(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】車両用シート基材と車両用シート
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20250225BHJP
B68G 7/00 20060101ALI20250225BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
A47C27/15 A
B68G7/00
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2021102324
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2020106876
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 孝彦
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-177947(JP,A)
【文献】特開2019-156292(JP,A)
【文献】特開2015-173791(JP,A)
【文献】特開2005-087338(JP,A)
【文献】特開平09-051918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-27/22
B60N 2/00-2/90
B68G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材が積層される車両用シート基材において、
着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、
前記前側部分及び前記後側部分は樹脂発泡体であり、
前記前側部分の樹脂発泡体は、前記後側部分の樹脂発泡体よりも硬
く、
前記前側部分の樹脂発泡体は、半硬質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム又は発泡ポリプロピレンであり、前記後側部分の樹脂発泡体は、軟質ウレタンフォームであることを特徴とする車両用シート基材。
【請求項2】
クッション材が積層される車両用シート基材において、
着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、
前記前側部分及び前記後側部分は樹脂発泡体であり、
前記前側部分の樹脂発泡体は、前記後側部分の樹脂発泡体よりも硬く、
前記前側部分と前記後側部分との境界位置の部分の座面側に溝が形成されていることを特徴とする車両用シート基材。
【請求項3】
クッション材が積層される車両用シート基材において、
着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、
前記前側部分及び前記後側部分は樹脂発泡体であり、
前記前側部分の樹脂発泡体は、前記後側部分の樹脂発泡体よりも硬く、
前記前側部分の樹脂発泡体は、1)2%圧縮硬さが354~2500N、2)5%圧縮硬さが576~5500N、3)10%圧縮硬さが648~9000N、及び、4)アスカーC硬度が33~75度の全てを満足し、
前記前側部分の樹脂発泡体と前記後側部分の樹脂発泡体との硬さの差は、1)2%圧縮硬さの差が325~2471N、2)5%圧縮硬さの差が522~5446N、3)10%圧縮硬さの差が575~8927N、及び、4)アスカーC硬度の差が29~71度の全てを満足し、
前記後側部分の樹脂発泡体は、1)2%圧縮硬さが20N以上100N未満、2)5%圧縮硬さが40N以上200N未満、3)10%圧縮硬さが60N以上300N未満、及び、4)アスカーC硬度が2度以上20度未満の全てを満足することを特徴とする車両用シート基材。
【請求項4】
クッション材が積層される車両用シート基材において、
着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、
前記前側部分及び前記後側部分は樹脂発泡体であり、
前記前側部分の樹脂発泡体は、前記後側部分の樹脂発泡体よりも硬く、
前記後側部分を構成する樹脂発泡体の密度が、55~70kg/m
3
であることを特徴とする車両用シート基材。
【請求項5】
車両用シート基材にクッション材が積層された車両用シートにおいて、
前記車両用シート基材が請求項1から4の何れか一項に記載の車両用シート基材であり、
前記クッション材は、ウレタンフォーム製であることを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
車両用シート基材にクッション材が積層された車両用シートにおいて、
前記車両用シート基材は、着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、
前記前側部分及び前記後側部分は樹脂発泡体であり、
前記前側部分の樹脂発泡体は、前記後側部分の樹脂発泡体よりも硬く、
前記クッション材は、ウレタンフォーム製であり、
前記クッション材が、前記前側部分の前側を覆い、かつ、前記後側部分よりも厚いことを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート基材と車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートとして、基材にクッション材が積層されたものが使用されている。基材は、車両用シートの軽量化のため、金属フレームに代えて硬質発泡体(好ましい比重が0.1~0.25(密度100~250kg/m3)を用いるものが提案されている(特許文献1)。
他の車両用シートとして、発泡ポリプロピレンからなる硬質フォーム部に軟質フォーム部が積層されたものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3474571号公報
【文献】特許第4503020号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用シートには、車両の衝突や急ブレーキをかけた時等による衝撃発生時に、着座者が着座面から前方へ滑り出す、いわゆる、サブマリン現象が発生するのを防ぐため、発泡ポリプロピレン(EPP)の硬さを活かしてサブマリン防止性能を持たせた、軽量、高硬度の車両用シート基材(嵩上げ材)をクッション材の下に配置したものがある。
【0005】
しかし、発泡ポリプロピレンは硬い素材であるため、車両用シートにおいて膝裏が当たる部分を硬くすることで、サブマリン防止性能を確保することができるが、臀部の座り心地が悪い問題がある。
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、臀部の座り心地がよく、車両の衝突や急ブレーキをかけた時等による衝撃発生時のサブマリン現象を抑えることができる車両用シート基材と車両用シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、クッション材が積層される車両用シート基材において、着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、前記前側部分及び前記後側部分は樹脂発泡体であり、前記前側部分の樹脂発泡体は、前記後側部分の樹脂発泡体よりも硬いことを特徴とする。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記前側部分の樹脂発泡体は、以下の1)~4)の何れかを満足することを特徴とする。
1)2%圧縮硬さが100~5000N、
2)5%圧縮硬さが200~8000N、
3)10%圧縮硬さが300~12000N、
4)アスカーC硬度が15~100度
【0009】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記前側部分の樹脂発泡体と前記後側部分の樹脂発泡体との硬さの差は、以下の1)~4)の何れかを満足することを特徴とする。
1)2%圧縮硬さの差が50~4900、
2)5%圧縮硬さの差が100~7800N、
3)10%圧縮硬さの差が150~11700N
4)アスカーC硬度の差が5~85度
【0010】
第4の態様は、第1から第3の態様の何れか一の態様において、前記後側部分の樹脂発泡体は、以下の1)~4)の何れかを満足することを特徴とする。
1)2%圧縮硬さが20~100N未満、
2)5%圧縮硬さが40~200N未満、
3)10%圧縮硬さが60~300N未満、
4)アスカーC硬度が2~20度未満
【0011】
第5の態様は、車両用シート基材にクッション材が積層された車両用シートにおいて、前記車両用シート基材が第1から第4の態様の何れか一の態様における車両用シート基材であり、前記クッション材は、ウレタンフォーム製であることを特徴とする。
【0012】
第6の態様は、第5の態様において、前記後側部分の樹脂発泡体は、前記クッション材よりも硬いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、クッション材が積層される車両用シート基材が、着座者の膝裏で加圧される前側部分と、着座者の臀部で加圧される後側部分を備え、前側部分及び後側部分が樹脂発泡体であり、前側部分の樹脂発泡体が後側部分の樹脂発泡体よりも硬いことにより、着座状態では、膝裏及びその付近で加圧される前側部分よりも、臀部及びその付近で加圧される後部側部分で沈み込みが大きくなり、車両の衝突や急ブレーキをかけた時等による衝撃発生時に、シートに着座している着座者が、座面の着座位置から前方へ滑り出し難くなり、サブマリン現象の発生を抑えることができる。また、臀部の座り心地を良好なものできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】車両用シート基材をモールド成形する際を示す金型の断面図である。
【
図3】車両用シート基材の比較例と実施例について構成と物性を示す表である。
【
図4】車両用シートの後部側部分の比較例と実施例について構成、物性及び荷重の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示す本発明の車両用シート10は、車両用シート基材11とクッション材21との積層体からなる。
【0016】
車両用シート基材11は、着座者の膝裏及びその付近で加圧される前側部分13と、着座者の臀部及びその付近で加圧される後側部分15とよりなり、前側部分13の厚みが後側部分15の厚みよりも大とされており、前側部分13の上面13aと比べて後側部分15の上面15aが窪んで低くなっている。
【0017】
前側部分13と後側部分15との境界位置17は、車両用シート基材11の前後中間位置付近、好ましくは中間位置よりも前寄りであり、具体的には車両用シート基材11の前後長をLとした場合、車両用シート基材11の前端11aから境界位置17までの距離L1は、L/2~L/5が好ましい。
【0018】
なお、前側部分13と後側部分15との境界位置17の部分の座面側(上側)に形成されている溝16は、前側部分13と後側部分15を、後記するモールド成形で一体に製造する際、
図2に示す金型50の下型51の型面55に立設された仕切り板55によって形成される溝である。なお、溝16は、常に形成されるものではなく、例えば、前側部分13と後側部分15を他の成形方法で一体にする等の場合には形成されないこともある。
【0019】
前側部分13及び後側部分15は樹脂発泡体であり、前側部分13の樹脂発泡体は、後側部分の樹脂発泡体よりも硬いものである。
この実施形態の前側部分13は、半硬質ないし硬質樹脂発泡体からなる。半硬質樹脂発泡体としては半硬質ウレタンフォーム等が挙げられ、硬質樹脂発泡体としては、硬質ウレタンフォームあるいは発泡ポリプロピレン等が挙げられる。
さらに、サブマリン現象の防止の観点で、前側部分13の樹脂発泡体の厚みは、後側部分の樹脂発泡体の厚みよりも厚いものが好ましい。特に、前側部分13の樹脂発泡体の膝下部分の厚みは、後側部分の樹脂発泡体の尻下部分の厚みよりも厚いものが好ましい。また、前側部分13の樹脂発泡体の膝下部分のクッション材と接する位置が、後側部分の樹脂発泡体の尻下部分のクッション材と接する位置よりも、上方にあり、クッション材表面側に位置することが好ましい。
【0020】
半硬質ウレタンフォームは、弾性復元性が良好な軟質ウレタンフォームと、弾性復元性の無い硬質ウレタンフォームとの間にあって、弾性復元性を有するフォームである。半硬質ウレタンフォームは、弾性を有するため、車両用シート基材11の前側部分13を半硬質ウレタンフォームで構成することにより、着座時に、着座者の膝裏及びその付近で前側部分13が加圧された際に、前側部分13が弾性変形して着座初期の膝裏に与える感触を良好なものにできる。
【0021】
前側部分13を構成する樹脂発泡体は、密度(JIS K 7222準拠)が30~70kg/m3が好ましい。
前側部分13を構成する樹脂発泡体の密度を30~70kg/m3とすることにより、車両用シート基材11の軽量性を高めることができる。さらに、前側部分13を構成する樹脂発泡体において、凹部を設け、凹部内に空間を設けることにより、さらに軽量化を図ることができる。また、後側部分13を構成する樹脂発泡体に凹部を設けても良い。
【0022】
前側部分13を構成する樹脂発泡体は、車両の衝突発生時に着座者が着座面から前方へ滑り出すサルマリン現象を防止する観点で、以下の1)~4)の何れかを満足することが好ましく、車両の衝突発生レベルの大小の広範囲に渡ってサブマリン現象を防止する観点でより好ましくは1)~4)の複数を満たすことが好ましく、さらに好ましくは全てを満足することである。
1)2%圧縮硬さが100~5000N、
2)5%圧縮硬さが200~8000N、
3)10%圧縮硬さが300~12000N、
4)アスカーC硬度が15~100度
【0023】
前側部分13を構成する樹脂発泡体の2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ、及びアスカーC硬度を、以下の1)2)4)の何れかを下記の値に設定することにより、着座初期における膝裏及びその付近に与える感触をより良好なものにでき、より好適なものとなる。
1)2%圧縮硬さが100~1200N、
2)5%圧縮硬さが200~2000N、
4)アスカーC硬度が15~50度
また、前側部分13を構成する樹脂発泡体の10%圧縮硬さを300~2500Nの値に設定することにより、底付き感が無く着座状態における膝裏及びその付近に与えるクッション性を良好とすることできる。
【0024】
圧縮硬さの試験方法は、試験サンプル(100mmt×400mm×400mm)を予備圧縮なしで、圧縮速度50mm/minによって荷重が1000Nに達するまで加圧板で圧縮し、その後、加圧板による圧縮を速度50mm/minで解除して求めた荷重-たわみ曲線における、2%圧縮時の荷重を2%圧縮硬さ、5%圧縮時の荷重を5%圧縮硬さ、10%圧縮時の荷重を10%圧縮硬さとした。なお、加圧板は直径100mmを用いた。
【0025】
アスカーC硬度の測定方法は、アスカーC硬度計(加圧面高さ:2.54mm、直径5.08mm)を用い、試験サンプルの加圧面を接触させて硬度を測定した。
【0026】
前側部分13を構成する樹脂発泡体は、後側部分15を構成する樹脂発泡体よりも硬いものであり、2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ、10%圧縮硬さ及びアスカーC硬度の複数が高いことが好ましく、さらに好ましくは何れも高くするのが好ましい。前側部分13の圧縮硬さ及びアスカーC硬度を、後側部分15の圧縮硬さ及びアスカーC硬度よりも高くすることにより、着座状態時に、膝裏及びその付近で加圧される前側部分13よりも、臀部及びその付近で加圧される後側部分15の沈み込みが大きくなり、前側部分13と後側部分15の厚みの差との相乗効果によって、前記サブマリン現象の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0027】
後側部分15を構成する樹脂発泡体は、以下の1)~4)の何れかを満足することが好ましく、より好ましくは1)~4)の複数を満たすことがより好ましく、さらに好ましくは1)~4)の全てを満足することである。
1)2%圧縮硬さが20~100N未満、
2)5%圧縮硬さが40~200N未満、
3)10%圧縮硬さが60~300N未満、
4)アスカーC硬度が2~20度未満
【0028】
前側部分13を構成する樹脂発泡体と後側部分15を構成する樹脂発泡体との硬さの差は、サブマリン現象の防止の観点で、以下の1)~4)の何れかを満足することが好ましく、より好ましくは1)~4)の複数を満たすことがより好ましく、さらに好ましくは1)~4)の全てを満足することである。
1)2%圧縮硬さの差が50~4900N、
2)5%圧縮硬さの差が100~7800N、
3)10%圧縮硬さの差が150~11700N
4)アスカーC硬度の差が5~85度
また、着座初期における膝裏付近の感触、着座状態における膝裏付近のクッション性及び底付き感の観点で、前側部分13を構成する樹脂発泡体と後側部分15を構成する樹脂発泡体との硬さの差は、以下の1)~4)の何れかを満足することが好ましく、より好ましくは1)~4)の複数を満たすことがより好ましく、さらに好ましくは1)~4)の全てを満足することである。
1)2%圧縮硬さの差が40~1150N、
2)5%圧縮硬さの差が80~1900N、
3)10%圧縮硬さの差が120~2300N
4)アスカーC硬度の差が4~45度
【0029】
後側部分15を構成する樹脂発泡体の2%圧縮硬さを20~100N未満、5%圧縮硬さを40~200N未満、アスカーC硬度を2~20度未満とすることにより、着座初期における臀部及びその付近に与える感触を良好なものにできる。
後側部分15を構成する樹脂発泡体の10%圧縮硬さを60~300N未満とすることにより、着座状態における撓みが良好となって、臀部及び付近の底付き感を抑え、クッション性を良好なものにできる。また、着座状態では、臀部で加圧される後側部分15の沈み込みが大きくなり、前記サブマリン現象の発生をより効果的に防ぐことができる。
後側部分15を構成する樹脂発泡体は、車両用シート基材10に積層されるクッション材21よりも硬くし、着座時にクッション材21を支持できるように構成するのが好ましい。
【0030】
後側部分15を構成する樹脂発泡体の圧縮硬さの試験方法及びアスカーC硬度の測定方法は、前側部分13を構成する樹脂発泡体の圧縮硬さの試験方法及びアスカーC硬度の測定方法と同様である。
【0031】
後側部分15を構成する樹脂発泡体は、密度(JIS K 7222準拠)が30~70kg/m3が好ましい。
後側部分15を構成する樹脂発泡体の密度を30~70kg/m3とすることにより、車両用シート基材11の軽量性を高めることができる。
【0032】
後側部分15を構成する樹脂発泡体は、この実施形態では軟質ウレタンフォームからなる。軟質ウレタンフォームは、弾性復元性が良好なフォームである。軟質ウレタンフォームは、半硬質ないし硬質発泡樹脂発泡体よりも良好な弾性を有するため、車両用シート基材11の後側部分15を軟質ウレタンフォームで構成することにより、着座状態時に後側部分15で沈み込みが大きくなって前記サブマリン現象の発生を抑え、かつ臀部及びその付近の底付き感を無くし、クッション性を良好なものにできる。
【0033】
前側部分13が半硬質ウレタンフォームあるいは硬質ウレタンフォーム、後側部分15が軟質ウレタンフォームの場合について説明する。前側部分13を構成する半硬質ウレタンフォームあるいは硬質ウレタンフォームと、後側部分15を構成する軟質ウレタンフォームは、何れも、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むウレタンフォーム原料を混合させて、ポリオールとイソシアネートを反応させることにより得られる。
【0034】
ポリオールは、多価アルコール、又はこれらにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドが付加されたものであり、ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができる。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリマーポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0035】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等、及びこれらの多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリーエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0037】
ポリマーポリオールは、ポリオール中にポリアクリロニトリルやポリスチレンを分散させたポリオールである。
【0038】
半硬質ウレタンフォーム用のポリオールは、そのうち5重量部以上使用するポリオール(メインポリオール)としては、分子量500~8000、官能基数2~6、水酸基価14~700mgKOH/gのポリエーテルポリオールとポリマーポリオールが好ましい。
また、硬質ウレタンフォーム用のポリオ-ルとしては、分子量400~5000、官能基数2~8、水酸基価14~1200mgKOH/gのポリエーテルポリオール又はポリマーポリオールが好ましい。
一方、軟質ウレタンフォーム用のポリオールとしては、分子量1000~10000、官能基数2~4、水酸基価10~300mgKOH/gのポリエーテルポリオールとポリマーポリオールが好ましい。
【0039】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0040】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、80~120以上が好ましく、より好ましくは85~120である。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[(ポリイソシアネート重量部/ポリイソシアネートのNCO当量)/(活性水素成分重量部/活性水素当量)×100]で計算される。
【0041】
発泡剤としては、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して2~5重量部が好ましい。
【0042】
触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができ、アミン触媒と金属触媒の何れか一方のみ、あるいは両者の併用でもよい。触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.5~3重量部が好ましい。
【0043】
なお、ウレタンフォーム原料には、その他、整泡剤、難燃剤、着色剤等が適宜配合される。
【0044】
前側部分13が半硬質ウレタンフォームあるいは硬質ウレタンフォーム、後側部分15が軟質ウレタンフォームの場合、車両用シート基材11の製造は、モールド発泡が好ましい。モールド発泡は、金型にウレタンフォーム原料を注入して金型内で発泡させる発泡成形方法であり、ワイヤーフレーム,不織布などを容易にインサート成型できる。以下に、モールド発泡により車両用シート基材11を製造する方法について説明する。
【0045】
図2に示す金型50は、下型51と、この下型51に被さる上型53とよりなる。下型51の内面には車両用シート基材11を成形するための型面55が、車両用シート基材11の上面と等しい形状で構成されている。下型51の型面55は、該型面55から立設された仕切り板56によって前側部分成形用型面55aと、後側部分成形用型面55bとに仕切られている。仕切り板56の位置は、車両用シート基材11の前側部分13と後側部分15の境界位置17(溝16の位置)と一致している。また、仕切り板55は、下型51に上型53を被せた際に、仕切り板56の上端と上型53の型面54との間に、隙間を生じるように設けられる。
【0046】
下型51の前側部分成形用型面55aに半硬質あるいは硬質ウレタンフォーム原料131を吐出し、一方、後側部分成形用型面55bには軟質ウレタンフォーム原料151を吐出し、上型53を被せて半硬質あるいは硬質ウレタンフォーム原料131及び軟質ウレタンフォーム原料151を発泡させる。
【0047】
下型51の前側部分成形用型面55aに吐出された半硬質あるいは硬質ウレタンフォーム原料131は、発泡して下型51の前側部分成形用型面55aと上型53の型面54との間を満たし、一方、下型51の後側部分成形用型面55bに吐出された軟質ウレタンフォーム原料151は、発泡して下型51の後側部分成形用型面55bと上型53の型面54との間を満たし、仕切り板56の上端と上型53の型面54との間の隙間の部分で、発泡状態の半硬質あるいは硬質ウレタンフォーム原料131と発泡状態の軟質ウレタンフォーム原料151が接触する。
【0048】
その後、半硬質あるいは硬質ウレタンフォーム原料131と軟質ウレタンフォーム原料151が硬化することにより、下型51の前側部分成形用型面55aと上型53の型面54との間で車両用シート基材11の前側部分13が形成され、一方、下型51の後側部分成形用型面55bと上型53の型面54との間で車両用シート基材11の後側部分15が形成され、そして、形成された前側部分13と後側部分15が、仕切り板56の上端と上型53の型面54との間の隙間の部分で接着一体化し、車両用シート基材11が形成される。その後、金型50を開き、車両用シート基材11が取り出される。
【0049】
一方、前側部分13が発泡ポリプロピレン、後側部分15が軟質ウレタンフォームの場合の車両用シート基材11の製造は、以下のようにする。予め前側部分13としてビーズ法型内発泡成形の方法によって発泡ポリプロピレンを形成しておき、その前側部分13を金型にセットし、軟質ウレタンフォーム原料を注入して後側部分15を発泡形成し、前側部分13と一体にする。その際、発泡ポリプロピレンからなる前側部分13については、後側部分15の軟質ウレタンフォームとの接着性を高めるため、プライマー処理を施しておく。
【0050】
車両用シート基材11に積層されるクッション材21は、ウレタンフォーム製が好ましい。ウレタンフォームは軟質ウレタンフォームが好ましい。軟質ウレタンフォームは、良好な弾性を有するため、車両用シート10のクッション性を良好にすることができる。
【0051】
クッション材21を構成するウレタンフォームは、密度(JIS K 7222準拠)が35~80kg/m3のものが好ましい。この密度範囲とすることにより、車両用シートの積層体全体として軽量性を良好なものにできる。
また、クッション材21は、車両用シート基材11の後側部分15の樹脂発泡体よりも硬さの低いものとされる。
【0052】
クッション材21は、車両用シート基材11とは別に発泡成形して車両用シート基材11に積層、接着してもよく、あるいはモールド発泡により車両用シート基材11と一体に発泡成形してもよい。
モールド発泡により、クッション材21を車両用シート基材11と一体に発泡成形する場合、予め成形した車両用シート基材11を金型にセットし、その金型にウレタンフォーム原料(この場合は軟質ウレタンフォーム原料)を注入して車両用シート基材11と一体に発泡させる。その際、ウレタンフォーム原料(軟質ウレタンフォーム原料)の接着性によってクッション材21を車両用シート基材11に接着することができ、クッション材21の成形工程と接着工程とを兼ねることができる。
また、車両用シート基材11の前側部分13を構成する樹脂発泡体が、半硬質ウレタンフォームあるいは硬質ウレタンフォームの場合、クッション材21を構成する軟質ウレタンフォームと、車両用シート基材11を構成する半硬質ウレタンフォームあるいは硬質ウレタンフォームとは何れもウレタンフォームからなるため、互いの接着性が良好であり、接着後に剥離のおそれがない。
【0053】
なお、車両用シート10は、ファブリック等からなる表皮材(図示せず)で表面が覆われて車両に取り付けられる。
【実施例】
【0054】
図3に、車両用シート基材を構成する材料(発泡体)の比較例と実施例1~3について、物性を示す。比較例と実施例1~3は、車両用シート基材の前側部分と後側部分の試験サンプルについて、密度、2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ、10%圧縮硬さ、アスカーC硬度、アスカーF硬度を測定した。
【0055】
密度の測定は、JIS K 7222に準拠して行った。
圧縮硬さの測定は、試験サンプル(100mmt×400mm×400mm)を予備圧縮なしで、圧縮速度50mm/minによって荷重が1000Nに達するまで加圧板(直径100mm)で圧縮し、その後、加圧板による圧縮を速度50mm/minで解除して求めた荷重-たわみ曲線における、2%圧縮時の荷重を2%圧縮硬さ、5%圧縮時の荷重を5%圧縮硬さ、10%圧縮時の荷重を10%圧縮硬さとした。
アスカーC硬度の測定は、アスカーC硬度計(加圧面高さ:2.54mm、直径5.08mm)を用い、試験サンプルの加圧面を接触させて硬度を測定した。
アスカーF硬度の測定は、アスカーF硬度計(加圧面高さ:2.54mm、直径25.2mm)を用い、試験サンプルの加圧面を接触させて硬度を測定した。
【0056】
比較例は、車両用シート基材の前側部分と後側部分を、一つの発泡ポリプロピレンで構成する例である。品名:EPP、JPS製の発泡ポリプロピレンを用いた。比較例の発泡ポリプロピレンは、密度が33kg/m3、2%圧縮硬さが1500N、5%圧縮硬さが2500N、10%圧縮硬さが3000N、アスカーC硬度が55度、アスカーF硬度が98度であり、圧縮硬さ及びアスカーC硬度が高く(硬く)、着座初期の感触性及び着座状態でのクッション性が悪く、底付きのおそれがある。
【0057】
実施例1は、車両用シート基材の前側部分を半硬質ウレタンフォーム、後側部分を軟質ウレタンフォームで構成する例である。
半硬質ウレタンフォームは、次の原料からなる半硬質ウレタンフォーム原料からモールド発泡により、100mmt×400mm×400mmの板状からなるサンプルを成形して用いた。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、分子量;1000、官能基数:3、水酸基価;168mgKOH/gからなるポリオール・・・20重量部
・ポリオール2:ポリマーポリオール、固形分(ポリマー含有量)33%、分子量;5000、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・80重量部
・ポリオール3:グリセリン、分子量;92、官能基数:3、水酸基価;1826mgKOH/gからなるポリオール・・・1.2重量部
・発泡剤:水・・・4重量部
・アミン触媒:東ソー製、ETS・・・0.04重量部
・アミン触媒:東ソー製、L33PG・・・1.1重量部
・整泡剤:シリコーン系、MOMENTIVE製、L3184J・・・0.2重量部
・イソシアネート:ジフェニルメタンジイソシアネート、住化コベストロウレタン製、スミジュール44V20L、NCO%:31.8%
・イソシアネートインデックス:100
【0058】
軟質ウレタンフォームは、次の原料からなる軟質ウレタンフォーム原料からモールド発泡により、100mmt×400mm×400mmの板状からなるサンプルを成形して用いた。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、分子量;5000、官能基数;3、水酸基価;33.6mgKOH/gからなるポリオール・・・45重量部
・ポリオール2:ポリエーテルポリオール、分子量;7000、官能基数;3、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・25重量部
・ポリオール3:ポリマーポリオール、固形分(ポリマー含有量)33%、分子量;5000、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・30重量部
・ポリオール4:グリセリン、分子量;92、官能基数;3、水酸基価;1826mgKOH/gからなるポリオール・・・1.1重量部
・発泡剤:水・・・3.5重量部
・アミン触媒:東ソー製、ETS・・・0.05重量部
・アミン触媒:東ソー製、L33PG・・・0.5重量部
・アミン触媒:三井化学製、DEA80・・・1重量部
・整泡剤:シリコーン系、MOMENTIVE製、L3184J・・・0.5重量部
・イソシアネート;トルエンジイソシアネート、住化コベストロウレタン製、デスモジュールT80、NCO%:48.3%
・イソシアネートインデックス:95
【0059】
実施例1において、前側部分を構成する半硬質ウレタンフォームは、密度が40kg/m3、2%圧縮硬さが354N、5%圧縮硬さが576N、10%圧縮硬さが648N、アスカーC硬度が33度、アスカーF硬度が98度であり、着座初期の感触性が良好でクッション性が良好となる硬さである。
後側部分を構成する軟質ウレタンフォームは、密度が55kg/m3、2%圧縮硬さが29N、前側部分との差325N、5%圧縮硬さが54N、前側部分との差522N、10%圧縮硬さが73N、前側部分との差575N、アスカーC硬度が4度、前側部分との差29度、アスカーF硬度が70度、前側部分との差28度であり、2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ及びアスカーC硬度が低いため、着座初期の感触性が良好であり、また、10%圧縮硬さが比較例の発泡ポリプロピレンよりも低いため、着座状態のクッション性が良好で、臀部及びその付近の底付き感を防ぐことができる。
【0060】
さらに、実施例1は、後側部分よりも前側部分で10%圧縮硬さ及びアスカーC硬度が高く(硬く)、かつ後側部分の10%圧縮硬さが73Nであって柔らかいため、着座状態では後側部分の沈み込みが前側部分よりも大きくなって、前記サブマリン現象の発生を抑えることができる。
【0061】
実施例2は、車両用シート基材の前側部分を硬質ウレタンフォーム、後側部分を実施例1と同様の軟質ウレタンフォームで構成する例である。
硬質ウレタンフォームは、次の原料からなる硬質ウレタンフォーム原料からモールド発泡により、100mmt×400mm×400mmの板状からなるサンプルを成形して用いた。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、分子量;400、官能基数;3、水酸基価;420mgKOH/gからなるポリオール・・・95重量部
・ポリオール2:グリセリン、分子量;92、官能基数;3水酸基価;1824mgKOH/gからなるポリオール・・・5重量部
・アミン触媒:東ソー製、L33PG・・・1.5重量部
・整泡剤:東ソー製、L3184J・・・0.5重量部
・イソシアネート:住化コベストロウレタン製、スミジュール44V20L、NCO%:31.5%
・イソシアネートインデックス:105
軟質ウレタンフォームは、実施例1と同様の軟質ウレタンフォーム原料からモールド発泡により、100mmt×400mm×400mmの板状からなるサンプルを成形して用いた。
【0062】
実施例2において、前側部分を構成する硬質ウレタンフォームは、密度が60kg/m3、2%圧縮硬さが2500N、5%圧縮硬さが5500N、10%圧縮硬さが9000N、アスカーC硬度が75度、アスカーF硬度が100度である。
後側部分を構成する軟質ウレタンフォームは、実施例1と同様の物性を有し、密度が55kg/m3、2%圧縮硬さが29N、前側部分との差2471N、5%圧縮硬さが54N、前側部分との差5446N、10%圧縮硬さが73N、前側部分との差8927N、アスカーC硬度が4度、前側部分との差71度、アスカーF硬度が70度、前側部分との差30度であり、後側部分の2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ及びアスカーC硬度が低いため、着座初期の感触性が良好であり、また、10%圧縮硬さが比較例の発泡ポリプロピレンよりも低いため、着座状態のクッション性が良好で、臀部及びその付近の底付き感を防ぐことができる。
【0063】
さらに、実施例2は、後側部分よりも前側部分で10%圧縮硬さ及びアスカーC硬度が高く(硬く)、かつ後側部分の10%圧縮硬さが73Nであって柔らかいため、着座状態では後側部分の沈み込みが前側部分よりも大きくなって、前記サブマリン現象の発生を抑えることができる。
【0064】
実施例3は、車両用シート基材の前側部分を発泡ポリプロピレン、後側部分を実施例1及び2と同様の軟質ウレタンフォームで構成する例である。
前側部分の発泡ポリピロピレンは、比較例と同様であり、品名:EPP、JPS製の発泡ポリプロピレンを、100mmt×400mm×400mmの板状にしたものを用いた。
前側部分を構成する発泡ポリプロピレンは、密度が33kg/m3、2%圧縮硬さが1500N、5%圧縮硬さが2500N、10%圧縮硬さが3000N、アスカーC硬度が55度、アスカーF硬度が98度である。
後側部分を構成する軟質ウレタンフォームは、実施例1及び2と同様の物性を有し、密度が55kg/m3、2%圧縮硬さが29N、前側部分との差1471N、5%圧縮硬さが54N、前側部分との差2446N、10%圧縮硬さが73N、前側部分との差2927N、アスカーC硬度が4度、前側部分との差51度、アスカーF硬度が70度、前側部分との差28度であり、後側部分の2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ及びアスカーC硬度が低いため、着座初期の感触性が良好であり、また、10%圧縮硬さが比較例の発泡ポリプロピレンよりも低いため、着座状態のクッション性が良好で、臀部及びその付近の底付き感を防ぐことができる。
【0065】
次に、車両用シートにおける後側部分の比較例と実施例について、クッション材と車両用シート基材の後側部分の材質、厚み、密度、2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ、10%圧縮硬さ、及びクッション材と車両用シート基材の後側部分の積層状態(車両用シートの後側部分)における10mm圧縮時(着座初期と対応)、20mm圧縮時(着座時と対応)、25mm圧縮時(底付き時と対応)の各荷重測定値と評価を
図4の表に示す。
【0066】
密度、2%圧縮硬さ、5%圧縮硬さ、10%圧縮硬さ、アスカーC硬度は、前記の各測定方法と同様にして測定した。
クッション材が車両用シート基材の後側部分に積層された積層体に対する、10mm圧縮時、20mm圧縮時、25mmの圧縮時の荷重の測定方法は、60mmt×400mm×400mmに裁断した試験サンプルを、予備圧縮なしで、圧縮速度50mm/minとして荷重が1000Nに達するまで圧縮し、その後、圧縮を速度50mm/minで解除して求めた荷重―たわみ曲線において、5%圧縮時、10%圧縮時のそれぞれの荷重を求めた。なお、加圧板は、ISO6549の鉄研盤(300mm×250mm)で行った。
10mm圧縮時の測定値が220N未満の場合に評価「〇」、220以上の場合に評価「×」とした。
20mm圧縮時の測定値が320~380N未満の場合に評価「〇」、320未満、380以上の場合に評価「×」とした。
25mm圧縮時の測定値が520N未満の場合に評価「〇」、520以上の場合に評価「×」とした。
【0067】
比較例は、厚み40mm×400mm×400mm、密度40kg/m3であり、厚み100mm×400mm×400mmの硬さが、2%圧縮硬さ13N、5%圧縮硬さ23N、10%圧縮硬さ32N、アスカーC硬度1度の軟質ウレタンフォーム(クッション材)と、厚み20mm×400mm×400mm、密度33kg/m3であり、厚み100mm×400mm×400mmの硬さが、2%圧縮硬さ1500N、5%圧縮硬さ2500N、10%圧縮硬さ3000N、アスカーC硬度55度の発泡ポリプロピレン(車両用シート基材の後側部分)との積層体(非接着)からなる。
比較例の積層体は、10mm圧縮時の荷重(着座初期)が203N、評価「〇」、20mm圧縮時の荷重(着座時)が350N、評価「〇」、25mm圧縮時の荷重(底付き時)が537N、評価「×」であり、着座初期の感触は良好であるが、底付きが有り、クッション性の悪いものである。
【0068】
なお、比較例の軟質ウレタンフォーム(クッション材)は、次の配合からなる軟質ウレタンフォーム原料を用いてモールド発泡により成形した。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、分子量;5000、官能基数:3、水酸基価;33.6mgKOH/gからなるポリオール・・・30重量部
・ポリオール2:ポリエーテルポリオール、分子量;7000、官能基数:3、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・50重量部
・ポリオール3:ポリマーポリオール、固形分(ポリマー含有量)33%、分子量;5000、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・20重量部
・ポリオール4:グリセリン、分子量;92、官能基数:3、水酸基価;1826mgKOH/gからなるポリオール・・・1.2重量部
・発泡剤:水・・・3.5重量部
・アミン触媒:東ソー製、ETS・・・0.05重量部
・アミン触媒:東ソー製、L33PG・・・0.5重量部
・アミン触媒:三井化学製、DEA80・・・1.2重量部
・整泡剤:シリコーン系、MOMENTIVE製、L3184J・・・0.4重量部
・イソシアネート;住化コベストロウレタン製、デスモジュールT80。NCO%:48.3%
・イソシアネートインデックス:95
また、発泡ポリプロピレン(車両用シート基材の後側部分)は、品名:EPP、JPS製の発泡ポリプロピレンを用い、切り出して形成した。
【0069】
実施例は、厚み40mm×400mm×400mm、密度40kg/m3であり、厚み100mm×400mm×400mmの硬さが、2%圧縮硬さ13N、5%圧縮硬さ23N、10%硬さ32N、アスカーC硬度1度の軟質ウレタンフォーム(クッション材)と、厚み20mm×400mm×400mm、密度55kg/m3であり、厚み100mm×400mm×400mmの硬さが、2%圧縮硬さ29N、5%圧縮硬さ54N、10%硬さ73N、アスカーC硬度4度の軟質ウレタンフォーム(車両用シート基材の後側部分)との積層体(非接着)からなる。
【0070】
実施例の積層体は、10mm圧縮時の荷重(着座初期)が191N、評価「〇」、20mm圧縮時の荷重(着座時)が350N、評価「〇」、25mm圧縮時の荷重(底付き時)が447N、評価「〇」であり、着座初期の感触は良好であり、底付きも無く、クッション性が良好なものである。
【0071】
なお、実施例におけるクッション材の軟質ウレタンフォームは、比較例と同一の配合からなる軟質ウレタンフォーム原料を用いてモールド発泡により成形した。
また実施例における車両用シート基材の後側部分の軟質ウレタンフォームは、次の配合からなる軟質ウレタンフォーム原料を用いてモールド発泡により成形した。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、分子量;5000、官能基数:3、水酸基価;33.6mgKOH/gからなるポリオール・・・45重量部
・ポリオール2:ポリエーテルポリオール、分子量;7000、官能基数:3、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・25重量部
・ポリオール3:ポリマーポリオール、分子量;5000、水酸基価;24mgKOH/gからなるポリオール・・・30重量部
・ポリオール4:グリセリン、分子量;92、官能基数:3、水酸基価;1826mgKOH/gからなるポリオール・・・1.1重量部
・発泡剤:水・・・3.5重量部
・アミン触媒:東ソー製、ETS・・・0.05重量部
・アミン触媒:東ソー製、L33PG・・・0.5重量部
・アミン触媒:三井化学製、DEA80・・・1重量部
・整泡剤:シリコーン系、MOMENTIVE製、L3184J・・・0.5重量部
・イソシアネート;トルエンジイソシアネート、住化コベストロウレタン製、デスモジュールT80、NCO%:48.3%
・イソシアネートインデックス:95
クッション材の軟質ウレタンフォームと車両用シート基材の後側部分の軟質ウレタンフォームは、それぞれ発泡成形した後に積層した。
【0072】
このように、本発明の車両用シート基材と車両用シートは、臀部の座り心地がよく、車両の衝突や急ブレーキをかけた時等による衝撃発生時のサブマリン現象を抑えることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 車両用シート
11 車両用シート基材
13 前側部分(膝裏及びその付近で加圧される部分)
15 後側部分(臀部及びその付近で加圧される部分)
21 クッション材
50 金型
51 下型
53 上型
54 上型の型面
55 下型の型面
55a 前側部分成形用型面
55b 後側部分成形用型面
56 仕切り
131 半硬質ウレタンフォーム原料
151 軟質ウレタンフォーム原料