(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】赤外線撮像装置および赤外線撮像装置の出力値補正方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/48 20220101AFI20250221BHJP
H04N 23/20 20230101ALI20250221BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20250221BHJP
【FI】
G01J5/48 E
H04N23/20
H04N23/60 500
(21)【出願番号】P 2024020876
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】居附 学
(72)【発明者】
【氏名】水田 涼雅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌浩
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183260(WO,A1)
【文献】特開2023-152011(JP,A)
【文献】特開2022-30434(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114518175(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114216572(CN,A)
【文献】特開2019-213193(JP,A)
【文献】特開2000-88644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00- 5/90
G01J 1/00- 1/60
G01J 11/00
H04N 23/11
H04N 23/20-23/30
H04N 25/00
H04N 25/20-25/61
H04N 25/615-25/79
G08B 13/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサベース基板上に、
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部と、
熱源測定物の放射エネルギを前記赤外線イメージセンサ部に投影するレンズと、
前記赤外線イメージセンサ部の内部の温度を計測する内部温度センサを配置し、
本体ベース基板上に、
前記赤外線センサベース基板と、
データ演算処理部とを配置し、
前記データ演算処理部は、
前記内部温度センサからのセンサ内部温度を取得する内部温度取得部と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得部と、
前記内部温度取得部で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得部で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正部および環境温度補正部と、
前記内部温度補正部および前記環境温度補正部からのセンサ内部温度の推定値に基づいて、メモリ部に予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得するオフセット補正テーブル取得部と、
前記熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得部と、
前記センサ出力値取得部により取得した出力値を、前記オフセット補正テーブル取得部で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正部と、
前記オフセット・ゲイン補正部の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得部とを備えた赤外線撮像装置。
【請求項2】
前記環境温度取得部は、前記赤外線センサベース基板上に断熱材を介して配置された環境温度センサにより環境温度を取得する請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項3】
前記環境温度取得部は、
予め前記メモリ部に記憶させておいた内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブル取得部と、
センサ内部温度の変化を検出するセンサ内部温度変化検出部と、
前記センサ内部温度変化検出部で検出したセンサ内部温度の変化に見合った内部温度上昇グラフデータを選択する内部温度上昇グラフ値選択部と、
前記内部温度上昇グラフ値選択部で選択した内部温度上昇グラフデータのグラフの開始点を室温とする推定処理を行う環境温度推定部とを備える請求項1に記載の赤外線撮像装置。
【請求項4】
前記オフセット・ゲイン補正部は、ゲイン校正テーブル読み出し部により各前記撮像素子のゲインのバラつきを表すゲイン校正テーブルを読み出し、前記ゲイン校正テーブルを用いてゲインの補正を行う請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項5】
前記熱映像データ取得部の出力を表面皮膚温度として取得する表面温度取得部と、
前記環境温度取得部で取得した環境温度と、前記表面温度取得部で取得した表面皮膚温度と、表面温度-体内温度補正テーブルとに基づいて体内温度を推定する体内温度推定部とを備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項6】
前記オフセット・ゲイン補正部は、前記センサ出力値取得部により取得した出力値の非線形の曲線を2次曲線または直線折れ線グラフで近似して、各前記撮像素子のオフセット補正を行い、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するようにした請求項4に記載の赤外線撮像装置。
【請求項7】
前記オフセット・ゲイン補正部は、前記センサ出力値取得部により取得した出力値の非線形の曲線を2次曲線または直線折れ線グラフで近似して、少なくとも2点の温度のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルから、前記2点の温度の間のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルを計算して、各前記撮像素子のオフセット補正を行い、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するようにした請求項6に記載の赤外線撮像装置。
【請求項8】
前記熱映像データ取得部で取得した熱映像データの画素数を倍増および超解像化する画素倍増部および超解像化部を備え、前記画素倍増部および前記超解像化部の出力を熱映像表示部により表示する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項9】
前記熱映像データ取得部で取得した熱映像データを予め決めたカラーテーブルで置き換える疑似カラー化部と、測定したい画素にマーカを合わせることにより局所部位に温度を表示させる温度点表示部と、前記疑似カラー化部および前記温度点表示部の出力を表示する熱映像表示部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項10】
前記赤外線イメージセンサ部の前面に赤外線のみを透過するフィルタを配置し、前記フィルタには冷却フィンが設置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項11】
予め対象となる前記熱源測定物である被写体の面積が定まっている場合に、前記熱映像データ取得部で取得したデータに基づいて、前記被写体の画像面積を抽出する主画像面積抽出部と、
前記主画像面積抽出部で抽出した画像面積に応じて前記被写体の距離を算出して、当該距離に応じて前記熱映像データ取得部で取得したデータを補正する距離算出および補正部と、
前記距離算出および補正部で補正したデータに基づいて、前記被写体の熱映像を表示する熱映像表示部とを備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
【請求項12】
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部を備えた赤外線撮像装置の出力値補正方法であって、
前記赤外線イメージセンサ部のセンサ内部温度を取得する内部温度取得工程と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得工程と、
前記内部温度取得工程で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得工程で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正工程および環境温度補正工程と、
前記内部温度補正工程および前記環境温度補正工程のセンサ内部温度の推定値に基づいて、予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得する補正テーブル取得工程と、
熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、
前記センサ出力値取得工程により取得した出力値を、前記補正テーブル取得工程で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正工程と、
前記オフセット・ゲイン補正工程の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得工程とを備えた赤外線撮像装置の出力値補正方法。
【請求項13】
前記環境温度取得工程は、予め記憶させておいた内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブル取得工程と、センサ内部温度の変化を検出するセンサ内部温度変化検出工程と、前記センサ内部温度変化検出工程で検出したセンサ内部温度の変化に見合った内部温度上昇グラフデータを選択する内部温度上昇グラフ値選択工程と、前記内部温度上昇グラフ値選択工程で選択した内部温度上昇グラフデータのグラフの開始点を室温とする推定処理を行う環境温度推定工程とを備える請求項12に記載の赤外線撮像装置の出力値補正方法。
【請求項14】
前記オフセット・ゲイン補正工程は、予め記憶された各前記撮像素子のゲインのバラつきを表すゲイン校正テーブルを読み出し、前記ゲイン校正テーブルを用いてゲインの補正を行う請求項12または請求項13に記載の赤外線撮像装置の出力値補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、赤外線撮像装置および赤外線撮像装置の出力値補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線撮像装置は、赤外線を検出する撮像素子をピクセル(画素)として高密度に二次元配列に並べた赤外線センサを備え、赤外線センサの前部に配置されたレンズにより画像として結像して、被写体から放射された赤外線を検出することで、熱映像データを得る装置である。
【0003】
赤外線センサの出力は、環境の温度変化またはセンサ内部の温度上昇により、時間経過とともに温度が変化するため、赤外線画像の各画素を構成する画素値を被写体の絶対温度に正確に対応させるためには、赤外線センサが出力する信号を各画素毎のオフセット値などにより絶対温度に換算して校正する必要があった。
【0004】
従来の赤外線撮像装置では、シャッタの表面に温度計を配置して、シャッタ表面の温度を正確に計測して、シャッタが閉じられたときの状態で撮像した画素毎の値をシャッタの温度であると換算して、シャッタを開いたときの熱映像の差分から、正確に熱映像の絶対温度値に換算するという処理が必要であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高速にシャッタ補正する方法を採用しても、赤外線撮像素子の画素毎のオフセットまたはゲインのバラつきを十分補正することはできない。また、シャッタ補正を行っても、オフセットを補正した温度からマイナス側またはプラス側に大きく離れた温度は正確に計測することができず、ゲインのバラつきから画像にムラができるという課題があった。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、赤外線撮像素子から得られる信号を均一に補正して正確な絶対温度を測定できる赤外線撮像装置および赤外線撮像装置の出力値補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の赤外線撮像装置は、
赤外線センサベース基板上に、
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部と、
熱源測定物の放射エネルギを前記赤外線イメージセンサ部に投影するレンズと、
前記赤外線イメージセンサ部の内部の温度を計測する内部温度センサを配置し、
本体ベース基板上に、
前記赤外線センサベース基板と、
データ演算処理部とを配置し、
前記データ演算処理部は、
前記内部温度センサからのセンサ内部温度を取得する内部温度取得部と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得部と、
前記内部温度取得部で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得部で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正部および環境温度補正部と、
前記内部温度補正部および前記環境温度補正部からのセンサ内部温度の推定値に基づいて、メモリ部に予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得するオフセット補正テーブル取得部と、
前記熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得部と、
前記センサ出力値取得部により取得した出力値を、前記オフセット補正テーブル取得部で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正部と、
前記オフセット・ゲイン補正部の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得部とを備えたものである。
【0009】
本開示の赤外線撮像装置の出力値補正方法は、
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部を備えた赤外線撮像装置の出力値補正方法であって、
前記赤外線イメージセンサ部のセンサ内部温度を取得する内部温度取得工程と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得工程と、
前記内部温度取得工程で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得工程で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正工程および環境温度補正工程と、
前記内部温度補正工程および前記環境温度補正工程のセンサ内部温度の推定値に基づいて、予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得する補正テーブル取得工程と、
熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、
前記センサ出力値取得工程により取得した出力値を、前記補正テーブル取得工程で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正工程と、
前記オフセット・ゲイン補正工程の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示による赤外線撮像装置および赤外線撮像装置の出力値補正方法によれば、赤外線撮像素子から得られる信号を均一に補正して正確な絶対温度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【
図2】実施の形態1による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図3】実施の形態1による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図4】実施の形態1による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図5】実施の形態1による赤外線撮像装置のセンサ部の内部温度を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1による赤外線撮像装置のオフセット補正テーブルを示す図である。
【
図7】実施の形態1による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図8】実施の形態2による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【
図9】実施の形態2による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図10】実施の形態2による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図11】実施の形態3による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【
図12】実施の形態3による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図14】実施の形態3による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図15】実施の形態3による赤外線撮像装置のゲイン校正テーブルを示す図である。
【
図16】実施の形態3による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図17】実施の形態4による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【
図18】実施の形態4による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図19】実施の形態4による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図20】実施の形態5による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図21】実施の形態5による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図22】実施の形態5による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図23】実施の形態6による赤外線撮像装置を説明するためのテーブルを示す図である。
【
図24】実施の形態6による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
【
図25】実施の形態7による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【
図26】実施の形態7による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図27】実施の形態7による赤外線撮像装置を説明するための熱映像図である。
【
図28】実施の形態8による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図29】実施の形態8による赤外線撮像装置を説明するための熱映像図である。
【
図31】実施の形態9による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【
図33】実施の形態10による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック図およびフロー図である。
【
図34】実施の形態によるデータ処理演算部のハードウエアの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して各実施の形態について説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【0014】
図1において、赤外線撮像装置1は、赤外線センサベース基板2と、複数個のサーマルダイオード、サーモパイル、ボロメーターまたは集電センサ等の撮像素子を、赤外線センサベース基板2上に2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部3と、赤外線イメージセンサ部3の筐体4と、筐体4の上部の穴に取り付けられ、測定する熱源測定物14の像を赤外線イメージセンサ部3に結像するレンズ5とを備えている。なお、赤外線イメージセンサ部3に2次元配列に並べた各撮像素子は、赤外線イメージセンサ部3の各画素を構成する。
【0015】
赤外線センサベース基板2には、例えばDSP(Digital Signal Processor)などを用いた高速処理マイコン6が配置され、高速処理マイコン6はA/D変換器を備え、赤外線イメージセンサ部3で測定した画素毎の電圧値(アナログ信号)を高速処理マイコン6のAD変換器でデジタル信号に変換する。
また、赤外線センサベース基板2には、赤外線イメージセンサ部3の内部の温度を計測するための内部温度センサ7が配置されている。
【0016】
赤外線センサベース基板2は、本体ベース基板8上に配置されている。
本体ベース基板8上には、赤外線撮像装置1のデータ処理を行うための、データ処理マイコン9、揮発性メモリ10(例えば、RAM(Random Access Memory))および不揮発性メモリ11(例えば、E2PRM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)またはフラッシュメモリ)が搭載されており、不揮発性メモリ11には後述する補正テーブルのデータを予め記憶させている。
なお、本開示では、データ処理マイコン9は、請求項のデータ処理演算部に相当する。
【0017】
さらに、本体ベース基板8上には、外気温を測定するための環境温度センサ13が配置されている。
環境温度センサ13は、本体ベース基板8の発熱温度を遮断するための断熱材12で断熱されており、外気温だけを正確に計測できるように構成されている。
【0018】
赤外線センサベース基板2に設置された高速処理マイコン6と、本体ベース基板8に設置されたデータ処理マイコン9は、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)などのインターフェースにより接続され、高速にデータを伝送できるようになっている。
また、データ処理マイコン9は、インターフェースコネクタ15および配線16により外部装置に接続されて高速にデータを伝送できるようになっている。
なお、データ処理マイコン9は、無線伝送モジュール17を介して無線18により、外部装置へ高速にデータを伝送しても良い。
【0019】
図2は実施の形態1による赤外線撮像装置のオフセットを説明するための図である。
図2において、縦軸は高速処理マイコン6のAD変換器で変換した出力値(デジタル値)を示し、横軸は温度を表している。ここで、高速処理マイコン6のAD変換器による出力値は14bitの場合を示しており、縦軸には0~16383の出力値が表される。
【0020】
図2に示すように、赤外線イメージセンサ部3の各画素の撮像素子a、b、c、d、e、・・・は、初期状態ではバラバラのオフセット値を持っている。このような状態であると、熱源測定物14から放出される赤外線エネルギ放射にともなって赤外線イメージセンサ部3から出力する出力値に基づいて、熱源測定物14の絶対温度を測定することはできない。
【0021】
本来、サーマルダイオード、サーモパイル、ボロメーターまたは集電センサ等の撮像素子は、温度の差分は計測できるが、絶対温度を計測するためには、基準となる温度を予め校正しておく必要がある。
【0022】
図2に示すような各撮像素子のバラバラのオフセット値を、例えば室温23℃と同じ温度校正板で温度を校正して、オフセット値をそろえると、
図3に示すように、23℃のところでオフセット値を同じにすることができる。なお、
図3も
図2と同様、縦軸は14bitのデジタル値を示しており、0~16383の出力データ値の中央値である8192を23℃としてオフセット値を校正している。
【0023】
一方、赤外線イメージセンサ部3の内部温度(以下、センサ内部温度と呼ぶ)は、赤外線センサベース基板2の発熱により、
図4に示すように、例えば環境温度(室温)が10℃の場合は曲線Aのように、環境温度(室温)が23℃の場合は曲線Bのように、環境温度(室温)が30℃の場合は曲線Cのように時間とともに上昇して所定の温度の値で一定になる。この場合、温度上昇の途中においては、オフセット値が変化するため、オフセット値の補正を何度も行う必要がある。
【0024】
図5は、センサ内部温度の変化によりオフセット値が変わる様子を示したグラフである。
図5において、例えば27℃付近で熱源測定物14の熱映像をセンシングした場合、熱源測定物14の各部の絶対温度を表す横軸に対しての赤外線イメージセンサ部3からの出力値のグラフの線分が、温度上昇にともなってオフセット値が下側にずれていく様子を表している。
【0025】
図5に示すような状態では、赤外線イメージセンサ部3の内部の温度変化が激しく起こる場合は、絶対温度を正確に計測することが不可能になり、温度が変化するたびに、既存の方法では温度が分かっているメカニカルなシャッタをレンズの前に置いて、オフセット値を繰り返し補正する必要があった。
【0026】
そこで、実施の形態1では、センサ内部温度の上昇にともなって、補正すべき各画素毎のオフセット補正テーブル105を、不揮発性メモリ11に予め記憶させておく。そして、センサ内部温度を計測する内部温度センサ7の出力値に近い補正テーブルを不揮発性メモリ11から選択して、オフセット補正することで、正確な絶対温度を表す熱映像のデータを得ることができるようにする。
【0027】
図6は、実施の形態1による、不揮発性メモリ11に予め記憶された各画素のオフセット補正テーブル105であり、センサ内部温度の上昇にともなって、オフセット値を補正するデータテーブルが記憶されている。
なお、
図6において、XXXは各温度(15℃、20℃、25℃)毎の各画素のオフセット値を表している。
また、
図6では、10×8の画素を持つ2次元センサ(赤外線イメージセンサ部3)の例を示したが、例えば80×60画素の場合はその画素数に対応したデータテーブルを記憶するものとする。
【0028】
図7は高速処理マイコン(DSPマイコン)6およびデータ処理マイコン9でソフトウエアとして処理されるデータ演算処理部の機能ブロック図およびフロー図である。
【0029】
図7において、内部温度取得部20は、赤外線イメージセンサ部3の内部の温度を計測する内部温度センサ7からの出力値を取得する。
環境温度取得部21は、外気温である環境温度を計測する環境温度センサ13からの出力値を取得する。
内部温度補正部23および環境温度補正部24は、センサ内部温度と環境温度のそれぞれの温度の時間的変化から、例えば
図4のグラフに基づいて、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する。
【0030】
オフセット補正テーブル取得部25は、内部温度補正部23および環境温度補正部24からのセンサ内部温度の推定値に基づいて、不揮発性メモリ11に予め記憶させておいた、
図6に示す温度毎のオフセット補正テーブル105を取得する。
【0031】
センサ出力値取得部22は、熱源測定物14から放出される赤外線エネルギ放射にともなって赤外線イメージセンサ部3から出力する出力値を取得する。
オフセット・ゲイン補正部26は、センサ出力値取得部22により取得した出力値を、オフセット補正テーブル取得部25で取得したオフセット補正テーブル105に基づいて、各画素のオフセット補正を行う。
また、オフセット・ゲイン補正部26は、センサ出力値取得部22により取得した出力値を、オフセット補正テーブル取得部25で取得したオフセット補正テーブル105に基づいて、各画素のゲインのバラツキを補正する。すなわち、オフセット・ゲイン補正部26は、オフセット補正テーブル105に基づいて、各画素について各温度毎のオフセット値を結んだグラフの傾きであるゲインを同じ値にしてゲインのバラツキを補正する。
【0032】
熱映像データ取得部28は、オフセット・ゲイン補正部26の補正に基づき、熱源測定物14の正確でバラつきのない絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する。
【0033】
以上のように、実施の形態1の赤外線撮像装置は、
赤外線センサベース基板上に、
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部と、
熱源測定物の放射エネルギを前記赤外線イメージセンサ部に投影するレンズと、
前記赤外線イメージセンサ部の内部の温度を計測する内部温度センサを配置し、
本体ベース基板上に、
前記赤外線センサベース基板と、
データ演算処理部とを配置し、
前記データ演算処理部は、
前記内部温度センサからのセンサ内部温度を取得する内部温度取得部と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得部と、
前記内部温度取得部で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得部で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正部および環境温度補正部と、
前記内部温度補正部および前記環境温度補正部からのセンサ内部温度の推定値に基づいて、メモリ部に予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得するオフセット補正テーブル取得部と、
前記熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得部と、
前記センサ出力値取得部により取得した出力値を、前記オフセット補正テーブル取得部で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正部と、
前記オフセット・ゲイン補正部の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得部とを備えたので、
赤外線撮像素子から得られる信号を均一に補正して正確な絶対温度を測定できる。
【0034】
また、実施の形態1の赤外線撮像装置の出力値補正方法は、
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部を備えた赤外線撮像装置の出力値補正方法であって、
赤外線イメージセンサ部のセンサ内部温度を取得する内部温度取得工程と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得工程と、
前記内部温度取得工程で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得工程で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正工程および環境温度補正工程と、
前記内部温度補正工程および前記環境温度補正工程のセンサ内部温度の推定値に基づいて、予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得する補正テーブル取得工程と、
前記熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、
前記センサ出力値取得工程により取得した出力値を、前記補正テーブル取得工程で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正工程と、
前記オフセット・ゲイン補正工程の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得工程とを備えたので、
赤外線撮像素子から得られる信号を均一に補正して正確な絶対温度を測定できる。
【0035】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
図8の実施の形態2の構成図において、
図1の実施の形態1の構成図との違いは、断熱材12と環境温度センサ13が実施の形態2では必要ではないという点である。なお、その他の赤外線撮像装置の構成部品は、
図1と同様であるので説明を省略する。
【0036】
内部温度センサ7で計測できる温度は、赤外線撮像装置1に電源が入っていない状態では、ほぼ環境温度の室温と同じ温度を示しているとみてよい。
【0037】
すなわち、赤外線撮像装置1に電源が入らない状態から電源が入った瞬間における、内部温度センサ7を計測して、当該温度を不揮発性メモリ11に記憶させておく。そして、当該温度を読み出して、室温とすることで、室温と同じ温度のメカニカルシャッタがあたかも存在するような状態で、仮想のシャッタ補正をして、オフセット値をその室温で校正することができる。
【0038】
図9は実施の形態2による赤外線撮像装置を説明するためのグラフである。
図9において、赤外線撮像装置1の電源ON時からのグラフが、曲線A1に示すように内部温度が上昇していく場合は、その開始点の温度10℃が室温ということが推定できる。また、曲線B1の場合は23℃が室温であると推定できる。さらに、曲線C1の場合は室温が30℃であると推定できる。
【0039】
赤外線撮像装置1の電源ON時に瞬間的に測定した値を環境温度(室温)として不揮発性メモリ11に記憶して、その後、センサ内部温度の収束値が変化しない場合は当該値を環境温度(室温)として、後述の補正に使用する。
【0040】
センサ内部温度の収束値が時間とともに変化した場合は、環境温度(室温)が変化したものとみなして、各環境温度(室温)の環境下で予め計測しておいた、
図9の内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブルから、環境温度(室温)を推定する。
【0041】
内部温度上昇グラフ値と収束温度値のテーブルは予め不揮発性メモリ11に記憶させておき、環境温度(室温)の時間的変化を推定する。
【0042】
図10はデータ処理マイコン9でソフトウエアとして処理されるデータ演算処理部の機能ブロック図およびフロー図である。
環境温度(室温)の時間的変化を推定する方法は、内部温度上昇グラフ値と収束温度値のテーブル取得部30により予め不揮発性メモリ11に記憶させておいた、例えば
図9に示す内部温度上昇グラフ値と収束温度値のテーブルからデータを読み出し、センサ内部温度変化検出部31でセンサ内部温度の微妙な変化を検出して、それに見合った内部温度上昇グラフデータを、内部温度上昇グラフ値選択部32で選択して、そのグラフの開始点を環境温度(室温)とする推定処理を、環境温度推定部33で行う。
【0043】
以上のように、実施の形態2の赤外線撮像装置によれば、
前記環境温度取得部として、予め前記メモリ部に記憶させておいた内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブル取得部と、センサ内部温度の変化を検出するセンサ内部温度変化検出部と、前記センサ内部温度変化検出部で検出したセンサ内部温度の変化に見合った内部温度上昇グラフデータを選択する内部温度上昇グラフ値選択部と、前記内部温度上昇グラフ値選択部で選択した内部温度上昇グラフデータのグラフの開始点を室温とする推定処理を行う環境温度推定部とを備えるようにしたので、
環境温度センサを実装しなくても、環境温度の微妙な変化を推定できる赤外線撮像装置を得ることができる。
【0044】
また、実施の形態2の赤外線撮像装置の出力値補正方法によれば、
前記環境温度取得工程は、予め記憶させておいた内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブル取得工程と、センサ内部温度の変化を検出するセンサ内部温度変化検出工程と、前記センサ内部温度変化検出工程で検出したセンサ内部温度の変化に見合った内部温度上昇グラフデータを選択する内部温度上昇グラフ値選択工程と、前記内部温度上昇グラフ値選択工程で選択した内部温度上昇グラフデータのグラフの開始点を室温とする推定処理を行う環境温度推定工程とを備えるようにしたので、
環境温度センサを実装しなくても、環境温度の微妙な変化を推定できる。
【0045】
実施の形態3.
図11は実施の形態3による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
実施の形態3の
図11の構成は、実施の形態2の
図8と同様であるが、ゲイン補正は、不揮発性メモリ11とデータ処理マイコン9に実装されているソフトウエアで実現されている点が異なる。
【0046】
赤外線イメージセンサ部3の各撮像素子は、
図12に示すグラフの傾きで表されるゲインが微妙に異なるため、オフセット値を例えば環境温度(室温)の30℃で出力値8192の中央値に校正しても、それより大幅に低くなる温度例えば10℃、または、大幅に高くなる温度例えば50℃においては、各画素間で微妙な誤差が生まれる。
【0047】
そのため、例えば室温とはかなり温度差がある背景などの熱映像は、
図13Aに示すような横縞に、または、
図13Bに示すような縦縞に、または、横縞および縦縞の両方含むクロスハッチ模様が固定パターンとして表示されることがある。
【0048】
図13Aおよび
図13Bのような不具合を解消するためには、各画素のオフセットの校正のみならす、ゲインも正確に校正する必要がある。
【0049】
図14は例えば7℃で出力値4096でオフセット校正をしたとき、43℃の熱源測定物14の出力値を見ると本来同じ値を示すべきところが各撮像素子a、b、c、dにおける丸印で示すように若干値が異なっている。
【0050】
そこで、各撮像素子(各画素)の出力値の傾きθをそれぞれ求めて、これが同じになるように校正する。
【0051】
図15に示す各撮像素子(各画素)の出力値の傾きを示す校正テーブル(以下、ゲイン校正テーブル110と呼ぶ)をあらかじめ赤外線イメージセンサ部3毎に記憶しておき、これを用いて画素のゲインを同一にする。
なお、
図15に示すゲイン校正テーブル110の各撮像素子(各画素)の出力値の傾き(ゲインのバラツキ)をyyyで表している。
【0052】
実施の形態3では、
図16に示すように、ゲインのバラツキの校正をデータ処理マイコン9のソフトウエアによる実現する。
図16において、ゲイン校正テーブル読み出し部34により各前記撮像素子のゲインのバラつきを表すゲイン校正テーブル110を読み出す。
次に、オフセット・ゲイン補正部26により、ゲイン校正テーブルを用いて、高速処理マイコン6のAD変換器の出力値のゲインの補正を行う。
そして、熱映像表示部36により、オフセット・ゲイン補正部26によりゲインの補正を行った出力値の熱映像を表示する。
熱映像表示部36により表示する熱映像は、横縞または縦縞またはそれを合成したようなクロスハッチの固定パターンはなくなり、非常に綺麗で鮮鋭な熱映像が得られる。
なお、オフセット・ゲイン補正部26によるオフセット値の補正は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0053】
以上のように、実施の形態3によれば、前記オフセット・ゲイン補正部は、ゲイン校正テーブル読み出し部により各前記撮像素子のゲインのバラつきを表すゲイン校正テーブルを読み出し、前記ゲイン校正テーブルを用いてゲインの補正を行うようにしたので、非常に綺麗で鮮鋭な熱映像が得られる。
【0054】
実施の形態4.
図17は実施の形態4による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
【0055】
実施の形態4では、実施の形態1~3で説明した赤外線撮像装置1を用いて、人間40の正確な体内温度を測定するための方法について説明する。
【0056】
人間40の顔を赤外線撮像装置1で測定すると、顔の表面皮膚温度を正確に測定することができる。
しかしながら、顔の表面皮膚温度は、人間の体内温度とは相違している。
【0057】
ここで、環境温度(室温)と表面皮膚温度と実際の体内温度との関係は、
図19に示すような関係になることが知られている。
そこで、
図19のグラフを、表面皮膚温度-体内温度補正テーブルとして、不揮発性メモリ11に予め記憶しておく。
【0058】
そして、実施の形態4では、人間の正確な体内温度を測定するために、
図18に示すようなデータ処理マイコン9(データ演算処理部)のソフトウエアの機能ブロックおよびフローにより実現する。
図18において、熱映像データ取得部28の出力は表面温度取得部38に入力され、表面温度取得部38は表面皮膚温度を取得する。
環境温度取得部21は環境温度(室温)を取得する。
体内温度推定部39は、環境温度取得部21で取得した環境温度(室温)と、表面温度取得部38で取得した表面皮膚温度と、
図19に示す表面温度-体内温度補正テーブルとに基づいて、体内温度を推定する。
すなわち、体内温度推定部39では、
図19に示す表面温度-体内温度補正テーブルに基づいて、環境温度である室温毎に、表面皮膚温度と実際の体内温度との差分により、正確な体内温度を得ることができる。
なお、
図19において、実際の表面皮膚温度および体内温度のデータを直線に近似して、簡易的に平均表面皮膚温度と平均体内温度の差分を予め計算しておくこともできる。
【0059】
以上のように、実施の形態4によれば、
前記熱映像データ取得部の出力を表面皮膚温度として取得する表面温度取得部と、
前記環境温度取得部で取得した環境温度と、前記表面温度取得部で取得した表面皮膚温度と、表面温度-体内温度補正テーブルとに基づいて体内温度を推定する体内温度推定部とを備えたので、
人間の正確な体内温度を測定することができる。
【0060】
実施の形態5.
実施の形態1~3では、赤外線撮像装置で得られる画素毎のデータと絶対温度の関係は線形の直線をあらわすものとしたが、実際は撮像素子の特性、例えばサーモダイオードの特性により、
図20に示すような非線形のデータを示すことが多い。
図20の例では、例えば40℃から180℃では近似の直線Vとみなすことができる。同様に220℃から340℃までは、近似の直線Wとみなすことができる。
【0061】
しかしながら、温度―50℃から500℃の広い範囲で温度分布を測定すると、この非線形性が欠点となり、正確な絶対温度分布を測定できない。
【0062】
そこで、前述の非線形の特性曲線は、
図21に示すように2次曲線として表現できるため、予め撮像素子で得られた値を測定し、物体表面温度を記憶させておき、これにフィットした2次曲線の各係数を最小二乗法で求めた式により、撮像素子から出てくる放射エネルギに対応した値から熱源測定物の絶対温度を正確に計算することができる。
【0063】
また、
図22は前述の非線形の曲線を、複数の直線の連なりで表した折れ線グラフとみなせることもできる。この場合、ある区間の直線の方程式から線形近似で熱源測定物の絶対温度を正確に計算することができる。
【0064】
以上のように、実施の形態5によれば、前記オフセット・ゲイン補正部は、前記センサ出力値取得部により取得した出力値の非線形の曲線を2次曲線または直線折れ線グラフで近似して、各前記撮像素子のオフセット補正を行い、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するようにしたので、熱源測定物の絶対温度を正確に計算することができる。
【0065】
実施の形態6.
実施の形態1~3では、オフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルを不揮発性メモリに記憶させておいて、環境温度またはセンサ内部温度からその温度に近いテーブルを選択して補正を行っているが、不揮発性メモリの容量は有限であり、その環境温度またはセンサ内部温度を細かな間隔でテーブルに記憶することはできない。
【0066】
実施の形態6では、
図23に示すように、例えば10℃と20℃のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルから、10℃~20℃の間の任意の温度のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルを導出する。
【0067】
具体的には、
図24に示すように、各前記撮像素子でバラつきのある放射エネルギ量の出力値データと温度のグラフを、前述の実施の形態5で説明した2次曲線の近似式から2つの補正テーブル(10℃の補正テーブルと20℃の補正テーブル)の間の補正テーブルデータ列(14.8℃の補正テーブルと17.5℃の補正テーブル)を計算して、これを使って補正することで、正確な絶対温度を知ることができる。
【0068】
以上のように、実施の形態6によれば、
前記オフセット・ゲイン補正部は、前記センサ出力値取得部により取得した出力値の非線形の曲線を2次曲線または直線折れ線グラフで近似して、少なくとも2点の温度のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルから、前記2点の温度の間のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルを計算して、各前記撮像素子のオフセット補正を行い、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するようにしたので、
少ないオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルの間の中間の温度のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルを導出ことができる。
【0069】
実施の形態7.
実施の形態7は、実施の形態1~6による赤外線撮像装置1をパソコンまたは高速大容量のマイコンの搭載した高速ボード型コンピュータに接続して、得られた熱映像を先鋭化したり、疑似カラーに変換したり、各前記撮像素子毎の絶対温度を表示するものである。
【0070】
実施の形態7では、
図25に示すように、実施の形態1~6による赤外線撮像装置1をパソコンまたは高速大容量のマイコンを搭載した高速ボード型コンピュータ40に有線ケーブル42または無線により接続して高速にデータを渡すものとする。なお、高速ボード型コンピュータ40には、キーボード43およびLCD等の表示装置44を有している。
【0071】
廉価版の赤外線イメージセンサ部3は、各画素が荒く、例えば80×60程度しか画素数がない。
廉価版の赤外線イメージセンサ部3の出力を、高解像度のLCD等の表示装置44で表示する場合、画素数を倍増する必要があるが、単純に倍増するとブロックノイズが気になったり、また、倍増したときの画素をリニアで中間画素を導いたり、補正曲線で補正すると、画像は滑らかになるが、ぼけた映像になってしまう。
【0072】
実施の形態7では、
図26に示すように、80×60程度の画素数の低解像度の熱映像データ取得部50で得られたデータを、画素倍増部51および超解像化部52により、たとえは10倍の800×600に画素数を倍増させても、熱映像表示部53で表示された熱映像はボケることもなく鮮鋭な画像が得られる。
【0073】
そのためには、従来からよく知られた、動画像のフレーム相関を用いる方法、または、最近ではAI(Artificial Intelligence)を利用した方法で高解像の熱映像を学習させて、低解像度の熱映像データ取得部50で取得した低解像度熱映像データから高解像を得ることができる超解像度化手法を用いることができる。
【0074】
これにより、
図26の熱映像表示部53であるLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置44で鮮鋭な熱映像を得ることができる。
【0075】
図27に示すように、低解像度の熱映像58は頭の部分を拡大すると画素毎のブロックノイズ59が目立ってしまう。
【0076】
実施の形態7では、低解像度の熱映像データ取得部50、画素倍増部51、超解像化部52、熱映像表示部53を用いることにより、
図27に示す熱映像データに示すような、高解像でブロックノイズが目立たない、しかも鮮鋭な熱映像60を得ることができる。
【0077】
以上のように、実施の形態7によれば、
熱映像データ取得部で取得した熱映像データの画素数を倍増および超解像化する画素倍増部および超解像化部を備え、前記画素倍増部および前記超解像化部の出力を熱映像表示部により表示するようにしたので、
高解像でブロックノイズが目立たなく、鮮鋭な熱映像を得ることができる。
【0078】
実施の形態8.
実施の形態8では、実施の形態7で用いた、赤外線撮像装置1に接続したパソコンなどの処理装置で、白黒の熱映像ではなく、各画素の絶対温度をカラーテーブルに置き換えて、その温度のカラー値で熱映像を表す方法について説明する。
【0079】
図28は、実施の形態8による赤外線撮像装置のデータ処理を示す機能ブロック図である。
実施の形態8は、
図28に示すように、熱映像データを取得する熱映像データ取得部28と、熱映像データ取得部28で取得した熱映像データを予め決めたカラーテーブルで置き換える疑似カラー化部55と、測定したい画素にマーカを合わせることで、必要な局所部位に温度を表示させる温度点表示部56と、熱映像表示部57で実現する。
【0080】
図28の熱映像表示部57で表示した画像を
図29に示す。
図29において、61はカラーで表した熱映像であり、62は絶対温度を表すカラーテーブルである。
また、63は測定したい画素のマーカであり、その中心の画素の絶対温度を表示することができる。
【0081】
以上のように、実施の形態8によれば、熱映像データ取得部で取得した熱映像データを予め決めたカラーテーブルで置き換える疑似カラー化部と、測定したい画素にマーカを合わせることにより局所部位に温度を表示させる温度点表示部と、前記疑似カラー化部および前記温度点表示部の出力を表示する熱映像表示部を備えるようにしたので、
測定したい画素のマーカを表示し、その中心の画素の絶対温度を表示することができる。
【0082】
実施の形態9.
図30Aおよび
図30Bは、実施の形態9による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
図30Aおよび
図30Bにおいて、赤外線撮像装置1は、
図1の赤外線撮像装置1と同様の構成であり、その構成物品の説明は省略する。
【0083】
図30Aは、赤外線撮像装置1に対して熱源測定物41が遠くに位置する場合を示す。この場合は、熱源測定物41から放射されるエネルギは赤外線イメージセンサ部3から遠い位置にあるため、放射エネルギによって、筐体4またはレンズ5などを温めることなく、正確に熱源測定物41の温度を測定できる。
【0084】
しかし、
図30Bに示すように、赤外線撮像装置1に対して熱源測定物41がセンサに極めて近い位置にある場合、熱源測定物41からの放射エネルギによって、筐体4またはレンズ5などが温められて、筐体4またはレンズ5などから放射されるエネルギを赤外線イメージセンサ部3が感知してしまって、正確に熱源測定物41の表面温度を測定することができない。
【0085】
図31は、実施の形態9による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
実施の形態1~3における構成部品に追加して、赤外線イメージセンサ部3の前面に赤外線のみを透過するフィルタ70を配置し、フィルタ70により熱源測定物41の放射エネルギの影響を筐体4またはレンズ5などが受けないような構成になっている。
【0086】
フィルタ70は熱源測定物41からの放射エネルギで温められるため、この影響を取り除くため、フィルタ70には冷却フィン71が設置されており、温度上昇を防ぐように周辺に熱放散される。
【0087】
以上のように、実施の形態9によれば、赤外線イメージセンサ部の前面に赤外線のみを透過するフィルタを配置し、前記フィルタには冷却フィンが設置されているので、
熱源測定物が近い位置にある場合でも、正確に熱源測定物の表面温度を測定することができる。
【0088】
実施の形態10.
図32Aおよび
図32Bは、実施の形態10による赤外線撮像装置を説明するための構成図である。
図32Aおよび
図32Bにおいて、赤外線撮像装置1は、
図1の赤外線撮像装置1と同様の構成であり、構成物品の説明は省略する。
【0089】
図32Aは、赤外線撮像装置1に対して熱源測定物41が遠い位置にある場合である。この場合は、熱源測定物41から放射されるエネルギは赤外線撮像装置1より遠いため、熱源測定物41の放射エネルギによって、赤外線撮像装置1の筐体4またはレンズ5などを温めることなく、正確に熱源測定物41の温度を測定できる。
【0090】
図32Bに示すように、熱源測定物41が赤外線撮像装置1に極めて近い位置にある場合、熱源測定物41からの放射エネルギによって、赤外線撮像装置1の筐体4またはレンズ5などが温められて、筐体4またはレンズ5などから放射されるエネルギを赤外線イメージセンサ部3が感知してしまい、正確に熱源測定物41の表面温度を測定することができない。
【0091】
図32Aに示すように、熱源測定物41が遠くにある場合は、熱映像表示部57に表示された熱映像は、被写体(遠い)映像85のように全体の映像に対する熱源測定物41の面積が小さくなる。
また、
図32Bに示すように、熱源測定物41が近くにある場合は、熱映像表示部57に表示された熱映像は、被写体(近い)映像86のように全体の映像に対する熱源測定物41の面積が大きくなる。
【0092】
図33は、実施の形態10による赤外線撮像装置を説明するための機能ブロック部およびフロー図である。
図33において、予め対象となる熱源測定物41(被写体(主たる被写体))の面積が決まっている場合に、主画像面積抽出部82は、熱映像データ取得部28で取得したデータに基づいて、予め決められた被写体(主たる画像)、例えば人間の顔などの主たる画像面積を抽出する。
距離算出および補正部83は、主画像面積抽出部82で抽出した画像面積に応じて被写体(主たる画像)の距離を算出して、当該距離に応じて熱映像データ取得部28で取得したデータを補正する。
熱映像表示部84は、距離算出および補正部83で補正したデータに基づいて、被写体(主たる画像)の精度の高い熱映像の表示を実現する。
【0093】
以上のように、実施の形態10によれば、
予め対象となる熱源測定物である被写体の面積が定まっている場合に、前記熱映像データ取得部で取得したデータに基づいて、前記被写体の画像面積を抽出する主画像面積抽出部と、前記主画像面積抽出部で抽出した画像面積に応じて前記被写体の距離を算出して、当該距離に応じて前記熱映像データ取得部で取得したデータを補正する距離算出および補正部と、前記距離算出および補正部で補正したデータに基づいて、前記被写体の熱映像を表示する熱映像表示部とを備えたので、
被写体の距離に関わらず精度の高い絶対温度表示を行うことができる。
【0094】
なお、前述の実施の形態で説明したデータ処理マイコン9(データ処理演算部)は、ハードウエアの一例を
図34に示すように、プロセッサ1000と記憶装置1010から構成される。記憶装置1010は、前述のランダムアクセスメモリ等の揮発性メモリ10およびフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ11を備える。
また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクなどの補助記憶装置を備えてもよい。プロセッサ1000は、記憶装置1010から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性メモリ10を介してプロセッサ1000にプログラムが入力される。また、プロセッサ1000は、演算結果等のデータを記憶装置1010の揮発性メモリ10に出力してもよいし、揮発性メモリ10を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0095】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、この明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0096】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0097】
(付記1)
赤外線センサベース基板上に、
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部と、
熱源測定物の放射エネルギを前記赤外線イメージセンサ部に投影するレンズと、
前記赤外線イメージセンサ部の内部の温度を計測する内部温度センサを配置し、
本体ベース基板上に、
前記赤外線センサベース基板と、
データ演算処理部とを配置し、
前記データ演算処理部は、
前記内部温度センサからのセンサ内部温度を取得する内部温度取得部と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得部と、
前記内部温度取得部で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得部で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正部および環境温度補正部と、
前記内部温度補正部および前記環境温度補正部からのセンサ内部温度の推定値に基づいて、メモリ部に予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得するオフセット補正テーブル取得部と、
前記熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得部と、
前記センサ出力値取得部により取得した出力値を、前記オフセット補正テーブル取得部で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正部と、
前記オフセット・ゲイン補正部の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得部とを備えた赤外線撮像装置。
(付記2)
前記環境温度取得部は、前記赤外線センサベース基板上に断熱材を介して配置された環境温度センサにより環境温度を取得する付記1に記載の赤外線撮像装置。
(付記3)
前記環境温度取得部は、
予め前記メモリ部に記憶させておいた内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブル取得部と、
センサ内部温度の変化を検出するセンサ内部温度変化検出部と、
前記センサ内部温度変化検出部で検出したセンサ内部温度の変化に見合った内部温度上昇グラフデータを選択する内部温度上昇グラフ値選択部と、
前記内部温度上昇グラフ値選択部で選択した内部温度上昇グラフデータのグラフの開始点を室温とする推定処理を行う環境温度推定部とを備える付記1に記載の赤外線撮像装置。
(付記4)
前記オフセット・ゲイン補正部は、ゲイン校正テーブル読み出し部により各前記撮像素子のゲインのバラつきを表すゲイン校正テーブルを読み出し、前記ゲイン校正テーブルを用いてゲインの補正を行う付記1から付記3のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
(付記5)
前記熱映像データ取得部の出力を表面皮膚温度として取得する表面温度取得部と、
前記環境温度取得部で取得した環境温度と、前記表面温度取得部で取得した表面皮膚温度と、表面温度-体内温度補正テーブルとに基づいて体内温度を推定する体内温度推定部とを備えた付記1から付記4のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
(付記6)
前記オフセット・ゲイン補正部は、前記センサ出力値取得部により取得した出力値の非線形の曲線を2次曲線または直線折れ線グラフで近似して、各前記撮像素子のオフセット補正を行い、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するようにした付記4に記載の赤外線撮像装置。
(付記7)
前記オフセット・ゲイン補正部は、前記センサ出力値取得部により取得した出力値の非線形の曲線を2次曲線または直線折れ線グラフで近似して、少なくとも2点の温度のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルから、前記2点の温度の間のオフセット補正テーブルまたはゲイン校正テーブルを計算して、各前記撮像素子のオフセット補正を行い、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するようにした付記6に記載の赤外線撮像装置。
(付記8)
前記熱映像データ取得部で取得した熱映像データの画素数を倍増および超解像化する画素倍増部および超解像化部を備え、前記画素倍増部および前記超解像化部の出力を熱映像表示部により表示する付記1から付記7のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
(付記9)
前記熱映像データ取得部で取得した熱映像データを予め決めたカラーテーブルで置き換える疑似カラー化部と、測定したい画素にマーカを合わせることにより局所部位に温度を表示させる温度点表示部と、前記疑似カラー化部および前記温度点表示部の出力を表示する熱映像表示部を備える付記1から付記8のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
(付記10)
前記赤外線イメージセンサ部の前面に赤外線のみを透過するフィルタを配置し、前記フィルタには冷却フィンが設置されている付記1から付記9のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
(付記11)
予め対象となる前記熱源測定物である被写体の面積が定まっている場合に、前記熱映像データ取得部で取得したデータに基づいて、前記被写体の画像面積を抽出する主画像面積抽出部と、
前記主画像面積抽出部で抽出した画像面積に応じて前記被写体の距離を算出して、当該距離に応じて前記熱映像データ取得部で取得したデータを補正する距離算出および補正部と、
前記距離算出および補正部で補正したデータに基づいて、前記被写体の熱映像を表示する熱映像表示部とを備えた付記1から付記10のいずれか1項に記載の赤外線撮像装置。
(付記12)
撮像素子を2次元配列に並べた赤外線イメージセンサ部を備えた赤外線撮像装置の出力値補正方法であって、
前記赤外線イメージセンサ部のセンサ内部温度を取得する内部温度取得工程と、
外気温である環境温度を取得する環境温度取得工程と、
前記内部温度取得工程で取得したセンサ内部温度と前記環境温度取得工程で取得した環境温度それぞれの温度の時間的変化から、環境温度の変化に追従するセンサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正工程および環境温度補正工程と、
前記内部温度補正工程および前記環境温度補正工程のセンサ内部温度の推定値に基づいて、予め記憶させておいた各温度毎のオフセット補正テーブルを取得する補正テーブル取得工程と、
熱源測定物から放出されるエネルギ放射にともなって前記赤外線イメージセンサ部から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、
前記センサ出力値取得工程により取得した出力値を、前記補正テーブル取得工程で取得したオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正工程と、
前記オフセット・ゲイン補正工程の補正に基づき、前記熱源測定物の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得工程とを備えた赤外線撮像装置の出力値補正方法。
(付記13)
前記環境温度取得工程は、予め記憶させておいた内部温度上昇グラフデータと収束温度値のテーブル取得工程と、センサ内部温度の変化を検出するセンサ内部温度変化検出工程と、前記センサ内部温度変化検出工程で検出したセンサ内部温度の変化に見合った内部温度上昇グラフデータを選択する内部温度上昇グラフ値選択工程と、前記内部温度上昇グラフ値選択工程で選択した内部温度上昇グラフデータのグラフの開始点を室温とする推定処理を行う環境温度推定工程とを備える付記12に記載の赤外線撮像装置の出力値補正方法。
(付記14)
前記オフセット・ゲイン補正工程は、予め記憶された各前記撮像素子のゲインのバラつきを表すゲイン校正テーブルを読み出し、前記ゲイン校正テーブルを用いてゲインの補正を行う付記12または付記13に記載の赤外線撮像装置の出力値補正方法。
【符号の説明】
【0098】
1 赤外線撮像装置、2 赤外線センサベース基板、3 赤外線イメージセンサ部、
4 筐体、5 レンズ、6 高速処理マイコン、7 内部温度センサ、
8 本体ベース基板、9 データ処理マイコン、10 揮発性メモリ、
11 不揮発性メモリ、12 断熱材、13 環境温度センサ、14 熱源測定物、
20 内部温度取得部、21 環境温度取得部、22 センサ出力値取得部、
23 内部温度補正部、24 環境温度補正部、25 オフセット補正テーブル取得部、
26 オフセット・ゲイン補正部、28 熱映像データ取得部、
30 内部温度上昇グラフ値と収束温度値のテーブル取得部、
31 センサ内部温度変化検出部、32 内部温度上昇グラフ値選択部、
33 環境温度推定部、34 ゲイン校正テーブル読み出し部、36 熱映像表示部、
38 表面温度取得部、39 体内温度推定部、40 高速ボード型コンピュータ、
41 熱源測定物、44 表示装置、50 低解像度の熱映像データ取得部、
51 画素倍増部、52 超解像化部、53 熱映像表示部、55 疑似カラー化部、
56 温度点表示部、57 熱映像表示部、58 低解像度の熱映像、
59 画素毎のブロックノイズ、60 鮮鋭な熱映像、61 カラーで表した熱映像、
62 絶対温度を表すカラーテーブル、63 測定したい画素のマーカ、
70 フィルタ、71 冷却フィン、82 主画像面積抽出部、
83 距離算出および補正部、84 熱映像表示部、85 被写体(遠い)映像、
86 被写体(近い)映像、105 オフセット補正テーブル、
110 ゲイン校正テーブル、1000 プロセッサ、1010 記憶装置。
【要約】
【課題】赤外線撮像素子から得られる信号を均一に補正して正確な絶対温度を測定できる赤外線撮像装置を提供する。
【解決手段】センサ内部温度と環境温度それぞれの温度の時間的変化から、センサ内部温度の収束値を推定して補正する内部温度補正部23および環境温度補正部24と、センサ内部温度の推定値に基づいて各温度毎のオフセット補正テーブルを取得するオフセット補正テーブル取得部25と、赤外線イメージセンサ部3から出力する出力値を取得するセンサ出力値取得部22と、前記出力値をオフセット補正テーブルに基づいて、各前記撮像素子のオフセット補正を行うとともに、各前記撮像素子のゲインのバラツキを補正するオフセット・ゲイン補正部26と、熱源測定物14の絶対温度を表す2次元熱映像データを取得する熱映像データ取得部28とを備える。
【選択図】
図7