(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20250221BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20250221BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250221BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250221BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20250221BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250221BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J7/00 301D
B60L50/60
B60L53/122
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2023044194
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/196239(WO,A1)
【文献】特開2017-118690(JP,A)
【文献】特開2023-015843(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 50/12
H02J 7/00
B60L 50/60
B60L 53/122
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置の送電側コイルから非接触で伝送される交流電力を受け取るコイルと、
前記コイルに直列に接続される共振用のキャパシタと、
前記コイルに対して設けられる磁性部材と
を有する受電部と、
前記受電部が受け取る前記交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、
前記電力変換部の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記コイル、前記キャパシタ及び前記磁性部材の各温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部によって取得される前記各温度に基づいて、前記送電装置による電力伝送の要求周波数を補正する補正部と
を備え
、
前記補正部は、
前記各温度に基づいて、少なくとも前記コイルの自己インダクタンス、前記受電部の抵抗値、前記キャパシタのキャパシタンス、前記送電側コイルと前記コイルとの相互インダクタンスのいずれかを補正する
非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記補正部は、
前記各温度に基づいて、前記コイルの自己インダクタンスと、前記受電部の抵抗値と、前記キャパシタのキャパシタンスと、前記送電側コイルと前記コイルとの相互インダクタンスとを補正する
請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項3】
前記電力変換部に接続される蓄電装置を備え、
前記補正部は、
前記蓄電装置の残容量に応じた要求電力に基づいて設定される前記要求周波数を補正する
請求項2に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、送電装置及び受電装置を構成するコイル及びキャパシタ等の素子の温度に応じて、受電装置に対する給電効率が最大となるように、送電装置のインバータ回路のスイッチング周波数を制御する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、受電側のコイル及びキャパシタ等によって形成される共振回路の固有値(周波数)の変動に伴う出力低下及び損失増大を抑制することが望まれている。例えば、上記従来技術の非接触電力伝送システムでは、コイルの温度上昇に伴うインダクタンスの低下及びキャパシタの温度変化に伴うキャパシタンスの変化に限らず、受電装置の他の部位の温度変化に応じて共振回路の固有値(周波数)が変動するおそれがある。例えば、移動体の移動時に受ける風(走行風等)によって冷却される部位での温度変化等に応じて共振回路の固有値(周波数)が変動すると、出力低下及び損失増大が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、受電側での温度の変動に起因する出力低下及び損失増大を抑制することができる非接触電力伝送システムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る非接触電力伝送システム(例えば、実施形態での非接触電力伝送システム1)は、送電装置(例えば、実施形態での送電装置2)の送電側コイル(例えば、実施形態での一次側コイル8a)から非接触で伝送される交流電力を受け取るコイル(例えば、実施形態での二次側コイル15a)と、前記コイルに直列に接続される共振用のキャパシタ(例えば、実施形態での二次側キャパシタ15c)と、前記コイルに対して設けられる磁性部材(例えば、実施形態でのコア部材19)とを有する受電部(例えば、実施形態での受電部15)と、前記受電部が受け取る前記交流電力を直流電力に変換する電力変換部(例えば、実施形態での受電電力変換部16)と、前記電力変換部の動作を制御する制御装置(例えば、実施形態での制御装置17)とを備え、前記制御装置は、前記コイル、前記キャパシタ及び前記磁性部材の各温度を取得する温度取得部(例えば、実施形態でのコイル温度検出部31と、磁性部材温度検出部32と、キャパシタ温度検出部33)と、前記温度取得部によって取得される前記各温度に基づいて、前記送電装置による電力伝送の要求周波数を補正する補正部(例えば、実施形態でのインダクタンス補正部34と、抵抗値補正部35と、相互インダクタンス補正部36と、キャパシタンス補正部37と、最大効率点算出部38と、差分算出部39と、要求周波数補正部40)とを備え、前記補正部は、前記各温度に基づいて、少なくとも前記コイルの自己インダクタンス、前記受電部の抵抗値、前記キャパシタのキャパシタンス、前記送電側コイルと前記コイルとの相互インダクタンスのいずれかを補正する。
【0007】
(2):上記(1)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記補正部は、前記各温度に基づいて、前記コイルの自己インダクタンスと、前記受電部の抵抗値と、前記キャパシタのキャパシタンスと、前記送電側コイルと前記コイルとの相互インダクタンスとを補正してもよい。
【0008】
(3):上記(2)に記載の非接触電力伝送システムは、前記電力変換部に接続される蓄電装置(例えば、実施形態での蓄電装置11)を備え、前記補正部は、前記蓄電装置の残容量に応じた要求電力に基づいて設定される前記要求周波数を補正してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)によれば、制御装置は、受電部のコイル、キャパシタ及び磁性部材の各温度に基づいて、送電装置による電力伝送の要求周波数を補正することにより、受電側での温度の変動に起因する電力伝送の出力低下及び損失増大を抑制することができる。
【0010】
上記(2)の場合、制御装置は、受電部のコイルの自己インダクタンスと、受電部の抵抗値と、受電部のキャパシタのキャパシタンスと、相互インダクタンスとを補正することにより、例えば受電部の温度変化等に応じて共振回路の固有値(周波数)が変動する場合であっても、要求周波数の補正によって出力低下及び損失増大を抑制することができる。
【0011】
上記(3)の場合、制御装置は、蓄電装置の残容量に応じた要求電力に基づいて設定される要求周波数を補正することにより、送電装置からの電力伝送及び移動体の電力消費に伴う蓄電装置の充放電が増大することを抑制しつつ、電力伝送の出力低下及び損失増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図。
【
図2】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成の詳細を示す図。
【
図3】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの送電部及び受電部の構成を示す図。
【
図4】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの受電部のコイルユニットの構成を示す分解斜視図。
【
図5】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの制御装置の第1の機能構成を示すブロック図。
【
図6】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの制御装置の第2の機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、実施形態の非接触電力伝送システム1の構成を示す図である。
図3は、実施形態での非接触電力伝送システム1の送電部8及び受電部15の構成を示す図である。
図4は、実施形態の非接触電力伝送システム1での受電部15のコイルユニット18の構成を示す分解斜視図である。
実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、非接触での電力伝送により車両等の移動体の外部から移動体に電力を供給する。車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両及び燃料電池車両等の電動車両である。
【0014】
(非接触電力伝送システム)
図1及び
図2に示すように、実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、車両の走行路等に設置される送電装置2と、車両等の移動体に搭載される駆動制御装置3及び受電装置4とを備える。なお、実施形態の非接触電力伝送システム1は、少なくとも、移動体に搭載される構成要素(例えば、駆動制御装置3及び受電装置4)のみを備えてもよく、移動体の外部の構成要素(例えば、送電装置2)と移動体に搭載される非接触電力伝送システム1との組み合わせによって非接触での電力伝送が実行されてもよい。
【0015】
送電装置2は、例えば、電源部6と、送電電力変換部7と、送電部8とを備える。なお、送電装置2は、例えば、車両の走行路等での所定の電力伝送区間に複数の少なくとも送電部8を備えてもよい。
電源部6は、例えば、商用電源等の交流電源と、交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータと、電力平滑用のキャパシタとを備える。電源部6は、交流電源から供給される交流電力をAC-DCコンバータによって直流電力に変換する。
【0016】
送電電力変換部7は、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。送電電力変換部7のインバータは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiC(Silicon Carbide)のMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ7a,7bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ7a,7bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ7cは、ブリッジ回路に並列に接続される。
【0017】
送電部8は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導等の磁界結合により、高周波の磁界の変化によって電力を送る。
図3に示すように、送電部8は、例えば、直列に接続される一次側コイル8a、一次側抵抗8b及び一次側キャパシタ8cによって形成される共振回路を備える。送電部8は、例えば、共振回路に流れる電流Itを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0018】
例えば、送電装置2は、予め設定される駆動周波数又は受電装置4から受け取る要求周波数の情報に応じて、送電電力変換部7の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、車両の受電装置4への電力伝送を行う。
【0019】
図1及び
図2に示すように、車両等の移動体の駆動制御装置3は、例えば、蓄電装置11と、蓄電電圧変換部12と、電力変換部13と、回転電機14とを備える。移動体の受電装置4は、例えば、受電部15と、受電電力変換部16とを備える。駆動制御装置3及び受電装置4は、例えば、共通の制御装置17を備える。
なお、例えば蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。例えば蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていてもよい。
【0020】
蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12に接続される。蓄電装置11は、車両の外部の送電装置2から非接触で伝送される電力によって充電される。蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12及び電力変換部13を介して回転電機14との間で電力を授受する。
蓄電装置11は、例えば、リチウムイオンバッテリ等のバッテリと、バッテリの電流を検出する電流センサ及びバッテリの電圧を検出する電圧センサとを備える。
なお、例えば電気自動車等において蓄電電圧変換部12を備えていない場合、蓄電装置11は、後述する電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。
【0021】
蓄電電圧変換部12は、電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。蓄電電圧変換部12は、例えば、昇圧及び降圧の双方向の電圧変換を行う電圧制御器を備える。電圧制御器は、双方向の電圧変換によって蓄電装置11の充電及び放電時に入力電力及び出力電力を変換する。蓄電電圧変換部12の電圧制御器は、例えば、1対の第1リアクトルと、第1素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
【0022】
1対の第1リアクトル12a,12aは、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対の第1リアクトル12a,12aは、第1素子モジュールの各相のハイサイドアームとローサイドアームとの接続点に接続される。
第1素子モジュールは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第1ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ12b,12cである。整流素子は、例えば、各トランジスタ12b,12cに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ12dは、蓄電装置11に並列に接続される。
蓄電電圧変換部12は、直列に接続される抵抗12e及びトランジスタ12fを備える。抵抗12e及びトランジスタ12fは、第1ブリッジ回路に並列に接続される。
【0023】
電圧制御器の1対の第1リアクトル12a,12a及び第1素子モジュールは、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対の第1リアクトル12a,12aに接続される2相のトランジスタ12b,12cのうちで第1の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
【0024】
電力変換部13は、回転電機14に接続される。電力変換部13は、例えば、直流電力と交流電力との変換を行う電力変換器を備える。電力変換器は、例えば、第2素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
第2素子モジュールは、例えば、3相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第2ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ13a,13bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ13a,13bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ13cは、第2ブリッジ回路に並列に接続される。
【0025】
第2素子モジュールは、電力の授受によって回転電機14の動作を制御する。第2素子モジュールは、例えば回転電機14の力行時には、正極及び負極の直流端子13p,13nから入力される直流電力を3相交流電力に変換して、3相交流電力を3相の交流端子13dから回転電機14に供給する。第2素子モジュールは、回転電機14の3相のステータ巻線への通電を順次転流させることによって回転駆動力を発生させる。
第2素子モジュールは、例えば回転電機14の回生時には、回転電機14の回転に同期がとられた各相のスイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の駆動によって、3相のステータ巻線から入力される3相交流電力を直流電力に変換する。第2素子モジュールは、3相交流電力から変換された直流電力を、蓄電電圧変換部12を介して蓄電装置11に供給することが可能である。
【0026】
回転電機14は、例えば、車両の走行駆動用に設けられる3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機14は、界磁用の永久磁石を有する回転子と、回転子を回転させる回転磁界を発生させる3相のステータ巻線を有する固定子とを備える。3相のステータ巻線は、電力変換部13の3相の交流端子13dに接続される。
回転電機14は、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。回転電機14は、例えば、車両の車輪に連結可能である場合、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって走行駆動力を発生させる。回転電機14は、車両の車輪側から入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させてもよい。回転電機14は、車両の内燃機関に連結可能である場合、内燃機関の動力によって発電してもよい。
【0027】
受電部15は、受電電力変換部16に接続される。受電部15は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導などの磁界結合により、送電部8から伝えられる高周波の磁界の変化によって電力を受け取る。
図3に示すように、受電部15は、例えば、直列に接続される二次側コイル15a、二次側抵抗15b及び二次側キャパシタ15cによって形成される共振回路を備える。受電部15は、例えば、共振回路に流れる電流Irを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0028】
図4に示すように、受電部15の一部を構成するコイルユニット18は、例えば、二次側コイル15aと、絶縁部材18aと、フェライトコア18bと、コア部材19とを備える。
【0029】
二次側コイル15aの外形は、例えば中心軸線の周りに渦巻状に形成されている。
絶縁部材18aの外形は、例えば厚さ方向に貫通孔が形成された矩形のシート状に形成されている。絶縁部材18aは、電気的絶縁性を有する材料によって形成されている。
フェライトコア18bの外形は、例えば厚さ方向に貫通孔が形成された矩形板状に形成されている。
【0030】
コア部材19は、例えば、板状部19aと、壁部19bと、蓋部19cとを備える。コア部材19は、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板のような磁性材料によって形成されている。
板状部19aの外形は、例えば中央部を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された矩形枠状に形成されている。
壁部19bの外形は、例えば板状部19aの貫通孔を取り囲む周縁部から中心軸線に沿った方向に突出する矩形枠状に形成されている。壁部19bは、二次側コイル15aの空芯領域並びに絶縁部材18a及びフェライトコア18bの各貫通孔に配置される。
蓋部19cの外形は、例えば矩形板状に形成されている。蓋部19cは、壁部19bの突出方向の先端部開口端を閉塞する。
【0031】
絶縁部材18a、フェライトコア18b及びコア部材19の板状部19aは、例えば、二次側コイル15aに対向する一次側コイル8aから見た場合の二次側コイル15aの背面側に配置される。二次側コイル15a、絶縁部材18a、フェライトコア18b及び板状部19aは、中心軸線に沿った方向で順次に積層されるように配置される。
【0032】
受電部15の二次側キャパシタ15cの容量は、例えば、受電部15の共振回路のインピーダンスの周波数特性での2つの共振点のうち高周波側の共振点に応じて設定される。例えば、低周波側でインピーダンスが極小となる共振点は同相の共振モード(低周波モード)を示し、高周波側でインピーダンスが極小となる共振点は逆相の共振モード(高周波モード)を示す。2つの共振点の間でインピーダンスが極大となる反共振点は同相の共振モードと逆相の共振モードとの切り換わりを示す。例えば製造時等に設定される二次側キャパシタ15cの容量は、所定の常温状態で共振点を高周波モードの周波数に合わせるように、高周波モードの周波数に応じて設定される。
【0033】
図1及び
図2に示す受電電力変換部16は、電力変換部13に接続される。受電電力変換部16は、交流電力を直流電力に変換する、いわゆるフルブリッジレス型(又はブリッジレス及びトーテムポール型)の力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を備える。いわゆるブリッジレスPFCは、ブリッジ接続される複数のダイオードによるブリッジ整流器を備えていないPFCであって、いわゆるトーテムポールPFCは、同方向に直列に接続(トーテムポール接続)される同一導電型の一対のスイッチング素子を備えるPFCである。
【0034】
受電電力変換部16は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第3ブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ16a,16bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ16a,16bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ16cは、第3ブリッジ回路に並列に接続される。
【0035】
例えば、受電部15及び受電電力変換部16を備える受電装置4は、送電装置2による電力伝送の周波数の情報に応じて、受電電力変換部16の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、送電装置2から伝送される電力を受け取る。
【0036】
制御装置17は、例えば、車両等の移動体の駆動制御装置3及び受電装置4を統合的に制御する。制御装置17は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御装置17の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0037】
制御装置17は、例えば、各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン及びオフに駆動するためのゲート信号を生成する。
例えば、制御装置17は、受電装置4の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から受け取る交流電力を直流電力に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。
【0038】
例えば、制御装置17は、受電装置4の複数のスイッチング素子を同期的にオン及びオフに駆動する同期整流動作と、二次側コイル15aを短絡する短絡動作とによって、目標出力に応じた出力を制御する。
例えば、制御装置17は、送電装置2から送られる電力によって受電部15に発生する電流、つまり二次側コイル15aに流れる電流Irの大きさ及び位相に応じて同期整流動作を制御する。制御装置17は、受電電力変換部16の複数のスイッチング素子を、いわゆるゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)のソフトスイッチングで制御する。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)では、各スイッチング素子は、各相のデッドタイム期間のオフ状態での出力容量(寄生容量)の放電によって両端電圧がゼロにされてからターンオン(オフ状態からオン状態への切り換え)が実行される。
例えば、制御装置17は、受電電力変換部16の各相のハイサイドアームでゼロ電圧スイッチング(ZVS)の同期整流動作を継続させつつ、各相のローサイドアームのみオンにすることで短絡動作を制御する。
【0039】
例えば、制御装置17は、送電装置2による電力伝送に要求する周波数(要求周波数)を、蓄電装置11の残容量(SOC:State Of Charge)に応じて設定する。
図5は、実施形態の非接触電力伝送システム1での制御装置17の第1の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、制御装置17は、例えば、駆動要求電力算出部21と、補機消費電力算出部22と、推定電力損失算出部23と、加算部24と、要求アシスト電力算出部25と、減算部26と、要求周波数取得部27とを備える。
【0040】
駆動要求電力算出部21は、例えば、移動体又は回転電機14の目標駆動力に応じて必要とされる電力変換部13から回転電機14に供給される電力(駆動要求電力)を算出する。目標駆動力は、例えば、移動体の移動状態又は回転電機14の状態に関する各種のセンサの出力に基づいて算出される。各種のセンサは、例えば、車両の速度を検出する速度センサ及びアクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ等と、回転電機14の状態を把握するための電流センサ、電圧センサ及び温度センサ等とである。
【0041】
補機消費電力算出部22は、例えば、各種のセンサの出力に基づき、蓄電装置11に接続される各種補機の消費電力(補機消費電力)を算出する。各種のセンサは、例えば、蓄電装置11の状態及び各種補機の消費電力等を把握するための電流センサ、電圧センサ及び温度センサ等である。各種補機は、例えば、電力変換器、空調装置及び各種ポンプ等である。
推定電力損失算出部23は、例えば、蓄電電圧変換部12及び受電電力変換部16での推定される電力損失を算出する。
【0042】
加算部24は、駆動要求電力算出部21から入力される駆動要求電力と、補機消費電力算出部22から入力される補機消費電力と、推定電力損失算出部23から入力される電力損失とを加算することによって、システムに必要とされる電力(要求システム電力)を算出する。
要求アシスト電力算出部25は、例えば、蓄電装置11の所望の出力の確保等に基づいて必要とされる残容量(SOC:State Of Charge)に応じた電力(要求アシスト電力)を算出する。
減算部26は、加算部24から入力される要求システム電力から、要求アシスト電力算出部25から入力される要求アシスト電力を減算することによって、受電装置4が送電装置2から受け取る電力の目標である要求電力を算出する。
【0043】
要求周波数取得部27は、減算部26から入力される要求電力に応じて、送電装置2の電力伝送に要求される周波数(要求周波数)を算出する。
要求周波数取得部27は、例えば、送電装置2の送電部8及び受電装置4の受電部15の各々での磁性体及びコイル等の組み合わせに応じて異なる特性を示す電力伝送の周波数と出力との対応関係のデータに基づき、要求電力に対応する要求周波数を取得する。
【0044】
例えば、制御装置17は、受電部15を構成する各素子及びコイルユニット18を構成する磁性部材の各温度に基づいて、要求周波数を補正する。
図6は、実施形態の非接触電力伝送システム1での制御装置17の第2の機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置17は、例えば、コイル温度検出部31と、磁性部材温度検出部32と、キャパシタ温度検出部33と、インダクタンス補正部34と、抵抗値補正部35と、相互インダクタンス補正部36と、キャパシタンス補正部37と、最大効率点算出部38と、差分算出部39と、要求周波数補正部40とを備える。
【0045】
コイル温度検出部31は、二次側コイル15aの温度を検出する温度センサを備え、温度の検出値の信号を出力する。
磁性部材温度検出部32は、例えばコア部材19の板状部19a等の磁性部材の温度を検出する温度センサを備え、温度の検出値の信号を出力する。
キャパシタ温度検出部33は、二次側キャパシタ15cの温度を検出する温度センサを備え、温度の検出値の信号を出力する。
【0046】
インダクタンス補正部34は、コイル温度検出部31から出力される二次側コイル15aの温度の検出値に応じて、予め設定された補正用のデータを参照して、二次側コイル15aの自己インダクタンスLrを補正する。
抵抗値補正部35は、コイル温度検出部31から出力される二次側コイル15aの温度の検出値に応じて、予め設定された補正用のデータを参照して、受電部15の共振回路の抵抗値Rrを補正する。
相互インダクタンス補正部36は、磁性部材温度検出部32から出力される磁性部材の温度の検出値に応じて、予め設定された補正用のデータを参照して、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの相互インダクタンスLmを補正する。
キャパシタンス補正部37は、キャパシタ温度検出部33から出力される二次側キャパシタ15cの温度の検出値に応じて、予め設定された補正用のデータを参照して、二次側キャパシタ15cのキャパシタンスCrを補正する。
【0047】
最大効率点算出部38は、各補正部34,35,36,37によって補正された自己インダクタンスLr、抵抗値Rr、相互インダクタンスLm及びキャパシタンスCrに基づき、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの間の電力伝送の効率ηが最大となる最大効率点での周波数ωを算出する。
例えば、下記数式(1)に示すように、電力伝送の効率ηは、電力伝送の周波数ωと、相互インダクタンスLmと、負荷抵抗値(送電部8及び受電部15から見た負荷側の抵抗値)Rと、抵抗値Rrと、自己インダクタンスLrと、キャパシタンスCrと、送電部8の共振回路の抵抗値Rtとによって記述される。
【0048】
【0049】
差分算出部39は、要求周波数取得部27から出力される要求周波数と、最大効率点算出部38から出力される最大効率点での周波数ωとの差分を算出する。
要求周波数補正部40は、差分算出部39から出力される周波数の差分に応じて、要求周波数を補正する。
【0050】
制御装置17は、例えば、送電装置2と移動体との間の適宜の通信によって、移動体が送電装置2の各電力伝送区間に到達するよりも前の各タイミングで算出及び補正した要求周波数を送電装置2に送信する。送電装置2と移動体との間の通信は、例えば、送電装置2及び受電装置4の各コイル8a,15a間での誘起電圧による通信又は送電装置2及び移動体の各々に追加的に設けられる通信装置による無線通信等である。
【0051】
上述したように、実施形態の非接触電力伝送システム1によれば、制御装置17は、二次側コイル15a、コア部材19及び二次側キャパシタ15cの各温度に基づいて、送電装置2による電力伝送の要求周波数を補正することにより、受電側での温度の変動に起因する電力伝送の出力低下及び損失増大を抑制することができる。
制御装置17は、二次側コイル15aの自己インダクタンスLrと、受電部15の抵抗値Rrと、二次側キャパシタ15cのキャパシタンスCrと、相互インダクタンスLmとを補正することにより、例えば受電部15の温度変化等に応じて共振回路の固有値(周波数)が変動する場合であっても、要求周波数の補正によって出力低下及び損失増大を抑制することができる。
【0052】
制御装置は、蓄電装置11の残容量(SOC)に応じた要求電力に基づいて設定される要求周波数を補正することにより、送電装置2からの電力伝送及び移動体の電力消費に伴う蓄電装置11の充放電が増大することを抑制しつつ、電力伝送の出力低下及び損失増大を抑制することができる。
【0053】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、制御装置17は、各温度検出部31,32,33を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、制御装置17は、各温度検出部31,32,33の代わりに、受電部15の各部位での熱抵抗と、受電部の雰囲気温度と、移動体の移動時に受ける風(走行風等)による冷却となどに基づく温度推定の処理によって、各部位の温度を算出してもよい。
【0054】
上述した実施形態では、非接触電力伝送システム1は、蓄電装置11の入出力電力を変換する蓄電電圧変換部12を備えるとしたが、これに限定されず、蓄電電圧変換部12は省略されてもよい。
例えば、蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備え、蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。
【0055】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1…非接触電力伝送システム、2…送電装置、3…駆動制御装置、4…受電装置、6…電源部、7…送電電力変換部、8…送電部、8a…一次側コイル(送電側コイル)、11…蓄電装置、12…蓄電電圧変換部、13…電力変換部、14…回転電機、15…受電部、15a…二次側コイル(コイル)、15c…二次側キャパシタ(キャパシタ)、16…受電電力変換部(電力変換部)、17…制御装置、27…要求周波数取得部、31…コイル温度検出部(温度取得部)、32…磁性部材温度検出部(温度取得部)、33…キャパシタ温度検出部(温度取得部)、34…インダクタンス補正部(補正部)、35…抵抗値補正部(補正部)、36…相互インダクタンス補正部(補正部)、37…キャパシタンス補正部(補正部)、38…最大効率点算出部(補正部)、39…差分算出部(補正部)、40…要求周波数補正部(補正部)。