(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】多孔質内植材料を用いた歯科インプラント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20250225BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020209946
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-11-08
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511039728
【氏名又は名称】スメド-ティーエイ/ティーディー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クレゴリー シー. スタルカップ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ ディーツェル
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0196371(US,A1)
【文献】特表2015-519935(JP,A)
【文献】特表2012-517246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科インプラントであって、
複数の外面および内部に形成されたプラグ開口を有する基礎
と、
前記プラグ開口内に挿入されるプラグアセンブリ
と、
前記基礎の前記外面のうちの少なくとも1つに関連付けられた、多孔質内植材料の少なくとも1つの領域
と、
前記基礎の周面と該周面に対応する前記多孔質内植材料の領域との間に配置された穿孔スリーブと、
を有する、歯科インプラント。
【請求項2】
前記プラグアセンブリは、該プラグアセンブリに取り付けられた置換歯を有するように構成されている、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項3】
前記穿孔スリーブは、前記基礎にプレス嵌めされている、請求項
1または2記載の歯科インプラント。
【請求項4】
前記基礎は、内部に形成されたリザーバを有しており、該リザーバは、内部に流体を保持するように構成されている、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項5】
前記基礎は、該基礎に形成された少なくとも1つの流体送り溝を有しており、該流体送り溝は、前記リザーバと流体接続している、請求項
4記載の歯科インプラント。
【請求項6】
前記内植材料の少なくとも1つの領域に関連付けられた少なくとも1つの前記外面は、該外面に形成されて前記リザーバ中に延びる貫通孔を有している、請求項
4記載の歯科インプラント。
【請求項7】
前記基礎は
、非多孔質の材料を有している、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項8】
前記内植材料の少なくとも1つの領域は、50%~70%の多孔率を有する内植材料を有している、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項9】
前記内植材料は、チタンまたはポリエーテルエーテルケトンを含む、請求項
8記載の歯科インプラント。
【請求項10】
前記内植材料の第1の領域と前記内植材料の第2の領域とは、同じ前記外面に関連付けられており、前記内植材料の前記第1の領域は第1の内植材料を有しており、前記内植材料の前記第2の領域は、前記第1の内植材料とは異なる第2の内植材料を有している、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項11】
前記第1の内植材料は第1の多孔率を有しており、前記第2の内植材料は、前記第1の多孔率とは異なる第2の多孔率を有している、請求項
10記載の歯科インプラント。
【請求項12】
前記内植材料の前記第1の領域は、前記基礎と前記内植材料の前記第2の領域との間に挟まれており、前記第1の多孔率は前記第2の多孔率よりも低い、請求項
11記載の歯科インプラント。
【請求項13】
前記基礎は、円形の横断面を有している、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項14】
前記基礎は、楕円形の横断面を有している、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項15】
前記基礎は、歯肉組織中に当該歯科インプラントを固定する固定手段を受容するように構成された少なくとも1つの固定用開口を有している、請求項1記載の歯科インプラント。
【請求項16】
前記少なくとも1つの固定用開口は被覆されていない、請求項
15記載の歯科インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月19日付けで出願された「多孔質内植材料を用いた歯科インプラント」と題された米国特許仮出願第62950396号明細書に基づく非仮出願である。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本開示は、歯科インプラント、より詳細には、植込み後の安定的な固定を促進する特徴が組み込まれた歯科インプラントに関する。
【0003】
2.関連技術の説明
歯科インプラントは、患者の口内の欠損領域を治療するために使用され得る、ということが知られている。周知の歯科インプラントは、置換歯が基礎部分に取り付けられる前に口内に固定される、基礎部分を有している。置換歯を基礎部分に取り付けることができるようになる前に、基礎部分は口内に不動かつ安定的に固定されねばならない。多くの場合、基礎部分は、例えば顎骨の組織等の固形組織中に螺入される固定ねじを用いて口内に固定される。この固定は患者にとって痛いだけでなく、このような固定は、歯科インプラントを所定の位置に保持するために必ずしも十分ではなく、修正手術および追加的な痛みおよび患者の回復時間を要する。
【0004】
当該技術において必要とされているのは、患者の口内の欠損領域を治療するための確実な方法である。
【0005】
発明の概要
本明細書に開示された例示的な実施形態が提供する歯科インプラントは、材料中への組織内植および歯科インプラントの固定を促進するために、インプラントの1つ以上の面に多孔質内殖材料を有している。
【0006】
本開示に基づき提供されるいくつかの例示的な実施形態では、歯科インプラントは、複数の外面および内部に形成されたプラグ開口を有する基礎、プラグ開口内に挿入されるプラグアセンブリ、および基礎の外面のうちの少なくとも1つに関連付けられた、多孔質内植材料の少なくとも1つの領域を有している。
【0007】
本開示に基づき提供されるいくつかの例示的な実施形態では、口内の欠損領域を治療する方法に、欠損領域に植込み穴を配置するステップおよび植込み穴に歯科インプラントを植え込むステップが含まれる。歯科インプラントは、複数の外面および内部に形成されたプラグ開口を有する基礎、プラグ開口内に挿入されるプラグアセンブリ、および基礎の外面のうちの少なくとも1つに関連付けられて欠損領域の組織と接触する、多孔質内植材料の少なくとも1つの領域を有している。
【0008】
本開示に基づき提供される例示的な実施形態により実現され得る可能性のある1つの利点は、内植材料の領域が、欠損領域の組織中でのインプラントの迅速な固定および安定化を可能にし得る、という点にある。
【0009】
本開示に基づき提供される例示的な実施形態により実現され得る可能性のある別の利点は、軽度の欠損領域と重度の欠損領域の両方を治療するために、インプラントが容易に調整され得る、という点にある。
【0010】
本開示に基づき提供される例示的な実施形態により実現され得る可能性のあるさらに別の利点は、基礎が、欠損領域中に1つ以上の治療薬を溶出して回復速度をさらに上げるためのリザーバを有していてもよい、という点にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上述した特徴およびその他の特徴ならびに利点、およびそれらを達成する方法は、添付図面に関連してとられる本発明の実施形態の以下の説明を参照することにより一層明らかになり、本発明をよりよく理解することになる。
【
図1】本開示により提供される歯科インプラントの1つの例示的な実施形態の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した歯科インプラントが患者の口の欠損領域内に植え込まれたところを示す図である。
【
図3】本開示により提供される歯科インプラントの別の例示的な実施形態の分解斜視図である。
【
図4】
図3に示した歯科インプラントの斜視図である。
【
図5】
図3および
図4に示した歯科インプラントが患者の口の欠損領域内に植え込まれたところを示す図である。
【0012】
いくつかの図面を通じて対応する各参照符号は、対応する部分を示す。本明細書に記載の例は、本発明の実施形態を示すものであり、このような例は、いずれにせよ本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
発明の説明
図面、より詳細には
図1~
図2を参照すると、歯肉組織内に植え込むための歯科インプラント100の1つの例示的な実施形態が示されている。歯科インプラント100は一般に、内部にプラグ開口111が形成された基礎110、プラグ開口111内に挿入されるプラグアセンブリ120、および基礎110の1つ以上の各面112A,112B,112Cに関連付けられた「内植領域」とも呼ばれる内植材料の少なくとも1つの領域131,132,133,134を有している。いくつかの実施形態では
図1~
図2に示すように、基礎110は、1対の拡径された端部113A,113Bと、端部113A,113Bの間をつなぐ本体部分114とを備えた一般に円筒の形状を画定している。いくつかの実施形態では、基礎110は、約0%~約10%の多孔率を有し得る、一般に非多孔質の材料を有している。基礎110は、人間またはその他の動物の体内への短期または長期の配置に適した1つ以上の生体適合材料を有していてもよく、これらの生体適合材料には、チタン、ステンレス鋼、コバルトクロム、および/またはタンタル等の金属;超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、他の形態のポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)、および/またはポリグリコール酸(PGA)等のポリマ;および/またはヒドロキシアパタイト(HA)、高密度アルミナ、いわゆる「バイオガラス」、およびグラファイト等のセラミックが含まれていてもよいが、これらに限定はされない。上述した材料は全て例示的なものであるだけに過ぎず、多くの他形式の生体材料を基礎110に組み込むことができるということを理解されたい。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体送り溝115A,115Bが本体部分114に形成されており、本明細書でさらに説明するように、流体を、基礎110の内部に形成されたリザーバ116から周囲組織に送るようになっている。基礎110の面112Aおよび112Cも、1つ以上の流体送り溝115Cをそれぞれ有していてもよい。いくつかの実施形態では、溝115A等の2つ以上の送り溝が、基礎110を貫通して規定された長手方向軸線LAの周りに周方向に延在しており、溝115B等の1つ以上の送り溝は、長手方向軸線LAに対して平行に延在しており、周方向に延在する各送り溝115Aを接続している。送り溝115A,115Bの形状および寸法は、インプラント100のリザーバ116から周囲組織への流体送り特性をそれぞれ異ならせるように調整され得る。流体送り溝115A,115Bは、基礎110内でリザーバ116に形成され、部分的に送り溝115Bにより包囲されたリザーバ開口117を介して、基礎110内に形成されたリザーバ116と流体接続していてもよい。
【0015】
基礎110のプラグ開口111内には、プラグ開口111を閉じるためにプラグアセンブリ120が挿入される。いくつかの実施形態では、プラグアセンブリ120は、ねじ山122を備えた基礎係合部分121を有しており、ねじ山122は、対応する基礎110のねじ山に螺入して、基礎係合部分121を基礎110に結合する。基礎係合部分121は、基礎係合部分121を貫通して延在し、基礎係合部分121の一方の端部124Aから反対側の端部124Bまで延在する貫通孔123を有していてもよい。いくつかの実施形態では、基礎係合部分121において端部124Aと124Bとの間にストップ125が形成されており、基礎係合部分121が基礎110内に過剰に螺入することを防ぐようになっている。基礎係合部分121は、ストップ125の、端部124Aに隣接するような一方の側にはねじ山を有さず、ストップ125の、端部124Bに隣接するような他方の側にはねじ山を有していてもよい。
【0016】
プラグアセンブリ120はさらに、基礎係合部分121の貫通孔123内に配置されるプラグ部分126を有していてもよい。プラグ部分126は例えば、貫通孔123の直径よりも小さな直径を備えた軸127と、貫通孔123の直径よりも大きな直径を備え、軸127と結合されたヘッド128とを有していてもよい。いくつかの実施形態では、プラグ部分126は、熱硬化性ポリマ等の一般に非弾性的な材料を有していてもよい。択一的に、プラグ部分126はゴム等の弾性材料を有していてもよい。プラグ部分126は、基礎係合部分121の貫通孔123を十分に塞いで貫通孔123を閉塞すべきであり、これにより、増大する流体圧力がかけられた場合に、リザーバ116からの流体が貫通孔123から急速に漏出することはない、ということを理解されたい。
【0017】
いくつかの実施形態では、貫通孔123は、基礎係合部分121のマウント141内に形成されており、マウント141は、マウント141に例えば置換歯を取り付けるように造形されかつ寸法決めされている。換言すると、プラグアセンブリ120は、プラグアセンブリ120に置換歯を取り付けるように構成されている。置換歯は、患者内で固定するためにマウント141に直接被せ嵌めることができるか、または択一的に、マウント141にアダプタが被せ嵌められてから、置換歯がアダプタに取り付けられてもよい。置換歯用のこのようなマウントは多くが知られているため、マウント141のさらなる説明は簡潔のために省かれる。
【0018】
4つの領域131,132,133,134として示したような、内植材料の少なくとも1つの領域は、基礎110の1つ以上の各面112A,112B,112Cに関連付けられている。ここで用いたように、各内植領域131,132,133,134は、基礎110の各面112A,112B,112Cに直接にまたは間接的に固着されるという意味で、内植領域131,132,133,134は、基礎110の各面に「関連付けられている」。組織の内植を促進するために、内植材料の各領域131,132,133,134は多孔質でありかつ生体適合材料を有している。各領域131,132,133,134は同じ内植材料を有していてもよいか、または択一的に、1つ以上の領域131,132,133,134は、1つ以上の別の領域131,132,133,134とは異なる内植材料を有していてもよい。いくつかの実施形態では、内植材料は、約50%~70%の多孔率、約500μm~約550μmの平均孔径、約210μm~約250μmの孔連続性、および約0.25mm~1.25mmの公称厚さを有するチタンまたはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を有している。1つ以上の領域131,132,133,134において使用され得る1つの例示的な内植材料は、インディアナ州コロンビアシティのSITES MEDICAL(登録商標)社から商品名OSTEOSYNC(登録商標)で市販されている。内植材料の前記特徴は例示的なものであるだけに過ぎない、ということを理解されたい。いくつかの実施形態では、領域131等の1つの領域は、基礎110の上面112Aに関連付けられており、領域132等の1つの領域は、いずれの内植材料によっても覆われない基礎110の終端領域113A,113B間の、基礎110の周面112Bに関連付けられており、領域133および134等の2つの領域は、基礎110の底面112Cに関連付けられている。面112A,112B,112Cはそれぞれ、流体をリザーバ116から内植領域131,132,133,134の孔を介して周囲組織に送ることを可能にするためにリザーバ116まで貫通して形成された貫通孔を有していてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、同一表面に関連付けられた2つの内植領域、つまり基礎110の底面112Cに関連付けられた内植領域133および134等は、互いに異なっている。例えば、「内植材料の第1の領域」と呼ばれることがあり、内植領域134と基礎110の底面112との間に挟まれた内植領域133は、「内植材料の第2の領域」と呼ばれることがある内植領域134の第2の内植材料に比べて低い多孔率を有する第1の内植材料を有していてもよい。換言すると、内植材料133の第1の領域の第1の内植材料は、第1の多孔率を有していてもよく、内植材料134の第2の領域の第2の内植材料は、例えば第1の多孔率よりも高いという点で第1の多孔率とは異なる第2の多孔率を有していてもよい。内植領域134よりも低い多孔率を有する内植領域133を設けることにより、流体をリザーバ116から周囲組織に送る速度が内植領域133の多孔率に基づき制限される一方で、内植領域134の多孔率は、内植領域134の孔内への組織内植を促進するために、より高くなっていてもよい。このような構成は、内植領域133の比較的低い多孔率に基づき、流体をリザーバ116から周囲組織に長期間送ることを可能にし得る一方で、内植領域134により大きな孔を設けることで組織内植を促進し、インプラント100を安定させることができる。択一的または追加的に、2つの内植領域133,134は、例えば異なる組成および/または形状を有しているという点で、互いに異なっていてもよい。同一面に関連付けられた内植領域は、別の点で互いに異なっていてもよく、上述した例は、各領域が互いに異なっていてもよいいくつかの可能な点を表すものであるだけに過ぎない、ということを理解されたい。
【0020】
いくつかの実施形態では、内植領域132と周面112Bとを関連付ける一様な面を提供するために、基礎110の周面112Bと内植領域132との間に穿孔スリーブ142が配置されている。
図1に示すように、周面112Bは、流体送り溝115A,115Bが形成されていることにより比較的一様でないことがあり、このことは面112Bに対する内植領域132の固定を困難にする。よって穿孔スリーブ142がプレス嵌め等により基礎110の終端領域113A,113Bの間の周面112Bに被せ嵌められて、内植領域132の固定用に一様に寸法決めされた面を提供する。さらに、穿孔スリーブ142に形成された開口143の寸法は、リザーバ116からリザーバ開口117を介して内植領域132に流れる流量を制御することにより、内植領域132の孔を介した流体送りが制御されるように調整され得る。この点で穿孔スリーブ142は、内植領域132と基礎110の周面112Bとの関連付けならびに植込み後のリザーバ116から周囲組織への流体送りの制御を支援している。
【0021】
具体的に
図2を参照すると、人間または他の動物であってもよい患者の口の歯肉組織T中に植え込まれた後のインプラント100が示されている。
図2に示すように、患者には隣り合う2つの歯201,202の間に欠損領域200が存在する。欠損領域200は以前は、例えば病気または外傷のために脱落したか、さもなければ除去された歯を保持していた。歯を置換するために、欠損領域200は除去された歯の残りの破片、その他の破片、および病原体を除去するように洗浄される。
図2に示したケースでは、欠損領域200は、例えばインプラント100を固定する1つ以上のねじを必要とすること無しにインプラント100を支持しかつ固定するための十分な量の局所的な歯肉および骨組織を有している軽度の欠損である。
【0022】
植込み穴203が欠損領域200の組織中に形成されており、インプラント100は、植込み穴203内に配置されている。いくつかの実施形態では、植込み穴203は、欠損領域200に存在する、インプラント100により置換される歯(または歯の破片)を除去することにより形成されている。図示のようにマウント141は、例えばインプラント100が組織中に十分に固定された後で置換歯を受け入れるために、インプラント100の配置後には植込み穴203から突出している。ただし最初は、マウント141は欠損領域200においてマウント141とプラグ部分126のヘッド128とを露出させ、被覆されないままであってもよい。植込みの前、最中、または後に、プラグ部分126はマウント141内の貫通孔123から外されてもよく、1つ以上の治療薬が貫通孔123を介して基礎110内のリザーバ116に充填され得る。治療薬は、抗生物質または他の抗菌剤、抗炎症薬、鎮痛薬、成長因子、幹細胞等の新生細胞を含む溶液、または植込み後のインプラント100を取り囲む組織に治療効果をもたらす他のあらゆる物質であってもよいが、これらに限定されるものではない。択一的に治療薬は、例えばリザーバ開口117が穿孔スリーブ142と内植領域132とで覆われる前にリザーバ開口117を介してリザーバ116内へ充填されてもよい。よって、リザーバ116には最初に1つ以上の治療薬が異なる方法で充填され得る、ということを理解されたい。
【0023】
いくつかの実施形態では、リザーバ116に最初に、1つ以上の抗菌剤であってもよい第1の治療薬が感染のリスクを低下させるために充填され、次いでインプラント100が患者に植え込まれている最中に第1の治療薬か、第1の治療薬とは異なる第2の治療薬か、または第1の治療薬と第2の治療薬の両方が補充される。例えば、リザーバ116には感染のリスクを低下させるために抗菌剤を周囲組織へ送り続けるように第1の治療薬(抗菌剤)が部分的に補充され得るが、組織浸潤および内植領域131,132,133,134内への内植を促進し、欠損領域200におけるインプラント100のより迅速でより安定した固定を促進するために、成長因子等の第2の治療薬も充填され得る。リザーバ116に補充するためには、プラグ部分126が貫通孔123から引き出され、治療薬を含む注射器の先端が貫通孔123内に配置され、注射器から貫通孔123および流体接続されたリザーバ116の内部に治療薬が噴射され得るようになっている。択一的に、注射器は治療薬または体液であり得る流体をリザーバ116から除去するために用いられてもよい。
【0024】
リザーバ116が部分的または全体的に充填された後に、プラグ部分126は貫通孔123内に戻される。いくつかの実施形態では、プラグ部分126は、貫通孔123内へプラグ部分126を戻すことによりリザーバ116内の流体を加圧し、流体をリザーバ116内から、例えば基礎110に形成されたリザーバ開口117を介して内植領域131,132,133,134へ押し退けるように造形されかつ寸法決めされている。この点で、プラグ部分126は貫通孔123をシールするだけでなく、インプラント100が患者に植え込まれる間、治療薬の塊を周囲組織に送るために、リザーバ116の初期加圧も提供する。次いで、治療薬の最初の塊が送られた後でリザーバ116内に残った治療薬は、治療薬を「絞り出す」、インプラント100に加えられた圧縮力と、組織中への治療薬の自然拡散とによってリザーバ116から周囲組織中へ移動し得る。プラグ部分126は、植込み中リザーバ116に補充するために複数回、貫通孔123から外されかつ貫通孔123内へ戻されてもよい、ということを理解されたい。リザーバ116に補充するためにプラグ部分126を外して戻すことは簡単であるため、インプラント100が植え込まれる患者は、在宅でまたは他の非臨床環境で、リザーバ116に補充することができる。
【0025】
インプラント100が植え込まれている間、欠損領域200に隣接する、歯肉組織および骨組織等の天然組織は、インプラント100の内植領域131,132,133,134中に浸潤して成長し得る。天然組織が内植領域131,132,133,134中に成長するため、インプラント100は組織中に安定して固定されることになる。インプラント100が組織中に安定して固定された後に置換歯がマウント141に取り付けられ、除去歯の置換が完了され得る。いくつかの実施形態では、置換歯は、基礎係合部分121の貫通孔123内に配置されたプラグ部分126を備えるマウント141に直接に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、プラグ部分126は、貫通孔123を充填すると共に、例えばマウント141に置換歯を取り付けるための置換歯のソケットに係合するように造形された、貫通孔123内の別のプラグに交換され得る。別の実施形態では、基礎係合部分121は、置換歯を取り付けるためのマウントを有する他の基礎係合部分に交換され得る。よって、インプラント100に置換歯を取り付ける多くの異なる方法が、インプラント100に置換歯を固定するために用いられてもよい、ということを理解されたい。
【0026】
上述したOSTEOSYNC(登録商標)等の特定の内植材料は、インプラント100に驚くほど良好な組織内植および固定特性をもたらす、ということが判った。内植領域131,132,133,134を形成するためにOSTEOSYNC(登録商標)が使用された場合、植込みのわずか5週間後に、インプラント100の引抜き強度は天然骨の引抜き強度にほぼ等しくなり得る。この結果は意外であった。なぜならば、周知の歯科インプラントと比較してこのようなインプラントは高度な改良をもたらしたからである。このような結果が観察された理由に関するいかなる特定の理論にも縛られること無しに、OSTEOSYNC(登録商標)または類似の材料が含まれていると、内植領域131,132,133,134は皮質骨組織内植のための優れた基質を提供する、ということが理論化されている。顎骨に隣接する皮質骨組織の高濃度を考慮すると、5週間でのインプラント100の安定した固定は、少なくとも部分的に、内植領域131,132,133,134中での皮質骨組織の急速な内植および増殖に帰する、ということが理論化される。よって、本開示に基づき提供されるインプラントは、歯科インプラントとして適している、ということが理論化されている。なぜならば、本開示に基づき提供されるインプラントは、患者の口内に存在する歯肉組織および骨組織における歯の自然な固定、すなわち主に隣接する皮質骨組織の内植およびこの皮質骨組織との統合を再現するからである。
【0027】
植込み中に治療薬を送るために、リザーバ116に1つ以上の治療薬を供給することにより、インプラント100の迅速で安定した固定が促進される、ということも判った。上述したように、病原体が欠損領域200に感染し、インプラント100を固定する組織の成長を妨げるリスクを低下させるために、リザーバ116には最初に1つ以上の抗菌剤が充填され得る。内植領域131,132,133,134中への組織内植と、インプラント100の安定した固定とを促進するためには、上述したように植込み中、リザーバ116に抗菌剤、または他の治療薬が1回以上補充され得る。よって本開示に基づき提供されるインプラントは、内植領域131,132,133,134中への組織内植用の好適な環境を提供するためにリザーバ116から周囲組織中へ1つ以上の治療薬を送ることにより、周囲の天然組織中での迅速で安定した固定をも促進する。
【0028】
図3~
図5を参照すると、別の、重度の欠損を有する歯肉組織内に植え込むための歯科インプラント300の例示的な実施形態が示されている。上述したインプラント100と同様に、インプラント300も、内部にプラグ開口311が形成された基礎310、プラグ開口311内に挿入されるプラグアセンブリ320、および基礎310の1つ以上の各面312A,312B,312Cと関連付けられる内植材料の少なくとも1つの領域331,332,333,334,335を有している。
図3に示すように、例えば内植領域331および332は基礎310の上面312Aに関連付けられてもよく、内植領域333は基礎310の周面312Bに関連付けられてもよく、内植領域334および335は基礎310の底面312Cに関連付けられてもよい。通常は円形の横断面を有する円筒形の基礎110を備えたインプラント100と比べ、
図5に示す、ここでさらに説明するインプラント300は、重度の欠損領域510においてインプラント300を安定させるための楕円形の横断面を備えた比較的大きな基礎310を有している。
【0029】
基礎110と同様に、基礎310も、流体を基礎310内に形成されたリザーバ316から、例えば、リザーバ316に通じるように基礎310に形成されたリザーバ開口317等の開口を介して内植領域331,332,333,334,335に連通させる、基礎310に形成された流体送り溝315A,315B,315Cを有していてもよい。リザーバ316は、プラグアセンブリ320からプラグ部分326を外し、例えば注射器またはその他の流体送り装置を用いてプラグアセンブリ320の貫通孔323を介して流体をリザーバ316に送ることにより、補充され得る。インプラント300はインプラント100と同様に、内植領域333と周面312Bとの間に穿孔スリーブ342を有しておりかつ置換歯を取り付けるためのマウント341を有していてもよい。
【0030】
インプラント300は、重度の欠損部、すなわち隣接組織が罹患しており、破壊されており、かつ/またはさもなければ追加の固定手段無しではインプラント300の固定に適さない欠損部に植え込まれるように構成されている。インプラント300を安定して固定するために必要とされる追加の固定手段を提供するために、1つ以上の整形外科用ねじ501(
図5に図示)等の各固定手段を受容するための1つ以上の固定用開口351,352が、基礎310の周面312B等に形成され得る。対応する開口353,354も、穿孔スリーブ342および内植領域333に形成され得、これにより固定用開口351,352は、ねじ501を受容するために被覆されないようになっている。例えば患者の口内にインプラント300を固定するために、固定用開口351,352には、ねじ501に螺合するねじ山が設けられていてもよい。この点で、インプラント300の植込みおよび使用はインプラント100のそれと同様ではあるが、
図5に示す欠損領域500等の欠損領域に固定手段501を固定し、例えば固定手段501の、固定用開口351,352内への螺入により、固定手段501とインプラント300とを結合する追加的なステップをも含んでいる。他の点では全て、インプラント300の植込みおよび使用は、上述したインプラント100の植込みおよび使用と同様であってもよい。
【0031】
本発明を、少なくとも1つの実施形態に関して説明してきたが、本発明は、本開示の思想および範囲内でさらに変更され得る。よって本願は、その原理全般を用いた本発明のあらゆる変化形、使用、または適合をカバーすることを意図したものである。さらに本願は、本発明が属す、添付請求項の範囲内の技術分野における既知のまたは慣例の実地の範囲内で本開示からの逸脱をカバーすることを意図したものである。