(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】自動走行方法、コンバイン及び自動走行システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250225BHJP
A01D 41/127 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01D41/127
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2021133145
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】大森 康永
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-083386(JP,A)
【文献】特開2020-120586(JP,A)
【文献】特開2019-106926(JP,A)
【文献】特開2020-064663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0084851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
A01D 41/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における刈取走行を自動的に行うコンバインの自動走行方法であって、
前記コンバインが貯留している穀粒を回収する
外部の回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得工程と、
前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定工程と、
前記複数の作業ブロック毎に、
予め設定された作業経路に沿って前記刈取走行を自動的に行う自動刈取走行工程と、を有
し、
前記作業ブロック設定工程は、1つ以上の前記作業ブロックで収穫される穀粒の収穫予想量が、前記回収可能量と略同量となるように、1つ以上の前記作業ブロックを設定することを特徴とする自動走行方法。
【請求項2】
圃場における刈取走行を自動的に行うコンバインの自動走行方法であって、
前記コンバインが貯留している穀粒を回収する外部の回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得工程と、
前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定工程と、
前記圃場の外周形状に沿って外周刈取走行を行う外周刈取走行工程と、
前記複数の作業ブロックを区画する境界に沿って区画刈取走行を行う区画刈取走行工程と、
前記複数の作業ブロック毎に、予め設定された作業経路に沿って前記刈取走行を自動的に行う自動刈取走行工程と、を有し、
前記作業ブロック設定工程は、前記外周刈取走行で収穫される穀粒の外周収穫量と、前記区画刈取走行で収穫される穀粒の区画収穫量と、1つ以上の前記作業ブロックで収穫される穀粒の収穫予想量との総量が、前記回収可能量と略同量となるように、1つ以上の前記作業ブロックを設定することを特徴とする自動走行方法。
【請求項3】
前記コンバインが貯留している穀粒を前記回収部に排出する排出作業工程を有し、
前記自動刈取走行工程は、1つ以上の前記作業ブロックの前記刈取走行が完了したとき、前記コンバインが貯留している穀粒の貯留量が前記回収可能量と略同量となった場合、前記排出作業工程に移行することを特徴とする請求項1
又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記コンバインが貯留している穀粒を前記回収部に排出する排出作業工程を有し、
前記自動刈取走行工程は、前記各作業ブロックの前記刈取走行を順次行うとき、所定の前記作業ブロックの前記刈取走行の完了時に前記コンバインが貯留している穀粒の貯留量に、所定の前記作業ブロックに後続する前記作業ブロックで収穫される穀粒の収穫予想量を加算すると、前記コンバインの貯留可能量を超える場合には、所定の前記作業ブロックの前記刈取走行が完了したときに、前記排出作業工程に移行することを特徴とする請求項1
又は2に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記回収可能量取得工程は、複数の前記回収部について、前記各回収部の前記回収可能量を取得し、
前記作業ブロック設定工程は、前記各回収部の前記回収可能量に基づいて、前記各回収部に対応する1つ以上の前記作業ブロックを設定するように前記圃場内に複数の作業ブロックを設定することを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の自動走行方法。
【請求項6】
複数の前記回収部に対して、排出作業を行う排出順を設定し、
前記自動刈取走行工程は、前記排出順の早い前記回収部に対応する前記作業ブロックから前記刈取走行を行うことを特徴とする請求項
5に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記作業ブロック設定工程は、前記排出順の早い前記回収部に対応する前記作業ブロックを、前記回収部に最も近い位置となるように設定することを特徴とする請求項
6に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記区画刈取走行工程は、前記圃場の条方向との交差方向において一端側から他端側に向かって前記圃場を前記複数の作業ブロックに分割するように前記区画刈取走行を行い、
前記自動刈取走行工程は、前記他端側の前記作業ブロックから前記刈取走行を行うことを特徴とする請求項
2に記載の自動走行方法。
【請求項9】
圃場における刈取走行を自動的に行うコンバインであって、
前記コンバインが貯留している穀粒を回収する
外部の回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得部と、
前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定部と、
前記複数の作業ブロック毎に、
予め設定された作業経路に沿って前記刈取走行を自動的に行う走行制御部と、
を備え
、
前記作業ブロック設定部は、1つ以上の前記作業ブロックで収穫される穀粒の収穫予想量が、前記回収可能量と略同量となるように、1つ以上の前記作業ブロックを設定することを特徴とするコンバイン。
【請求項10】
圃場における刈取走行を自動的に行うコンバイン
と、前記コンバインに通信可能な携帯端末とを有する自動走行システムであって、
前記携帯端末は、
前記コンバインが貯留している穀粒を回収する
外部の回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得部と、
前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定部と、
を備え、
前記コンバインは、
前記複数の作業ブロック毎に、
予め設定された作業経路に沿って前記刈取走行を自動的に行う走行制御部を備え
、
前記作業ブロック設定部は、1つ以上の前記作業ブロックで収穫される穀粒の収穫予想量が、前記回収可能量と略同量となるように、1つ以上の前記作業ブロックを設定することを特徴とする自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に複数の作業ブロックを設定して各作業ブロックの刈取走行を行うコンバインの自動走行方法、コンバイン及び自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈の刈取を行うコンバインは、圃場に複数の作業ブロックを設定して各作業ブロックの刈取走行を行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1は、データ交換しながら作業地を協調的に作業走行する複数の作業車のための作業車自動走行システムに関するものであり、圃場が大きい場合、中割と呼ばれる走行経路で圃場を複数の区画に区分けする中割領域を作り出す作業を行い、中割位置指定をタッチパネルの画面に表示された作業地の外形図に対するタッチ操作で行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、作業者が圃場を目視して中割の回数及び位置を任意に設定することで、中割で区画される各作業ブロックの大きさが設定されることになるが、圃場における作業状況を考慮して各作業ブロックの大きさを設定することができない。例えば、所定の作業ブロックの刈取作業を完了したコンバインは、貯留した穀粒を全て回収部に排出してから、次の作業ブロックの刈取作業に移行することが通常である。しかしながら、作業ブロックの収穫量によっては、回収部の回収量が満量になっても、コンバインの貯留穀粒が残存してしまうことがある。このように、圃場における作業状況に拘わらず作業ブロックの大きさが設定されると、コンバインの刈取作業及び排出作業、並びに回収部側の作業等の作業性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、圃場における作業状況に合わせて作業ブロックを設定することで作業性を向上することができる自動走行方法、コンバイン及び自動走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自動走行方法は、圃場における刈取走行を自動的に行うコンバインの自動走行方法であって、前記コンバインが貯留している穀粒を回収する回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得工程と、前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定工程と、前記複数の作業ブロック毎に、前記刈取走行を自動的に行う自動刈取走行工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明のコンバインは、圃場における刈取走行を自動的に行うコンバインであって、前記コンバインが貯留している穀粒を回収する回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得部と、前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定部と、前記複数の作業ブロック毎に、前記刈取走行を自動的に行う走行制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の自動走行システムは、圃場における刈取走行を自動的に行うコンバインの自動走行システムであって、前記コンバインが貯留している穀粒を回収する回収部の回収可能量を取得する回収可能量取得部と、前記回収部の前記回収可能量に基づいて、前記圃場内に複数の作業ブロックを設定する作業ブロック設定部と、前記複数の作業ブロック毎に、前記刈取走行を自動的に行う走行制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圃場における作業状況に合わせて作業ブロックを設定することで作業性を向上することができる自動走行方法、コンバイン及び自動走行システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るコンバインのブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るコンバインの動作例の圃場を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るコンバインの動作例の圃場を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて自動刈取走行から排出作業への移行までの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係るコンバインの第1改良例の動作例の圃場を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るコンバインの第2改良例の動作例の圃場を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るコンバインの第3改良例の動作例の圃場を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態によるコンバイン1について
図1等を参照して説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。コンバイン1は、例えば、自動運転によって操向を制御する一方、手動操作に応じて走行速度を制御するオート作業や、自動運転によって操向及び走行速度を制御する無人作業を行うように構成され、圃場内で自律して走行、旋回及び作業することができる。
【0013】
コンバイン1は、穀稈の複数の条列に対して、刈取可能条数以内の所定条数を刈取幅とする直線状の条列の行程を走行しながらそれらの条列の刈取作業を行う。コンバイン1は、手動走行モード及び自動走行モードの何れかの走行モードが設定される。コンバイン1は、手動走行モードが設定されている場合、作業者による操縦部9の操縦に応じて手動走行を行うように構成される。
【0014】
一方、コンバイン1は、自動走行モードが設定されている場合、
図3等に示すように、圃場Aに設定された作業ブロックBにおいて、予め設定された作業経路に従って自動走行しながら自動刈取する自動刈取走行を行うように構成される。例えば、コンバイン1は、作業ブロックBの未刈穀稈を有する領域C(以下、未刈領域と称する)において複数の作業経路を往復する往復刈りや、未刈領域Cの内周に沿った作業経路の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈り等の走行パターンの自動刈取走行を行う。
【0015】
コンバイン1は、自動刈取走行を行う作業ブロックBを圃場Aに形成するために、圃場Aの外周形状に沿って手動走行又は自動走行で外周刈取走行を行う。また、コンバイン1は、圃場A内に複数の作業ブロックBを作成するために、隣接する作業ブロックBを区画する境界に沿って手動走行又は自動走行で区画刈取走行を行い、隣接する作業ブロックBの間に中割Dを形成する。複数の作業ブロックBは、圃場Aの条方向との交差方向に分割される。
【0016】
コンバイン1は、刈取走行を行いながら圃場Aから収穫した穀粒を貯留していて、所定の貯留量の穀粒を貯留すると、貯留している穀粒を回収部Kに対して排出するために排出作業を行う。コンバイン1は、圃場A内で回収部Kに隣接する排出位置まで移動して、穀粒を回収部Kに排出する。コンバイン1は、排出作業として、手動走行又は自動走行で排出位置まで排出走行を行う。また、排出作業を行う前に、これから排出作業を行うことを作業者へ通知してもよい。
【0017】
回収部Kは、コンバイン1の外部機器であり、移動式のトラックや設置式のコンテナ等で構成され、圃場外周を構成する一辺、例えば、圃場外側の道路等に配置され、回収した穀粒を他の保管場所等へ移送するために収容する。回収部Kには、穀粒を回収可能な最大量を示すデータとして回収可能量が設定され、回収可能量と略同量の穀粒を回収した場合、例えば、回収可能量より僅かに少ない所定の規定量以上、回収可能量以下の穀粒を回収した場合に、回収を完了する。
【0018】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0019】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン27から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0020】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、刈取可能条数以内の条列の刈取作業を行う。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。デバイダ13は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、刈取可能条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0021】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0022】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、送風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。送風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び送風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び送風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0023】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク24と、排出装置25とを備える。グレンタンク24は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。貯留部6には、グレンタンク24が穀粒を貯留可能な最大量を示すデータとして貯留可能量が設定される。排出装置25は、オーガ等で構成され、グレンタンク24に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。また、貯留部6は、グレンタンク24に貯留されている穀粒の貯留量を検出する貯留検出部26を備える(
図2参照)。
【0024】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。排藁搬送装置は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された排藁を切断して機外へ排出する。
【0025】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン27を備える。動力部8は、エンジン27が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。
【0026】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、作業者が座る座席である運転席の周囲に、コンバイン1の走行を操縦するための操作具として、コンバイン1の機体の旋回を指示するためのハンドルや、コンバイン1の前後進の速度変更を指示するための主変速レバー及び副変速レバー等を備える。コンバイン1の手動走行は、操縦部9のハンドルや主変速レバー及び副変速レバーの操作を受け付けた走行部2によって実行される。また、操縦部9は、刈取部3による刈取作業、脱穀部4による脱穀作業、貯留部6の排出装置25による排出作業等を操作するための機構を備える。
【0027】
コンバイン1は、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する測位ユニット28を備えている。測位ユニット28は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット28の位置情報、すなわち、コンバイン1の位置情報を取得する。
【0028】
次に、コンバイン1の制御装置30について
図2を参照して説明する。制御装置30は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部31や、外部機器と通信を行う通信部32に接続されている。
【0029】
記憶部31は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置30が、記憶部31に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。制御装置30は、例えば、測位ユニット28からコンバイン1の位置情報を取得する。
【0030】
通信部32は、無線通信アンテナを介して、作業者の保有する携帯端末40等の外部機器と無線通信可能となる。制御装置30は、通信部32を制御して携帯端末40と無線通信を行い、携帯端末40との間で各種情報を送受信する。
【0031】
また、制御装置30は、記憶部31に記憶されたプログラムを実行することにより、走行制御部35及び排出作業部36として動作する。なお、走行制御部35は、本発明に係る自動走行方法の自動刈取走行工程、外周刈取走行工程及び区画刈取走行工程を実現し、排出作業部36は、自動走行方法の排出作業工程を実現する。
【0032】
走行制御部35は、自動走行モードが設定されている場合、コンバイン1の自動走行を制御するものである。例えば、走行制御部35は、圃場Aに対して作業ブロックBが設定されて作業ブロックBに対して作業経路が設定されている場合、作業ブロックBに対して自動刈取走行を行うために、この作業経路を携帯端末40から取得する。走行制御部35は、自動刈取走行を開始すると、測位ユニット28からコンバイン1の位置情報を取得し、位置情報及び作業経路に基づいて、コンバイン1が作業経路に沿って自動的に刈取走行を行うように動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御する。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、走行制御部35は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0033】
走行制御部35は、圃場Aに対して外周刈取走行を行うために、圃場外周を構成する圃場端の形状、即ち、外周形状の情報を携帯端末40から取得する。走行制御部35は、外周刈取走行を開始すると、測位ユニット28からコンバイン1の位置情報を取得し、位置情報及び外周形状に基づいて、コンバイン1が外周形状に沿って自動的に刈取走行を行うように動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御する。例えば、走行制御部35は、外周形状の各辺に平行な自動直進走行を行うように各部を制御する。
【0034】
走行制御部35は、圃場Aに対して複数の作業ブロックBが設定されて隣接する作業ブロックBを区画する境界に中割Dが設定されている場合、圃場Aに対して区画刈取走行を行うために、中割情報を携帯端末40から取得する。走行制御部35は、区画刈取走行を開始すると、測位ユニット28からコンバイン1の位置情報を取得し、位置情報及び中割情報に基づいて、コンバイン1が中割Dに沿って自動的に刈取走行を行うように動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御する。
【0035】
走行制御部35は、回収部Kに隣接する排出位置までの排出走行が自動走行に設定されている場合、排出位置までの排出経路を携帯端末40から取得する。走行制御部35は、自動走行の排出走行を開始すると、測位ユニット28からコンバイン1の位置情報を取得し、位置情報及び排出経路に基づいて、コンバイン1が排出経路に沿って排出位置まで移動する排出走行を行うように動力部8並びに走行部2を制御する。
【0036】
排出作業部36は、コンバイン1が貯留している穀粒を回収部Kに排出する排出作業を行う。例えば、排出作業部36は、貯留部6のグレンタンク24に貯留している穀粒を回収部Kに排出するように貯留部6の排出装置25を制御する。
【0037】
携帯端末40は、コンバイン1の構成要素の一つであって、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であり、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末40と同様の操作装置が操縦部9に備えられてもよい。本発明では、コンバイン1や携帯端末40によって自動走行システムが構成される。
【0038】
携帯端末40は、
図2に示すように、CPU等のコンピュータで構成される制御装置41を備えていて、制御装置41は、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部42や、外部機器と通信を行う通信部43に接続されている。また、携帯端末40は、様々な情報を表示して作業者に出力するためのタッチパネルやモニタ等の表示部44を備え、また、作業者からの様々な情報の入力操作を受け付けるためのタッチパネルや操作キー等の入力部45を備える。
【0039】
記憶部42は、携帯端末40の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置41が、記憶部42に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、携帯端末40の各種構成要素及び各種機能を制御する。記憶部42は、例えば、コンバイン1の作業対象である圃場Aの圃場情報を記憶する。圃場情報は、圃場外周を構成する圃場端の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場Aの作業領域の形状、大きさ及び位置情報(座標等)、圃場A内で回収部Kに隣接する排出位置等を含む。
【0040】
通信部43は、無線通信アンテナを介して、コンバイン1の通信部32と通信可能に接続される。制御装置41は、通信部43を制御してコンバイン1と無線通信を行い、コンバイン1との間で各種情報を送受信する。
【0041】
携帯端末40の制御装置41は、記憶部42に記憶されたプログラムを実行することにより、回収可能量取得部50、作業ブロック設定部51、作業経路作成部52及び排出作業移行部53として動作する。なお、回収可能量取得部50、作業ブロック設定部51、作業経路作成部52及び排出作業移行部53は、本発明に係る自動走行方法の回収可能量取得工程、作業ブロック設定工程、作業経路作成工程及び排出作業移行工程を実現するものである。
【0042】
回収可能量取得部50は、コンバイン1が貯留している穀粒を回収する回収部Kの回収可能量を取得する。例えば、回収可能量取得部50は、回収可能量を記憶する回収部Kやサーバ等の外部機器と通信を行うことで、回収可能量を取得する。あるいは、回収可能量取得部50は、作業者による携帯端末40の操作に応じて入力又は選択された回収可能量を取得してもよく、例えば、表示部44に表示される設定画面で入力部45を介して回収可能量の入力操作や選択操作を可能にしてもよい。
【0043】
作業ブロック設定部51は、回収部Kの回収可能量に基づいて、圃場A内の未刈領域Cに複数の作業ブロックBを設定し、未刈領域Cを圃場Aの条方向との交差方向に分割するように複数の作業ブロックBを設定するとよい。例えば、作業ブロック設定部51は、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、これらの1つ以上の作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量が、回収可能量と略同量となるように、各作業ブロックBの大きさを算出して1つ以上の作業ブロックBを設定する。換言すれば、作業ブロック設定部51は、複数の作業ブロックBを回収部Kの回収作業毎に振り分けて、各回収作業に1つ以上の作業ブロックBを割り当てる。各回収作業の作業ブロックBの個数は、同数でもよいが、異なっていてもよい。なお、各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBは、条方向との交差方向に隣接するように設定される。最後の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBは、収穫予想量が回収可能量以内であればよく、略同量でなくてもよい。
【0044】
具体的には、
図3に示すように、回収部Kの回収可能量を100とした場合、各作業ブロックBの収穫予想量が50となるように各作業ブロックBの大きさを設定すると、2つの作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量が、回収可能量と同量となる。なお、略同量とは、1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量と、回収可能量とが等しい状態に限定されず、回収可能量より僅かに少なくてもよく、例えば、1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量が、回収可能量より僅かに少ない所定の規定量以上、回収可能量以下となる状態でもよい。
【0045】
なお、各作業ブロックBの収穫予想量は、各作業ブロックBの大きさに依存するところ、各作業ブロックBの大きさは、未刈領域Cの条方向の長さと条数とから算出されるので、任意の条数に設定することで、各作業ブロックBの収穫予想量を所望量に設定することができる。各作業ブロックBの条数は、コンバイン1の刈取可能条数の倍数に設定することが好ましく、若しくは、コンバイン1の刈取可能条数の倍数から1条又は2条を引いた条数に設定してもよい。
【0046】
例えば、コンバイン1の刈取可能条数を刈取幅とする一行程の収穫予想量は、未刈領域Cの条方向の長さと刈取幅とに基づいて算出できる。そのため、回収部Kの回収可能量を一行程の収穫予想量で除算することにより、回収可能量を満たす行程数が算出されるので、回収部Kの所定の回収可能量に合うように、1つ以上の作業ブロックBを設定する場合、作業ブロック設定部51は、1つ以上の作業ブロックBが、算出された行程数になるように調整すればよい。
【0047】
なお、作業ブロック設定部51は、回収部Kの回収可能量とコンバイン1の貯留量との最大公約数を算出して、各作業ブロックBの収穫予想量が、算出した最大公約数の整数倍になるように、各作業ブロックBの大きさ(行程数)を設定してもよい。
【0048】
また、複数の作業ブロックBを区画する中割Dの中割回数は、携帯端末40が自動的に設定してもよく、例えば、圃場Aの未刈領域Cの大きさや、コンバイン1の刈取幅や、圃場Aの枕地で旋回可能な旋回半径等に基づいて算出してもよい。あるいは、中割回数は、作業者による携帯端末40の操作に応じて入力された中割回数を設定してもよく、例えば、表示部44に表示される設定画面で入力部45を介して中割回数の入力操作を可能にしてもよい。
【0049】
作業ブロック設定部51は、複数の作業ブロックBを区画する中割Dを形成するための区画刈取走行を行う順番として、各中割Dに中割形成順を設定してもよい。例えば、作業ブロック設定部51は、圃場Aの条方向との交差方向において一端側から他端側に向かって、一端側に近い順に中割Dを形成するように各中割Dに中割形成順を割り当てる。これにより、コンバイン1の走行制御部35は、圃場Aの条方向との交差方向において一端側から他端側に向かって配置されている順に各中割Dの区画刈取走行を行い、即ち、一端側から他端側に向かって、圃場Aを複数の作業ブロックBに分割するように区画刈取走行を行うことになる。換言すれば、コンバイン1は、最も一端側の中割Dから区画刈取走行を開始し、最も他端側の中割Dの区画刈取走行を最後に行う。
【0050】
また、作業ブロック設定部51は、複数の作業ブロックBの自動刈取走行を行う順番として、各作業ブロックBに作業順を設定してもよい。例えば、作業ブロック設定部51は、圃場Aの条方向との交差方向において一端側の中割Dから区画刈取走行を開始する場合には、他端側から一端側に向かって、他端側に近い順に作業ブロックBの自動刈取走行を行うように各作業ブロックBに作業順を割り当てる。これにより、コンバイン1の走行制御部35は、圃場Aの条方向との交差方向において他端側から一端側に向かって配置されている順に、各作業ブロックBの自動刈取走行を行うことになる。換言すれば、コンバイン1は、最も他端側の作業ブロックBから自動刈取走行を開始し、最も一端側の作業ブロックBの自動刈取走行を最後に行う。また、自動刈取走行を初めに開始する作業ブロックBの配置される他端側は、回収部Kが配置されている側に設定されることが好ましく、これにより、回収部Kに近い順に作業ブロックBの自動刈取走行を行うことができる。
【0051】
作業経路作成部52は、圃場Aに設定された複数の作業ブロックBのそれぞれを自動刈取走行する作業経路を作成して記憶部42に記憶し、通信部33を介してコンバイン1へ送信する。作業経路は、自動走行に関する走行設定及び自動刈取等の作業に関する作業設定を含む。走行設定は、圃場Aにおける走行位置に加えて、各走行位置での進行方向や設定車速を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ等の作業に関する情報を含む。作業経路作成部52は、各作業ブロックBに対して、携帯端末40の操作により選択された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)に応じて、前進方向に走行しながら刈取を行う行程を直線状に作成し、複数の行程を組み合わせて作業経路を作成する。
【0052】
作業経路作成部52は、各作業ブロックBに対して1つの作業経路を割り当てるだけでなく、各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBに対して、一連の作業経路を割り当ててもよい。作業経路作成部52は、各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBに対して、作業ブロックB間を移動する空走経路を作成し、作業経路に含めてよい。また、作業経路作成部52は、回収部Kに隣接する排出位置までの排出走行が自動走行に設定されている場合には、各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBを完了する完了位置から排出位置まで移動する排出経路を作成し、作業経路に含めてよい。
【0053】
排出作業移行部53は、コンバイン1が所定の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、所定の排出条件を満たした場合に、コンバイン1を自動刈取走行から排出作業に移行させるものである。例えば、排出作業移行部53は、コンバイン1が所定の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、コンバイン1が貯留部6に貯留している穀粒の貯留量が回収可能量と略同量となった場合を、所定の排出条件としてよい。なお、排出作業移行部53は、コンバイン1が自動刈取走行を実行している間、貯留部6のグレンタンク24に貯留されている穀粒の貯留量として貯留部6の貯留検出部26で検出した結果をコンバイン1から受信し、コンバイン1の貯留量を随時把握する。
【0054】
ところで、上記のように、作業ブロック設定部51によって、1つ以上の作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量が、回収可能量と略同量となるように、1つ以上の作業ブロックBが設定される。そこで、排出作業移行部53は、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、1つ以上の作業ブロックBで収穫されてコンバイン1に貯留されている穀粒の貯留量が、回収可能量と略同量となった場合を、所定の排出条件として、コンバイン1を自動刈取走行から排出作業に移行させるとよい。
【0055】
具体的には、
図4に示すように、回収部Kの回収可能量を100とした場合、コンバイン1が1番目の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、1番目の作業ブロックBの収穫量が50であれば、コンバイン1の貯留量が50となる。次に、2番目の作業ブロックBの収穫予想量が50であれば、コンバイン1が2番目の作業ブロックBの自動刈取走行を完了するときの貯留予想量は100となる。このように、2番目の作業ブロックBの自動刈取走行の完了時に、コンバイン1の貯留量と回収部Kの回収可能量とが略同量であるので排出条件を満たし、回収部Kへの排出作業へ移行することになる。なお、
図4では、2番目の作業ブロックBの自動刈取走行の完了時の予想位置にあるコンバイン1を破線で示し、この予想位置から回収部Kに至る排出経路を破線で示す。
【0056】
例えば、コンバイン1の走行制御部35は、携帯端末40から取得した作業経路に基づいて自動刈取走行を実行するところ、各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、完了通知を携帯端末40へ送信し、この完了通知により、排出作業移行部53は、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行の完了を検出する。
【0057】
あるいは、排出作業移行部53は、コンバイン1が自動刈取走行を実行している間、コンバイン1の測位ユニット28が測位したコンバイン1の位置情報をコンバイン1から受信し、作業経路におけるコンバイン1の位置を随時把握することにより、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行の完了を検出する。
【0058】
排出作業移行部53は、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行の完了を検出すると、コンバイン1が貯留している穀粒の貯留量が回収部Kの回収可能量と略同量であることや、コンバイン1を排出作業へ移行すべきことを、表示部44に表示して作業者に通知する。排出走行が手動走行に設定されている場合、作業者は、コンバイン1を手動走行で回収部Kまで移動させることになる。一方、排出走行が自動走行に設定されている場合、排出作業移行部53は、自動走行での排出走行の指示をコンバイン1へ送信し、コンバイン1は、この指示に応じて、自動走行で回収部Kまで移動することになる。このとき、排出作業移行部53は、排出走行の指示と共に、排出経路をコンバイン1へ送信してもよい。
【0059】
次に、コンバイン1による自動刈取走行から排出作業への移行までの動作例を
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
先ず、携帯端末40において、回収可能量取得部50が、コンバイン1が貯留している穀粒を回収する回収部Kの回収可能量を取得して記憶部42に記憶する(ステップS1)。
【0061】
作業ブロック設定部51は、回収部Kの回収可能量に基づいて圃場Aの未刈領域Cに複数の作業ブロックBを設定して記憶部42に記憶し(ステップS2)、具体的には、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行で収穫される穀粒の収穫予想量が、回収可能量と略同量となるように、各作業ブロックBの大きさを算出して1つ以上の作業ブロックBを設定する。
【0062】
作業経路作成部52は、複数の作業ブロックBのそれぞれを自動刈取走行する作業経路を作成して記憶部42に記憶し、コンバイン1へ送信する(ステップS3)。
【0063】
コンバイン1の走行制御部35は、携帯端末40から取得した作業経路に基づいて、未刈領域Cの各作業ブロックBの自動刈取走行を開始する(ステップS4)。
【0064】
コンバイン1は、一の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行を完了すると(ステップS5:Yes)、排出作業移行部53によって、貯留部6の貯留量と回収部Kの回収可能量とが略同量か否かを判定する(ステップS6)。貯留量と回収可能量とが略同量である場合(ステップS6:Yes)、排出作業移行部53は、コンバイン1を、貯留部6に貯留している穀粒を回収部Kへ排出する排出作業に移行させる(ステップS7)。一方、貯留量と回収可能量とが略同量でない場合(ステップS6:No)、
走行制御部35によって、コンバイン1を、次の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行に移行させる(ステップS5)。コンバイン1が全ての作業ブロックBの自動刈取走行を完了すると(ステップS8:Yes)、圃場Aの作業を終了する。
【0065】
上記のように、本実施形態によれば、コンバイン1は、制御装置30及び携帯端末40を備えている。携帯端末40は、制御装置41を備え、制御装置41は、コンバイン1が貯留している穀粒を回収する回収部Kの回収可能量を取得する回収可能量取得部50として機能し、また、回収部Kの回収可能量に基づいて、圃場A内に複数の作業ブロックBを設定する作業ブロック設定部51として機能する。制御装置30は、複数の作業ブロックB毎に、刈取走行を自動的に行う走行制御部35として機能する。
【0066】
これにより、コンバイン1は、回収部Kの回収可能量に基づいて、自動刈取走行の作業ブロックBを設定するので、回収部Kでの作業性を向上することができ、また、自動刈取走行を行う作業ブロックBが適切に設定されるので、刈取作業や排出作業の作業性を向上することもできる。このように、コンバイン1は、圃場Aにおける作業状況に合わせて作業ブロックBを設定することで作業性を向上することができる。
【0067】
本実施形態によれば、コンバイン1において、作業ブロック設定部51は、1つ以上の作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量が、回収部Kの回収可能量と略同量となるように、1つ以上の作業ブロックBを設定する。
【0068】
これにより、コンバイン1は、1つ以上の作業ブロックBに対して1回の回収作業を対応させることができ、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行の完了のタイミングで、回収部Kを満たす穀粒を収穫することができる。また、回収部Kの側では、各作業ブロックBの作業状況を視認したり、携帯端末40で確認したりすることで、回収部Kが満たされるタイミングを予想することができる。そのため、回収部Kでの作業性を向上することができ、また、刈取作業や排出作業の作業性を向上することもできる。
【0069】
本実施形態によれば、コンバイン1において、制御装置30は、排出作業部36として機能し、排出作業部36は、コンバイン1が貯留している穀粒を回収部Kに排出する排出作業を行う。走行制御部35は、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行が完了したとき、コンバイン1が貯留している穀粒の貯留量が回収部Kの回収可能量と略同量となった場合、自動刈取走行から排出作業に移行する。
【0070】
これにより、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行が完了したときを、回収部Kを満たすタイミングにすることができ、自動刈取走行から排出作業へ移行するタイミングに合わせることができる。そのため、刈取作業や排出作業の作業性を向上することができ、これに応じて、回収部Kでの作業性を向上することができる。
【0071】
本実施形態によれば、コンバイン1において、走行制御部35は、圃場Aの条方向との交差方向において一端側から他端側に向かって圃場Aを複数の作業ブロックBに分割するように区画刈取走行を行い、また、他端側の作業ブロックBから自動刈取走行を行う。
【0072】
これにより、中割Dの区画刈取走行の中割形成順は一端側から設定され、作業ブロックBの自動刈取走行の作業順は他端側から設定されるので、圃場Aに設定された全ての中割Dの区画刈取走行を完了したときのコンバイン1の自車位置は、複数の作業ブロックBのうち、初めに自動刈取走行を行う作業ブロックBの近傍に配置されることになる。そのため、初めの作業ブロックBへ移動するための空走経路をより短くすることができるので、作業ブロックBの自動刈取走行を円滑かつ迅速に開始することができ、刈取作業の作業性を向上することができる。
【0073】
なお、上記した実施形態では、作業ブロック設定部51によって、1つ以上の作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量が、回収部Kの回収可能量と略同量となるように、1つ以上の作業ブロックBを設定する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、第1改良例として、作業ブロック設定部51は、外周刈取走行で収穫される穀粒の外周収穫量と、区画刈取走行で収穫される穀粒の区画収穫量と、1つ以上の作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量との総量が、回収部Kの回収可能量と略同量となるように、1つ以上の作業ブロックBを設定してもよい。
【0074】
具体的には、作業ブロック設定部51は、外周刈取走行の完了後に、貯留部6のグレンタンク24に貯留されている穀粒の貯留量として貯留部6の貯留検出部26で検出した結果をコンバイン1から受信し、外周収穫量とする。また、作業ブロック設定部51は、外周刈取走行の完了後に、圃場Aの未刈領域Cに設定される中割Dから収穫される穀粒の予想量を、未刈領域Cの条方向の長さと中割回数とから区画収穫量として算出する。また、1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量は、未刈領域Cの条方向の長さと1つ以上の作業ブロックの条数又は行程数とから算出される。
【0075】
作業ブロック設定部51は、回収部Kの回収可能量から外周収穫量及び区画収穫量を減算することで、回収部Kの1回目の回収作業の際に、作業ブロックBの自動刈取走行で収穫される穀粒を回収可能な空き量を算出する。そして、作業ブロック設定部51は、複数の作業ブロックBのうち、初めに自動刈取走行が行われる1つ以上の作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量と、算出した空き量とが略同量となるように、1つ以上の作業ブロックBを設定するとよい。なお、2回目以降の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBについては、外周収穫量及び区画収穫量を考慮することなく、回収部Kの回収可能量と比較して設定するとよい。
【0076】
具体的には、
図6に示すように、回収部Kの回収可能量を100とした場合、外周収穫量が50であり、全ての中割Dの区画収穫量が20であるならば、1回目の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量が30となるように各作業ブロックBの大きさを設定すると、外周収穫量と区画収穫量と1回目の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量との総量が、回収可能量と略同量となる。2回目以降の各回収作業に対応する各作業ブロックBの収穫予想量が50となるように各作業ブロックBの大きさを設定すると、2回目以降の各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量が、回収可能量と同量となる。
【0077】
第1改良例によれば、外周収穫量と区画収穫量と1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量との総量が、回収部Kの回収可能量と略同量となるように1つ以上の作業ブロックBを設定することで、1回目の回収作業に対応する作業ブロックBを適切な大きさに設定することができる。そのため、刈取作業や排出作業の作業性を向上することができ、これに応じて、回収部Kでの作業性を向上することができる。
【0078】
また、上記した実施形態では、排出作業移行部53によって、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときにコンバイン1に貯留されている穀粒の貯留量が、回収可能量と略同量となった場合を、所定の排出条件として、コンバイン1を自動刈取走行から排出作業に移行させる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、第2改良例として、コンバイン1が各作業ブロックBの自動刈取走行を順次行うところ、排出作業移行部53は、所定の作業ブロックB(今回作業ブロックB)の自動刈取走行の完了時にコンバイン1が貯留している穀粒の貯留量に、今回作業ブロックBに後続する作業ブロックB(次回作業ブロックB)で収穫される穀粒の収穫予想量を加算すると、貯留部6の貯留可能量を超える場合を、所定の排出条件としてもよい。
【0079】
なお、貯留量は、今回作業ブロックBの自動刈取走行の完了後に、貯留部6のグレンタンク24に貯留されている穀粒の貯留量として貯留部6の貯留検出部26で検出した結果をコンバイン1から受信して把握することができる。また、次回作業ブロックBの収穫予想量は、未刈領域Cの条方向の長さと次回作業ブロックBの条数又は行程数とから算出される。
【0080】
排出作業移行部53は、圃場Aの未刈領域Cの作業開始時、又は一の排出作業の完了後に、排出条件を満たすか否かを判定する。排出作業移行部53は、この判定の結果、今回作業ブロックBの自動刈取走行の完了時に、コンバイン1の貯留量と次回作業ブロックBの収穫予想量とが貯留部6の貯留可能量を超える場合、次回作業ブロックBで貯留可能量を超えることや、コンバイン1を排出作業へ移行すべきことを、表示部44に表示して作業者に通知する。排出走行が手動走行に設定されている場合、作業者は、コンバイン1を手動走行で回収部Kまで移動させることになる。一方、排出走行が自動走行に設定されている場合、排出作業移行部53は、自動走行での排出走行の指示をコンバイン1へ送信し、コンバイン1は、この指示に応じて、自動走行で回収部Kまで移動することになる。このとき、排出作業移行部53は、排出走行の指示と共に、排出経路をコンバイン1へ送信してもよい。
【0081】
具体的には、
図7に示すように、回収部Kの回収可能量を150とした場合、各回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBは、収穫予想量が75となるように設定される。コンバイン1が1つ目の作業ブロックBの自動刈取走行を完了すると、貯留部6の貯留量が75になる。ここで、コンバイン1の貯留部6の貯留可能量が100である場合、コンバイン1が継続して2つ目の作業ブロックBの自動刈取走行を実行すると、2つ目の作業ブロックBの収穫予想量が75であるため、2つ目の作業ブロックBの自動刈取走行の途中で、貯留部6の貯留量が貯留可能量に達してしまう。そこで、排出作業移行部53は、1つ目の作業ブロックBの自動刈取走行を完了時の貯留部6の貯留量と、2つ目の作業ブロックBの収穫予想量との合計と、貯留部6の貯留可能量とを比較し、合計が貯留可能量を超える場合には、排出作業に移行することになる。
【0082】
ところで、従来のように、コンバイン1は、一の作業ブロックBの自動刈取走行の途中で、穀粒の貯留量が貯留部6の貯留可能量に達した場合に、一の作業ブロックBの自動刈取走行を中断して排出作業に移行すると、中断位置と回収部Kとの間の排出走行や再開走行等の経路が複雑になり、このような経路を作成することが困難になる。
【0083】
しかしながら、第2改良例によれば、所定の作業ブロックBの自動刈取走行の途中で貯留部6の貯留可能量を超えることが予測される場合には、その直前の作業ブロックBの自動刈取走行の完了後に、排出作業へ移行されることになる。従って、作業ブロックBの自動刈取走行を途中で中断することがなく、作業ブロックBの自動刈取走行が完了したときを、自動刈取走行から排出作業へ移行するタイミングに合わせることができる。そのため、中断位置と回収部Kとの間の排出走行や再開走行等の経路を簡易にすることができ、このような経路を作成することが容易になる。これにより、刈取作業や排出作業の作業性を向上することができ、これに応じて、回収部Kでの作業性を向上することができる。
【0084】
また、上記した実施形態では、
図3等に示すように、圃場Aに設けられる1つの回収部Kに対してコンバイン1が排出作業を行う例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、第3改良例として、コンバイン1は、
図8に示すように、圃場Aに設けられる複数の回収部Ka、Kb及びKcに対して排出作業を行うように構成されてもよい。なお、複数の回収部Ka~Kcは、同量の回収可能量を有してもよく、異なる回収可能量を有してもよい。各回収部Ka~Kcは、トラック等の移動式でもよく、コンテナ等の設置式でもよい。各回収部Ka~Kcが配置される位置は、圃場外周を構成する各辺のうち、同じ辺上であればよく、同位置に限定されない。
【0085】
回収可能量取得部50は、複数の回収部Ka~Kcについて、各回収部Ka~Kcの回収可能量を取得する。作業ブロック設定部51は、各回収部Ka~Kcの回収可能量に基づいて、圃場内に複数の作業ブロックBを設定し、例えば、各回収部Ka~Kcに対応する1つ以上の作業ブロックBを設定するように、複数の作業ブロックBを設定する。
【0086】
具体的には、
図8に示すように、1回目の回収作業を行う回収部Kaの回収可能量を100とした場合、外周収穫量が50であり、全ての中割Dの区画収穫量が20であるならば、1回目の回収作業に対応する作業ブロックBの収穫予想量が30となるように各作業ブロックBの大きさを設定すると、外周収穫量と区画収穫量と1回目の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量との総量が、回収部Kaの回収可能量と略同量となる。また、2回目の回収作業を行う回収部Kbの回収可能量を80とした場合、2回目の回収作業に対応する2つの作業ブロックBの収穫予想量が40となるように各作業ブロックBの大きさを設定すると、2回目の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量との総量が、回収部Kbの回収可能量と略同量となる。なお、最後の回収作業を行う回収部Kcの回収可能量を100とした場合、残存する未刈領域Cの収穫予想量が50であり、回収可能量以内であるならば、最後の回収作業に対応する1つ以上の作業ブロックBの収穫予想量は、回収可能量と同量でなくてもよい。
【0087】
これにより、複数の回収部Ka~Kcがそれぞれ異なる回収可能量を有する場合、各回収可能量に合わせて作業ブロックBの大きさを設定できるので、各回収部Ka~Kcでの作業性を向上することができ、また、自動刈取走行を行う作業ブロックBが適切に設定されるので、刈取作業や排出作業の作業性を向上することもできる。
【0088】
また、携帯端末40の制御装置41(例えば、作業ブロック設定部51)は、複数の回収部Ka~Kcへの排出作業を行う順番として、各回収部Ka~Kcに排出順を設定してもよい。なお、移動式の複数の回収部Ka~Kcが順次圃場に到来する場合には、各回収部Ka~Kcの到来順が排出順となる。携帯端末40は、各回収部Ka~Kcの到来順をサーバ等の外部機器から受信してもよく、あるいは作業者の入力操作に応じて取得してもよい。
【0089】
作業ブロック設定部51は、複数の作業ブロックBの作業順として、排出順の早い回収部Kaに対応する作業ブロックBから自動刈取走行を行うように各作業ブロックBに作業順を割り当てる。あるいは、作業ブロック設定部51は、作業順の早い1つ以上の作業ブロックBに対応する回収部Kaから排出作業を行うように各回収部Ka~Kcに排出順を設定してもよい。これにより、走行制御部35は、排出順の早い回収部Kaに対応する作業ブロックBから自動刈取走行を行うことになる。従って、各回収部Ka~Kcの回収作業を円滑に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0090】
作業ブロック設定部51は、排出順の最も早い回収部Kaに対応する作業ブロックBが、複数の作業ブロックBの中で回収部Kaに最も近い位置となるように設定するとよい。換言すれば、作業ブロックBは、対応する回収部Ka~Kcの排出順のより早いものを、回収部Ka~Kcにより近い位置に設定される。そのため、排出順の早い回収部Kaと、対応する作業ブロックBとの空走距離をより短くすることができ、回収作業を迅速に開始することができ、作業性を向上することができる。また、各作業ブロックBの自動刈取走行と各回収部Ka~Kcの回収作業とが進行するに連れて、未刈領域Cと各回収部Ka~Kcとの間に既刈領域が形成されるので、未刈領域Cを迂回するような複雑な排出経路を作成する必要がなく、簡易な排出経路を容易に作成することができ、作業性を向上することができる。
【0091】
また、上記した実施形態では、排出作業移行部53は、1つ以上の作業ブロックBの自動刈取走行を完了したときに、1つ以上の作業ブロックBで収穫されてコンバイン1に貯留されている穀粒の貯留量が、回収可能量と略同量となった場合や、今回作業ブロックBの自動刈取走行の完了時にコンバイン1が貯留している穀粒の貯留量に、次回作業ブロックBで収穫される穀粒の収穫予想量を加算すると、貯留部6の貯留可能量を超える場合を、排出条件とする例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0092】
例えば、他の実施形態では、外周刈取走行後の貯留部6の貯留量が回収可能量と略同量となった場合や、外周刈取走行及び区画刈取走行後の貯留部6の貯留量が回収可能量と略同量となった場合を、排出条件としてもよい。また、他の実施形態では、外周刈取走行後のコンバイン1の貯留量に区画刈取走行の区画収穫量を加算すると貯留部6の貯留可能量を超えると予測される場合や、区画刈取走行後のコンバイン1の貯留量に1つ目の作業ブロックBの収穫予想量を加算すると貯留部6の貯留可能量を超えると予測される場合を、排出条件としてもよい。
【0093】
また、上記した実施形態では、
図3等に示すように、圃場Aを1台のコンバイン1が作業する例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、圃場Aを複数のコンバイン1が作業する場合に適用されてもよい。
【0094】
上記した実施形態では、自脱型コンバインで構成されるコンバイン1の例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、コンバイン1は、普通型コンバインで構成されてもよい。
【0095】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動走行方法、コンバイン及び自動走行方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
6 貯留部
K 回収部
24 グレンタンク
25 排出装置
26 貯留検出部
30 制御装置
35 走行制御部
36 排出作業部
40 携帯端末
41 制御装置
50 回収可能量取得部
51 作業ブロック設定部
52 作業経路作成部
53 排出作業移行部