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  • -樹脂組成物、硬化物、偏光板、画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、偏光板、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/64 20060101AFI20250225BHJP
   C08F 251/02 20060101ALI20250225BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
C08G18/64 084
C08F251/02
G02B5/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020025302
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130740
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利行
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐治
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-203453(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108003294(CN,A)
【文献】特開平02-004815(JP,A)
【文献】特開2010-044417(JP,A)
【文献】特開2013-167761(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039021(KR,A)
【文献】特開平06-065349(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0076791(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08F、C08L、C08K
G02B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアシレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、架橋剤(C)と、光ラジカル開始剤(D)と、を含有し、
前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、前記セルロースアシレート(A)100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下であり、
前記多官能(メタ)アクリレート(B)はイソシアネート基を含まず、
前記架橋剤(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基の含有量(質量%)は、前記セルロースアシレート(A)の水酸基の含有量(質量%)に対して、0.1倍以上5倍以下であり、
さらに、紫外線吸収剤(E)を含有し、
前記紫外線吸収剤(E)の含有量は、前記セルロースアシレート(A)100質量部に対して、14.9質量部以上25質量部以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記セルロースアシレート(A)は、アセテート、プロピオネートおよびブチレートからなる群から選択される少なくとも1つを有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記光ラジカル開始剤(D)の含有量は、前記セルロースアシレート(A)100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記架橋剤(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基と1個以上のアクリレート基とを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物であって、
波長380nmの光の透過率が10%以下である、硬化物。
【請求項6】
厚さが25μm以下である、請求項5に記載の硬化物。
【請求項7】
偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に設けられた保護層と、を備え、
前記保護層は、請求項5または6に記載の硬化物からなる、偏光板。
【請求項8】
画像表示素子と、該画像表示素子の一方の面および他方の面にそれぞれ設けられた偏光板と、を備え、
前記偏光板は、請求項7に記載の偏光板からなる、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物、偏光板、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置は、偏光板を備える。偏光板は、偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面に設けられた保護層と、を備える。従来、偏光板用の保護層としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性の樹脂フィルム(フィルム基材)と、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられたハードコート層とを有する保護フィルムが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-66365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂フィルムとハードコート層とを有する従来の保護フィルムは、薄くすることに限界がある。そのため、保護フィルムをモバイル端末等に用いる場合、保護フィルムの厚さが大きすぎるという課題があった。また、従来の保護フィルムは、耐擦傷性、耐屈曲性、および偏光子の保護機能を有するようにするために、厚さが大きくなるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明においては、耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として使用可能な硬化物を形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明においては、その樹脂組成物の硬化物、その硬化物を偏光子の保護層として備える偏光板、および、その偏光板を備える画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、セルロースアシレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、架橋剤(C)と、光ラジカル開始剤(D)と、を含有し、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、前記セルロースアシレート(A)100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下である、樹脂組成物が提供される。
【0007】
本観点によれば、耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として使用可能な硬化物を形成することができる。
【0008】
前記架橋剤(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基の含有量は、前記セルロースアシレート(A)の水酸基の含有量に対して、0.1倍以上5倍以下であってもよい。
【0009】
本観点によれば、架橋剤(C)がセルロースアシレート(A)と架橋することができる。
【0010】
前記セルロースアシレート(A)は、R=アセテート、プロピオネートおよびブチリル基からなる群から選択される少なくとも1つを有してもよい。
【0011】
本観点によれば、架橋剤(C)がセルロースアシレート(A)と架橋することができる。
【0012】
前記光ラジカル開始剤(D)の含有量は、前記セルロースアシレート(A)100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であってもよい。
【0013】
本観点によれば、光を照射することにより、多官能(メタ)アクリレート(B)が架橋して、単層で耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として使用可能な硬化物を形成することができる。
【0014】
さらに、紫外線吸収剤(E)を含有してもよい。
【0015】
本観点によれば、紫外線に対する耐久性に優れる硬化物を形成することができる。
【0016】
前記紫外線吸収剤(E)の含有量は、前記セルロースアシレート(A)100質量部に対して、0.1質量部以上25質量部以下であってもよい。
【0017】
本観点によれば、紫外線に対する耐久性に優れる硬化物を形成することができる。
【0018】
前記架橋剤(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基と1個以上のアクリレート基とを有してもよい。
【0019】
本観点によれば、架橋剤(C)がセルロースアシレート(A)および多官能(メタ)アクリレート(B)と架橋することができる。
【0020】
また、本発明の他の観点によれば、本発明の樹脂組成物の硬化物であって、波長380nmの光の透過率が10%以下である、硬化物が提供される。
【0021】
本観点によれば、保護フィルムと同水準の紫外線吸収性を有し、樹脂組成物の硬化物を偏光板の保護膜として用いた場合に、偏光子等への紫外線の入射を抑制することができる。
【0022】
厚さが25μm以下であってもよい。
【0023】
本観点によれば、樹脂組成物の硬化物を偏光板の保護膜として用いた場合に、偏光板の厚さを薄くすることができる。
【0024】
また、本発明の他の観点によれば、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に設けられた保護層と、を備え、前記保護層は、本発明の硬化物からなる、偏光板が提供される。
【0025】
本観点によれば、耐擦傷性および耐屈曲性に優れる偏光板が得られる。
【0026】
また、本発明の他の観点によれば、画像表示素子と、該画像表示素子の一方の面および他方の面にそれぞれ設けられた偏光板と、を備え、前記偏光板は、本発明の偏光板からなる、画像表示装置が提供される。
【0027】
本観点によれば、耐擦傷性および耐屈曲性に優れる画像表示装置が得られる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として使用可能な硬化物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】偏光板の製造方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物について説明する。本実施形態に係る樹脂組成物は、偏光子の少なくとも一方の面に設けられる保護層を形成するために用いられる。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物は、セルロースアシレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、架橋剤(C)と、光ラジカル開始剤(D)と、を含有する。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、セルロースアシレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、架橋剤(C)と、光ラジカル開始剤(D)とを少なくとも含み、これらの成分の混合物である。
【0033】
(セルロースアシレート(A))
セルロースアシレート(A)は、R=アセテート、プロピオネートおよびブチリル基からなる群から選択される少なくとも1つを有することが好ましく、炭素原子数が2~4の範囲内であるアシル基を有することが好ましい。炭素原子数が2~4の範囲内であるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基等が挙げられる。
【0034】
セルロースを構成するβ-1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル基総置換度は、グルコース単位1つあたり、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基の全てがアシル化している割合(100%のアシル化は置換度3)を意味する。
【0035】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert-ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらのなかでも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert-ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2~4である場合)等が特に好ましい。
【0036】
具体的なセルロースアシレートとしては、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、およびセルロースフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
これらのなかもで、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が好ましく、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが特に好ましい。
【0038】
セルロースジアセテートとしては、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%~56.0%の範囲のものが好ましく用いられる。セルロースジアセテートの市販品としては、ダイセル社製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン社製のCa398-3、Ca398-6、Ca398-10、Ca398-30、Ca394-60S等が挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートトの市販品としては、イーストマンケミカルジャパン社製のCAP-504-0.2、CAP-482-0.5、CAP-482-20等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物中の全硬化性化合物に占めるセルロースアシレート(A)の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
(多官能(メタ)アクリレート(B))
多官能(メタ)アクリレート(B)は、光照射によって光重合し、架橋反応をする機能を有する。
【0041】
多官能(メタ)アクリレート(B)としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物であれば特に制限されない。これらのなかでも、2官能以上10官能以下の(メタ)アクリレート等が好ましい。多官能(メタ)アクリレート(B)成分は、例えば、11官能以上のポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等、11官能以上の(メタ)アクリレートであってもよい。
【0042】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジベンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0044】
4官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
5官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
6官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
7官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
8官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
9官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
10官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。
【0052】
また、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を用いてもよい。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に制限されない。例えば、ジイソシアネートと、ポリオールと、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるモノマー、オリゴマー等が挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開2002-265650号公報や、特開2002-355936号公報、特開2002-067238号公報等に記載のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
ジイソシアネートとしては、例えば、TDI、MDI、HDI、IPDI、HMDI等が挙げられる。
【0055】
ポリオールとしては、例えば、ポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールSスピログリコール、カプロラクトン変性ジオール、カーボネートジオール等が挙げられる。
【0056】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0057】
具体的なウレタン(メタ)アクリレートは、特に制限されない。例えば、TDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、IPDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、HDIとペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との付加物、TDIとPETAとの付加物を作り、残ったイソシアナートとドデシルオキシヒドロキシプロピルアクリレートとを反応させた化合物、6,6ナイロンとTDIとの付加物、ペンタエリスリトールとTDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物等が挙げられる。
【0058】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリオールと二塩基酸より合成したポリエステル骨格に残ったヒドロキシ基に、(メタ)アクリル酸を縮合してアクリレートにしたものである。
【0059】
具体的なポリエスエルアクリレートは、特に制限されない。例えば、無水フタル酸/プロピオンオキサイド/アクリル酸の反応物、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール/アクリル酸の反応物、トリメリット酸/ジエチレングリコール/アクリル酸の反応物等が挙げられる。
【0060】
多官能(メタ)アクリレート(B)成分は、水酸基をさらに含有することが好ましい。セルロースアシレート(A)と、架橋剤(C)との重合、架橋反応の際に、セルロースアシレート(A)成分と、多官能(メタ)アクリレート(B)またはその(共)重合体と、架橋剤(C)との重合、架橋反応が進行するからであると推測している。
【0061】
多官能(メタ)アクリレート(B)の水酸基価は、特に制限されないが、100mg・KOH/g以下であることが好ましい。また、多官能(メタ)アクリレート(B)の水酸基価は、50mg・KOH/g以下であることがより好ましい。上記範囲であると、本実施形態の樹脂組成物の硬化物からなる保護層やこれを有する偏光板がより適切なものとなり、耐擦傷性や偏光板の耐久性が良好となる。多官能(メタ)アクリレート(B)またはその(共)重合体と、架橋剤(C)との重合、架橋反応の進行が適度な範囲となり、セルロースアシレート(A)と、架橋剤(C)成分との重合、架橋反応がより良好に進行するからであると推測している。なお、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠した測定により求めることができる。
【0062】
多官能(メタ)アクリレート(B)は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、新中村化学社製のA-TMPT、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、ATM-35E、A-TMMT、A-9550、A-DPH、東亞合成社製のアロニックス(登録商標) M-305、M-402、M-405、大阪有機化学工業社製のビスコート(登録商標)#295、TMPTA、#802,TriPEA等が挙げられる。
【0063】
多官能(メタ)アクリレート(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本実施形態の樹脂組成物において、多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、セルロースアシレート(A)100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下であり、100質量部以上500質量部以下であることが好ましい。多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が100質量部未満では、樹脂組成物の硬化物の耐擦傷性が低下し、湿熱環境に曝すことにより、樹脂組成物の硬化物を保護層として有する偏光板の全光線透過率の変化率および偏光度の変化率が大きくなる。多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が1000質量部を超えると、樹脂組成物の硬化物の密着性、屈曲性が低下する。
【0065】
(架橋剤(C))
架橋剤(C)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましく、1分子中に2個以上のイソシアネート基と1個以上のアクリレート基を有するものがより好ましい。
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する架橋剤としては、セルロースアシレート(A)との間での重合、架橋反応を進行させることができるものであれば特に制限されない。例えば、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびアジリジン系架橋剤、過酸化物等が挙げられる。ここで、過酸化物とは、分子構造内にパーオキサイド構造「-O-O-」を有する化合物を意味する。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を用いる場合は、同じ系統のものを2種以上組み合わせてもよいし、異なる系統のものをそれぞれ1種以上組み合わせてもよい。
【0066】
イソシアネート系架橋剤は、特に制限されず、公知のイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)を用いることができる。イソシアネート基を有する化合物としては、単官能イソシアネートと、多官能イソシアネートとが挙げられる。これらのなかでも、多官能イソシアネートが好ましい。多官能イソシアネートとしては、2官能イソシアネート(2個のイソシアネート基を有する化合物)と、3官能以上のイソシアネート(3個以上のイソシアネート基を有する化合物)とが挙げられる。
【0067】
2官能イソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、これらジイソシアネート類のカルボジイミド変性ジイソシアネート類、またはこれらジイソシアネート類を主鎖末端、側鎖、もしくは側鎖末端に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0068】
脂肪族ジイソシアネート類としては、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等が挙げられる。
【0069】
脂環式ジイソシアネート類としては、例えば、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6-XDI(水添XDI)、H12-MDI(水添MDI)等が挙げられる。
【0070】
芳香族ジイソシアネート類としては、例えば、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。
【0071】
3官能以上のイソシアネートとしては、上記2官能イソシアネートを重縮合してイソシアヌレート変性させたイソシアヌレート体、上記2官能イソシアネートをアダクト変性させたアダクト体、上記2官能イソシアネートとグリセリンやトリメチロールプロパン等の三価アルコールをビウレット変性させたビウレット体、上記2官能イソシアネート、またはそのアダクト体、ビウレット体もしくはイソシアヌレート体を主鎖末端、側鎖、もしくは側鎖末端に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0072】
カルボジイミド系架橋剤は、特に制限されず、公知のカルボジイミド化合物を用いることができる。カルボジイミド化合物は、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミド等が挙げられる。脱炭酸縮合反応に供されるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、これらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0073】
オキサゾリン系架橋剤は、特に制限されず、公知のオキサゾリン化合物を用いることができる。オキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。オキサゾリン化合物としては、具体的には、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、オキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマー等が挙げられる。ここで、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマーとしては、例えば、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマー等が挙げられる。また、オキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーとしては、例えば、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマー等が挙げられる。
なお、オキサゾリン基としては、例えば、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、4-オキサゾリン基等が挙げられる。
【0074】
エポキシ系架橋剤は、特に制限されず、公知のエポキシ化合物を用いることができる。エポキシ化合物としては、例えば、液状エポキシ化合物等が挙げられる。液状エポキシ化合物は、粘着剤組成物を製造する際の混合操作が容易になる点で好ましい。
【0075】
アジリジン系架橋剤は、特に制限されず、公知のアジリジン化合物を用いることができる。アジリジン化合物としては、例えば、アジリジン環を複数有する多官能アジリジン化合物が挙げられる。多官能アジリジン化合物としては、例えば、米国特許第3,225,013号明細書、米国特許第4,490,505号明細書、および米国特許第5,534,391号明細書、特開2003-104970号公報に開示された化合物等が挙げられる。多官能アジリジン化合物としては、三官能アジリジン化合物(アジリジン環を3つ有する化合物)を好適に用いることができる。三官能アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス[3-アジリジニルプロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(2-メチル-アジリジニル)-プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[2-アジリジニルブチレート]、ペンタエリスリトールトリス-3-(1-アジリジニルプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス-3-(1-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0076】
過酸化物としては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。過酸化物は、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(別名:ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、ビス-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ビス-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ビス(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド(過酸化ベンゾイル)、t-ブチルパーオキシブチレート等が挙げられる。
【0077】
これらの中でも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0078】
イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)もしくはペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、これらのアダクト体、ビウレット体もしくはイソシアヌレート体、またはこれらを主鎖末端、側鎖、もしくは側鎖末端に有する高分子化合物が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)もしくはペンタメチレンジイソシアネート(PDI)のアダクト体もしくはイソシアヌレート体がより好ましい。または、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)もしくはペンタメチレンジイソシアネート(PDI)とジオールとの縮合反応で得られた高分子化合物がより好ましい。ここで、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)としては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネート架橋剤によれば、(A)成分との間での重合、架橋反応の進行をより効率的に行うことができる。
【0079】
架橋剤(C)は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、イソシアネート系架橋剤では、例えば、BASF社製のLaromerPR9000、東ソー社製のコロネート(登録商標)L(例えば、L-45E等)、HL、HX、2030、2031、三井化学社製のタケネート(登録商標)D-102、D-110N、D-200、D-202、旭化成ケミカルズ社製のデュラネート(登録商標)24A-100、TPA-100、TKA-100、P301-75E、E402-80B、E402-90T、E405-80T、TSE-100、D-101、D-201、住化バイエルウレタン社のスミジュール(登録商標)N-75、N-3200、N-3300、三井化学社製のスタビオ(登録商標)D-370N、D-376N、日本曹達社製のNISSO-PB(登録商標)TP1001等が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤では、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09等が挙げられる。オキサゾリン系架橋剤では、例えば、日本触媒社製のエポクロス(登録商標)WS-300、WS-500、WS-700、K-1000シリーズ、K-2000シリーズ等が挙げられる。エポキシ系架橋剤では、例えば、三菱ガス化学社製のTETRAD-C、TETRAD-X、ADEKA社製のアデカレジンEPUシリーズ、EPRシリーズ、ダイセル社製のセロキサイドシリーズ等が挙げられる。アジリジン系架橋剤では、例えば、日本触媒社製のケミタイト(登録商標)PZ-33、DZ-22E等が挙げられる。過酸化物では、例えば、日油社製のパークミル(登録商標)ND、パーロイル(登録商標)IB、NPP、IPP、SBP、TCP、OPP、355、L、SA、パーオクタ(登録商標)ND、O、パーヘキシル(登録商標)ND、PV、O、I、パーブチル(登録商標)ND、NHP、PV、O、L、I、A、パーヘキサ(登録商標)25O、MC、TMH、HC、C、25Z、22、ナイパー(登録商標)PMB、BMT、BW、BMT-K40、BMT-M、パーテトラ(登録商標)A等が挙げられる。
【0080】
架橋剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
架橋剤(C)のイソシアネート基の含有量(質量%)は、セルロースアシレート(A)の水酸基の含有量(質量%)に対して、0.1倍以上5倍以下であることが好ましく、0.5倍以上5倍以下であることがより好ましい。イソシアネート基の含有量が、セルロースアシレート(A)の水酸基の含有量に対して、0.1倍以上であれば、架橋効果が得られ、樹脂組成物の硬化物の耐久性や耐擦傷性が向上する。イソシアネート基の含有量が、セルロースアシレート(A)の水酸基の量に対して、5倍以下であれば、樹脂組成物に含まれる樹脂液の安定性が得られる。
水酸基の含有量は、下記の式(1)で求められる。
水酸基の含有量=(17/水酸基当量)×100 (1)
上記の式(1)において、17は水酸基の1molの質量を表す。
また、水酸基当量は、水酸基1個当たりの分子量であり、下記の式(2)で求められる。
水酸基当量=(56.1×1000)/水酸基価 (2)
上記の式(2)において、56.1はKOHの分子量を表す。
イソシアネート基の含有量は、下記の式(3)で求められる。
イソシアネート基の含有量=(42/アミン当量)×100 (3)
上記の式(3)において、42はイソシアネート基の1molの質量を表す。アミン当量は、イソシアネート基1個当たりの分子量を表す。
【0082】
(光ラジカル開始剤(D))
光ラジカル開始剤(D)としては、特に制限されず、公知のものが用いられる。光ラジカル開始剤(D)としては、例えば、アセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、アンスラキノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。また、その他、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等も挙げられる。
【0083】
アセトフェノン化合物としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
【0084】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物等が挙げられる。
【0085】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0086】
チオキサントン化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0087】
アンスラキノン化合物としては、例えば、4,4’-ジメチルアミノチオキサントン(別名=ミネラーズケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、2-エチルアンスラキノン等が挙げられる。
【0088】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0089】
アクリル化ベンゾフェノンとしては、例えば、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0090】
光ラジカル開始剤(D)は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、IGM RESINS社製のOmnirad(登録商標)127、184、369、651、819、907、1173、TPO H、DKSHジャパン株式会社製のエザキュア(登録商標)KIP150、TZT、日本化薬株式会社製のKAYACURE(登録商標)BMS、DMBI等が挙げられる。
これらの光ラジカル開始剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
本実施形態の樹脂組成物において、光ラジカル開始剤(D)の含有量は、セルロースアシレート(A)100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく5質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。光ラジカル開始剤(D)の含有量が0.1質量部以上であれば、樹脂組成物が十分に硬化する。光ラジカル開始剤(D)の含有量が50質量部以下であれば、樹脂組成物の硬化物は耐擦傷性に優れる。
【0092】
(紫外線吸収剤(E))
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤(E)を含有していてもよい。
紫外線吸収剤(E)としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-(tert-ペンチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2,2-ビス{[2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル-ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルへキシル、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)-フェノール、オクタベンゾン、2,2’ -ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-エチルへキシル-4-メトキシシンナマート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられ、例えば、アデカスタブ LA-31、アデカスタブ LA-32、アデカスタブ LA-36、アデカスタブ LA-29、アデカスタブ LA-46、アデカスタブ LA-F70、アデカスタブ 1413(以上、ADEKA社製)、Tinuvin P、Tinuvin 234、Tinuvin 326、Tinuvin 328、Tinuvin 329、Tinuvin 360、Tinuvin 213、Tinuvin 571、Uvinul 3030、Uvinul 3035、Uvinul 3039、Tinuvin B 75、Tinuvin PUR 866、Tinuvin 1577 ED、Chimassorb 81、Uvinul 3049、Uvinul 3050、Uvinul 3088、Tinuvin 20(以上、BASF社製)等の市販品を使用することができる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物において、紫外線吸収剤(E)の含有量は、セルロースアシレート(A)100質量部に対して、0.1質量部以上35質量部以下であることが好ましい。紫外線吸収剤(E)の含有量が0.1質量部以上であれば、樹脂組成物の硬化物は紫外線により劣化し難くなる。紫外線吸収剤(E)の含有量が35質量部以下であれば、樹脂組成物の硬化物は耐擦傷性に優れる。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分の他に、レベリング剤、消泡剤等を含有してもよい。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物は、セルロースアシレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、架橋剤(C)と、光ラジカル開始剤(D)と、必要に応じて、紫外線吸収剤(E)と、溶剤とを、所定量加えて、撹拌、混合することにより得られる。
【0096】
以上説明した本実施形態に係る樹脂組成物においては、セルロースアシレート(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、架橋剤(C)と、光ラジカル開始剤(D)と、を含有する。従って、耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として使用可能な硬化物を形成することができる。
【0097】
[硬化物]
本発明の一実施形態に係る硬化物について説明する。
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物である。
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物を対象物(被塗工物)の表面に塗工した後、その樹脂組成物を硬化させることにより得られる。
【0098】
樹脂組成物の塗工方法としては、特に限定されず、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、グラビアコーター等が用いられる。樹脂組成物を塗工する際には、溶剤を用いて樹脂組成物の粘度を調整してもよい。
【0099】
樹脂組成物からなる塗膜は、活性エネルギー線を照射することにより硬化し、保護膜が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられる。これらの中でも、紫外線を用いることが好ましい。紫外線の発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0100】
本実施形態の硬化物は、波長380nmの光の透過率が10%以下であり、6%以下であることが好ましい。波長380nmの光の透過率が10%以下であれば、保護フィルムと同水準の紫外線吸収性を有し、樹脂組成物の硬化物を偏光板の保護膜として用いた場合に、偏光子等への紫外線の入射を抑制することができる。
硬化物の波長380nmの光の透過率を、次のように測定する。剥離フィルム上に形成した樹脂組成物の硬化物を、剥離フィルムから剥離して、その硬化物単層の分光透過率を測定する。このとき、硬化物の厚さを15μmとする。硬化物の分光透過率の測定には、例えば、紫外可視分光光度計(型式:UV-2550、島津製作所社製)を用いる。
【0101】
硬化物の厚さは、25μm以下であることが好ましい。硬化物の厚さが25μm以下であれば、樹脂組成物の硬化物を偏光板の保護膜として用いた場合に、偏光板の厚さを薄くすることができる。
【0102】
以上説明した本実施形態に係る硬化物においては、本実施形態の樹脂組成物の硬化物であり、波長380nmの光の透過率が10%以下である。従って、耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として使用可能な硬化物を形成することができる。
【0103】
[偏光板]
本発明の一実施形態に係る偏光板について説明する。
本実施形態の偏光板は、偏光子と、その偏光子の少なくとも一方の面に設けられた保護層と、を備え、保護層が本実施形態の硬化物からなる。すなわち、本実施形態の偏光板は、偏光子と保護層とを有する積層体である。
【0104】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを染色し、延伸したものが挙げられる。
【0105】
保護層の厚さは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。なお、保護層が偏光子の一方の面に設けられている場合も、保護層が偏光子の両面に設けられている場合も、保護層の厚さは前記の範囲内であることが好ましい。保護層の厚さは、25μm以下であれば、偏光板は耐屈曲性に優れる。また、偏光子の保護層としての機能(耐久性等)を考慮すると、保護層の厚さは5μm以上であることが好ましい。
【0106】
偏光子の少なくとも一方の面に、保護層を形成する方法としては、上記の本実施形態の樹脂組成物からなる硬化物の形成方法と同様の方法が用いられる。
【0107】
本実施形態に係る偏光板においては、偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面に設けられた保護層と、を備え、保護層が本実施形態の硬化物からなる。従って、耐擦傷性および耐屈曲性に優れる偏光板が得られる。
【0108】
[画像表示装置]
本発明の一実施形態に係る画像表示装置について説明する。
本実施形態の画像表示装置は、画像表示素子と、その画像表示素子の一方の面および他方の面にそれぞれ設けられた偏光板と、を備え、偏光板が本実施形態の偏光板からなる。
【0109】
本実施形態の画像表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD)等が挙げられる。画像表示素子としては、例えば、液晶表示素子、有機EL素子等が挙げられる。
【0110】
本実施形態に係る画像表示装置においては、画像表示素子と、その画像表示素子の一方の面および他方の面にそれぞれ設けられた偏光板と、を備え、偏光板が本実施形態の偏光板からなる。従って、耐擦傷性および耐屈曲性に優れる画像表示装置が得られる。
【実施例
【0111】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0112】
[合成例]
酢酸セルロース(商品名:L-20、ダイセル化学工業社製)を減圧乾燥器で乾燥して、酢酸セルロース中の水分量を0.8質量%とした。乾燥した酢酸セルロース水酸基価は、97.2mgKOH/gであった。
乾燥した酢酸セルロース100質量部を、濃度が10質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解して、酢酸セルロースのメチルエチルケトン溶液を調製した。
そのメチルエチルケトン溶液を70℃に昇温した。
メチルエチルケトン溶液の温度が70℃に到達した後、メチルエチルケトン溶液にイソシアネートアクリレート(2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、商品名:AOI-VM、昭和電工社製)を13.1質量部添加した。
メチルエチルケトン溶液にイソシアネートアクリレートを添加して2時間後に、さらに、メチルエチルケトン溶液とイソシアネートアクリレートの混合物に、ジラウリン酸ジブチルスズ0.15質量部を添加して、撹拌し、反応を継続した。
その後、熟成を行い、イソシアネート濃度が0.1質量%以下となった時点で、反応液を室温まで冷却し、酢酸セルロースの水酸基がアクリロイル基を含む基で置換されたセルロース誘導体を含む溶液を得た。
【0113】
[実施例1]
(樹脂組成物の作製)
表1に示すように、セルロースポリマー(セルロースアセテートプロピオネート、商品名:CAP-504-02、Eastman社製)100質量部と、架橋剤(商品名:デュラネート(登録商標)24A-100、旭化成社製)26.2質量部と、多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、商品名:A9550、新中村化学工業社製)100質量部と、光ラジカル開始剤(2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社製))10質量部と、を混合して、実施例1の樹脂組成物を得た。
【0114】
(硬化物の作製)
実施例1の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.5倍であった。
実施例1の樹脂組成物を、固形分濃度が40質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、その希釈液を、アプリケーターでPETフィルム(商品名:剥離PET SP3030、東洋クロス社製)の一面に、実施例1の樹脂組成物を塗工し、120℃にて5分間乾燥して、PETフィルムの一面に塗膜を形成した。
次いで、その塗膜に小型UV照射機(型式名:ECS-401GX、メタルハライドランプ、アイグラフィック株式会社製)にて積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射し、PETフィルムの一面に、実施例1の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0115】
(偏光子の作製)
平均重合度2400、けん化度99.9%のポリビニルアルコールからなる、厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを、28℃の温水中に90秒間浸漬し、膨潤させた。
次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(質量比2/3)の濃度0.6質量%の水溶液に、膨潤させたポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、2.1倍に延伸させながら、ポリビニルアルコールフィルムを染色した。
その後、60℃のホウ酸エステル水溶液中で合計の延伸倍率が5.8倍となるように、ポリビニルアルコールフィルムを延伸した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムを水洗した後、45℃にて3分間乾燥し、偏光子(厚さ12μm)を得た。
【0116】
(接着剤組成物の調製)
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂(商品名:ゴーセファイマー(登録商標)ZZ-200、日本合成化学工業社製)を、固形分濃度が3質量%となるように水で希釈して水溶液を調製した。
その水溶液に、有効成分10質量%に調整した硬化剤(商品名:セーフリンカーSPM-01、日本合成化学工業社製)を混合し、接着剤組成物溶液を得た。
得られた接着剤組成物溶液では、硬化剤の含有量が、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、5質量部であった。
【0117】
(偏光板の作製)
図1に示すように、偏光板を作製した。図1は、偏光板の製造方法の一例を示す模式図である。図1に示す矢印は、フィルムの移動方向を示す。
図1に示すように、保護層付き剥離フィルム10とトリアセチルセルロース(TAC)フィルム20の間に、偏光子30を挟み、偏光子30の両面(保護層付き剥離フィルム10と対向する面30aおよびTACフィルム20と対向する面30b)に、スポイトで接着剤組成物溶液40を適量滴下した。なお、保護層付き剥離フィルム10としては、剥離フィルムと、剥離フィルムの一方の面に形成され、実施例1の樹脂組成物の硬化物からなる保護層とを有するものを用いた。
続いて、一対のローラー100,100で、保護層付き剥離フィルム10、TACフィルム20、偏光子30および接着剤組成物溶液40の積層物を挟み込み、接着剤組成物溶液40を介して保護層付き剥離フィルム10と偏光子30を貼り合わせるとともに、TACフィルム20と偏光子30を貼り合わせて、乾燥前偏光板50を得た。
保護層付き剥離フィルム10の偏光子30と対向する面10aには、コロナ処理が施されている。なお、保護層付き剥離フィルム10の面10aは、保護層側の面である。TACフィルム20の偏光子30と対向する面20aには、鹸化処理が施されている。
得られた乾燥前偏光板50を、70℃にて5分間乾燥し、保護層付き剥離フィルム10、接着層、偏光子30、接着層およびTACフィルム20がこの順で積層された偏光板を得た。
【0118】
[実施例2]
各成分の配合量を表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の樹脂組成物を調製した。
実施例2の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.1倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例2の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0119】
[実施例3]
各成分の配合量を表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の樹脂組成物を調製した。
実施例3の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.5倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例3の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0120】
[実施例4]
多官能アクリレートとして、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(商品名:A9550、新中村化学工業社製)と10官能脂肪酸ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製)を用い、各成分の配合量を表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の樹脂組成物を調製した。
実施例4の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.7倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例4の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0121】
[実施例5]
セルロースポリマーとして、セルロースアセテート(商品名:CA-398-3、Eastman社製)を用い、多官能アクリレートとして、トリメチルプロパンアクリレート(商品名:ビスコート♯295、大阪有機化学工業社製)を用い、各成分の配合量を表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の樹脂組成物を調製した。
実施例5の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.3倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例5の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0122】
[実施例6]
各成分の配合量を表1に示すようにしたこと以外は実施例5と同様にして、実施例6の樹脂組成物を調製した。
実施例6の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.5倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例6の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0123】
[実施例7]
各成分の配合量を表1に示すようにしたこと以外は実施例5と同様にして、実施例7の樹脂組成物を調製した。
実施例7の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.7倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例7の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0124】
[実施例8]
架橋剤として、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)と1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)との重合物(商品名:Laromer PR9000、BASF社製)を用い、光ラジカル開始剤として、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社製)と2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.社製)を用い、さらに、紫外線吸収剤(商品名:Uvinul(登録商標)3050、BASF社製)を添加し、各成分の配合量を表2に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の樹脂組成物を調製した。
実施例8の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.7倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例8の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0125】
[実施例9]
多官能アクリレートとして、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(商品名:A9550、新中村化学工業社製)とトリメチルプロパンアクリレート(商品名:ビスコート♯295、大阪有機化学工業社製)を用い、各成分の配合量を表2に示すようにしたこと以外は実施例8と同様にして、実施例9の樹脂組成物を調製した。
実施例9の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は1.0倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例9の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0126】
[実施例10]
架橋剤として、旭化成社製のデュラネート(登録商標)24A-100を用い、各成分の配合量を表2に示すようにしたこと以外は実施例9と同様にして、実施例10の樹脂組成物を調製した。
実施例10の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は1.0倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例10の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0127】
[実施例11]
多官能アクリレートとして、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(商品名:A9550、新中村化学工業社製)とトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:A-DCP、新中村化学工業社製)と10官能脂肪酸ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製)を用い、各成分の配合量を表2に示すようにしたこと以外は実施例8と同様にして、実施例11の樹脂組成物を調製した。
実施例11の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.5倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例11の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0128】
[実施例12]
各成分の配合量を表2に示すようにしたこと以外は実施例8と同様にして、実施例12の樹脂組成物を調製した。
実施例12の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は1.5倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例12の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0129】
[実施例13]
各成分の配合量を表2に示すようにしたこと以外は実施例8と同様にして、実施例13の樹脂組成物を調製した。
実施例13の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は3.0倍であった。
また、実施例1と同様にして、実施例13の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0130】
[比較例1]
架橋剤を添加せずに、各成分の配合量を表3に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の樹脂組成物を調製した。
比較例1の樹脂組成物では、架橋剤を用いなかった。
また、実施例1と同様にして、比較例1の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0132】
[比較例3]
架橋剤を添加せずに、各成分の配合量を表3に示すようにしたこと以外は実施例5と同様にして、比較例3の樹脂組成物を調製した。
比較例3の樹脂組成物では、架橋剤を用いなかった。
また、実施例1と同様にして、比較例3の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0134】
[比較例5]
表1に示すように、合成例で得られたセルロース誘導体100質量部と、光ラジカル開始剤(2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社製))5質量部と、を混合して、比較例5の樹脂組成物を調製した。
比較例5の樹脂組成物では、架橋剤を用いなかった。
また、実施例1と同様にして、比較例5の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0135】
[比較例6]
各成分の配合量を表3に示すようにしたこと以外は実施例12と同様にして、比較例6の樹脂組成物を調製した。
比較例6の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.7倍であった。
また、実施例1と同様にして、比較例6の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0136】
[比較例7]
各成分の配合量を表3に示すようにしたこと以外は実施例9と同様にして、比較例7の樹脂組成物を調製した。
比較例7の樹脂組成物において、セルロースポリマーの水酸基の含有量(質量%)に対する架橋剤のイソシアネート基の含有量(質量%)は0.7倍であった。
また、実施例1と同様にして、比較例7の樹脂組成物からなる厚さ15μmの硬化物(硬化膜)を形成した。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表1】
【0140】
[評価]
(波長380nmの光の透過率、全光線透過率および偏光度)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
その後、感圧接着剤を介して、TACフィルム側をガラスに貼着した。
ガラスに貼着した偏光板から剥離フィルムを剥がして、紫外可視分光光度計(型式:UV-2550、島津製作所社製)により、偏光板(保護層、偏光子、接着層およびTACフィルムの積層体)について、全光線透過率および偏光度を測定した。また、保護層付き剥離フィルムから、剥離フィルムを剥がして、上記と同様にして、保護層(硬化膜)の波長380nmの光の透過率を測定した。結果を表4~表6に示す。
【0141】
(ヘイズ)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
その後、感圧接着剤を介して、TACフィルム側をガラスに貼着した。
ガラスに貼着した偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がして、ヘーズメーター(型式名:NDH-5000W、日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136:2000「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に準拠して、偏光板(保護層、偏光子、接着層およびTACフィルムの積層体)のヘイズを測定した。結果を表4~表6に示す。
【0142】
(鉛筆硬度)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がして、室温(25℃)にて、引掻塗膜硬さ計(型式名:AD-3110、上島製作所社製)を用いて、JIS K5400-1900「塗料一般試験方法」に準拠して、偏光板(偏光子、接着層およびTACフィルムの積層体)の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定時の荷重は500gであった。結果を表4~表6に示す。
【0143】
(耐擦傷性)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
その後、感圧接着剤を介して、TACフィルム側をガラスに貼着した。
ガラスに貼着した偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がした。
露出した面(偏光板の保護層(樹脂組成物からなる面)の表面)を、スチールウール♯0000番(商品名:ボンスター、日本スチールウール社製)を用い、300gの荷重を加ながら、速度120mm/秒で10往復擦った。
傷が2本以下の場合「◎」、傷が3本以上5本以下の場合「○」、傷が6本以上10本以下の場合「△」、傷が11本の場合「×」と評価した。傷が5本以下の場合(「◎」または「○」の場合)を合格とした。結果を表4~表6に示す。
【0144】
(密着性)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
その後、感圧接着剤を介して、TACフィルム側をガラスに貼着した。
ガラスに貼着した偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がした。
露出した面(偏光子の保護層(樹脂組成物からなる面)の表面)に、カッターナイフで1mm角の碁盤目を100個刻み、その碁盤目にセロハンテープを貼着した。
その後、偏光板からセロハンテープを引き剥がし、剥がれずに残った碁盤目部分の保護層の数を数えた。
剥がれずに残った碁盤目部分の保護層が100個中90個以上の場合を合格とし、密着性に優れると判断した。結果を表4~表6に示す。
【0145】
(マンドレル試験)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がした。
屈曲性試験機(上島製作所社製)を用いて、室温にて、保護層付き剥離フィルムを剥がした偏光板(接着層、偏光子の積層体)を、保護層側を外側にして1回折り曲げて平面状に戻すマンドレル試験を行った。マンドレル試験は、JIS K 5400-1900「塗料一般試験方法」に準拠した。
マンドレル試験後に、保護層におけるクラックの有無確認した。クラックがない場合「○」、クラックがある場合「×」と評価した。結果を表4~表6に示す。
【0146】
(耐湿熱試験)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
その後、感圧接着剤を介して、TACフィルム側をガラスに貼着した。
ガラスに貼着した偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がした。
保護層付き剥離フィルムを剥がした偏光板を、恒温恒湿機(型式名:LH-113、エスペック社製)内にて、温度60℃、湿度95%の環境下で500時間保管した。
【0147】
(全光線透過率、偏光度およびbの変化量)
紫外可視分光光度計(型式:UV-2550、島津製作所社製)により、耐湿熱試験後の実施例1~実施例13および比較例1~比較例7の偏光板について、全光線透過率、偏光度およびL表色系のbを測定した。耐湿熱試験後の測定値から耐湿熱試験前の測定値を引いた値(変化量)を表4~表6に示す。全光線透過率の変化量が±3%以内、偏光度の変化量が±3%以内、bの変化量が3.5以内であれば、耐湿熱に優れると判断した。結果を表4~表6に示す。
【0148】
(外観)
耐湿熱試験後の偏光板を目視にて観察し、感圧接着剤の浮きがなく、偏光子にクラックがなく、保護層の剥がれがない場合を「○」と評価した。感圧接着剤の浮きがあり、偏光子にクラックがあり、保護層の剥がれがある場合を「×」と評価した。結果を表4~表6に示す。
【0149】
(耐熱試験)
実施例1~実施例13および比較例1~比較例7で得られた偏光板を、トムソン刃で50mm×50mmの大きさに裁断した。
その後、感圧接着剤を介して、TACフィルム側をガラスに貼着した。
ガラスに貼着した偏光板から保護層付き剥離フィルムを剥がした。
保護層付き剥離フィルムを剥がした偏光板を、恒温層(型式名:DKN602、ヤマト科学社製)内にて、温度85℃の環境下で500時間保管した。
【0150】
(全光線透過率、偏光度およびbの変化量)
紫外可視分光光度計(型式:UV-2550、島津製作所社製)により、耐熱試験後の実施例1~実施例13および比較例1~比較例7の偏光板について、全光線透過率、偏光度およびL表色系のbを測定した。耐熱試験後の測定値から耐熱試験前の測定値を引いた値(変化量)を表4~表6に示す。全光線透過率の変化量が±3%以内、偏光度の変化量が±3%以内、bの変化量が3.5以内であれば、耐熱に優れると判断した。結果を表4~表6に示す。
【0151】
(外観)
耐熱試験後の偏光板を目視にて観察し、感圧接着剤の浮きがなく、偏光子にクラックがなく、保護層の剥がれがない場合を「○」と評価した。感圧接着剤の浮きがあり、偏光子にクラックがあり、保護層の剥がれがある場合を「×」と評価した。結果を表4~表6に示す。
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
【表2】
【0155】
表4~表6の結果から、実施例1~実施例13の樹脂組成物の硬化物は、耐擦傷性および耐屈曲性に優れ、偏光子の保護層として十分に使用可能である。また、その硬化物を保護層として備えた偏光板は、高温、高湿の環境下または高温の環境下に曝されても、全光線透過率、偏光度、b*等の変化量が小さく、耐久性に優れる。
【0156】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0157】
10 保護層付き剥離フィルム
20 トリアセチルセルロース(TAC)フィルム
30 偏光子
40 接着剤組成物溶液
50 乾燥前偏光板
100 ローラー
図1