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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 12/06 20210101AFI20250221BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20250221BHJP
   H04W 12/04 20210101ALI20250221BHJP
   H04W 12/63 20210101ALI20250221BHJP
【FI】
H04W12/06
H04W4/40
H04W12/04
H04W12/63
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024028273
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2020098255の分割
【原出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2024054407
(43)【公開日】2024-04-16
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-124592(JP,A)
【文献】特開2018-71190(JP,A)
【文献】特開2015-83408(JP,A)
【文献】特開2019-121122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0162321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記認証処理が複数回繰り返される処理群毎に、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を変更する制御を行い、
前記認証処理で送信または受信される各信号は、前記認証処理の開始を通知するトリガ信号と、前記トリガ信号を受信した場合に返送され、応答を要求する要求信号と、前記要求信号を受信した場合に返送され、前記要求に応答する応答信号と、を含む、
制御装置。
【請求項2】
前記認証情報は、暗号化された情報である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記認証処理を規定回数繰り返す処理群を実行することが通知された場合、当該通知より前に実行された前記処理群で用いられた認証情報とは異なる認証情報に変更する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記トリガ信号、前記要求信号、および前記応答信号に、それぞれ異なる前記認証情報を用いた前記認証処理を複数回繰り返す処理群を実行し、
前記処理群毎に、各信号に用いる前記認証情報を変更する、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記トリガ信号、前記要求信号、および前記応答信号に、それぞれ同じ前記認証情報を用いた前記認証処理を複数回繰り返す処理群を実行し、
前記処理群毎に、各信号に用いる前記認証情報を変更する、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記認証処理として、前記通信装置と前記制御装置との間の距離を測定する測距認証を実行し、
前記トリガ信号は、前記測距認証を開始することを通知する測距トリガ信号であり、
前記要求信号は、前記距離を算出するために応答を要求する測距要求信号であり、
前記応答信号は、前記測距要求信号を受信した場合に応答する測距応答信号である、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、一の処理群内で複数回繰り返された認証処理の各結果から代表値を取得し、複数回行われた各処理群の代表値に基づいて、最終的な認証を行う、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、移動体に搭載され、
前記通信装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記通信装置と無線通信を行う1以上の通信部と、
前記制御部と、を有する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記移動体に搭載され、前記通信装置と無線通信を行う1以上の移動体搭載通信装置を制御し、
前記移動体搭載通信装置を介して前記通信装置との信号の送受信を制御する、請求項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記通信装置は、移動体に搭載され、
前記制御装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記通信装置は、
前記制御装置と無線通信を行う複数の通信部と、
前記制御部と、を有し、
前記制御装置は、
前記複数の通信部と、前記認証処理に用いられる信号の送信または受信を行う、請求項1に記載の制御装置。
【請求項13】
プロセッサが、
少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御することと、
前記認証処理が複数回繰り返される処理群毎に、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を変更することと、
を含み、
前記認証処理で送信または受信される各信号は、前記認証処理の開始を通知するトリガ信号と、前記トリガ信号を受信した場合に返送され、応答を要求する要求信号と、前記要求信号を受信した場合に返送され、前記要求に応答する応答信号と、を含む、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で信号を送受信した結果に従って装置を認証する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、第1の通信部により車載器が携帯機との間で信号を送受信して携帯機の認証を行っている。携帯機は、車両の施錠や解錠を行うためのリモートコントローラであって、スマートキーとも称される。また、携帯機は運転者に携帯される。さらに、下記特許文献1では、第1の通信部による認証に加えて、第2の通信部により車載器が携帯機との距離を測って車両操作の許否を判定するスマートキーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-31871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、より確実な認証を行うことを考慮した場合、認証処理を複数回繰り返し試みることが望ましいが、一方で、セキュリティの確保も重要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、装置間の認証処理をより確実に行い、かつ、セキュリティを向上させることが可能な、新規かつ改良された制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記認証処理が複数回繰り返される処理群毎に、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を変更する制御を行う、制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、プロセッサが、少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御することと、前記認証処理が複数回繰り返される処理群毎に、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を変更することと、を含む、制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、装置間の認証処理をより確実に行い、かつ、セキュリティを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態による認証処理の基本的な流れの一例を示すシーケンス図である。
図3】複数回繰り返す測距処理において信号の認識にずれが生じて認証が失敗する場合について説明する図である。
図4】本実施形態に係る距離に基づく認証処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図5】本実施形態による処理群Lを開始する際に認証情報を変更する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100、及び制御装置200を含む。本実施形態における制御装置200は、一例として、車両20に搭載される。車両20は、ユーザの利用対象の一つとして挙げられる移動体の一例である。
【0012】
本発明には、被認証側である通信装置と、当該通信装置との通信により得られた情報を用いて当該他の通信装置を認証する認証処理を行う制御部を備える制御装置と、が関与する。図1に示した例では、携帯機100が通信装置の一例であり、制御装置200が制御装置の一例である。システム1においては、例えば車両20の運転者等のユーザが携帯機100を携帯して車両に近付くと、携帯機100と車両20に搭載された制御装置200との間で認証のための無線通信が行われる。そして、認証が成功すると、車両20のドア錠がアンロックされたりエンジンが始動されたりして、車両20はユーザにより利用可能な状態となる。システム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0013】
(1-1)携帯機100
携帯機100は、任意の装置として構成される。任意の装置の一例として、運転者等のユーザに携帯して使用される、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等の装置が挙げられる。図1に示すように、携帯機100は、第1の無線通信部110、第2の無線通信部120、記憶部130、及び制御部140を備える。
【0014】
第1の無線通信部110は、制御装置200との間で、第1の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。第2の無線通信部120は、制御装置200との間で、第1の無線通信規格とは異なる第2の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。とりわけ、第2の無線通信規格は、第1の無線通信規格よりも測距に適し、第2の無線通信部120は、測距に関する通信を主に担当する。
【0015】
ここで、第1の無線通信規格は、第2の無線通信規格と比較して、利得が高いこと、及び受信側の消費電力が低いこと、の少なくともいずれかを満たしてもよい。これらの要件を満たす具体例として、第2の無線通信規格では、第1の無線通信規格における搬送波の周波数よりも高い周波数の搬送波が用いられてもよい。搬送波の周波数が高いほど距離に応じた減衰が大きくなるため利得が低くなり、搬送波の周波数が低いほど距離に応じた減衰が小さくなるため利得が高くなり、利得に関する上記要件が満たされるためである。また、搬送波の周波数が高いと、人体による吸収などの人体影響が大きくなり、利得が低下する。
【0016】
なお、サンプリング周波数が、搬送波の周波数の最大値に応じて設定されることを考慮すれば、第2の無線通信規格における搬送波の最大周波数が第1の無線通信規格における搬送波の最大周波数よりも高いこと、が少なくとも満たされればよい。
【0017】
例えば、第1の無線通信規格では、RF(Radio Frequency)帯の信号及びLF(Low Frequency)帯の信号が使用されてもよい。典型的なスマートエントリーシステムにおいては、携帯機100から車両20の制御装置200への送信にRF帯の信号が使用され、車両20の制御装置200から携帯機100への送信にLF帯の信号が使用される。以下では、第1の無線通信部110は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されているものとして説明する。即ち、以下では、車両20の制御装置200への送信にRF帯の信号を使用し、車両20の制御装置200からの受信にLF帯の信号を使用するものとする。
【0018】
例えば、第2の無線通信規格では、UWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号が使用されてもよい。UWBによるインパルス方式の信号は、測位及び測距を高精度に行うことができるという特性を有する。即ち、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測位及び測距を高精度に行うことができる。以下では、第2の無線通信部120は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。
【0019】
なお、UWBを用いた信号は、測距用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信される信号である。測距用信号は、例えば、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。データ信号は、データを搬送するための信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが望ましい。以下では、測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されるものとする。また、データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されるものとする。
【0020】
記憶部130は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部130は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(識別情報の一例)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部130は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0021】
制御部140は、携帯機100による動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部140は、第1の無線通信部110及び第2の無線通信部120を制御して車両の制御装置200との通信を行う。また、制御部140は、記憶部130からの情報の読み出し及び記憶部130への情報の書き込みを行う。制御部140は、車両の制御装置200との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。制御部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0022】
(1-2)制御装置200
制御装置200は、車両に対応付けて設けられる。ここでは、制御装置200は、車両20に搭載されるものとする。搭載位置の例として、車両20の車室内に制御装置200が設置される、又は、制御モジュール若しくは通信モジュールとして車両20に内蔵される等が挙げられる。他にも、車両20の駐車場に制御装置200が設けられる等、ユーザの利用対象と制御装置200とが別体として構成されてもよい。その場合、制御装置200は、携帯機100との通信結果に基づいて、車両20に制御信号を無線送信し、車両20を遠隔で制御し得る。図1に示すように、制御装置200は、第1の無線通信部210、第2の無線通信部220、記憶部230、及び制御部240を備える。
【0023】
第1の無線通信部210は、携帯機100との間で、第1の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。以下では、第1の無線通信部210は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。
【0024】
第2の無線通信部220は、携帯機100との間で、第1の無線通信規格とは異なる第2の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。以下では、第2の無線通信部220は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。第2の無線通信部220は車両20に複数搭載されていてもよい。
【0025】
記憶部230は、制御装置200の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部230は、制御装置200の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(識別情報の一例)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部230は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0026】
制御部240は、制御装置200、及び車両に搭載された車載機器の動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部240は、第1の無線通信部210及び第2の無線通信部220を制御して携帯機100との通信を行う。また、制御部240は、記憶部230からの情報の読み出し及び記憶部230への情報の書き込みを行う。制御部240は、携帯機100との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。また、制御部240は、車両のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、制御部240は、車両のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。制御部240は、例えばECU(Electronic Control Unit)として構成される。
【0027】
なお、図1に示す制御装置200は、本発明による制御装置の一例である。本発明による制御装置の構成は、図1に示す例に限定されず、例えば第1の無線通信部210を含む通信モジュールと、第2の無線通信部220を含む通信モジュールと、制御部240を含む制御モジュールと、から構成されていてもよい。また、本発明による制御装置の構成は、第1の無線通信部210を含む通信モジュール、第2の無線通信部220を含む通信モジュール、または制御部240を含む制御モジュールとして実現されてもよい。各モジュールは、有線または無線の通信ネットワークにより接続される。通信ネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、又はLAN(Local Area Network)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってもよい。
【0028】
また、図1に示す各装置の構成は一例である。例えば図1に示す構成では携帯機100および制御装置200は、それぞれ第1の無線通信部及び第2の無線通信部を有するが、本発明はこれに限定されない。例えば、携帯機100および制御装置200が、それぞれ一の無線通信規格に準拠した通信を行う無線通信部を有する構成であってもよい。当該無線通信部は、車両20に複数設けられていてもよい。無線通信部は、認証処理に用いる信号の送受信を行う。また、当該無線通信部が認証処理に用いられる信号を送信する際に使用される周波数帯は任意である。例えば、認証処理に用いられる信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。
【0029】
<2.認証処理>
スマートエントリーシステムにおいては、携帯機100と車両の制御装置200との間の距離に基づいて、携帯機100の認証が行われる場合がある。本実施形態による認証処理は、携帯機100と制御装置200との距離を測定する処理(以下、本明細書において「測距処理」とも称する)、及び距離の測定結果に基づき認証する処理を含む。距離に基づく認証を行うことで、中継器を用いて車両の制御装置(認証装置)の送信信号を中継して携帯機(被認証装置)と制御装置との通信を間接的に実現させ、制御装置による携帯機の認証を不正に成立させるリレーアタックのような被認証装置の偽装、距離の偽装を低減し、認証精度を効果的に高めることが可能となる。
【0030】
図2は、本実施形態による認証処理の基本的な流れの一例を示すシーケンス図である。図2に示すように、まず、携帯機100は、測距トリガ信号を送信する(ステップS103)。本実施形態では、一例として、制御装置200からの第1の測距用信号の送信に先立って、当該第1の測距用信号を送信するよう指示する信号(測距トリガ信号)を携帯機100から送信する。なお測距トリガ信号も測距用信号の一例である。測距トリガ信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、携帯機100は、第2の無線通信部120により測距トリガ信号を送信してもよい。
【0031】
次いで、制御装置200は、測距トリガ信号を受信すると、第1の測距用信号として、測距処理のための応答を要求する測距要求信号を送信する(ステップS106)。測距要求信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、制御装置200は、第2の無線通信部220により測距要求信号を送信してもよい。
【0032】
次に、携帯機100は、制御装置200から測距要求信号(第1の測距用信号)を受信すると、測距要求信号を受信してから時間ΔT2経過後に、第2の測距用信号として、測距要求に応答する測距応答信号を送信する(ステップS109)。測距応答信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、携帯機100は、第2の無線通信部120により測距応答信号を送信してもよい。時間ΔT2は、予め規定された時間である。時間ΔT2は、携帯機100において第1の測距用信号を受信してから第2の測距用信号を送信するまでの処理のために要されると想定される時間よりも長く設定される。これにより、第2の測距用信号の送信準備を、第1の測距用信号を受信してから時間ΔT2が経過するまでに確実に完了させることが可能となる。また、時間ΔT2は、制御装置200にも既知であってもよい。
【0033】
続いて、制御装置200の制御部240は、測距応答信号(第2の測距用信号)を受信すると、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出する(ステップS112)。詳しくは、制御装置200は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測し、計測したΔT1と既知な時間ΔT2とに基づいて距離を計算する。制御装置200は、ΔT1からΔT2を差し引いた値を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間を計算し、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と制御装置200との間の距離を計算し得る。なお、時間ΔT2は、制御装置200に既知でなくともよい。例えば、携帯機100は、時間ΔT2を計測し、制御装置200に報告してもよい。かかる報告は、時間ΔT2を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信することで行われ得る。データ信号は、測距処理のための信号の他の一例である。データ信号は、データを格納して搬送する信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成される。また、データ信号は、UWBを用いた信号として送受信され得る。
【0034】
なおステップS112に示す距離の算出は、第2の無線通信部220が通信ユニットとして構成されている際は通信ユニットの制御部で行われてもよい。この場合、通信ユニットは算出結果を制御部140に車載通信ネットワークで送信する。また、車両20には第2の無線通信部220が複数搭載されていてもよい。制御部240は、複数の第2の無線通信部220がそれぞれ携帯機100と送受信したデータに基づいて、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出してもよい。
【0035】
そして、制御装置200の制御部240は、算出した距離が所定条件を満たすか否かに応じて、携帯機100の認証を行う(ステップS115)。例えば制御部240は、算出した距離が所定値以下であれば認証成功と判定し、そうでない場合には認証失敗と判定する。また、制御部240は、算出した距離が所定の範囲内であれば、対応する所定の制御を行うための認証の成功と判定してもよい。例えば、制御部240は、携帯機100を携帯するユーザと、制御装置200が搭載された車両20との間の距離が所定の範囲内の場合には、車両20に設けられた照明を点灯する制御を行うための認証の成功と判定して、照明を点灯する制御を行う。そして、ユーザがさらに車両20に近付いた場合、制御部240は、車両20のドア錠をアンロックする制御を行うための認証の成功と判定して、ドア錠のアンロック制御を行うようにしてもよい。
【0036】
<3.課題の整理>
ここで、上述した測距トリガ信号、測距要求信号、及び、測距応答信号には、認証のための所定の情報が含まれる。かかる「認証のための所定の情報」を、本明細書において、「認証情報」と称する。信号を受信した側の装置は、信号に含まれる認証情報に基づいて、自身とペアリングされた相手から送信された信号であるか否かを判別する。認証情報は、装置のIDであってもよいし、何らかの規定の情報が暗号化された情報であってもよい。暗号化は、例えば信号の送信側の装置と受信側の装置との間で予め共有された暗号鍵により暗号化され得る。暗号化された情報の場合、信号を受信した側の装置は、暗号化された情報の復号を行い、復号が成功した場合には自身とペアリングされた相手から送信された信号であると判別できる。
【0037】
しかし、測距処理を複数回繰り返す際に、セキュリティ考慮の観点から、各測距処理で送受信する測距トリガ信号、測距要求信号、及び、測距応答信号に用いる認証情報を、測距処理毎に変更する場合、1回の信号の取りこぼしにより携帯機100と制御装置200における互いの信号の認識にずれが生じる。この場合、信号の受信に成功しても測距処理を行えない恐れがある。以下、図3を参照して具体的に説明する。
【0038】
図3は、複数回繰り返す測距処理において信号の認識にずれが生じて認証が失敗する場合について説明する図である。図3では、比較例による制御装置201を用いて信号の認識のずれについて説明する。なお制御装置201は、複数の第2の無線通信部221a、221bを有する装置であって、車両20に搭載される。車両20において異なる位置に設けられた複数の第2の無線通信部221a、221bと車両20との間の距離をそれぞれ算出し、総合することで、車両20に対する相対的な携帯機100の位置をより正確に算出し得る。
【0039】
図3に示すように、まず、携帯機100が1回目の測距処理r1として1回目の測距トリガ信号を送信する(ステップS203)。測距トリガ信号は、例えばUWBを用いた信号である。また、携帯機100は、1回目の測距処理r1に用いられる規定の認証情報aを測距トリガ信号に含めて送信する。規定の認証情報aは、1回目の測距処理r1に用いられる規定の情報を、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。
【0040】
次いで、測距トリガ信号の受信に成功した第2の無線通信部221aは、測距要求信号を送信する(ステップS206)。具体的には、制御装置201において、測距トリガ信号に含まれる暗号化された情報の復号を行い、復号した情報が、予め既知の規定の情報と一致した場合には、自身とペアリングされた相手から送信された信号であると判別でき、測距要求信号の送信処理が実行される。測距要求信号は、例えばUWBを用いた信号である。また、制御装置201は、1回目の測距処理r1に用いられる規定の認証情報aを測距要求信号に含めて送信する。規定の認証情報aは、1回目の測距処理r1に用いられる規定の情報を、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。
【0041】
次に、携帯機100は、測距要求信号を受信してから所定時間(上記ΔT2)経過後に、測距応答信号を送信する(ステップS209)。この場合も、携帯機100は、測距要求信号に含まれる暗号化された情報の復号を行い、復号した情報が、予め既知の規定の情報と一致した場合には、自身とペアリングされた相手から送信された信号であると判別でき、測距応答信号の送信処理が実行される。測距応答信号は、例えばUWBを用いた信号である。また、携帯機100は、1回目の測距処理r1に用いられる規定の認証情報aを測距応答信号に含めて送信する。規定の認証情報aは、1回目の測距処理r1に用いられる規定の情報を、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。
【0042】
そして、測距応答信号の受信に成功した第2の無線通信部221aは、測距応答信号の受信を制御部241に通知し、制御部241は、第2の無線通信部221aと携帯機100との間の距離の算出(1回目の測距)を行う(ステップS212)。
【0043】
続いて、2回目の測距処理r2が行われる。本認証処理では、上述した測距処理rが複数回繰り返し行われ得る。制御装置201は、図2に示すステップS103~S112に相当する測距処理rを複数回繰り返し、複数回繰り返し行われた各測距処理の結果に基づいて代表値(距離)を取得し、上記ステップS115に相当する最終的な認証を行う。これにより、携帯機100と制御装置201との間のより確実な距離に基づいた認証が行われ得る。
【0044】
2回目の測距処理r2では、セキュリティを考慮して各信号に用いる認証情報を変更することが考え得る。例えば、携帯機100は、2回目の測距処理r2として2回目の測距トリガ信号を送信する(ステップS215)。携帯機100は、2回目の測距処理r2に用いられる規定の認証情報bを測距トリガ信号に含めて送信する。規定の認証情報bは、2回目の測距処理r2に用いられる規定の情報を、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。
【0045】
ここで、上記ステップS203で送信された測距トリガ信号を取りこぼした第2の無線通信部221bが、上記ステップS215で送信された2回目の測距トリガ信号の受信に成功したとする。この場合、制御部241は、当該測距トリガ信号が1回目の測距処理r1における測距トリガ信号と認識して判別してしまい、測距が失敗する(ステップS218)。具体的には、制御部241は、測距トリガ信号に含まれる認証情報に基づいて判別を行う。制御部241は、測距トリガ信号に含まれる認証情報である暗号化された情報の復号を行い、復号した情報が予め既知の規定の情報と一致するか否かに基づいて判別を行う。しかし、ここではセキュリティ考慮の観点から測距処理毎に異なる規定の情報を用いることになっているため、制御部241は、実際は2回目の測距処理r2にも関わらず、1回目の測距処理r1と認識して認証情報に基づく判別を行ってしまう。従って、制御部241は、認証情報不一致と判別し、第2の無線通信部221bからの測距要求信号送信の処理が行われず、測距に失敗する恐れがある。なお、かかる判別は第2の無線通信部221bで行われてもよい。
【0046】
一方、第2の無線通信部221aに関しては、2回目の測距処理r2が、1回目の測距処理r1と同様に、正常に行われる(ステップS221~S227)。
【0047】
このように、より確実に距離を算出するために複数回繰り返し認証処理を行う際に、セキュリティを考慮して認証処理毎に用いる認証情報を変更した場合、認識のずれにより測距が行えず、算出される距離の確実性が低減する。また、制御部241が、複数の第2の無線通信部221と携帯機100との間のそれぞれの距離に基づいて、車両20に対する携帯機100の相対的な位置を把握することも困難となる。相対的な位置の把握には、例えば携帯機100が車両内部または外部のいずれに位置しているかの把握等も含まれる。
【0048】
そこで、本発明の一実施形態では、装置間の認証処理に関する信号に用いる認証情報を、認証処理が複数回繰り返される処理群毎に変更することで、より確実な距離の算出と、セキュリティの向上を実現する。例えば、測距トリガ信号や測距要求信号などの各信号に用いる認証情報を、複数回認証処理を繰り返す際には変更しないことで、より確実な距離の算出を実現する。さらに、認証処理を規定の回数繰り返す処理群を新たに開始する際に、上記認証情報を変更することで、セキュリティの向上も実現する。
【0049】
なお、第2の無線通信部221bは、上記ステップS203で携帯機100から送信される測距トリガ信号を受信する前に、予め受信待ち状態に制御されていてもよい。受信待ち状態とは、受信した信号を取り込むための処理を実行する状態を指す。第2の無線通信部221bは、携帯機100からのUWBを用いた測距トリガ信号の送信に先行して行われる携帯機100と制御装置201との通信に基づいて、任意のタイミングで測距トリガ信号の受信を想定した受信待ち状態に制御され得る。先行して行われる通信は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な第1の無線通信部により行われてもよい。
【0050】
以下、本発明の実施形態による技術的特徴について詳しく説明する。
【0051】
<4.技術的特徴>
図4は、本実施形態に係る距離に基づく認証処理の流れの一例を示すシーケンス図である。本明細書において、「距離に基づく認証処理」は、携帯機100と制御装置200との距離を測定する測距処理、及び、当該測距処理により測定された距離に基づき認証する認証処理を含む。図4に示す動作処理は、測距処理の流れについて説明するものである。測距処理は複数回繰り返し行われてもよく、制御装置200は、複数回行われた各測距処理の結果(距離)に基づいて、代表値(距離)を取得し、上記ステップS115に相当する最終的な認証を行う。これにより、携帯機100と制御装置200との間のより確実な距離に基づいた認証が行われ得る。また、制御装置200は、複数の第2の無線通信部220a、220bを有する。制御装置200は、車両20において異なる位置に設けられた複数の第2の無線通信部220a、220bと車両20との間の距離をそれぞれ算出し、総合することで、各回の測距処理において、車両20に対する相対的な携帯機100の位置をより正確に算出し得る。
【0052】
図4に示すように、まず、携帯機100が1回目の測距処理r1として1回目の測距トリガ信号を送信する(ステップS303)。制御装置200から測距要求信号を送信する前に、測距処理を開始することを通知する測距トリガ信号を携帯機100から送信することで、無駄な待機時間による消費電力の削減や、測距の成功率、また、応答性を高めることができる。測距トリガ信号は、例えばUWBを用いた信号である。また、携帯機100は、1回目の測距処理r1に用いられる規定の認証情報aを測距トリガ信号に含めて送信する。規定の認証情報aは、1回目の測距処理r1における測距トリガ信号用の規定の情報Aを、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。暗号化情報を用いることで、セキュリティをより高めることができる。また、上記規定の情報Aなど、暗号化の対象となる元の情報は、予め携帯機100と共有された情報であってもよいし、ランダムな数値であってもよい。暗号化に用いられる共通の鍵は、各測距用信号毎に異なってもよいし、同じであってもよい。本明細書において、測距用信号には、例えば測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号が含まれる。各測距用信号用の認証情報を含めることで、万一他の第2の無線通信部220が受信したり、不正ツールにより距離が偽装されようとした場合にも、信号の正否誤認を抑制することができる。なお、本実施形態では認証情報として規定の情報が暗号化された情報を用いる旨を説明するが、本実施形態はこれに限定されず、例えば携帯機100が有する固有の識別情報や、制御装置200が有する固有の識別情報を用いてもよい。
【0053】
一方、制御装置200の第2の無線通信部220a、220bは、予め受信待ち状態に制御されており、携帯機100から送信された測距トリガ信号の受信を待つ。ここで、受信待ち状態とは、受信した信号を取り込むための各種処理を実行する状態を指す。各種処理とは、例えば、第2の無線通信部220を構成するアンテナが信号を受信すること、第2の無線通信部220により、受信した信号のサンプリングを行うこと、さらに、制御部240により、サンプリングして得られた信号に基づく処理を行うことなどが挙げられる。本実施形態による制御部240は、任意のタイミングで、第2の無線通信部220を測距トリガ信号の受信待ち状態に遷移させ、測距トリガ信号の受信を待つ。なお、任意のタイミングとは、例えば携帯機100からのUWBを用いた測距トリガ信号の送信に先行して行われる携帯機100と制御装置200との通信が成立したタイミングである。制御部240は、携帯機100と制御装置200との通信が成立した際、測距トリガ信号の受信を想定して1以上の第2の無線通信部220を受信待ち状態に制御する。先行して行われる通信は、例えばRF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な第1の無線通信部により行われてもよい。
【0054】
次いで、測距トリガ信号の受信に成功した第2の無線通信部220aは、測距要求信号を送信する(ステップS306)。具体的には、制御装置200において、測距トリガ信号に含まれる暗号化された情報の復号を行い、復号した情報が、予め既知の規定の情報と一致した場合には、自身とペアリングされた相手から送信された信号であると判別でき、測距要求信号の送信処理が実行される。測距要求信号は、例えばUWBを用いた信号である。また、制御装置200は、1回目の測距処理r1に用いられる規定の認証情報bを測距要求信号に含めて送信する。規定の認証情報bは、1回目の測距処理r1における測距要求信号用の規定の情報Bを、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。
【0055】
次に、携帯機100は、測距要求信号を受信してから所定時間(上記ΔT2)経過後に、測距応答信号を送信する(ステップS309)。この場合も、携帯機100は、測距要求信号に含まれる暗号化された情報の復号を行い、復号した情報が、予め既知の規定の情報と一致した場合には、自身とペアリングされた相手から送信された信号であると判別でき、測距応答信号の送信処理が実行される。測距応答信号は、例えばUWBを用いた信号である。また、携帯機100は、1回目の測距処理r1に用いられる規定の認証情報cを測距応答信号に含めて送信する。規定の認証情報cは、1回目の測距処理r1における測距応答信号用の規定の情報Cを、共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。
【0056】
本実施形態では、一例として、測距用信号である測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号において、それぞれ異なる認証情報を用いることで、なりすましを低減し、セキュリティを高めることが可能である。それぞれ異なる認証情報とは、それぞれ異なる規定の情報A~Cを、一の共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。若しくは、同じ規定の情報を、それぞれ異なる共通の暗号鍵A~Cで暗号化したものであってもよい。なお本発明はこれに限定されず、測距用信号である測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号において、同じ認証情報を用いるようにしてもよい。同じ認証情報とは、同じ規定の情報を、一の共通の暗号鍵で暗号化したものであってもよい。同じ認証情報を用いることで、規定の情報の用意や暗号化処理の負担を軽減できる。
【0057】
そして、測距応答信号の受信に成功した第2の無線通信部220aは、測距応答信号の受信を制御部240に通知し、制御部240は、第2の無線通信部220aと携帯機100との間の距離の算出(1回目の測距)を行う(ステップS312)。
【0058】
続いて、2回目の測距処理r2が行われる。2回目の測距処理r2における測距用信号には、1回目の測距処理r1における測距用信号に用いた認証情報と同じ認証情報を用いる。これにより、1回目の測距処理r1で信号を受信できなかった場合も、2回目の測距処理r2を実行することができ、測距成功の確率を高め、より確実に測距を行える。また、3回目の測距処理、4回目の測距処理等、以降繰り返される測距処理においても同様に1回目と同じ認証情報を用いることで、2回目や3回目の測距処理で信号を受信できなかった場合も、その次の回の測距処理を実行することができる。以下、具体的に説明する。
【0059】
2回目の測距処理r2として、携帯機100は、2回目の測距トリガ信号を送信する(ステップS315)。携帯機100は、1回目の測距処理r1において測距トリガ信号に用いたものと同じ認証情報aを、測距トリガ信号に含めて送信する。
【0060】
ここで、上記ステップS303で送信された測距トリガ信号を取りこぼした第2の無線通信部220bが、上記ステップS315で送信された2回目の測距トリガ信号の受信に成功したとする。この場合、制御部240は、当該測距トリガ信号が1回目の測距処理r1における測距トリガ信号と認識するが、受信した当該測距トリガ信号には1回目と同じ認証情報aが含まれているため、正当な測距トリガ信号と判別でき、測距のための通信が成立する(ステップS318)。なお、かかる判別は第2の無線通信部220bで行われてもよい。
【0061】
次いで、制御部240は、第2の無線通信部220bから測距要求信号を送信する(ステップS324)。制御部240は1回目の測距処理r1と認識しているため、測距要求信号には、1回目の測距処理r1における測距トリガ信号用の認証情報bが含まれる。
【0062】
一方、第2の無線通信部220aに関しては、2回目の測距処理r2が1回目の測距処理r1と同様に正常に行われる(ステップS321、S327、S330)。すなわち、第2の無線通信部220aと携帯機100との間の距離の算出(2回目の測距)が行われる(ステップS330)。
【0063】
続いて、1回目の測距処理r1と認識して第2の無線通信部220bから送信された測距要求信号を受信した携帯機100は、当該測距要求信号を受信してから所定時間(上記ΔT2)経過後に、測距応答信号を送信する(ステップS333)。携帯機100は、受信した測距要求信号を、2回目の測距処理r2における測距要求信号と認識して判別を行うが、当該測距要求信号には1回目と同じ認証情報bが含まれているため、正当な測距要求信号と判別することができる。これにより、携帯機100は、測距応答信号の送信を行い得る。
【0064】
そして、測距応答信号の受信に成功した第2の無線通信部220bは、測距応答信号の受信を制御部240に通知し、制御部240は、第2の無線通信部220bと携帯機100との間の距離の算出(1回目の測距)を行う(ステップS312)。制御部240は、受信した測距応答信号を、1回目の測距処理r1における測距応答信号と認識して判別を行うが、当該測距応答信号には1回目と同じ認証情報cが含まれているため、正当な測距応答信号と判別することができる。なお、かかる判別は第2の無線通信部220bで行われてもよい。
【0065】
このように、認証処理を繰り返し行う際に、各回の測距用信号にそれぞれ用いる認証情報を、全ての回において同じにすることで、認識のずれにより測距が行えないといった事象を低減させ、より確実に距離が算出できる。また、制御部240は、複数の第2の無線通信部220と携帯機100との間のそれぞれの距離をより確実に取得でき、車両20に対する携帯機100の相対的な位置をより確実に把握することができる。相対的な位置の把握には、例えば携帯機100が車両20の内部または外部のいずれに位置しているかの把握等が含まれる。
【0066】
そしてさらに、本実施形態では、図4を参照して説明した上記測距処理rを規定回数繰り返す処理を処理群Lとし、次の処理群Lを行う際には認証情報を変更することで、上記確実な距離の算出と、セキュリティの向上を実現する。どのような認証情報に変更するかは予め規定され得る。本実施形態による新たな処理群Lを実行する際に認証情報の変更を行うことについて、図5を参照して説明する。
【0067】
図5は、本実施形態による処理群Lを開始する際に認証情報を変更する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図5に示すように、まず、第1の処理群L1として、携帯機100と制御装置200との間で、複数の測距処理r1~rNが実行される。例えば、測距処理r1として、測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号の送受信が行われる(ステップS410)。また、測距処理rNとして、測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号の送受信が行われる(ステップS413)。詳細は、図4を参照して上述した通りである。各信号に用いられる認証情報a~cは、各回において同じである。これにより、より確実に距離の算出が行われ得る。制御装置200は、規定の回数測距処理rを繰り返して得た各距離に基づいて、第1の処理群L1における代表値を取得する。なお、一の処理群内で認証処理が繰り返される際における測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号に用いられる各認証情報は、図5に示すように信号毎にそれぞれ異なっていてもよいし(認証情報a~c)、若しくは、同じであってもよい。「信号毎にそれぞれ異なっていてもよい」とは、測距トリガ信号では認証情報a、測距要求信号では認証情報b、測距応答信号では認証情報c、というように信号の種別毎に用いる認証情報が異なることを意味する。この場合、一の処理群内で、信号の種別毎に用いる認証情報が異なる各信号の送受信が繰り返される。また、「同じであってもよい」とは、測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号において全て同じ認証情報(例えば認証情報a)を用いることを意味する。この場合、一の処理群内で全て同じ認証情報を用いた各信号の送受信が繰り返される。
【0068】
続いて、携帯機100は、次の処理群L2の開始を通知する(ステップS416)。開始通知は、UWBを用いた信号であってもよいし、RF帯、LF帯、Bluetooth等を用いた信号であってもよい。
【0069】
次に、携帯機100は、次の処理群L2で用いる認証情報を変更する(ステップS419)。また、開始通知を受信した制御装置200も、次の処理群L2で用いる認証情報を変更する(ステップS421)。変更する認証情報は予め規定されていてもよい。また、開始通知により、どの認証情報を用いるかが示されてもよい。
【0070】
そして、第2の処理群L2として、携帯機100と制御装置200との間で、複数の測距処理r1~rNが実行される。例えば、測距処理r1として、測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号の送受信が行われる(ステップS424)。また、測距処理rNとして、測距トリガ信号、測距要求信号、および測距応答信号の送受信が行われる(ステップS427)。各信号に用いられる認証情報d~fは、各回において同じであるが、第1の処理群L1とは異なる。これにより、より確実に距離の算出を行うことができ、かつ、セキュリティを向上させることができる。制御装置200は、規定の回数測距処理rを繰り返して得た各距離に基づいて、第2の処理群L2における代表値を取得する。制御装置200は、各処理群Lにおいて取得された代表値に基づいて、最終的に認証に用いる携帯機100と制御装置200との間の距離を取得し、所定の範囲内である否かに基づいて携帯機100の認証を行う。これにより、より正確な距離に基づいて認証を行うことができる。若しくは、本システム1は、複数回認証処理を繰り返す処理群L1において取得された代表値に基づく認証が失敗した場合に、再度、複数回認証処理を繰り返す処理群L2を実行するようにしてもよい。また、処理群Lの実行回数は予め規定された回数であってもよい。
【0071】
以上説明した図4および図5に示す動作処理は、本実施形態の一例であって、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の無線通信部220が通信ユニットとして構成されている場合、上記ステップS312、S318、S330、S336、およびS421に示す処理の少なくともいずれかを、第2の無線通信部220に設けられた制御部(不図示)により制御してもよい。
【0072】
また、上記ステップ303の前に第2の無線通信部220を受信待ち状態に遷移させる任意のタイミングは、制御装置200が第1の無線通信部210により携帯機100から所定の信号を受信した際でもよいし、当該受信した所定の信号に基づいて制御装置200が携帯機100の認証を行っている間であってもよいし、当該認証が終了した後であってもよい。すなわち、上記ステップ303の前に、携帯機100と制御装置200との間では所定の信号の送受信が行われる場合も想定される。携帯機100と制御装置200との間で行われる所定の任意の信号の送受信は、携帯機100の第1の無線通信部110と、制御装置200の第1の無線通信部210との間で行われてもよい。
【0073】
例えば、携帯機100と制御装置200との間では、要求応答認証が行われる。要求応答認証では、認証要求信号、及び認証要求に基づいて生成される認証応答信号の送受信が行われる。要求応答認証とは、認証者が認証要求信号を生成して被認証者に送信し、被認証者が認証要求信号に基づいて認証応答信号を生成して認証者に送信し、認証者が認証応答信号に基づき被認証者の認証を行う方式である。典型的には、認証要求信号は乱数であり認証のたびに変化するので、要求応答認証は反射攻撃に耐性を有する。また、認証応答信号は被認証者の情報に基づいて生成される。被認証者の情報とは、例えば、ID及びパスワード等である。ID及びパスワードそのものは送受信されないため、盗聴が低減される。より具体的には、例えば制御装置200が認証要求として送信した第1の認証信号に対し、携帯機100が第1の認証信号と予め保存されたパスワード等の鍵情報とに基づき演算した第2の認証信号を認証応答として送信する。認証応答として送信された第2の認証信号が、認証要求である第1の認証信号と上記の鍵情報とから算出される正規の値を示すことが認められた場合、制御装置200は、携帯機100の認証を成功としてよい。
【0074】
また、携帯機100と制御装置200との間で、起動を指示するウェイクアップ信号、及びウェイクアップ信号に対する応答の送受信が行われてもよい。ウェイクアップ信号により、受信側をスリープ状態から復帰させることができる。ウェイクアップ信号に対する応答としては、起動することを示す肯定応答(ACK:Acknowledgement)信号、及び起動しないことを示す否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)信号が挙げられる。
【0075】
若しくは、測距トリガ信号の受信待ちに先立って、携帯機100と制御装置200との間で、ウェイクアップ信号の応答と、要求応答認証が行われてもよい。制御装置200は、このようなウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて、上記測距トリガ信号の受信待ちを開始する。
【0076】
制御装置200は、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて受信待ちを開始することで、受信待ち期間を短縮することができる。また、距離に基づく認証処理の前に他の方法での認証処理を1段階踏まえることで、認証精度をさらに高めることができる。
【0077】
なお、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証において、一方の装置から他方の装置へ送信される信号を第1の通知信号とも称する。そして、第1の通知信号を受信した装置から、第1の通知信号を送信した装置へ送信される信号を、第2の通知信号とも称する。各装置は、第1の認証信号への応答として、第1の認証信号に対応する正規の第2の認証信号が送信された場合にのみ、相手装置の認証を成功とする。第1、第2の通知信号が送信される際に使用される周波数帯は任意である。例えば、通知信号は、測距トリガ信号や測距要求信号等の測距用信号と同一の周波数帯を使用して送信されてもよいし、測距用信号と異なる周波数帯を使用して送信されてもよい。また、通知信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。
【0078】
また、本実施形態による認証情報を各回で同じにし、処理群が変わった際に変更することは、上記第1の通知信号および第2の通知信号などに適用することも可能である。例えば要求応答認証が複数回行われる場合等に、各回で用いる認証情報を同じにし、処理群が変わって要求応答認証が再度複数回行われる場合に認証情報を変更するようにしてもよい。
【0079】
<5.まとめ>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
例えば、上記実施形態では、認証者側が第1の測距用信号を送信する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。認証者側とは、例えば、車両20の制御装置200である。例えば、被認証者側が第1の測距用信号を送信してもよい。被認証者側とは、例えば、携帯機100である。制御装置200は、携帯機100から第1の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の応答として第2の測距用信号を送信する。携帯機100は、第2の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測する。次いで、携帯機100は、計測したΔT1を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信する。他方、制御装置200は、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2を計測しておく。そして、制御装置200は、携帯機100からデータ信号を受信すると、携帯機100から受信したデータ信号により示されるΔT1と、計測したΔT2とに基づいて、携帯機100と制御装置200との間の距離を計算する。例えば、ΔT1-ΔT2を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間が計算され、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機と通信ユニットとの間の距離が計算される。このように、第1の測距用信号及び第2の測距用信号の送受信の方向を逆にした場合、制御装置200は、携帯機100から送信される第1の測距用信号を待つ待ち状態に遷移する制御を行う。第1の測距用信号を待つ待ち状態への遷移は、任意のタイミングで行われ得る。
【0081】
また、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が車両20の制御装置200である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び車両20の制御装置200の役割は逆であってもよいし、役割が動的に交換されてもよい。また、車両20の制御装置200同士で測距及び認証が行われてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、携帯機100が通信装置の一例であり、制御装置200が制御装置の一例である旨を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100が制御装置の一例であってもよいし、制御装置200が通信装置の一例であってもよい。
【0083】
他にも例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、信号を送受信することで測距及び認証を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、ユーザが利用する対象物として、ドローン、車両、船舶、飛行機、建築物、ロボット、ロッカー、家電製品等が挙げられる。建築物には、住宅などが含まれる。また、本発明は、携帯機、車両、船舶、飛行機、スマートフォン、ドローン、建築物、ロボット、ロッカー及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに適用可能である。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。この場合、一方の装置が第1の通信装置として動作し、他方の装置が第2の通信装置として動作する。
【0084】
他にも例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いるものを挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信規格として、赤外線を用いるものが使用されてもよい。
【0085】
他にも例えば、上記では、制御部240がECUとして構成され、制御装置200の動作全般を制御するものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1の無線通信部210および第2の無線通信部220がそれぞれECUを含んでいてもよい。この場合、第1の無線通信部210および第2の無線通信部220は、移動体搭載通信装置とも称される。移動体搭載通信装置は、上述した制御装置200と同様に、受信した信号に含まれる認証情報に基づく処理や、受信待ち状態への遷移を制御する処理を実行してもよい。
【0086】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0087】
また、本明細書においてシーケンス図やフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:システム、100:携帯機、110:第1の無線通信部、120:第2の無線通信部、130:記憶部、140:制御部、20:車両20:制御装置、210:第1の無線通信部、220:第2の無線通信部、230:記憶部、240:制御部
図1
図2
図3
図4
図5