(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20250225BHJP
F24F 11/83 20180101ALI20250225BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20250225BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20250225BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20250225BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/83
F24F11/54
F24F11/89
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2021166896
(22)【出願日】2021-10-11
【審査請求日】2024-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】平松 美紀
(72)【発明者】
【氏名】白川 拓也
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220345(JP,A)
【文献】特開2013-238376(JP,A)
【文献】特開2015-021628(JP,A)
【文献】特開2018-146188(JP,A)
【文献】特開2019-215107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254555(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0064835(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
H05K 7/20
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に供給する空気を冷却又は加熱する複数の熱交換器と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却又は加熱された空気を室内に送風するための複数の送風機と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却若しくは加熱される前の空気の温度、又は当該熱交換器で冷却若しくは加熱された後の空気の温度を検出する複数の温度センサと、
複数の前記熱交換器それぞれで発生する冷熱又は温熱、及び複数の前記送風機を制御する少なくとも1つの制御部とを備え、
前記制御部は、前記熱交換器に対応する前記温度センサの検出温度を利用して当該熱交換器で発生する冷熱又は温熱を制御するとともに、サーモオフ制御、風量増大制御、及び消費電力予測機能が実行可能であり、
前記サーモオフ制御は、少なくとも前記検出温度が予め決められた温度条件を満たしているときに実行される制御であって、冷熱又は温熱の発生を停止させる制御であり、
前記風量増大制御は、前記検出温度によらず、当該風量増大制御が実行される前に比べて送風量を大きくする制御であり、
前記消費電力予測機能は、前記サーモオフ制御が実行されるための必要条件(以下、停止条件という。)が成立したときに実行される機能であって、前記風量増大制御が実行されることなく、前記サーモオフ制御が実行された場合の総消費電力(以下、サーモオフ時予測消費電力という。)、及び前記サーモオフ制御が実行されることなく前記風量増大制御が実行された場合の総消費電力(以下、風量増大時予測消費電力という。)を予測する機能であり、
前記熱交換器、当該熱交換器に対応する前記温度センサ、及び当該熱交換器に対応する前記送風機の組み合わせを空調機としたとき、
複数の前記空調機のいずれかにおいて、前記停止条件が成立したときであって、前記風量増大時予測消費電力が前記サーモオフ時予測消費電力より小さいときには、前記制御部は、前記停止条件が成立した前記空調機に対して、前記サーモオフ制御を実行することなく前記風量増大制御を実行する空調装置。
【請求項2】
前記停止条件が成立したときであって、前記サーモオフ時予測消費電力が前記風量増大時予測消費電力より小さいときには、前記制御部は、前記停止条件が満たされた前記空調機に対して、前記風量増大制御を実行することなく前記サーモオフ制御を実行する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
蒸気圧縮式冷凍機にて生成された冷熱又は温熱を利用して室内に供給する空気を冷却又は加熱する複数の熱交換器と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却又は加熱された空気を室内に送風するための複数の送風機と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却若しくは加熱される前の空気の温度、又は当該熱交換器で冷却若しくは加熱された後の空気の温度を検出する複数の温度センサと、
複数の前記熱交換器それぞれで発生する冷熱又は温熱、及び複数の前記送風機を制御する少なくとも1つの制御部とを備え、
前記制御部は、前記熱交換器に対応する前記温度センサの検出温度を利用して当該熱交換器で発生する冷熱又は温熱を制御するとともに、サーモオフ制御、及び風量増大制御が実行可能であり、
前記サーモオフ制御は、前記検出温度が予め決められた温度条件を満たし、かつ、圧縮機の回転数が予め決められた回転数(以下、下限回転数という。)以下となる条件(以下、停止条件という。)が成立し、かつ、当該停止条件が成立した状態が予め決められた時間以上継続したときに、当該圧縮機を停止させる制御であり、
前記風量増大制御は、前記検出温度によらず、当該風量増大制御が実行される前に比べて送風量を大きくする制御であり、
前記熱交換器、当該熱交換器に対応する前記温度センサ、及び当該熱交換器に対応する前記送風機の組み合わせを空調機とし、複数の前記空調機のうち前記停止条件が成立した空調機を対象空調機とし、複数の前記空調機のうち前記停止条件が成立していない空調機に対応する圧縮機を対象外圧縮機とし、前記下限回転数より大きい予め決められた回転数以上で稼働している前記圧縮機を停止前圧縮機としたとき、
前記制御部は、複数の前記空調機のいずれかにおいて、前記停止条件が成立したときであって、1つ又は複数の前記対象外圧縮機中に前記停止前圧縮機が存在するときには、前記対象空調機に対して、前記サーモオフ制御を実行することなく前記風量増大制御を実行する空調装置。
【請求項4】
前記風量増大制御を実行する前の総消費電力を風量増大前消費電力としたとき、
前記風量増大制御を開始した時から予め決められた時間が経過したときの総消費電力が前記風量増大前消費電力以上であるときには、前記制御部は、当該風量増大制御を停止して前記サーモオフ制御を実行可能である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項5】
室内に供給する空気を冷却又は加熱する複数の熱交換器と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却又は加熱された空気を室内に送風するための複数の送風機と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却若しくは加熱される前の空気の温度、又は当該熱交換器で冷却若しくは加熱された後の空気の温度を検出する複数の温度センサとを備える空調装置に適用され、
前記熱交換器、当該熱交換器に対応する前記温度センサ、及び当該熱交換器に対応する前記送風機の組み合わせを空調機とし、
複数の前記熱交換器それぞれで発生する冷熱又は温熱、及び複数の前記送風機を制御する少なくとも1つの制御部に組み込まれる空調制御プログラムにおいて、
前記熱交換器に対応する前記温度センサの検出温度を利用して当該熱交換器で発生する冷熱又は温熱を制御する機能、
少なくとも前記検出温度が予め決められた温度条件を満たしているときに実行される制御であって、冷熱又は温熱の発生を停止させるサーモオフ制御機能、
前記検出温度によらず、送風量を大きくする風量増大制御機能、
前記サーモオフ制御が実行されるための必要条件(以下、停止条件という。)が成立したときに実行される機能であって、前記風量増大制御が実行されることなく、前記サーモオフ制御が実行された場合の総消費電力(以下、サーモオフ時予測消費電力という。)、及び前記サーモオフ制御が実行されることなく前記風量増大制御が実行された場合の総消費電力(以下、風量増大時予測消費電力という。)を予測する消費電力予測機能、並びに
複数の前記空調機のいずれかにおいて、前記停止条件が成立したときであって、前記風量増大時予測消費電力が前記サーモオフ時予測消費電力より小さいときには、前記制御部は、前記停止条件が成立した前記空調機に対して、前記サーモオフ制御を実行することなく前記風量増大制御を実行する機能を実現する空調制御用プログラム。
【請求項6】
蒸気圧縮式冷凍機にて生成された冷熱又は温熱を利用して室内に供給する空気を冷却又は加熱する複数の熱交換器と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却又は加熱された空気を室内に送風するための複数の送風機と、
複数の前記熱交換器それぞれで冷却若しくは加熱される前の空気の温度、又は当該熱交換器で冷却若しくは加熱された後の空気の温度を検出する複数の温度センサとを備える空調装置に適用され、
複数の前記熱交換器それぞれで発生する冷熱又は温熱、及び複数の前記送風機を制御する少なくとも1つの制御部に組み込まれる空調制御プログラムにおいて、
前記熱交換器に対応する前記温度センサの検出温度を利用して当該熱交換器で発生する冷熱又は温熱を制御する機能、
前記検出温度が予め決められた温度条件を満たし、かつ、圧縮機の回転数が予め決められた回転数(以下、下限回転数という。)以下となる条件(以下、停止条件という。)が成立し、かつ、当該停止条件が成立した状態が予め決められた時間以上継続したときに、当該圧縮機を停止させるサーモオフ制御機能、
前記検出温度によらず、送風量を大きくする風量増大制御機能、並びに
前記熱交換器、当該熱交換器に対応する前記温度センサ、及び当該熱交換器に対応する前記送風機の組み合わせを空調機とし、複数の前記空調機のうち前記停止条件が成立した空調機を対象空調機とし、複数の前記空調機のうち前記停止条件が成立していない空調機に対応する圧縮機を対象外圧縮機とし、前記下限回転数より大きい予め決められた回転数以上で稼働している前記圧縮機を停止前圧縮機としたとき、
複数の前記空調機のいずれかにおいて、前記停止条件が成立したときであって、1つ又は複数の前記対象外圧縮機中に前記停止前圧縮機が存在するときには、前記対象空調機に対して、前記サーモオフ制御を実行することなく前記風量増大制御を実行する機能を実現する空調制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の圧縮機の運転状況を把握して、それに応じて各圧縮機のオン又はオフや運転容量を制御する空調装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、サーモオフ、つまり冷熱又は温熱の室内への供給を停止させるまでの運転時間を極力延ばしつつ、室内温度の上下動を抑制することが可能な空調装置の一例を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
空調装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、第1の要件は、室内に供給する空気を冷却又は加熱する複数の熱交換器(15)と、複数の熱交換器(15)それぞれで冷却又は加熱された空気を室内に送風するための複数の送風機(15A)と、複数の熱交換器(15)それぞれで冷却若しくは加熱される前の空気の温度、又は当該熱交換器(15)で冷却若しくは加熱された後の空気の温度を検出する複数の温度センサ(17A、17B)と、複数の熱交換器(15)それぞれで発生する冷熱又は温熱、及び複数の送風機(15A)を制御する少なくとも1つの制御部(10、16)とを備えことである。
【0006】
第2の要件は、制御部(10、16)は、複数の空調機(11)のいずれかにおいて、停止条件が成立したときであって、風量増大時予測消費電力(Pw2)がサーモオフ時予測消費電力(Pw1)より小さいときには、制御部(10、16)は、停止条件が成立した空調機(11)に対して、サーモオフ制御を実行することなく風量増大制御を実行することである。
【0007】
なお、空調機(11)とは、熱交換器(15)、当該熱交換器(15)に対応する温度センサ(17A、17B)、及び当該熱交換器(15)に対応する送風機(15A)の組み合わせをいう。
【0008】
制御部(10、16)は、熱交換器(15)に対応する温度センサ(17A、17B)の検出温度を利用して当該熱交換器(15)で発生する冷熱又は温熱を制御するとともに、サーモオフ制御、風量増大制御、及び消費電力予測機能が実行可能である。
【0009】
サーモオフ制御は、少なくとも検出温度が予め決められた温度条件を満たしているときに実行される制御であって、冷熱又は温熱の発生を停止させる制御であり、風量増大制御は、検出温度によらず、当該風量増大制御が実行される前に比べて送風量を大きくする制御である。
【0010】
消費電力予測機能は、サーモオフ制御が実行されるための必要条件(以下、停止条件という。)が成立したときに実行される機能であって、風量増大制御が実行されることなく、サーモオフ制御が実行された場合の総消費電力(以下、サーモオフ時予測消費電力(Pw1)という。)、及びサーモオフ制御が実行されることなく風量増大制御が実行された場合の総消費電力(以下、風量増大時予測消費電力(Pw2)という。)を予測する機能である。
【0011】
これにより、当該空調装置では、サーモオフ、つまり冷熱又は温熱の室内への供給を停止させるまでの運転時間を極力延ばしつつ、室内温度の上下動を抑制することが可能となる。
【0012】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る空調装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る空調装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0015】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素、並びに図示された構造要素を備える。
【0016】
(第1実施形態)
<1.空調装置の概要>
本実施形態は、データセンターや通信機械室等のサーバ室の空調を行う空調装置に本開示に係る空調装置の一例が適用されたものである。当該空調装置1は、
図1に示されるように、複数の空調機11及び統合制御部10を有して構成されている。
【0017】
各空調機11は、蒸気圧縮式冷凍機にて構成された、いわゆる「パッケージエアコン」である。なお、本実施形態に係る複数の空調機11それぞれは、同一構成、かつ、同一仕様の蒸気圧縮式冷凍機である。
【0018】
各空調機11は、サーバ室内の空調を行うための冷熱又は温熱(本実施形態では、冷熱)を生成する。当該空調機11は、圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14及び蒸発器15、並びに制御部16、第1温度センサ17A~第4温度センサ17D及び第1圧力センサ17E等を有して構成されている。
【0019】
圧縮機12は、低圧の気相冷媒を圧縮して凝縮器13に供給する。当該圧縮機12は、電動モータ(図示せず。)により駆動される。電動モータは、インバータ方式の駆動回路(図示せず。)で駆動される。駆動回路の作動は、制御部16により制御される。
【0020】
すなわち、駆動回路は、電動モータに駆動電流を供給するとともに、駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を変更可能である、当該駆動回路は、制御部16から指令周波数に応じた駆動周波数の駆動電流を電動モータに供給する。つまり、圧縮機12の作動は、駆動回路を介して制御部16により制御される。
【0021】
凝縮器13は、圧縮機12にて圧縮された高圧冷媒を冷却する高圧側熱交換器である。当該凝縮器13では、気相冷媒が冷却されて液化(凝縮)する。膨張弁14は、凝縮器13から流出した高圧冷媒を減圧・膨張させて蒸発器15に供給する。
【0022】
蒸発器15は、液相の低圧冷媒を蒸発させて冷熱を発生する。第1送風機3Aは、凝縮器13に冷却用の空気を送風する。第2送風機5Aは、蒸発器15を通過してサーバ室内に供給される気流を発生させる。
【0023】
制御部16は、圧縮機12、第2送風機5A及び膨張弁14の開度等を少なくとも制御する。すなわち、当該制御部16は、圧縮機2の回転数を制御する能力制御部、及び第2送風機5Aの送風量を制御するファン制御部を構成する。
【0024】
なお、制御部16は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。そして、ROM等の不揮発性記憶部に記憶されたソフトウェアがCPUにて実行されることにより、能力制御部及びファン制御部等が実現される。
【0025】
当該制御部16には、第1温度センサ17A~第4温度センサ17D、及び第1圧力センサ17Eの検出信号が入力されている。第1温度センサ17Aは、蒸発器15にて冷却される前の空気の温度を検出する。
【0026】
第2温度センサ17Bは、当該蒸発器15にて冷却された後の空気の温度を検出する。第3温度センサ17Cは、蒸発器15の冷媒出口での冷媒温度を検出する。第4温度センサ17Dは、蒸発器15の冷媒入口での冷媒温度を検出する。第1圧力センサ17Eは、蒸発器15内の冷媒圧力を検出する。
【0027】
<2.空調装置の制御作動>
<2.1 各空調機の制御作動>
<膨張弁の制御>
各制御部16は、蒸発器15の冷媒出口における冷媒の過熱度が予め決められた過熱度となるよう膨張弁14の開度を制御する。なお、各制御部16は、第3温度センサ17Cの検出温度と第1圧力センサ17Eの検出圧力から演算した蒸発温度との温度差を過熱度として把握する。
【0028】
<圧縮機の制御>
各能力制御部、つまり各制御部16は、吸込優先制御又はサーオフ制御にて圧縮機12を制御可能である。吸込優先制御では、蒸発器15で発生する冷凍能力が制御される。サーオフ制御は、圧縮機12を停止させる制御である。
【0029】
<吸込優先制御>
吸込優先制御では、制御部16は、第1温度センサ17Aにより検出された温度(以下、本実施形態では、吸込温度という。)が予め設定された温度(以下、吸込設定温度という。)となるように圧縮機12の回転数を制御する。
【0030】
具体的には、吸込温度が吸込設定温度より高い場合には、制御部16は圧縮機12の回転数を増大させる。吸込温度が吸込設定温度より低い場合には、制御部16は圧縮機12の回転数を減少させる。
【0031】
<サーモオフ制御>
サーモオフ制御では、制御部16は、予め決められた条件(以下、停止条件という。)が成立した状態が予め決められ時間を越えたときに圧縮機12を停止させる。つまり、停止条件は、サーモオフ制御が実行されるための必要条件である。
【0032】
本実施形態に係る停止条件とは、吸込温度が予め決められた温度(以下、サーモオフ閾値という。)以下となる温度条件を満たし、かつ、圧縮機12の回転数が予め決められた回転数(以下、下限回転数という。)以下となる状態をいう。
【0033】
なお、本実施形態に係る制御部16は、駆動周波数により「圧縮機12の回転数」を把握する。したがって、制御部16は、吸込温度がサーモオフ閾値以下まで低下し、かつ、駆動周波数が上記回転数に相当する周波数(以下、最低周波数という。)以下となった状態が所定時間継続したときに圧縮機12を停止させる。
【0034】
<第2送風機の制御>
ファン制御部、つまり制御部16は、第2送風機5Aを通常制御又は風量増大制御にて制御可能である。通常制御は、少なくとも吸込優先制御が実行されているときに実行される。なお、能力制御部とファン制御部とは、互いに独立並列的に作動する。
【0035】
<通常制御>
制御部16は、第2温度センサ17Bにより検出された温度(以下、吹出温度という。)が予め設定された温度(以下、吹出吸込設定温度という。)となるように第2送風機5Aの風量を制御する。
【0036】
具体的には、制御部16は、吹出温度が吹出吸込設定温度より高い場合には、第2送風機5Aへの指令回転数を小さくし、吹出温度が吹出吸込設定温度より低い場合には、指令回転数を大きくする。なお、吹出吸込設定温度は、吸込設定温度に予め決められた値が加算された温度である。
【0037】
<風量増大制御>
本実施形態に係る風量増大制御は、吹出温度によらず、当該風量増大制御が実行される前に比べて送風量を大きくする制御である。なお、本実施形態では、風量増大制御が実行されると、吹出吸込設定温度は、風量増大制御時に限り、風量増大制御が実行される前に比べて低い温度(以下、増大時設定温度という。)に変更される。
【0038】
このため、風量増大制御を開始した時からサーバ室で発生する熱量(以下、熱負荷という。)が変動すると、制御部16は、吹出温度を増大時設定温度に維持すべく、風量増大制御が開始される直前の風量に比べて小さい風量となる場合もあり得る。
【0039】
換言すると、風量増大制御は、風量増大制御が開始される直前の風量に比べて大きな風量となる第1風量増大制御期間と、当該第1風量増大制御期間以降の第2風量増大制御期間、つまり吹出温度が増大時設定温度になるように風量が変化する期間とが存在する。
【0040】
<2.2 風量増大制御の実行タイミング>
各制御部16は、実行許可信号を受信したときに、サーモオフ制御を実行することなく、風量増大制御を実行する。各制御部16は、実行許可信号を受信しないときには、風量増大制御を実行することなく、通常制御及びサーモオフ制御を実行する。
【0041】
すなわち、各制御部16は、停止条件が成立したときに、その旨の信号(以下、停止条件成立信号という。)を統合制御部10の消費電力予測部10Aに送信する。消費電力予測部10Aは、停止条件成立信号を受信すると、消費電力予測機能を実行する。
【0042】
なお、統合制御部10は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成され、かつ、各制御部16と通信可能である。そして、ROM等の不揮発性記憶部に記憶されたソフトウェアがCPUにて実行されることにより、消費電力予測部10A等が実現される。
【0043】
消費電力予測部10A、つまり統合制御部10は、サーモオフ時予測消費電力Pw1及び風量増大時予測消費電力Pw2を演算予測する。
【0044】
サーモオフ時予測消費電力Pw1とは、風量増大制御が実行されることなく、サーモオフ制御が実行された場合の総消費電力をいう。風量増大時予測消費電力Pw2とは、サーモオフ制御が実行されることなく風量増大制御が実行された場合の総消費電力をいう。
【0045】
そして、統合制御部10は、風量増大時予測消費電力Pw2がサーモオフ時予測消費電力Pw1より小さいときには、停止条件成立信号を送信した制御部16に対して実行許可信号を送信する。
【0046】
また、統合制御部10は、風量増大時予測消費電力Pw2がサーモオフ時予測消費電力Pw1より小さくないときには、停止条件成立信号を送信した制御部16に対して実行許可信号を送信することなく、実行不許可信号を送信する。
【0047】
つまり、統合制御部10は、風量増大制御が実行されることにより、消費電力の低減効果(以下、省エネ効果という。)が発生し得ると予測した場合には、風量増大制御の実行を許可し、省エネ効果が発生しないと予測した場合には、風量増大制御の実行を許可しない。
【0048】
そして、統合制御部10は、風量増大制御を開始した時から予め決められた時間が経過したときの総消費電力が風量増大前消費電力Pw3以上であるときには、実行不許可信号を送信した制御部16に対して、風量増大制御を停止してサーモオフ制御を実行すべき旨の信号を送信する。
【0049】
なお、風量増大前消費電力Pw3とは、風量増大制御を実行する前の総消費電力をいう。総消費電力とは、各空調機11(特に、圧縮機12)の消費電力をいう。
【0050】
つまり、統合制御部10は、省エネ効果が発生するとみなして風量増大制御の実行を指令した後、省エネ効果が現実に発生したか否かを検証し、省エネ効果が現実に発生していないときには、風量増大制御を停止させてサーモオフ制御を実行させる。
【0051】
<省エネ効果予測の詳細>
統合制御部10は、複数の空調機11のいずれかにおいて、停止条件が成立したときであって、1つ又は複数の対象外圧縮機12中に停止前圧縮機が存在するときには、対象空調機に対して、省エネ効果が発生するとみなして風量増大制御の実行を許可する。
【0052】
つまり、統合制御部10は、1つ又は複数の対象外圧縮機12中に停止前圧縮機が存在するときには、風量増大時予測消費電力Pw2がサーモオフ時予測消費電力Pw1より小さいとみなして実行許可信号を送信する。
【0053】
なお、対象空調機とは、複数の空調機11のうち停止条件が成立した空調機をいう。対象外圧縮機とは、複数の空調機11のうち停止条件が成立していない空調機に対応する圧縮機をいう。停止前圧縮機とは、下限回転数より大きい予め決められた回転数以上で稼働している圧縮機をいう。
【0054】
<空調装置の作動例(
図2)参照>
図2は、空調装置1の作動の一例を示すフローチャートである。
図2に示される制御は、圧縮機12の起動と同時に起動し、圧縮機12と停止と共に停止する。以下、各制御部16及び統合制御部10を総称して「制御部」と記す。
【0055】
当該制御が起動すると、制御部は、第2送風機5Aを通常制御にて制御し、圧縮機12を吸込優先制御にて制御する(S1)。以下、これらの制御を単に「通常制御」という。次に、制御部は、停止条件が成立したか否かを判断する(S2)。
【0056】
停止条件が成立していない場合には(S2:NO)、制御部は、通常制御を継続する(S1)。停止条件が成立した場合には(S1:YES)、制御部は、省エネ効果の有無を演算予測する(S3)。
【0057】
省エネ効果があると判断された場合には(S3:YES)、制御部は、風量増大制御を実行する(S4)。省エネ効果がないと判断された場合には(S3:NO)、制御部は、サーモオフ制御を実行する。
【0058】
そして、風量増大制御が実行された後、制御部は、風量増大制御が実行された空調機以外の空調機の圧縮機の回転数(能力)が減少したか否か、つまり省エネ効果が現実に発生した否かを判断する(S5)。
【0059】
省エネ効果が現実に発生している場合には(S5:YES)、制御部は、S3を再び実行する。省エネ効果が現実に発生していない場合には(S5:NO)、制御部は、サーモオフ制御を実行する。
【0060】
<3.本実施形態に係る空調装置の特徴(
図3参照)>
統合制御部10は、風量増大時予測消費電力Pw2がサーモオフ時予測消費電力Pw1より小さいときには、停止条件成立信号を送信した制御部16に対して、サーモオフ制御を実行することなく、風量増大制御の実行を指令する。
【0061】
これにより、当該空調装置1では、サーモオフ、つまり冷熱又は温熱の室内への供給を停止させるまでの運転時間を極力延ばしつつ、室内温度の上下動を抑制することが可能となる。
【0062】
統合制御部10は、省エネ効果が発生するとみなして風量増大制御の実行を指令した後、省エネ効果が現実に発生していないと判断されたときには、風量増大制御を停止させてサーモオフ制御を実行させる。これにより、総消費電力が増大することが抑制され得る。
【0063】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、冷房運転に着目した説明であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、暖房運転にも適用可能である。この場合の対象となる熱交換器は凝縮器3であり、対象となる送風機は第1送風機3Aとなる。
【0064】
上述の実施形態に係る空調装置は、蒸気圧縮式冷凍機にて構成された、いわゆる「パッケージエアコン」であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、冷水又は温水を熱交換器に循環させることにより、冷房又は暖房を行う空調装置にも適用可能である。
【0065】
なお、当該空調装置に係る能力制御部は、熱交換器に循環させる冷水又は温水の流量を制御することにより、当該熱交換器で発生する冷熱量又は温熱量を制御する。具体的には、能力制御部は、流量制御弁の開度を制御して冷熱量又は温熱量を制御する。
【0066】
上述の実施形態に係る空調装置1では、吸込温度が吸込設定温度となるように圧縮機12が制御され、かつ、吹出温度が吹出設定温度となるように第2送風機15Aが制御される構成であった。
【0067】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、吹出温度が吹出設定温度となるように圧縮機12が制御され、第2送風機15Aの風量が圧縮機12の駆動周波数に連動して制御される構成であってよい。
【0068】
具体的には、当該構成に係る第2送風機15Aは、圧縮機12の回転数が大きくなると、これに連動して風量が大きくなり、圧縮機2の回転数が小さくなると、これに連動して風量が小さくなるように制御される。
【0069】
上述の実施形態に係る空調装置1では、風量増大制御時に限り、吹出吸込設定温度が増大時設定温度に変更された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、風量増大制御の開始時点から予め決められた時間が経過するまで、風量増大制御の開始直前の風量に所定量が加算された風量としてもよい。
【0070】
上述の実施形態に係る空調装置1では、制御部16と統合制御部10とが互いに通信することにより協働して上記制御が実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、統合制御部10のみで全てを制御する構成、又は統合制御部10が廃止され、各制御部16にて消費電力予測機能も実行する構成であってもよい。
【0071】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1… 空調装置 10…統合制御部 11… 空調機
12… 圧縮機 13…凝縮器 14… 膨張弁
15… 蒸発器 16…制御部