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特許7638375正極活物質、正極およびリチウム二次電池
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  • 特許-正極活物質、正極およびリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】正極活物質、正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20250221BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250221BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250221BHJP
   C01G 45/1257 20250101ALI20250221BHJP
   C01G 53/50 20250101ALI20250221BHJP
   C01G 53/502 20250101ALI20250221BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/36 E
C01G45/1257
C01G53/50
C01G53/502
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023533618
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2021016129
(87)【国際公開番号】W WO2022119156
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168858
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067237
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080132
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080133
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138123
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0144259
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0145310
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】リム ラ ナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン エー レウム
(72)【発明者】
【氏名】キム ギュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム キョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ハイ ビン
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033848(JP,A)
【文献】特開2011-134670(JP,A)
【文献】特開2016-072179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/36
H01G 11/22
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウム、ニッケルおよびマンガンを含むリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウムマンガン系酸化物、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相との固溶体であり
前記固溶体中に、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在
前記リチウムマンガン系酸化物中の、金属元素の濃度は、下記の式2を満たす、正極活物質。
[式2]
0.40≦M 2′ /M 1′ ≦0.70
ここで、M 1′ は、前記R3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)モル数であり、
2′ は、前記R3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【請求項2】
前記リチウムマンガン系酸化物中の、金属元素の濃度は、下記の式1を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
[式1]
0.24≦M/M≦0.55
ここで、
は、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
は、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【請求項3】
前記リチウムマンガン系酸化物は、コアおよび前記コアの表面のうち少なくとも一部をカバーするシェルを含むコア-シェル粒子であって、
前記コア内には、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が共存し、
前記シェル内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コア内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合より大きい、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記シェル内の金属元素の濃度は、下記の式3を満たす、請求項に記載の正極活物質。
[式3]
0.24≦M/M≦0.75
ここで、
は、前記シェル内の全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
は、前記シェル内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【請求項5】
前記シェル内の金属元素の濃度は、下記の式4を満たす、請求項に記載の正極活物質。
[式4]
0.40≦M4′/M3′≦0.75
ここで、M3′は、前記シェル内のR3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)モル数であり、
4′は、前記シェル内のR3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【請求項6】
前記リチウムマンガン系酸化物中の、前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コアから前記シェルに向かって増加する勾配を有する、請求項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記シェル内には、前記R3-m空間群に属する相のみが存在する、請求項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記リチウムマンガン系酸化物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+z)
ここで、
M1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Sn、Mg、Ru、Al、Ti、Zr、B、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、SiおよびBiから選択される少なくとも1つであり、
0<r≦0.8、0<a≦1、0<x≦1、0≦y<1、0<z<1および0<x+y+z≦1である。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項10】
請求項に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質、正極およびこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的には、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の固溶体であるリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含み、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在することによって、前記リチウムマンガン系酸化物中に過量で存在するリチウムおよびマンガンにより引き起こされる安定性の低下が緩和および/または防止された正極活物質、正極およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極においてリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされる際の化学電位(chemical potential)の差異によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極の間に有機電解液またはポリマー電解質を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnOまたは韓国公開特許公報第10-2015-0069334号(2015.06.23.公開)のようにNi、Co、MnまたはAlなどが複合化された複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界に起因して高価であるから、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さく、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、それによって、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生し、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と、電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させてサイクルを減少させるだけでなく、バッテリーが膨らむ原因となる。
【0008】
このような従来正極活物質の短所を補完するための様々な候補物質が議論されている。
【0009】
一例として、遷移金属のうちMnが過量で含まれると同時に、リチウムの含有量が遷移金属の含有量の合計より多いリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物をリチウム二次電池用正極活物質として使用しようとする研究が行われている。このようなリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物は、リチウム過剰の層状系酸化物(overlithiated layered oxide;OLO)とも称される。
【0010】
前記OLOは、理論的に高電圧作動環境下で高容量を発揮することができるという長所があるが、実際に酸化物中に過量で含まれたMnに起因して相対的に電気伝導度が低く、これによって、OLOを使用したリチウム二次電池のレート特性(capability rate)が低いという短所がある。このように、レート特性が低い場合、リチウム二次電池の充放電サイクル時に充放電容量および寿命効率(サイクル容量維持率;capacity retention)が低下する問題点が現れる。
【0011】
また、OLOを使用したリチウム二次電池の充放電サイクル時における充放電容量の減少または電圧降下(voltage decay)は、リチウムマンガン系酸化物中での、遷移金属の移動による相転移によって誘発されることもできる。例えば、層状結晶構造のリチウムマンガン系酸化物中で、遷移金属が意図しない方向に移動して相転移が誘導される場合、リチウムマンガン系酸化物内に全体的および/または部分的にスピネルまたはこれと類似の結晶構造が発生することがある。
【0012】
前述の問題点を解決するために、OLOの粒子のサイズを調節したり、OLOの表面をコートするなど粒子の構造的改善および表面改質を通じてOLOの問題点を改善しようとする試みがあるが、商用化レベルには達していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国公開特許公報第10-2015-0069334号(2015.06.23.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が牽引役としての役割をしている中で、リチウム二次電池に使用される正極活物質の需要も持続的に変化している。
【0015】
例えば、従来、安全性の確保などの観点からLFPを使用したリチウム二次電池が主に使用されてきたが、最近になってLFPに比べて重量当たりのエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0016】
また、最近、高容量のリチウム二次電池の正極活物質として使用される多くのニッケル系リチウム複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンまたはニッケル、コバルトおよびアルミニウムのように3元系金属元素が必須的に使用されるが、その中で、コバルトの場合、需給が不安定なだけでなく、他の原料に比べて過度に高価であるという問題によって、コバルトの含有量を減らしたりコバルトを排除できる新しい組成の正極活物質が必要である。
【0017】
このような観点から、リチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物は、前述の市場の期待に応えることができるが、商用化されたNCMまたはNCAタイプの正極活物質の代わりとしてはリチウムマンガン系酸化物の電気化学的特性や安定性は未だ不十分であるといえる。
【0018】
しかしながら、商用化された他のタイプの正極活物質と比較するとき、従来のリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物が電気化学的特性および/または安定性の観点から不利な部分があるとしても、リチウムマンガン系酸化物中で、遷移金属の濃度を領域別に制御することが可能な場合、リチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物も、商用化が可能なレベルの電気化学的特性および安定性を発揮できることが、本発明者により確認された。
【0019】
これによって、本発明は、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の固溶体であるリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質であって、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在することによって、前記リチウムマンガン系酸化物中に過量で存在するリチウムおよびマンガンにより引き起こされる安定性の低下が緩和および/または防止された正極活物質を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の固溶体であるリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質であって、R3-m空間群に属する相が存在する領域内のNiの濃度が所定の範囲内に存在するようにすることによって、従来のリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物の低い放電容量およびレート特性を改善することが可能な正極活物質を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、本願に定義された正極活物質を含む正極を使用することによって、従来OLOの低いレート特性が改善されたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述の技術的課題を解決するための本発明の一態様によれば、少なくともリチウム、ニッケルおよびマンガンを含むリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質として、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存し、かつ、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在する正極活物質が提供される。
【0023】
一実施例において、前記リチウムマンガン系酸化物中、金属元素の濃度は、下記の式1を満たすことができる。
【0024】
[式1]
0.24≦M/M≦0.55
ここで、
は、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
は、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【0025】
前記リチウムマンガン系酸化物中で、金属元素(リチウムを除く)のうちニッケルの含有量が前記式1を満たすことにより、前記リチウムマンガン系酸化物中での、過剰のMnにより低下する放電容量およびレート特性などを商用可能なレベルに向上させることが可能である。
【0026】
前記リチウムマンガン系酸化物は、コアおよび前記コアの表面のうち少なくとも一部をカバーするシェルを含むコア-シェル粒子であってもよい。この際、前記コアと前記シェルは、単に前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域を称するために区分されるものである。すなわち、前記リチウムマンガン系酸化物がコア-シェル粒子である場合でも、前記コアと前記シェルは、1つの固溶体を形成するものと理解すべきである。
【0027】
前記リチウムマンガン系酸化物がコア-シェル粒子である場合、前記コア内には、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が共存し、前記シェル内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コア内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合より大きくてもよい。
【0028】
この際、前記シェル内の金属元素の濃度は、下記の式3を満たすことができる。
【0029】
[式3]
0.24≦M/M≦0.75
ここで、
は、前記シェル内の全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
は、前記シェル内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【0030】
この際、前記リチウムマンガン系酸化物中の、前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コアから前記シェルに向かって増加する勾配を有することによって、前記リチウムマンガン系酸化物内の結晶構造の急激な変化を減らして、充放電時に粒子に加えられる損傷を防止することができる。
【0031】
前記リチウムマンガン系酸化物は、下記の化学式1で表され得る。
【0032】
[化学式1]
rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+z)
ここで、
M1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Sn、Mg、Ru、Al、Ti、Zr、B、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、SiおよびBiから選択される少なくとも1つであり、
0<r≦0.8、0<a≦1、0<x≦1、0≦y<1、0<z<1および0<x+y+z≦1である。
【0033】
前記化学式1に表示されたように、本願に定義された前記リチウムマンガン系酸化物は、単一の粒子内にC2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存する固溶体である。
【0034】
この際、単一の粒子とは、「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」または「複数(数十~数百個またはそれ以上)の一次粒子が凝集して形成された粒子」を意味し得る。
【0035】
前記化学式1で表される固溶体中で、C2/m空間群に属する相は、LiMnOに起因し、R3-m空間群に属する相は、LiNiCoMnM11-(x+y+z)に起因するものである。
【0036】
また、本発明の他の態様によれば、前述の正極活物質を含む正極が提供される。
【0037】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前述の正極が使用されたリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、商用化された他のタイプの正極活物質と比較するとき、電気化学的特性および/または安定性の観点から、様々な不利な部分がある従来のリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物の限界を改善することが可能である。
【0039】
まず、本発明による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物は、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の固溶体であるリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物である。
【0040】
前述したように、リチウムとマンガンが過量で含有されたリチウムマンガン系酸化物は、高電圧作動環境下で高容量を発揮することができる。しかしながら、このようなリチウムマンガン系酸化物は、酸化物中の過剰のリチウムおよびマンガンなどにより放電容量およびレート特性(capability rate)が低いという短所があるが、本発明による正極活物質のように、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の存在の割合を領域別に異ならせる場合、放電容量およびレート特性が改善される効果が発揮される。
【0041】
特に、前記リチウムマンガン系酸化物の表面部(コアと称することができる)におけるC2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合が大きい場合、(主にC2/m空間群に属する相により引き起こされる可能性が高い)粒子の表面におけるLiイオンのcharge-transferおよび/またはdiffusionを緩和して、リチウムマンガン系酸化物の低い電気伝導度を改善し、放電容量およびレート特性などを商用可能なレベルに向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、実施例4による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物に対するTEM分析結果を示す図である。図1には、50nmスケールのTEM像および前記50nmスケールのTEM像に表示した領域を拡大した5nmスケールのTEM像と前記5nmスケールのTEM像のA領域およびB領域に対するFFT変換を通じて確認された結晶構造を示した。
図2図2は、実施例4による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物の断面TEM像に対するEDX mapping結果をline scanningして、リチウムマンガン系酸化物のコアからシェルまでニッケルの濃度(at%)の変化を確認したline sum spectrumである。図2のline sum spectrumに表示したA領域は、図1のA領域に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明をより容易に理解するため、便宜上、特定用語を本願に定義する。本願で特に定義しない限り、本発明で用いられた科学用語及び技術用語は、当技術分野における通常の知識を有する者にとって一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態も含むものと理解すべきである。
【0044】
以下、本発明による少なくともリチウム、ニッケル、マンガンおよびドーピング金属を含むリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質および前記正極活物質を含むリチウム二次電池についてより詳細に説明する。
【0045】
正極活物質
本発明の一態様によれば、少なくともリチウム、ニッケル、マンガンおよびドーピング金属を含むリチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質が提供される。前記リチウムマンガン系酸化物は、リチウムイオンのインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な複合金属酸化物である。
【0046】
本願に定義された正極活物質に含まれた前記リチウムマンガン系酸化物は、少なくとも1つの一次粒子(primary particle)を含む二次粒子(secondary particle)であってもよい。
【0047】
ここで、「少なくとも1つの一次粒子を含む二次粒子」は、「複数の一次粒子が凝集して形成された粒子」または「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」を全部含むものと解釈すべきである。
【0048】
前記一次粒子および前記二次粒子は、それぞれ独立して、棒状、楕円状および/または不定形の形状を有していてもよい。
【0049】
前記一次粒子および前記二次粒子のサイズを示す指標として平均長軸長さを使用する場合、前記リチウムマンガン系酸化物を構成する前記一次粒子の平均長軸長さは、0.1μm~5μmであってもよく、前記二次粒子の平均長軸長さは、1μm~30μmであってもよい。前記二次粒子の平均長軸長さは、前記二次粒子を構成する前記一次粒子の数により変わることができ、前記正極活物質内には、様々な平均長軸長さを有する粒子が含まれてもよい。
【0050】
前記リチウムマンガン系酸化物が「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」であるか、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」または「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」内に含まれた一次粒子のサイズ(平均粒径)は、「数十~数百個またはそれ以上の一次粒子が凝集して形成された二次粒子」内に含まれた一次粒子(平均粒径)より大きくてもよい。
【0051】
このように、「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」であるか、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」であるリチウムマンガン系酸化物は、一般的に「数十~数百個またはそれ以上の一次粒子が凝集して形成された二次粒子」を製造する場合に比べて、強い熱処理条件(高い熱処理温度/長時間熱処理)を要求する。例えば、相対的に高温(800℃以上)で長時間熱処理する場合、粒子成長(結晶成長)が促進されて単一の粒子のサイズが大きくなると同時に、粒子の凝集度が低くなった正極活物質が得られることが知られている。
【0052】
例えば、前記リチウムマンガン系酸化物が「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」であるか、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、前記一次粒子の平均長軸長さは、0.5μm~20μmの範囲内に存在してもよい。一方、前記リチウムマンガン系酸化物が「複数(数十~数百個またはそれ以上)の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、前記一次粒子の平均長軸長さは、0.1μm~5μmの範囲内に存在してもよい。
【0053】
また、前記一次粒子は、少なくとも1つの結晶子(crystallite)を含んでもよい。すなわち、前記一次粒子は、単一の結晶子からなるか、複数の結晶子を含む粒子として存在してもよい。
【0054】
本願に定義されたリチウムマンガン系酸化物は、リチウムとマンガンを過量で含む複合金属酸化物であり、前記リチウムマンガン系酸化物内には、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存する。すなわち、前記リチウムマンガン系酸化物は、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の固溶体である。
【0055】
本願において固溶体とは、前記リチウムマンガン系酸化物内には、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が単一の粒子として存在することを意味する。
【0056】
この際、単一の粒子とは、「単一の一次粒子を含む非凝集形態の粒子」、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」または「複数(数十~数百個またはそれ以上)の一次粒子が凝集して形成された粒子」を意味し得る。
【0057】
本願において固溶体とは、前記リチウムマンガン系酸化物内に存在するC2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が物理的および/または化学的に結合したり付着した状態を意味するものではない。
【0058】
例えば、C2/m空間群に属する相を有する金属酸化物とR3-m空間群に属する相を有する金属酸化物を混合してR3-m空間群に属する相を有する金属酸化物であって、表面がコートされたC2/m空間群に属する相を有する金属酸化物は、固溶体に該当しない。
【0059】
なお、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存し、かつ、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在してもよい。
【0060】
このように、前記リチウムマンガン系酸化物中で、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の存在の割合を領域別に異ならせる場合、前記リチウムマンガン系酸化物を含んだ正極活物質の放電容量およびレート特性が改善される効果を発揮することができる。
【0061】
また、前記リチウムマンガン系酸化物中の、金属元素の濃度は、下記の式1を満たすことができる。
【0062】
[式1]
0.24≦M/M≦0.55
ここで、
は、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
は、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【0063】
前記式1中の、M/Mが0.55を超過する場合、前記リチウムマンガン系酸化物中の、Niの含有量が過度に多くなり、Liとカチオンミキシング(cation mixing)が発生することがあり、前記リチウムマンガン系酸化物がOLOとしての特性を発揮しにくい。
【0064】
前述したように、本願によるリチウムマンガン系酸化物は、過剰のリチウムを含んでいるので、前記リチウムマンガン系酸化物中の、Niの含有量が多くなる場合、カチオンミキシングが激しくなり、前記リチウムマンガン系酸化物中で、LiOHおよびLiCOなどのようなリチウム不純物の量が増加することができる。前記リチウム不純物は、正極活物質を使用して正極ペーストを製造するとき、ペーストのゲル(gel)化を引き起こしたり、正極製造後充放電時セルのスウェリング現象を引き起こす主な原因である。
【0065】
一方、前記式1中の、M/Mが0.24未満の場合、前記リチウムマンガン系酸化物中の、Niの含有量が不足するに従って過量のマンガンにより低下するLiイオンのcharge-transferおよび/またはdiffusionを改善することが難しい。
【0066】
すなわち、前記リチウムマンガン系酸化物中の、ニッケルの含有量が前記式1を満たすことにより、前記リチウムマンガン系酸化物中の、過剰のMnにより低下する放電容量およびレート特性などを商用可能なレベルに向上させることが可能である。
【0067】
また、前記リチウムマンガン系酸化物中で、ニッケルは、R3-m空間群に属する相に存在し、C2/m空間群に属する相には存在しないので、前記リチウムマンガン系酸化物中での、ニッケルの含有量は、下記の式2で表され得る。
【0068】
[式2]
0.40≦M2′/M1′≦0.70
ここで、M1′は、前記R3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
2′は、前記R3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【0069】
前記式2中の、M2′/M1′が0.70を超過する場合、前記R3-m空間群に属する相内のNiの含有量が過度に多くなり、Liとカチオンミキシング(cation mixing)が発生することがあり、前記式2中の、M2′/M1′が0.40未満の場合、前記R3-m空間群に属する相内のNiの含有量が不足し、マンガンが過剰に存在するに従って、Liイオンのcharge-transferおよび/またはdiffusionが低下することがある。
【0070】
前記リチウムマンガン系酸化物は、コアおよび前記コアの表面のうち少なくとも一部をカバーするシェルを含むコア-シェル粒子であってもよい。
【0071】
この際、前記コアと前記シェルは、単に前記リチウムマンガン系酸化物中で、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域を称するために区分されるものである。すなわち、前記リチウムマンガン系酸化物がコア-シェル粒子である場合でも、前記コアと前記シェルは、1つの固溶体を形成するものと理解すべきである。
【0072】
この際、粒子のシェル(または表面部)とコア(または中心部)は、当該領域に存在する任意の金属元素の濃度により区別されたり、後述するように当該領域に存在する相(結晶構造)の割合により区別されることができる。
【0073】
前記シェルは、前記コアの表面のうち少なくとも一部を占有していてもよい。すなわち、前記シェルは、前記コアの表面に部分的に存在することもでき、前記コアの表面を全体的に占有することもできる。なお、前記コア-シェル粒子の半径をrというとき、前記シェルの厚さは、0.001r~0.9rであってもよいが、必ずこれに制限されるものではなく、前述したように、コアとシェルは、任意の金属元素の濃度により区別されたり、後述するように当該領域に存在する相(結晶構造)の割合により区別される。
【0074】
一実施例において、前記リチウムマンガン系酸化物中で、R3-m空間群に属する相が支配的に存在する領域が存在してもよい。すなわち、前記リチウムマンガン系酸化物中、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存する領域内に前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が、前記リチウムマンガン系酸化物中の、C2/m空間群に属する相の存在の割合より大きい場合、前記領域を前記R3-m空間群に属する相が支配的に存在する領域と定義することができる。
【0075】
例えば、前記リチウムマンガン系酸化物がコア-シェル粒子である場合、前記コアとシェル内には、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が共存し、かつ、前記コア内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合とシェル内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、異なっていてもよい。この際、前記コアと前記シェルのうちいずれか1つの領域内には、前記R3-m空間群に属する相が支配的に存在してもよい。
【0076】
また、前記リチウムマンガン系酸化物の前記コアとシェル内の前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が共存する場合、前記シェル内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コア内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合より大きいことが好ましい。前記コアおよび前記シェル内の前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コアおよび前記シェル内のNiの含有量を通じて確認することができる。
【0077】
他の実施例において、前記リチウムマンガン系酸化物がコア-シェル粒子である場合、前記コア内には、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が共存し、かつ、前記シェル内には、前記R3-m空間群に属する相のみが存在してもよい。
【0078】
前述した様々な実施例によるコア-シェル粒子において、前記シェル内の金属元素の濃度は、下記の式3を満たすことができる。
【0079】
[式3]
0.24≦M/M≦0.75
ここで、
は、前記シェル内の全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
は、前記シェル内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【0080】
また、前記リチウムマンガン系酸化物中で、ニッケルは、R3-m空間群に属する相に存在し、C2/m空間群に属する相には存在しないので、前記シェル内のニッケルの含有量は、下記の式4で表され得る。
【0081】
[式4]
0.40≦M4′/M3′≦0.75
ここで、M3′は、前記シェル内のR3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)のモル数であり、
4′は、前記シェル内のR3-m空間群に属する相内の全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数である。
【0082】
前記式3または前記式4中の、M/MまたはM4′/M3′が0.75を超過する場合、前記R3-m空間群に属する相内のNiの含有量が過度に多くなり、Liとカチオンミキシング(cation mixing)が発生することがあり、前記式3中の、M/Mが0.24より小さいか、前記式4中の、M4′/M3′が0.40より小さい場合、前記R3-m空間群に属する相内のNiの含有量が不足し、マンガンが過剰に存在するに従って、Liイオンのcharge-transferおよび/またはdiffusionが低下することがある。
【0083】
前述した様々な実施例によるコア-シェル粒子の場合、前記リチウムマンガン系酸化物のコアには、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が共存することにより、前記C2/m空間群に属する相の不安定性を前記R3-m空間群に属する相が一定部分相殺することができる。
【0084】
また、前記リチウムマンガン系酸化物のシェルには、前記R3-m空間群に属する相が支配的に存在するに従って、従来のリチウムマンガン系酸化物とは異なって、主にC2/m空間群に属する相により引き起こされる可能性が高い粒子の表面におけるLiイオンのcharge-transferおよび/またはdiffusionを緩和することが可能である。
【0085】
また、Mnが過量で含まれたリチウム過剰型リチウムマンガン系酸化物の場合、LCOまたはNiが過量で含まれたNCMまたはNCAより電気伝導度が低いことはよく知られている。また、一般的なNCMにおいて、Mnの含有量が多くなるほど電気伝導度が低くなる問題がある。
【0086】
正極活物質の表面では、様々な反応が起こり得るが、正極活物質のうちMnの含有量が多くなるほど、表面におけるLiイオンのcharge-transferおよび/またはdiffusionが妨害され、このような現象を表面kineticまたは表面の反応kinetic低下と称することができる。
【0087】
また、前記リチウムマンガン系酸化物中の、前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合は、前記コアから前記シェルに向かって増加する勾配を有していてもよい。
【0088】
前記コアから前記シェルに向かって前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合が増加する勾配が形成されることにより、前記コアと前記シェルの間に結晶構造の急激な変化を減らすことができ、前記リチウムマンガン系酸化物中で、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相が安定的に固溶体を形成させることができる。
【0089】
もし前記リチウムマンガン系酸化物中に、前記C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の急激な変化が存在する場合、充放電サイクル時に前記リチウムマンガン系酸化物中に遷移金属が意図しない方向に移動して相転移(結晶構造の変化)が発生することがある。
【0090】
前述したように、前記コア内の前記R3-m空間群に属する相が存在する領域および前記シェル内の金属元素の濃度が前述の式1~式4を満たすことによって、リチウムマンガン系酸化物の表面kineticを向上させることができる。
【0091】
本願に定義された前記リチウムマンガン系酸化物は、下記の化学式1で表され得る。
【0092】
[化学式1]
rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+z)O
ここで、
M1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Sn、Mg、Ru、Al、Ti、Zr、B、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、SiおよびBiから選択される少なくとも1つであり、
0<r≦0.8、0<a≦1、0<x≦1、0≦y<1、0<z<1および0<x+y+z≦1である。
【0093】
前記化学式1で表されるリチウムマンガン系酸化物は、コバルトを選択的に含んでもよい。また、前記リチウムマンガン系酸化物がコバルトを含む場合、前記リチウムマンガン系酸化物中の、全金属元素のモル数に対する前記コバルトのモル数の割合は、10%以下であってもよい。
【0094】
前記化学式1で表されるリチウムマンガン系酸化物は、LiMnOで表示されるC2/m相の酸化物とLiNiCoMnM11-(x+y+z)で表示されるR3-m相の酸化物が共存する複合酸化物である。この際、C2/m相の酸化物とR3-m相の酸化物は、固溶体を形成した状態で存在する。
【0095】
また、前記化学式1で表されるリチウムマンガン系酸化物において、rが0.8を超過する場合、前記リチウムマンガン系酸化物中で、C2/m相の酸化物であるLiMnOの割合が過度に多くなり、正極活物質の放電容量が低下する恐れがある。
【0096】
リチウム二次電池
本発明の他の態様によれば、正極集電体および前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含む正極を提供することができる。ここで、前記正極活物質層は、正極活物質として前述の本発明の様々な実施例によるリチウムマンガン系酸化物を含んでもよい。
【0097】
したがって、リチウムマンガン系酸化物に対する具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明する。また、以下では、便宜上、前述のリチウムマンガン系酸化物を正極活物質と称することとする。
【0098】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素又はアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてもよい。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0099】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0100】
このとき、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれてもよい。前記含量範囲に含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0101】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0102】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0103】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法によって製造されてもよい。具体的には、前記正極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造してもよい。
【0104】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して、前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0105】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別途の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されてもよい。
【0106】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前述の正極を含む電気化学素子が提供されてもよい。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0107】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と前記負極との間に介在するセパレータ及び電解質を含んでもよい。ここで、前記正極は、前述の通りであるので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0108】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極及び前記セパレータの電極組立体を収納する電池容器及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでもよい。
【0109】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含んでもよい。
【0110】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有してもよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0111】
前記負極活物質層は、前記負極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーとを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0112】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてもよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物、SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物、またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料としては、低結晶炭素及び高結晶性炭素などがすべて用いられてもよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては無定形、板状、鱗片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0113】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80~99wt%で含まれてもよい。
【0114】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分として、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1~10wt%で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0115】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分として、負極活物質層の全重量を基準に10重量%以下、好ましくは、5重量%以下で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などが用いられてもよい。
【0116】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥することにより製造されるか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0117】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0118】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに電解液含湿能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するため、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に単層または多層構造として使用されてもよい。
【0119】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0120】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでもよい。
【0121】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒、ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒、ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい。)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてもよい。これらの中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用すると電解液の性能が優秀になりうる。
【0122】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO)、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動しうる。
【0123】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他に、電池の寿命特性向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤がさらに1種以上含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれてもよい。
【0124】
前記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0125】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特に制限がないが、缶を用いた円筒状、角状、ポーチ(pouch)状またはコイン(coin)状などであってもよい。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用できるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されてもよい。
【0126】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及び/又はこれを含む電池パックを提供しうる。
【0127】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool)と、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車と、または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用できる。
【0128】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらの実施例によって制限されるとは解釈されない。
【0129】
製造例1.正極活物質の製造
実施例1.
(a)前駆体の製造
反応器内にNiSO・6HOおよびMnSO・HOが25:75のモル比で混合された混合水溶液、NaOHおよびNHOHを投入しながら、撹拌した。反応器内の温度は、45℃に保って、反応器内にNガスを投入しながら、前駆体合成反応を行った。反応完了後、洗浄および脱水して、Ni0.25Mn0.75(OH)前駆体を得た。
【0130】
(b)第1熱処理
雰囲気の焼成炉を2℃/minの速度で昇温した後、550℃に保って、工程(a)で得られた前駆体を5時間熱処理した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0131】
(c)第2熱処理
工程(b)で得られた酸化物状態の前駆体とリチウム化合物としてLiOH(Li/(Li以外のmetal)mol ratio=1.55)を混合して、混合物を調製した。
次に、O雰囲気の焼成炉を2℃/minの速度で昇温した後、900℃に保って、前記混合物を8時間熱処理した後、炉冷(furnace cooling)して、リチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質を得た。
ICP分析結果、実施例1による正極活物質は、0.54LiMnO・0.46LiNi0.538Mn0.462組成を有することが確認された。
【0132】
実施例2
Ni0.40Mn0.60(OH)前駆体を使用し、第2熱処理前にLiOHを1.25のモル比で混合(Li/(Li以外のmetal)mol ratio=1.25)したことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
ICP分析結果、実施例2による正極活物質は、0.23LiMnO・0.77LiNi0.523Mn0.477組成を有することが確認された。
【0133】
実施例3
Ni0.45Mn0.55(OH)前駆体を使用し、第2熱処理前にLiOHを1.20のモル比で混合(Li/(Li以外のmetal)mol ratio=1.20)したことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
ICP分析結果、実施例3による正極活物質は、0.19LiMnO・0.81LiNi0.557Mn0.443組成を有することが確認された。
【0134】
実施例4
(a)前駆体の製造
反応器内にNiSO・6HOおよびMnSO・HOが40:60のモル比で混合された混合水溶液、NaOHおよびNHOHを投入しながら撹拌した。反応器内の温度は、45℃に保って、反応器内にNガスを投入しながら、前駆体合成反応を行った。反応完了後、洗浄および脱水して、Ni0.40Mn0.60(OH)前駆体を得た。
【0135】
(b)前駆体コーティング
工程(a)で得られた前駆体が撹拌されている反応器にCoSO・7HO水溶液、NaOHおよびNHOHを投入した。この際、CoSO・7HOは、10mol%となるように秤量した後、投入した。反応完了後、洗浄および脱水した後、150℃で14時間乾燥して、コートされた前駆体を得た。
【0136】
(c)第1熱処理
雰囲気の焼成炉を2℃/minの速度で昇温した後、550℃に保って、工程(b)で得られた前駆体を5時間熱処理した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0137】
(d)第2熱処理
工程(c)で得られた酸化物状態の前駆体とリチウム化合物としてLiOH(Li/(Li以外のmetal)mol ratio=1.25)を混合して、混合物を調製した。
次に、O雰囲気の焼成炉を2℃/minの速度で昇温した後、850℃に保って、前記混合物を8時間熱処理した後、炉冷(furnace cooling)して、リチウム過剰のリチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質を得た。
ICP分析結果、実施例3による正極活物質は、0.23LiMnO・0.77LiNi0.467Co0.127Mn0.405組成を有することが確認された。
【0138】
比較例1
第2熱処理前に、LiOHを1.35のモル比で混合(Li/(Li以外のmetal)mol ratio=1.35)したことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
ICP分析結果、比較例1による正極活物質は、0.36LiMnO・0.64LiNi0.389Mn0.611組成を有することが確認された。
【0139】
比較例2
第2熱処理前に、LiOHを1.50のモル比で混合(Li/(Li以外のmetal)mol ratio=1.50)したことを除いて、実施例2と同様に正極活物質を製造した。
ICP分析結果、比較例2による正極活物質は、0.49LiMnO・0.51LiNi0.793Mn0.207組成を有することが確認された。
【0140】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1によって製造された正極活物質90wt%、カーボンブラック5.5wt%、PVDFバインダー4.5wt%のそれぞれをN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0141】
前記正極に対してリチウムホイルを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレータとし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で存在する電解液を使用してコイン電池を製造した。
【0142】
実験例1.リチウムマンガン系酸化物のTEM分析
製造例1で製造されたそれぞれの正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物を選別した後、それぞれをCross-section Polisher(加速電圧5.0kV、4時間ミーリング)で断面処理した後、透過電子顕微鏡で断面TEM写真を得た。次に、TEM像にFFT(Fast Fourier Transform)を行って回折パターンに作った後、指数付け(indexing)をして、リチウムマンガン系酸化物のコア領域とシェル領域内の結晶構造を確認した。
【0143】
図1は、実施例4による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物に対するTEM分析結果を示す図である。図1には、50nmスケールのTEM像および前記50nmスケールのTEM像に表示した領域を拡大した5nmスケールのTEM像と前記5nmスケールのTEM像のA領域およびB領域に対するFFT変換を通じて確認された結晶構造を示した。
【0144】
この際、シェル領域内の結晶構造は、前記リチウムマンガン系酸化物の最外郭からの距離が0~0.03μmの領域で確認し、コア領域内の結晶構造は、前記リチウムマンガン系酸化物の最外郭からの距離が0.12~0.15μmの領域で確認した。
【0145】
前記分析結果は、下記の表1に示した。
【0146】
【表1】
【0147】
また、製造例1によって製造されたそれぞれの正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物の断面TEM像に対するEDX mappingを行い、EDX mapping結果をline scanningして、リチウムマンガン系酸化物のシェルからコアまでニッケルの濃度(at%)の変化を確認した。
【0148】
この際、シェル領域内のニッケルの濃度は、前記リチウムマンガン系酸化物の最外郭からの距離が0~0.03μmの領域から測定された前記リチウムマンガン系酸化物(bulk)を基準とするニッケルの平均濃度(at%)と前記リチウムマンガン系酸化物中の、R3-m相を基準として換算されたニッケルの平均濃度(at%)で示した。
【0149】
また、コア領域内のニッケルの濃度は、前記リチウムマンガン系酸化物の最外郭からの距離が0.12~0.15μmの領域から測定された前記リチウムマンガン系酸化物(bulk)を基準とするニッケルの平均濃度(at%)と前記リチウムマンガン系酸化物中の、R3-m相を基準として換算されたニッケルの平均濃度(at%)で示した。
【0150】
また、中間領域内のニッケルの濃度は、前記リチウムマンガン系酸化物の最外郭からの距離が0.075~0.1μmの領域から測定された前記リチウムマンガン系酸化物(bulk)を基準とするニッケルの平均濃度(at%)と前記リチウムマンガン系酸化物中の、R3-m相を基準として換算されたニッケルの平均濃度(at%)で示した。
【0151】
図2は、実施例4による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物の断面TEM像に対するEDX mapping結果をline scanningして、リチウムマンガン系酸化物のコアからシェルまでニッケルの濃度(at%)の変化を確認したline sum spectrumである。図2のline sum spectrumに表示したA領域は、図1のA領域に対応する。
【0152】
前記分析結果は、下記の表2に示した。
【0153】
【表2】
【0154】
前記表1の結果を参照すると、製造例1によって製造されたそれぞれの正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物は、いずれも、単一の粒子内にC2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存することを確認することができる。すなわち、製造例1によって製造されたそれぞれの正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物は、下記の化学式1で表される固溶体であり、
【0155】
[化学式1]
rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+z)
【0156】
前記固溶体中のC2/m空間群に属する相は、LiMnOに起因し、R3-m空間群に属する相は、LiNiCoMnM11-(x+y+z)に起因すると予想することができる。また、実施例1~実施例3による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物中には、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在することを確認することができる。
【0157】
なお、前記表1および表2の結果を参照すると、実施例1~実施例3による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物のコア領域とシェル領域には、R3-m空間群に属する相とC2/m空間群に属する相が共存し、かつ、前記リチウムマンガン系酸化物中に、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる複数の領域が存在することを確認することができる。
【0158】
また、表2および図2の結果を参照すると、実施例4による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物のコア領域には、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存するが、シェル領域には、R3-m空間群に属する相のみが存在し、前記リチウムマンガン系酸化物中の、ニッケルの濃度は、コアからシェルに向かって増加する勾配を有することを確認することができる。
【0159】
前記リチウムマンガン系酸化物を構成するR3-m空間群に属する相とC2/m空間群に属する相のうちニッケルが存在する相は、R3-m空間群に属する相であることを考慮して、前記結果は、前記リチウムマンガン系酸化物のコアからシェルに向かってR3-m空間群に属する相の割合が増加することを意味する。これによって、前記リチウムマンガン系酸化物中の、前記C2/m空間群に属する相に対する前記R3-m空間群に属する相の割合がコアからシェルに向かって増加する勾配を有する。
【0160】
一方、比較例1および比較例2による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物のコアとシェルには、いずれも、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が共存し、シェル中のニッケルの平均濃度とコア中のニッケルの平均濃度の間に有意差が存在しないことを確認することができる。
【0161】
すなわち、比較例1および比較例2による正極活物質に含まれたリチウムマンガン系酸化物には、C2/m空間群に属する相と前記R3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる複数の領域が存在しないことを確認することができる。前記結果は、前記リチウムマンガン系酸化物がC2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相が均一に固溶された状態で存在することを意味する。
【0162】
実験例2.リチウム二次電池の電気化学的特性の評価
製造例2で製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を用いて25℃、電圧範囲2.0V~4.6V、0.1C~5.0Cの放電率を適用した充放電実験を通じて初期充電容量、初期放電容量、初期可逆効率および放電容量の割合を測定した。
【0163】
前記測定結果は、下記の表3および表4に示した。
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
前記表3および表4の結果を参照すると、リチウムマンガン系酸化物中には、C2/m空間群に属する相とR3-m空間群に属する相の存在の割合が異なる領域が存在し、前記R3-m空間群に属する相が支配的に存在する領域内の全金属元素(リチウムを除く)に対するR3-m空間群に属する相のうち全金属元素(リチウムを除く)を基準とするニッケルのモル数が所定の範囲内に存在する場合、前記リチウムマンガン系酸化物中に過量で存在するリチウムおよびマンガンにより引き起こされる安定性の低下が緩和および/または防止されることにより、放電容量およびレート特性が改善されたことを確認することができる。
【0167】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などにより本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
図1
図2