(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 40/105 20120101AFI20250221BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20250221BHJP
B60W 50/10 20120101ALI20250221BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20250221BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20250221BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20250221BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20250221BHJP
【FI】
B60W40/105
B60W30/182 ZYW
B60W50/10
B60W40/02
B62D6/00
B62D101:00
B62D119:00
(21)【出願番号】P 2024510846
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015796
(87)【国際公開番号】W WO2023188060
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 航輝
(72)【発明者】
【氏名】倉光 祐之介
(72)【発明者】
【氏名】白方 健登
(72)【発明者】
【氏名】若山 涼至
(72)【発明者】
【氏名】松永 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆志
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100490(JP,A)
【文献】特開2011-016615(JP,A)
【文献】特開平03-155859(JP,A)
【文献】国際公開第2021/230236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/105
B60W 30/182
B60W 50/10
B60W 40/02
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体の制御装置であって、
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識する道路タイプ認識部と、
前記道路タイプ認識部により認識された道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行
い、
前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子を更に備え、
前記制御部は、前記操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定し、
前記制御部は、前記操作子による操舵量が所定量未満である場合に、前記移動体が前記所定領域から車道を走行する場合であっても前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行わない、
移動体の制御装置。
【請求項2】
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体の制御装置であって、
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識する道路タイプ認識部と、
前記道路タイプ認識部により認識された道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行
い、
前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子を更に備え、
前記制御部は、前記操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定し、
前記制御部は、前記操作子による操舵量が所定量未満である場合であって、且つ、前記移動体が走行していた前記所定領域から他の前記所定領域までの距離が所定距離未満である場合に、前記第2走行状態を継続する、
移動体の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動体が前記所定領域から車道に移動し、且つ前記操作子による操舵量が所定量未満の場合に、更に前記操作子により前記移動体を加速させる操作を受け付けた場合であっても、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行わない、
請求項
1に記載の移動体の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作子による操舵操作により前記移動体を車道側に移動する制御が行われた場合に、前記第2走行状態から前記第1走行状態に切り替える、
請求項2に記載の移動体の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記操作子による操舵量が所定量以上で前記所定領域を出て車道を走行する前記移動体の位置を基準とした道路幅方向に前記所定領域が存在する場合に、前記第2走行状態から前記第1走行状態に切り替える、
請求項1に記載の移動体の制御装置。
【請求項6】
前記移動体の走行状態の切り替えに関する指示を受け付ける切替受付部を更に備え、
前記制御部は、前記切替受付部により受け付けられた指示に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定する、
請求項1
または2に記載の移動体の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記移動体が前記第2走行状態で車道を走行している場合に、前記第2走行状態で車道を走行中であることを前記移動体の外部報知装置に報知させる、
請求項1
または2に記載の移動体の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記移動体が前記第2走行状態で車道を走行している場合に、前記第2走行状態から前記第1走行状態に切り替えるための情報を前記乗員に報知させる、
請求項1
または2に記載の移動体の制御装置。
【請求項9】
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータが、
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識し、
認識した道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、
前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行
い、
前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定し、
前記操作子による操舵量が所定量未満である場合に、前記移動体が前記所定領域から車道を走行する場合であっても前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行わない、
移動体の制御方法。
【請求項10】
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータが、
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識し、
認識した道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、
前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行
い、
前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定し、
前記操作子による操舵量が所定量未満である場合であって、且つ、前記移動体が走行していた前記所定領域から他の前記所定領域までの距離が所定距離未満である場合に、前記第2走行状態を継続する、
移動体の制御方法。
【請求項11】
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータに、
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識させ、
認識された道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、
前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行
わせ、
前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定させ、
前記操作子による操舵量が所定量未満である場合に、前記移動体が前記所定領域から車道を走行する場合であっても前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行わせない、
プログラ
ム。
【請求項12】
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータに、
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識させ、
認識された道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、
前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行
わせ、
前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定させ、
前記操作子による操舵量が所定量未満である場合であって、且つ、前記移動体が走行していた前記所定領域から他の前記所定領域までの距離が所定距離未満である場合に、前記第2走行状態を継続させる、
プログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩道と車道の双方を移動可能な移動体について実用化が進められている。これに関連して、撮像部による撮像画像データに含まれる視覚障害者誘導用ブロックの画像から電動車両が移動可能な方向を検出し、検出した方向に基づいて電動車両の走行を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歩道と車道の双方を移動可能な移動体では、歩道と車道で上限速度を異ならせる必要があるが、歩道が途切れているため短距離だけ車道を走行し、またすぐに次の歩道を走行するような場合に、頻繁に速度が切り替わることになり、移動体や乗員に負担が生じる可能性があった。しかしながら、従来の技術では、上述したような場面における走行制御について考慮されておらず、道路状況に応じた適切な走行制御ができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、周辺の道路状況に応じて、より適切な走行状態で移動体を走行させることができる移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体の制御装置、移動体の制御方法、および記憶媒体は、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る移動体の制御装置は、一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体の制御装置であって、前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識する道路タイプ認識部と、前記道路タイプ認識部により認識された道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行う、移動体の制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記乗員による前記移動体の運転操作を受け付ける操作子を更に備え、前記制御部は、前記操作子による前記移動体の操舵操作に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記制御部は、前記操作子による操舵量が所定量未満である場合に、前記移動体が前記所定領域から車道を走行する場合であっても前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行わないものである。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記制御部は、前記移動体が前記所定領域から車道に移動し、且つ前記操作子による操舵量が所定量未満の場合に、更に前記操作子により前記移動体を加速させる操作を受け付けた場合であっても、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行わないものである。
【0010】
(5):上記(2)の態様において、前記制御部は、前記操作子による操舵量が所定量未満である場合であって、且つ、前記移動体が走行していた前記所定領域から他の前記所定領域までの距離が所定距離未満である場合に、前記第2走行状態を継続するものである。
【0011】
(6):上記(2)の態様において、前記制御部は、前記操作子による操舵操作により前記移動体を車道側に移動する制御が行われた場合に、前記第2走行状態から前記第1走行状態に切り替えるものである。
【0012】
(7):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記歩道を出て車道を走行する前記移動体の位置を基準とした道路幅方向に歩道が存在する場合に、前記第2走行状態から前記第1走行状態に切り替えるものである。
【0013】
(8):上記(1)の態様において、前記移動体の走行状態の切り替えに関する指示を受け付ける切替受付部を更に備え、前記制御部は、前記切替受付部により受け付けられた指示に基づいて、前記第2走行状態から前記第1走行状態への切り替えを行うか否かを判定するものである。
【0014】
(9):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記移動体が前記第2走行状態で車道を走行している場合に、前記第2走行状態で車道を走行中であることを前記移動体の外部報知装置に報知させるものである。
【0015】
(10):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記移動体が前記第2走行状態で車道を走行している場合に、前記第2走行状態から前記第1走行状態に切り替えるための情報を前記乗員に報知させるものである。
【0016】
(11):本発明の他の態様に係る移動体の制御方法は、一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータが、前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識し、認識した道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行う、移動体の制御方法である。
【0017】
(12):本発明の他の態様に係る記憶媒体は、一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータに、前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識させ、認識された道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行う、プログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の効果】
【0018】
上記(1)~(12)の態様によれば、周辺の道路状況に応じて、より適切な走行状態で移動体を走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る移動体1および制御装置100の構成の一例を示す図である。
【
図3】移動体1の走行状態の第1の切り替えパターンについて説明するための図である。
【
図4】第2走行状態から第1走行状態に切り替わる一例を示す図である。
【
図5】移動体1の走行状態の第2の切り替えパターンについて説明するための図である。
【
図6】実施形態の制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の移動体の制御装置、移動体の制御方法、および記憶媒体の実施形態について説明する。移動体は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動するものである。移動体は、マイクロモビリティと称される場合がある。電動キックボードはマイクロモビリティの一種である。所定領域とは、例えば歩道である。また、所定領域とは、路側帯や自転車レーン、公開空地などのうち一部または全部であってもよいし、歩道、路側帯、自転車レーン、公開空地などを全て含んでもよい。以下の説明では、所定領域は歩道であるものとする。以下の説明において「歩道」と記載されている部分は、適宜、「所定領域」と読み替えることができる。
【0021】
図1は、実施形態に係る移動体1および制御装置100の構成の一例を示す図である。移動体1には、例えば、外界検知デバイス10と、移動体センサ12と、操作子14と、内部カメラ16と、測位装置18と、モード切替スイッチ22と、移動機構30と、駆動装置40と、外部報知装置50と、記憶装置70と、制御装置100とが搭載される。なお、これらの構成のうち本発明の機能を実現するのに必須でない一部の構成が省略されてもよい。モード切替スイッチ22は、「切替受付部」の一例である。
【0022】
外界検知デバイス10は、移動体1の進行方向を検知範囲とする各種デバイスである。外界検知デバイス10は、外部カメラ、レーダー装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、センサフュージョン装置などを含む。外界検知デバイス10は、移動体1の外部状況を検知する。また、外界検知デバイス10は、検知結果を示す情報(画像、物体の位置等)を制御装置100に出力する。
【0023】
移動体センサ12は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ヨーレート(角速度)センサ、方位センサ、並びに操作子14に取り付けられた操作量検出センサなどを含む。
【0024】
操作子14は、移動体の乗員による運転操作を受け付ける。操作子14は、例えば、加減速を指示するための操作子(例えばアクセルペダルやブレーキペダル、速度調整用のダイヤルスイッチやレバー)と、操舵を指示するための操作子(例えばステアリングホイール)とを含む。この場合、移動体センサ12は、アクセル開度センサやブレーキ踏量センサ、ステアリングトルクセンサ等を含んでよい。移動体1は、操作子14として、上記以外の態様の操作子(例えば、円環状でない回転操作子、ジョイスティック、ボタン等)を備えてもよい。
【0025】
内部カメラ16は、移動体1の乗員の少なくとも頭部を正面から撮像する。内部カメラ16は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を利用したデジタルカメラである。内部カメラ16は、撮像した画像を制御装置100に出力する。
【0026】
測位装置18は、移動体1の位置を測位する装置である。測位装置18は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機であり、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、移動体1の位置を特定し、位置情報として出力する。なお、移動体1の位置情報は、移動体1に搭載された通信装置が接続しているWi-Fi基地局の位置から推定されてもよい。
【0027】
モード切替スイッチ22は、乗員により操作されるスイッチである。モード切替スイッチ22は、移動体1の走行状態の切り替えに関する指示を受け付ける。モード切替スイッチ22は、機械式スイッチであってもよいし、タッチパネル上に設定されるGUI(Graphical User Interface)スイッチであってもよい。モード切替スイッチ22は、例えば、モードA:乗員により操舵操作と加減速制御との一方が行われ、他方は自動的に行われるアシストモードであり、乗員により操舵操作が行われ加減速制御が自動的に行われるモードA-1と、乗員により加減速操作が行われ操舵制御が自動的に行われるモードA-2とがあってよい、モードB:乗員により操舵操作および加減速操作がなされる手動運転モード、モードC:操作制御および加減速制御が自動的に行われる自動運転モードのいずれかに運転モードを切り替える操作を受け付ける。また、モード切替スイッチ22は、後述する移動体1の走行状態の切り替え操作(例えば、乗員による第1走行状態と第2走行状態との切り替え操作)を受け付けてもよい。なお、上述したモード(または走行状態)を切り替える操作の受け付けは、モード切替スイッチ22に代えて、移動体1に設けられたマイクや内部カメラから受け付けられてもよい。この場合、制御装置100は、マイクによって入力された乗員の音声の解析結果からモードの切り替え操作を受け付けてもよく、内部カメラによって撮像された乗員の正面画像の解析結果として得られる乗員のジェスチャや口の動作等からモードの切り替え操作を受け付けてもよい。
【0028】
移動機構30は、道路において移動体1を移動させるための機構である。移動機構30は、例えば、操舵輪と駆動輪とを含む車輪群である。また、移動機構30は、多足歩行するための脚部であってもよい。
【0029】
駆動装置40は、移動機構30に力を出力して移動体1を移動させる。例えば、駆動装置40は、駆動輪を駆動するモータ、モータに供給する電力を蓄えるバッテリ、操舵輪の操舵角を調整する操舵装置などを含む。駆動装置40は、駆動力出力手段、或いは発電手段として、内燃機関や燃料電池などを備えてもよい。また、駆動装置40は、摩擦力や空気抵抗によるブレーキ装置を更に備えてもよい。
【0030】
外部報知装置50は、例えば移動体1の外板部に設けられ、移動体1の外部に向けて情報を報知するためのランプ、ディスプレイ装置、スピーカなどである。外部報知装置50は、例えば、制御部140により制御される移動体1の走行状態の違いによって異なる動作を行う。走行状態には、例えば、少なくとも第1走行状態と、第2走行状態とが含まれる。第1走行状態は、原則的に移動体1が車道を移動する場合の走行状態である。第2走行状態は、原則的に移動体1が歩道を移動する場合の走行状態である。なお、実施形態では、後述する所定条件を満たす場合には、例外的に第2走行状態で車道を走行する場合があり得る。第1走行状態では、少なくとも移動体1の上限速度が第1速度に制限され、第2走行状態では、少なくとも移動体1の上限速度が第1速度よりも低い第2速度に制限される。
【0031】
例えば、外部報知装置50は、移動体1が第2走行状態で歩道を移動している場合にランプを発光させ、移動体1が第1走行状態で車道を移動している場合にランプを発光させないように制御される。このランプの発光色は、法規で定められた色であると好適である。また、外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している場合にランプを緑色で発光させ、移動体1が車道を移動している場合にランプを青色で発光させるというように制御されてもよい。外部報知装置50がディスプレイ装置である場合、外部報知装置50は、移動体1が歩道を走行している場合に「歩道走行中である」旨をテキストやグラフィックで表示する。また、外部報知装置50は、所定条件を満たし、第2走行状態で車道を走行させる場合に、ランプを上述した発光色とは異なる色で発光させてよく、ディスプレイ装置に第2走行状態で車両を走行中である旨をテキストやグラフィックで表示してもよい。
【0032】
また、外部報知装置50は、上述したランプがディスプレイ装置による出力に加えて(または代えて)、スピーカ等の音声出力装置を備え、スピーカから上述した移動体の状態を示す音声が出力されてもよい。
【0033】
図2は、移動体1を上方から見た透視図である。図中、FWは操舵輪、RWは駆動輪、SDは操舵装置、MTはモータ、BTはバッテリである。操舵装置SD、モータMT、バッテリBTは駆動装置40に含まれる。また、APはアクセルペダル、BPはブレーキペダル、WHはステアリングホイール、SPはスピーカ、MCはマイクである。図示する移動体1は一人乗りの移動体であり、乗員Pは運転席DSに着座してシートベルトSBを装着している。矢印α1は移動体1の進行方向(速度ベクトル)である。外界検知デバイス10は移動体1の前端部付近に、内部カメラ16は乗員Pの前方から乗員Pの頭部を撮像可能な位置に、モード切替スイッチ22はステアリングホイールWHのボス部にそれぞれ設けられている。また、移動体1の前端部付近に、ディスプレイ装置としての外部報知装置50が設けられている。外部報知装置50はスピーカSPと一体に形成されていてもよい。
【0034】
図1に戻り、記憶装置70は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などの非一過性の記憶装置である。記憶装置70には、地図情報72、制御装置100が実行するプログラム74などが格納される。図では記憶装置70を制御装置100の枠外に記載しているが、記憶装置70は制御装置100に含まれるものであってよい。
【0035】
[制御装置]
制御装置100は、例えば、道路タイプ認識部120と、物体認識部130と、制御部140とを備える。例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)74を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶装置70に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置70にインストールされてもよい。
【0036】
道路タイプ認識部120は、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識する。例えば、道路タイプ認識部120は、例えば、外界検知デバイス10の外部カメラが撮像した画像を解析することで、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識する。なお、レーダー装置、LIDAR、センサフュージョン装置等の出力が補助的に用いられてもよい。
【0037】
画像解析の一例として、セマンティックセグメンテーションが挙げられる。道路タイプ認識部120は、画像のフレーム内の各ピクセルをクラス(車道、歩道、境界、障害物など)に分類してラベルを付与し、移動体1の正面に相当する領域に車道のラベルが付与されたピクセルが多い場合に移動体1が車道を移動していることを認識し、画像における移動体1の正面に相当する領域に歩道のラベルが付与されたピクセルが多い場合に移動体1が歩道を移動していることを認識する。これに限らず、道路タイプ認識部120は、画像における移動体1の正面に相当する領域に車両が認識されている場合に移動体1が車道を移動していることを認識し、画像における移動体1の正面に相当する領域に歩行者が認識されている場合に移動体1が歩道を移動していることを認識してもよい。また、道路タイプ認識部120は、画像における移動体1の正面に相当する領域にある路面領域の幅が大きい場合に移動体1が車道を移動していることを認識し、画像における移動体1の正面に相当する領域にある路面領域の幅が小さい場合に移動体1が歩道を移動していることを認識してもよい。
【0038】
また、道路タイプ認識部120は、測位装置18による移動体1の位置情報と地図情報72とを照合し、移動体1が車道を移動しているか、歩道を移動しているかを認識してもよい。この場合の地図情報は、位置座標から歩道と車道が区別できる程度の精度を有している必要がある。また、「所定領域」が歩道だけで無い場合、道路タイプ認識部120は、路側帯や自転車レーン、公開空地などについても同様の処理を行う。
【0039】
物体認識部130は、外界検知デバイス10の出力に基づいて、移動体1の周辺(移動体1から所定距離以内)に存在する物体を認識する。物体とは、車両や自転車、歩行者などの移動体、道路区画線、段差、ガードレール、路肩、中央分離帯などの走路境界、道路標識や看板などの路上に設置された構造物、走路上に存在する(落ちている)落下物などの障害物のうち一部または全部を含む。また、物体認識部130は、車道と歩道との間(境界)に存在する段差や溝を認識してもよい。物体認識部130は、例えば、外界検知デバイス10の外部カメラが撮像した画像が入力されると物体の存在、位置、種別などの情報を出力するように学習された学習済モデルに、外部カメラの撮像した画像を入力することで、他の移動体の存在、位置、種別など情報を取得する。他の移動体の種別は、画像におけるサイズや外界検知デバイス10のレーダー装置が受信する反射波の強度などに基づいて推定することもできる。また、物体認識部130は、例えば、レーダー装置がドップラーシフトなどを利用して検出した他の移動体の速度を認識してもよい。
【0040】
制御部140は、例えば、モード切替スイッチ22等によって設定されている運転モードに応じて駆動装置40を制御する。なお、移動体1は、下記の運転モードのうち一部のみ実行するものであってよいが、制御部140は、いずれの場合も、原則的に移動体1が車道を移動する場合と歩道を移動する場合とで速度制限値を異ならせる。その場合、モード切替スイッチ22は省略されてよい。
【0041】
モードA-1において制御部140は、物体認識部130の出力に基づく走路と物体の情報を参照し、移動体1が車道を移動する場合、第1走行状態に切り替えて移動体1の前方に存在する物体との距離を一定以上に維持し、移動体1の前方に存在する物体との距離が十分に長い場合は第1速度V1(例えば、十[km/h]以上、数十[km/h]未満の速度)で移動体1が移動するように、駆動装置40のモータMTを制御する。制御部140は、移動体1が歩道を移動する場合、第2走行状態に切り替えて移動体1の前方に存在する物体との距離を一定以上に維持し、移動体1の前方に存在する物体との距離が十分に長い場合は第2速度V2(例えば、十[km/h]未満の速度)で移動体1が移動するように、駆動装置40のモータMTを制御する。係る機能は、第1速度V1または第2速度V2を設定速度とした車両のACC(Adaptive Cruise Control)機能と同様のものであり、ACCにおいて用いられている技術を利用することができる。また、モードA-1において制御部140は、ステアリングホイール等の操作子14の操作量に基づいて操舵輪の操舵角を変更するように操舵装置SDを制御する。係る機能は、パワーステアリング装置の機能と同様のものであり、パワーステアリング装置において用いられている技術を利用することができる。なお操舵に関して電子制御を行わず、移動体1は、操作子14と操舵機構が機械的に連結された操舵装置を有してもよい。
【0042】
モードA-2において、制御部140は、物体認識部130の出力に基づく走路と物体の情報を参照し、走路内で物体を回避して移動可能な目標軌道を生成し、移動体1が目標軌道に沿って移動するように駆動装置40の操舵装置SDを制御する。加減速に関しては、制御部140は、移動体1の速度とアクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量とに基づいて駆動装置40のモータMTを制御する。制御部140は、移動体1が車道を移動している場合は第1走行状態に切り替えて第1速度V1を上限速度として駆動装置40のモータMTを制御し(モードA-2の場合、上限速度に達した場合は更なる加速指示があっても移動体1を加速させないことを意味する)、移動体1が歩道を移動している場合は第2走行状態に切り替えて第2速度V2を上限速度として駆動装置40を制御する。
【0043】
モードBにおいて制御部140は、移動体1の速度とアクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量とに基づいて駆動装置40のモータMTを制御する。制御部140は、移動体1が車道を移動している場合は第1走行状態に切り替えて第1速度V1を上限速度として駆動装置40のモータMTを制御し(モードBの場合、上限速度に達した場合は更なる加速指示があっても移動体1を加速させないことを意味する)、移動体1が歩道を移動している場合は第2走行状態に切り替えて第2速度V2を上限速度として駆動装置40のモータMTを制御する。操舵に関してはモードA-1と同様である。
【0044】
モードCにおいて制御部140は、物体認識部130の出力に基づく走路と物体の情報を参照し、走路内で物体を回避して移動可能な目標軌道を生成し、移動体1が目標軌道に沿って移動するように駆動装置40を制御する。モードCにおいても、制御部140は、移動体1が車道を移動している場合は第1走行状態に切り替えて第1速度V1を上限速度として駆動装置40を制御し、移動体1が歩道を移動している場合は第2走行状態に切り替えて第2速度V2を上限速度として駆動装置40を制御する。
【0045】
ここで、T字路や十字路、工事中、その他の道路状況によっては、歩道領域が途切れている場合があり、その場合、歩道を走行中の移動体1は、一時的に車道を走行して再び歩道を走行したり、車道を継続して走行することになる。上述した各運転モードにおいては、歩道と車道の切り替わりによって走行状態(例えば、上限速度)が切り替わるため、歩道から一時的に車道を走行し、またすぐに歩道を走行するような場合には、走行状態の切り替えが頻繁に発生し、移動体1や乗員Pに負担がかかる可能性がある。したがって、制御部140は、上述したような道路状況において、所定条件として移動体1の乗員Pの意思に応じて、走行状態の切り替えまたは継続を行う。以下、制御部140における走行状態の切り替えパターンを、幾つかに分けて説明する。
【0046】
<第1の切り替えパターン>
図3は、移動体1の走行状態の第1の切り替えパターンについて説明するための図である。
図3の例では、車道領域200と歩道領域210と含む道路RD1が示されている。道路RD1は、図中のX軸方向に延伸しているものとし、移動体1および車両220は、延伸方向に沿って走行しているものとする。また、
図3の例では、歩道領域210が、移動体1の進行方向(言い換えると道路RD1の延伸方向)の手前側の歩道領域210-1と、奥側の歩道領域210-2とで分かれているものとする。また、
図3において、時刻T1が最も早く、T2(後述のT2#)、T3の順に遅くなっているものとする。また、
図3ではそれぞれの時刻における移動体1の位置や進行方向を示している。以降の図についても同様であるものとする。
【0047】
時刻T1において、移動体1は、道路RD1の歩道領域210-1を延伸方向に沿って走行している。この場合、道路タイプ認識部120は、移動体1が現在走行中の道路タイプが歩道であると認識する。制御部140は、歩道を走行する第2走行状態で移動体1を走行させる制御を行う。また、制御部140は、第2走行状態で歩道を走行中であることを示す情報(テキストやグラフィック、音声、ランプの色)等を外部報知装置50に報知させる。
【0048】
時刻T2において、移動体1は、歩道領域210-1と歩道領域210-2とが途切れているため、歩道領域210-1から歩道領域210-2に向かって車道領域200を走行している。この場合、道路タイプ認識部120は、移動体1が現在走行中の道路タイプが車道であると認識する。また、物体認識部130は、移動体1の進行方向(前方)に歩道領域210-2が存在することを認識する。制御部140は、道路タイプ認識部120および物体認識部130による認識結果に基づいて、歩道領域210-1を走行していた移動体1が車道領域200を走行する場合に、乗員Pから受け付けられる移動体1の走行状態に関する指示に応じて第1走行状態と第2走行状態との切り替えを行う。ここで、乗員Pから受け付けられる移動体1の走行状態に関する指示は、例えば、乗員Pが歩道を走行したいのか、車道を走行したいのかを示す乗員Pの意思に基づく指示である。また、乗員Pから受け付けられる移動体1の走行状態に関する指示とは、例えば、乗員Pが移動体1を第1走行状態で走行させたいのか、または、第2走行状態で走行させたいのかの意思を移動体1に伝えるための指示(乗員Pが所望する走行状態を移動体1に伝えるための指示)であってもよい。つまり、制御部140は、歩道領域210-1を走行していた移動体1が車道領域200を走行する場合に、乗員Pの意思を確認してから走行状態の切り替えを行う。
【0049】
例えば、制御部140は、例えば、操作子14に含まれるステアリングホイールにより受け付けられた乗員の操舵内容に基づいて乗員の意思を確認する。例えば、ステアリングホイールによる所定時間(例えば、時刻T1から時刻T2まで)の操舵量(または、移動体1が歩道領域210-1を出てからの操舵量)が所定量未満である場合、制御部140は、乗員Pが歩道を走行したいという意思(第2走行状態を継続させたいという意思)を確認(推定)し、車道を走行する時刻T2においても第2走行状態を継続する。これにより、移動体1が再び歩道(歩道領域210-2)を走行し、時刻T3以降も第2走行状態が継続されるため、走行状態の切り替えによる移動体1や乗員Pの負担を軽減させることができ、より適切な走行状態で移動体1を走行させることができる。
【0050】
なお、移動体1が走行していた歩道領域210-1の終端部PO1から、移動体1が向かっている(移動体1の進行方向に存在する)歩道領域210-2の始端部PO2までの距離D1が長い場合には、車道領域200を低速で走行し続けなければならず、車道領域200を走行する他車両(例えば、車両220)等が左折したい場合に走行を妨げる可能性がある。したがって、制御部140は、操舵量が所定量未満である場合に加えて、移動体1が走行していた歩道領域210-1から次の歩道領域210-2(他の所定領域の一例)までの距離D1が所定距離Dth未満である場合には、第2走行状態を継続する制御を行ってもよい。これにより、周辺車両等の走行を妨げることなく、より適切に移動体1を走行させることができる。
【0051】
また、制御部140は、例外的に第2走行状態で車道を走行中であることを示す情報(テキストやグラフィック、音声、ランプの色)等を外部報知装置50に報知させる。この場合、制御部140は、例えば、第1走行状態で車道を走行中である場合のランプの発光色および第2走行状態で歩道を走行中である場合のランプの発光色とは異なる表示態様(例えば、異なる色や点滅させる等)で発光させる。また、制御部140は、外部報知装置50のディスプレイ装置に「歩道に向かっているため低速で走行中である」旨、または「一時的に車道を走行しているため低速で走行中である」旨をテキストやグラフィックで表示してもよい。
【0052】
なお、
図3に示すような走行経路により、移動体1が乗員Pの意思に応じて一時的に第2走行状態で車道領域200を走行する場合には、車道領域200の走行中に、操作子14に含まれるアクセルペダルや速度調整用ダイヤル、レバー等により移動体1を加速させる操作が受け付けられた場合であっても、第2走行状態から第1走行状態への切り替えを行わず、第2走行状態が継続される。そのため、第2速度V2を上限速度とした速度制御が実行される。
【0053】
また、制御部140は、ステアリングホイールによる所定時間の操舵量(または、移動体1が歩道領域210-1を出てからの操舵量)が所定量以上である場合、乗員Pが車道を走行したいという意思(第1走行状態に切り替えたいという意思)を確認(推定)し、第2走行状態から第1走行状態に切り替える。
【0054】
図4は、第2走行状態から第1走行状態に切り替わる一例を示す図である。
図4の例では、
図3の例と比較して、時刻T1から時刻T2までの間に、乗員Pの操舵操作により操舵量が所定量以上となっている点で相違する。このように、乗員Pの操舵制御により移動体1が車道領域200側(言い換えると歩道領域210-2から離れる方向)に移動した場合に、制御部140は、移動体1の走行状態を、第2走行状態から第1走行状態に切り替える。また、制御部140は、第1走行状態で車道を走行中であることを示す情報(テキストやグラフィック、音声、ランプの色)等を外部報知装置50に報知させる。これにより、移動体1は歩道を走行する場合の上限速度である第2速度よりも速い第2速度まで加速することができるため、周辺車両の走行の妨げになることを抑制し、より適切な走行を行うことができる。
【0055】
<第2の切り替えパターン>
図5は、移動体1の走行状態の第2の切り替えパターンについて説明するための図である。
図5の例では、
図3、
図4と同様の道路RD1が示されている。時刻T1において、移動体1は、道路RD1の歩道領域210-1を延伸方向に沿って走行している。道路タイプ認識部120は、移動体1が現在走行中の道路タイプが歩道であると認識する。制御部140は、歩道を走行する第2走行状態で移動体1を走行させ、第2走行状態で歩道を走行中であることを示す情報(テキストやグラフィック、音声、ランプの色)等を外部報知装置50に報知させる。
【0056】
時刻T2において、道路タイプ認識部120は、移動体1が現在走行中の道路タイプが車道であると認識する。ここで、第2の切り替えパターンにおいて、制御部140は、移動体の位置に基づいて、乗員Pの意思を確認する。例えば、物体認識部130により移動体1の現在位置に対する道路幅方向(図中Y軸方向)に歩道領域が存在する場合に、乗員が車道を走行したいという意思を確認(推定)し、第2走行状態から第1走行状態に切り替える。
図5に示す時刻T3において、移動体1の基準位置(例えば、重心)の道路幅方向には、歩道領域210-2が存在する。したがって、第2の切り替えパターンにおいて、制御部140は、時刻T3において移動体1の走行状態を第2の走行状態から第1の走行状態に切り替える。
【0057】
また、制御部140は、移動体1が歩道領域210-1を走行している状態から、歩道領域210-1の終端部PO1に到達する前に、車道領域200に出た場合(
図5に示す時刻T2#に示す位置に移動した場合)にも、移動体1の道路幅方向に歩道領域210-1が存在するため、移動体1の走行状態を第2の走行状態から第1の走行状態に切り替える。第2の切り替えパターンでは、移動体1の基準位置から道路幅方向に歩道があるにもかかわらず、歩道側に移動していないことを条件とすることで、乗員の意思を確認することができ、意思に応じて、より適切に移動体1の走行制御を行うことができる。
【0058】
なお、道路状況によって車道と歩道との間に段差や溝等がある場合には、乗員Pが移動体1を車道領域から歩道領域に移動させたくてもすぐに移動できない場合があり得る。したがって、制御部140は、物体認識部130により移動体1の基準位置から道路幅方向に歩道が存在する場合であって、且つその歩道が、移動体1が車道から移動可能な領域である場合に、車道を走行する移動体1の走行状態を第2の走行状態から第1の走行状態に切り替える制御を行ってもよい。
【0059】
[処理フロー]
図6は、実施形態の制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図6の例では、制御装置100により実行される各種処理のうち、特に走行状態の切り替え処理を中心として説明する。なお、
図6の処理は、所定のタイミングで繰り返し実行されてよい。
図6の例において、道路タイプ認識部120は、移動体1が歩道を走行中であるか否かを判定する(ステップS100)。歩道を走行中であると判定した場合、制御部140は、第2走行モードで移動体を走行させる(ステップS110)。また、制御部140は、第2走行状態で歩道を走行中であることを示す情報を外部報知装置50に出力させる(ステップS120)。
【0060】
次に、道路タイプ認識部120は、移動体1が車道を走行中であるか否かを判定する(ステップS130)。車道を走行中であると判定された場合、制御部140は、操作子14により所定量以上の操舵量の操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS140)。所定量以上の操舵量の操作を受け付けたと判定した場合、制御部140は、移動体1の走行状態を第2走行状態から第1走行状態に切り替える(ステップS150)。また、ステップS140の処理において、所定量以上の操舵量の操作を受け付けていない(操舵量が所定量未満である)と判定した場合、制御部140は、次に歩道を走行するまで第2走行状態を継続すると共に第2走行状態で車道を走行中であることを示す情報を外部報知装置50に出力させる(ステップS160)。
【0061】
また、ステップS100の処理において、移動体1が歩道を走行中でないと判定された場合、制御部140は、移動体1を第1走行状態で走行させ(ステップS170)、第1走行状態で車道を走行中であることを示す情報を外部報知装置50に出力させる(ステップS180)。これにより、本フローチャートの処理は終了する。また、ステップS130の処理において、移動体1が車道を走行中ではないと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0062】
<変形例>
上述した実施形態では、操作子14から得られる操舵量に応じて乗員Pの意思を確認することに代えて(または加えて)、モード切替スイッチ22により受け付けられた走行状態に基づいて、乗員Pの意思を確認してもよい。例えば、制御部140は、歩道を走行していた移動体1が車道を走行する場合であって、且つ移動体1の前方(進行方向)に他の歩道が存在する場合に、モード切替スイッチ22により第2走行状態を行う指示が受け付けられた場合には第2走行状態を維持し、第1走行状態を行う指示が受け付けられた場合には第2走行状態から第1走行状態に切り替える。これにより、乗員Pの意思をより正確に把握することができ、意思に沿った適切な走行制御を実現できる。また、実施形態では、モード切替スイッチ22に代えて(または加えて)、マイクMCや内部カメラ16から得られる情報に基づき解析された走行状態の切り替え操作に基づいて、走行状態の切り替え制御を行ってもよい。
【0063】
また、実施形態において、制御部140は、例外的な走行制御を行っている場合(例えば、第2走行状態で車道を走行している場合)に、第1走行状態に切り替えるための情報を乗員に通知してもよい。この場合、制御部140は、例えば、スピーカSPや外部報知装置50から乗員に向けて、車道を走行しているのに第2走行状態が実行されている理由に関する情報または第1走行状態に切り替えるためにどのような操作を行えばよいかを示す情報のうち少なくとも一つを報知させる。これにより、乗員に移動体1の状況を、よりを正確に把握させることができると共に、所定の操作によって乗員の意思をより正確に移動体1に伝えることができる。
【0064】
以上説明した実施形態によれば、一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体1の制御装置100であって、移動体1の外部状況を検知する外界検知デバイス10の出力に基づいて、移動体1が車道を移動しているか、所定領域を移動しているかを認識する道路タイプ認識部120と、道路タイプ認識部により認識された道路タイプに基づいて、移動体1の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、移動体1の速度が第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で移動体を走行させる制御部140と、を備え、制御部140は、移動体1が所定領域を走行している場合に第2走行状態で移動体を走行させ、所定領域から車道に移動体1を走行させる場合に、乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて第1走行状態と第2走行状態との切り替えを行うことで、周辺の道路状況に応じて、より適切な走行状態で移動体を走行させることができる。
【0065】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
一以上の乗員が搭乗し、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動可能な移動体を制御するコンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
前記移動体の外部状況を検知する外界検知デバイスの出力に基づいて、前記移動体が車道を移動しているか、前記所定領域を移動しているかを認識し、
認識した道路タイプに基づいて、前記移動体の速度が第1速度に制限される第1走行状態と、前記移動体の速度が前記第1速度よりも低い第2速度に制限される第2走行状態のうち何れかの走行状態で前記移動体を走行させ、
前記移動体が前記所定領域を走行している場合に前記第2走行状態で前記移動体を走行させ、前記所定領域から車道に前記移動体を走行させる場合に、前記乗員から受け付けられる前記移動体の走行状態に関する指示に応じて前記第1走行状態と前記第2走行状態との切り替えを行う、
移動体の制御装置。
【0066】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 外界検知デバイス
12 移動体センサ
14 操作子
16 内部カメラ
18 測位装置
22 モード切替スイッチ
30 移動機構
40 駆動装置
50 外部報知装置
70 記憶装置
100 制御装置
120 道路タイプ認識部
130 物体認識部
140 制御部