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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】癌を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20250101AFI20250225BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250225BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20250225BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20250225BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20250225BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20250225BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20250225BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20250225BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20250225BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/06
A61K31/4188
A61K31/454
A61K31/502
A61K31/55
C12N5/10
C12N5/0783
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021524197
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019060231
(87)【国際公開番号】W WO2020097306
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】62/757,383
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】319009314
【氏名又は名称】イン8バイオ、インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】300020418
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラム、ローレンス、エス.、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ウィリアム
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/035413(WO,A1)
【文献】特表2007-505161(JP,A)
【文献】特表2013-532703(JP,A)
【文献】PLOS ONE,2013年,Vol.8, No.1, e51805,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 31/00-33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
膠芽腫の処置のための医薬組成物であって、
ニラパリブ及びオラパリブからなる群から選択されるPARP阻害剤を含み
前記PARP阻害剤は:
化学療法薬に対して耐性であるように遺伝子操作されたγδT細胞、及び
化学療法薬であって、当該化学療法薬に対して前記γδT細胞が耐性であるように遺伝子操作されており、前記化学療法薬は、テモゾロミドである、化学療法薬、
と組み合わせて使用される、上記医薬組成物。
【請求項4】
前記PARP阻害剤が、前記化学療法薬を投与する前、および前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物を投与する前に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記PARP阻害剤が、前記化学療法薬を投与する1日~21日前に投与される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、前記化学療法薬の投与の8~72時間後に投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、前記化学療法薬の投与の12時間後~36時間後に投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、前記化学療法薬の投与の24時間後に投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、前記化学療法薬の投与の8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36時間後に投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記γδT細胞が、P140KMGMTまたはメチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)をコードするように遺伝子改変されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、60%を超えるγδT細胞と、5%未満のαβT細胞と、25%未満のナチュラルキラー(NK)細胞と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、患者の体重1kg当たり5×10個以下のγδT細胞、患者の体重1kg当たり1×10個以下のγδT細胞、または患者の体重1kg当たり5×10個以下のγδT細胞を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記PARP阻害剤が、前記化学療法薬の投与の1~21日前に投与され、前記遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物が、前記化学療法薬の投与の8~36時間後に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記γδT細胞が、P140KMGMTまたはメチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)をコードするように遺伝子改変されている、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物中の前記γδT細胞が増殖されたγδT細胞集団である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記PARP阻害剤がオラパリブである、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記PARP阻害剤が、前記γδT細胞の前に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化学療法薬が、前記γδT細胞の前に投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年11月8日出願の米国仮出願第62/757,383号の利益を主張する。先の出願の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ガンマデルタ(γδ)T細胞は、抗原プライミングおよび主要組織適合性複合体(MHC)分子の存在なしで広範囲の抗原を認識することができるので、Tリンパ球の重要な部分セットである。γδT細胞は、それらの細胞毒性活性を経て直接的に、または他の免疫細胞の活性化を経て間接的に標的細胞を攻撃することができる。γδT細胞の機能的応答は、ストレスに応答してサイトカイン産生を促進しかつ病原体のクリアランス、炎症、および組織の恒常性を調節するストレス抗原の認識をはじめとするいくつかの因子に関して誘導される。
【0003】
ヒトγδT細胞部分セットはいずれも、例えば、細胞表面受容体(すなわち、γδTCR(T細胞受容体)およびNKG2D(ナチュラルキラー基2D)の発現を経て誘導され、可溶性メディエーター(すなわち、パーフォリンおよびグランザイム)の放出によって部分的に介在される細胞毒性能を呈する。γδT細胞は、強力な抗微生物タンパク質であるグラニュライシンを産生し、標的細胞上のいくつかの細胞死受容体に係合するCD95Lおよび腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンドなどのリガンドを発現することができる。加えて、γδT細胞は、CD16依存性機序において抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を経て間接的に該細胞の標的を死滅させることができる。DNAM-1(DNAXアクセサリー分子1)、白血球機能関連抗原1、および共刺激受容体CD27などの他の分子もまた、γδT細胞活性化および細胞毒性に関与する。
【0004】
ヒトγδT細胞はまた、抗原提示能を呈することもできる。樹状細胞(DC)と同様に、血液Vγ9Vδ2T細胞は、微生物および腫瘍からのシグナルに応答し、CD4T細胞およびCD8T細胞をプライミングすることができる。γδT-APCは、抗原をCD8T細胞に直接交差提示すると考えられている。細胞内タンパク質分解およびエンドソーム酸性化は、単球由来DCと比較してγδT細胞内で有意に遅延する。抗原は、IRAP(インスリン調節性アミノペプチダーゼ)陽性の初期エンドソームおよび後期エンドソームを横切って輸送され、該抗原のプロセシングは、MHC-I-装填区画内へと輸入される前のプロテアソームによる分解のためのサイトソルへの輸出からなる。活性化型γδT細胞は、おそらくC/EBPα(CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α)依存性機序におけるスカベンジャー受容体CD36を経て腫瘍抗原およびアポトーシス性癌細胞または生癌細胞を貪食し、腫瘍抗原特異的CD8T細胞応答を開始することができる。γδT細胞はまた、TNF-α産生を経てDC成熟を誘導することもできる。全体として、γδT細胞は、提示のために広範囲の抗原をプロセシングし、他の免疫細胞を刺激することができる。それゆえ、感染または癌に対する応答におけるγδT細胞の密接な関係を活用して、ヒトγδT細胞に基づく免疫療法の臨床応答を改善するための新たな戦略を設計することができる。
【0005】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP-1)は、DNA損傷修復(DDR)、アポトーシス、およびゲノム安定性などの複数の細胞プロセスに密接に関係してきた。PARP阻害剤を含むがこれらに限定されないDDRの阻害剤は結果として、遺伝毒性ストレスと、局所抗原放出と、ナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8+細胞およびγδT細胞の動員をはじめとする全身性抗腫瘍応答を結果としてもたらす他の免疫機序とをもたらす。PARP阻害剤などの作用薬を使用したDDR修復阻害から結果として生じる遺伝毒性ストレスおよびDNA複製フォークの失速は、NKG2D受容体に対するリガンドの発現を誘導すると考えられている。また、DDR修復阻害から結果として生じるゲノム不安定性は、腫瘍突然変異量、新生抗原、および/またはインターフェロン遺伝子(STING)経路の刺激の活性化の上昇、ならびに腫瘍免疫原性の全体的な上昇を結果としてもたらすとも考えられている。
【0006】
DDR阻害から結果として生じる腫瘍免疫原性の上昇(例えば、NKG2D受容体に対するリガンドの上方調節の上昇)は、γδT細胞介在性腫瘍免疫監視、および最終的にはγδT細胞による腫瘍細胞の死滅に一意的に役立つ。ヒトγδT細胞に基づく免疫療法とのDDR阻害の複合作用は、他の多くの臨床上の利点を提供する。例えば、患者への経口投与または静脈内投与によって送達されるPARP阻害剤は、吐き気および疲労などの症状と関係しており、特に厄介で、生活の質に影響を及ぼす可能性がある。また、PARP阻害剤の起こり得る中断を示すことがある。PARP阻害剤と組み合わせたヒトγδT細胞に基づく免疫療法は、腫瘍の死滅を増強しながら、PARP阻害剤に必要な用量を低下させることにより、PARP阻害剤と関係する毒性を回避することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、PARP阻害剤(PARPi)を含むがこれに限定されない組み合わせDDR阻害剤におけるγδT細胞免疫療法のための組成物および方法を含む、癌を処置するための併用療法を提供する。好ましくは、癌の処置のためのγδT細胞免疫療法とPARP阻害剤との組み合わせにはさらに、免疫チェックポイント(ICP)遮断療法および/または細胞毒性化学療法薬などのDNA損傷薬による療法などの他の免疫療法との組み合わせがある。好ましくは、γδT細胞免疫療法とDDR阻害剤療法との組み合わせがさらに、1つ以上の化学療法薬を含む場合、γδT細胞は、療法において使用される1つ以上の化学療法薬に対する耐性を付与するように遺伝子改変される。
【0008】
好ましくは、本発明は、癌の処置を必要とする患者における癌の処置のための方法であって、i)少なくとも1つの化学療法薬に対して耐性であるように遺伝子操作された治療有効量のγδT細胞を含む組成物を患者に投与することと、ii)治療有効量の化学療法薬を患者に投与することと、iii)治療有効量のDDR阻害剤を患者に投与することと、を含む、方法を提供する。好ましくは、DDR阻害剤は、PARP阻害剤である。好ましくは、PARP阻害剤は、化学療法薬を投与する前、および遺伝子操作されたγδT細胞を含む組成物を投与する前に投与される。好ましくは、PARP阻害剤は、化学療法薬を投与する約1日~約21日前に投与される。好ましくは、遺伝子操作されたγδT細胞は、化学療法薬の投与の約8~約72時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作されたγδT細胞は、化学療法薬の投与の約12時間後~約36時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作されたγδT細胞は、化学療法薬の投与の約24時間後に投与される。好ましくは、化学療法薬は、アルキル化薬、代謝拮抗薬、DNA脱メチル化薬、置換ヌクレオチド、置換ヌクレオシド、抗腫瘍抗生物質、植物由来の抗腫瘍薬またはニトロソ尿素である。好ましくは、化学療法薬は、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、メトトレキサート(MTX)、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ダカルバジン(DTIC)、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素(ラビノピラノシル-N-メチル-N-ニトロソ尿素(アラノース)、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、クロロゾトシン、エチルニトロソ尿素(ENU)、ホテムスチン、ロムスチン(CCNU)、ニムスチン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)、ラニムスチン(MCNU)、セムスチン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン))、シタラビン、カンプトテシン、およびこれらのいずれかの治療用誘導体から選択される。好ましくは、γδT細胞は、アルキルグアニントランスフェラーゼ(AGT)、P140KMGMT、OメチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)、L22Y-DHFR、チミジル酸シンターゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、または多剤耐性1型タンパク質(MDR1)をコードするように遺伝子改変されている。好ましくは、γδT細胞は、アルキル化薬、代謝拮抗薬、DNA脱メチル化薬、置換ヌクレオチド、置換ヌクレオシド、抗腫瘍抗生物質、植物由来の抗腫瘍薬、およびニトロソ尿素から選択される少なくとも2つの化学療法薬に対して耐性となるように遺伝子改変されている。好ましくは、γδT細胞は、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、メトトレキサート(MTX)、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ダカルバジン(DTIC)、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素(ラビノピラノシル-N-メチル-N-ニトロソ尿素(アラノース)、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、クロロゾトシン、エチルニトロソ尿素(ENU)、ホテムスチン、ロムスチン(CCNU)、ニムスチン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)、ラニムスチン(MCNU)、セムスチン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン))、シタラビン、カンプトテシン、およびこれらのいずれかの治療用誘導体から選択される少なくとも2つの化学療法薬に対して耐性となるよう遺伝子改変されている。好ましくは、化学療法薬は、TMZ、メトトレキサート、DTIC、BCNU、CCNU、MCNU、NMUまたはENUである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】オラパリブ(5mMまたは10mM)単独、オラパリブ(例示的なPARP阻害剤)+200mg/mLのTMZ、または培地単独(RPMI+10%FBS培地)に4時間曝露したLN229膠芽腫細胞株上でのナチュラルキラー基2Dリガンド(NKG2DL)の選択した時点での発現と、開始時ならびに処置の8、16、24、および36時間後に測定した生存度とを比較する4つの折れ線グラフを示す。
図2】オラパリブ(5mMまたは10mM)単独、オラパリブ(例示的なPARP阻害剤)+200mg/mLのTMZ、または培地単独(RPMI+10%FBS培地)に4時間曝露したU138膠芽腫細胞株上でのナチュラルキラー基2Dリガンド(NKG2DL)の選択した時点での発現と、開始時ならびに処置の8、16、24、および36時間後に測定した生存度とを比較する2つの折れ線グラフを示す。
図3】オラパリブ(5mMまたは10mM)単独、オラパリブ(例示的なPARP阻害剤)+200mg/mLのTMZ、または培地単独(RPMI+10%FBS培地)に4時間曝露したU251膠芽腫細胞株上でのナチュラルキラー基2Dリガンド(NKG2DL)の選択した時点での発現と、開始時ならびに処置の8、16、24、および36時間後に測定した生存度とを比較する3つの折れ線グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと類似のまたは同等の任意の方法および材料がまた、本発明の実施または試験において使用することもできるが、ここで好ましい方法および材料を説明する。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「支持体」への言及は、複数の支持体を含む。本明細書および後続の特許請求の範囲では、反対の意図が明らかでない限り、次の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語に対する言及がなされる。
【0012】
比率、濃度、量、および他の数値データは、本明細書では範囲形式で表されることができることは留意されるものとする。このような範囲形式は、便宜上および簡潔さのために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値および部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲も含むように柔軟に解釈されるものとすることは理解されるべきである。例示すると、「約0.1%~約5%」の濃度範囲は、明示的に列挙された約0.1重量%~約5重量%の濃度を含むだけでなく、示された範囲内の個々の濃度(例えば、1%、2%、3%、および4%)および部分範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%、および4.4%)も含むよう解釈されるものとする。「約」という用語は、修正される数値(複数可)の±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%、もしくは±10%、またはそれより多くを含むことができる。加えて、「約『x』~『y』」は、「約『x』~約『y』」を含む。
【0013】
「投与」とは、本発明の化合物、細胞集団を含む生物材料、またはこれらの組み合わせをヒトまたは動物の対象へと導入することを意味する。化合物の1つの好ましい投与経路は、静脈内である。化合物の他の好ましい投与経路は、腹腔内もしくは胸膜内、またはカテーテルを介した脳へのものであることができる。しかしながら、経口、局所、皮下、腹膜、動脈内、吸入、膣、直腸、鼻、脳脊髄液への導入、または身体区画への点滴注入などの任意の投与経路を使用することができる。固形腫瘍などの標的組織部位への直接注射も企図される。
【0014】
「癌」という用語は、本明細書で使用される場合、異常細胞が制御なしに分裂する疾患についての一般的な用語として、その通常の意味を与えられるものとする。癌細胞は、近くの組織に浸潤することができ、血流およびリンパ系を経て身体の他の部分に広がることができる。正常細胞が、指定され、制御され、および調整された単位として挙動する能力を失うと、腫瘍が形成される。一般に、固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体領域を含有しない異常な組織塊である(一部の脳腫瘍は、嚢胞および液体で満たされた中央壊死領域を有する)。単一の腫瘍が、破綻した異化プロセスにより、該腫瘍の内部に異なる細胞集団を有することもある。固形腫瘍は、良性(癌性ではない)または悪性(癌性)であることがある。さまざまな種類の固形腫瘍が、それらを形成する細胞の型について命名されている。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般に、固形腫瘍を形成しない。
【0015】
本明細書で使用される場合の「腫瘍を減少させること」という用語は、腫瘍塊の大きさまたは量の減少、対象における転移腫瘍の数の低下、癌細胞の増殖状態(癌細胞が増殖している程度)の低下などを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合の「化学療法薬」という用語は、癌細胞と相互作用し、それによって細胞の増殖状態を減少させ、および/あるいは例えば細胞分裂もしくはDNA合成を損なうことによって、またはDNAを損傷させることによって細胞を死滅させ、迅速に分裂する細胞を有効に標的とすることができる化合物またはその誘導体を指す。化学療法薬の例としては、アルキル化薬(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはその誘導体)、置換ヌクレオチド、置換ヌクレオシド、DNA脱メチル化薬(代謝拮抗薬としても公知であり、例えば、アザシチジン)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン)、植物由来の抗腫瘍薬(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、などがあるが、これらに限定されない。このような作用薬にはさらに、抗癌薬であるトリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素 ニトロソ尿素(ラビノピラノシル-N-メチル-N-ニトロソ尿素(アラノース)、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、クロロゾトシン、エチルニトロソ尿素(ENU)、ホテムスチン、ロムスチン(CCNU)、ニムスチン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)、ラニムスチン(MCNU)、セムスチン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン))、シタラビン、およびカンプトテシン、またはこれらのいずれかの治療用誘導体があることができるが、これらに限定されない。
【0017】
「治療有効量」または「有効量」という句は、単独で、または医薬組成物の一部として、および単回用量で、または一連の用量の一部として、対象に投与されたとき、疾患、障害または容態の何らかの症状、態様、または特徴に対して何らかの検出可能な正の作用を有することができる量での、対象への作用薬の投与を指す。治療有効量は、関連する生理学的作用を測定することによって確認することができ、投与計画および対象の容態の診断解析などと関係して調整することができる。例として、投与後に産生される炎症性サイトカインの量の測定は、治療有効量が使用されたかどうかを示すことができる。癌または調節されていない細胞分裂に関する病状に関して、治療有効量は、(1)腫瘍の大きさを減少させる(すなわち、腫瘍退縮)、(2)異常な細胞分裂、例えば、癌細胞分裂を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、好ましくは停止させる)、(3)癌細胞の転移を予防もしくは減少させる、および/または(4)例えば、癌をはじめとする、調節されていないもしくは異常な細胞分裂に関するもしくは部分的にそれによって引き起こされる病状と関係する1つ以上の症状をある程度緩和する(または、好ましくは、排除する)という作用を有する量を指す。「有効量」はまた、本発明の治療上活性のある組成物の投与の際に望まれる薬物動態特性および薬力学的特性ならびに望まれる免疫細胞プロファイリングを結果としてもたらす量でもある。
【0018】
本明細書で使用される疾患(または容態もしくは障害)を「処置すること」またはその「処置」という用語は、疾患にかかりやすいかもしれないが、疾患の症状をまだ経験していないかまたは呈していないヒト対象または動物対象において疾患が発生するのを予防すること(予防的処置)、疾患を阻害すること(その発症を遅延させるかまたは停止させること)、疾患の症状または副作用からの解放を提供すること(緩和的処置を含む)、および疾患の退縮を引き起こすことを指す。癌に関して、これらの用語はまた、癌に罹患した個体の平均余命が延長されること、または疾患の症状のうちの1つ以上が減少することも意味する。癌に関して、「処置すること」にはまた、対象における抗腫瘍応答を増強または延長することもある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」、「併用療法」および/または「併用処置投与計画」の何らかの投与形態は、別個の製剤もしくは組み合わされた製剤のいずれかにおいて、同時に、または数分、数時間もしくは数日で区切られた異なる時刻に順次投与されることができるが、何らかの方法で一緒に作用して所望の治療応答を提供することができる、少なくとも2つの治療上活性のある薬物または組成物を指す。
【0020】
「増強すること」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に開示される処置に応答する能力を対象または腫瘍細胞が改善することを可能にすることを指す。例えば、増強された応答は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%、またはそれを超える応答性の上昇を含むことができる。本明細書で使用される場合、「増強すること」はまた、化学療法、薬物耐性免疫適格細胞、および免疫チェックポイント阻害剤を含む併用療法などの処置に応答する対象の数を増やすことを指すこともできる。例えば、応答の増強は、処置に応答する対象の総百分率が少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれを超える、該総百分率を指すことができる。
【0021】
本明細書で使用される場合の「対象」および「患者」という用語は、ヒト、哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマなど)、生細胞、および他の生物を含む。生物は、例えば、単一の真核細胞のように単純であっても、哺乳動物のように複雑であってもよい。典型的な患者は、哺乳動物、特に霊長類、特にヒトである。獣医学的用途には、広範な種々の対象が適しており、例えば、畜牛、ヒツジ、ヤギ、乳牛、ブタなどの家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどの家禽、ならびに家庭用動物、特にイヌおよびネコなどのペットである。診断上または研究上の用途向けには、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、および近交系ブタなどのブタなどをはじめとする広範な種々の哺乳動物が適切な対象となる。好ましくは、系には、試料および対象がある。「生存宿主」という用語は、生存しており死亡していない、先に記述した宿主または生物を指す。「生存宿主」という用語は、宿主または生物全体を指し、生存宿主から切除された部分(例えば、肝臓または他の器官)だけではない。
【0022】
本明細書で使用される場合の「γδT細胞(ガンマデルタT細胞)」という用語は、該細胞の表面に別個のT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞の小さな部分セットを指す。T細胞の大部分は、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2つの糖タンパク質鎖から構成されたTCRを有する。対照的に、γδT細胞では、TCRは、1本のγ鎖と1本のδ鎖とで構成されている。このT細胞群は通常、αβT細胞よりもはるかに一般的ではない。γδT細胞は、抗原プロセシングおよびペプチドエピトープのMHC提示を必要としないという点で、T細胞型の中でも独特である。さらに、γδT細胞は、脂質抗原の認識において顕著な役割を有し、かつMIC-AおよびMIC-BならびにNKG2D受容体の他のリガンドなどのストレス関連抗原に応答すると考えられている。
【0023】
「薬剤耐性免疫療法」またはDRIという用語は、抗癌免疫細胞、好ましくはγδT細胞が、化学療法と免疫療法との併用投与を可能にする化学療法薬の毒性作用に抵抗するように遺伝子操作されることによる、癌を処置するための、遺伝子に基づく戦略である。
【0024】
「濃縮された」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に開示されるように、試料中に存在する1つ以上の細胞毒性免疫細胞型(例えば、γδT細胞および/またはNK細胞)lの総百分率を、濃縮前の1つ以上の同じ細胞型の総百分率に対して上昇させることを指す。例えば、1つ以上の型の細胞毒性免疫細胞について「濃縮された」試料は、試料中に約10%~100%の1つ以上の細胞毒性免疫細胞型を含むことがあるが、濃縮前の試料中の1つ以上の細胞毒性免疫細胞型の総百分率は、例えば、0%~10%であった。好ましくは、濃縮された試料は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の1つ以上の型の細胞毒性免疫細胞を含む。試料は、標準的な技術、例えば、フローサイトメトリー技術を使用して、1つ以上の細胞型について濃縮されることができる。
【0025】
「高度に濃縮された」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の細胞毒性免疫細胞型が試料中の細胞毒性免疫細胞型の少なくとも約70%~約100%を含むことができるように、試料中の1つ以上の細胞毒性免疫細胞型の総百分率を高めるが、濃縮前のその同じ細胞毒性免疫細胞型の総百分率が、例えば、0%~10%であったことを指す。好ましくは、高度に濃縮された試料は、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれを超える1つ以上の型の細胞毒性免疫細胞を含む。試料は、標準的な技術、例えば、フローサイトメトリー技術を使用して、1つ以上の細胞型について高度に濃縮されることができる。
【0026】
試料中の1つ以上の細胞毒性免疫細胞の増殖に関して本明細書で使用される場合の「増殖した」および「増殖」という用語は、試料中の1つ以上の細胞毒性免疫細胞の数を、例えば少なくとも約2倍、好ましくは約5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも約50倍またはそれを超えて増加させることを意味する。細胞毒性免疫細胞集団の増殖は、当技術分野で公知の任意の数の方法によって達成することができる。例えば、T細胞は、フィーダーリンパ球およびインターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン15(IL-15)のいずれかであって、好ましくはIL-2の存在下での非特異的T細胞受容体刺激を使用して迅速に増殖することができる。非特異的T細胞受容体刺激には、約30ng/mlのマウスモノクローナル抗CD3抗体であるOKT3(ORTHO-MCNEL(登録商標),Raritan,N.J.から入手可能)を含むことができる。あるいは、T細胞は、癌の1つ以上の抗原(エピトープ(複数可)などのその抗原性部分、または細胞を含む)を用いた末梢血単核細胞(PBMC)のインビトロでの刺激によって迅速に増殖することができ、これは場合により、300IU/mlのIL-2またはIL-15などであってIL-2が好ましいT細胞成長因子の存在下で、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチド、例えば、0.3μMのMART-1:26-35(27L)またはgp100:209-217(210M)など、ベクターから発現させることができる。
【0027】
本明細書で使用される「単離された」および単離された細胞集団」という用語は、対象に見られる組織または状態から取り出された1つまたは複数の細胞を指す。該用語は、細胞表面マーカー、色素または標識などのレポーターマーカーなどだがこれらに限定されないパラメータによって分離された細胞をさらに含むことができる。
【0028】
本明細書で使用される「発現した」または「発現」という用語は、遺伝子の2つの核酸鎖のうちの1つの領域に少なくとも部分的に相補的なRNA核酸分子を与える遺伝子からの転写を指す。本明細書で使用される「発現した」または「発現」という用語はまた、タンパク質、ポリペプチド、またはその一部もしくは断片を与えるための該RNA核酸分子からの翻訳も指す。
【0029】
「組換え細胞」という用語は、天然では互いに共有結合していない核酸セグメントの新たな組み合わせを有する細胞を指す。当業者に利用可能な広範囲の核酸操作技術を使用して、核酸セグメントの新たな組み合わせを生物内へと導入することができる。組換え細胞は、単一の真核細胞、または単一の原核細胞、または哺乳動物細胞であることができる。組換え細胞は、ゲノム外にあるベクターを有することができる。ゲノム外核酸ベクターは、細胞のゲノム内へと挿入されない。組換え細胞はさらに、ゲノム内ベクターまたはその一部を有することができる。「ゲノム内」という用語は、組換え細胞のゲノム内に組み込まれた核酸コンストラクトを定義する。
【0030】
本明細書で使用される場合の「組換え核酸」および「組換えDNA」という用語は、真核細胞内または原核細胞内で天然には見られない少なくとも2つの核酸配列の組み合わせを指す。核酸配列には、核酸ベクター、遺伝子発現調節エレメント、複製起点、発現時に抗生物質耐性を付与する適切な遺伝子配列、タンパク質コード配列などがあるが、これらに限定されない。「組換えポリペプチド」という用語は、その位置、純度または構造のいずれかにおいて天然に存在するポリペプチドとは異なるように、組換えDNA技術によって生成されるポリペプチドを含むことを意味する。一般に、このような組換えポリペプチドは、自然界で通常観察される量とは異なる量で細胞内に存在する。
【0031】
「標的療法」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫系の何らかの態様を標的とする何らかの治療用分子を指す。
【0032】
「形質転換」、「形質導入」および「形質導入」という用語は全て、1つまたは複数のレシピエント細胞内へのポリヌクレオチドの導入を示す。
【0033】
「免疫チェックポイントタンパク質」は、免疫系におけるT細胞機能を調節する。T細胞は、細胞介在性免疫において中心的な役割を担っている。チェックポイントタンパク質は、T細胞内へシグナルを送り、T細胞機能を本質的にオフにするまたは阻害する特異的リガンドと相互作用する。癌細胞は、癌細胞表面上でのチェックポイントタンパク質の高水準での発現を駆動し、それにより、腫瘍微小環境に入るT細胞の表面上にチェックポイントタンパク質を発現するT細胞を制御し、したがって抗癌免疫応答を抑制することによってこの系を利用する。このようにして、本明細書で「免疫チェックポイントタンパク質(ICP)阻害剤」と称される作用薬によるチェックポイントタンパク質の阻害は結果として、T細胞機能の回復および癌細胞に対する免疫応答をもたらすであろう。チェックポイントタンパク質の例としては、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせがあるが、それらに限定されない。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、OX40、A2aR、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであってよいチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は生物学的治療薬または小分子である。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質またはこれらの組み合わせである。現在臨床試験で試験されているいくつかのPD-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤がある。CT-011は、PD-1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。BMS936558は、PD-1作用薬を標的とする完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。BMS936559は、PD-1リガンドPD-L1を標的とする完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。MK3475は、進行性、局所進展型または転移性の癌腫、黒色腫またはNSCLCに罹患している対象における薬物の投与、安全性および忍容性を評価する5部構成試験での第I相開発におけるヒト化IgG4抗PD-1モノクローナル抗体である。MPDL3280Aはモノクローナル抗体である。AMP224は、PD-L2/PD-1相互作用を遮断する可能性を有する、第2のPD-1リガンドであるPD-L2の細胞外ドメインとIgG1とからなる融合タンパク質である。Medi4736は、進行型悪性黒色腫、腎細胞癌、NSCLC、および大腸癌に罹患している対象での第I相臨床試験における抗PD-L1抗体である。T細胞の表面上のCTLA-4を標的とするモノクローナル抗体である、ファーストインクラスの免疫療法のイピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、黒色腫の処置用とした。
【0034】
γδT細胞免疫療法の組み合わせ
本発明は、PARP阻害剤を含むがこれに限定されない組み合わせDDR阻害剤における、およびテモゾロミド(TMZ)を含むがこれに限定されない化学療法薬とのさらなる組み合わせにおけるγδT細胞免疫療法のための組成物および方法を含む、患者における腫瘍を減少させ、癌を処置するための併用療法を提供する。好ましくは、癌の処置のためのγδT細胞免疫療法とPARP阻害剤との組み合わせにはさらに、免疫チェックポイント(ICP)遮断療法などの他の免疫療法および/または他の免疫刺激薬との組み合わせが含まれる。
【0035】
本発明は、患者における癌を処置するための方法であって、i).場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞集団を含む組成物を投与することと、ii)(i)の組成物をそれを必要とする患者に投与すること;少なくとも1つの治療有効量のDDR阻害剤を患者に投与することと、iii)場合により化学療法薬を投与することを含み、それにより患者における癌を処置する方法を提供する。
【0036】
好ましくは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来のγδT細胞である。好ましくは、多能性幹細胞は、癌に罹患している患者から単離することができる。好ましくは、多能性幹細胞は、癌に罹患している患者以外の供給源から単離されてよい。好ましくは、γδT細胞を含む場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された組成物は、ナチュラルキラー(NK)細胞も含み、場合によりさらに、単球、マクロファージおよび樹状細胞を含むがこれらに限定されない他の免疫適格細胞を含む。
【0037】
好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞の集団を含む組成物は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%またはそれを超えるγδT細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞集団を含む組成物は、約35%未満のナチュラルキラー(NK)細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞集団を含む組成物は、約10%未満、約5%未満のαβT細胞を含む。
【0038】
好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞集団を含む、患者への投与のための治療用組成物は、患者の体重1kg当たり約5×10個以下のγδT細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞集団を含む、患者への投与のための治療用組成物は、患者の体重1kg当たり約5×10個以下のγδT細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖されたγδT細胞集団を含む、患者への投与のための治療用組成物は、患者の体重1kg当たり約5×10個以下のγδT細胞を含む。
【0039】
処置されるべき患者または別の供給源のいずれかからγδT細胞を単離するための方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,078,034号においてLamb L.S.によって説明されている。
【0040】
本明細書に説明される方法における使用に適したDDR阻害剤は、DNA損傷修復経路の1つ以上の構成要素の活性を阻害するか、低減させるか、または消失させる有機小分子、ペプチドまたは核酸などの任意の化合物または実体であってよい。これらの経路には、塩基除去修復(BER)、相同組換え(HR)依存性DNA二本鎖切断(DSB)修復、非相同末端結合(NHEJ)、ヌクレオチド除去修復(NER)、塩基除去修復(BER)およびミスマッチ修復(MMR)がある。
【0041】
好ましくは、DDR阻害剤は、酵素ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性を低減または消失させる。好ましいPARP阻害剤には、全てFDAによって承認されたニラパリブ、オラパリブ、およびルカパリブがあるが、これらに限定されない。オラパリブおよびルカパリブは、再発性BRCA関連卵巣癌の処置のためにFDAによって承認されている。より近年では、これら2つおよび第3のPARP阻害剤であるニラパリブは、再発性卵巣癌のための白金系化学療法に続く維持療法としてFDAによって承認された。
【0042】
他の好ましいPARP阻害剤には、タラゾパリブ(Pfizer)、ベリパリブ(Abbvie)、E7016(エーザイ)、CEP-9722(Teva)、およびBGB-290(パミパリブ,BeiGene)があるが、これらに限定されない。
【0043】
公知のPARP阻害剤であり、本発明に従って使用することができる化合物の他の例には、以下がある。
1.5-メチルニコチンアミドおよびO-(2-ヒドロキシ-3-ピペリジノ-プロピル)-3-カルボン酸アミドオキシムなどのニコチンアミド、ならびにこれらの類似体および誘導体、
2.3-アミノベンズアミド、3-ヒドロキシベンズアミド 3-ニトロソベンズアミド、3-メトキシベンズアミドおよび3-クロロプロカインアミドなどの3置換ベンズアミド、ならびに4-アミノベンズアミドを含むベンズアミド、1,5-ジ[(3-カルバモイルフェニル)アミノカルボニルオキシ]ペンタン、ならびにこれらの類似体および誘導体、
3.2H-イソキノリン-1-オン、3H-キナゾリン-4-オン、5-ヒドロキシジヒドロイソキノリノン、5-メチルジヒドロイソキノリノン、および5-ヒドロキシイソキノリノンなどの5置換ジヒドロイソキノリノン、5-アミノイソキノリン-1-オン、5-ジヒドロキシイソキノリノン、3,4ジヒドロ-5-メトキシ-イソキノリン-1(2H)-オンおよび3,4ジヒドロ-5-メチル-1(2H)イソキノリノンなどの3,4ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン、イソキノリン-1(2H)-オン、4,5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-6-オン、1,6,-ナフチリジン-5(6H)-オン、4-アミノ-1,8-ナフタルイミドなどの1,8-ナフタルイミド、イソキノリノン、3,4-ジヒドロ-5-[4-1(1-ピペリジニル)ブトキシ]-1(2H)-イソキノリノン、2,3-ジヒドロベンゾ[デ]イソキノリン-1-オン、1-11b-ジヒドロ-[2H]ベンゾピラノ[4,3,2-デ]イソキノリン-3-オン、ならびにベンゾピラノ[4,3,2-デ]イソキノリノンなどのベンズピラノイソキノリノンをはじめとする四環式ラクタム、ならびにこれらの類似体および誘導体、
4.ベンズオキサゾール-4-カルボキサミド、2置換ベンズオキサゾール4-カルボキサミドなどのベンズイミダゾール-4-カルボキサミドおよび2-アリールベンズイミダゾール4-カルボキサミドなどの2置換ベンズイミダゾール4-カルボキサミドをはじめとするベンズイミダゾールおよびインドール、ならびに2-(4-ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール4-カルボキサミドをはじめとする2-シクロアルキルベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、キノキサリンカルボキサミド、イミダゾピリジンカルボキサミド、2-フェニルインドール、2-フェニルベンズオキサゾールおよび2-(3-メトキシフェニル)ベンズオキサゾールなどの2置換ベンズオキサゾール、2-フェニルベンズイミダゾールおよび2-(3-メトキシフェニル)ベンズイミダゾールなどの2置換ベンズイミダゾール、1,3,4,5テトラヒドロ-アゼピノ[5,4,3-cd]インドール-6-オン、1,5ジヒドロ-アゼピノ[4,5,6-cd]インドリン-6-オンおよびジヒドロジアザピノインドリノンなどのアゼピノインドールおよびアゼピノインドロン、3-(4-トリフルオロメチルフェニル)-ジヒドロジアザピノインドリノンなどの3置換ジヒドロジアザピノインドリノン、テトラヒドロジアザピノインドリノンおよび5,6,-ジヒドロイミダゾ[4,5,1-j,k][1,4]ベンゾジアゾピン-7(4H)-オン、2-フェニル-5,6-ジヒドロ-イミダゾ[4,5,1-jk][1,4]ベンゾジアゼピン-7(4H)-オンおよび2,3,ジヒドロ-イソインドール-1-オン、ならびにこれらの類似体および誘導体、
5.4-ヒドロキシキナゾリン、フタラジノン、5-メトキシ-4-メチル-1(2)フタラジノン、4置換フタラジノン、4-(1-ピペラジニル)-1(2H)-フタラジノン、四環式ベンゾピラノ[4,3,2-デ]フタラジノンおよび四環式インデノ[1,2,3-デ]フタラジノンなどのフタラジン-1(2H)-オンおよびキナゾリノン、ならびに8-ヒドロキシ-2-メチルキナゾリン-4-(3H)オンなどの2置換キナゾリン、三環式フタラジノンならびに2-アミノフタルヒドラジド、ならびにこれらの類似体および誘導体、
6.イソインドリノンならびにこの類似体および誘導体、
7.5[H]フェナントリジン-6-オン、置換5[H]フェナントリジン-6-オンなどのフェナントリジンおよびフェナントリジノン、特に2置換5[H]フェナントリジン-6-オン、3置換5[H]フェナントリジン-6-オン、ならびに6(5H)フェナントリジノンのスルホンアミド/カルバミド誘導体、9-アミノチエノ[2,3-c]イソキノロンおよび9-ヒドロキシチエノ[2,3-c]イソキノロンなどのチエノ[2,3-c]イソキノロン、9-メトキシチエノ[2,3-c]イソキノロン、ならびにN-(6-オキソ-5,6-ジヒドロフェナントリジン-2-イル]-2-(N,N-ジメチルアミノ}アセトアミド、置換4,9-ジヒドロシクロペンタ[lmn]フェナントリジン-5-オン、ならびにこれらに類似体および誘導体、
8.1,2-ベンゾピロン6-ニトロソベンゾピロン、6-ニトロソ1,2-ベンゾピロン、および5-ヨード-6-アミノベンゾピロンなどのベンゾピロン、ならびにこれらの類似体および誘導体、
9.O-(3-ピペリジノ-2-ヒドロキシ-1-プロピル)ニコチンアミドオキシムなどの不飽和ヒドロキシム酸誘導体、ならびにこれらの類似体および誘導体、
10.縮合ピリダジンをはじめとするピリダジン、ならびにこれらの類似体および誘導体、ならびに
11.カフェイン、テオフィリン、およびチミジンなどの他の化合物、ならびにこれらの類似体および誘導体。
【0044】
γδT細胞DRIおよびDDR阻害剤療法の組み合わせ
好ましくは、処置投与計画としてのγδT細胞免疫療法とDDR阻害剤療法との組み合わせにはさらに、化学療法薬との組み合わせを含み、この場合、γδT細胞は、薬剤耐性免疫療法(DRI)として公知の化学療法薬に対する耐性を付与するように遺伝子改変されている。好ましくは、γδT細胞を化学療法薬の作用に対して耐性にするためのγδT細胞の遺伝子改変は、化学療法薬の存在下または非存在下での標的癌細胞を死滅させるγδT細胞の能力に影響を及ぼさない。γδT細胞は、例、ならびに国際公開第2011/053750号およびLamb et al.,PloS ONE 8(1):e51805.doi:10.1371/journal.pone.0051805)において説明されているものなど、標準的な組換え技術を用いて遺伝子改変される。
【0045】
好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された遺伝子操作されたγδT細胞の集団を含む組成物は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%またはそれを超えるγδT細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された遺伝子操作されたγδT細胞集団を含む組成物は、約35%未満のナチュラルキラー(NK)細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された遺伝子操作されたγδT細胞集団を含む組成物は、約10%未満、約5%未満のαβT細胞を含む。
【0046】
好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された遺伝子操作されたγδT細胞集団を含む、患者への投与のための治療用組成物は、患者の体重1kg当たり約5×10個以下のγδT細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された遺伝子操作されたγδT細胞集団を含む、患者への投与のための治療用組成物は、患者の体重1kg当たり約5×10個以下のγδT細胞を含む。好ましくは、場合により濃縮されたおよび/または場合により増殖された遺伝子操作されたγδT細胞集団を含む、患者への投与のための治療用組成物は、患者の体重1kg当たり約5×10個以下のγδT細胞を含む。
【0047】
癌のための化学療法処置に対する主な制限は、免疫適格細胞の死滅およびさもなくば望ましくない感染を防ぐかまたは癌細胞に対する防御を提供する有効な免疫系の喪失を引き起こす薬物誘導性免疫毒性である。化学療法の重度の毒性作用に対抗するための1つの戦略は、薬物耐性を付与するcDNA配列を発現するように設計されたレトロウイルスベクターの導入によって、細胞毒性免疫細胞を選択的に遺伝子改変することであり、これにより、化学療法薬の同時投与に抵抗することができる癌細胞を積極的に標的とすることができる 遺伝子操作されたγδT細胞免疫療法を使用するこのような薬剤耐性免疫療法は、例えば、米国特許第2015/0017137号におけるSpencer H.T.らによって説明されている(国際公開第2011/053750号およびLamb et al.,PloS ONE 8(1):e51805.doi:10.1371/journal.pone.0051805も参照されたい)。
【0048】
本発明者らは、TMZなどの化学療法薬の投与が、TMZ耐性細胞株におけるストレス関連抗原(例えば、MIC A/BおよびUL16結合タンパク質(ULBP)などのリガンドのNKG2Dファミリーについての受容体)を一過性に増加させることを以前に発見した。本発明は、化学療法薬をDDR阻害剤と組み合わせることによって、この以前の発見を強化する。いかなる理論にも限定されるものではないが、PARP阻害剤などのDDR阻害剤は、化学療法薬への曝露によって引き起こされる癌細胞上のストレス関連抗原の上方調節を増強および延長するように作用する。それゆえ、長期間の化学療法とDDR阻害剤療法との組み合わせによって癌細胞上のNKG2Dリガンドの強制発現が増強されるので、腫瘍細胞は、γδT細胞による死滅に対して非常に脆弱となる。化学療法薬による破壊に抵抗するためのγδT細胞の改変は、組み合わされた化学療法薬およびDDR阻害剤による一過性のNKG2D上方調節の最適かつ長期のウィンドウの間、化学療法薬の存在下で該細胞が存続することを可能にする。
【0049】
好ましくは、PARP阻害剤などのDDR阻害剤または既に説明された任意の他のDDR阻害剤は、化学療法薬の投与の約1~約21日前に患者に投与される。好ましくは、PARP阻害剤は、化学療法薬の投与の約1日~約14日前に投与される。好ましくは、PARP阻害剤は、化学療法薬の投与の約1日~約7日前に投与される。
【0050】
好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約8~約72時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約8~約36時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約8~約24時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約8~約12時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約12~約36時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約12~約24時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約24時間後に投与される。好ましくは、遺伝子操作された化学療法耐性γδT細胞を用いるDRIは、化学療法薬の投与の約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36時間後に投与される。
【0051】
チェックポイント阻害剤(ICP)を用いたDRIとDDR阻害剤との併用療法
好ましくは、処置投与計画としてのγδT細胞DRIとDDR阻害剤との併用療法にはさらに、ICP阻害剤との組み合わせが含まれる。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤またはCTLA-4阻害剤である。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、生物学的治療薬または小分子であってよい。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、抗原結合断片またはこれらの組み合わせである。
【0052】
好ましくは、免疫刺激薬、T細胞成長因子およびインターロイキンは、本発明のさまざまな併用療法において使用されることができる。免疫刺激薬は、その構成要素のいずれかの活性化を誘導するかまたは活性を上昇させることによって免疫系を刺激する物質(薬物および栄養素)である。免疫刺激薬には、細菌ワクチン、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン、他の免疫刺激薬、治療用ワクチン、ワクチンの組み合わせおよびウイルスワクチンがあるが、これらに限定されない。T細胞成長因子とは、T細胞の増殖を刺激するタンパク質である。T細胞成長因子の例としては、Il-2、IL-7、IL-15、IL-17、IL21およびIL-33がある。
【0053】
薬剤耐性γδT細胞免疫療法、化学療法薬、ICP阻害剤、任意選択の免疫刺激薬を含む併用療法は、WIPO特許出願WO2018/035413において説明されている。PARP阻害剤を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた臨床試験は進行中であり、文献中に報告されている。
【0054】
好ましくは、癌の処置のための薬剤耐性γδT細胞免疫療法とPARP阻害剤とを含む併用療法にはさらに、免疫チェックポイント(ICP)遮断療法ならびに/または化学療法薬および/もしくは免疫刺激薬を用いた療法がある。これらは、同時に、別個の製剤もしくは組み合わされた製剤のいずれかにおいて、または数分、数時間もしくは数日で区切られた異なる時刻に順次投与されることができるが、何らかの方法で一緒に作用して所望の治療応答を提供する。DDR阻害との組み合わせにおける、ならびに場合によりさらに化学療法およびICP阻害剤との組み合わせにおけるγδT細胞免疫療法の最適なタイミングは、当技術分野で公知のように疾患状況に応じて変わるが、一般に、DNA損傷および免疫原性上昇を誘導するための細胞療法の投与前にPARP阻害および/または化学療法が行われる。
【0055】
好ましくは、チェックポイント阻害剤の有効量とは、DRIおよびDDR併用療法と組み合わせて腫瘍退縮を引き起こすのに有効な量である。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、(患者の体重1kg当たりの点で)0.0001mg/kg未満、0.0001~0.001mg/kg、0.001~0.01mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.05~0.1mg/kg、0.1~0.2mg/kg、0.2~0.3mg/kg、0.3~0.5mg/kg、0.5~0.7mg/kg、0.7~1mg/kg、1~2mg/kg、2~3mg/kg、3~4mg/kg、4~5mg/kg、5~6mg/kg、6~7mg/kg、7~8mg/kg、8~9mg/kg、9~10mg/kg、少なくとも10mg/kg、またはこれらの何らかの組み合わせの用量で投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、1週間に少なくとも1回、1週間に少なくとも2回、1週間に少なくとも3回、2週間ごとに少なくとも1回、または毎月もしくは複数月に少なくとも1回投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、単回用量として、2回用量、3回用量、4回用量、5回用量または6回でもしくはそれを超えて投与される
【0056】
医薬組成物および投与方法
好ましくは、本明細書に開示される併用療法は、例えば経口でまたは非経口でをはじめとするさまざまな経路によって患者に投与されてよく、静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、腫瘍内、血管内、皮内、膣内(例えば、膣坐剤)、または局所的に(例えば、散剤、軟膏経皮パッチ)、または例えば、それぞれ皮膚パッチもしくは経皮イオン導入を使用する皮膚を通した受動的吸収もしくは促進された吸収を含むことができるが、これらに限定されない。
【0057】
治療用の、チェックポイント阻害剤、生物学的治療薬または医薬組成物はまた、病的容態の部位に、例えば、静脈内にまたは動脈内に、腫瘍に供給する血管内へと投与することもできる。例えば、γδT細胞、PARP阻害剤またはこれらの何らかの組み合わせを含む組成物は、腫瘍塊への直接注射、腫瘍塊に入る血管への送達、または両方の組み合わせなどだがこれらに限定されないものによって、標的腫瘍に直接送達されることができる。例えば、組成物は、腫瘍塊、切除後腔内、腹腔内または脳室内へと挿入された挿管針またはカテーテルを経た直接移植によって、患者の脳内の膠芽腫塊に送達されることができることが企図される。
【0058】
好ましくは、本発明の方法を実施する際に投与される作用薬の総量は、比較的短期間にわたるボーラスとしてもしくは注入によってのいずれかで単回用量として対象に投与することができるか、または長期間にわたって複数回用量が投与される分割処置プロトコルを使用して投与することができる。当業者は、対象の病的容態を処置するための組成物の量が、対象の齢および全身の健康状態、ならびに投与経路および投与される処置の数をはじめとする多くの要因に依存することを知っているであろう。これらの要因の観点から、当業者は、必要に応じて特定の用量を調整するであろう。
【0059】
本発明の医薬組成物は、意図した投与方法または投与経路に適合するように製剤することができ、例示的な投与経路を本明細書で明らかにされる。さらに、医薬組成物は、本開示によって企図されるような疾患、障害および容態を処置または予防するために、本明細書に説明するような他の治療上活性のある作用薬または化合物と併用することができる。
【0060】
医薬組成物は、典型的には、本発明の併用療法において使用される治療有効量の1つ以上の作用薬と、1つ以上の医薬としておよび生理学的に許容され得る製剤とを含む。適切な医薬として許容され得るまたは生理学的に許容され得る希釈剤、担体または賦形剤には、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸および重硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルプロピルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾアート)、乳化剤、懸濁剤、分散剤、溶媒、充填剤、増量剤、洗剤、緩衝剤、ビヒクル、希釈剤、および/またはアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。例えば、適切なビヒクルは、生理塩類溶液またはクエン酸緩衝塩類溶液であってよく、おそらく非経口投与用の医薬組成物において一般的な他の材料が補充されていてもよい。中性緩衝塩類溶液または血清アルブミンと混合された塩類溶液は、さらなる例示的なビヒクルである。当業者は、本明細書で企図される医薬組成物および剤形において使用することができるさまざまな緩衝剤を容易に認識するであろう。典型的な緩衝剤には、医薬として許容され得る弱酸、弱塩基、またはこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。一例として、緩衝剤成分は、リン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびこれらの塩などの水溶性材料であることができる。許容され得る緩衝剤には、例えば、トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、およびN-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)がある。
【0061】
医薬組成物が製剤された後、それは、液剤、懸濁剤、ジェル、エマルション、固形物、または脱水散剤もしくは凍結乾燥散剤として滅菌バイアル内に保存することができる。このような製剤は、すぐに使用可能な形態、使用前に再構成を必要とする凍結乾燥形態、使用前に希釈を必要とする液状形態、または他の許容され得る形態のいずれかで保存することができる。好ましくは、医薬組成物は、単回使用容器(例えば、単回使用バイアル、アンプル、注射器、または自動注射器(例えば、EpiPen(登録商標)と同様))で提供されるが、他の実施形態では、複数回使用容器(例えば、複数回使用バイアル)で提供される。インプラント(例えば、植え込み型ポンプ)およびカテーテルシステム、低速注入ポンプおよびデバイスをはじめとする、任意の薬物送達装置を使用して、IL-10を送達することができ、該薬物送達装置の全てが当業者に周知である。一般に皮下または筋肉内に投与されるデポー注射剤も、本明細書に開示されるポリペプチドを規定の期間にわたって放出するために利用することもできる。デポー注射剤は、通常、固形物または油のいずれかに基づいており、一般に、本明細書で明らかにされる製剤構成要素のうちの少なくとも1つを含む。当業者は、デポー注射剤の可能な製剤および使用に精通している。
【0062】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤の形態であってよい。この懸濁剤は、本明細書に記載のそれらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術によって製剤することができる。無菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤として、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってよい。採用することができる許容され得る希釈剤、溶媒、および分散媒体には、水、Ringer液、等張性塩化ナトリウム溶液、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝塩類溶液(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコール)、およびこれらの適切な混合物がある。加えて、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来から採用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドをはじめとする何らかの刺激のない不揮発性油を採用することができる。その上、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用される。特定の注射可能な製剤の長期吸収は、吸収を遅延させる作用薬(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含むことによって達成することができる。
【0063】
医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、エマルション、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤、液剤、マイクロビーズもしくはエリキシル剤として、経口使用に適した形態にあってよい。経口使用を意図した医薬組成物は、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができ、このような組成物は、例えば、甘味剤、香味剤、着色料および防腐剤など、1つ以上の作用薬を含有して、医薬としてエレガントで口当たりの良い製剤を提供することができる。錠剤、カプセル剤などは、錠剤の製造に適した非毒性の医薬として許容され得る賦形剤と混合された有効成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア;および潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであってよい。
【0064】
経口投与に適した錠剤、カプセル剤などは、コーティングされていないか、または、消化管内での崩壊および吸収を遅延させ、それによって持続的な作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を採用することができる。該錠剤などはまた、放出制御のための浸透治療錠剤を形成するために当技術分野で公知の技術によってコーティングされることもできる。追加の作用薬には、投与される組成物の送達を制御するために、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、ポリ無水物、ポリグリコール酸、エチレン-ビニルアセタート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プロタミンスルファート、またはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、もしくはエチレンビニルアセタートコポリマーなどの、生分解性または生体適合性の粒子あるいはポリマー物質がある。例えば、経口剤は、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルもしくはポリ(メチルメタクロラート)マイクロカプセルを使用することによって調製されたマイクロカプセル内に、あるいはコロイド薬物送達システム内に封入することができる。コロイド分散システムには、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、マイクロビーズ、ならびに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質系システムがある。先の製剤の調製のための方法は、当業者には明らかであろう。
【0065】
経口使用のための製剤はまた、有効成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンもしくは微結晶性セルロースと混合された硬ゼラチンカプセル剤として、または有効成分が水媒体もしくは油媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合された軟ゼラチンカプセル剤として提示されることもできる。
【0066】
水性懸濁液は、その製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム;分散剤または湿潤剤、例えば、天然のホスファチド(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアラート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールの場合)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアート)であることができる。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤を含有することもできる。
【0067】
油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油の中に、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁することによって製剤することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。先に明らかにしたような甘味剤、および香味剤を添加して、口当たりのよい経口製剤を提供することができる。
【0068】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つ以上の防腐剤と混合して有効成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤が本明細書に例示される。
【0069】
医薬組成物はまた、水中油型エマルションの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、もしくは鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然に存在するガム、例えば、アカシアガムまたはトラガカントガム、天然に存在するホスファチド、例えば、ダイズ、レシチン、および脂肪酸に由来するエステルまたは部分エステル、ヘキシトール無水物、例えばソルビタンモノオレアート、および部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであることができる。
【0070】
製剤はまた、インプラント、リポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグおよび微量封止送達システムをはじめとする放出制御製剤など、身体からの迅速な分解または排除から組成物を保護するための担体を含むこともできる。例えば、グリセリルモノステアラートもしくはグリセリルステアラートなどの時間遅延材料を単独で、または蝋と合わせて採用することができる。
【0071】
坐剤は、薬物を、常温では固体であるが直腸温では液体であり、それゆえ直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。このような材料には、カカオバターおよびポリエチレングリコールがあるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明に従った使用に適した医薬組成物は、現に公知のまたは将来開発される任意の形式(例えば、経鼻使用または吸入使用のためのスプレー)であってよい。
【0073】
処置適応症
本明細書に説明する併用処置方法は、癌の処置に特に適している。癌細胞は、近くの組織に浸潤することができ、血流およびリンパ系を経て身体の他の部分に広がることができる。癌にはいくつかの主な種類があり、例えば、癌腫とは、内臓を裏打ちするかまたは覆う皮膚または組織において発生する癌である。肉腫とは、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織において発生する癌である。白血病とは、骨髄などの血液形成組織において発生し、多数の異常な血球が産生されて血流に入る癌である。リンパ腫とは、免疫系の細胞内で発生する癌である。
【0074】
正常細胞が、指定され、制御され、および調整された単位として挙動する能力を失うと、腫瘍が形成される。一般に、固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体領域を含有しない異常な組織塊である(一部の脳腫瘍は、嚢胞および液体で満たされた中央壊死領域を有する)。単一の腫瘍が、破綻した異化プロセスにより、該腫瘍の内部に異なる細胞集団を有することもある。固形腫瘍は、良性(癌性ではない)または悪性(癌性)であることがある。さまざまな種類の固形腫瘍が、それらを形成する細胞の型について命名されている。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般に、固形腫瘍を形成しない。
【0075】
腫瘍は、悪性または良性として分類することができる。いずれの場合も、細胞の異常な凝集および増殖が存在する。悪性腫瘍の場合、これらの細胞はより攻撃的に挙動し、侵襲性上昇の特性を獲得する。最終的に、腫瘍細胞は、腫瘍細胞が発生した微視的環境から離れ、身体の別の領域(通常はそれらの成長に寄与しない非常に異なる環境を有する)に広がり、この新たな場で急速な成長および分裂を継続する能力を獲得することさえできる。これは転移と呼ばれる。一旦悪性細胞が転移すると、治癒を達成することはより困難である。良性腫瘍は、浸潤する傾向が少なく、転移する可能性が低い。
【0076】
本明細書で説明される併用処置投与計画を使用して処置されることができる固形腫瘍癌の例としては、膵癌、大腸癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、頭頸部の扁平上皮癌、膀胱癌、前立腺、子宮頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、卵巣、精巣、頭部、頸部、皮膚(黒色腫および基底癌を含む)、中皮内層、食道、乳房、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌および非小細胞癌を含む)、副腎、甲状腺、腎臓、または骨の癌、膠芽腫、中皮腫、胃癌、肉腫、絨毛癌、皮膚基底細胞癌、および精巣の精上皮腫があるが、これらに限定されない。好ましい態様では、癌は、子宮頸癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、頭頸部の扁平上皮癌、膀胱癌、膵癌、黒色腫、リンパ腫または胃癌である。より好ましい態様では、癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、膀胱癌、腎細胞癌または胃癌である。本発明の処置投与計画は、リンパ腫、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、進行性固形腫瘍、治療療法で以前に処置されているが、従来療法に対して難治性のままである腫瘍をはじめとするが、これらに限定されない固形腫瘍を処置するのに特に適している。
【0077】
本発明に従って処置することもできる癌にはとりわけ、成人急性リンパ芽球性白血病;小児急性リンパ芽球性白血病;成人急性骨髄性白血病;副腎皮質癌;小児副腎皮質癌;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性腫瘍;肛門癌;小児小脳星状細胞腫;小児大脳星状細胞腫;肝外胆管癌;膀胱癌;小児膀胱癌;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;小児膠芽腫;成人膠芽腫;小児脳幹膠腫;成人脳腫瘍;小児脳腫瘍、小児脳幹膠腫;小児脳腫瘍、小児小脳星状細胞腫;小児脳腫瘍、小児大脳星状細胞腫/小児悪性神経膠腫;小児脳腫瘍、小児上衣腫;小児脳腫瘍、小児髄芽腫;小児脳腫瘍、小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍;小児脳腫瘍、小児視路および視床下部神経膠腫;小児脳腫瘍(その他);乳癌;妊娠時乳癌;小児乳癌;男性乳癌;小児気管支腺腫/小児類癌腫:小児カルチノイド腫瘍;消化管カルチノイド腫瘍;副腎皮質癌;島細胞癌;未知の原発癌;原発性中枢神経系リンパ腫;小児小脳星状細胞腫;小児大脳星状細胞腫/小児悪性神経膠腫;子宮頸癌;小児癌;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱鞘明細胞肉腫;結腸癌;小児大腸癌;皮膚T細胞性リンパ腫;子宮内膜癌;小児上衣腫;卵巣上皮癌;食道癌;小児食道癌;ユーイング腫瘍ファミリー(Ewing’s Family of Tumors);小児頭蓋外胚細胞腫瘍;性腺外生殖細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼内黒色腫;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;小児胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;消化管カルチノイド腫瘍;小児頭蓋外胚細胞腫瘍;性腺外生殖細胞腫瘍;卵巣胚細胞腫瘍;妊娠性絨毛性腫瘍;小児脳幹神経膠腫;小児視路および視床下部神経膠腫;有毛細胞白血病;頭頸部癌;成人(原発性)肝細胞(肝)癌;小児(原発性)肝細胞(肝)癌;成人ホジキンリンパ腫;小児ホジキンリンパ腫;妊娠時ホジキンリンパ腫;下咽頭癌;小児視床下部および視路神経膠腫;眼内黒色腫;島細胞癌(膵内分泌);カポジ肉腫;腎癌;喉頭癌;小児喉頭癌;成人急性リンパ芽球性白血病;小児急性リンパ芽球性白血病;成人急性骨髄性白血病;小児急性骨髄性白血病;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;有毛細胞白血病;口唇および口腔癌;成人肝癌(原発性);小児肝癌(原発性);非小細胞肺癌;小細胞肺癌;成人急性リンパ芽球性白血病;小児急性リンパ芽球性白血病;慢性リンパ性白血病;AIDS関連リンパ腫;中枢神経系(原発性)リンパ腫;皮膚T細胞性リンパ腫;成人ホジキンリンパ腫;小児ホジキンリンパ腫;妊娠時ホジキンリンパ腫;成人非ホジキンリンパ腫;小児非ホジキンリンパ腫;妊娠時非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症;男性乳癌;成人悪性中皮腫;小児悪性中皮腫;悪性胸腺腫;小児髄芽腫;黒色腫;眼内黒色腫;メルケル細胞癌;悪性中皮腫;潜在性原発性を伴う転移性扁平上皮性頸部癌(Squamous Neck Cancer with Occult Primary,Metastatic);小児多発性内分泌腫瘍;多発性骨髄腫/形質細胞系腫瘍;菌状息肉症;骨髄異形成症候群;慢性骨髄性白血病;小児急性骨髄性白血病;多発性骨髄腫;慢性骨髄増殖性疾患;鼻腔および副鼻腔癌;上咽頭癌;小児上咽頭癌;神経芽腫;神経線維腫;成人非ホジキンリンパ腫;小児非ホジキンリンパ腫;妊娠時非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;小児口腔癌;口腔および口唇の癌;中咽頭癌;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;小児卵巣癌;上皮性卵巣癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵癌;小児膵癌、島細胞癌;副鼻腔および鼻腔の癌;副甲状腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;小児松果体およびテント上原発性神経外胚葉性腫瘍;下垂体腫瘍;形質細胞系腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠時乳癌;妊娠時ホジキンリンパ腫;妊娠時非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;成人原発性肝癌;小児原発性肝癌;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎)癌;小児腎細胞癌;腎盂および尿管の移行上皮癌;網膜芽細胞腫;小児横紋筋肉腫;唾液腺癌;小児唾液腺癌;ユーイング肉腫ファミリー;カポジ肉腫;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;小児横紋筋肉腫;成人軟部肉腫;小児軟部肉腫;セザリー症候群;皮膚癌;小児皮膚癌;皮膚癌(黒色腫);メルケル細胞癌;小細胞肺癌;小腸癌;成人軟部肉腫;小児軟部肉腫;潜在性原発性を伴う転移性扁平上皮性頸部癌;胃(Stomach)(胃(Gastric))癌;小児胃(Stomach)(胃(Gastric))癌;小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍;皮膚T細胞性リンパ腫;精巣癌;小児胸腺腫;悪性胸腺腫;甲状腺癌;小児甲状腺癌;腎盂および尿管の移行上皮癌;妊娠時絨毛性腫瘍;未知の原発部位の小児癌;特殊な小児癌;尿管および腎盂の移行上皮癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;小児視路および視床下部神経膠腫;外陰癌;ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症;ならびにウィルムス腫瘍があるが、これらに限定されない。
【0078】
好ましくは、本発明に従って処置される癌は、頭蓋内および脊髄上衣腫(上衣下細胞腫を除く)、低分化型浸潤性テント上星細胞腫/乏突起膠腫、髄芽腫、退形成性神経膠腫、膠芽腫、CNSの転移性病変および原発性CNSリンパ腫を含むがこれらに限定されないCNS腫瘍である。
【0079】
好ましくは、処置される癌は黒色腫である。好ましくは、処置される癌はぶどう膜黒色腫である。
【0080】
好ましくは、処置される癌は、神経内分泌腫瘍または副腎腫瘍である。例としては、気管支肺疾患、消化管、肺または胸腺、膵臓、傍神経節腫または褐色細胞腫があるが、これらに限定されない。
【0081】
好ましくは、処置される癌は、菌状息肉症およびセザリー症候群を含むがこれらに限定されない非ホジキンリンパ腫である。
【0082】
好ましくは、処置される癌は、軟部組織肉腫である。例としては、血管肉腫、切除不能もしくは進行性の後腹膜/腹腔内軟部組織肉腫、横紋筋肉腫、四肢/表在性体幹および/もしくは頭頸部の癌、または孤立性線維性腫瘍/血管周皮腫がある。
【0083】
好ましくは、処置される癌は、骨癌である。例としては、ユーイング肉腫および間葉性軟骨肉腫がある。
【0084】
好ましくは、処置される癌は、子宮肉腫、小細胞肺癌(SCLC)またはゾリンジャー・エリソン症候群である。
【0085】
好ましくは、本発明に従って処置される癌は、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌および乳癌を含むがこれらに限定されない婦人科系の癌(例えば、女性生殖器系の癌)である。好ましくは、本発明に従って処置される癌は、卵巣癌である。
【0086】
好ましくは、本発明に従って処置される癌は、膠芽腫である。
【0087】
脳腫瘍は、脳内で広汎に拡大するが、通常、脳の外へは転移しない。神経膠腫は、脳内で非常に侵襲的であり、半球を横切ることさえある。しかし、神経膠腫は制御されていないありかたで分裂する。神経膠腫の位置に応じて、神経膠腫は、悪性病変と同様にまさに生命を脅かす可能性がある。この一例は、脳内の良性腫瘍であろうし、該良性腫瘍は、成長して頭蓋内の空間を占有し、脳にかかる圧力の上昇につながる可能性がある。
【0088】
キット
本明細書に説明される本発明の併用療法において使用される治療有効量の1つ以上の作用薬を典型的に含む医薬組成物を含むキットも提供される。キットは、典型的には、キットの内容物の意図する用途を示すラベルおよび使用説明書を含む。
【0089】
キットは、一般に、以下に説明されるように、さまざまな構成要素を収容する物理的構造の形態にあり、例えば、先に説明した方法を実施する上で利用することができる。キットは、例えば、1つ以上の滅菌容器内に提供される、本発明の併用療法において使用される治療薬(例えば、遺伝子操作されたγδ細胞またはDRI阻害剤もしくはICP阻害剤)のうちの1つ以上を含む組成物を含むことができ、該組成物は、対象への投与に適した医薬組成物の形態であることができる。医薬組成物は、使用の準備ができている形態で、または例えば投与前に再構成もしくは希釈を必要とする形態で提供することができる。それら、すなわち組成物が使用者によって再構成される必要がある形態にあるとき、キットはまた、治療薬と共にまたは治療薬とは別個に包装された緩衝剤、医薬として許容され得る賦形剤などを含むこともできる。併用療法が企図されるとき、キットは、いくつかの作用薬を別個に含有することができるか、または該作用薬をキット内で既に組み合わせることができる。
【0090】
本発明のキットは、該キット内に収容された構成要素を適切に維持するのに必要な条件(例えば、冷蔵または冷凍)のために設計することができる。キットは、該キット内の構成要素についての識別情報および該構成要素の使用説明書(例えば、投与パラメータ、作用機序、薬物動態および薬力学、有害作用、禁忌などをはじめとする有効成分の臨床薬理学的性質)を含むラベルまたは同梱添付書類を含有することができる。
【0091】
キットの各構成要素は個々の容器内に封入することができ、さまざまな容器の全てを単一の梱包内とすることができる。ラベルまたは添付書類は、ロット番号および有効期限などの製造元の情報を含むことができる。ラベルまたは同梱添付書類は、例えば、構成要素を収容する物理的構造に一体化されることができるか、物理的構造内に別個に収容されることができるか、またはキットの構成要素(例えば、アンプル、注射器またはバイアル)に貼付されることができる。
【0092】
ラベルまたは添付書類は加えて、ディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリディスク)、CD-ROMもしくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープなどの光ディスク、またはRAMおよびROMなどの電気記憶媒体、または磁気/光記憶媒体、FLASH(登録商標)媒体もしくはメモリ型カードなどのこれらの複合体など、コンピュータ可読媒体を含むことができるか、該コンピュータ可読媒体へと組み込むことができる。いくつかの実施形態では、実際の説明書はキット内には存在しないが、例えばインターネットサイトを介して、遠隔供給源から説明書を取得するための手段が提供される。
【0093】

次の例は例示として提供されるのであって、決して特許請求される本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0094】
例1-癌処置パラダイム
化学療法薬、薬剤耐性γδ-T細胞、PARP-1阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤(複数可)を含む併用療法は、癌患者を処置するために使用される。卵巣癌の処置のために、ニラパリブ、オラパリブ、またはルカパリブがPARP阻害剤として使用される。膠芽腫の処置のために、オラパリブまたはニラパリブがPARP阻害剤として使用される。化学療法薬は、アルキル化薬(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはその誘導体)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン)、植物由来の抗腫瘍薬(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシドなどから選択される。このような作用薬にはさらに、抗癌薬トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジグアニジン(6-BG)、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、シタラビン、およびカンプトテシン、またはこれらのいずれかの治療用誘導体が含まれてよいが、それらに限定されない。薬剤耐性γδ-T細胞は、化学療法薬に対して耐性がある。免疫チェックポイント阻害剤は、単独でまたは他の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用され、免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤であるCTLA-4、PDL1(B7-H1、CD274)、PDL2(B7-DC、CD273)、PD1、B7-H3(CD276)、B7-H4(B7-S1、B7x、VCTN1)、BTLA(CD272)、HVEM、TIM3(HAVcr2)、GAL9、LAG3(CD223)、VISTA、KIR、2B4(CD244、CD2分子ファミリーに属し、NK細胞、γδ細胞、および記憶CD8(αβ)T細胞の全てにおいて発現する)、CD160(BY55とも称される)、CGEN-15049、CHK1キナーゼおよびCHK2キナーゼ、OX40、A2aRならびにさまざまなB-7ファミリーリガンドから選択される。
【0095】
化学療法と組み合わせた免疫療法活性の評価:
応答評価基準には、固形腫瘍応答評価基準(WHO;世界保健機構オフセット公開第48号、1979年)、RECIST(固形腫瘍における応答評価基準、J Natl Cancer Inst 2000;92:205-16、Eisenhauer EA et al.,Eur J Cancer 2009;45:228-47)、免疫関連応答基準(Jedd WE et al.,Clin Cancer Res 2009;15(23),7412-7420)、およびiRANO(神経癌学における免疫療法応答評価)(Okada H et al.,Lancet Oncol 2015 Nov;16(15):e534-42)に基づく評価がある。
【0096】
結果:
薬剤耐性γδ-T細胞(および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞)と、PARP-1阻害剤と、免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤(複数可)とを追加で含む併用療法としての化学療法は結果として、抗腫瘍応答の増強または長期化、;医学的に有益な応答、化学療法単独、または薬剤耐性γδ-T細胞(および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞)と組み合わせた化学療法と比較したときの相加的または相乗的な抗腫瘍活性、新たな病変を伴わないベースライン病変の縮小、;腫瘍退縮、総腫瘍量の着実な減少の可能性を伴う永続的な安定した疾患、総腫瘍量の増加後の応答、および新たな病変の存在下での応答をもたらす。他の臨床所見には、腫瘍の大きさの増加によって測定される腫瘍浸潤リンパ球の増加、および長期生存促進が含まれることがある。
【0097】
例えば、テモゾロミド(TMZ)処置腫瘍は結果として、N-メチルプリンおよびO-メチルグアニンをはじめとする有意な数のDNA付加物の形成をもたらす。このような付加物は結果として、DNA損傷応答(DDR)およびミスマッチ修復(MMR)機構の活性化をもたらす。これらのDNA付加物に対する耐性機序は、N-メチルプリン付加物を除去するためにPARP-1を包含する塩基切除修復(BER)経路を経るか、またはOメチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)タンパク質の存在を経る。O-メチルグアニンは、TMZ耐性に対する主要な機序であり、MGMTが存在しないかまたは不活性である場合、MMRプロセスの活性化は、架橋、複製フォークの遮断および二本鎖DNA切断(DSB)の形成につながる。DSBは結果として、MSH-2/MSH-6二量体の形成ならびに毛細血管拡張性運動失調症Rad3関連(ATR)および毛細血管拡張性運動失調症突然変異型(ATM)キナーゼの活性化をもたらす。
【0098】
このカスケードの活性化は結果として、MICA、MICB、ULBP1~6、およびMSH-2などの腫瘍細胞の表面上の増加した数のストレスリガンドの発現をもたらす。腫瘍細胞の死滅は、その1または複数の受容体(NKG2Dなど)が腫瘍特異的ストレスリガンドを認識する薬物耐性γδ-T細胞および/または薬物耐性ナチュラルキラー細胞によって促進される。しかしながら、腫瘍細胞は、MICAおよびMICBを酵素で開裂して、可溶性MICAおよびMICBを放出することができる。血漿中のエフェクター細胞受容体によって結合されると、このことは、免疫回避を結果としてもたらす受容体発現の下方調節につながる可能性がある。TMZなどの化学療法は、血漿中の可溶性リガンドの濃度を有意に上昇させることなく、腫瘍組織上のストレスリガンドの細胞表面発現を上昇させることがわかっている。ニラパリブ、オラパリブ、またはルカパリブなどのPARP-1阻害剤は、卵巣癌における使用が承認されている。
【0099】
方法
γδT細胞のエクスビボでの増殖
健常なドナーからのヒト分離交換産物の収集。静的培養の場合:全ての操作は、ISO-7に分類された無菌室環境に囲まれたISO-5層流フード内で行った。生成物をHBSS(Hankの平衡塩溶液)で体積/体積で希釈し、単核細胞をFicoll(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス市)での密度勾配分離によって単離した。間期を収集し、HBSS中で2回洗浄した。細胞ペレットを、2mMのゾレドロン酸(Novartis、バーゼルHV)および100u/mLのIL2(Miltenyi Biotec Ltd、ドイツ国ベルギッシュ・グラートバッハ市)を補充したCTS(商標)OpTmizer(商標)T細胞増殖無血清培地(ThermoFisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム市)中に再懸濁した。細胞を標準的なT150フラスコまたはT75フラスコ内で培養した。閉鎖系培養の場合:培地、原液および緩衝液の調製をはじめとする全ての操作を、GMP等級の試薬を使用してバイオセーフティキャビネットイオンおよびISO-t無菌室環境下でISO7無菌室内で行った。生成物の自動Ficoll分離および培養は、個別化された細胞加工プログラムおよびTS520細管セットを使用して、CLINIMACS PRODIGY(登録商標)(Miltenyi Biotec Ltd、ドイツ国ベルギッシュ・グラートバッハ市)バイオリアクタ内で行った。次いで、OpTmizer無血清培養(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム市)で、ゾレドロナート(Zometa;Novartis、バーゼル)とインターロイキン2(Miltenyi Biotec Ltd;ドイツ国ベルギッシュ・グラートバッハ市)(ZOL/IL-2)との組み合わせを使用して、CLINIMACS PRODIGY(登録商標)のCentriCult-Unit内で細胞を増殖させた。培養物を1~2×10個の細胞/mlの密度で維持し、13日目に細胞が収集されるまで、IL-2 100u/mLを1日おきに補充した。一定の間隔でフラスコ内での小規模培養と比較して、増殖および表現型の動態を決定するために、プロセスを連続的に監視した。9~14日間の培養後、増殖したγδT細胞を表現型分類し、細胞毒性を標準的な白血病細胞株および神経膠腫腫瘍細胞に対して決定した。
【0100】
例2-PARP阻害剤(PARPi)とテモゾロミド(TMZ)との組み合わせに曝露した時の神経膠腫細胞株に対するストレスリガンドの発現。
材料および方法
細胞収集方法/加工/培養条件:
処置投与計画を作成するための全体的な戦略を以下に概説する。目標は、新たに調製した細胞集団として投与される初回用量で患者を処置するのに必要なγδT細胞の総数を求めることとした。
【0101】
患者の登録後、切除後および誘導化学療法/放射線療法の開始直前に、2容量分離交換収集物を1回分得た。
【0102】
MNC増殖培養を、検証されたプログラムによって定義されるようにProdigy(登録商標)Bioreactor内で2.0×10/mlの濃度で開始し、OpTimizer(Life Technoogies)内での37℃、5%CO+5μgMのゾレドロン酸(Novartis Oncology;ニュージャージー州イーストハノーバー地区)+50u/mlのIL-2(Miltenyi、カリフォルニア州デュアルテ市)で維持した。培養後2、5および7日目に100u/mLのIL-2を添加して培養物を7日間維持し、+9、+11、および+13日間400u/mLまで増加させる。完全培地の添加は、pHおよび細胞密度によって決定される。
【0103】
全ての細胞は、最低60回/時の空気交換でISO-7無菌室内に配置されたPRODIGY(登録商標)内での培養とした。バイオリアクタの外部で行われる操作は、ISO5バイオセーフティキャビネット下の無菌室内で行われる。
【0104】
細胞数および差を評価するために、増殖前ならびに2、5、7、9、11および14日目に分析用の試料を得た。FACS分析を行って、細胞生存度を決定し、総CD3 T細胞、総γδT細胞(Vδ2およびVδ1部分セットを含む)、総αβT細胞(CD4およびCD8部分セットを含む)、ならびにNK細胞およびB細胞を含む、関連する細胞の部分セットを列挙した。FACS DiVa(登録商標)ソフトウェアを使用して、FACS Canto(登録商標)またはLSR Fortessa SE(登録商標)フローサイトメーターで全ての検体を分析した。
【0105】
最終生成物を+14日目、±3日に収集した。最終生成物の試料を計数し、フローサイトメトリーによって分析し、ベクターコピー数(VCN)および必要な微生物学的試験に供した。最終生成物を1:2希釈し、残りの全ての製造試薬を除去するために、Plasma-Lyte Aおよび10%HSA中で洗浄する。洗浄および濃縮後、生成物をPlasma-Lyte A、5%HSA、および10%DMSO中で再懸濁し、必要になるまで1×10個/mLの濃度で2mLのCryovial内に凍結保存する。
【0106】
エクスビボ修飾:
培養物が対数増殖期、通常は>20%のγδT細胞に到達すると、MGMTレンチウイルス(Miltenyi Lentigen:メリーランド州ボルチモア市)を用いた細胞形質導入を行った。培養物を10×2のMOIでスピノキュレーションによって形質導入した。
【0107】
生成物を凍結保存状態から解凍し、緩衝生理塩類溶液および5%Plasma-Lyteの中で洗浄した。解凍後、最終生成物を1×10個のγδT細胞の濃度となるよう同じ洗浄緩衝液中に再懸濁する。
【0108】
アッセイ:
PARPiに対するGBM+テモゾロミド(TMZ)の推定上の差次的感受性を測定するために、標準化GBM細胞株LN229、U87MGおよびU251MG細胞(96ウェルプレートのウェルあたり6000個の細胞、三つ組で播種)を、オラパリブ(5または10mM)単独、オラパリブ(例示的なPARP阻害剤)+200mg/mL TMZまたは培地単独(RPMI+10%FBS培地)に4時間曝露し、標準化MTT生存度アッセイと、懸濁液フローサイトメトリーアッセイにおける7-AADの組み込みとを用いて、開始時ならびに処置の8、16、24、および36時間後に測定される生存度を測定した。
【0109】
データを、細胞可溶化後の処理なしに対する%MTT取り込み、および懸濁フローサイトメトリーアッセイについての%7-AAD陰性細胞として表した。また、NKG2DリガンドMIC A/BおよびULBP1~6の発現も、上述の各細胞株および条件についてフローサイトメトリーによる懸濁アッセイにおいて評価した。データを、全ての時点について、対照(培地のみ)に対する対数平均蛍光強度(MFI)として表した。
【0110】
結果:
図1図3のデータは、PARP阻害剤とテモゾロミド(TMZ)との組み合わせが、3つの高度悪性神経膠腫細胞株上の選択されたナチュラルキラー基2D(NKG2D)リガンドを上方調節するために相乗的に作用することを示す。
【0111】
多くの場合、例えば、Lamb et al.,PloS ONE 8(1):e51805.doi:10.1371/journal.pone.0051805において説明されているようにTMZ単独で確立されたDRI処置についての最適な処置ウィンドウの間でも、NKG2DLの最大値の上昇は一過性であり、発現は約24時間後に下方調節し始めた。
【0112】
本明細書で引用される特許および科学文献は、当業者に利用可能である知識を確立している。本明細書で引用される全ての米国特許および公開または未公開の米国特許出願は、参照により組み込まれる。本明細書で引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される他の全ての公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
本発明は、その好ましい実施形態に関して特に示され説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細におけるさまざまな変更を本発明において行うことができることが当業者によって理解されるであろう。また、本明細書に説明される実施形態のいずれも相互に排他的ではなく、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな方法で組み合わせることができることも理解されよう。
図1-1】
図1-2】
図2
図3