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7638748電池モジュール及び電池モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20250225BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250225BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20250225BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20250225BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20250225BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20250225BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20250225BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M50/209
H01M50/262 Z
H01M50/264
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021050058
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148393
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113461(JP,A)
【文献】特開2014-199813(JP,A)
【文献】特開2015-043293(JP,A)
【文献】特開2017-016799(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159275(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235173(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/184068(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/187315(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/202671(WO,A1)
【文献】特開2013-171794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079452(US,A1)
【文献】特開2015-011989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に積層される複数の角形の電池セルと、
前記電池セルの積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の拘束部材と、
前記電池セルの積層方向の両端から前記電池セルを挟む金属板製のエンドプレートと、を有し、
前記拘束部材と前記エンドプレートが板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接により接合される接合部を有し、当該接合部によって接合された前記拘束部材と前記エンドプレートにより前記複数の電池セルが拘束保持される構成であり、
前記接合部は、
前記電池セルの積層方向に交差する方向に向けて延びる線状の第1溶接部と、
前記電池セルの積層方向に向けて延びる線状の第2溶接部と、を有する
電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記拘束部材は、前記エンドプレートと重ね合わされる部位において複数枚の金属板が重ねられており、
前記接合部は、前記複数の金属板の前記拘束部材と、前記エンドプレートが板厚方向に溶融されて一体とされた構成である電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池モジュールであって、
前記接合部は、前記第1溶接部と、前記第2溶接部が線状に連なって構成される電池モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池モジュールであって、
前記拘束部材は、2枚の金属板の周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、当該密封空間内に冷媒が充填された冷媒充填室が構成され、縦型に配置されることで前記電池セルの側方から冷却する機能を備える電池モジュール。
【請求項5】
厚み方向に積層される複数の角形の電池セルと、
前記電池セルの積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の拘束部材と、
前記電池セルの積層方向の両端から前記電池セルを挟む金属板製のエンドプレートと、を有し、
複数の角形の前記電池セルを必要数だけ積層する工程と、
前記電池セルの積層方向の両端にそれぞれ前記エンドプレートを面接触させた状態で圧縮する工程と、
前記電池セルの積層方向に圧縮された状態で前記両側方から前記拘束部材をそれぞれセットする工程と、
前記電池セルの両端の前記エンドプレート及び前記両側方の前記拘束部材がセットされた状態で、前記拘束部材と前記エンドプレートが板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接を施して接合部を設ける工程と、を含み、
当該接合部によって接合された前記拘束部材と前記エンドプレートにより前記複数の電池セルが拘束保持される構成であり、
前記接合部は、
前記電池セルの積層方向に交差する方向に向けて延びる線状の第1溶接部と、
前記電池セルの積層方向に向けて延びる線状の第2溶接部と、を有する
電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電池モジュールの製造方法であって、
前記拘束部材は、前記エンドプレートと重ね合わされる部位において複数枚の金属板が重ねられており、
前記接合部は、前記複数の金属板の前記拘束部材と、前記エンドプレートが板厚方向に溶融されて一体とされた構成である電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の電池モジュールの製造方法であって、
前記接合部は、前記第1溶接部と、前記第2溶接部が線状に連なって構成される電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の電池モジュールの製造方法であって、
前記拘束部材は、2枚の金属板の周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、当該密封空間内に冷媒が充填された冷媒充填室が構成され、縦型に配置されることで前記電池セルの側方から冷却する機能を備える電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール及び電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のような電池モジュールが知られている。係る特許文献1における電池モジュールは、厚み方向に積層される複数の角形の電池セルと、電池セルの積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の拘束部材と、電池セルの積層方向の両端から電池セルを挟む金属板製のエンドプレートと、を有している。係る電池セルの積層状態を拘束保持させるために、拘束部材とエンドプレートをボルト/ナット/リベットなどによる機械的締結手段によって固定する構造が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-339929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した機械的締結手段は、構造が嵩張って電池モジュールが大きくなること、締結部材の重量による電池モジュール全体の重量増加が懸念されていた。また、機械的締結手段に伴うすべり、ゆるみ等も懸念されており、更なる改善が望まれている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、角形の電池セルを厚み方向に積層して拘束保持する電池モジュール及び電池モジュールの製造方法において、拘束部材とエンドプレートが機械的締結とは異なる拘束保持を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の電池モジュールは次の手段をとる。先ず、第1の発明は、厚み方向に積層される複数の角形の電池セルと、前記電池セルの積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の拘束部材と、前記電池セルの積層方向の両端から前記電池セルを挟む金属板製のエンドプレートと、を有し、前記拘束部材と前記エンドプレートが板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接により接合される接合部を有し、当該接合部によって接合された前記拘束部材と前記エンドプレートにより前記複数の電池セルが拘束保持される。
【0007】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る電池モジュールにおいて、前記拘束部材は、前記エンドプレートと重ね合わされる部位において複数枚の金属板が重ねられており、前記接合部は、前記複数の金属板の前記拘束部材と、前記エンドプレートが板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。
【0008】
次に、第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る電池モジュールにおいて、前記接合部は、前記電池セルの積層方向に交差する方向に向けて延びる線状の第1溶接部と、前記電池セルの積層方向に向けて延びる線状の第2溶接部と、を有する。
【0009】
次に、第4の発明は、上記第3の発明に係る電池モジュールにおいて、前記接合部は、前記第1溶接部と、前記第2溶接部が線状に連なって構成される。
【0010】
次に、第5の発明は、上記第1の発明から第4の発明のいずれかに係る電池モジュールにおいて、前記拘束部材は、2枚の金属板の周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、当該密封空間内に冷媒が充填された冷媒充填室が構成され、縦型に配置されることで前記電池セルの側方から冷却する機能を備える。
【0011】
次に、本発明の電池モジュールの製造方法は次の手段をとる。第6の発明は、厚み方向に積層される複数の角形の電池セルと、前記電池セルの積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の拘束部材と、前記電池セルの積層方向の両端から前記電池セルを挟む金属板製のエンドプレートと、を有し、複数の角形の前記電池セルを必要数だけ積層する工程と、前記電池セルの積層方向の両端にそれぞれ前記エンドプレートを面接触させた状態で圧縮する工程と、前記電池セルの積層方向に圧縮された状態で前記両側方から前記拘束部材をそれぞれセットする工程と、前記電池セルの両端の前記エンドプレート及び前記両側方の前記拘束部材がセットされた状態で、前記拘束部材と前記エンドプレートが板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接を施して接合部を設ける工程と、を含み、当該接合部によって接合された前記拘束部材と前記エンドプレートにより前記複数の電池セルが拘束保持される。
【0012】
次に、第7の発明は、第6の発明に係る電池モジュールの製造方法であって、前記拘束部材は、前記エンドプレートと重ね合わされる部位において複数枚の金属板が重ねられており、前記接合部は、前記複数の金属板の前記拘束部材と、前記エンドプレートが板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。
【0013】
次に、第8の発明は、第6の発明または第7の発明に係る電池モジュールの製造方法であって、前記接合部は、前記電池セルの積層方向に交差する方向に向けて延びる線状の第1溶接部と、前記電池セルの積層方向に向けて延びる線状の第2溶接部と、を有する。
【0014】
次に、第9の発明は、第8の発明に係る電池モジュールの製造方法であって、前記接合部は、前記第1溶接部と、前記第2溶接部が線状に連なって構成される。
【0015】
次に、第10の発明は、第6の発明から第9の発明のいずれかに係る電池モジュールの製造方法であって、前記拘束部材は、2枚の金属板の周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、当該密封空間内に冷媒が充填された冷媒充填室が構成され、縦型に配置されることで前記電池セルの側方から冷却する機能を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、角形の電池セルを厚み方向に積層して拘束保持する電池モジュール及び電池モジュールの製造方法において、拘束部材とエンドプレートが機械的締結とは異なる拘束保持を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
図2】本実施形態の拘束部材とエンドプレートを示した斜視図である。
図3】本実施形態の拘束部材の断面図である。
図4】本実施形態における拘束部材とエンドプレートの接合部を模式的に示した模式図である。
図5】本実施形態における拘束部材とエンドプレートの接合部を模式的に示した模式図である。
図6】本実施形態における拘束部材とエンドプレートの接合部の変形例1を模式的に示した模式図である。
図7】本実施形態における拘束部材とエンドプレートの接合部の変形例2を模式的に示した模式図である。
図8】本実施形態における拘束部材とエンドプレートの接合部の変形例3を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための実施形態について、図1図5を用いて説明する。
【0019】
例えば、車両(不図示)には、電動機(モータ)(不図示)を駆動源として走行する、電動自動車、ガソリンハイブリッド車、燃料電池ハイブリッド車等がある。このような車両は、車両フロアを構成するフロアパネル(不図示)の下方に電動機へ供給される電力を蓄電するバッテリとしての電池パック(不図示)が搭載されている。電池パックは、複数の電池モジュール10と電池ECU(不図示)を内蔵し、電池システムとして車載可能にユニット化されて扁平な箱形状に形成されている。ここで、電池モジュール10は、モーターを駆動するための電気エネルギーの放電・充電の両機能を備えており、電池セル12と呼ばれる角形の単電池を複数つないで構成されている。電池セル12には、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などを用いた蓄電池である。電池ECUは、電池パックの電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である。
【0020】
本実施形態は、電気自動車に用いられる電池モジュール10を例示して説明する。ここで、電池モジュール10の各方向は、図にX、Y、Zの矢印で示すように、X方向(またはX1、X2側)、Y方向(またはY1、Y2側)、Z方向(またはZ1、Z2側)として説明する。ここで、Z方向は重力方向である。なお、これらの方向に関しては、各図においても同様である。
【0021】
<全体構成>
図1~3に示すように、電池モジュール10は、複数の角形の電池セル12を直列接続して組み合わせている。ここで、電池セル12は、厚み方向に積層(積層方向)して必要数だけ組み合わされる。電池モジュール10は、拘束部材としての冷却装置20と、エンドプレート30によって四方が拘束保持されて一体化される。冷却装置20は、複数の電池セル12の両側方(X方向)の位置を拘束する拘束部材としての機能を有すると共に、後述するエンドプレート30を固定することで、エンドプレート30と協働して複数の電池セル12の積層方向(Y方向)の拘束する機能を有する。また、冷却装置20は、各電池セル12を両側方から冷却する機能を有する。エンドプレート30は、上述した拘束部材としての冷却装置20と協働することで複数の電池セル12の積層方向(Y方向)の両端から電池セル12を挟んで拘束する機能を有する。ここで、拘束部材は、「拘束バンド」「テンションプレート」などとも呼ばれる。
【0022】
<冷却装置20(拘束部材)>
図1~3に示すように冷却装置20(拘束部材)は、電池セル12の積層方向に交差する両側方(X方向)から拘束する金属板製の部材である。冷却装置20は、2枚の鋼板20a、20bの周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、その密封空間内に冷媒としてのハイドロフルオロカーボン(HFC)が充填されて冷媒充填室21が構成され、縦型に配置されることで電池セル12の側方から冷却する機能を有する。すなわち鋼板20a、20bは、冷媒充填室21における伝熱板としても機能する。
【0023】
図1、3において模式的に示すように冷媒充填室21のY方向の一方側には、電池セル12からの熱を受けて気化した冷媒が流出する冷媒流出路22が設けられている。冷媒流出路22と凝縮器3の間は流路4を介して接続されている。冷媒充填室21のY方向の他方側には、凝縮器3で凝縮し、冷却して循環される冷媒が冷媒充填室21に流入する冷媒流入路24が設けられている。凝縮器3と冷媒流入路24の間は、流路5を介して接続されている。
【0024】
このような構成により、冷媒充填室21では、各電池セル12の熱を受けて気化した冷媒が冷媒流出路22から流出して図1の矢印で示すように流路4を通って凝縮器3に送られる。凝縮器3で凝縮、冷却されて再度液化された冷媒は、図1の矢印で示すように流路5を通って冷媒流入路24から冷媒充填室21に循環される。この作用の繰り返しにより、冷媒充填室21によって各電池セル12の冷却が行われる。冷媒充填室21内で液化された冷媒は一定の液位に維持される。よって、冷媒充填室21は、鋼板20a、20b間の密封空間を冷媒が流れる冷媒流路として機能する。以上より、冷却装置20は、電池セル12の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室21が電池セル12の側方に配設され、冷媒充填室21における鋼板20a、20bを介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の装置となる。
【0025】
<エンドプレート30>
エンドプレート30は、金属板製の部材であり、電池セル12の積層方向(Y方向)の両端から電池セル12を挟む挟持面32と、挟持面32の両端において屈曲して冷却装置20の鋼板20aに対面する接合面34を備える。ここで、冷却装置20の鋼板20a、20bと、エンドプレート30の接合面34は、互いに重ね合わされている。
【0026】
<冷却装置20とエンドプレート30の接合>
次に冷却装置20とエンドプレート30の接合の構成について説明する。図4に示すように冷却装置20の鋼板20a、20bと、エンドプレート30の接合面34は、板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接により接合される接合部40を有する。接合部40は、冷却装置20の鋼板20a、20bと、エンドプレート30の接合面34が板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。ここで、図5に示すように接合部40は、電池セル12の積層方向に交差する方向(Z方向)に向けて延びる線状の第1溶接部41を有する。また、接合部40は、電池セル12の積層方向(Y方向)に向けて延びる線状の第2溶接部42を有する。接合部40は、第1溶接部41と、第2溶接部42が線状に連なっていることで略U字状に構成される。
【0027】
<電池モジュール10の製造方法(組み立て)>
電池モジュール10の製造方法(組み立て方法)について説明する。まず、複数の角形の電池セル12を必要数だけ重ね合わせて積層する(積層工程)。次に、電池セル12の積層方向(Y方向)の両端にそれぞれエンドプレート30の挟持面32を面接触させた状態で圧縮する(圧縮工程)。次に、電池セル12の積層方向(Y方向)に圧縮された状態で、両側方(X方向)から冷却装置20(拘束部材)をそれぞれセット(あてがう、配置する、据える)する(セット工程)。次に、電池セル12の両端(Y方向)のエンドプレート30、両側方(X方向)の冷却装置20がセットされた状態で、冷却装置20の鋼板20a、20bと、エンドプレート30の接合面34が板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接を施して上述の接合部40を設ける(接合工程)。この接合部40によって接合された冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30によって、複数の電池セル12の四方が拘束保持されて一体化された電池モジュール10とする。
【0028】
<変形例>
上述では、接合部40を略U字状に構成するものについて説明したが、これに限られず、例えば図6~8のような形態であってもよい。例えば、図6には、本実施形態の変形例1として、冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30の接合部140を模式的に示している。例えば、第1溶接部141と、第2溶接部142は分離していてもよい。また、第2溶接部142は、2本に限られず3本以上あってもよい。図示は省略したが第1溶接部141においても複数本構成してもよい。例えば、図7には、本実施形態の変形例2として、冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30の接合部240を模式的に示している。例えば、第1溶接部241と、第2溶接部242は、結合して略E字状のような形態であってもよい。例えば、図8には、本実施形態の変形例3として、冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30の接合部340を模式的に示している。例えば、接合部340は、第1溶接部341と、第2溶接部342が線状に連なる構成として波状又は略W字状のような構成であってもよい。
【0029】
<作用・効果>
本実施形態の電池モジュール10は、電池セル12を重ね合わせて拘束保持するのに、冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30とを溶接によって接合する構造である。ここで、冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30は、鋼板プレス品であり、互いの溶接はレーザー溶接を採用している。レーザー溶接を採用した理由は、鋼板への溶接貫通力が高く、局所的発熱によって周辺部品への熱の影響が小さく、熱歪による精度悪化も少ないためである。これに対し、アーク溶接を採用した場合は、溶接入熱が大きく熱歪による精度悪化が懸念される。またアーク溶接であると、鋼板への溶接貫通力が低いことから、冷却装置20(拘束部材)側の鋼板(本実施形態では鋼板20a)と接合面34の一枚ずつの溶接となってしまい強度が低下することが考えられる。また、スポット溶接を採用した場合は、溶接に伴う必要平面が大きいため、製品の大型化が懸念される。またスポット溶接は、打点ピッチ(溶接打点寸法)が広くなってしまうため強度低下が懸念される。また、電池セル12は車両振動によってバラバラにならない様に拘束保持する必要がある。また、電池セル12の性能を十分に発揮させるために電池セル12の正面(積層方向)に圧縮荷重を加えた状態で拘束保持することで電池内部の密着を高めることが良いとされている。ここで、電池セル12を圧縮させた状態で組み立てる際、電池セル12単体の寸法のバラつきなどで全長が電池モジュール10ごとに変化することがある。これに対応するために、例えばボルト、ナットによる締結固定を採用する場合、上記バラつきを吸収するべく締結穴を長穴にする必要が生じる。ここで、長穴を介したボルト、ナットによる締結固定であると、締結面の接触面積が少なくなるため、面圧が足りなくなって、すべり、ゆるみの懸念が考えられる。これに対し、レーザー溶接を採用することで、これらすべり、ゆるみの懸念を抑制することができる。以上より、レーザー溶接を採用するに至った。
【0030】
また、電池セルは充電/放電すると電池自体が膨張/収縮を繰り返す。特に膨張時は、冷却装置20とエンドプレート30に多大な引張方向の荷重が掛かり、接合部分の破損の懸念が考えられる。これに対して接合部分及びその周辺を強固にする対策、発生する応力を低減させる構造対策などが必要となる。そこで、冷却装置20(拘束部材)の鋼板20a、20bとエンドプレート30の接合面34の3枚をレーザー溶接で一体化させた接合部40・140・240・340とする。これにより、鋼板20a、20bによって引張方向の荷重を受け止める構造となり発生する応力を低減することができる。また、接合部40・140・240・340は、それぞれ電池セル12の積層方向に交差する方向(Z方向)に向けて延びる線状の第1溶接部41・141・241・341と、電池セル12の積層方向(Y方向)に向けて延びる線状の第2溶接部42・142・242・342を有する。これにより、発生応力を剥離方向の応力と、せん断方向の応力の2成分に分解することで、それぞれの発生応力を効率的に低減することができる。そのため、接合部40・140・240・340は、局所的な応力集中が発生し難い構造とすることができる。よって、レーザー溶接による接合部40・140・240・340の構成であることから、他の部材を使って強固な構造とする必要がなく、軽量化とコスト低減をすることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の電池モジュール10は、本実施形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができる。例えば、本実施形態では、拘束部材としての冷却装置20を例示したが、「拘束部材」は冷却装置でなくともよい。すなわち、拘束部材として複数枚の金属板と、エンドプレート30の接合面34が重ねられてレーザー溶接される態様であってもよい。
【0032】
また、本実施形態は、電池として、電気自動車に用いられる電池モジュール10を例示して説明したが、種々の電池モジュール10に適用することができる。例えば、家庭電力供給用電池、自動車以外の乗物用電池等に適用してもよい。また、本実施形態では、各電池セル12は、直列接続されている一つの電池モジュール10を構成するものを示したが、各電池セル12が並列接続されるもの、直列、並列が組み合わされるものであってもよい。
【0033】
また、冷却装置20は、鋼板20a、20bにより構成される態様を示したが、銅、アルミニウム等の素材で構成するものであってもよい。冷媒は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を例示したが、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の代替フロンを用いてもよい。
【0034】
<各発明に対応する上記実施形態の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における第1発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0035】
第1の発明によれば、電池モジュール10は、厚み方向に積層される複数の角形の電池セル12と、電池セル12の積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の冷却装置20(拘束部材)と、電池セル12の積層方向の両端から電池セル12を挟む金属板製のエンドプレート30と、を有する。冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30が板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接により接合される接合部40・140・240・340を有する。この接合部40・140・240・340によって接合された冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30により複数の電池セル12が拘束保持される。そのため、レーザー溶接による接合部40・140・240・340の構成のため、機械的締結の構成のように、締結部材の重量増加を抑制することができる。また、機械的締結に伴うすべり、ゆるみ等が生じにくい。
【0036】
第2の発明によれば、冷却装置20(拘束部材)は、エンドプレート30と重ね合わされる部位において複数枚の金属板が重ねられており、接合部40・140・240・340は、複数の金属板の冷却装置20(拘束部材)と、エンドプレート30が板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。そのため、複数の金属板の冷却装置20(拘束部材)と、エンドプレート30が板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。すなわち、複数枚の金属板をもって溶接するため機械的強度が向上する。
【0037】
第3の発明によれば、接合部40・140・240・340は、電池セル12の積層方向に交差する方向に向けて延びる線状の第1溶接部41・141・241・341と、電池セル12の積層方向に向けて延びる線状の第2溶接部42・142・242・342と、を有する。そのため、接合部40・140・240・340は方向の異なる線状の溶接部を有することで、電池セルの充電/放電によって電池の膨張に伴う引張方向の荷重を剥離方向の応力とせん断方向の応力の2成分に分解することで、それぞれの発生応力を効率的に低減することができる。そのため、接合部40・140・240・340は、局所的な応力集中が発生し難い構造とすることができる。
【0038】
第4の発明によれば、接合部40・140・240・340は、第1溶接部41・141・241・341と、第2溶接部42・142・242・342が線状に連なって構成される。そのため、効率的に接合部40・140・240・340を構成することができる。
【0039】
第5の発明によれば、冷却装置20(拘束部材)は、2枚の金属板の周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、当該密封空間内に冷媒が充填された冷媒充填室21が構成され、縦型に配置されることで電池セルの側方から冷却する機能を備える。拘束部材に冷却機能を備えることでより機能的な電池モジュール10とすることができる。
【0040】
第6の発明によれば、電池モジュール10の製造方法は、厚み方向に積層される複数の角形の電池セル12と、電池セル12の積層方向に交差する両側方から拘束する金属板製の冷却装置20(拘束部材)と、電池セル12の積層方向の両端から電池セル12を挟む金属板製のエンドプレート30と、を有し、複数の角形の電池セル12を必要数だけ積層する工程と、電池セル12の積層方向の両端にそれぞれエンドプレート30を面接触させた状態で圧縮する工程と、電池セル12の積層方向に圧縮された状態で両側方から冷却装置20をそれぞれセットする工程と、電池セル12の両端のエンドプレート30及び両側方の冷却装置20がセットされた状態で、冷却装置20とエンドプレート30が板厚方向に重ねられた状態でレーザー溶接を施して接合部40・140・240・340を設ける工程と、を含み、接合部40・140・240・340によって接合された冷却装置20とエンドプレート30により複数の電池セル12が拘束保持される。これにより、角形の電池セル12を厚み方向に積層して拘束保持する電池モジュール10において、冷却装置20(拘束部材)とエンドプレート30が機械的締結とは異なる拘束保持を実現する電池モジュール10の製造方法とすることができる。
【0041】
第7の発明によれば、電池モジュール10の製造方法は、冷却装置20(拘束部材)は、エンドプレート30と重ね合わされる部位において複数枚の金属板が重ねられており、接合部40・140・240・340は、複数の金属板の冷却装置20(拘束部材)と、エンドプレート30が板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。そのため、複数の金属板の冷却装置20(拘束部材)と、エンドプレート30が板厚方向に溶融されて一体とされた構成である。すなわち、複数枚の金属板をもって溶接するため機械的強度が向上する。
【0042】
第8の発明によれば、電池モジュール10の製造方法は、接合部40・140・240・340は、電池セル12の積層方向に交差する方向に向けて延びる線状の第1溶接部41・141・241・341と、電池セル12の積層方向に向けて延びる線状の第2溶接部42・142・242・342と、を有する。そのため、接合部40・140・240・340は方向の異なる線状の溶接部を有することで、電池セルの充電/放電によって電池の膨張に伴う引張方向の荷重を剥離方向の応力とせん断方向の応力の2成分に分解することで、それぞれの発生応力を効率的に低減することができる。そのため、接合部40・140・240・340は、局所的な応力集中が発生し難い構造とすることができる。
【0043】
第9の発明によれば、電池モジュール10の製造方法は、接合部40・140・240・340は、第1溶接部41・141・241・341と、第2溶接部42・142・242・342が線状に連なって構成される。そのため、効率的に接合部40・140・240・340を構成することができる。
【0044】
第10の発明によれば、電池モジュール10の製造方法は、冷却装置20(拘束部材)は、2枚の金属板の周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、当該密封空間内に冷媒が充填された冷媒充填室21が構成され、縦型に配置されることで電池セルの側方から冷却する機能を備える。拘束部材に冷却機能を備えることでより機能的な電池モジュール10とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
3 凝縮器
4 流路
5 流路
10 電池モジュール
12 電池セル
20 冷却装置(拘束部材)
20a、20b 鋼板
21 冷媒充填室
22 冷媒流出路
24 冷媒流入路
30 エンドプレート
32 挟持面
34 接合面
40・140・240・340 接合部
41・141・241・341 第1溶接部
42・142・242・342 第2溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8