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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/22 20060101AFI20250225BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
E02D7/22
E02D13/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021154230
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023045677
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157499(JP,A)
【文献】特開平08-121072(JP,A)
【文献】特開2012-251384(JP,A)
【文献】特開平07-061763(JP,A)
【文献】特開2015-218538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に立設したリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な回転駆動装置と、回転駆動される鋼管杭を抱持する振止部材とを備え、前記鋼管杭の外周面と前記上部旋回体の旋回中心との距離を旋回許容半径とする旋回円が設定された杭打機において、
前記振止部材は、前記鋼管杭の外周面に当接可能なアーム円弧状凹部を有する一対の回動アームを備え、前記リーダの下部に設けられた一対のアーム回動軸を中心として、前記一対の回動アームの回動端同士が接近した閉じ状態と、離反して前記旋回円の内側に位置した開き状態とに回動可能に形成され、前記閉じ状態で、回動基部側における前記アーム円弧状凹部間に設けられる開口部をスペーサ部材で閉塞してなり、
前記スペーサ部材は、前記鋼管杭の外周面に当接可能なスペーサ円弧状凹部を有し、前記リーダの下部に設けられたスペーサ回動軸を中心に回動することで、前記スペーサ円弧状凹部の周方向一方側端部を前記旋回円の内側位置と外側位置とに移動可能に形成されていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、前記一対のアーム回動軸の軸心を結ぶ線分の垂直二等分線を挟んで対称に設けられた2つのピン結合部を有し、
前記スペーサ回動軸は、前記2つのピン結合部のうちの一方側のピン結合状態を解除して維持される他方側のピン結合部からなることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、前記一対のアーム回動軸の軸心を結ぶ線分の垂直二等分線上に設けられた1つのピン結合部を有し、
前記スペーサ回動軸は、前記ピン結合部からなることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項4】
前記振止部材は、前記スペーサ円弧状凹部の周方向一方側端部を前記旋回円の内側位置に保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、回転駆動装置に装着した鋼管杭を回転可能かつ軸方向に移動可能に支持する振止部材を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を埋設したりケーシングで掘削したりする杭打機では、施工中の鋼管杭やケーシングが傾斜したり芯ズレしたりしないように、鋼管杭やケーシングの振れ止めを図る振止部材が設けられている。振止部材は、杭を抱持する一対の回動アームを閉じた状態で、基部側に円周の一部を欠いた開口部が作られ、杭の継ぎ足しを行うために必要な開閉動作や上部旋回体の旋回動作が円滑に行えるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。こうした振止部材では、杭径が大きくなるにつれて回動アームの回動軸間が広くなり、作られる開口部も大きくなる傾向にあることから、脱着可能なスペーサ部材で開口部を閉塞した振止部材が開発され、運用に至っている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-218538号公報
【文献】特開2019-157499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載された振止部材は、その構造上、開閉前後にスペーサ部材を脱着する作業が必要である。しかしながら、重量のあるスペーサ部材を取り扱うのは容易でなく、鋼管杭に接した状態ともなれば杭打機を後退させる慎重な操作が要求されるなど、作業に手間どって迅速な脱着が難しいという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、鋼管杭の鉛直性向上と施工の効率化とを両立させることが可能な振止部材を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に立設したリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な回転駆動装置と、回転駆動される鋼管杭を抱持する振止部材とを備え、前記鋼管杭の外周面と前記上部旋回体の旋回中心との距離を旋回許容半径とする旋回円が設定された杭打機において、前記振止部材は、前記鋼管杭の外周面に当接可能なアーム円弧状凹部を有する一対の回動アームを備え、前記リーダの下部に設けられた一対のアーム回動軸を中心として、前記一対の回動アームの回動端同士が接近した閉じ状態と、離反して前記旋回円の内側に位置した開き状態とに回動可能に形成され、前記閉じ状態で、回動基部側における前記アーム円弧状凹部間に設けられる開口部をスペーサ部材で閉塞してなり、前記スペーサ部材は、前記鋼管杭の外周面に当接可能なスペーサ円弧状凹部を有し、前記リーダの下部に設けられたスペーサ回動軸を中心に回動することで、前記スペーサ円弧状凹部の周方向一方側端部を前記旋回円の内側位置と外側位置とに移動可能に形成されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記スペーサ部材は、前記一対のアーム回動軸の軸心を結ぶ線分の垂直二等分線を挟んで対称に設けられた2つのピン結合部を有し、前記スペーサ回動軸は、前記2つのピン結合部のうちの一方側のピン結合状態を解除して維持される他方側のピン結合部からなることを特徴としている。さらに、前記スペーサ部材は、前記一対のアーム回動軸の軸心を結ぶ線分の垂直二等分線上に設けられた1つのピン結合部を有し、前記スペーサ回動軸は、前記ピン結合部からなることを特徴としている。加えて、前記振止部材は、前記スペーサ円弧状凹部の周方向一方側端部を前記旋回円の内側位置に保持する保持手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、杭打機に備わる振止部材の開口部を閉塞するためのスペーサ部材が、スペーサ回動軸を中心に回動することで、スペーサ円弧状凹部の周方向一方側端部を旋回円の内側位置と外側位置とに移動させるので、振止部材の開き状態で旋回動作を行えば、スペーサ部材を押しのける作用を鋼管杭に付与することができる。これにより、鋼管杭の継ぎ足し作業を行う際には、スペーサ部材の脱着を要することなく旋回動作が行え、作業効率に寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じく要部平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】同じくスペーサ部材を回動させた状態を示す要部平面図である。
図5】本発明の第2形態例を示す杭打機におけるスペーサ部材を回動させた状態を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図4は、本発明の第1形態例における杭打機を示す図である。杭打機11は、図1に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の右側部には運転室18が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納した機器室19がそれぞれ設けられている。
【0011】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、リーダサポート17に設けられた車幅方向の支軸に回動可能に取り付けられている。リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ20が、下部前方には、鋼管杭21の振れを防止するための開閉可能な振止部材22がそれぞれ配置されている。リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品としてラックギヤ23が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ24,24が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられている。
【0012】
回転駆動装置の一例であるオーガ25は、前記ガイドパイプ24,24に摺接する左右一対のガイドギブ25a,25aが後方に突出して設けられるとともに、前記ラックギヤ23に歯合する左右一対のピニオン(図示せず)をオーガ昇降用油圧モータ25bによって回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。
【0013】
鋼管埋設作業を行う際には、用意しておいた鋼管杭21は、トップシーブ20から垂下するロープで吊り上げられた後、上端部がドライブロッド(回転駆動軸)26にアダプタ27を介して連結されるとともに、下端部が振止部材22によって抱持される。装着状態の鋼管杭21は、オーガ駆動用油圧モータ25cによって回転駆動され、オーガ25を下降させることにより地中に圧入される。
【0014】
鋼管杭21の継ぎ足しを行う際には、埋設した鋼管杭21とアダプタ27とを分離させ、振止部材22を開くとともに、上部旋回体13をその場所のままで旋回させる操作を行う。このとき、図1及び図2に示すように、杭打機11には、鋼管杭21の外周面と上部旋回体13の旋回中心(旋回軸PV)との距離を旋回許容半径Rとする旋回円Cが設定される。これにより、振止部材22を開いて旋回円Cの内側位置に退避した状態では、埋設した鋼管杭21との間で干渉しない旋回動作が行えるようになる。用意しておいた継ぎ足す鋼管杭21は、ベースマシン14の側方領域において上端部がアダプタ27に連結され、反対方向の旋回動作によって施工位置(杭芯)へと運び込まれる。
【0015】
振止部材22は、図2乃至図4に示すように、リーダ15の下端部に高さ調整可能に設けられた取付ブラケット28を介して取り付けられ、取付ブラケット28の前板28aと幅方向一対の側板28b,28bとで形成される両側角隅部には、ピン結合からなる第1アーム回動軸29と第2アーム回動軸30とが設けられるとともに、第1アーム回動軸29には第1回動アーム31が、第2アーム回動軸30には第2回動アーム32がそれぞれ回動可能に取り付けられている。
【0016】
各回動アーム31,32は、実質的に左右対称形状であって、各々が上下対面する2枚の腕状板同士を一定間隔で配置した偏平状をなし、第1アーム回動軸29及び第2アーム回動軸30にそれぞれ回動可能に連結される第1回動基部31a及び第2回動基部32aと、該回動基部31a,32aの先端側に形成され、鋼管杭21の外周面を包持する第1アーム円弧状凹部33及び第2アーム円弧状凹部34をそれぞれ内側に備えた第1杭抱持部31b及び第2杭抱持部32bと、各杭抱持部31b,32bの先端部、すなわち、各回動アーム31,32の回動端に設けられ、互いに重合して連結ピン35が挿通される第1連結部31c及び第2連結部32cとを備えている。各杭抱持部31b,32bにはカラー部材の脱着のためのボルト止め構造が設けられており、異なる径のアーム円弧状凹部33,34を備えたものに変更すれば、杭径の異なるバリエーションに対応することが可能である。
【0017】
各回動アーム31,32は、第1アーム回動軸29及び第2アーム回動軸30を中心として、回動端同士が接近してピン結合された閉じ状態(図2)と、ピン結合を解除し、回動端同士が離反して旋回円Cの内側に位置した開き状態(図4では一方側の状態を示している)とに回動可能である。そして、開き動作の際に付設の固定ピン36を抜き差しすることで、取付ブラケット28との重合部に設けられた挿通孔に固定ピン36が係合し、これにより、各回動アーム31,32は開き状態のままで保持される。
【0018】
こうした開き状態では、第1アーム円弧状凹部33及び第2アーム円弧状凹部34は、取付ブラケット28の両側部において旋回円Cの内側位置に保持され、上部旋回体13をその場所のままで旋回させる操作が行われても、埋設した鋼管杭21の外周面と接触することはない。一方、閉じ状態では、各アーム円弧状凹部33,34における回動端側の一端33a,34aは互いに突き合わせた状態となるが、回動基部側の他端33b,34bは、互いに離間してその間に開口部37が設けられている。これにより、振止部材22の開閉動作時において、アーム円弧状凹部33,34の回動基部側が鋼管杭21と接触しないようになっている。この開口部37は、第1回動基部31a及び第2回動基部32a相互間に介在して配置されたスペーサ部材38によって閉塞されている。
【0019】
スペーサ部材38は、鋼材を組んで形成したブラケット構造を備えており、図3にも示すように、主に、鋼管杭21の外周面に当接可能なスペーサ円弧状凹部39と、該スペーサ円弧状凹部39の上部外側面及び下部外側面に互いに上下対面して配置された上板40及び下板41と、一対のアーム回動軸29,30の軸心を結ぶ線分Pの垂直二等分線Qを挟んで対称に設けられた2つのピン結合部42,43とを有している(図2)。
【0020】
各ピン結合部42,43は、取っ手44aの付いた回動ピン44と、取付ブラケット28の前板28aの前面に固着した筒体45と、上下板40,41に設けられたピン孔40a,41aとを有している。筒体45は、前板28aの高さ寸法に対応した長さと、回動ピン44の径に対応した内径とを有している。回動ピン44は、筒体45と上下ピン孔40a,41aとを同軸上に重ねた状態で、上下方向に抜き差しすることが可能である。
【0021】
2軸のピン結合によって組み付けられたスペーサ部材38は、例えば、一方側のピン結合部42のピン結合状態を解除して維持される他方側のピン結合部43をスペーサ回動軸とすることで、この他方側のスペーサ回動軸を中心に回動し、スペーサ円弧状凹部39の周方向一方側端部(ピン結合状態を解除した一方側に対応する部分)39aを、旋回円Cの内側位置(図4)と外側位置(図2)とに移動させる。すなわち、スペーサ部材38は、2軸のピン結合によって固定状態となるが、旋回動作の前に片側のピンを外した状態では、旋回動作に従って回動可能に構成されている。
【0022】
振止部材22は、旋回円Cの内側位置においてスペーサ部材38を保持するための保持手段を備えている。スペーサ部材38の保持は、例えば、図3に示すように、マグネット46の磁力によってなされる。マグネット46は、取付ブラケット28の前板28aの下端部後面に設けられ、スペーサ部材38が内側位置(図3の右側)に回動したとき、換言すれば、スペーサ部材38の下板41がマグネット46の対向面(下面)に接近したとき、下板41の上面がマグネット46の磁力によって引っ張られ、その位置で保持されることになる。一方、スペーサ部材38にかかる外側位置(図3の左側)へ向かう回転力が磁力を上回れば、下板41とマグネット46とが離反することになる。
【0023】
このように形成された杭打機11を使用して鋼管杭21の施工を行う際には、アダプタ27に鋼管杭21の上端を連結した後、図2に示すように、振止部材22を閉じ、両回動アーム31,32の回動端同士をピン結合して、両アーム円弧状凹部33,34及びスペーサ円弧状凹部39の3つの円弧状凹部で鋼管杭21の下部を抱持する。この閉じ状態で、オーガ25の回転及び下降動作によって鋼管杭21を地中に埋設していく。回転駆動される鋼管杭21は、その外周面が各円弧状凹部33,34,39に当接して振れの発生が抑えられる。
【0024】
鋼管杭21の継ぎ足しを行う際には、埋設した鋼管杭21とアダプタ27とを分離させる。ここで、例えば、上部旋回体13を左旋回させる場合、図4に示すように、振止部材22は、反旋回方向にある第1回動アーム31のみ開き状態とすれば足りる。そして、スペーサ部材38では、開き状態に対応した一方(反旋回方向)にあるピン結合部42のピン結合状態を解除する。
【0025】
こうした段取り作業を経て左旋回動作を開始すると、鋼管杭21の外周面でスペーサ円弧状凹部39が押されてスペーサ部材38が回動し、反旋回方向にある周方向一方側端部39aが、旋回円Cの外側位置から内側位置へと移動する。一方、旋回方向にある周方向他方側端部39bは、鋼管杭21の外周面を押す方向に移動しようとするが、これと同時に鋼管杭21も反旋回方向に相対的に移動し、両者は互いに干渉することなく離間する。こうして、スペーサ部材38は、左旋回動作に従ってピン結合部43の軸まわりに所定角度で回動した後、マグネット46の磁力で内側位置に保持された状態となる。
【0026】
継ぎ足す鋼管杭21を施工位置に運び込む際には、反対方向の旋回動作(右旋回)がなされ、施工位置のすぐ手前で、既設の鋼管杭21とスペーサ円弧状凹部39の周方向他方側端部39bとが当接する。そして、鋼管杭21の外周面でスペーサ円弧状凹部39が押されると、スペーサ部材38の回転力によって下板41とマグネット46とが離反し、周方向一方側端部39aが旋回円Cの内側から外側へと移動する。こうして、施工位置に運び込まれた鋼管杭21は、既設の鋼管杭21と連結した後、回転駆動されて地中に埋設される。
【0027】
このように、本発明の第1の構成によれば、杭打機11に備わる振止部材22の開口部37を閉塞するためのスペーサ部材38が、スペーサ回動軸を中心に回動することで、スペーサ円弧状凹部39の周方向一方側端部39aを旋回円Cの内側位置と外側位置とに移動させるので、振止部材22の開き状態で旋回動作を行えば、スペーサ部材38を押しのける作用を鋼管杭21に付与することができる。これにより、鋼管杭21の継ぎ足し作業を行う際には、スペーサ部材38の脱着を要することなく旋回動作が行え、作業効率に寄与するものとなる。
【0028】
また、スペーサ回動軸が2つのピン結合部42,43のうちの一方側のピン結合状態を解除して維持される他方側のピン結合部からなるので、回動ピン44を抜き差しするだけの簡単な動作によってスペーサ部材38の固定状態とその解除状態とを設定することができる。さらに、振止部材22がスペーサ円弧状凹部39の周方向一方側端部39aを内側位置に保持するための保持手段を備えているので、既設の鋼管杭21を避けて退いた後から再度施工位置に戻るまでの間で、スペーサ部材38の不意な回動を防止することができる。とりわけ、保持手段がマグネット46を用いた磁力によって保持する手段であるため、安価に構成することができる。
【0029】
図5は、本発明の杭打機の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した杭打機11の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0030】
第2形態例に示す杭打機11の振止部材51は、取付ブラケット52に対して、1軸のピン結合によって組み付けられたスペーサ部材53を備えている。スペーサ部材53は、主に、鋼管杭21の外周面に当接可能なスペーサ円弧状凹部54と、該スペーサ円弧状凹部54の上部外側面及び下部外側面に互いに上下対面して配置された上板55及び下板(図示せず)と、一対のアーム回動軸29,30の軸心を結ぶ線分Pの垂直二等分線Q上に設けられた1つのピン結合部56とを有している。
【0031】
ピン結合部56は、ピンとボスからなる連結ピン構造を有している。スペーサ部材53は、ピン結合部56をスペーサ回動軸とし、これを中心に回動することで、旋回方向に応じて、スペーサ円弧状凹部54の周方向両側端部54a,54aの一方を、旋回円Cの内側位置と外側位置とに移動させる。また、連結ピン構造は、嵌め合いが強く設定されており、内側位置においてスペーサ部材53を保持するための保持手段となる。すなわち、スペーサ部材53は、旋回動作時にかかる回転力が嵌め合いの摩擦力を上回るまで、その位置で保持されることとなる。
【0032】
こうした第2の構成においても、第1の構成と同様にスペーサ部材53の脱着を要することなく旋回動作が行え、作業効率に寄与するものとなる。とりわけ、アーム回動軸29,30間距離の2等分位置(中央位置)にピン結合部56を設けているので、左右いずれの旋回方向においても、取付状態のままで既設の鋼管杭21を避けて退くことができる。また、保持手段が連結ピン構造を用いた摩擦力によって保持する手段であるため、安価に構成することができる。
【0033】
なお、本発明は、前記各形態例に限定されるものではなく、スペーサ部材の形状やスペーサ回動軸の配置などは、振止部材の仕様ごとに適宜変更を加えることができる。また、埋設するのは鋼管杭ではなく、ケーシングでもよい。さらに、1軸のピン結合によって構成する場合には、3つの円弧状凹部を隙間なく連続的に形成するだけでスペーサ部材のガタ付きを抑制できることから、簡便な構成で閉じ状態の使用にも適うものとなる。加えて、各実施形態では、保持手段を2軸のピン結合ではマグネットにて、1軸のピン結合ではピンとボスの嵌め合いを強くしてそれぞれ構成したが、例えば、1軸のピン結合にマグネットを用いた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…運転室、19…機器室、20…トップシーブ、21…鋼管杭、22…振止部材、23…ラックギヤ、24…ガイドパイプ、25…オーガ、25a…ガイドギブ、25b…オーガ昇降用油圧モータ、25c…オーガ駆動用油圧モータ、26…ドライブロッド、27…アダプタ、28…取付ブラケット、28a… 前板、28b…側板、29…第1アーム回動軸、30…第2アーム回動軸、31…第1回動アーム、31a…第1回動基部、31b…第1杭抱持部、31c…第1連結部、32…第2回動アーム、32a…第2回動基部、32b…第2杭抱持部、32c…第2連結部、33…第1アーム円弧状凹部、33a…一端、33b…他端、33c…内側円弧周面、34…第2アーム円弧状凹部、34a…一端、34b…他端、34c…内側円弧周面、35…連結ピン、36…固定ピン、37…開口部、38…スペーサ部材、39…スペーサ円弧状凹部、39a…周方向一方側端部、39b…周方向他方側端部、40…上板、40a…ピン孔、41…下板、41a…ピン孔、42,43…ピン結合部、44…回動ピン、44a…取っ手、45…筒体、46…マグネット、51…振止部材、52…取付ブラケット、53…スペーサ部材、54…スペーサ円弧状凹部、54a…周方向両側端部、55…上板、56…ピン結合部
図1
図2
図3
図4
図5