがって検出されないように、シャドウイングをもたらす。
【0076】
図2に示されているように、半導体チップ4の上面は、光検出器3のアレイ、例えば、光検出器ピクセルの4つのアレイを含むことができる。メタライゼーション18が、個々の光検出器ピクセルの間又は周りに設けられる。メタライゼーション18は、任意の導電材料から作製することができる。メタライゼーション18は、表面における金属層のうちの1つを露出させることによって半導体チップ4のCMOS積層を通常に処理する中で形成されることが有利である。メタライゼーション18は、接地されるとファラデーケージとして機能し、光検出器3を電磁干渉から、したがって、スプリアス信号から遮蔽する。特に、CMOS積層のメタライゼーション層のうちのいくつかは、光検出器の読出しのための接続を形成することができ、一方、メタライゼーション層のうちの少なくとも1つ(好ましくは最上層)は、ファラデーケージとして機能するように接地することができる。接地接点は、対応する層を接地に接続するように半導体チップ上に形成することができる。光検出器ピクセル3は、1×1mm未満、好ましくは0.5×0.5mm未満、更により好ましくは0.3×0.3mm未満の平面寸法をそれぞれ有することが好ましい。同じ平方面積が、円形状のピクセル等の正方形でない形状のピクセルの場合にも適用される。
【0077】
図2には、光学素子2は示されていない。実際、いくつかの実施形態において、例えば、光源1自体が既に発散が十分に小さい光ビームを生成する場合、光学素子2は省くことができる。
【0078】
PMセンサーの動作(図3図6
図3図6は、図1のPMセンサーの種々の態様を示している。光源1のスイッチがオンになると、光を光学素子2に向かって放出する。光学素子2は、光ビーム7を整形し、特に、光ビーム7を焦点21に集束する。測定構成において、図4に示されているように、PM粒子9が光ビーム7に接近する。この状況は、例えば、流れチャネルの壁にPMセンサーを配置することによって得ることができる。PMを伴う空気は、ファン又は代替的にはヒーターによって流れチャネルを吹き抜ける(以下の図28及び図29の考察を参照)。
【0079】
図4図6は、異なる線影を付けた光ビーム7の一部を示している。この線影は、検出ボリューム8を画定し、ここでは、検出ボリューム8内に存在するPM粒子9が、光検出器3のうちの少なくとも1つによって検出されるように十分大きい散乱光パルス10を生成し、すなわち、光検出器3において生じる信号は、ノイズレベルを超える、例えば暗電流ノイズとなる。
【0080】
集束光学素子2及び光検出器3を同じ平面に有する提案される構成は、検出ボリューム8が少なくとも光学素子2の焦点21まで達するという利点を有する。これに対する幾何学的な理由は上記で論じてある。特に大きなPM粒子9の場合、検出ボリューム8は、焦点21を超えて延在することもでき、すなわち、散乱粒子高さ11は、光学素子2の焦点距離よりも大きくなる場合があるが、粒子は依然として検出される。
【0081】
通常、検出ボリューム8のサイズ及び形状は、光源1の光出力、光学素子2の焦点距離、光源1と光学素子2との間の距離、光学素子2と光検出器3との間の距離、光検出器3の感度、ノイズレベルを低減させる電磁遮蔽等のパラメーターのうちの1つ以上を変更することによって、特定の用途に最適化又は調整することができる。
【0082】
光学素子の設計
図7図9は、図1と同様であるが、異なる光学素子2を備えるPMセンサーの実施形態を示している。図7において、光学素子は、例えば、ガラス又はポリマー製の従来の光学レンズ12である。レンズ材料の光学指数に応じて、従来の光学レンズ12は、屈折の法則によって所望の焦点距離を呈するように或る特定の厚さを有する必要がある。
【0083】
代替的な光学素子が、図8に示されている。例えば、膜22上に配置される回折光学素子(DOE)13は、同じ焦点距離でもより小さな厚さを有して構成することができる。DOE13の膜22は、製造時に、半導体チップ4のCMOS積層から露出させることができる。特定の実施形態において、DOE13は、例えば、膜の表面を光学レンズとして効果的に機能するように構成したメタマテリアルとすることができる。
【0084】
図9は、更に別の光学素子を示している。レンズがキャリア基板上に配置され、例えば、上述したように、ポリマーレンズ15がガラスキャリア基板23上に配置される。ガラスキャリア基板23上のそのようなレンズ15は、ガラスキャリア基板23上にインプリントポリマーレンズとして製造し、その後、例えば接着剤を用いて、半導体チップ4上に取り付けることができる。ガラスキャリア基板23及び半導体チップ4の熱膨張率が一致するか又は少なくとも同様であるため、温度サイクルに際した接着剤の負担が低減される。
【0085】
図9は、上記で説明したような、散乱光の球面波面の広がりに関連する幾何学的な検討を更に示している。光検出器3の光軸20からの距離14、したがって光学素子からの距離は、最小限に抑えられることが有利である。これにより、検出ボリューム8が大きくなり、又は換言すれば、PMカウント数が大きくなる。
【0086】
図9及び図10は、本発明の一実施形態の別の有利な特徴を示している。光学素子2の側壁、この例では、レンズ15を保持するガラスキャリア基板23の側壁には、光バリア19、例えば、黒色化部又は銀色化部が設けられる。これにより、光学素子の迷光が直接的な経路で光検出器3に達し、それにより、ノイズレベルを著しく上昇させ、PMセンサーがPM粒子を検出する能力を低減する、すなわち、検出ボリューム8を著しく減少させることを防止する。黒色化部又は銀色化部は、ガラスキャリア基板23に対して選択性コーティングを施すことにより、例えば、ポリマーレンズ15には結合せず、ガラスキャリア基板23のガラスに結合し、ガラスを黒色化/銀色化する化学物質を塗布することによって得ることができる。加えて、そのようなコーティングは、それ自体の性質によって薄く、したがって、光学素子の側方厚さに材料を追加することがなく、そのため、上述したシャドウイングを悪化させない。
【0087】
図10は、別の実施形態に係るPMセンサーを通る概略断面を示している。このPMセンサーは、図1のPMセンサーとほとんどの特徴を共有している。ただし、このPMセンサーは、光学素子の片側にのみ光検出器3を有する。光学素子は、図示の実施形態においても、キャリア基板23上のレンズ15である。反対側では、光学素子は支持体16によって支持され、支持体16は、例えば、基板によって形成される成形フレーム又はダミー基板スペーサーとすることができる。図10のPMセンサーは、図1図9のPMセンサーよりも小さい信号対ノイズ比を有することができることが明白である。しかしながら、本PMセンサーは、はるかに小さなフォームファクターを有して構築することができ、それにより、小型化用途に十分適したものとなる。
【0088】
PMセンサーの詳細(図11A
図11Aは、図9の実施形態と同様のPMセンサーの一実施形態を示しており、このセンサーは、図1図10におけるよりも詳細に示されている。
【0089】
この実施形態において、半導体チップ4は、CMOS積層24を保持するシリコンチップである。光検出器3は、CMOSプロセスによって半導体材料内に形成される。例えば、各光検出器3は、シリコンチップのp型ドープ部にn型ドープウェルを生成することによって形成されるフォトダイオードとすることができる。光がこのフォトダイオードに達することができるように、フォトダイオード上のCMOS積層は、エッチングによって除去される。フォトダイオードのアノード及びカソードは、CMOS積層24のメタライゼーション層に接続される。
【0090】
アナログ-デジタル電子回路部がCMOS積層24内に形成される。この電子回路部は、特定用途向け集積回路(ASIC)を形成する。ASICは、図11Bを参照して以下に説明するように、特に制御ユニット27として機能する。
【0091】
光源1の光出力を求める感光性補助検出器25が、半導体チップ4内に形成される。この検出器は、閉ループ内で光源1の出力を調節するようにフィードバックを提供することができることから、「フィードバック検出器」とも呼ぶことができる。補助検出器25は、主光検出器3と同じタイプとすることができる。補助検出器25は、フォトダイオードであることが好ましい。補助検出器25は、主光検出器3と同じ方法で半導体チップ4内に形成することができる。補助検出器25は、キャビティ5の境界を定める側壁26の表面の非常に近くに配置されることが好ましい。補助検出器は、主光検出器3の総表面積と比較して非常に小さい表面積を有することが好ましい。補助検出器は、例えば、100μm×100μm未満、例えば、50μm×50μmの表面積をカバーすることができる。このように、補助検出器25は、検出ボリューム8内のPMによって散乱した光に対して比較的感度が低い。一方で、他の光路を通って補助検出器25に達することができる光に対する感度は高い。
【0092】
補助検出器25が受け取る光は、少なくとも2つの異なる起点を有することができる。一方では、補助検出器25は、光源1によって、概ね主な放出方向に沿って、すなわち、概ね光ビーム7の方向に沿って放出され、光が光学素子を出る前にこの方向から散乱した光を受け取ることができる。そのような散乱は、例えば、光学素子の表面において又は光学素子内において起こり得る。本開示において、このタイプの光は「迷光」と称する。他方では、補助検出器25は、光源によって主な放出方向以外の方向に沿って放出された光を受け取ることができる。例えば、光源がVCSELである場合、光源は、光ビーム7が放出される主放出表面を有し、側方の側壁を有する。主放出表面は、光ビームの方向に面する。VCSELは、通常、自然放出によって側方の側壁においてもいくらかの光を発生させる。この光は、補助検出器25にも伝播することができる。
【0093】
図11Aの例において、光源1から補助検出器25への少なくとも3つの光路が可能である。
-第1の光路は、半導体チップ4を通って延在する。シリコンへの光の侵入深さは、波長に応じて決まる。940nmという典型的なIR波長では、光強度は、約100μm以降、約10%(1/e)に低減される。この光路は、自然放出によって発生する光に対して特に重要である。したがって、自然放出によって発生する光の強度を監視することによって光源1の光出力を監視することが望ましい場合、補助検出器25は、キャビティ5の境界を定める側壁26の表面の可能な限り近くに配置すべきであり、側壁26の表面は、不透明材料によってカバーすべきではない。加えて、光が補助検出器25の上方から入射することを防止するために、補助検出器25の頂面は、CMOS積層の層のうちの少なくともいくつかによってカバーすることができる。
-第2の光路は、CMOS積層24を通って延在する。CMOS積層は、光学素子の光軸に対して垂直に、すなわち、光検出器平面内で又は光検出器平面に対して平行に、導光体として機能することができる。したがって、CMOS積層に進入する光は、補助検出器25へと誘導される。いくつかの実施形態において、図11Aの実施形態と同様に、迷光及び/又は自然放出による光は、キャビティ壁26においてCMOS積層に進入することができる。しかしながら、実際、このメカニズムは無視することができる場合が多い。他の実施形態において、膜22は、図8の実施形態と同様に、CMOS積層の1つ以上の層によって形成され、迷光は、膜22内及び/又はその境界において散乱が起こることで発生し、その結果、迷光は、CMOS積層内に直接発生することができる。この光路は、キャビティ5の側壁26の表面上に不透明層が存在する場合でも有効である。
-第3の光路は、光学素子を通って延在する。図11Aの例において、光学素子は、ガラスキャリア基板23上のポリマーインプリントレンズ15である。ガラスキャリア基板23は、補助検出器25の直上に配置される底面の一部に迷光を誘導することが可能である。ガラスキャリア基板23のこの部分から出る光は、上から補助検出器25に当たることができる。同様の検討事項は、他のタイプの光学素子にも当てはまり得る。また、この光路は、キャビティ5の側壁26の表面上に不透明層が存在する場合でも有効である。
【0094】
キャビティ5に対する補助検出器25の配置(特に、キャビティ壁からの補助検出器25の側方距離)に応じて、光学素子の有無、タイプ、及び配置(例えば、光学素子が存在するか否か、光学素子がCMOS積層から作製される膜を含むか否か、光学素子から補助検出器の頂部への直接の光路があるか否か、補助検出器がCMOS積層の1つ以上の不透明層によってカバーされるか否か)に応じて、並びにキャビティ側壁の表面に不透明層を追加する等の更なる尺度に応じて、補助検出器25によって受け取られる光は、迷光又は自然放出により発生する光のいずれかが優勢となり得る。したがって、制御ユニット27は、迷光から、自然放出から、又はその双方から光源の光出力を求めることができる。
【0095】
光学フィルター28が、半導体チップ4の頂面に配置され、光検出器3及び補助検出器25の双方をカバーする。光学フィルター28は、光源1の波長を含む波長範囲内の光のみが通過することを可能にする光バンドパスフィルターである。光学フィルター28は、屈折率が異なる複数の層が互いに積み重ねられるウェハーレベルプロセスを使用して適用される干渉フィルターである。各層の厚さは、光源の主要な波長の略4分の1の波長の範囲にあることができる。これは、所望の波長域を除く全ての波長に対する相殺的干渉につながる。主光検出器3の場合、光学フィルター28は、環境光に起因するDC飽和及びノイズレベルの上昇を回避するのに役立ち、それにより、PMから生じる信号パルスの信号対ノイズレベルを向上する。補助検出器25の場合、光学フィルター28は、環境光の出力信号への寄与を低減し、補助検出器25が環境光に対して比較的低い感度を有するようにする。
【0096】
PMセンサーの接合及びパッケージングは、以下のように行うことができる。ベース基板6は、例えば、ランドグリッドアレイ(LGA)とすることができる。光源1及びコントローラー27は、ワイヤボンド31によってLGAのランドに接続することができる。PMセンサーの製造中、最初に光源1をLGAに取り付けることができ、LGAの適切なランドにワイヤボンディングすることができる。いくつかの実施形態において、光源が接合されたLGAは、事前組立てユニットとして提供することができる。例えば、VCSELは、LGA上に事前組立てユニットの形態で提供されることがある。その後、キャビティ5及びCMOS積層24を有する半導体チップ4を、光源1がキャビティ5内に配置されるように、LGAに取り付ける(例えば、LGAに接着する)ことができる。次いで、CMOS積層24における回路部も、LGAにワイヤボンディングすることができる。その後、結果として生じたアセンブリを、光検出器3、補助検出器25、及びキャビティ5を上からアクセス可能なように残しながら、開放キャビティ成形によってエンクロージャー32内に部分的に封入することができる。いくつかの実施形態において、光学素子は、キャビティ5をカバーするように半導体チップ4に最後に取り付けられる。他の実施形態において、光学素子は、事前の製造工程において半導体チップに形成するか又は取り付けることができる。
【0097】
図11Aの実施形態において、他のいくつかの実施形態と同様に、光学素子は、ガラスキャリア基板23上のポリマーレンズ15である。特に、レンズは、「ウェハーレベル光学レンズ」、略して「WLOレンズ」とすることができる。ウェハーレベル光学において、キャリア基板がウェハーの形態で設けられ、ウェハー上に光学構造体が形成され、その後、ウェハーがダイシングされる。特に、ポリマーレンズは、ウェハーをUV硬化性ポリマーによってコーティングし、ウェハーサイズのスタンプによって未硬化のポリマーにインプリントし、ポリマーをUV硬化することによって、ウェハー上に形成することができる。本開示において、このようにして形成されたポリマーレンズは、インプリントポリマーレンズと呼ぶ。
【0098】
ガラスキャリア基板23の側壁は、迷光が光検出器3に達することを防止するために、光バリア19、すなわち、不透明コーティングを設けることができる。光バリア19は、既知の硝酸銀ミラーリングプロセスを使用してガラスキャリア基板23の側壁に施すことができる、ミラー様の銀色化部とすることができる。このために、ガラスキャリア基板を形成するガラスウェハー上にポリマーレンズ15を形成した後、ウェハーをダイシング薄片上に取り付け、ダイシングする。その後、ダイシングされたウェハーを、硝酸銀ミラーリングプロセスによって処理する。ウェハーの裏側がダイシング薄片によって保護され、レンズを形成するポリマーが化学物質と反応しないことから、ガラスキャリア基板23のダイシングされた側壁のみにミラーが形成される。
【0099】
迷光問題のリスクを更に低減するために、アパーチャーを画定するダイヤフラムを形成する更なるコーティング29を、ガラスキャリア基板23の頂面及び/又は底面に設けることができる。コーティング29は、例えば、クロムコーティングとすることができる。図11Aの例において、ガラスキャリア基板23の頂面にクロムコーティングが施されている。このコーティングは、アパーチャーを画定するダイヤフラムを形成し、ポリマーレンズ15がアパーチャー内に配置される。ガラスキャリア基板の上にダイヤフラムを形成する代わりに、又はそれに加えて、アパーチャーを画定するダイヤフラムを、ガラスキャリア基板の底部に形成することもできる。
【0100】
ウェハーレベル光学素子の原則を、ガラスキャリア基板を形成するガラスウェハーの例を使用して説明したが、キャリア基板は、ガラスとは異なる材料から形成することもできる。
【0101】
制御ユニット(図11B
図11Bは、図11AのPMセンサーの機能概略図である。制御ユニット27は、光検出器3及び感光性補助検出器25の双方から信号を受信する。制御ユニット27は、光ビーム7の検出ボリューム8内でPMから生じる光パルスに対応する信号パルスを検出するように、光検出器3からの信号を処理する。制御ユニット27は、これらの信号パルスを更に分析して、PMの物理量を示す少なくとも1つのパラメーター、例えば、PM濃度を示すパラメーター、少なくとも1つのPMサイズパラメーター(例えば、平均サイズ及び/又はサイズ分布を特徴付ける少なくとも1つのパラメーター)、及び/又は少なくとも1つのPM速度パラメーターを導出する。例えば、PM濃度パラメーターは、それ自体既知であるように、単位時間当たりのパルス数と、PMセンサーを通過する流体流の既知の、測定される、又は推定される流量とに基づいて求めることができる。PMサイズパラメーターは、同じくそれ自体既知であるように、パルスの振幅に基づいて求めることができる。PMパラメーターを計算する場合、制御ユニット27は、補助検出器25からの信号によって表される、光源1の光出力を考慮に入れることができる。制御ユニット27は、補助検出器25からの信号を更に使用して、閉ループ制御アルゴリズムによって光源1の光学的出力を制御することができる。図12に関連してより詳細に説明するように、制御ユニットは、光検出器平面からのPM粒子の距離を考慮に入れることもできる。
【0102】
要約すると、制御ユニット27は、2つの主な目的、すなわち、a)光検出器3からの信号を処理して、PMの特性を示す少なくとも1つのパラメーターを導出すること、及びb)補助検出器25を使用して、光源1の出力を監視し、任意選択的には制御することを有する。
【0103】
いくつかの実施形態において、制御ユニット27は、CMOS積層24によって形成されるASICにおいて完全に「オンチップ」で実装することができる。他の実施形態において、制御ユニット27の機能の一部を上記ASICに実装することができ、他の機能を、外部回路部において「オフチップ」で実装することができる。外部回路部は、例えば、ベース基板6を介してASICに接続することができる。例えば、信号増幅、アナログ-デジタル変換、及びフィルタリング等の、主光検出器3及び/又は補助検出器25から受信した信号のいくつかの初期処理工程を、CMOS積層24によって形成されるASICによってオンチップで行うことができ、一方、PMの特性を示すパラメーターを計算する及び/又は光源1を制御する制御信号を計算する計算工程等の、後続の処理工程を、外部回路部によってオフチップで行うことができる。外部回路部は、プロセッサに上記パラメーターを求める1つ以上の処理工程を行わせるコンピュータープログラムを実行するように構成される、汎用プロセッサ又は専用プロセッサを含むことができる。
【0104】
距離確定(図12図13A図13B
図12は、検出された粒子が光ビーム7に交わる際の光検出器平面からの距離を求めることが可能であるPMセンサーの一実施形態を示している。このために、光学素子は、非対称拡張部41によって補完することができる。
【0105】
非対称拡張部41は、光検出器のうちの1つ以上に向かって側方に選択的に延在し、これらの光検出器を部分的に遮蔽するが、他の光検出器は遮蔽しない。図12の例において、部分的に遮蔽された光検出器は、光検出器3bとして示されており、一方、遮蔽されない光検出器は、光検出器3aとして示されている。非対称拡張部41は、光学素子の近くで光ビーム7に交わるPM粒子の光の一部から影響を受ける光検出器3bを遮蔽する。これは、図12において、光検出器平面から異なる距離のところでPMセンサーを通過する2つのPM粒子9、9’の例を使用して示されている。粒子9は、比較的大きな距離のところでPMセンサーを通過する。非対称拡張部41は、この粒子によって散乱した光が光検出器3bに達することを防止しない。したがって、光検出器3a及び3bは、同量の散乱光を受け取る。対照的に、粒子9’は、光検出器平面から比較的小さな距離のところでPMセンサーを通過する。非対称拡張部41が粒子9’から散乱した光の一部を遮蔽するため、光検出器3a及び3bは、異なる量の散乱光を受け取る。
【0106】
図13Aは、粒子9及び9’から受け取った散乱光に起因する、光検出器3a及び3bによって記録された信号パルスをそれぞれ概略的に示している。時間t1において、光検出器3a及び3bは、粒子9からの散乱光を受け取る。結果として生じる信号パルスは、おおよそ同じ振幅を有する。時間t2において、光検出器3a及び3bは、粒子9’からの散乱光を受け取る。光検出器3aからの結果として生じる信号パルスは、光検出器3bからのパルスよりもはるかに大きい。
【0107】
図13Bは、光検出器3a及び3bからの信号の結果的な比を示している。この比は、粒子が光ビーム7を横切るときの、光検出器平面からの粒子の距離の直接的な尺度である。特に、この比は、以下の挙動を呈する。
a)この比が1(信号レベルが等しい)に近いほど、粒子が光ビームを横切るときの光検出器平面からの距離が遠い。
b)この比が0(シャドウイングに起因して非対称拡張部に面する光検出器3bに光が届かない)に近いほど、粒子が光ビームを横切るときの光検出器平面からの距離が近い。
c)0~1の間の比は、光検出器平面からの粒子の異なる距離に対応する。
【0108】
この情報は、上記距離が信号レベルに及ぼす場合がある望ましくない作用を補償するために、制御ユニット27によって使用することができる。例えば、光軸に沿った光ビーム7の強度分布が既知である場合、制御ユニット27は、既知の強度分布に対して測定されたパルス振幅を補正することができる。結果として、粒子のサイズのよりよい推定を得ることができる。一般的には、よりよいセンサー性能を達成することができる。
【0109】
図12において、ガラスキャリア基板23上のポリマーレンズ15の例を使用して、光学素子の非対称拡張部41の作用が示されているが、同じ構想は、他のタイプの光学素子にも採用することができる。
【0110】
より一般的には、非対称拡張部41は、光検出器平面からの粒子の距離に応じて決まる、光検出器のうちの1つ以上の一部を、光ビーム7内のPM粒子によって散乱した光から選択的に遮蔽するように、半導体チップ4上に配置される光遮断素子の一例である。光遮断素子は、光学素子とは別個とすることができる。光遮断素子は、光学素子の側方に隣接して配置することができる。光遮断素子は、光学素子が全く存在しない場合でも設けることができる。
【0111】
キャビティの側壁における不透明コーティング(図14及び図15
「光ブロッカー」、すなわち、キャビティの側壁及び/又はベース基板6に面する半導体チップ4の底側におけるコーティング層(光源1の主な放出波長に対して不透明)を形成することで、光源1からの直接光及び/又は迷光が半導体チップを通って光検出器に達することを防止する。このようにして、検出器の飽和を防止することができ、及び/又は(ショットキー)ノイズを低減することができる。ノイズレベルがより低いことは、PM検出に対してより低い閾値を選択することができることを意味し、その結果、性能が向上する。特に、より小さな粒子を検出することができる。データ評価の統計が増大し、その結果、精度がよりよくなる。
【0112】
図14の実施形態において、そのようなコーティング層は、半導体チップ4の裏側メタライゼーション51によって形成される。そのようなメタライゼーションは、例えば、スパッタ蒸着によって形成することができる。キャビティを半導体チップにエッチングした後に蒸着プロセスを実行する場合、キャビティ側壁は、メタライゼーション51によっても自動的にカバーされる。メタライゼーションに好適な材料の例は、限定はしないが、Al、Cu、Ag、Ti、及びTiNである。実用的なメタライゼーション厚さは、50nm~1μm以上にのぼる範囲である。
【0113】
しかしながら、そのようなメタライゼーションプロセスは、図8の例におけるように、1つ以上のCMOS層によって形成される膜を含む製品設計には適しない。なぜなら、メタライゼーションは、膜を不透明にしてしまうからである。したがって、そのような実施形態には、チップ表面上に不透明コーティングを形成する他のプロセスを使用すべきである。
【0114】
不透明コーティング52が代替的なプロセスによって形成されている一実施形態が、図15に示されている。この実施形態において、CMOS積層24の1つ以上の層によって形成される膜22が、キャビティ5に架け渡される。膜は、以下により詳細に説明するように、光学素子の一部とすることができるか、又は、単に光源を汚染から保護するために設けることができる。不透明コーティング52は、キャビティ5へのウェハーレベルのインクジェット印刷によって形成することができる。このプロセスは、非常にコスト効果的である。このプロセスは、滴のサイズが小さいことにより、膜22を使用する製品設計に適する。光ビームの通過を可能にするように透明のままにすべきである膜中央に向かってインクが溢れ出ることを防止するために、流れ停止構造部53(例えば、膜における酸化物から構成されるリング)を膜22内に設計することができる。
【0115】
膜22上において流れ停止構造部53の径方向外側に配置されるインクは、クロムコーティングの例を用いて上記で論じたように、アパーチャーを画定するダイヤフラムの別の例を示すものとみなすことができることが留意される。
【0116】
双方の実施形態(メタライゼーション又はインクジェットコーティング)において、図1の破線によって示されているように、キャビティ側壁が半導体チップ4の裏側に向かって傾斜する場合が有利である。
【0117】
スペーサー(図16
図16は、スペーサー61がベース基板6と半導体チップ4との間に配置される一実施形態を示している。スペーサー61及び半導体チップ4は、基板60をともに形成する。
【0118】
スペーサー61もシリコン製であることが好ましい。スペーサー61は、ベース基板6に面するスペーサー61の底側から、半導体チップ4に面する頂側へとわたって延在する中央開口(貫通孔)を有する。中央開口は、半導体チップ4におけるキャビティと同軸に配置される。半導体チップ4におけるキャビティ及びスペーサー61における中央開口は、光源1が配置されるキャビティ5をともに形成する。
【0119】
図16の実施形態において、スペーサー61における中央開口は、半導体チップ4におけるキャビティよりも僅かに大きい横寸法を有する。しかしながら、他の実施形態において、スペーサー61における開口の横寸法は、半導体チップ4におけるキャビティと同じか又はそれよりも小さくすることができる。
【0120】
スペーサー61は、光軸20に沿った光源1と光学素子との間の距離Hを増大させる。より大きな距離Hでは、より大きな焦点距離を有する光学素子の使用を可能にする。一方では、そのような光学素子は、より容易に製造することができる。他方では、光学素子の焦点距離がより大きいと、光学素子と光ビームの焦点との間の距離の増大を可能にする。この距離は、光学素子の焦点距離と必ずしも同一ではなく、なぜなら、焦点位置は、通常、光源の放出特性(例えば、発散するかコリメートされるか)に応じて決まり、また、発散性の放出の場合は、光源と光学素子との間の距離Hに応じて決まるためであることに留意すべきである。光学素子と光ビームの焦点との間の距離を増大させることにより、検出ボリューム8のサイズを増大させることができる。光源1と光学素子との間の距離Hがより大きいと、製造プロセス及び材料の違い、特に、半導体チップ4の厚さの違いに対する装置の感度も低減し、それにより、製造の安定性が増し、装置ごとの性能の違いが少なくなる。このことは、集束光ビームとは対照的にコリメート(円筒形)光ビームが使用される場合、コリメーションは、光源と光学素子との間の距離の公差に対して特に敏感であることから、特に重要である。
【0121】
スペーサーが使用されない場合、距離Hは、半導体チップ4が製造されるウェハーの利用可能な最大厚さによって制限される。例えば、市販されている8インチシリコンウェハーの最大厚さは、典型的には720μmである。同じくシリコンウェハーから製造されるスペーサーを使用することにより、基板60の総厚さは、容易に倍増することができる。より一層大きな厚さが所望される場合、2つ以上のスペーサーを積み重ねることができるか、又は、より大きな厚さで利用可能であり得るより大きなウェハーを使用して、より厚いスペーサーを得ることができる。
【0122】
結果として、光検出器3が統合される半導体チップ4の厚さは、自由に調整可能な設計パラメーターとなる。例えば、光検出器3及び電子回路部の製造に薄いシリコンウェハー(通常、約300μm)を使用すること、並びに、所望の厚さのスペーサー61を使用して、光源1と光学素子との間に必要な距離の残りの部分を補償することが可能である。
【0123】
光検出器が統合されるウェハーと、シリコンスペーサーウェハーとは、ダイシングの前に、「ダイレクトボンディング」プロセス等の容易に利用可能である接合技法によって接続することができる。このプロセスでは、2つのSiウェハーを、ファンデルワールス力を使用して互いに接合する。代替的に、接合界面として構造化された薄片を使用する「接着ボンディング」も利用可能である。
【0124】
所望の場合、光検出器が統合される半導体チップに関して上述したように、不透明コーティングを中央開口の側壁及び/又はスペーサーの裏側に施すことができる。
【0125】
図16は、ガラスキャリア基板23上にあるポリマーレンズ15の形態の光学素子を示しているが、任意の光学素子をスペーサーと併せて使用することができる。
【0126】
膜におけるインプリント(図17図19
光学素子は、CMOS積層の1つ以上の層によって形成される膜の上に直接、屈折光学素子(ROE)又は回折光学素子(DOE)として機能する構造体を堆積させることによって生成することができる。図17図19に例が示されている。
【0127】
膜22は、通常、シリコンウェハー上にCMOS積層を形成し、その後、裏側からウェハーをエッチングしてキャビティ5を形成することによって形成される。積層における最下の酸化物層によって、エッチングストップを形成することができる。膜の更なる薄化は、キャビティの中から及び/又はCMOS積層の上から更にエッチングすることによって行うことができる。膜の領域では、CMOS積層は、膜を光に対して透明にするために、SiO及び/又はSiN層のみを含むべきであることが好ましい。
【0128】
次いで、光学構造体が、ウェハーレベル光学プロセスによって膜22上に直接形成される。半導体チップ4が形成されるウェハーに直接適用されるウェハーレベル光学プロセスは、いくつかの利点を有する。すなわち、光学素子がウェハーレベルプロセスによって形成されるため、製造公差が低減される。光学素子を光検出器が配置される光検出器平面により近付けることができる。光学素子に起因するシャドウイングが最小限に抑えられ、それにより、測定体積が増大する。センサー上での流れがより層流状となる。層流における測定精度が全体的により良好である。加えて、センサーは、汚れが蓄積しにくく、そのため、寿命の延長を達成することができる。この設計は、キャビティの第1の端部において、元来流体密であり、そのため、特に、いくらかのレベルの耐水性が必要とされるウェアラブル等の用途に十分適している。
【0129】
図17の実施形態において、ポリマーレンズ71が、ウェハーレベルインプリントによって膜22上に直接形成される。図18及び図19に示されているように、より一層平坦な装置トポグラフィーを得るために、フレネルレンズ72(図18)又は回折光学素子(DOE)パターン73(図19)をインプリントすることも可能である。
【0130】
ナノインプリントリソグラフィー又はグレースケールリソグラフィーのような関連するウェハーレベル技術によって、膜22上にROE又はDOEパターンを生成することも可能である。グレースケールリソグラフィーでは、スピンコートプロセスにおいてウェハー表面にフォトレジストを塗布する。標準的なフォトリソグラフィー機器をグレースケールマスクと併せて使用して、フォトレジストを部分的に硬化する。未硬化のレジストを除去し、ウェハー上に留まる光学素子の形状を残す。グレースケールリソグラフィーは、ダイレクトレーザーライティングを使用して行うこともでき、その場合、グレースケール硬化強度は、ウェハー上のフォトレジスト表面を走査しながら、レーザー出力を変更することによって調節される。
【0131】
これらの全ての技法において、光学ポリマー又はフォトレジストは、半導体チップ4上の光検出器3又はワイヤボンディング用パッドを覆うべきではない。これは、部分的に透明なスタンプを通して光学ポリマー又はフォトレジストを選択的にUV硬化することによって達成することができる。光学素子を形成した後に、未硬化の未だ液状のポリマーを半導体チップ4の表面から除去することができる。
【0132】
分注又は小滴マイクロレンズ(図20
いくつかの実施形態において、図20に示されているように、光学素子は、分注又は小滴マイクロレンズ74を含むことができる。分注又は小滴マイクロレンズは、表面張力、濡れ又は非濡れ、及び重力のような現象の作用によって形状を獲得する。分注又は小滴マイクロレンズの形状は、膜の表面エネルギー、小滴の体積、膜表面の構造、及び小滴の表面張力を含むいくつかの要因によって決まる。これらのパラメーターは、マイクロレンズの光学特性に影響を与えるように或る程度変更することができる。例えば、膜の表面エネルギーは、プラズマプロセスによって変化させることができる。小滴の表面張力は、異なるレンズ材料を選択することによって変化させることができる。
【0133】
小滴レンズは、溶融フォトレジストプロセスを使用して得ることもできる。このプロセスでは、(バイナリー)フォトリソグラフィーを使用して、膜の上にポリマーピラーを形成する。その後、リフロープロセスを使用して、ポリマーを溶融する。
【0134】
膜の底側における光学素子
図21に示されているように、キャビティ5に面する膜22の底側に光学構造体75を配置することも可能である。上述したものと同じ技法を、光学構造体を形成するのに使用することができる。このために、キャビティが上に向かって開放するようにウェハーを裏返すことができ、インプリント及びUV硬化によって又はフォトリソグラフィーによって、光学構造体を上から形成することができる。キャビティの側壁は、ポリマー又はフォトレジストに対する固有の流れ停止部として機能する。代替的なプロセスにおいて、ウェハーは裏返されず、光学構造体は、スタンプに光学ポリマーを充填し、ウェハーを上からスタンプに押し付けるプロセスによって、下から形成される。
【0135】
膜におけるDOE(図22
図22は、光学構造体76が、CMOS膜の内側、すなわち、CMOS積層24の層によって形成される膜の内側に直接形成される一実施形態を示している。これは、CMOSプロセスを使用して、又はCMOS膜の上側若しくは下側に適用される後続のウェハーレベルプロセスにより、光学構造体76を製造することによって達成することができる。このようにして、製造公差を更に低減することができ、コストも低減することができる。センサー上での流れは、より一層層流状となり、光学素子上の汚れの蓄積を更に低減する。ここでも、そのような設計は、キャビティの第1の端部において元来流体密である。
【0136】
このようにして膜が構造化された場合、膜の材料は、メタマテリアル、すなわち、構造化の前には材料になかった特性を有するように構造化された材料へと変換されたものとみなすことができる。
【0137】
CMOSプロセスを使用してDOEを製造する方法が、以下の刊行物、すなわち、Dai, Ching-Liang & Chen, Hunglin & Lee, Chi-Yuan & Chang, Pei-Zen, "Fabrication of diffractive optical elements using the CMOS process", Journal of Micromechanics and Microengineering. 12(1):22 (2001), DOI: 10.1088/0960-1317/12/1/304に開示されている。
【0138】
別の可能な製造方法は以下のとおりである。フォトレジストをインプリントすることによって又はフォトリソグラフィーによって、ウェハー上に光学構造体を形成することができる。その後、フォトレジストを除去するとともに、フォトレジストの光学構造体を膜トポグラフィーへと変換する、エッチングプロセスを適用することができる。これは、膜のいずれの側からも行うことができる。
【0139】
これらの実施形態において、光源1の光出力を監視するための迷光が、膜のCMOS層を通って補助検出器25に直接達することができる。したがって、不透明コーティングは、キャビティ5の側壁26に安全に施すことができる。
【0140】
2Kモールドレンズ(図23
図23は、光学素子が2Kモールドレンズ77である一実施形態を示している。2Kモールドレンズは、レンズ自体が、レンズ材料を複製型内に吐出して、UV硬化することによって複製される、射出成形レンズフレームを備える。
【0141】
図17図23の実施形態は、スペーサー61を伴って示されているが、スペーサーは省くこともできる。図15に関連して説明したように、光検出器における迷光を低減するために、キャビティ側壁に不透明層を適用することができる。
【0142】
キャビティの側壁の形状(図24図26
図24図26は、キャビティ側壁26の可能な形状のいくつかの例を示している。図24において、側壁26は底部に向かって傾斜し、すなわち、キャビティ5の横寸法は底部に向かって増大する。そのような一実施形態は、不透明コーティングがキャビティ側壁26に施される場合に特に有利である。図25において、側壁は上に向かって傾斜する。図26において、側壁は、上に向かって傾斜する頂部と、下に向かって凸形状に開放する底部とを有する。当該技術分野において既知であるように、異なる形状を適切なエッチング方法によって容易に形成することができる。
【0143】
これらの全ての実施形態において、キャビティ5は、光検出器平面に対して垂直な対称軸を有する。例えば、正方形断面を有するキャビティの場合、キャビティは、対称軸の周りに4回回転対称性を有することができる。円形断面を有するキャビティの場合、キャビティは、円筒対称とすることができる。対称軸は、光軸20と一致することが好ましい。
【0144】
光検出器の区画分け(図27
図27は、光検出器のうちのいくつかが、不透明層、例えば、インクジェット印刷によって形成される黒色層によって覆われる一実施形態を示している。不透明層は、検出ボリューム内でPMによって散乱した光からこれらの光検出器を遮蔽する一方で、他の光検出器は、遮蔽されることなく検出ボリュームに面する。遮蔽されない光検出器は、第1の区画81を形成し、遮蔽される光検出器は、第2の区画82を形成する。制御ユニットは、遮蔽される光検出器及び遮蔽されない光検出器の双方から信号を受信し、差動処理を適用して、電磁干渉に起因する信号を打ち消すことができる。
【0145】
センサーモジュール(図28及び図29
図28は、完全なPMセンサーモジュール90の一実施形態を示している。センサーモジュール90は、上述の実施形態のうちのいずれか1つに係るPMセンサー91を備える。PMセンサー91は、流れチャネル97を画定するハウジング92内に収納される。ヒーター93が、流れチャネル97内に対流98を生成する。PMセンサーは、流れチャネル97内に光ビーム7を放出する。本実施形態において、光ビーム7の方向は、対流98の方向に対して垂直である。光ビームは、ミラー94によってビームダンプ95内に偏向される。
【0146】
本例において、光ビーム7は、焦点21を有する集束ビームである。焦点は、流れチャネル97内に配置される。そのため、検出ボリュームは、流れチャネル97内に位置する。
【0147】
図29は、完全なPMセンサーモジュールの別の実施形態を示している。この実施形態において、ヒーターは存在しない。代わりに、流れ98は、ファン99によって生成される。
【符号の説明】
【0148】
1 光源
2 光学素子
3、3a、3b 光検出器
4 半導体チップ
5 キャビティ
6 ベース基板
7 光ビーム
8 検出ボリューム
9、9’ PM粒子
10、10’ 散乱光パルス
11 散乱粒子高さ
12 従来の光学レンズ
13 膜上の回折光学素子(DOE)
14 光検出器の光軸からの距離
15 ガラス基板上のポリマーレンズ
16 支持体
17 光学素子、例えばガラス窓
18 メタライゼーション
19 光バリア
20 光軸
21 焦点
22 膜
23 ガラス基板
24 CMOS積層
25 補助検出器/フォトダイオード
26 キャビティの壁
27 制御ユニット
28 光学フィルター
29 クロムコーティング
30 アパーチャー
31 ワイヤボンド
32 エンクロージャー
41 非対称拡張部
51 メタライゼーション
52 インクジェットコーティング
53 インクジェット流れ停止部
60 基板
61 スペーサー
71 膜の直上のウェハーレベルポリマーインプリントレンズ
72 膜の直上のウェハーレベルポリマーインプリントフレネルレンズ
73 膜の直上のウェハーレベルポリマーインプリントパターン
74 膜の直上のウェハーレベル小滴マイクロレンズ
75 膜の底側上のウェハーレベルポリマーインプリントパターン
76 膜内の光学構造体(DOE)
77 2Kモールドレンズ
81 第1の区画
82 第2の区画
90 PMセンサーモジュール
91 PMセンサー
92 PCB
93 ヒーター
94 ミラー
95 ビームダンプ
96 ハウジング
97 流れチャネル
98 流れ
99 ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29