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  • 特許-溶液から元素を抽出するための方法 図1
  • 特許-溶液から元素を抽出するための方法 図2A
  • 特許-溶液から元素を抽出するための方法 図2B
  • 特許-溶液から元素を抽出するための方法 図3
  • 特許-溶液から元素を抽出するための方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】溶液から元素を抽出するための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/26 20060101AFI20250225BHJP
   C22B 3/30 20060101ALI20250225BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20250225BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
C22B3/26
C22B3/30
C22B23/00 102
C22B26/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021524234
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019059651
(87)【国際公開番号】W WO2020093041
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】62/754,739
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】メイズ,ウィリアム シー.
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ライヒマン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ダイアナ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ティノシュ
(72)【発明者】
【氏名】パンチュラ,マーティン ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】フォン ディーク,ディーター ジー.
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162982(JP,A)
【文献】特開2004-307983(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181816(WO,A1)
【文献】特開2018-095968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 3/26
C22B 3/30
C22B 23/00
C22B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル(II)/リチウム(I)(Ni2+/Li)溶液からニッケル、リチウム、またはその両方を抽出するためのプロセスであって、
(A)ある量のリチウムおよびある量のニッケルを含むNi2+/Li溶液を提供することと、
(B)前記Ni2+/Li溶液をアルカリ剤で処理して、前記Ni2+/Li溶液のpHを、1.0~10.0に調整することと、
(C)前記Ni2+/Li溶液を、前記pHにおいて前記Ni2+/Li溶液からニッケルを抽出するためのニッケル選択的抽出剤で処理し、それによって、前記Ni2+/Li溶液よりも少ないNi2+を有するLi溶液を生成させることと、を含み、且つ
工程(A)で提供される前記Ni2+/Li溶液は、リチウムニッケル酸化物材料の脱リチウム化後の廃棄物流の溶液であり、且つ
ステップ(B)および(C)が、ニッケル選択的抽出剤と前記アルカリ剤との間で交互に繰り返され、且つ
ニッケル選択的抽出剤は、オキシムまたはカルボン酸であり、
前記リチウムニッケル酸化物材料の脱リチウム化後の廃棄物流は、
LiNiO
LiNiMO (但し、MがMn、Mg、Al及び/又はCoである)、
LiNiCoAlO 、又は
LiNiCoAlM’O (但し、M’が、Mn、Al、Mg、Ti、Zr、Nb、Hf、V、Cr、Sn、Cu、Mo、W、Fe、Si及び/又はBである)
から選ばれる電気化学的活性材料の脱リチウム化後の廃棄物流であり、
ステップ(B)の前記Ni 2+ /Li 溶液のpHが、6.0~8.0であり、
ステップ(C)の前記Li 溶液が、1000パーツパーミリオン未満のNi 2+ を含み、且つ
前記プロセスが、前記Li 溶液を炭酸化剤で処理してリチウム塩を生成させることをさらに含むか、又は前記プロセスが、前記Li 溶液をリチウム選択的抽出剤で処理して、濃縮リチウム塩溶液を生成させることをさらに含む、プロセス。
【請求項2】
前記リチウムニッケル酸化物材料の脱リチウム化後の廃棄物流は、LiNiO材料の脱リチウム化後の廃棄物流である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
リチウム塩を単離することをさらに含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記Li溶液を炭酸化剤で処理してリチウム塩を生成させることによって、リチウム塩が単離され、前記炭酸化剤が、二酸化炭素(CO)、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸塩、および前記のものの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記リチウム塩が、濾過され、洗浄される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、および前記のものの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ニッケル選択的抽出剤が、オキシムである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記オキシムが、5-ノニルサリチルアルドキシム、5-ドデシルサリチルアルドキシム、5-ノニル-2-ヒドロキシアセトフェノンオキシム、および前記のものの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ニッケル選択的抽出剤が、炭化水素をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記炭化水素が、灯油、パラフィン、ナフテン、および前記のものの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ニッケル選択的抽出剤および炭化水素が、10:90体積パーセント~30:70体積パーセントで存在する、請求項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(C)が、7.0のpHで実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記リチウム選択的抽出剤が、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル、ネオデカン酸、または前記のものの少なくとも2つの組み合わせである、請求項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記リチウム選択的抽出剤が、炭化水素をさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記炭化水素が、灯油、パラフィン、ナフテン、または前記のものの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップ(A)の前に、前記プロセスが、LiNiO化合物を脱リチウム化することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/754,739号に基づき、優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、溶液から元素を回収するための方法に関する。より具体的には、本開示は、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO)材料の脱リチウム化後の廃棄物流から任意選択で生成されるようなリチウムおよびニッケルを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、電気車両、携帯電話、およびカメラへの電力供給などの重要な用途でますます使用されている。幅広い技術分野でのそのような電池の用途の増加により、これらの材料の製造からの廃棄物流として、または使用済みリチウム化電池からの廃棄物流として生成されるニッケルおよびリチウムなどの貴重な元素を、コストおよび時間の両方において効率的な仕方で抽出する必要性が高まっている。これらの廃棄物流から抽出される材料は、製造プロセスにリサイクルして戻すことができ、または他の関連プロセスにおいて販売および実装することができる。そのように、ニッケルおよびリチウムの回収は、リチウム化された酸化ニッケル活性材料を抽出するための経済的に実行可能なプロセスを可能にする。
【0004】
その分野で現在使用されている典型的な抽出方法によれば、使用済みリチウムイオン電池は機械的に分離される。機械的な分離プロセスとしては、リサイクルされる電池の開封、取り外し、および細断が挙げられる。そのようなプロセスは、廃棄物が適切に集められない場合、時間がかかり、かつ環境にやさしくないことがある。細断されると、ニッケルおよびリチウムなどの貴重な金属は、酸浸出プロセスによって、電池から浸出する可能性がある。次いで、個々の酸浸出金属から沈殿物が形成され得るように、各成分が分離される。電池用カソードの製造中に材料の脱リチウム化の廃棄物として生成されたNiおよびLiに富む抽出物は、直接リサイクルするか、廃棄物として廃棄することができる。
【0005】
残念なことに、現在の抽出またはリサイクル方法では、処理しなければならない大量の廃棄物を発生させるさまざまな酸化剤を使用することが多く、それによりクリーンアップの時間およびコストが必要となる。さらに、これらの方法は、抽出された成分の効果的な分離を提供しない場合があり、それにより材料の個々の回収が不可能になる。そのような欠陥は、回収され得る材料の量を減らし、また、生成される廃棄物の量および電池材料の抽出に関連するコストの両方も増加させる。
【0006】
ニッケルおよびリチウムの両方などの複数の材料を同時に回収するために、多段階共抽出が試みられてきた。これらの方法では、個別に抽出された材料を生成することができるが、個別に抽出された材料を生成するためには、4つの共抽出段階および合計6つのステップが必要である。そのため、現在の共抽出プロセスは、各ステップを分離して実行する必要があるため、非常に時間がかかる。さらに、共抽出プロセス中に必要とされる溶媒の量は、各ステップ中に異なる溶媒が必要とされるため、金銭的に高価である。
【0007】
そのため、電池廃棄物流からニッケルおよびリチウムなどの材料を抽出する効率および出力を改善するために新しい方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
以下の概要は、本開示に固有の革新的な機能のいくつかの理解を容易にするために提供しており、完全な説明を意図するものではない。明細書全体、特許請求の範囲、図面、および要約を全体として捉えることによって、本開示のさまざまな態様を完全に理解することができる。
【0009】
電池での使用に好適な材料の脱リチウム化の結果として任意選択で供給されるニッケル(II)/リチウム(I)(Ni2+/Li)溶液からリチウムおよびニッケルを抽出するためのプロセスが提供される。Ni2+/Li溶液はまた、いくらかのレベルのNi(III)およびNi(IV)も含み得る。特定のループプロセスでは、時間効率が良く、かつ費用効果の高い仕方で、ニッケルおよびリチウムを個別に実質的に完全に回収できることが見出された。Ni2+/Li溶液からニッケルおよびリチウムを抽出するためのプロセスは、任意選択で、ある量のリチウムおよびある量のニッケルを含むNi2+/Li溶液を提供することと、Ni2+/Li溶液をアルカリ剤で処理してNi2+/Li溶液のpHを約1.0~約10.0に調整することと、を含む。プロセスは、Ni2+/Li溶液を、そのpHでNi2+/Li溶液からニッケルを抽出するのに好適であるニッケル選択的抽出剤で処理し、それによって、任意選択で1000パーツパーミリオン未満のNi2+を有するLi溶液(ニッケル貧溶液)を生成することをさらに含む。
【0010】
いくつかの態様では、アルカリ剤と組み合わせた後のNi2+/Li溶液のpHは、3.0を超える。アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、および前述の少なくとも2つの組み合わせからなる群から任意選択で選択される。
【0011】
いくつかの態様では、ニッケル選択的抽出剤は、オキシムまたはカルボン酸である。オキシムは、5-ノニルサリチルアルドキシム、5-ドデシルサリチルアルドキシム、5-ノニル-2-ヒドロキシアセトフェノンオキシム、および前述の少なくとも2つの組み合わせからなる群から任意選択で選択される。カルボン酸は、任意選択で、第三級カルボン酸であり、任意選択でネオデカン酸である。
【0012】
任意選択で、ニッケル選択的抽出剤は、炭化水素をさらに含む。炭化水素は、灯油、パラフィン、ナフテン、および前述の少なくとも2つの組み合わせからなる群から任意選択で選択される。任意選択で、ニッケル選択的抽出剤および炭化水素は、10:90体積パーセント~30:70体積パーセントで存在する。
【0013】
いくつかの態様では、ニッケル選択的抽出剤でNi2+/Li溶液を処理するときのNi2+/Li溶液のpHは3.0~8.0である。ニッケル選択的抽出剤でNi2+/Li溶液を処理するステップは、アルカリとの組み合わせから任意選択で生じる約7.0のpHで任意選択で行なわれる。
【0014】
ニッケル抽出から生じる得られるLi溶液のNiは、任意選択で1000パーツパーミリオン未満、任意選択で100パーツパーミリオン未満、任意選択で10パーツパーミリオン未満である。
【0015】
いくつかの態様では、プロセスは、リチウム塩を生成するために、炭酸化剤でLi溶液を処理することをさらに含む。炭酸化剤は、二酸化炭素(CO)、アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸塩、および前述のものの少なくとも2つの組み合わせからなる群から任意選択で選択される。任意選択で、炭酸リチウムを濾過して洗浄する。
【0016】
いくつかの態様では、プロセスは、リチウム選択的抽出剤でLi溶液を処理して、濃縮リチウム塩溶液を生成させることをさらに含む。リチウム選択的抽出剤は、任意選択で、2-エチルヘキシルホスホン酸、モノ-2-エチルヘキシルエステル、ネオデカン酸、または前述のものの少なくとも2つの組み合わせである。任意選択で、リチウム選択的抽出剤は、炭化水素をさらに含む。炭化水素は、任意選択で、灯油、パラフィン、ナフテン、または前述の少なくとも2つの組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面に記載された開示の態様は、本質的に説明的かつ例示的であり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図するものではない。開示の説明的な態様の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと理解することができる。
図1】例示的な廃棄物または他の材料からの材料の任意選択的連続抽出を示しているいくつかの態様に従うプロセスの例示的な概略図である。
図2】複数の抽出段階および複数のストリップ段階による抽出(E)、洗浄(W)、およびストリッピング(S)の様々な段階を示している本明細書で提供されるプロセスのフロー図を例示しており、有機段階の流れ、入力Ni2+/Li2+溶液の流れ、およびストリップステップが並列(A)または直列(B)となっているプロセスにおいて図示した、本明細書で提供されるプロセスのニッケル抽出ステップの出力を捕集するタンクの流れを、例示している。
図3】いくつかの態様に従う、本明細書で提供される例示的なプロセスの概略図である。
図4】いくつかの態様に従う、本明細書で提供される例示的なプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で提供されるのは、入力流からニッケルおよび任意選択でリチウムを分離するためのプロセスであり、その入力流は、任意選択で、LiNiO材料の脱リチウム化後の廃棄物である。そのプロセスは、初めて、これらの流れからニッケルおよび任意選択でリチウムを効率的かつ確実に回収することができ、その結果、得られた単離されたニッケルおよびリチウムは、後続のプロセスのために、または追加の電気化学的活性材料の形成のために使用することができる。本開示のいくつかの態様に従う本明細書で提供されるプロセスは、入力流からニッケル、リチウム、またはその両方を効率的に分離かつ抽出できるように、向流の有機相および水相の1つ以上の連続ループシステムを利用する。いくつかの態様に従う全プロセスの概略図を図1に示す。
【0019】
いくつかの態様では、プロセスは、連続的かつ任意選択でマルチステップ抽出を用い、それによって、各抽出は、他のステップから分離して実行する必要がなく、従来のプロセスに比べて、任意選択でより短い時間で作動し、かつ廃棄物の生成が少ないはるかに堅牢な全抽出プロセスを提供する。一般に、廃棄材料は、本明細書で提供されるプロセスによって、抽出または単離するためのNiおよび任意選択でLiの供給源として提供される。本明細書で使用される「廃棄物」という用語は、抽出に好適な濃度においていずれかまたは両方を有するNi2+およびLiの両方を含む液体または固体の組成物と定義される。「廃棄物」という用語は、別の従来プロセスの使用済み生成物である必要はないが、所望の材料の従来の処理ステップからのNiまたはLiの浸出などの上流プロセスの結果であり得る。任意選択で、本明細書で使用される廃棄物は、リチウムニッケル酸化物の脱リチウム化中に生成されるNiおよびLiの連続的または不連続的浸出からの廃棄物流であり、任意選択で、一次または二次電気化学セルにおけるカソードの形成のために使用される。
【0020】
Ni2+/Li溶液の形態の廃棄材料は、任意選択で、1つ以上の抽出段階、1つ以上のストリップ段階、および1つ以上の洗浄段階を任意選択で含むことができ、前述の任意のものまたはすべてが連続回路に組み立てられる連続多段階抽出プロセスに供される。任意選択で、回路設計には1つ以上の洗浄段階が含まれる。任意選択で、設計には2つ以上の洗浄段階が含まれる。洗浄段階の数は、ユーザーの希望に応じたものであり、必ずしも制限されるわけではないが、いくつかの態様では、単一の洗浄段階のみが使用される。
【0021】
流体回路は、1つ以上の抽出段階を含む。抽出段階の数は、任意選択で1~10、またはそれらの間の任意の値または範囲である。任意選択で、抽出段階の数は、2~10、2~8、2~6、3~10、3~8、3~6である。任意選択で、抽出段階の数は、2、3、4、5、6、7、またはそれらを超える。任意選択で、抽出段階の数は、6以下、任意選択で5以下である。回路中の抽出段階の数により、各段階でのNi(またはLi)の効率的な抽出と、後続の生成プロセスでの使用に好適な単離されたNiを得るためのさらなる処理に供され得る単一のNi富化抽出剤の生成が可能になる。次いで、得られたニッケル貧溶液(Li溶液)も、後続のLiの単離に供され得る。
【0022】
各抽出段階は、次いでアルカリ剤、Ni選択的抽出剤、またはその両方を導入することができるミキサーセトラーに収容され得る。5つの抽出段階が存在する例では、5つのミキサーセトラーが流動的に接続されており、その結果、1つの抽出段階からの生成物を後続のミキサーセトラーへと通すことができ、また、廃棄物流として、Niの抽出を促進するために直列に反対方向に通される有機抽出溶媒(1つ以上のニッケル選択的抽出剤を含む)は、1つの抽出段階から後続の抽出段階に移動される。例示的な一般化されたプロセスが、図2Aおよび図2Bに例示してあり、図2Aは並列に用いられるストリップ段階(S1およびS2)を例示し、図2Bは直列に用いられるストリップ段階(S1およびS2)を例示しているという違いがある。図2Aおよび図2Bに例示されているように、NiおよびLiを含み、システムを通る供給物として使用される廃棄材料を含む(タンク1)。廃棄材料は、最初のミキサーセトラーにおける抽出段階E1から供給され、反対方向に直列に移動するニッケル選択的抽出剤と組み合わされる。そのため、廃棄材料は、最初に段階E1でニッケル選択的抽出剤と接触し、E1からE5に移動し、Ni選択的抽出剤は最初にE5で抽出段階に入りE5からE1に移動する。段階E1での反応後、Niが除去された水相は、E2に移動し、続いてE3、E4、およびE5に移動し、その結果、Niは、継続的に除去され、反対方向に移動する有機相において濃縮される。次に、Ni富化有機相は、任意選択で、洗浄段階(W)でスクラブし、ストリップ段階(複数可)に直接移してもよい。
【0023】
Ni富化有機相は、任意選択で洗浄され、次いでストリップ段階S2およびS1に任意選択でその順序で移され、Ni選択的抽出剤溶液(有機)からNiをストリップする。そのためにストリップ段階の各々は別個のミキサーセトラーに収容されている。任意選択で、ストリップ段階の数は、1つ以上であり、任意選択で2つ以上である。ストリップ段階の数は、任意選択で4以下であり、任意選択で3以下であり、任意選択で2以下である。上記の抽出段階と同様に、ストリップ段階には、Ni富化有機相からNiをストリップし、Ni塩を生成するために、ストリップ水溶液(例えば、酸)の向流が含まれる。
【0024】
各ストリップ段階内で、Ni富化有機相は、酸を含むストリッピング溶液にさらされて、Niを水素と交換し、精製かつ濃縮されたニッケルを、Ni塩を生成するためのストリップ水相に通す。Ni塩は、それ自体が後続の製造プロセスの入力材料として使用され得るか、または後続の使用のためのNiを後続のさらなる元素の単離(例えば、電着プロセスまたは沈殿によって)のために使用され得る。次いで、Ni貧有機相は、任意選択で、洗浄段階でスクラブされ、貯蔵タンクに戻され、かつ/または廃棄材料からのNiのその後の抽出のためにNi抽出段階に直接移され得る。
【0025】
抽出段階の結果として得られたニッケル貧材料(Li溶液)は、後続のLiの回収のために保持タンク(タンク2)に移されるか、またはLi抽出プロセスに直接移される。後続のLi抽出プロセスに再導入される前に、Li溶液は、イオン交換に供され得る。Li抽出プロセスは、任意選択で、Li溶液からのLiの直接沈殿(図3)であるか、または上記のように実質的に物理的に設定されているLi抽出プロセスに移されるが、抽出段階(複数可)でLi選択的抽出剤を用いる(図4)。Li抽出または沈殿の結果は、追加の商品の生産のためのリサイクル材料としても機能し得るLi塩である。
【0026】
より詳細に説明すると、本開示のいくつかの態様では、ニッケル(II)/リチウム(I)(Ni2+/Li)廃棄材料からニッケルおよび任意選択でリチウムを抽出するためのプロセスは、ある量のリチウムおよびある量のニッケルを含む、Ni2+/Li溶液を、任意選択で廃棄材料を提供することを含む。Ni2+/Li溶液中に存在するリチウムは、任意の好適なリチウム含有および任意の好適なニッケル含有化合物から誘導され得る。例示的に、Ni2+/Li溶液は、電気化学セルで使用され、かつ例示的にLiNiO材料、NCM材料などの当技術分野で認識されている脱リチウム化方法に従って生成される電気化学的活性材料の脱リチウム化の結果としての廃棄物流であり得る。任意選択で、Ni2+/Li溶液は、LiNiO材料、またはLiNiMOの脱リチウム化から生じ、式中、Mは、Mn、Mg、Al、Co、および/または殆どの任意の他の遷移金属などの多くの金属のうちの1つのいずれかである。他の例としては、LiNiCoAlO、LiNiCoAlMOが挙げられ、式中、Mは、任意選択で、遷移金属、またはMgなどである。遷移金属は、電気化学セルでの使用に好適な任意の遷移金属であり得る。遷移金属の実例としては、Ni、Co、Mn、Al、Mg、Ti、Zr、Nb、Hf、V、Cr、Sn、Cu、Mo、W、Fe、Si、B、または他の遷移金属が挙げられるが、それらに限定されない。
【0027】
電気化学的活性材料の生成またはNi2+/Li溶液の他の生成は、リチウム化合物とニッケル化合物との組み合わせによるものであり得る。任意選択で、リチウム化合物は、水酸化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、過酸化リチウム、炭酸水素リチウム、またはハロゲン化リチウム、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0028】
いくつかの態様によれば、Ni2+/Li溶液中に存在するリチウムの量は、約5g/L~約250g/L、任意選択で約20g/L~約150g/Lの範囲であり得る。いくつかの態様では、Ni2+/Li溶液中に存在するリチウムの量は、約10g/L~約200g/L、約15g/L~約175g/L、約20g/L~約150g/L、約25g/L~約125g/L、約30g/L~約100g/L、約40g/L~約75g/L、または約50g/L~約60g/Lである。
【0029】
本開示のいくつかの態様では、Ni2+/Li溶液中に存在するニッケルは、Niの水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、または硝酸塩などの任意の好適なニッケル含有化合物から誘導され得る。
【0030】
いくつかの態様によれば、Ni2+/Li溶液中に存在するニッケルの量は、約5g/L~約400g/L、任意選択で約20g/L~約200g/Lの範囲であり得る。いくつかの態様では、Ni2+/Li溶液中に存在するリチウムの量は、約10g/L~約300g/L、約15g/L~約250g/L、約20g/L~約200g/L、約25g/L~約150g/L、約30g/L~約100g/L、約40g/L~約75g/L、または約50g/L~約60g/Lである。
【0031】
LiNiO材料は、当技術分野で認識されているプロセスによって、例示的には、LiNiO材料を、所望の脱リチウム化温度で、水性6MのHSOにさらすことによるなどの米国特許第8,298,706号に記載されているプロセスによって、実質的に脱リチウム化され得る。任意選択で、LiNiOは、LiおよびNi2+を有する硫酸マトリックスを生成するように脱リチウム化することができ、Li+およびNi2+は、その後、本明細書に記載のプロセスを使用して単離され得る。さらに、洗浄液から取り出した上澄みは、本明細書で提供されるプロセスのさらなる態様において、廃棄物流Ni2+/Li溶液として使用され得る。
【0032】
Ni2+/Li溶液からニッケルおよび/またはリチウムを抽出するためのプロセスは、1つ以上の抽出段階において、Ni2+/Li溶液をアルカリ剤で処理して、Ni2+/Li溶液のpHを約1.0~約10.0に調整することを含む。好適なアルカリ剤としては、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。アルカリ剤からは、任意選択で、所望の溶液からの1つ以上の金属の回収を妨げるカチオンをシステムに導入するアルカリ剤は除外する。任意選択で、アルカリ剤からはナトリウム塩を除外する。任意選択で、アルカリ剤からはカリウム塩を除外する。任意選択で、アルカリ剤からはカルシウム塩を除外する。
【0033】
任意選択で、アルカリ剤は、Ni2+の1つ以上の抽出段階で、Ni2+/Li溶液のpHを、約1.0~約10.0の間に調整する量および濃度で提供される。任意選択で、アルカリ剤との接触後のNi2+/Li溶液のpHは、約1.5~約9.5、約2.0~約9.0、約2.5~約8.5、約3.0~約8.0、約3.5~約7.5、約4.0~約7.0、約4.5~約6.5、約5.0~約6.0、または約6.0~約7.5である。任意選択で、アルカリ剤を、1つ以上の抽出段階で導入して、溶液のpHを、約3.0以上、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0以上に調整する。任意選択で、pHは、抽出溶液のpHを約6.0~約7.0にするかまたは維持するように、アルカリ剤との接触によって、1つ以上の抽出段階で調整する。
【0034】
本開示のいくつかの態様では、Ni2+/Li溶液からニッケルおよびリチウムを抽出するためのプロセスは、Ni2+/Li溶液をニッケル選択的抽出剤で処理することをさらに含み、そのニッケル選択的抽出剤は、所望のpHでNi2+/Li溶液からニッケルを抽出し、それによって、Ni2+/Li溶液よりも少ないNiを有するLi溶液を生成させるのに好適である。
【0035】
いくつかの態様では、ニッケル選択的抽出剤はオキシムである。オキシムの例として、アルドキシムおよびケトキシムが挙げられる。そのようなオキシムは、以下の式Iによって例示的に記述される:
【化1】
式Iにおいて、Rは、1~25個の炭素原子を有するアルキル基、3~25個の炭素原子を含有するエチレン性不飽和脂肪族基、または-ORであり、式中、Rは、上で定義したアルキル基またはエチレン性不飽和脂肪族基であり、およびcは、1、2、3、または4であり、Rは、H、1~25個の炭素原子を含有するアルキル基、3~25個の炭素原子を含有するエチレン性不飽和脂肪族基、または
【化2】
nは、0もしくは1であり、Rは、1~25個の炭素原子を有するアルキル基、3~25個の炭素原子を含有するエチレン性不飽和脂肪族基、もしくは-ORであり、Rは、上で定義したアルキル基またはエチレン性不飽和脂肪族基であり、任意選択で、RおよびR基における炭素原子の総数は3~25個である。そのようなオキシムは、米国特許第6,261,526号および同第8,986,633号に記載されている。
【0036】
好適な例示的な特定のオキシムとしては、5-ノニルサリチルアルドキシム、5-ドデシルサリチルアルドキシムなどのアルドキシム、または5-ノニル-2-ヒドロキシアセトフェノンオキシムなどのケトキシムを挙げることができる。任意選択で、2つ以上のオキシムまたはオキシムタイプが組み合わされる。
【0037】
任意選択で、ニッケル選択的抽出剤はカルボン酸である。任意選択で、カルボン酸ニッケル選択的抽出剤は、第三級カルボン酸であり、任意選択で、分岐した第三級カルボン酸である。任意選択で、カルボン酸は、カルボン酸基に結合連結された1つ以上のアルキルラジカルを含む。アルキルラジカルは、任意選択でC1~C10アルキルラジカルであり、任意選択でC1~C9である。任意選択で、3つのアルキルラジカルが、カルボン酸基に連結された中心炭素に連結されている。3つのアルキルラジカルの各々は、独立して、任意選択でC1~C10アルキルである。任意選択で、第1のアルキルラジカルは、メチルである。任意選択で、第2のアルキルは、C1~C10のアルキルである。任意選択で、第3のアルキルは、C1~C5のアルキルである。各アルキルは、線状または分岐状であり得る。任意選択で、カルボン酸ニッケル選択的抽出剤はネオデカン酸である。
【0038】
ニッケル選択的抽出剤は、1つ以上の抽出段階において、Ni2+/Li溶液の総体積に基づいて、約5体積パーセント~約50体積パーセントで、Ni2+/Li溶液に添加され得る。ニッケル選択的抽出剤の他の好適な範囲としては、Ni2+/Li溶液の総体積に基づいて、約10体積パーセント~約45体積パーセント、約15体積パーセント~約40体積パーセント、または約20体積パーセント~約30体積パーセントを挙げることができる。
【0039】
本開示のさらなる態様では、ニッケル選択的抽出剤は、希釈剤として炭化水素をさらに含む。好適な炭化水素としては、灯油、パラフィン、ナフテン、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。ニッケル選択的抽出剤および炭化水素は、さまざまな比率で一緒に存在することができる。任意選択で、ニッケル選択的抽出剤対炭化水素の比は、体積に基づいて、約1:99~約99:1の範囲であり得る。任意選択で、ニッケル選択的抽出剤対炭化水素の比は、体積に基づいて、約50:50~約20:80である。任意選択で、ニッケル選択的抽出剤対炭化水素の比は、約2:98体積パーセント~体積で約45:55、体積で約3:97~体積で約40:60、体積で約5:95~体積で約40:60、体積で約7:93~体積で約35:65、または体積で約10:90~体積で約30:70であり、ニッケル選択的抽出剤および炭化水素の各々は、ニッケル選択的抽出剤または炭化水素のそれぞれの実質的に単離または飽和された溶液からのものである。
【0040】
本明細書で提供されるプロセスは、任意選択で、直列または並列で、1つ以上の抽出段階を含む。任意選択で、ニッケル選択的抽出剤、pH調整、または他のものが、Ni2+/Li溶液と接触する抽出段階の数は、1、2、3、4、5、6、7、またはそれを超える数の段階である。本明細書で提供されるプロセスの多段化は、Ni2+/Li溶液からのニッケルの迅速かつ堅牢な抽出を提供する。1つ以上の抽出段階の結果は、ニッケル富化溶液と、リチウム(例えば、Li溶液)も含むニッケル貧溶液である。ニッケル貧溶液(またはニッケル抽出の結果)は、任意選択で、1000ppm以下のNi2+、500ppm以下のNi2+、100ppm以下のNi2+、10ppm以下のNi2+、9ppm以下のNi2+、8ppm以下のNi2+、7ppm以下のNi2+、6ppm以下のNi2+、5ppm以下のNi2+、4ppm以下のNi2+、3ppm以下のNi2+、2ppm以下のNi2+、または1ppm以下のNi2+である。ニッケル貧溶液は、任意選択で、続いて、ニッケル貧溶液からリチウムを抽出するために処理される。
【0041】
ニッケル貧溶液では、任意選択で、Ni2+/Li溶液中のNiの量は、重量に基づいて10パーセント未満である。任意選択で、ニッケル貧溶液は、任意選択でNi2+/Li溶液中のNiの量が重量基準で1パーセント未満、任意選択で0.1パーセント未満、任意選択で0.01パーセント未満、任意選択で0.001パーセント未満、任意選択で0.0001パーセント未満である。
【0042】
抽出ステップから生じるニッケル富化溶液は、任意選択で1つ以上のストリッピングステップに供され、任意選択でNi塩の形態で、単離されたNi生成物を得る。1つ以上のストリッピングステップにおいて、ニッケル富化溶液のpHは、HSOなどの酸または他の好適な酸との組み合わせによって低下させる。酸を任意選択で添加して、抽出溶液(複数可)のpHから、任意選択で約3.0以下、任意選択で2.0以下にpHを低下させ、それによって、Ni富化溶液からNiをストリップし、それを、Ni塩として、または後続の分離または使用のために、水相に移動させる。1つ以上のストリップ段階からの得られた溶液(複数可)は、直接使用、洗浄、またはスクラッビングのために捕集タンクに通されるか、または、捕集可能であるように、また、任意選択で、1つ以上の下流のプロセスのために、もしくは他の材料の形成のために使用可能であるように、ニッケルを沈殿させることができる。
【0043】
本開示のいくつかの態様に従う提供されるプロセスは、ニッケル貧溶液(Li溶液)からリチウムを抽出することをさらに含み得る。Liの抽出は、任意選択で、1つ以上の後続の抽出段階を連続的または不連続的に追加することによって連続形態で実行され、Ni2+/Li溶液からの先行のNi抽出の結果として形成されるニッケル貧溶液の形成を伴う。ニッケル貧溶液は、任意選択で、炭酸化剤などによる直接沈殿によるなどのLiの直接沈殿に供されるか、またはニッケル貧溶液が1つ以上のリチウム選択的抽出剤と接触される1つ以上のLi抽出ステップに供されるか、またはその組み合わせに供される。Li抽出段階の数は、Ni抽出段階の数と同じであっても異なっていてもよく、Ni抽出について説明したのと同様なLi選択的抽出剤(有機)およびLi溶液の向流プロセスを利用することができる。
【0044】
いくつかの態様では、Liは、炭酸化剤との接触によって、図3に示したように、任意選択で、Li溶液から直接沈殿させる。炭酸化剤の例としては、二酸化炭素とアンモニア、二酸化炭素、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。炭酸化剤を、チャンバー中でLi溶液と接触させ、所望の時間および所望の温度、任意選択で-5℃~120℃でインキュベートして、炭酸リチウム塩の形成を可能にし得る。その炭酸リチウムは、さらに洗浄または他の方法で処理することができ、または、一次もしくは二次電池で使用するためのカソード電気化学的活性材料の製造に直接用いることができる。
【0045】
沈殿後、得られたLi生成物は、続いて上澄みから濾過され、洗浄されて、炭酸リチウムを形成することができ、その炭酸リチウムは、その後の材料の製造のために、任意選択で、リチウム化カソードの電気化学的活性材料の製造のために直接利用することができる。
【0046】
水性上澄みは、任意選択で、ナノ濾過または他のプロセスに供されて、先行のNiストリッピング段階から残っている残留硫酸塩を分離し、精製水を回収し、次いで、その精製水は、Ni単離プロセスにおける後続のストリッピングのために使用することができる。
【0047】
いくつかの態様では、Li溶液は、図4に示したような抽出プロセスに供され、それによって、Li溶液は、上で考察したNi抽出と同様の1つ以上の抽出段階を通過する。Li溶液は、1つ以上の抽出段階の各々において、任意選択で、改善された抽出のための所望のpHに調整するためのアルカリ剤と、Li溶液からリチウムを抽出し、それを、リチウム選択的抽出剤を含む有機相に移すのに好適なリチウム選択的抽出剤と、に接触する。
【0048】
本開示のいくつかの態様では、のためのプロセスは、1つ以上の抽出段階でLi溶液を、アルカリ剤と接触させて、Li溶液のpHを約1.0~約10.0に調整することを含む。好適なアルカリ剤としては、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。任意選択で、アルカリ剤からはナトリウム塩を除外する。任意選択で、アルカリ剤からはカリウム塩を除外する。任意選択で、アルカリ剤からはカルシウム塩を除外する。
【0049】
任意選択で、アルカリ剤は、Liの1つ以上の抽出段階で、Li溶液のpHを、約1.0~約10.0の間に調整する量および濃度で提供される。任意選択で、アルカリ剤との接触後のLi溶液のpHは、約1.5~約9.5、約2.0~約9.0、約2.5~約8.5、約3.0~約8.0、約3.5~約7.5、約4.0~約7.0、約4.5~約6.5、約5.0~約6.0、または約6.0~約7.5である。任意選択で、アルカリ剤を、1つ以上の抽出段階で導入して、溶液のpHを、約3.0以上、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0以上に調整する。任意選択で、pHは、抽出溶液のpHを約6.0~約7.0にするかまたは維持するように、アルカリ剤との接触によって、1つ以上の抽出段階で調整する。
【0050】
アルカリ剤との接触に続いて、またはそれと同時に、Li溶液を、1つ以上のリチウム選択的抽出剤と接触させる。任意選択で、リチウム選択的抽出剤を、10%~40%v/v、任意選択で10%~30%v/v、任意選択で15%~25%v/vまで添加する。任意選択で、リチウム選択的抽出剤を、10%、15%、20%、25%、または30%の体積パーセントで添加する。リチウム選択的抽出剤の溶液は、任意選択で、リチウム選択的抽出剤の実質的に精製または飽和された溶液から、前述の体積パーセントまで添加される。
【0051】
そのようなリチウム選択的抽出剤の実例としては、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(LIX 84-I)、LIX 54-100、LIX 55(BASF)、CYANEX 936(SOLVAY)および4つのトリアルキルホスフィンオキシドRP(O)、RR’P(O)、RR’(O)、およびR’P(O)(式中、Rは線状C8-アルキルラジカルであり、R’は線状のC6-アルキルラジカルである)の混合物であるCYANEX 923(SOLVAY)、またはそれらの試薬の任意のブレンドが挙げられる。いくつかの態様では、リチウム選択的抽出剤は、酸である。好適な酸としては、2-エチルヘキシルホスホン酸、モノ-2-エチルヘキシルエステル、ネオデカン酸、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0052】
いくつかの態様では、リチウム選択的抽出剤は、希釈剤として炭化水素をさらに含む。好適な炭化水素としては、灯油、パラフィン、ナフテン、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。リチウム選択的抽出剤および炭化水素は、さまざまな比率で一緒に存在することができる。任意選択で、リチウム選択的抽出剤対炭化水素の比は、体積に基づいて、約1:99~約99:1の範囲であり得る。任意選択で、リチウム選択的抽出剤対炭化水素の比は、体積に基づいて、約50:50~約20:80である。任意選択で、リチウム選択的抽出剤対炭化水素の比は、約2:98体積パーセント~体積で約45:55、体積で約3:97~体積で約40:60、体積で約5:95~体積で約40:60、体積で約7:93~体積で約35:65、または体積で約10:90~体積で約30:70であり、リチウム選択的抽出剤および炭化水素の各々は、リチウム選択的抽出剤または炭化水素のそれぞれの実質的に単離されたまたは飽和された溶液由来である。
【0053】
本明細書で提供されるLi抽出を含むプロセスは、任意選択で、直列または並列で、1つ以上の抽出段階を含む。任意選択で、リチウム選択的抽出剤、pH調整、または他のものが、Li溶液と接触する抽出段階の数は、1、2、3、4、5、6、7、またはそれを超える数の段階である。1つ以上の抽出段階の結果は、Li富化溶液およびLi貧溶液である。Li貧溶液(またはリチウム抽出の結果)は、任意選択で、1000ppm以下のLi、500ppm以下のLi、100ppm以下のLi、10ppm以下のLi、9ppm以下のLi、8ppm以下のLi、7ppm以下のLi、6ppm以下のLi、5ppm以下のLi、4ppm以下のLi、3ppm以下のLi、2ppm以下のLi、または1ppm以下のLiである。
【0054】
リチウム貧溶液では、任意選択で、Li溶液中のLiの量は、重量に基づいて10パーセント未満である。任意選択で、リチウム貧溶液において、任意選択で、Li溶液中のLiの量は、重量基準で1パーセント未満、任意選択で0.1パーセント未満、任意選択で0.01パーセント未満、任意選択で0.001パーセント未満、任意選択で0.0001パーセント未満である。
【0055】
抽出ステップから生じるリチウム富化溶液は、任意選択で1つ以上のストリッピングステップに供され、任意選択でLi塩の形態で、単離されたLi生成物を得る。1つ以上のストリッピングステップでは、リチウム富化溶液のpHは、HSO、HClなどの酸または他の好適な酸との組み合わせによって低下させる。酸を任意選択で添加して、抽出溶液(複数可)のpHから、任意選択で約3.0以下、任意選択で2.0以下にpHを低下させ、それによって、Li富化溶液からLiをストリップし、それを、Li塩として、または後続の分離または使用のために、水相に移動させる。1つ以上のストリップ段階からの得られた溶液(複数可)は、直接使用、洗浄、またはスクラッビングのために捕集タンクに通されるか、または、捕集可能であるように、また、任意選択で、1つ以上の下流のプロセスのために、もしくは他の材料の形成のために使用可能であるように、リチウムを沈殿させることができる。
【0056】
抽出されたニッケル、リチウム、またはその両方は、任意選択で洗浄され、液体材料は濾過され、生成物は、1つ以上の下流プロセスでの使用に好適である。
【0057】
プロセス、ならびにそれによって生成されたリチウムおよび/またはニッケルは、優れた回収量を生み出す抽出方法を実現し、リチウムイオン電池で使用するためにリサイクルまたは販売され得る材料をもたらす。
【0058】
本開示のさまざまな態様は、以下の非限定的な実施例によって示される。実施例は、説明を目的としたものであり、本開示の実施を制限するものではない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、変形および修正を行うことができることが理解されよう。本明細書に示されている試薬および材料は、特に明記しない限り、商業的供給源から入手されている。
【0059】
実験
抽出回路は、初期溶液からのNiまたはLiの一貫した抽出を可能にする連続ループシステムであるように、実質的に図2に示したように組み立てた。この実施例では、Ni:31.03g/L、Li:8.06g/L、pH:1.94で形成された水性浸出貴液(PLS)からのニッケルの抽出を例示している。
【0060】
PLSは、研究室で、NiSO・6HO、LiSO、およびHSOから作製され、LiNiOの電気化学的活性材料の脱リチウム化後の標準プロセス溶液に似せることを目的としていた。PLSは、E1段階の一次混合ボックスに入る前に、水で1:1v/vに希釈した(図2)。Ni抽出に使用された有機相は、Orform SX-12(CAS 64742-47-8;Chevron Phillips)中のLIX84-IC(水不溶性2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム;BASF)29.16v/v%溶液からなっていた。ストリップ溶液は、120g/LのHSOであった。洗浄段階では脱イオン水を使用した。
【0061】
頂部から底部までの回路設計(図2)は、5つの抽出段階(E1~E5)てあり、1つの洗浄段階(W1)、および2つのストリップ段階(S1,S2)であった。Ni富化有機相は、ストリップ段階の上流において、直列の洗浄段階に供した。抽出段階は、直列に流れるように設計した。有機溶液と水溶液とは互いに向流で流れるような設計であった。並列(図2A)および直列(図2B)の2つのストリップ段階構成を試験した。
【0062】
有機相は、図のように、充填サージタンク(loaded surge tank)から抽出段階を通り、洗浄段階を通り、ストリップ段階を通り、充填サージタンクに戻るように、回路を横断して底部から頂部へと直列に流れた。
【0063】
PLSは、図2AおよびBに示したように、頂部E1に最も遠い抽出段階に供給した。各段階内で、PLSは、一次および二次混合ボックスを通って、セトラーに移動した。一次混合ボックスにはアルカリ剤を導入し、二次混合ボックスには有機相中Ni選択的抽出剤を導入した。しかしながら、全体的なPLSフローは、図2Aおよび2Bに示したように、回路を通って頂部から底部へであった。
【0064】
ストリップ段階が直列に構成されている場合、水相は、回路を横断して頂部から底部に流れ、有機相に対しては向流となった。
【0065】
各一次混合ボックス内のpHを7に維持するために、各抽出段階内でpH投与ポンプを使用した。各投与ユニットにより、9:1に希釈された29%水酸化アンモニウム溶液(試薬:水)をポンピングした。塩基は、E1およびE2段階の一次混合ボックスと、E3~E5段階の前段混合ボックスとに添加し、一次混合ボックスにおいて有機物と接触する前にPLSと混合させることができた。
【0066】
水性および有機サンプルを、各セトラーから採取し、NiおよびLiの量を分析した。Ni抽出の結果を表1に示す。
【表1】
【0067】
表1に示したように、水相のNiの量は、水相が抽出段階E1からE5へと通過するときに急速に減少し、E3までにNiは実質的に残っていない(検出限界未満)。ストリップ段階に続いて、Niは、効果的に単離され、後続の処理のために使用可能であり、一方、有機相は、更新され、必要に応じて洗浄して後続のNi抽出のために使用することができる。
【0068】
本明細書に示され、かつ説明されたものに加えて、本開示のさまざまな修正は、上記の当業者には明らかであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内にあることも意図される。
【0069】
特に明記しない限り、すべての試薬は当技術分野で知られている供給源から入手可能であることが理解される。
【0070】
特定の態様(複数可)の本説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、その適用、または使用の範囲を限定することを決して意図するものではなく、当然変化し得る。材料およびプロセスは、本明細書に含まれる非限定的な定義および専門用語に関連して説明される。これらの定義および専門用語は、本開示の範囲または実施に対する制限として機能するようには設計されていないが、例示および説明の目的でのみ提示される。プロセスまたは組成物は、個々のステップの順序として、または特定の材料を使用して説明されるが、ステップまたは材料は、本開示の説明が、当業者によって容易に理解される多くの仕方で配置された複数の部分またはステップを含み得るように、交換可能であり得る。
【0071】
第1、第2、第3などの用語は、さまざまな要素、成分、領域、層、および/またはセクションを記述するために本明細書で使用することができるが、これらの要素、成分、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない、ことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層、またはセクションを、別の要素、成分、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で考察される「第1の要素」、「成分」、「領域」、「層」、または「セクション」は、本明細書の教示から逸脱することなく、第2の(または他の)要素、成分、領域、層、またはセクションと称することができよう。
【0072】
本明細書で使用される専門用語は、本開示の特定の態様のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことを意図している。「または」は「および/または」を意味している。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙されたアイテムの1つ以上の任意および全ての組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および/もしくは「含んでいる(comprising)」、または「含む、挙げられる(includes)」および/もしくは「含んでいる(including)」という用語は、記載された特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、および/または成分の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しない、ことがさらに理解されよう。「またはそれらの組み合わせ」という用語は、前述の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0073】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない、ことがさらに理解されよう。
【0074】
本明細書で言及されている特許、刊行物、および出願は、本開示が関係する当業者のレベルを示唆している。これらの特許、刊行物、および出願は、各々の特許、刊行物、または出願が参照により本明細書に具体的かつ個別に組み込まれた場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
前述の説明は、本開示の特定の態様を例示するものであるが、それらの実施を限定することを意味するものではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4