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<図1>
  • 特許-故障検出プログラム及び故障検出回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】故障検出プログラム及び故障検出回路
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20250225BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20250225BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021190706
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077456
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】湯野 徳人
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048656(JP,A)
【文献】特開2020-008480(JP,A)
【文献】特開2006-350707(JP,A)
【文献】特開2012-222724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 -10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部で実行され、センサを接続するために設けられたセンサ接続端子を複数有する温度検出装置において、前記センサ接続端子に関連して発生する信号経路の断線及び短絡に関する故障を検出する故障検出プログラムであって、
前記センサ接続端子毎に前記センサが接続されている場合には第1の値、前記センサが接続されていない場合には第2の値となる端子接続係数を記憶部に保存する係数保存処理と、
予め設定した第1の上限閾値及び第1の下限閾値と、前記第1の上限閾値及び前記第1の下限閾値に前記第2の値を乗算した第2の上限閾値及び第2の下限閾値と、を前記記憶部に保存する閾値保存処理と、
前記センサ接続端子から得られる測定値を前記センサ接続端子毎に取得する測定値取得処理と、
前記測定値と前記端子接続係数とを乗算した被判定値を前記センサ接続端子毎に算出する被判定値算出処理と、
前記センサ接続端子毎に前記被判定値と、前記第1の上限閾値、前記第1の下限閾値、前記第2の上限閾値及び前記第2の下限閾値と、の大小関係に基づき前記センサ接続端子毎の故障判定を行う故障検出処理を行う故障検出プログラム。
【請求項2】
前記故障検出処理では、
前記被判定値が前記第1の上限閾値と前記第1の下限閾値との間に有る場合、前記センサ接続端子には前記センサが接続され、かつ、経路故障がない正常状態と判定する第1の判定処理と、
前記被判定値が前記第2の下限閾値よりも小さい場合、前記センサ接続端子には前記センサが未接続であり、かつ、経路故障がない正常状態と判定する第2の判定処理と、
前記被判定値が前記第2の下限閾値以上、かつ、前記第1の下限閾値未満で有る場合、前記センサ接続端子には前記センサが接続され、かつ、経路に断線故障がある断線異常状態と判定する第3の判定処理と、
前記被判定値が前記第1の上限閾値より大きく、かつ、前記第2の上限閾値以下で有る場合、前記センサ接続端子には前記センサが接続され、かつ、経路に短絡故障がある短絡異常状態と判定する第4の判定処理と、
前記被判定値が前記第2の上限閾値よりも大きい場合、前記センサ接続端子には前記センサが未接続であり、かつ、経路に短絡故障がある短絡異常状態と判定する第5の判定処理と、
を行う請求項1に記載の故障検出プログラム。
【請求項3】
前記第3の判定処理から前記第5の判定処理は、前記第1の判定処理及び前記第2の判定処理の後に行われる請求項2に記載の故障検出プログラム。
【請求項4】
前記第3の判定処理、前記第4の判定処理及び前記第5の判定処理の後に上位システムに対して異常通知を行う請求項2又は3に記載の故障検出プログラム。
【請求項5】
前記第3の判定処理及び前記第4の判定処理の後に上位システムに対して前記測定値の代替値として前処理サイクルで取得した前記測定値を通知する請求項2乃至4のいずれか1項に記載の故障検出プログラム。
【請求項6】
前記第1の上限閾値は、正の値であり、前記第2の下限閾値は、負の値である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の故障検出プログラム。
【請求項7】
前記センサは、温度センサであり、前記測定値は温度を示す値である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の故障検出プログラム。
【請求項8】
センサを接続するために設けられた複数のセンサ接続端子から得られる測定値を前記センサ接続端子毎に取得する測定値取得部と、
前記センサ接続端子に前記センサが接続されている場合には第1の値、前記センサが接続されていない場合には第2の値となる端子接続係数を記憶部に保存する係数保存処理部と、
予め設定した第1の上限閾値及び第1の下限閾値と、前記第1の上限閾値及び前記第1の下限閾値に前記第2の値を乗算した第2の上限閾値及び第2の下限閾値と、を前記記憶部に保存する閾値保存処理部と、
前記測定値と前記端子接続係数とを乗算した被判定値を前記センサ接続端子毎に算出する被判定値算出部と、
前記センサ接続端子毎に前記被判定値と、前記第1の上限閾値、前記第1の下限閾値、前記第2の上限閾値及び前記第2の下限閾値と、の大小関係に基づき前記センサ接続端子毎の故障判定を行う故障検出部を行う故障検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、温度センサが接続される複数の端子を有する温度検出装置に適用される故障検出プログラム及び故障検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを組み合わせて1つの電池として利用する組電池では、一方向(例えば、積層方向)に並べた複数の電池セルに積層方向の両端から圧力を加えて拘束して電池スタックを構成する。このような電池スタックでは、電池の性能を一定の範囲に保つために電池セルの温度を計測する必要がある。そこで、温度検出装置等を用いて電池セルの温度の検出を行うが、温度を検出するポイント数が電池モジュールの仕様により異なる。そのため、温度検出装置を電池モジュールの仕様毎に設計する必要がある。しかしながら、1種類の温度検出装置を複数の仕様の電池モジュールで共通して利用することで温度検出装置の開発コスト、動作検証コスト、部品管理コストを低減することができる。このように複数の仕様の電池モジュールで共通利用する温度検出回路では、温度センサを接続する端子が余ることがあり、温度センサが未接続の端子により誤動作を防ぐ必要がある。そこで、未使用端子を有する電気回路において端子が未使用で有るのか断線しているのかを判別する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の負荷駆動回路では、温度センサの出力が入力される温度検出端子を利用し、クランプ回路や温度検出回路の一部がパワーモジュールに接続されないときには温度検出端子の電位に基づいて温度センサが接続されていない断線無効状態を検出する。例えば、温度検出端子のうち温度センサに接続されない端子に断線検出無効化閾値以上の電圧を印加することで、温度検出端子が温度センサに接続されていないことを検出する。これにより、クランプ回路に接続されるクランプ端子の電位に基づいて断線検出を行う際に、断線状態なのか断線無効状態なのかを温度検出端子の電位に応じて判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-222724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、未使用端子の断線検出を行う際に、温度センサに接続されない端子に断線検出無効化閾値以上の電圧を印加する必要があり、未使用端子の断線検出だけを行う為に電圧源が必要になる。このような特許文献1に記載の技術では、システムの故障検出レベルを高めるために電圧源の故障の有無まで検査しなければならず、故障検出に時間を要する問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、故障検出に要する時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる故障検出プログラムの一態様は、演算部で実行され、センサを接続するために設けられたセンサ接続端子を複数有する温度検出装置において、前記センサ接続端子に関連して発生する信号経路の断線及び短絡に関する故障を検出する故障検出プログラムであって、前記センサ接続端子毎に前記センサが接続されている場合には第1の値、前記センサが接続されていない場合には第2の値となる端子接続係数を記憶部に保存する係数保存処理と、予め設定した第1の上限閾値及び第1の下限閾値と、前記第1の上限閾値及び前記第1の下限閾値に前記第2の値を乗算した第2の上限閾値及び第2の下限閾値と、を前記記憶部に保存する閾値保存処理と、前記センサ接続端子から得られる測定値を前記センサ接続端子毎に取得する測定値取得処理と、前記測定値と前記端子接続係数とを乗算した被判定値を前記センサ接続端子毎に算出する被判定値算出処理と、前記センサ接続端子毎に前記被判定値と、前記第1の上限閾値、前記第1の下限閾値、前記第2の上限閾値及び前記第2の下限閾値と、の大小関係に基づき前記センサ接続端子毎の故障判定を行う故障検出処理を行う。
【0008】
本発明にかかる故障検出回路の一態様は、センサを接続するために設けられた複数のセンサ接続端子から得られる測定値を前記センサ接続端子毎に取得する測定値取得部と、前記センサ接続端子に前記センサが接続されている場合には第1の値、前記センサが接続されていない場合には第2の値となる端子接続係数を記憶部に保存する係数保存処理部と、予め設定した第1の上限閾値及び第1の下限閾値と、前記第1の上限閾値及び前記第1の下限閾値に前記第2の値を乗算した第2の上限閾値及び第2の下限閾値と、を前記記憶部に保存する閾値保存処理部と、前記測定値と前記端子接続係数とを乗算した被判定値を前記センサ接続端子毎に算出する被判定値算出部と、前記センサ接続端子毎に前記被判定値と、前記第1の上限閾値、前記第1の下限閾値、前記第2の上限閾値及び前記第2の下限閾値と、の大小関係に基づき前記センサ接続端子毎の故障判定を行う故障検出部を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の故障検出プログラム及び故障検出回路によれば、未使用端子の短絡検出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる電池ユニットの概略図である。
図2】実施の形態1にかかる温度検出装置のブロック図である。
図3】実施の形態1にかかる故障検出回路のブロック図である。
図4】実施の形態1にかかる故障検出回路における故障判定範囲を説明する図である。
図5】実施の形態1にかかる故障検出回路の動作を説明するフローチャートである。
図6】比較例にかかる故障検出回路の動作を説明するフローチャートである。
図7】比較例と実施の形態1とにおける分岐処理回数の違いを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0013】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる電池ユニットの概略図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる電池ユニットは、温度検出装置10と電池モジュール20とを有する。電池モジュール20は、複数の電池セル21が一方向に積層され、電池セル21の積層方向の両端から圧縮力が保持されるように拘束される。そして、電池モジュール20の両端付近と両端部の間の中央付近に温度センサ31~33が取り付けられる。温度センサ31~33は、例えば、取り付けられた電池セルの温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタである。
【0014】
温度検出装置10は、温度センサ31~33の抵抗値変化を温度電圧として取得し、当該温度電圧からセル温度を算出して、上位システムにセル温度を通知する。この温度検出装置10について、より詳細に説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかる温度検出装置10のブロック図を示す。
【0015】
図2に示すように、温度検出装置10は、n個(nは、センサ接続端子の数を示す整数)のセンサ接続端子TM1~TMnを有する。また、温度検出装置10は、センサ接続端子TM1~TMnに対応したプルアップ抵抗R1~Rnを有する。そして、図2に示す例では、センサ接続端子TM1~TMnのうちセンサ接続端子TM1~TM3に温度センサ31~33を接続し、センサ接続端子TM4~Tnは温度センサを接続しない未接続状態とした。これにより、センサ接続端子TM1~TM3には、温度センサの抵抗値とプルアップ抵抗との抵抗比により電源電圧VCCを分圧した温度電圧VL1~VL3が生成される。また、未接続状態のセンサ端子TM4~TMnには、プルアップ抵抗を介して電源電圧VCCが与えられ、温度電圧VL4~VLnは電源電圧VCCとなる。
【0016】
また、温度検出装置10は、処理ブロックとして、電圧検出回路41、電圧温度変換回路42、故障検出回路43を有する。電圧検出回路41は、温度電圧VL1~VLnを循環的に所定の周期でデジタル値に変換して電圧検出値AD[i]を算出する。iは、電圧検出回路41が変換した温度電圧が生成されるセンサ接続端子の番号であり、1~nの値をとる。そして、電圧温度変換回路42は、電圧検出値AD[i]に対応する温度値を有する測定値(例えば、温度検出値T[i])に変換する。
【0017】
故障検出回路43は、センサ接続端子毎に温度検出値Tに端子接続係数kを適用して算出される被判定値を用いてセンサ接続端子毎の故障判定を行う。故障検出回路43は、故障判定の結果を考慮して、温度検出値T[i]とセンサ状態情報SC[i]を上位システムに通知する。なお、このセンサ状態情報は、温度センサに異常が生じたことを示す情報が含まれている場合、異常通知としても機能するものである。
【0018】
上記説明より、実施の形態1にかかる電池ユニットでは、電圧温度変換回路42で算出された温度検出値T[i]を用いてセンサ接続端子TM1~TMnの故障検出を行う。また、実施の形態1にかかる電池ユニットでは、故障検出回路43で故障検出を行う事で、故障したセンサ接続端子から得られた温度検出値T[i]が上位システムにそのまま通知されることを防止する。実施の形態1にかかる電池ユニットでは、故障検出回路43に特徴の1つを有するため、故障検出回路43についてさらに詳細に説明する。
【0019】
図3に実施の形態1にかかる故障検出回路43のブロック図を示す。図3に示すように、故障検出回路43は、係数保存処理部51、閾値保存処理部52、記憶部53、測定値取得部54、被判定値算出部55、故障検出部56を有する。故障検出回路43は、例えば、プログラムを実行可能な演算部を備えるコンピュータとして実装することも出来る。そして、記憶部53以外のブロックで行われる処理は、演算部で実行される故障検出プログラムにより実現可能である。具体的には、この故障検出プログラムでは、係数保存処理部51が行う係数保存処理と、閾値保存処理部52が行う閾値保存処理と、測定値取得部54が行う測定値取得処理と、被判定値算出部55が行う被判定値算出処理と、故障検出部56が行う故障検出処理と、を行う。
【0020】
係数保存処理部51には、例えば、電池ユニットの出荷検査時に外部から作業者あるいは生産システムから与えられる端子接続情報が与えられる。この端子接続情報は、温度検出装置10のいずれのセンサ接続端子に温度センサが接続されているのかを示すものである。そして、係数保存処理部51は、端子接続情報に基づき、センサ接続端子に温度センサが接続されている場合には第1の値(例えば、1)、温度センサが接続されていない場合には第2の値(例えば、2)となる端子接続係数k[i]を記憶部53に保存する。
【0021】
閾値保存処理部52には、例えば、電池ユニットの出荷検査時に外部から作業者あるいは生産システムから与えられる閾値範囲情報が与えられる。この閾値範囲情報には、電池温度の上限値と下限値を決定する上限閾値と下限閾値とが含まれる。実施の形態1にかかる閾値保存処理部52では、閾値範囲情報に含まれる上限閾値を第1の上限閾値UL1、下限閾値を第1の下限閾値LL1とする。そして、閾値保存処理部52は、予め設定した第1の上限閾値UL1及び第1の下限閾値LL1と、第1の上限閾値UL1及び第1の下限閾値LL1に第2の値(例えば、2)を乗算した第2の上限閾値UL2及び第2の下限閾値LL2と、を記憶部53に保存する。なお、閾値範囲は、負の値から正の値にまたがって正常範囲が規定されるものであり、第1の上限閾値UL1は正の値であり、第2の下限閾値LL1は負の値である。
【0022】
ここで、実施の形態1にかかる故障検出回路43で適用される閾値について詳細に説明する。そこで、図4に実施の形態1にかかる故障検出回路における故障判定範囲を説明する図を示す。なお、これ以降の説明では、センサ接続端子の良否判定基準として故障検出回路43の第1の下限閾値LL1に対応する下限閾値LLと、第1の上限閾値UL1に対応する上限閾値UPのみによりセンサ接続端子の良否判定を行う故障検出回路を比較例として説明する。
【0023】
図4では、図面上方に比較例における故障判定範囲を説明する表を示し、図面下方に実子の形態1にかかる故障判定範囲を示した。そして、図4に示すように、比較例における故障判定範囲では、センサ接続状態が「接続」を示す場合、温度検出値T[i]が下限閾値LL以上、上限閾値UL以下の範囲を正常と判定し、温度検出値T[i]が下限閾値LLより小さい、或いは、上限閾値ULよりも大きいと異常と判定する。また、比較例における判定範囲においてセンサ接続状態が「未接続」を示す場合、計測値T[i]が下限閾値LL以上、上限閾値UL以下の範囲を示すことはない。一方、比較例における判定範囲においてセンサ接続状態が「未接続」を示す場合に、温度検出値T[i]が下限閾値LLより小さい場合に正常と判定し、上限閾値ULよりも大きい場合に異常と判定する。
【0024】
一方、図4に示すように、実施の形態1における故障判定範囲では、センサ接続状態が「接続」である場合は、比較例における故障判定と同様の判定範囲となる。一方、センサ接続状態が「未接続」である場合、第1の下限閾値LL1を2倍した第2の下限閾値LL2よりも温度検出値T[i]が小さい場合に正常と判断し、第1の上限閾値UL1を2倍した第2の上限閾値UL2よりも温度検出値T[i]が大きい場合に異常と判断する。
【0025】
実施の形態1にかかる故障検出回路43では、このように未接続のセンサ接続端子では、電圧が電源電圧又は接地電圧とほぼ同じになることを利用して4つの閾値でセンサ接続端子の良否判定を行うことで、センサ接続端子の接続・未接続及び異常が短絡によるモノなのか断線によるものなのかの原因特定を簡易な計算で行う事ができる。この判定は、後述する故障検出部56において行う。
【0026】
測定値取得部54は、温度センサを接続するために設けられた複数のセンサ接続端子(例えば、センサ接続端子TM1~TMn)から得られる測定値(例えば、温度検出値T[i])をセンサ接続端子毎に取得する。被判定値算出部55は、測定値(例えば、温度検出値T[i])と端子接続係数k[i]とを乗算した被判定値M[i]をセンサ接続端子毎に算出する。
【0027】
故障検出部56は、センサ接続端子毎に被判定値M[i]と、第1の上限閾値UL1、第1の下限閾値LL1、第2の上限閾値UL2及び第2の下限閾値LL2と、の大小関係に基づきセンサ接続端子毎の故障判定を行う。この故障判定処理について、フローチャートを用いて詳細に説明する。そこで、図5に実施の形態1にかかる故障検出回路の動作を説明するフローチャートを示す。なお、図5では、測定値取得部54による温度検出値Tの取り込み後の処理であって、被判定値算出部55と故障検出部56で行われる処理を示した。また、実施の形態1にかかる電池ユニットでは、図5に示した処理を全センサ接続端子に対して周期的に行う。
【0028】
図5に示すように、故障検出回路43では、まず、センサ接続端子を指定する変数iを1に初期化する(ステップS11)。その後、故障検出回路43では、被判定値算出部55が温度検出値T[i]に端子接続係数k[i]を乗算して被判定値M[i]を算出する(ステップS12)。なお、端子接続係数k[i]は、温度センサが接続されたセンサ接続端子に対応するものは第1の値(例えば、1)となり、温度センサが未接続のセンサ接続端子に対応するものは第2の値(例えば、2)となる。その後、故障検出回路43では、故障検出部56が被判定値M[i]に基づきセンサ接続端子の故障検出処理を行う。故障検出部56は、以下の処理により故障検出処理を行う。
【0029】
故障検出部56は、まず、被判定値M[i]が第1の下限閾値LL1以上、かつ、第1の上限閾値UL1以下の正常範囲にあるかを確認する第1の判定処理を行う(ステップS13)。この第1の判定処理では、被判定値M[i]が正常範囲に有る場合、故障検出部56が、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TMiに温度センサが接続され、かつ、温度センサが正常に動作していることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS14)。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]に被判定値M[i]を代入して上位システムに通知する(ステップS15)。
【0030】
また、故障検出部56は、被判定値M[i]が正常範囲から外れている場合、被判定値M[i]が第2の下限閾値LL2よりも小さいか否かを判定する第2の判定処理を行う(ステップS16)。第2の判定処理では、被判定値M[i]が第2の下限閾値LL2よりも小さい場合、故障検出部56が、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]に温度センサが未接続であり、かつ、温度センサが正常に動作していることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS17)。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]にセンサ接続端子TMiが未接続端子で有ることを示す値(例えばNC)を代入して上位システムに通知する(ステップS18)。
【0031】
また、故障検出部56は、ステップS16において被判定値M[i]が第2の下限閾値LL2よりも小さい範囲にないと判定された場合、被判定値M[i]が第2の下限閾値LL2以上、かつ、第1の下限閾値LL1よりも小さいか否かを判定する第3の判定処理を行う(ステップS19)。第3の判定処理では、被判定値M[i]が第2の下限閾値LL2以上、かつ、第1の下限閾値LL1よりも小さい範囲にある場合、故障検出部56が、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]に温度センサが接続され、かつ、温度センサから電圧検出回路41に至る経路に断線が生じていることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS20)。なお、ステップS20で生成されるセンサ接続状態値SC[i]は、上位システムへの交換指示となる。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]に代替値を代入して上位システムに通知する(ステップS21)。この代替値は、例えば、前処理サイクルでセンサ接続端子TMiから得られた温度検出値T[i]を用いることが出来る。
【0032】
また、故障検出部56は、ステップS19において被判定値M[i]が第2の下限閾値LL2以上、かつ、第1の下限閾値LL1よりも小さい範囲にないと判定された場合、被判定値M[i]が第1の上限閾値UL1より大きく、かつ、第2の上限閾値UL2以下であるか否かを判定する第4の判定処理を行う(ステップS22)。第4の判定処理では、被判定値M[i]が第1の上限閾値UL1より大きく、かつ、第2の上限閾値UL2以下の範囲にある場合、故障検出部56が、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]に温度センサが接続され、かつ、温度センサから電圧検出回路41に至る経路に短絡が生じていることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS23)。なお、ステップS23で生成されるセンサ接続状態値SC[i]は、上位システムへの交換指示となる。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]に代替値を代入して上位システムに通知する(ステップS24)。この代替値は、例えば、前処理サイクルでセンサ接続端子TMiから得られた温度検出値T[i]を用いることが出来る。
【0033】
また、故障検出部56は、ステップS19において被判定値M[i]が第1の上限閾値UL1より大きく、かつ、第2の上限閾値UL2以下の範囲にないと判定された場合、被判定値M[i]が第2の上限閾値UL2以上であるとする第5の判定処理を行う。第5の判定処理では、故障検出部56が、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TMiが未接続であり、かつ、センサ接続端子TMiに短絡が生じていることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS25)。なお、ステップS25で生成されるセンサ接続状態値SC[i]は、上位システムへの交換指示となる。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]にセンサ接続端子TMiが未接続端子で有ることを示す値(例えばNC)を代入して上位システムに通知する(ステップS26)。
【0034】
そして、故障検出回路43は、ステップS15、S18、S21、S24、S26の処理が完了すると、変数iを1つ増加させて、変数iがnを越えるまでステップS12からステップS27の処理を繰り返し行う(ステップS27、S28)。
【0035】
ここで、比較例にかかる故障検出方法(閾値を上限と下限の1組のみ用いる場合)における故障検出の流れについて説明する。この比較例は、実施の形態1にかかる故障検出回路43の処理において計算回数が少なくなることを説明するために発明者が考案したものである。そこで、図6に比較例にかかる故障検出回路の動作を説明するフローチャートを示す。
【0036】
図6に示すように、比較例にかかる故障検出方法では、最初に変数iを1で初期化する(ステップS111)。続いて、比較例にかかる故障検出方法では、被判定値M[i]に温度検出値T[i]を代入する(ステップS112)。
【0037】
そして、比較例にかかる故障検出方法では、被判定値M[i]が下限閾値LL以上、かつ、上限閾値UL以下の正常範囲にあるかを確認する第1の判定処理を行う(ステップS113)。この第1の判定処理では、被判定値M[i]が正常範囲に有る場合、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TMiに温度センサが接続され、かつ、温度センサが正常に動作していることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS114)。また、比較例にかかる故障検出方法でも、温度検出値T[i]に被判定値M[i]を代入して上位システムに通知する(ステップS115)。
【0038】
一方、被判定値M[i]が正常範囲から外れている場合、比較例にかかる故障検出方法では、端子接続状態が接続状態であるか否かを事前の設定に基づき判断する(ステップS116)。そして、処理対象の被判定値M[i]に対応するセンサ接続端子TMiの接続状態値CC[i]が接続状態であればステップS117~S121の処理を行い、端子接続状態値CC[i]が未接続状態であればステップS122~S126の処理を行う。
【0039】
ステップS117~S121の処理につついて説明する。まず、ステップS117では、被判定値M[i]が下限閾値LLよりも小さいか否かを判断する。そして、ステップS117において、被判定値M[i]が下限閾値LLよりも小さいと判断された場合、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]に温度センサが接続され、かつ、温度センサから電圧検出回路41に至る経路に断線が生じていることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS118)。また、比較例にかかる故障検出方法でも、温度検出値T[i]に代替値を代入して上位システムに通知する(ステップS119)。この代替値は、例えば、前処理サイクルでセンサ接続端子TMiから得られた温度検出値T[i]を用いることが出来る。
【0040】
一方、ステップS117において、被判定値M[i]が下限閾値LLよりも大きいと判断された場合、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]に温度センサが接続され、かつ、温度センサから電圧検出回路41に至る経路に短絡が生じていることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS120)。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]に代替値を代入して上位システムに通知する(ステップS121)。この代替値は、例えば、前処理サイクルでセンサ接続端子TMiから得られた温度検出値T[i]を用いることが出来る。
【0041】
続いて、ステップS122~S126の処理について説明する。ステップS122では、被判定値M[i]が下限閾値LLよりも小さいか否かを判断する。そして、ステップS122において、被判定値M[i]が下限閾値LLよりも小さいと判断された場合、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]が未接続状態であり、かつ、短絡等の故障が生じていない正常状態であることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS123)。また、比較例にかかる故障検出方法でも、温度検出値T[i]にセンサ接続端子TMiが未接続端子で有ることを示す値(例えばNC)を代入して上位システムに通知する(ステップS124)。
【0042】
一方、ステップS122において、被判定値M[i]が下限閾値LLよりも大きいと判断された場合、センサ接続状態値SC[i]にセンサ接続端子TM[i]が未接続状態であり、かつ、センサ接続端子TMiに短絡が生じていることを示す値を入れて上位システムに通知する(ステップS125)。また、故障検出部56は、温度検出値T[i]にセンサ接続端子TMiが未接続端子で有ることを示す値(例えばNC)を代入して上位システムに通知する(ステップS126)。
【0043】
そして、比較例にかかる故障検出方法でも、ステップS115、S119、S121、S124、S126の処理が完了すると、変数iを1つ増加させて、変数iがnを越えるまでステップS112からステップS127の処理を繰り返し行う(ステップS127、S128)。
【0044】
ここで、実施の形態1にかかる故障検出回路43と比較例にかかる故障検出方法とにおける計算回数の違いについて説明する。ここでは、特に、図5及び図6のフローチャートの分岐処理の回数に着目して説明を行う。そこで、図7に比較例と実施の形態1とにおける分岐処理回数の違いを説明する図を示す。
【0045】
図7に示すように、温度センサがセンサ接続端子に接続され、かつ、判定結果が正常である場合は、実施の形態1にかかる故障検出回路43も比較例にかかる故障検出方法も分岐処理の回数はともに1回である。一方、センサ接続端子が未接続状態であり、かつ、判定結果が正常である場合は、実施の形態1にかかる故障検出回路43の分岐処理の回数は、比較例にかかる故障検出方法の分岐処理の回数よりも1回少なくなる。また、判定結果が異常状態を示した場合は、実施の形態1にかかる故障検出回路43の分岐処理の回数は、比較例にかかる故障検出方法の分岐処理の回数と同じか、1回多くなる。
【0046】
上記説明より、実施の形態1にかかる故障検出回路43では、センサ接続端子TMiから得られる測定値のみでセンサ接続端子TMiに関連して発生する故障の有無を判断することができる。また、故障検出回路43における故障判断では、被判定値M[i]の生成で用いられる乗算と、被判定値M[i]と4つの閾値との大小比較のみで故障の有無の判断を行う事ができる。これにより、実施の形態1にかかる故障検出回路43では、故障判断に関連する処理を軽減することができる。
【0047】
また、実施の形態4にかかる故障検出回路43では、温度センサが未接続なセンサ接続端子TMiから得られる測定値T[i]については端子接続係数kにより値をずらし、かつ、閾値を4つ設けることで、処理内容が変化する分岐処理の回数を図7で説明したように削減することができる。具体的には、故障検出回路43による故障検出は電池ユニットが利用において、判定結果が正常と判断されている期間に繰り返し行われ、故障が発見された場合には交換指示を上位システムに通知する等を行い利用状態が終了に向かう。そのため、電池ユニットにおいては、正常状態での計算回数が消費電力に大きく影響する。このようなことから、故障検出回路43のように正常状態での計算回数の削減から得られる効果は大きい。一方、故障検出回路43では、比較例に比べて故障発生時の計算回数が増えるが、故障状態が発生した後は、正常状態に比べて故障検出回路43が故障検出する回数は極端に小さいため消費電力に与える影響は少ない。
【0048】
なお、分岐処理の回数を減らすためには、第3の判定処理から第5の判定処理(ステップS19~S26)は、第1の判定処理及び第2の判定処理(ステップS13~S18)の後に行われることが好ましい。
【0049】
また、実施の形態1にかかる故障検出回路43では、故障が発生した際に上位システムに通知する温度検出値T[i]として、正常と判断された前処理サイクルで得られた温度検出値T[i]を採用する。このように、異常状態が検出された際の温度検出値T[i]に代えて直前で得られている正常な値を上位システムに通知することで、上位システムが異常値に基づき電池ユニットを制御することを防止することができる。
【0050】
なお、上記説明では、センサとして温度センサを対象に説明したが、故障検出回路43は、温度センサ以外のセンサから得られる測定値に対しても適用可能である。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 温度検出装置
20 電池モジュール
21 電池セル
31~33 温度センサ
41 電圧検出回路
42 電圧温度変換回路
43 故障検出回路
51 係数保存処理部
52 閾値保存処理部
53 記憶部
54 測定値取得部
55 被判定値算出部
56 故障検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7