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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20250225BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
F04B27/18 B
F04B27/18 A
F16K31/06 305L
F16K31/06 305M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022535294
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025135
(87)【国際公開番号】W WO2022009795
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020117314
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】江島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大千
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/013156(WO,A1)
【文献】特開2018-179087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
ソレノイドにより駆動される主弁体、および前記吐出ポートと前記制御ポートとの間に設けられ前記主弁体が接触可能な主弁座により構成される主弁と、を備える容量制御弁であって、
径方向に貫通する連通孔が形成され、前記主弁体と連動し前記バルブハウジングにスライド摺動するCS弁体を有し、前記CS弁体のスライド位置に応じて前記連通孔が前記制御ポートと前記吸入ポート間の流路を連通可能とするCS弁を備えており、
前記CS弁体のスライド位置に応じて前記連通孔の開口面積が変化する容量制御弁。
【請求項2】
前記CS弁体は、前記主弁体と分離可能な別部材により構成されている請求項1に記載の容量制御弁。
【請求項3】
前記主弁体と前記CS弁体は、軸方向のみ当接可能となっている請求項2に記載の容量制御弁。
【請求項4】
前記CS弁体は、バネにより閉方向に付勢されている請求項2または3に記載の容量制御弁。
【請求項5】
前記連通孔の開口形状は、円形の一部から形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項6】
前記連通孔の開口形状は、円である請求項1ないし4のいずれかに記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の容量を可変制御する容量制御弁に関し、例えば、自動車の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機の吐出量を圧力に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機は、エンジンにより回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御するものである。この斜板の傾斜角度は、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0003】
容量可変型圧縮機の連続駆動時において、容量制御弁は、制御コンピュータにより通電制御され、ソレノイドで発生する電磁力により弁体を軸方向に移動させ、吐出圧力Pdの吐出流体が通過する吐出ポートと制御圧力Pcの制御流体が通過する制御ポートとの間に設けられる主弁を開閉して容量可変型圧縮機における制御室の制御圧力Pcを調整する通常制御を行っている。
【0004】
容量制御弁の通常制御時においては、容量可変型圧縮機における制御室の圧力が適宜制御されており、回転軸に対する斜板の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて吐出室に対する流体の吐出量を制御し、空調システムが目標の冷却能力となるように調整している。また、容量可変型圧縮機を最大容量で駆動する場合には、容量制御弁における主弁を閉塞して制御室の圧力を低くすることで、斜板の傾斜角度を最大とするようになっている。
【0005】
また、容量制御弁における制御ポートと吸入ポートとの間を連通させる補助連通路を形成し、起動時に容量可変型圧縮機における制御室の冷媒を制御ポート、補助連通路、吸入ポートを通して容量可変型圧縮機における吸入室へ排出するようにして、起動時に制御室の圧力を迅速に低下させることで、容量可変型圧縮機の応答性を向上させるものも知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5167121号公報(第7頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にあっては、起動時に流体排出機能に優れるものの、容量可変型圧縮機の連続駆動時において、補助連通路が連通しており制御ポートから吸入ポートに冷媒が流れ込むことから、冷媒循環量が多く、容量可変型圧縮機の運転効率が下がってしまう虞があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、起動時の流体排出機能を有しつつ運転効率が良い容量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の容量制御弁は、
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
ソレノイドにより駆動される主弁体、および前記吐出ポートと前記制御ポートとの間に設けられ前記主弁体が接触可能な主弁座により構成される主弁と、を備える容量制御弁であって、
連通孔が形成され、前記主弁体と連動し前記バルブハウジングにスライド摺動するCS弁体を有し、前記CS弁体のスライド位置に応じて前記連通孔が前記制御ポートと前記吸入ポート間の流路を連通可能とするCS弁を備えている。
これによれば、CS弁はスプール弁構造であって、全閉状態から開き始めよりも全開前から全開状態になるまでの弁体ストロークに対する連通孔の開度の増加率を大きくできることから、容量制御弁におけるソレノイドに通電されない非通電時には、主弁は全開かつCS弁は全閉である。これにより、容量制御弁の通常制御時には、CS弁は開き始めからの連通孔の開度の増加率は小さいため、流体の漏れは少なく、容量制御弁の運転効率が高い。また、容量可変型圧縮機の起動時には、主弁は全閉かつCS弁は全開となり、制御ポートと吸入ポートとが連通されることにより、制御室内の液化した流体は連通孔を通して吸入室内に短時間で排出される。このようにして容量制御弁は容量可変型圧縮機の起動時の応答性を高めることができる。
【0010】
前記CS弁体は、前記主弁体と分離可能な別部材により構成されていてもよい。
これによれば、主弁体とCS弁体が独立して軸心を取ることができるため、互いの動作への影響が抑えられ、主弁およびCS弁の開度調整をそれぞれ精度良く行うことができる。
【0011】
前記主弁体と前記CS弁体は、軸方向のみ当接可能となっていてもよい。
これによれば、主弁体とCS弁体との間の軸心の傾きやずれによる互いの動作への影響が抑えられる。
【0012】
前記CS弁体は、バネにより閉方向に付勢されていてもよい。
これによれば、主弁を開放させる際にCS弁体は主弁体に追従するため、CS弁の連通孔を確実に閉塞させることができる。
【0013】
前記連通孔は径方向に貫通する孔であり、その開口形状は、円形の一部から形成されていてもよい。
これによれば、連通孔の開度を弁体ストロークに応じて漸増させることができる。
【0014】
前記連通孔の開口形状は、円であってもよい。
これによれば、CS弁体に対する連通孔の加工形成を行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施例の容量制御弁が組み込まれる斜板式容量可変型圧縮機を示す概略構成図である。
図2】実施例の容量制御弁の非通電状態において主弁が全開状態に開放され、CS弁により連通孔が閉塞された様子を示す断面図である。
図3図2の拡大断面図である。
図4】実施例の容量制御弁の通電状態(通常制御時)においてCS弁により連通孔が全閉状態から開き始めた様子を示す拡大断面図である。
図5】実施例の容量制御弁の最大通電状態(起動時)において主弁が閉塞され、CS弁により連通孔が全開状態に開放された様子を示す拡大断面図である。
図6】実施例の主副弁体のストローク位置に対する主弁およびCS弁(連通孔)の開口面積を説明する図である。尚、横軸のストローク位置は、ソレノイドに電流を印加した際に主副弁体が移動する方向(図2における右から左への方向)で示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る容量制御弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0017】
実施例に係る容量制御弁につき、図1から図6を参照して説明する。以下、図2の正面側から見て左右側を容量制御弁の左右側として説明する。
【0018】
本発明の容量制御弁Vは、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機Mに組み込まれている。容量制御弁Vは、容量可変型圧縮機Mにおいて冷媒である作動流体(以下、単に「流体」と表記する)の圧力を可変制御する。これにより、容量制御弁Vは、容量可変型圧縮機Mの吐出量を制御し空調システムを所望の冷却能力となるように調整している。
【0019】
先ず、容量可変型圧縮機Mについて説明する。図1に示されるように、容量可変型圧縮機Mは、吐出室2と、吸入室3と、制御室4と、複数のシリンダ4aと、を備えるケーシング1を有している。尚、容量可変型圧縮機Mには、制御室4と吸入室3とを直接連通する図示しない連通路が設けられている。この連通路には吸入室3と制御室4との圧力を平衡調整させるための固定オリフィスが設けられている。
【0020】
また、容量可変型圧縮機Mは、回転軸5と、斜板6と、複数のピストン7と、を備えている。回転軸5は、ケーシング1の外部に設置される図示しないエンジンにより回転駆動される。斜板6は、制御室4内において回転軸5に対してヒンジ機構8により傾斜可能に連結されている。複数のピストン7は、斜板6に連結され各々のシリンダ4a内において往復動自在に嵌合されている。容量制御弁Vを電磁力により開閉駆動することで、流体を吸入する吸入室3の吸入圧力Ps、ピストン7により加圧された流体を吐出する吐出室2の吐出圧力Pd、斜板6を収容した制御室4の制御圧力Pcを利用して、容量可変型圧縮機Mの制御室4内の圧力が適宜制御される。これにより、斜板6の傾斜角度は連続的に変化する。これに伴ってピストン7のストローク量が変化することにより、容量可変型圧縮機Mからの流体の吐出量は制御されている。尚、説明の便宜上、図1においては、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vの図示を省略している。
【0021】
具体的には、制御室4内の制御圧力Pcが高圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は小さくなりピストン7のストローク量が減少する。また、制御圧力Pcが一定以上の圧力となると、回転軸5に対して斜板6は略垂直状態、すなわち垂直よりわずかに傾斜した状態となる。このとき、ピストン7のストローク量は最小となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧は最小となる。これにより、吐出室2への流体の吐出量が減少し、空調システムの冷却能力は最小となる。一方で、制御室4内の制御圧力Pcが低圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は大きくなりピストン7のストローク量が増加する。また、制御圧力Pcが一定以下の圧力となると、回転軸5に対して斜板6は最大傾斜角度となる。このとき、ピストン7のストローク量は最大となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧は最大となる。これにより、吐出室2への流体の吐出量が増加し、空調システムの冷却能力は最大となる。
【0022】
図2に示されるように、容量制御弁Vは容量可変型圧縮機Mに組み込まれている。ソレノイド80を構成するコイル86に通電する電流が調整されることで、容量制御弁Vにおける主弁50、副弁55、CS弁57は開閉制御される。これとともに、中間連通路59における吸入圧力Psにより感圧体61が動作されることで、感圧弁53は開閉制御される。これらにより、制御室4内に流入する、または制御室4から流出する流体は制御される。これを利用して制御室4内の制御圧力Pcは可変制御される。
【0023】
本実施例において、主弁50は、主弁体としての主副弁体51と主弁座10aとにより構成されている。主弁座10aはバルブハウジング10における内周面に形成されている。主副弁体51における軸方向左端面51aが主弁座10aに接離することで、主弁50は開閉するようになっている。感圧弁53は、キャップ70と感圧弁座52aとにより構成されている。キャップ70は感圧体61を構成する部材でもある。感圧弁座52aは感圧弁部材52における軸方向左端面に形成されている。キャップ70の軸方向右端における内径側に形成されるシール面70aが感圧弁座52aに接離することで、感圧弁53は開閉するようになっている。副弁55は、主副弁体51と副弁座82aとにより構成されている。副弁座82aは固定鉄心82における開口端面、すなわち軸方向左端面に形成されている。主副弁体51における軸方向右端面51bが副弁座82aに接離することで、副弁55は開閉するようになっている。CS弁57は、CS弁体56とガイド面10eとにより構成されている。ガイド面10eはバルブハウジング10における内周面に形成されている。CS弁体56における外周面56aがガイド面10eに対して軸方向にスライド摺動することで、CS弁体56に設けられる連通孔56f(図3図5参照)は開閉されるようになっている。尚、CS弁57については後段にて詳述する。
【0024】
次いで、容量制御弁Vの構造について説明する。図2に示されるように、容量制御弁Vは、バルブハウジング10と、主副弁体51と、感圧弁部材52と、当接部材54と、CS弁体56と、感圧体61と、ソレノイド80と、から主に構成されている。バルブハウジング10は、金属材料または樹脂材料により形成されている。主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56は、バルブハウジング10内に軸方向に往復動自在に配置されている。感圧体61は、中間連通路59における吸入圧力Psに応じて主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54に軸方向右方への付勢力を付与する。ソレノイド80は、バルブハウジング10に接続され主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56に駆動力を及ぼす。
【0025】
図2に示されるように、ソレノイド80は、ケーシング81と、固定鉄心82と、駆動ロッド83と、可動鉄心84と、コイルスプリング85と、コイル86と、から主に構成されている。ケーシング81は、軸方向左方に開放する開口部81aを有している。固定鉄心82は、略円筒形状に形成されており、ケーシング81における開口部81aに対して軸方向左方から挿入されケーシング81の内径側に固定されている。駆動ロッド83は、固定鉄心82における内径側において軸方向に往復動自在、かつその軸方向左端部が主副弁体51における軸方向右端部と接続固定されている。可動鉄心84は、駆動ロッド83における軸方向右端部に固着されている。コイルスプリング85は、固定鉄心82と可動鉄心84との間に設けられ可動鉄心84を軸方向右方に付勢している。励磁用のコイル86は、固定鉄心82の外側にボビンを介して巻き付けられている。
【0026】
ケーシング81の軸方向左端部における内径側には軸方向右方に凹む凹部81bが形成されている。ケーシング81には、凹部81bに対してバルブハウジング10の軸方向右端部が略密封状に挿嵌・固定されている。
【0027】
固定鉄心82は、鉄やケイ素鋼等の磁性材料である剛体から形成されている。固定鉄心82は、円筒部82bと、フランジ部82dとを備えている。円筒部82bは、軸方向に延び駆動ロッド83が挿通される挿通孔82cが形成されている。フランジ部82dは、円筒部82bにおける軸方向左端部の外周面から外径方向に延びている環状である。また、円筒部82bにおける軸方向左端面には副弁座82aが形成されている。
【0028】
図2に示されるように、バルブハウジング10には、ソレノイド80側から順に、吐出ポートとしてのPdポート12と、吸入ポートとしての第1Psポート13と、制御ポートとしてのPcポート14と、吸入ポートとしての第2Psポート15と、が形成されている。Pdポート12は、容量可変型圧縮機Mにおける吐出室2と連通している。第1Psポート13は容量可変型圧縮機Mにおける吸入室3と連通している。Pcポート14は容量可変型圧縮機Mにおける制御室4と連通している。第2Psポート15は容量可変型圧縮機Mにおける吸入室3と連通している。
【0029】
また、バルブハウジング10は、その軸方向左端部に仕切調整部材11が略密封状に圧入されることにより有底略円筒形状を成している。尚、バルブハウジング10の軸方向における設置位置が調整されることで、仕切調整部材11は、後述するバネとしてのコイルスプリング91の付勢力を調整できるようになっている。
【0030】
バルブハウジング10の内部には、主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56が軸方向に往復動自在に配置されている。バルブハウジング10の第1Psポート13とPdポート12との間における内周面には、主副弁体51の外周面が略密封状態で摺接可能な小径のガイド面10bが形成されている。また、バルブハウジング10における内周面の軸方向左端部には、軸方向断面略ハット形状の環状段部10fが形成されている(図3図5参照)。環状段部10fは、内周面10cと、環状の溝10dと、ガイド面10eとにより形成されている。内周面10cは、バルブハウジング10における軸方向左端面から軸方向右方に延びている。ガイド面10eは、環状の溝10dの軸方向右端から軸方向右方に延びる内周面に形成されている。尚、ガイド面10eは、CS弁体56における外周面56aに摺接する弁座としての機能も有している。また、環状の溝10dの底には前述の第2Psポート15が形成されている。
【0031】
また、バルブハウジング10の内部には、第1弁室20と、第2弁室30と、感圧室40とが形成されている。第1弁室20と、第2弁室30と、感圧室40には、それぞれPdポート12、第1Psポート13、Pcポート14が連通されている。また、第1弁室20には、主副弁体51における軸方向左端面51a側が配置されている。第2弁室30には、主副弁体51における背圧側、すなわち軸方向右端面51b側が配置されている。感圧室40には、感圧体61と共にCS弁体56が配置されている。尚、主副弁体51における外周面と、固定鉄心82における軸方向左端面と、バルブハウジング10におけるガイド面10bよりも軸方向右側の内周面とにより、第2弁室30は画成されている。
【0032】
図2に示されるように、感圧体61は、ベローズコア62と、キャップ70と、から主に構成されている。ベローズコア62にはコイルスプリング63が内蔵されている。キャップ70は円板状であり、ベローズコア62における軸方向右端に設けられている。ベローズコア62における軸方向左端は、仕切調整部材11に固定されている。
【0033】
また、感圧体61は、感圧室40内に配置されている。コイルスプリング63とベローズコア62によりキャップ70を軸方向右方に移動させる付勢力により、キャップ70におけるシール面70aは感圧弁部材52における感圧弁座52aに着座するようになっている。
【0034】
図2および図3に示されるように、主副弁体51は、略円筒形状に構成されている。主副弁体51における軸方向左端部には、感圧弁部材52が接続固定されている。主副弁体51における軸方向右端部には、駆動ロッド83が接続固定されている。これらは共に軸方向に移動するようになっている。尚、主副弁体51における外周面とバルブハウジング10におけるガイド面10bとの間には、径方向に僅かに離間することにより微小な隙間が形成されている。この隙間により、主副弁体51は、バルブハウジング10に対して摺動して軸方向に円滑に相対移動可能となっている。
【0035】
また、主副弁体51および感圧弁部材52の内部には、中空孔が接続されることにより軸方向に亘って貫通する中間連通路59が形成されている。尚、駆動ロッド83における軸方向左端部に形成されている連通孔83aを介して中間連通路59は、第2弁室30と連通可能となっている(図2参照)。尚、説明の便宜上、図示を省略するが、容量可変型圧縮機Mが停止状態で長時間放置されることにより制御室4で高圧となった流体は液化することがある。このような状態において容量可変型圧縮機Mを起動するとともに容量制御弁Vを通電状態とすることにより、容量制御弁Vでは主弁50が閉塞されるとともに副弁55が開放される。さらに中間連通路59における高い吸入圧力Psにより、感圧体61が収縮して感圧弁53は開弁される。これらにより、中間連通路59を介して制御室4の液冷媒は、吸入室3に短時間で排出されるようになっている。
【0036】
図3図5に示されるように、感圧弁部材52は、第1円筒部52bと、フランジ部52cと、第2円筒部52dと、当接部52eと、を有するフランジ付き略円筒形状に構成されている。第1円筒部52bは、主副弁体51における軸方向左端部が接続固定されている。フランジ部52cは、第1円筒部52bにおける軸方向左端部の外周面から外径方向に延びる環状に形成されている。第2円筒部52dは、フランジ部52cの軸方向左側においてフランジ部52cよりも小径に形成され当接部材54における軸方向右端部が接続固定されている。当接部52eは、第2円筒部52dにおける軸方向左側において第2円筒部52dよりも小径に形成されている。また、当接部52eには、感圧体61を構成するキャップ70におけるシール面70aと接離する感圧弁座52aが形成されている。
【0037】
図3図5に示されるように、当接部材54は、略円筒形状に構成されている。また、当接部材54は、感圧体61を構成するキャップ70よりも大径に形成されている。当接部材54における軸方向右端部には、感圧弁部材52における第2円筒部52dが接続固定されている。これにより、主副弁体51、感圧弁部材52は共に軸方向に移動するようになっている。また、当接部材54における軸方向左端面54aは、CS弁体56における軸方向右端部に形成される凹部56cの底面に軸方向に当接している。また、当接部材54における軸方向左端部には、径方向に貫通する貫通孔54bが設けられている。貫通孔54bは、感圧室40において当接部材54の内径側と外径側とを連通している。
【0038】
図3図5に示されるように、CS弁体56は、基部56bと、凹部56cと、延出部56dと、突出部56eと、から段付き円筒形状に構成されている。基部56bは、感圧室40内において感圧体61よりも大径で同心状に配置されており、かつ略円筒形状に形成されている。凹部56cは、基部56bの軸方向右端内径側が軸方向左方に凹む環状に形成されている。延出部56dは、基部56bの軸方向左端における外径側から軸方向左方に延びる略円筒形状に形成されている。突出部56eは、延出部56dにおける軸方向左端部の外周面から外径方向に突出する環状に形成されている。
【0039】
尚、CS弁体56における外周面56a、すなわち基部56bにおける外周面とバルブハウジング10における内周面に形成されるガイド面10eとの間、突出部56eにおける外周面とバルブハウジング10における内周面10cとの間には、径方向に離間することにより微小な隙間がそれぞれ形成されている。これらの隙間により、CS弁体56は、バルブハウジング10に対して摺動して軸方向に円滑に相対移動可能となっている。
【0040】
また、CS弁体56における外周面56a、すなわち基部56bにおける外周面とバルブハウジング10におけるガイド面10eとの間には、クリアランスシールによる密封部Saが形成されている。また、突出部56eにおける外周面とバルブハウジング10における内周面10cとの間には、クリアランスシールによる密封部Sbが形成されている。すなわち、第2Psポート15に対して軸方向両側に密封部Sa,Sbがそれぞれ形成されている。
【0041】
また、CS弁体56には、突出部56eが設けられている。これにより、バルブハウジング10とCS弁体56との間には、環状の空間60が形成されている。空間60は、密封部Sa,Sbにより感圧室40との間をシールされており、第2Psポート15により容量可変型圧縮機Mにおける吸入室3と連通されている。
【0042】
また、CS弁体56における基部56bの軸方向略中央部には、径方向に貫通する複数の連通孔56fが設けられている。複数の連通孔56fは、CS弁体56における内径側と外径側で感圧室40と空間60とを連通可能となっている。連通孔56fは、開口形状が円(図3図5における吹き出し表示部分参照)かつ内径一定の貫通孔により構成されている。これにより、CS弁体56に対する連通孔56fの加工形成を行いやすくなっている。尚、連通孔56fの開口形状は、円に限らず、例えば半円等の円形の一部から形成されてもよく、円形以外、例えば三角形や楕円形に形成されてもよい。
【0043】
また、CS弁体56における軸方向右端に形成される凹部56cの底面には、当接部材54における軸方向左端面54aが軸方向に当接している。尚、凹部56cの内周面における内径は、当接部材54における外径よりも大きく形成されている。これにより、凹部56cにおける内周面から内径側に離間した状態で、当接部材54は凹部56cにおける底面に軸方向にのみ当接している。
【0044】
また、CS弁体56の内側には、軸方向左端部に基部56bと延出部56dとの内径差により凹部56gが形成されている。また、凹部56gには、コイルスプリング91における軸方向右端部が内嵌されている。コイルスプリング91は、感圧体61やCS弁57を構成している。
【0045】
尚、コイルスプリング91における軸方向右端は、凹部56gにおける底面に当接している。コイルスプリング91における軸方向左端は、仕切調整部材11における内径側に形成される凹部11bの底面に当接している。これらにより、コイルスプリング91はCS弁体56をCS弁57の閉弁方向である軸方向右方に付勢している。また、コイルスプリング91は圧縮バネである。
【0046】
また、CS弁体56における軸方向左端、すなわち延出部56dにおける軸方向左端56hは、CS弁57の開弁時において仕切調整部材11における軸方向右端面11aに近接可能となっている(図5参照)。
【0047】
次いで、CS弁57の開閉機構について説明する。図3に示されるように、ソレノイド80への非通電時において主弁50が全開される主副弁体51の開弁位置にある状態において、CS弁体56には、コイルスプリング91により閉弁方向である軸方向右方に付勢力(図3において白矢印で図示)が作用している。このとき、連通孔56fは、バルブハウジング10における環状の溝10dの軸方向右端よりも軸方向右方に離間している。また、凹部56cにおける底面は当接部材54における軸方向左端面54aに当接している。また、CS弁体56における外周面56aは、連通孔56fにおける全周において少なくとも軸方向左側でガイド面10eとクリアランスシールによる密封部Saを形成している。すなわち、密封部Saにより連通孔56fは全閉されている。また、CS弁体56における突出部56eの外周面とバルブハウジング10における内周面10cとの間には、クリアランスシールによる密封部Sbが形成されている。このように、密封部Sa,SbによりCS弁57は全閉となっている。尚、図3図5における吹き出し表示部分には、CS弁体56の内径側から見た連通孔56fの開度、すなわちCS弁57の開度が示されている。また、図3図5における吹き出し表示部分では、CS弁57における密封部Saによる連通孔56fの開口における閉塞部分をドットにより模式的に示している。
【0048】
また、主弁50が開放された状態からソレノイド80に通電されると、主副弁体51は軸方向左方に移動する。図4に示されるように、主副弁体51の左方への移動により、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56は軸方向左方に押圧されて共に移動する。この移動に応じてコイルスプリング91は縮む。これらにより、ストローク位置P(図6参照)に到達するまでは、すなわちCS弁体56における連通孔56fの軸方向左端が環状の溝10dにおける軸方向右端と径方向に重なるストローク位置Pに到達するまでは、CS弁57における密封部Saにより連通孔56fは全閉されている。そして、主副弁体51がストローク位置Pからさらに左方へ移動すると、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56はさらに軸方向左方に押圧されて共に移動する。これに応じてコイルスプリング91はさらに縮む。これらにより、連通孔56fは開放され始める。すなわち、連通孔56fの開口における一部が開放され始める(図4における吹き出し表示部参照)。このとき、主弁50はまだ閉塞されていない。
【0049】
ソレノイド80への通電時における最大通電状態においては、図5に示されるように、主副弁体51はさらに軸方向左方に移動する。これにより、主副弁体51が閉弁位置まで移動し、主副弁体51における軸方向左端面51aが主弁座10aに当接し、主弁50は全閉となる。主副弁体51が閉弁位置にある状態では、CS弁体56における軸方向左端56hが仕切調整部材11の軸方向右端面11aに近接する位置に移動する。すなわちCS弁体56は最も開方向に最大のストローク位置となって、連通孔56fは全開される。このとき、CS弁57における密封部Saにより連通孔56fは、開口における略半分が閉塞されている(図5における吹き出し表示部参照)。
【0050】
次いで、容量制御弁Vの動作について、通電時の最大通電状態(起動時)、非通電時、通常制御時の順に説明する。
【0051】
先ず、通電時における最大通電状態(起動時)について説明する。容量可変型圧縮機Mを使用せずに長時間放置した後、容量可変型圧縮機Mを起動するとともに容量制御弁Vにおけるソレノイド80に通電することにより、容量制御弁Vでは主弁50が全閉され副弁55が全開される。このとき、図5に示されるように、主副弁体51が閉弁位置までストロークすることにより、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56は軸方向左方に共に移動する。そして、CS弁体56における軸方向左端56hが仕切調整部材11の軸方向右端面11aに近接し、連通孔56fは全開となる。これにより、Pcポート14と第2Psポート15とが連通された状態となり、制御室4内の液化した流体は連通孔56fを通して吸入室3内に短時間で排出される。よって、容量制御弁Vは、起動時における容量可変型圧縮機Mの応答性を高めることができる。また、主弁50の全閉時において、CS弁57により連通孔56fが全開されることにより、連通孔56fを通して排出される流体の流量は最大となる。このように、容量制御弁Vは、起動時における容量可変型圧縮機Mの応答性をより高めることができる。さらに、中間連通路59における吸入圧力Psが高いことから、前述したように、感圧弁53は開放される。これにより、容量制御弁Vは、制御圧力Pcを中間連通路59および駆動ロッド83の連通孔83aを通して第2弁室30に迅速にリリースすることができる。これらのように、CS弁57と感圧弁53とにより開放される2つの流路を利用して、制御室4内から液化した流体を吸入室3内に短時間で排出させる容量制御弁Vは、起動時の容量可変型圧縮機Mの応答性を高めることができる。
【0052】
さらに、本実施例の容量制御弁Vは、制御室4が最大容量の状態においても、主弁50を閉塞し、CS弁57により連通孔56fを開放しPcポート14と第2Psポート15とを連通させる。これにより、本実施例の容量制御弁Vは、制御圧力Pcと吸入圧力Psを均圧(同圧)に維持することができる。そのため、制御室4のシリンダ4a内におけるピストン7のストロークは安定する。よって、容量制御弁Vは、制御室4において最大容量の状態を維持させ、容量可変型圧縮機Mの運転効率を高めることができる。
【0053】
次に、非通電時について説明する。非通電時においては、図3に示されるように、主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54は感圧体61の付勢力により軸方向右方へと押圧される。そのため、主弁50は全開となる。これとともに、コイルスプリング91から閉弁方向である軸方向右方に付勢力が作用するCS弁体56は閉弁位置となる。これに伴って、CS弁57における密封部Saにより連通孔56fは全閉される。これらによれば、CS弁57における密封部Saにより連通孔56fは閉塞される。すなわち、Pcポート14を通過する制御流体は第2Psポート15に流入することがない。そのため、容量可変型圧縮機Mを停止して短い時間経過後の再起動時における容量可変型圧縮機Mの制御性が高く、また容量制御弁Vの運転効率が高い。
【0054】
次に、通常制御時について説明する。通常制御時においては、容量制御弁Vのデューティ制御により、主弁50の開度や開放時間は調整される。これにより、容量制御弁Vは、Pdポート12からPcポート14への流体の流量を制御している。容量制御弁Vのデューティ制御において主弁50が僅かに開いた際にも、主副弁体51はストローク位置P(図6参照)よりも開弁位置側にストロークする。これにより、CS弁体56には、コイルスプリング91から閉弁方向である軸方向右方に付勢力が作用する。CS弁57における密封部Saにより連通孔56fは全閉された状態が維持される。このことから、主副弁体51の開弁位置からストローク位置Pまでのストロークにおいて、連通孔56fを通したPcポート14から第2Psポート15への流体の漏れが防止されている。そのため、容量制御弁Vは容量可変型圧縮機Mにおける制御圧力Pcの制御精度を高めることができる。
【0055】
また、主副弁体51がストローク位置P(図6参照)まで移動すると、主副弁体51と共に移動するCS弁体56における連通孔56fの軸方向左端は、環状の溝10dにおける軸方向右端と径方向に重なる。それから、さらに主副弁体51が移動し主弁50が全閉するまでの間に、主弁50は徐々に閉塞されていくとともに、CS弁57により連通孔56fは徐々に開放されていく。これにより、主副弁体51のストローク位置Pから閉弁位置までの間において、主弁50とCS弁57(すなわち連通孔56f)とが共に開放される領域は設定することができる。また、主弁50と連通孔56fとの開口面積のバランスは、主副弁体51のストローク位置に応じて調整可能である。
【0056】
また、主弁50は、主副弁体51のストローク位置に応じて開口面積が比例的に増減する、いわゆるポペット弁構造を成す。CS弁57は主副弁体51のストローク位置に応じて主副弁体51と共に移動するCS弁体56の外周面56aとガイド面10eとが摺接する密封部Saを有する。このように、主弁50とは異なり、CS弁57はスプール弁構造であって、CS弁体56に設けられる連通孔56fにおける開口面積は増減される。そのため、図6に示されるように、連通孔56fは全閉状態から開き始めると略指数関数的に開度が大きくなる。尚、略指数関数的に限らず、連通孔56fの開度はCS弁57による連通孔56fの全閉状態直後の開き始めよりも全開状態直前の全開前において、主副弁体51のストロークに対する連通孔56fの開度の増加率が大きくなるものであることが好ましい(図6参照)。すなわち、主副弁体51がストローク位置P(図6参照)付近をストロークする通常制御時には、CS弁57により主副弁体51のストロークに対する連通孔56fの開度の増加率を小さく抑えることができる。そのため、通常制御時におけるCS弁57は連通孔56fを通したPcポート14から第2Psポート15への流体の漏れを低減することができる。これにより、容量制御弁Vは、容量可変型圧縮機Mにおける制御圧力Pcを低下させる制御の応答性を高めることができる。さらに、主弁50の全閉時にCS弁57により連通孔56fは全開される。これにより、連通孔56fを通して排出される流体の流量は最大となる。そのため、起動時における制御室4からの液冷媒の排出や通常制御時における制御室4の最大容量時において、容量制御弁Vは、制御圧力Pcを速やかに低下させることができる。尚、主弁50の全閉時にCS弁57は全開されなくてもよい。
【0057】
また、連通孔56fの開口形状は、円により形成されている。そのため、連通孔56fの開度は主副弁体51のストロークに応じて緩やかな曲線状に漸増する(図6参照)。これにより、通常制御時における流体の漏れは低減する。加えて、連通孔56fの開口面積は全開状態から素早く小さくなる。
【0058】
また、CS弁体56の軸方向における連通孔56fの形成位置を変更することにより、ストローク位置P(図6参照)は調整される。また、連通孔56fの形状や大きさを変更することにより、主副弁体51のストロークに応じた連通孔56fの開度の増加率や最大開口面積は適宜調整される。
【0059】
また、本実施例では、図5に示されるように、CS弁57による連通孔56fの全開状態において、円により形成される連通孔56fの開口は半分だけ開放される。これにより、容量制御弁Vの制御は主副弁体51のストロークの精度に影響され難い。
【0060】
また、容量制御弁Vでは、主弁50を構成する主副弁体51と、CS弁57を構成するCS弁体56が分離可能な別部材により構成されている。これにより、主副弁体51とCS弁体56は独立して軸心を取ることができるため、互いの動作への影響が抑えられている。このことから、主弁50およびCS弁57の開度は、それぞれ精度良く調整される。
【0061】
また、CS弁体56は、当接部材54における軸方向左端面54aと軸方向のみで当接している。このことから、主副弁体51とCS弁体56との間の軸心の傾きやずれによる互いの動作への影響が抑えられている。
【0062】
また、CS弁体56は、コイルスプリング91によりCS弁57の閉弁方向である軸方向右方に付勢されている。そのため、主弁50を開放させる際にCS弁体56は主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54に追従する。このことからCS弁57は確実に閉塞される。
【0063】
また、CS弁体56は、略円筒形状である。バルブハウジング10の内周には環状段部10fが形成されている。また、環状段部10fの一部はCS弁体56の外周面56aが摺接するガイド面10eを構成している。そのためCS弁57を有する容量制御弁Vは簡素な構造となる。
【0064】
また、ソレノイド80への通電時の最大通電状態においてCS弁57により連通孔56fが全開された状態では、主副弁体51における軸方向左端面51aが主弁座10aに当接して主弁50は全閉される。これにより、連通孔56fの最大開口面積は決定されている。そのため、CS弁57を有する容量制御弁Vは簡素な構造となる。
【0065】
また、容量制御弁Vにおいては、バルブハウジング10の軸方向左側から感圧室40にCS弁体56、コイルスプリング91が挿入された後、バルブハウジング10の軸方向左端部に仕切調整部材11が圧入されて固定される。このような構造であるため、容量制御弁Vの組み立てが簡単である。
【0066】
また、Pcポート14は、第2Psポート15よりもPdポート12に近い位置に配置されている。そのため、容量制御弁Vにおいては、通常制御時に吐出圧力Pdを制御室4に伝えやすい。
【0067】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0068】
例えば、前記実施例では、主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54、CS弁体56が別体に構成される構成について説明したが、これに限らず、例えば主副弁体51と感圧弁部材52が一体に、また当接部材54とCS弁体56が一体に構成されていてもよい。また、主副弁体51、感圧弁部材52、当接部材54およびCS弁体56が全て一体に構成されていてもよい。
【0069】
また、容量可変型圧縮機Mにおける制御室4と吸入室3とを直接連通する連通路および固定オリフィスは設けなくてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、副弁は設けなくともよい。また、主副弁体における軸方向右端は、軸方向の荷重を受ける支持部材として機能すればよく、必ずしも密閉機能は必要ではない。
【0071】
また、バネとしてのコイルスプリング91は、圧縮バネに限らず、引張バネでもよく、コイル形状以外であってもよい。
【0072】
また、感圧体61は、内部にコイルスプリングを使用しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ケーシング
2 吐出室
3 吸入室
4 制御室
10 バルブハウジング
10a 主弁座
10b ガイド面
10c 内周面
10d 溝
10e ガイド面
10f 環状段部
11 仕切調整部材
11a 軸方向右端面
11b 凹部
12 Pdポート(吐出ポート)
13 第1Psポート(吸入ポート)
14 Pcポート(制御ポート)
15 第2Psポート(吸入ポート)
20 第1弁室
30 第2弁室
40 感圧室
50 主弁
51 主副弁体(主弁体)
51a 軸方向左端
51b 軸方向右端
52 感圧弁部材
52a 感圧弁座
52b 円筒部
52c フランジ部
52d 第2円筒部
52e 当接部
53 感圧弁
54 当接部材
55 副弁
56 CS弁体
56a 外周面
56b 基部
56c 凹部
56d 延出部
56e 突出部
56f 連通孔
56g 凹部
56h 軸方向左端
57 CS弁
59 中間連通路
60 空間
61 感圧体
62 ベローズコア
63 コイルスプリング
70 キャップ
70a シール面
80 ソレノイド
82 固定鉄心
82a 副弁座
91 コイルスプリング(バネ)
Pc 制御圧力
Pd 吐出圧力
Ps 吸入圧力
Sa,Sb 密封部
V 容量制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6