(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】半導体レーザー装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02255 20210101AFI20250225BHJP
H01S 5/18 20210101ALI20250225BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/18
(21)【出願番号】P 2021102483
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】319006036
【氏名又は名称】シャープ福山レーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 行秀
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祐佑
(72)【発明者】
【氏名】黒瀧 俊哉
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117880(JP,A)
【文献】特開昭62-298194(JP,A)
【文献】特開平06-037402(JP,A)
【文献】特開2003-008143(JP,A)
【文献】特表2021-513226(JP,A)
【文献】特開2012-109201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0022069(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112864793(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発する発光素子と、
前記レーザー光を反射する回転放物面の一部と、
底板部と前記底板部から立上る周壁部とで形成された凹部を有する外殻部と、を備え、
前記発光素子が前記凹部の内側の空間に設けられ、
前記回転放物面の一部が前記凹部の内周面の一部として設けられ、
前記凹部の内側に設けられ、前記発光素子が搭載された基板をさらに備え、
前記内周面は、前記内周面と前記基板との接触を避けるように前記凹部の底面から離れる方向に延びる立上面を含む、
半導体レーザー装置。
【請求項2】
前記発光素子は、前記レーザー光が前記回転放物面の焦点から前記回転放物面の一部へ向かう方向に沿って進行するように配置された、
請求項1に記載の半導体レーザー装置。
【請求項3】
前記発光素子と前記回転放物面の一部とは、前記回転放物面の一部で反射された前記レーザー光が一方向に沿って進行するように配置された、
請求項1または2に記載の半導体レーザー装置。
【請求項4】
それぞれが前記発光素子である複数の発光素子と、
それぞれが前記回転放物面の一部である複数の回転放物面の一部と、を備えた、
請求項1~3のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項5】
前記複数の回転放物面の一部のそれぞれは、所定方向に沿って前記レーザー光を反射するように配置された、
請求項4に記載の半導体レーザー装置。
【請求項6】
前記底板部が貫通孔を有し、
前記発光素子と前記外殻部の外側に露出した電極とが前記貫通孔を経由して電気的に接続された、
請求項
1~5のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項7】
前記内周面は、前記回転放物面の一部とは別に、前記底板部から離れるにしたがって広がる傾斜面を含み、
前記傾斜面と前記凹部の底面とがなす角度が、45°~90°である、
請求項
1~6のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項8】
前記凹部の内側の空間を内包するように前記周壁部の上端に固定された透光性の封止部材をさらに備えた、
請求項
1~7のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項9】
前記発光素子は、前記レーザー光を含む2以上のレーザー光をそれぞれ発する2以上の光出射部を有し、
前記回転放物面の一部が2以上のレーザー光のそれぞれを反射する、
請求項1~
8のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項10】
前記回転放物面の一部は、前記回転放物面が前記回転放物面の対称軸を含む第1仮想平面に沿って分割された2つの部分の一方の一部である、請求項1~
9のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項11】
前記回転放物面の一部は、前記回転放物面の頂点を含む先端部が前記回転放物面の対称軸に対して垂直な第2仮想平面に沿って切り取られた形状をなしている、請求項1~
10のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項12】
前記発光素子と前記回転放物面の一部とは、前記レーザー光が、他の部材で反射されることなく、かつ、前記他の部材を透過することなく、前記発光素子から前記回転放物面の一部へ直接照射されるように配置された、請求項1~
11のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【請求項13】
前記回転放物面の一部が反射膜の表面によって構成された、
請求項1~
12のいずれかに記載の半導体レーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえば、下記の特許文献1に開示されているように、半導体レーザー装置の開発が行われている。一般に、半導体レーザー装置は、レーザー光を発する発光素子と、レーザー光を反射する反射部材と、レーザー光を平行状態にするコリメートレンズと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の半導体レーザー装置によれば、レーザー光を形成するために、反射部材およびコリメートレンズの2つの部品を必要とする。そのため、半導体レーザー装置をさらに小型化することが困難である。
【0005】
本開示は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、小型化された半導体レーザー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体レーザー装置は、レーザー光を発する発光素子と、前記レーザー光を反射する回転放物面の一部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1の半導体レーザー装置の斜視図である。
【
図2】実施の形態1の半導体レーザー装置の平面図である。
【
図4】実施の形態1の半導体レーザー装置の底面図である。
【
図5】実施の形態1の半導体レーザー装置の変形例の底面図である。
【
図6】実施の形態1の半導体レーザー装置の発光素子が発したレーザー光が回転放物面の一部で反射された経路を説明するための断面図である。
【
図7】実施の形態1の半導体レーザー装置の発光素子が発したレーザー光が回転放物面の一部で反射された経路を説明するための立面図である。
【
図8】実施の形態1の半導体レーザー装置の回転放物面の一部に反射膜が設けられた状態を説明するための断面図である。
【
図10】回転放物面が対称軸を含む第1仮想平面に沿って切断された回転放物面の一部を説明するための図である。
【
図11】回転放物面が、対称軸を含む第1仮想平面に沿って切断され、かつ、対称軸に垂直な第2仮想平面に沿って切断された、回転放物面の一部を説明するための図である。
【
図12】実施の形態1の半導体レーザー装置の外殻部の変形例の断面図である。
【
図13】実施の形態1の半導体レーザー装置の外殻部の他の変形例の断面図である。
【
図14】実施の形態2の半導体レーザー装置の外殻部の平面図である。
【
図15】実施の形態2の半導体レーザー装置の外殻部の変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態の半導体レーザー装置を、図面を参照しながら説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、同一又は同等の要素の重複する説明は繰り返さない。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の斜視図である。
図2は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の平面図である。
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図4は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の底面図である。
【0010】
図1~
図4から分かるように、半導体レーザー装置100は、非透光性の外殻部SHと、透光性の封止部材SMと、複数のサブマウントと呼ばれる基板Sと、複数の発光素子LDと、を備えている。本実施の形態においては、複数の発光素子LDは、それぞれ、レーザーダイオードからなり、複数の基板Sの上に搭載されている。それにより、複数の発光素子LDの光出射部の位置が調整されている。放熱性の向上を目的として、外殻部SHの上には金属パターンHSが設けられており、基板Sは金属パターンHSの上に搭載されている。金属パターンHSは外部電源(図示せず)に接続されないノンコネクトの金属(たとえば、金属メッキまたはAuSn蒸着)であってもよい。なお、金属パターンは設けられていなくてもよい。
【0011】
基板Sは、必須の構成ではないため、設けられていなくてもよい。たとえば、複数の発光素子LDは、外殻部SH上の金属パターンHSに直接搭載されていてもよい。複数の発光素子LDは、外殻部SHと透明の封止部材SMとによって形成された凹部CC内の空間であれば、いかなる態様で設けられていてもよい。なお、封止部材SMは、発光素子LDへ埃などが付着することを防止し、また、空気中に含まれるシロキサンを吸着するため、発光素子LDを構成するレーザーダイオードの発振不良を抑制することができる。
【0012】
本実施の形態においては、発光素子LDの数は、4つであるが、1、2、3または5以上のいくつであってもよい。また、複数の発光素子LDは、同一構造を有している必要はなく、異なる構造を有していてもよい。
【0013】
外殻部SHは、底板部BPと周壁部CWとを含む。周壁部CWは、底板部BPから立上る。外殻部SHは、底板部BPと周壁部CWとによって凹部CCを構成している。本実施の形態においては、外殻部SHは、1つの材料で形成されている。言い換えると、底板部BPと周壁部CWとは同一材料で一体的に形成されている。外殻部SHは、放熱性が高く、かつ絶縁性が高い材料、たとえば、SiCまたはAlNのようなセラミックから構成されていることが好ましい。
【0014】
ただし、底板部BPと周壁部CWとが異なる2つの材料で形成されていてもよい。つまり、外殻部SHは、異なる2つの材料の結合によって形成されたものであってもよい。たとえば、底板部BPがSiCまたはAlNのようなセラミックから構成されている一方で、周壁部CWがAl2O3などの比較的に熱伝導率の低い材料で形成されていてもよい。周壁部CWは、比較的に熱伝導率が高い金属材料により構成されていてもよい。ただし、この場合には、金属材料からなる周壁部CWとセラミックスからなる底板部BPとの熱膨張係数の相違に起因して、底板部BPが割れないようにすることが好ましい。
【0015】
複数の基板Sおよび複数の発光素子LDは、凹部CCの内側に設けられている。凹部CCは、平面視において、円形の底面BSと、底面BSを取り囲むように底面BSの周縁から上方へ延びる内周面ICと、を備えている。底面BSは円形の平面である。内周面ICは、円形の底面BSから離れるように延びる立上面RSと、円錐の側面の一部である傾斜面ISと、傾斜面ISから底面BSに沿った方向に窪む回転放物面の一部PSと、を含んでいる。
【0016】
複数の発光素子LDが発したレーザー光は、回転放物面の一部PSで反射され、透明な封止部材SMを通過して半導体レーザー装置100の外部へ放出される。回転放物面の一部PSは、後で詳細に説明される。
【0017】
複数の回転放物面の一部PSは、平面視にて円形をなす内周面ICにおいて均等な角度の間隔が形成されるように配置されていてもよい。つまり、複数の発光素子Lのそれぞれは、360°を複数の発光素子Lの数、たとえば、4で割った角度の場合は90°ごとに配置できる。これにより、透光性の封止部材SMを通過して半導体レーザー装置100の外部へ放出される光の半導体レーザー装置100の中心線に対する対称性が改善される効果を期待できる。
【0018】
底板部BPは、一対の貫通孔THを有している。一対の貫通孔THは、一対の導電性のプラグP1,P2で塞がれている。底板部BPの下側面LSには、一対の電極ACが設けられている。なお、貫通孔THの数は、2つに限定されず、3以上の多数の貫通孔THを底板部BPに設けてもよい。多数の貫通孔THが底面部BPに設けられていれば、多数のプラグを設けることができる。そのため、それぞれの発光素子LDへ流入する電流および発光素子LDから流出する電流に対するプラグPの抵抗値を小さくすることができる。なお、一対のプラグP1,P2のそれぞれの代わりに、ハーメチックシールとリードピンが用いられてもよい。
【0019】
上記から分かるように、一対の電極ACは、それぞれ、一対の導電性のプラグP1,P2に電気的に接続されている。なお、一対のプラグP1,P2のそれぞれは、たとえば、タングステン(W)で形成されている。電極Aと電極Cとからなる一対の電極ACは、発光素子LDのアノードとカソードとのそれぞれに電気的に接続される。電極Aおよび電極Cは、外殻部SHを構成する表面のうちの凹部CCが設けられている表面とは逆側の表面、より具体的には、
図3に示される外殻部SHの下面に固定されている。なお、電極Aおよび電極Cの外殻部SHに対する配置は、電極Aおよび電極Cが外殻部SHの外部空間、すなわち、凹部CC内の空間以外の空間に露出していれば、いかなるものであってもよい。
【0020】
底面部BPの内側面、すなわち、底面BSの上には、互いに電気的に絶縁された一対の導電性の平板FP1および平板FP2が設けられている。一対の平板FP1および平板FP2は、それぞれ、複数の電気配線Wによって直列に接続された複数の発光素子LDの両端に電気的に接続されている。なお、複数の電気配線Wのうちいくつかは、一端が発光素子LDに接続され、かつ、他の一端が基板Sの上面に形成された配線パターン(図示せず)に接続されている。基板Sは、たとえば、AlNまたはSiC等の材料で形成されており、基板S上の配線パターンは、たとえばTi/Pt/Auで形成される。
【0021】
なお、複数の発光素子LDのそれぞれが、一対の電極ACに並列に接続されていてもよい。この場合、いずれかの電気配線Wの切断等に起因して複数の発光素子LDの全てが発光できなくなるような不具合の発生を防止することができる。
【0022】
本実施の形態においては、複数の基板Sは、それぞれ、複数の金属パターンHSの上に設けられている。したがって、複数の発光素子LDが発した熱は、複数の基板S、複数の金属パターンHS、底板部BP、および一対の電極ACを経由して、外殻部SHの外部へ放出される。
【0023】
内周面ICは、凹部CCの底面BSから離れるように延びる立上面RSを含んでいる。立上面RSは、内周面ICと基板Sとの接触を避けるように設けられている。つまり、立上面RSは、円錐面をなす内周面ICの下端部から底面BSに対してほぼ垂直に延びる。そのため、平面視において長方形の基板Sの角部が円錐面をなす内周面ICの下端部に接触しない。なお、回転放物面の一部PSは、回転放物面の頂点を含む先端部が回転放物面の対称軸に対して垂直な仮想平面に沿って切り取られた形状をなしている。これに関しては、後で詳細に説明する。
【0024】
本実施の形態においては、立上面RSは、断面視において、底面BSに対して垂直であり、円柱の周面の形状をなしているが、たとえば、外殻部SHを金型成形にて形成する場合、凹部CCを形成するための金型の抜き易さの観点から、底面BSから離れるにしたがって横断面の円形の直径が大きくなっていてもよい。
【0025】
透光性の封止部材SMは、板状の部材であり、たとえば、リッドガラスからなる。封止部材SMは、凹部CCの内側の空間を内包するように、外殻部SHに対して設けられている。封止部材SMは、周壁部CWの上端に固定されている。それにより、発光素子LDを内包する空間が密閉されている。たとえば、周壁部CWがセラミックスからなる場合、周壁部CWの上端面に設けられた金属パターンと封止部材SMを構成するリッドガラスとが半田付けまたは共晶により接合されている。また、たとえば、周壁部CWが金属からなる場合、周壁部CWの上端面に封止部材SMを構成するリッドガラスが直接接合されている。
【0026】
図5は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の変形例の底面図である。
【0027】
図5に示されるように、電極Aと電極Cとの間に、いずれの発光素子LDにも電気的に接続されていない放熱板NCが設けられていてもよい。これによれば、電気伝導の機能を果たす電極Aおよび電極Cと、放熱の機能を果たす放熱板NCとが物理的に分離されている。そのため、放熱の機能を果たす放熱板NCが電気伝導の機能を果たす電極Aおよび電極Cに悪影響を与えることを抑制することができる。なお、
図4に示された構造によれば、電極Aと電極Cとは、複数の発光素子LDが発する熱を外部へ放出する放熱板としても機能する。
【0028】
図6は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の発光素子LDが発したレーザー光Lが回転放物面の一部PSで反射された経路を説明するための断面図である。
図7は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の発光素子LDが発したレーザー光Lが回転放物面の一部PSで反射された経路を説明するための立面図である。
【0029】
図6および
図7に示されるように、本実施の形態の半導体レーザー装置100は、発光素子LDと、回転放物面の一部PSと、を備えている。発光素子LDは、レーザー光Lを発する。本実施の形態においては、複数の発光素子LDのそれぞれが発したレーザー光Lは、凹部CCの底面BSに沿って進行し、回転放物面の一部PSで反射された後、凹部CCの底面BSに略垂直な方向に沿って進行するものとする。そのため、本実施の形態においては、発光素子Lと回転放物面の一部PSとは、レーザー光Lが、他の部材で反射されることなく、かつ、他の部材を透過することなく、発光素子Lから回転放物面の一部PSへ直接照射されるように、配置されている。また、凹部CC内に複数の発光素子LDを設けることができ、かつ、同一方向に沿って複数のレーザー光Lを発することができる。そのため、半導体レーザー装置100を大型化させることなく、半導体レーザー装置100の出力を向上させることができる。
【0030】
図6および
図7から分かるように、本実施の形態の回転放物面の一部PSで反射されたレーザー光Lは、いずれの方向から見ても、広くなったり、狭くなったりすることなく、ほぼ同一の幅で一方向に進行する。より好ましくは、レーザー光は、いずれの方向から見ても、広くなったり、狭くなったりすることなく、同一の幅で一方向に沿って進行する。これは、発光素子LDのレーザー光Lを出射する光出射部LEが回転放物面の焦点Fとほぼ一致する位置に設けられているからである。ただし、半導体レーザー装置100に求められるレーザー光Lの指向性の要件を満たすのであれば、発光素子LDのレーザー光Lを出射する光出射部LEが回転放物面の焦点Fから多少ずれた位置に設けられていてもよい。
【0031】
本実施の形態の回転放物面の一部Pは、反射鏡とコリメータレンズとの双方の役割を果たす。そのため、半導体レーザー装置100の小型化が図られる。また、反射面が球形の一部である場合に比較して、焦点が一つに定まるため、平行なレーザー光を形成し易い。
【0032】
図8は、実施の形態1の半導体レーザー装置100の回転放物面の一部PSに反射膜RFが設けられた状態を説明するための断面図である。
【0033】
図8に示されるように、本実施の形態においては、反射膜RFが回転放物面の一部PSを覆うように設けられている。反射膜RFは、回転放物面の一部PSの表面に沿って設けられている。そのため、反射膜RFの表面も、回転放物面の一部を構成する形状を有する。したがって、
図8に示される構造の場合、発光素子LDが発したレーザー光を反射する回転放物面の一部PSは、反射膜RFの表面である。反射膜RFでのレーザー光Lの反射率は、回転放物面の一部PSでのレーザー光Lの反射率よりも高い。
【0034】
反射膜RFは、誘電体多層膜、たとえば、SiO2/TiO2の積層膜などであることが望ましい。誘電体多層膜の積層の組み合わせによっては、レーザー光Lの波長範囲に対して高い反射率を有する反射膜を形成できる。また、誘電体多層膜は、レーザー光Lを照射することに起因した組成の変化が起こりにくいため、焼損し難い。また、反射膜RFは、金属反射膜を下地とする反射ミラーであってもよい。なお、反射膜RFは、回転放物面の一部PSにのみ設けられているが、回転放物面の一部PS以外の内周面ICに設けられていてもよい。また、反射膜PFは、回転放物面の一部PSの反射率が所望の反射率を有しているのであれば、設けられていなくてもよい。また、反射膜RFは、回転放物面の一部PSを全体的に覆っていても、回転放物面の一部PSを部分的に覆っていてもよい。
【0035】
図9は、回転放物面RPSを説明するための図である。
図10は、
図9に示された回転放物面RPSが対称軸SAを含む第1仮想平面VP1に沿って切断された回転放物面の一部PSを説明するための図である。
図11は、回転放物面RPSが、対称軸SAを含む第1仮想平面VP1に沿って切断され、かつ、対称軸V1に垂直な第2仮想平面VP2に沿って切断された、回転放物面の一部PSを説明するための図である。
【0036】
図10に示される回転放物面の一部PSは、
図9に示される回転放物面RPSが回転放物面RPSの対称軸SAを含む第1仮想平面VP1に沿って分割された2つの部分の一方である。
図11に示される回転放物面の一部PSは、
図10に示される回転放物面の一部PSの回転放物面RPSの頂点Tを含む先端部が回転放物面RPSの対称軸SAに対して垂直な第2仮想平面V2に沿って切り取られた形状をなしている。なお、本実施の形態の回転放物面の一部PSは、
図11に示される回転放物面の一部PSの内側のいずれかの一部の領域として切り取られた曲面である。
【0037】
本実施の形態においては、複数の発光素子LDと、複数の回転放物面の一部PSとは、1対1の関係で設けられている。ただし、複数の回転放物面の一部PSのいずれかに向かってレーザー光Lを発する発光素子が設けられていなくてもよい。つまり、複数の発光素子LDの数は、複数の回転放物面の一部PSの数より少なくてもよい。半導体レーザー装置100に必要とされるレーザー光Lの強度に応じて発光素子LDの数を調整することを可能にするためである。
【0038】
複数の回転放物面の一部PSのそれぞれは、レーザー光Lを反射する。なお、回転放物面RPSは、放物線の対称軸を中心軸として、放物線を中心軸まわりに回転させたときの軌跡によって描かれる曲面である。回転放物面RPSの中心軸に垂直な断面は円である。本実施の形態の回転放物面の一部PSは、回転放物面の対称軸に垂直ないずれの断面においても、円弧状をなしている。
【0039】
複数の発光素子LDのそれぞれは、レーザー光Lが回転放物面RPSの焦点Fから回転放物面の一部PSへ向かう方向に沿って進行するように配置されている。回転放物面RPSの焦点Fは、回転放物面RPSを構成する全ての放物線の焦点であり、回転放物面の一部PSで反射されたレーザー光Lが実質的に平行光になる光出射部LEにほぼ一致することが好ましい。
【0040】
発光素子LDと回転放物面の一部PSとは、回転放物面の一部PSで反射されたレーザー光Lが一方向に沿って進行するように配置されている。これは、半導体レーザー装置100が指向性の高いレーザー光Lを発するためには、発光素子LDと回転放物面RPSの焦点Fとが一致し、回転放物面の一部PSで反射された光が平行光となることが好ましいからである。
【0041】
ただし、回転放物面の一部PSで反射されたレーザー光Lが一方向に沿って進行するためには、発光素子LDと回転放物面RPSの焦点Fとが完全に一致していなくてもよい。つまり、回転放物面の一部PSで反射されたレーザー光Lが一方向に沿って進行するためには、発光素子LDと回転放物面RPSの焦点Fとが多少ずれていてもよい。言い換えると、半導体レーザー装置100が発するレーザー光Lは、半導体レーザー装置100に必要とされる性能に応じて、おおよそ、回転放物面の一部PSで反射されたレーザー光Lが一方向に沿って進行しているとみなせる程度であればよい。
【0042】
複数の回転放物面の一部PSのそれぞれは、所定方向に沿ってレーザー光Lを反射するように配置されていることが好ましい。つまり、複数の回転放物面の一部PSは、複数の実質的に平行なレーザー光Lを実質的に平行に反射するように設けられていることが好ましい。ただし、複数の回転放物面の一部PSのそれぞれで反射された複数のレーザー光Lは、所望の性能を有していれば、完全に平行に進行しなくてもよい。複数の回転放物面の一部PSのそれぞれで反射された複数のレーザー光Lは、おおよそ、同一方向と考えられる所定方向に沿って進行していればよい。これによれば、半導体レーザー装置100は、指向性が高いレーザー光Lを発することができる。
【0043】
半導体レーザー装置100は、底板部BPと底板部BPから立上る周壁部CWとで形成された凹部CCを有する外殻部SHを備えている。発光素子LDが凹部CCの内側の空間に設けられている。回転放物面の一部PSが凹部CCの内周面ICの一部として設けられている。これによれば、内周面ICを形成する工程とは別の工程で回転放物面の一部PSを形成する必要がない。つまり、内周面ICと回転放物面の一部PSとを同一工程で形成することができる。そのため、半導体レーザー装置100の製造工程を複雑化させることが防止できる。
【0044】
また、底板部BPが貫通孔THを有し、発光素子LDと外殻部SHの外側に露出した一対の電極ACとが貫通孔TH内の一対のプラグP1,P2を経由して電気的に接続されている。これによれば、発光素子LDから一対の電極ACまで電気経路が発光素子LDから発せられたレーザー光Lの進行を妨げるおそれを低減することができる。そのため、回転放物面の一部PSの設置位置の自由度が増加する。
【0045】
内周面ICは、回転放物面の一部PSとは別に傾斜面ISを含んでいる。傾斜面ISは、底板部BP、すなわち底面部BSから離れるにしたがって広がっている。傾斜面ISは、円錐の周面が円錐の中心線に垂直な二つの仮想平面に沿って切り取られた面の一部であって、その二つの仮想平面の間の面から回転放物面の一部PSを除いた面である。
【0046】
図12は、実施の形態1の半導体レーザー装置の外殻部SHの変形例の断面図である。内周面ICは、回転放物面の一部PSとは別に傾斜面ISを含んでいる。
図12おいては、凹部CCの傾斜面ISと凹部CCの底面BSとがなす角度(外殻部SHを構成する部分の角度)が、90°である。
【0047】
図13は、実施の形態1の半導体レーザー装置の外殻部SHの他の変形例の断面図である。凹部CCの傾斜面ISと凹部CCの底面BSとがなす角度(外殻部SHを部分を構成すす部分の角度)が、45°である。
【0048】
なお、
図12および
図13は、回転放物面の一部PSは、回転放物面RPSの頂点Tを含む面である。
【0049】
図12および
図13に示されるように、凹部CCの断面視において、傾斜面ISと底面BSとがなす角度が、45°~90°であることが好ましい。傾斜面ISと底面BSとがなす角度が45°より小さいと、回転放物面の一部PSの形成できる面が狭くなる。また、傾斜面ISと底面BSとがなす角度が90°より大きいと、オーバーング構造が形成されてしまうため、金型を抜くことができないからである。
【0050】
外殻部SHは、3Dプリンタを用いた積層構造によって形成されてもよい。これらの製法によれば、滑らかな曲面かなる回転放物面の一部PSを形成することができる。なお、外殻部SHは、本実施の形態の製法に限らず、金型成形等のいかなる方法によって形成されてもよい。
【0051】
なお、発光素子LDは、2以上のレーザー光Lをそれぞれ発する2以上の光出射部LEを有していてもよい。また、回転放物面の一部PSが2以上のレーザー光Lのそれぞれを反射する。たとえば、発光素子LDが発光点を2つ持つ構成である場合、1つの発光素子LDが2つのレーザー光Lを発する。また、1つの回転放物面の一部PSが、発光点を2つ持つ発光素子LDから出射された2つのレーザー光を反射する。これによれば、発光素子LDの数を増加させることなく、半導体レーザー装置100の出力を増加させることができる。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態2の半導体レーザー装置を説明する。なお、下記において実施の形態1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態の半導体レーザー装置100は、次の点で、実施の形態1の半導体レーザー装置100と異なる。
【0053】
図14は、実施の形態2の半導体レーザー装置100の外殻部SHの平面図である。
図14から分かるように、本実施の形態においては、傾斜面ISが、角錐の側面の一部である。傾斜面ISは、角錐の中心軸に垂直な二つの仮想平面に沿って切り取られた面の一部であって、角錐の周面から回転放物面の一部PSを除いた面である。本実施の形態の角錐の一部の傾斜面ISを有する半導体レーザー装置100によっても、実施の形態1の円錐の一部の傾斜面ISを有する半導体レーザー装置100によって得られる効果と類似の効果を得ることができる。なお、本実施の形態においては、底面BSは、正方形または長方形である。
【0054】
図15は、実施の形態2の半導体レーザー装置100の外殻部SHの変形例の平面図である。
図15に示されるように、前述の傾斜面ISを構成する各平面は、1つの回転放物面の一部PSを有するだけでなく、複数の回転放物面の一部PSを有していてもよい。これによっても、実施の形態1の円錐の一部の傾斜面ISを有する半導体レーザー装置100によって得られる効果と類似の効果を得ることができる。
【0055】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、凹部CCの断面視において、傾斜面ISと底面BSとがなす角度が45°~90°であることが好ましい。
【0056】
本実施の形態においては、角錐は、四角錐であるが、三角錐、五角錐、六角錐、八角錐、十角錐、または十二角錐など、いかなる多角錐であってもよい。ただし、多角錐は、底面の各辺の長さが同一である正多角錐であることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
100 半導体レーザー装置
BP 底板部
BS 底面
CC 凹部
CW 周壁部
IC 内周面
IS 傾斜面
L レーザー光
LD 発光素子
LE 光出射部
PS 回転放物面の一部
RS 立上面
SH 外殻部
SM 封止部材
TH 貫通孔