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特許7638317サーミスタ取付構造およびサーミスタユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】サーミスタ取付構造およびサーミスタユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20250221BHJP
【FI】
H02K11/25
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023054761
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2024142573
(43)【公開日】2024-10-11
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慎吾
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-109643(JP,A)
【文献】中国実用新案第202197176(CN,U)
【文献】特開2003-92858(JP,A)
【文献】特許第7212209(JP,B1)
【文献】特開2018-107889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ径方向(Dr)に突出するティース部(35)の外周に、複数の層(32a)をなすように巻線(32)を巻回したコイル(37)と、
前記コイル(37)の温度を検出するセンサ部(41)を筐体(51)の内部に有するサーミスタユニット(40)と、を備え、
前記サーミスタユニット(40)の筐体(51)が、前記コイル(37)における一対の層(32a)の間に巻き込まれて固定されるサーミスタ取付構造であって、
前記筐体(51)における前記一対の層(32a)に接する各表面の少なくとも一方に、接触する前記層(32a)の各巻線(32)の外径に対応する凹形状の当接面(53a,54a)を有するコイル接触部(53,54)が形成され、
前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各当接面(53a,54a)の凹形状の中心(53c,54c)と前記センサ部(41)の中心(41c)とが、前記モータ径方向(Dr)で互いにオフセットしていることを特徴とするサーミスタ取付構造。
【請求項2】
前記コイル接触部(53,54)は、前記筐体(51)における前記一対の層(32a)に接する各表面に形成され、
前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各コイル接触部(53,54)における各当接面(53a,54a)の凹形状の中心(53c,54c)と前記センサ部(41)の中心(41c)とが、前記モータ径方向(Dr)で互いにオフセットしていることを特徴とする請求項1に記載のサーミスタ取付構造。
【請求項3】
前記筐体(51)を挟み込む一対の層(32a)は、前記モータ径方向(Dr)に直交する積層方向に積層され、
前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各コイル接触部(53,54)は、複数の当接面(53a,54a)の凹形状の各々に中心(53c,54c)を有し、
各コイル接触部(53,54)の一方の各凹形状の中心(53c,54c)からそれぞれ前記積層方向に沿う仮想直線(t1)を延ばしたとき、前記モータ径方向(Dr)で隣り合う一対の仮想直線(t1)の間に、前記センサ部(41)が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のサーミスタ取付構造。
【請求項4】
前記各コイル接触部(53,54)の内、少なくともティース部(35)から遠い第一コイル接触部(53)は、前記モータ径方向(Dr)から見て、前記ティース部(35)から離れる側に凸の湾曲形状に形成され、
前記各コイル接触部(53,54)の内、前記ティース部(35)に近い側の第二コイル接触部(54)は、前記モータ径方向(Dr)から見て、前記第一コイル接触部(53)よりも曲率が小さい湾曲形状か、あるいは直線状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーミスタ取付構造。
【請求項5】
モータ径方向(Dr)に突出するティース部(35)の外周に複数の層(32a)をなすように巻線(32)を巻回したコイル(37)の温度を検出するセンサ部(41)と、
前記センサ部(41)を内蔵する筐体(51)と、を有し、
前記筐体(51)が前記コイル(37)における一対の層(32a)の間に巻き込まれて固定されるサーミスタユニット(40)であって、
前記筐体(51)における前記一対の層(32a)に接する各表面の少なくとも一方に、接触する前記層(32a)の各巻線(32)の外径に対応する凹形状の当接面(53a,54a)を有するコイル接触部(53,54)が形成され、
前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各当接面(53a,54a)の凹形状の中心(53c,54c)と前記センサ部(41)の中心(41c)とが、前記モータ径方向(Dr)で互いにオフセットしていることを特徴とするサーミスタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタ取付構造およびサーミスタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
例えば、モータ(回転電機)のコイルに、コイル温度を測定するサーミスタを取り付けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-202685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した電動化技術において、例えばコイル自動巻き設備を用いて製造されるモータは、コイル表面にサーミスタを取り付けることがある。この場合、サーミスタの片面での測温となり、検温制度の点で課題がある。このため、コイル温度を精度良く測定するために、ステータコアの外周に積層されたコイルの層間にサーミスタを挿入することが考えられる。これは、例えばサーミスタを樹脂製の筐体内に保持してユニット化し、このサーミスタユニットをコイル自動巻き工程の途中でコイル表面に配置し、この状態でさらにコイルを巻き付けることで、コイルの層間にサーミスタユニットを巻き込んで固定する。
しかし、上記のようにサーミスタユニットを巻き込んで巻線を巻回すると、サーミスタユニットの筐体に巻線からの荷重入力によって応力が過大となることがあるため、筐体の負荷を抑える構成が要望されている。
【0005】
そこで本発明は、コイルの層間にセンサ部を内蔵した筐体を巻き込んで固定するサーミスタ取付構造およびサーミスタユニットにおいて、筐体の負荷を抑えるとともにコイル温度の測定精度を向上させることを目的とする。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、モータ径方向(Dr)に突出するティース部(35)の外周に、複数の層(32a)をなすように巻線(32)を巻回したコイル(37)と、前記コイル(37)の温度を検出するセンサ部(41)を筐体(51)の内部に有するサーミスタユニット(40)と、を備え、前記サーミスタユニット(40)の筐体(51)が、前記コイル(37)における一対の層(32a)の間に巻き込まれて固定されるサーミスタ取付構造であって、前記筐体(51)における前記一対の層(32a)に接する各表面の少なくとも一方に、接触する前記層(32a)の各巻線(32)の外径に対応する凹形状の当接面(53a,54a)を有するコイル接触部(53,54)が形成され、前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各当接面(53a,54a)の凹形状の中心(53c,54c)と前記センサ部(41)の中心(41c)とが、前記モータ径方向(Dr)で互いにオフセットしていることを特徴とする。
この構成によれば、ステータのコイルにおける複数の層の間にサーミスタユニットの筐体を巻き込んで固定する構成において、筐体表面のコイル接触部に、個々の巻線を整合させるように凹形状の当接面を形成し、筐体の断面視で各当接面の凹形状の中心とセンサ部の中心とが互いにオフセットすることで、波形状のコイル接触部を有する筐体の厚みのある部位にセンサ部を配置可能となる。これにより、例えばティース部に巻回される巻線に沿うように筐体を湾曲させる構成であっても、特にセンサ部の周囲で筐体の肉厚を確保しやすくなる。このため、筐体におけるセンサ部周辺の剛性を確保し、筐体に巻線を巻き付ける際のセンサ部周辺の応力の増加が抑えられる。すなわち、筐体の全体的な剛性を高め、筐体ひいてはサーミスタユニットの小形軽量化を図ることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記コイル接触部(53,54)は、前記筐体(51)における前記一対の層(32a)に接する各表面に形成され、前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各コイル接触部(53,54)における各当接面(53a,54a)の凹形状の中心(53c,54c)と前記センサ部(41)の中心(41c)とが、前記モータ径方向(Dr)で互いにオフセットしていることを特徴とする。
この構成によれば、筐体両面のコイル接触部おいて、筐体の断面視で各当接面の凹形状の中心とセンサ部の中心とが互いにオフセットすることで、筐体両面に波形状のコイル接触部を有する構成でも、確実に厚みのある部位にセンサ部を配置可能となる。これにより、上記同様、筐体の全体的な剛性を高め、筐体ひいてはサーミスタユニットの小形軽量化を図ることができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、前記筐体(51)を挟み込む一対の層(32a)は、前記モータ径方向(Dr)に直交する積層方向に積層され、前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各コイル接触部(53,54)は、複数の当接面(53a,54a)の凹形状の各々に中心(53c,54c)を有し、各コイル接触部(53,54)の一方の各凹形状の中心(53c,54c)からそれぞれ前記積層方向に沿う仮想直線(t1)を延ばしたとき、前記モータ径方向(Dr)で隣り合う一対の仮想直線(t1)の間に、前記センサ部(41)が配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、筐体両面のコイル接触部おいて、筐体の断面視で各当接面の凹形状の中心位置(モータ径方向位置)の間にセンサ部を配置可能となる。これにより、上記同様、筐体の全体的な剛性を高め、筐体ひいてはサーミスタユニットの小形軽量化を図ることができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第一又は第二の態様において、前記各コイル接触部(53,54)の内、少なくともティース部(35)から遠い第一コイル接触部(53)は、前記モータ径方向(Dr)から見て、前記ティース部(35)から離れる側に凸の湾曲形状に形成され、前記各コイル接触部(53,54)の内、前記ティース部(35)に近い側の第二コイル接触部(54)は、前記モータ径方向(Dr)から見て、前記第一コイル接触部(53)よりも曲率が小さい湾曲形状か、あるいは直線状に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、筐体両面の各コイル接触部の内、ティース部から通い外周側の第一コイル接触部を、ティース部を巻回する巻線に沿うように巻線の層の積層方向に湾曲させることで、筐体を巻き込む巻線が筐体表面に馴染むように巻回されて筐体への接触面積を増やし、コイルの測温精度を向上させるとともに、巻線から筐体に加わる負荷を軽減(分散)させることができる。
筐体両面の各コイル接触部の内、ティース部に近い内周側の第二コイル接触部は、外周側の第一コイル接触部よりも小さい曲率の湾曲形状とするか直線状とすることで、第一コイル接触部の湾曲端部側ほど筐体の積層方向の厚みを減少させることができる。これにより、筐体を巻き込む巻線は、第一コイル接触部の湾曲端部を過ぎた後に内周側の層に接触(合流)しやすくなり、巻線を巻き付けることによる筐体の負荷を抑え、筐体の剛性を最適化して小形軽量化を図ることができる。
筐体におけるティース部に近い内側の第二コイル接触部を湾曲させることで、筐体の内側の表面が巻線に馴染むように接して巻線への接触面積を増やし、コイルの測温精度をより一層向上させることができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、モータ径方向(Dr)に突出するティース部(35)の外周に複数の層(32a)をなすように巻線(32)を巻回したコイル(37)の温度を検出するセンサ部(41)と、前記センサ部(41)を内蔵する筐体(51)と、を有し、前記筐体(51)が前記コイル(37)における一対の層(32a)の間に巻き込まれて固定されるサーミスタユニット(40)であって、前記筐体(51)における前記一対の層(32a)に接する各表面の少なくとも一方に、接触する前記層(32a)の各巻線(32)の外径に対応する凹形状の当接面(53a,54a)を有するコイル接触部(53,54)が形成され、前記筐体(51)における前記モータ径方向(Dr)に沿う断面において、各当接面(53a,54a)の凹形状の中心(53c,54c)と前記センサ部(41)の中心(41c)とが、前記モータ径方向(Dr)で互いにオフセットしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルの層間にセンサ部を内蔵した筐体を巻き込んで固定するサーミスタ取付構造およびサーミスタユニットにおいて、筐体の負荷を抑えるとともにコイル温度の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態におけるモータを軸方向から見た平面図である。
図2】上記モータにおけるサーミスタユニットを取り付けたコイルを軸方向から見た平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5】サーミスタユニットの斜視図である。
図6A図2のVI-VI断面図である。
図6B図6Aに示す筐体の変形例を示す断面図である。
図7】センサ部の詳細を示す図4に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態が適用された回転電機の一部を示している。
<モータ>
図1に示すように、回転電機1Aは、ロータ2と、ステータ3Aと、ロータ2及びステータ3Aを覆うケーシング4と、を備えている。本実施形態において、回転電機1Aは、モータである。本実施形態において、ロータ2は、ステータ3Aに対して内周側に配置されている。つまり、回転電機1Aは、インナーロータ型のモータである。
【0014】
<ロータ>
ロータ2は、回転軸21と、ロータコア22と、複数の磁極部23と、を有している。
回転軸21は、軸方向(図1で紙面に直交する方向)に延びている。回転軸21は、軸受(図示無し)を介して、軸方向に延びる軸線C回りの周方向(モータ周方向)Dcに回転可能に支持されている。
【0015】
ロータコア22は、回転軸21に対し、軸線Cを中心とした径方向(モータ径方向)Drの外周側に設けられている。ロータコア22は、軸方向から見て円形の円盤状に形成されている。軸方向から見て、ロータコア22の中心部には、回転軸21が挿通される軸挿通孔22hが形成されている。ロータコア22は、回転軸21と一体に周方向Dcに回転可能である。
【0016】
複数の磁極部23は、ロータコア22の外周部で、周方向Dcに間隔をあけて等間隔に配置されている。各磁極部23は、複数の永久磁石25を備えている。複数の永久磁石25は、ロータコア22に形成された複数の磁石挿通孔24の各々に埋め込まれている。例えば、永久磁石25は、ネオジム磁石等の永久磁石である。なお、磁極部23を構成する永久磁石25の数、配置、各永久磁石25の形状は適宜変更可能である。
【0017】
<ステータ>
ステータ3Aは、ロータコア22に対して、径方向Drの外周側に空隙(エアギャップ)をあけて配置されている。ステータ3Aは、ケーシング4の径方向Drの内周側に固定されている。ステータ3Aは、ステータコア31と、巻線32と、を有している。
【0018】
ステータコア31は、環状部34と、複数のティース部35と、を一体に有している。
環状部34は、ステータコア31の外周部に形成されている。環状部34は、周方向Dcに延び、軸方向から見て、円環状に形成されている。環状部34ひいてはステータコア31は、複数のティース部35毎に周方向Dcで分割された単位部品を環状に一体化して構成されている(図2参照)。
【0019】
複数のティース部35は、周方向Dcに間隔をあけて等間隔に形成されている。各ティース部35は、環状部34の内周部から径方向Drに沿って内周側に延びている。周方向Dcで隣り合うティース部35の間には、スロット36が形成されている。スロット36は、ステータコア31の内周側を切り欠く態様である。スロット36は、ティース部35と同数が形成されている。
【0020】
巻線32は、導線(例えば銅線)であり、ステータコア31に保持されている。巻線32は、複数のティース部35の各々に、絶縁樹脂製のインシュレータ38を介して巻き回されている。巻線32は、ティース部35の突出方向(モータ径方向Dr)から見て、ティース部35の外周に複数の層32aを積層するように巻き回されている。各ティース部35に巻線32が巻き回されることにより、ステータ3Aには、周方向Dcに間隔をあけて並ぶ複数のコイル37が形成されている。
【0021】
<サーミスタユニット>
図2図3を参照し、回転電機1Aには、コイル37の温度を測定するサーミスタユニット40が取り付けられている。サーミスタユニット40は、複数のコイル37の内の一つに取り付けられている。サーミスタユニット40は、コイル37の巻線32の層32a間に、センサ部41を内蔵した筐体51を挿入した状態で固定されている。
【0022】
図5を併せて参照し、実施形態のサーミスタユニット40は、サーミスタ本体であるセンサ部41と、センサ部41から延びる一対のリード線(電線)43と、各リード線43に接続される一対の外部端子45と、センサ部41、リード線43および外部端子45をインサートして成型される筐体51と、を備えている。
【0023】
図7を参照し、センサ部41は、サーミスタ素体41a(例えば半導体セラミックス)をガラス管41b内に封止し、さらにエポキシ樹脂等の保護層41dで樹脂モールドした組み立て部品である。センサ部41が保護層41dを有することで、センサ部41を内蔵した筐体51をインサート成型する際にガラス管41bが割れることを防止する。また、筐体51をコイル37の巻線32で巻き込む際にも、巻線32から筐体51に加わる外力によってガラス管41bが割れることを防止する。
【0024】
図2図3図5を参照し、センサ部41は、円筒状をなし、コイル37に取り付けた状態で、モータ軸方向Da(回転軸21の軸方向)から見たとき、センサ軸方向をモータ周方向Dc(接線方向)に沿わせるように配置される。モータ周方向Dcはティース部35の幅方向でもあり、モータ径方向Drはティース部35の環状部34からの突出方向でもあり、モータ軸方向Daはティース部35ひいては筐体51の厚さ方向でもある。
【0025】
モータ径方向Drで図中右側は外周側、図中左側は内周側である。説明都合上、モータ軸方向Daで図中上側を「上」、図中下側を「下」と称する。サーミスタユニット40は、モータ軸方向Daでコイル37の上面側に配置されている。本実施形態のサーミスタユニット40の配置部位において、モータ軸方向Daはコイル37の複数の層32aの積層方向に相当する。
【0026】
センサ部41の軸方向両端からは、それぞれリード線43が導出される。各リード線43は、モータ周方向Dcに延びた後にモータ径方向Drの外周側に屈曲して延びる。各リード線43の先端部は、対応する外部端子45の基端部47に電気的に接続される。例えば、各リード線43の先端部と対応する外部端子45の基端部47とは、筐体51にインサートする前に半田等で接続してもよい。
【0027】
各外部端子45は、一方向に長い金属板(導体板)の一端側を、残余の部位に対して直角に屈曲させた態様である。各外部端子45は、コイル37に取り付けた状態で、屈曲部46よりも一端側をモータ周方向Dcに沿わせるとともに、屈曲部46よりも他端側をモータ軸方向Daに沿わせて配置されている。
【0028】
各外部端子45は、前記一端側の基端部47を筐体51内にインサートして一体化されている。各外部端子45の一端側は、板厚方向をモータ軸方向Daに向けて配置されている。各外部端子45の基端部47は、先端同士をモータ周方向Dcで互いに向かい合わせるとともに互いに離隔させている。各外部端子45の基端部47は、互いに同一平面上に位置するように配置されている。
【0029】
各外部端子45の前記他端側は、板厚方向をモータ周方向Dcに向けて配置されている。各外部端子45の他端側の下側は、モータ径方向Drの幅が比較的狭い幅狭部48とされ、各外部端子45の他端側の上側は、モータ径方向Drの幅が比較的広い端子本体49とされている。幅狭部48の上端部には、後述する係止爪38bを係止する係止孔48aが形成されている。端子本体49の下端部には、モータ径方向Drの幅を広げた拡幅部49aが形成されている。各端子本体49には、例えばモータ制御装置から延びる配線を接続可能である。
【0030】
図5を参照し、筐体51は、モータ軸方向Daの厚さを抑えた扁平状をなしている。筐体51は、モータ軸方向Daから見て略矩形状をなしている。筐体51は、モータ径方向Drの内周側の部位をコイル37の層32a間に挿入する挿入部52とし、モータ径方向Drの外周側の部位をコイル37の外部に配置される外部延出部55としている。筐体51は、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)等の耐熱性を有する樹脂で形成されている。
【0031】
挿入部52のモータ軸方向Daの上下面には、コイル37における筐体51を挟み込む一対の層32aの各々に接触する上下コイル接触部53,54が形成されている。
図6Aを併せて参照し、挿入部52の上面側(ティース部35と反対側)の上コイル接触部(第一コイル接触部)53は、モータ径方向Drから見て、ティース部35から離れる側(モータ軸方向Daでティース部35と反対側、図の上方)に凸の円弧状に形成されている。例えば、挿入部52の下面側(ティース部35側)の下コイル接触部(第二コイル接触部)54は、モータ径方向Drから見て、モータ軸方向Daと直交する直線状に形成されている。
【0032】
これにより、挿入部52は、モータ径方向Drから見て、モータ周方向Dcの中央部から端部側に位置するほど、モータ軸方向Daの上下厚さが減少するように形成されている。外部延出部55も挿入部52と同様に、モータ径方向Drから見て、上面側が上方に凸の円弧状に形成され、下面側がモータ軸方向Daに直交する直線状に形成され、モータ周方向Dcの中央部から端部側に位置するほど上下厚さを減少させている。
【0033】
図6Bに示すように、挿入部52の下面側の下コイル接触部54は、モータ径方向Drから見て、ティース部35から離れる側(上方)に凸の円弧状に形成された下コイル接触部54’としてもよい。下コイル接触部54’におけるモータ径方向Drから見たときの曲率は、上コイル接触部53におけるモータ径方向Drから見たときの曲率よりも小さい。これにより、挿入部52は、モータ径方向Drから見て、モータ周方向Dcの中央部から端部側に位置するほどモータ軸方向Daの上下厚さを減少させる態様を維持する。
【0034】
図4図5を参照し、各コイル接触部53,54には、コイル37における各コイル接触部53,54が接触する層32aの各巻線32の外径に対応する(外周形状に整合する)凹形状の当接面53a,54aが複数形成されている。複数の当接面53a,54aは、モータ径方向Drで互いに隣接して並列に並んでいる。各コイル接触部53,54は、複数の凹形状が並んだ波打ち形状とされている。
【0035】
図4を参照し、筐体51におけるモータ径方向Drに沿う断面において、各コイル接触部53,54における各当接面53a,54aの凹形状の中心53c,54c(巻線32の軸心に相当)とセンサ部41の中心41cとは、モータ径方向Drで互いにオフセットしている。
【0036】
詳細には、筐体51におけるモータ径方向Drに沿う断面において、各コイル接触部53,54の一方における各当接面53a又は54aの凹形状の中心53c又は54cから、それぞれ前記積層方向(モータ軸方向Da)に沿う仮想直線t1を延ばしたとき、各仮想直線t1上には、各コイル接触部53,54の他方における各当接面54a又は53aの凹形状の中心54c又は53cがそれぞれ配置されている。
【0037】
すなわち、筐体51をコイル37に巻き込む部位では、モータ径方向Drに沿う断面において、筐体51両面の一対の層32aが、複数の当接面53a,54aの凹形状のモータ径方向位置を互いに一致させている。そして、モータ径方向Drで隣り合う一対の仮想直線t1の間に、センサ部41の全体が配置されている。モータ径方向Drに沿う断面において、センサ部41と巻線32とは概ね同一径を有し、センサ部41を配置する部位では、筐体51上下の一対の層32aの巻線32とセンサ部41とが、互いに半径分だけモータ径方向位置をずらして重なるため、センサ部41を配置しやすく、センサ部41の周囲に筐体51の肉厚を確保しやすい。
【0038】
ここで、サーミスタユニット40は、取り付ける対象となるコイル37を製造する際のコイル自動巻き工程の途中で、自動巻き工程を一旦停止し、内周側の層32aの表面にサーミスタユニット40を配置した後、自動巻き工程を再開してサーミスタユニット40をコイル37内に巻き込んでいく。
【0039】
コイル37の巻線32は、ティース部35の突出方向(モータ径方向Dr)から見て、ティース部35の外周を巻回するように巻き付けられる。巻線32は、ティース部35の突出方向から見て、ティース部35の外周に複数の層32aを積層するように巻き付けられる。サーミスタユニット40の配置部位において、複数の層32aの内、積層方向(モータ軸方向Da)で隣り合う一対の層32aの間に、サーミスタユニット40の筐体51が巻き込まれて固定される。
【0040】
以下、サーミスタユニット40を製造途中のコイル37(ワーク)に位置決めして仮固定するための構成について説明する。サーミスタユニット40のワークに対する位置決めは、主に筐体51の外部延出部55および一対の外部端子45によってなされる。サーミスタユニット40は、コイル自動巻き工程の途中でコイル37表面に配置(仮固定)され、この状態でさらに巻線32を巻き付けることで、筐体51がコイル37の巻線32の層32a間に巻き込まれて固定される。
【0041】
図2図3図6Aを参照し、モータ径方向Drでインシュレータ38の外周側には、モータ軸方向Daで上方に起立する一対の立壁部38aが形成されている。一対の立壁部38aは、モータ周方向Dcで互いに間隔を空けて離隔し、前記間隔内に筐体51の外部延出部55および一対の外部端子45が配置される。各立壁部38aには、各外部端子45の係止孔48aに対応する係止爪38bが突設されている。
【0042】
サーミスタユニット40は、ワークに対してモータ軸方向Daの上方から接近し、一対の立壁部38aの間に筐体51の外部延出部55および一対の外部端子45を挿入する。一対の外部端子45は、モータ周方向外側の外面を、一対の立壁部38aのモータ周方向内側の内面に摺接させるように、一対の立壁部38aの間に挿入される。これにより、サーミスタユニット40のモータ周方向Dcでの位置決めがなされる。
【0043】
一対の外部端子45は、各々の幅狭部48のモータ径方向内周側の端縁48bを、一対の立壁部38aの内面に形成された当接部38cに当接させる。これにより、サーミスタユニット40のモータ径方向Drでの位置決めがなされる。この位置決めでは、サーミスタユニット40はモータ径方向外周側に変位可能であり、筐体51の挿入部52の各当接面53a,54aとコイル37の巻線32との整合を優先させることができる。
【0044】
一対の外部端子45は、各々の係止孔48aに立壁部38aの係止爪38bが挿入(係合)されることで、モータ軸方向Daで上方側への離脱が規制され、もってモータ軸方向Daでの位置決めがなされる。例えば係止孔48aと係止爪38bとの係合に規定の遊びを設定することで、サーミスタユニット40がモータ軸方向Daに規定量だけ変位可能とし、筐体51の挿入部52がコイル37の一対の層32aに負荷なく挟み込まれることを優先させることができる。
【0045】
以上説明したように、上記実施形態におけるサーミスタ取付構造は、モータ径方向Drに突出するティース部35に複数の層32aをなすように巻線32を巻回したコイル37と、前記コイル37の温度を検出するセンサ部41を筐体51の内部に有するサーミスタユニット40と、を備え、前記サーミスタユニット40の筐体51が、前記コイル37における一対の層32aの間に巻き込まれて固定されるサーミスタ取付構造であって、前記筐体51における前記一対の層32aに接する各表面に、接触する前記層32aの各巻線32の外径に対応する凹形状の当接面53a,54aを複数有するコイル接触部53,54が形成され、前記筐体51における前記モータ径方向Drに沿う断面において、各当接面53a,54aの凹形状の中心53c,54cと前記センサ部41の中心41cとが、前記モータ径方向Drで互いにオフセットしている。
【0046】
すなわち、上記実施形態におけるサーミスタユニット40は、モータ径方向Drに突出するティース部35に複数の層32aをなすように巻線32を巻回したコイル37の温度を検出するセンサ部41と、前記センサ部41を内蔵する筐体51と、を有し、前記筐体51が前記コイル37における一対の層32aの間に巻き込まれて固定されるサーミスタユニット40であって、前記筐体51における前記一対の層32aに接する各表面に、接触する前記層32aの各巻線32の外径に対応する凹形状の当接面53a,54aを複数有するコイル接触部53,54が形成され、前記筐体51における前記モータ径方向Drに沿う断面において、各当接面53a,54aの凹形状の中心53c,54cと前記センサ部41の中心41cとが、前記モータ径方向Drで互いにオフセットしている。
【0047】
この構成によれば、ステータ3Aのコイル37における複数の層32aの間にサーミスタユニット40の筐体51を巻き込んで固定する構成において、筐体51表面のコイル接触部53,54に、個々の巻線32を整合させるように凹形状の当接面53a,54aを複数形成し、筐体51の断面視で各当接面53a,54aの凹形状の中心53c,54cとセンサ部41の中心41cとが互いにオフセットすることで、波形状のコイル接触部53,54を有する筐体51の厚みのある部位にセンサ部41を配置可能となる。これにより、例えばティース部35に巻回される巻線32に沿うように筐体51を湾曲させる構成であっても、特にセンサ部41の周囲で筐体51の肉厚を確保しやすくなる。このため、筐体51におけるセンサ部41周辺の剛性を確保しやすく、筐体51に巻線32を巻き付ける際のセンサ部41周辺の応力の増加が抑えられる。すなわち、筐体51の全体的な剛性を高め、筐体51ひいてはサーミスタユニット40の小形軽量化を図ることができる。
【0048】
上記サーミスタ取付構造(およびサーミスタユニット40)において、前記筐体51を挟み込む一対の層32aは、前記モータ径方向Drに直交する積層方向(モータ軸方向Da)に積層され、前記筐体51における前記モータ径方向Drに沿う断面において、各コイル接触部53,54は、複数の当接面53a,54aの凹形状の各々に中心53c,54cを有し、各コイル接触部53,54の一方の各凹形状の中心53c,54cからそれぞれ前記積層方向に沿う仮想直線t1を延ばしたとき、各仮想直線t1上に、各コイル接触部53,54の他方の各凹形状の中心53c,54cがそれぞれ配置され、
前記モータ径方向Drで隣り合う一対の仮想直線t1の間に、前記センサ部41が配置されている。
この構成によれば、筐体51両面のコイル接触部53,54おいて、筐体51の断面視で各当接面53a,54aの凹形状の中心位置(モータ径方向位置)を、筐体51両面で合わせることで、モータ径方向Drで隣接する凹形状の間で確実に厚みのある部位に、センサ部41を配置可能となる。これにより、上記同様、筐体51の全体的な剛性を高め、筐体51ひいてはサーミスタユニット40の小形軽量化を図ることができる。
【0049】
上記サーミスタ取付構造(およびサーミスタユニット40)において、前記各コイル接触部53,54の内、少なくともティース部35から遠い第一コイル接触部53は、前記モータ径方向Drから見て、前記ティース部35から離れる側に凸の湾曲形状に形成され、前記各コイル接触部53,54の内、前記ティース部35に近い側の第二コイル接触部54は、前記モータ径方向Drから見て、前記第一コイル接触部53よりも曲率が小さい湾曲形状か、あるいは直線状に形成されている。
この構成によれば、筐体51両面の各コイル接触部53,54の内、ティース部35から通い外側の第一コイル接触部53を、ティース部35を巻回する巻線32に沿うように巻線32の層32aの積層方向に湾曲させることで、筐体51を巻き込む巻線32が筐体51表面に馴染むように巻回されて筐体51への接触面積を増やし、コイル37の測温精度を向上させるとともに、巻線32から筐体51に加わる負荷を軽減(分散)させることができる。
【0050】
筐体51両面の各コイル接触部53,54の内、ティース部35に近い内周側の第二コイル接触部54は、外周側の第一コイル接触部53よりも小さい曲率の湾曲形状とするか直線状とすることで、第一コイル接触部53の湾曲端部側ほど筐体51の積層方向の厚みを減少させることができる。これにより、筐体51を巻き込む巻線32は、第一コイル接触部53の湾曲端部を過ぎた後に内周側の層32aに接触(合流)しやすくなり、巻線32を巻き付けることによる筐体51の負荷を抑え、筐体51の剛性を最適化して小形軽量化を図ることができる。
筐体51におけるティース部35に近い内側の第二コイル接触部54を湾曲させることで、筐体51の内側の表面が巻線32に馴染むように接して巻線32への接触面積を増やし、コイル37の測温精度をより一層向上させることができる。
【0051】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、回転電機1Aは、インナーロータ型のモータであるが、この構成に限らない。例えば、回転電機は、ロータが、ステータに対して外周側に配置されたアウターロータ型であってもよい。また、回転電機は、モータに限らず、発電機であってもよい。
サーミスタユニットの筐体は、接触する層の各巻線に対応した波形状のコイル接触部を、筐体の上下面の一方のみに形成する構成でもよい。コイル接触部に形成される凹形状の当接面は、二つ以上の複数に限らず一つであってもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1A 回転電機、モータ
3A ステータ
31 ステータコア
32 巻線
32a 層
35 ティース部
37 コイル
40 サーミスタユニット
41 センサ部
41c 中心
51 筐体
53 上コイル接触部(第一コイル接触部)
53a 当接面
53c 中心
54 下コイル接触部(第二コイル接触部)
54a 当接面
54c 中心
t1 仮想直線
Dr モータ径方向
Da モータ軸方向
Dc モータ周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7