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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】微生物を増殖させるためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250225BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12Q1/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021576797
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 IB2020055126
(87)【国際公開番号】W WO2020260984
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】62/866,380
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522464159
【氏名又は名称】ネオゲン フード セイフティ ユーエス ホルドコ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,アレクシ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハルベルソン,クルト ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,スティーブン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルティネル,エヴァン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,カレブ ティー.
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116259(WO,A1)
【文献】特表2017-519850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - 3/10
C12Q 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を増殖させるためのデバイスであって、
上面及び下面を有する自己支持型防水性基材を備える本体部材と、
前記自己支持型防水性基材の上面の上にある流体制御フィルムと、
内側を向いた表面及び外側を向いた表面を有するカバーシートであって、前記本体部材の少なくとも一部に接着されている、カバーシートと、
前記カバーシートの内側表面の一部に配置された、実質的に水を含まない第1の微生物増殖栄養素組成物と、
前記第1の微生物増殖栄養素組成物に接着された第1の接着剤組成物と、
前記第1の接着剤組成物に接着された冷水可溶性の第1のヒドロゲル形成組成物と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記流体制御フィルムが、複数の高精細構造を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記流体制御フィルムが、チャネル長手方向軸に沿って延びる複数の流体制御チャネルを備え、前記流体制御チャネルのそれぞれが、表面を備えており、前記チャネル内における液体の毛管移動を可能にするように構成されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記流体制御フィルムが、前記流体制御チャネルの表面の少なくとも一部に共有結合した親水性表面処理を含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記流体制御フィルムが、前記流体制御チャネルの前記表面の少なくとも一部に配置された非共有結合性の親水性表面処理を含む、請求項3又は4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記流体制御フィルムが、90度未満の接触角を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記自己支持型防水性基材の上面に接着された第2の接着剤組成物を更に含み、前記第2の接着剤組成物が、疎水性スペーサ要素と前記基材との間にある、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記スペーサ要素が、疎水性発泡体シートを含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記疎水性発泡体が、ポリスチレン発泡体又はポリエチレン発泡体である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記カバーシートが、透明なフィルムを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フィルムが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びシリコーンからなる群から選択される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記基材が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレンからなる群から選択されるフィルムである、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記冷水可溶性の第1のヒドロゲル形成組成物が、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びアルギネートからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記疎水性スペーサ要素が、前記基材の上面に接着されて、前記基材と接触している所定量の液体を保持するための側壁を形成、前記疎水性スペーサ要素が、その中に孔を有し、前記流体制御フィルムが、前記疎水性スペーサ要素の孔内にある、請求項に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイスを提供することと、
少なくとも1種の微生物を含有する所定の体積の試料を前記デバイスに添加して接種されたデバイスを形成することと、
前記カバーシートを前記自己支持型防水性基材に接触させることと、
前記接種されたデバイスをインキュベートすることと、
前記デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多種多様な培養デバイスが開発されてきた。一例として、培養デバイスは、3M Company(以下、「3M」)(St.Paul,Minnesota)によって開発されてきた。特に、培養デバイスは、商品名PETRIFILMプレートで3Mにより販売されている。培養デバイスは、例えば、好気性細菌、大腸菌(E. coli.)、大腸菌(coliforms)、腸内細菌、酵母、カビ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、リステリア(Listeria)、カンピロバクター(Campylobacter)などを含む、食品汚染に一般的に関連する微生物の迅速な増殖及び検出を促進するために利用することができる。PETRIFILMプレート又は他の増殖培地の使用により、例えば、食品試料の細菌試験を簡便化することができる。
【0002】
(食品試験の場合に)是正措置を実施することができるように、又は(医療用使用の場合に)適切な診断を行うことができるように、培養デバイスを使用して細菌の存在を計数するか又は特定することができる。他の用途では、培養デバイスは、例えば実験目的のために、実験室試料中の微生物を迅速に増殖させるために使用され得る。
【発明の概要】
【0003】
微生物の増殖又は貯蔵のためのデバイス及び方法が提供される。
【0004】
したがって、一態様では、本開示は、微生物を増殖させるためのデバイスを提供する。デバイスは、上面及び下面を有する自己支持型防水性基材を備える本体部材と、基材の上面に接着されて、基材と接触する所定量の液体を保持するための側壁を形成する疎水性スペーサ要素であって、疎水性スペーサ要素がその中に孔を有する、疎水性スペーサ要素と、疎水性スペーサ要素の孔内の流体制御フィルムと、内側を向いた表面及び外側を向いた表面を有するカバーシートであって、本体部材の少なくとも一部に接着されている、カバーシートと、カバーシートの内側表面の一部に配置された、実質的に乾燥した第1の微生物増殖栄養素組成物と、第1の微生物増殖栄養素組成物に接着された第1の接着剤組成物と、第1の接着剤組成物に接着された冷水可溶性の第1のヒドロゲル形成組成物と、を含む。
【0005】
別の態様では、本開示は方法を提供する。本方法は、本開示によるデバイスを提供することと、少なくとも1種の微生物を含有する所定の体積の試料をデバイスに添加して接種されたデバイスを形成することと、カバーシートを自己支持型防水性基材に接触させることと、接種されたデバイスをインキュベートすることと、デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出することと、を含む。
【0006】
本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点がまとめられている。上記の概要は、本開示の例示された各々の実施形態又はあらゆる実施を記載することを意図するものではない。更なる特徴及び利点は、以下の実施形態で開示される。図面及び以下の詳細な説明は、本明細書に開示された原理を使用する特定の実施形態を更に具体的に例示する。
【0007】
定義
以降で定義される用語について、これらの定義は、次の定義中の使用用語の変更への具体的な言及に基づいて請求項又は明細書中の他の場所に別の定義が提示されている場合を除き、請求項を含む明細書全体に適用されるものとする。
【0008】
数値又は形状への言及に関する用語「約」又は「およそ」は、数値又は特性若しくは特徴の+/-5パーセントを意味するが、明示的に、数値又は特性若しくは特徴の+/-5パーセント以内の任意の狭い範囲及び正確な数値もまた含むことを理解されたい。例えば、「約」100℃の温度とは、95℃~105℃の温度を指すが、任意の狭い範囲の温度又は更にはその範囲内の単一の温度、例えば、100℃ちょうどの温度も明示的に含む。例えば、「約」1Pa・secの粘度とは、0.95Pa・sec~1.05Pa・secの粘度を指すが、1Pa・secちょうどの粘度も明示的に含む。同様に、「実質的に正方形」の外辺部とは、各横方向縁部が、他のいずれかの横方向縁部の長さの95%~105%の長さを有する4つの横方向縁部を有する幾何形状を説明することを意図するが、これはまた、各横方向縁部が正確に同じ長さを有する幾何形状を含むものとする。
【0009】
特性又は特徴に関する用語「実質的に」は、その特性又は特徴が、その特性又は特徴の反対のものが呈される程度よりも高い程度で呈されることを意味する。例えば、「実質的に」透明な基材は、それが透過しない(例えば、吸収する及び反射する)放射線よりも多くの放射線(例えば、可視光)を透過する基材を指す。それゆえに、その表面上に入射する可視光のうちの50%より多くを透過する基材は、実質的に透明であるが、その表面上に入射する可視光のうちの50%以下を透過する基材は、実質的に透明ではない。
【0010】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、「少なくとも1つの」と交換可能に使用され、記載されている要素のうちの1つ以上を意味する。
【0011】
用語「及び/又は(and/or)」は、いずれか一方又は両方を意味する。例えば、表現「A及び/又はB」は、A、B、又はAとBとの組み合わせを意味する。
【0012】
「クラスター」は、集塊した(agglomerated)粒子及び/又は凝集した(aggregated)粒子の群を指す。
【0013】
「集塊した」とは、通常、電荷又は極性により互いに保持し合っている一次粒子又は凝集した粒子の弱い結び付きを指す。集塊した粒子は、通常、例えば、液体中の集塊粒子の分散中に遭遇したせん断力によって、より小さな存在物に分解され得る。用語「凝集した」及び「凝集体」とは、例えば、化学的残基処理、化学的共有結合、又は化学的イオン結合によって共に結合し合うことの多い、一次粒子の強い結び付きを指す。凝集体をより小さな単位へ更に分解することは、達成するのが非常に困難である。
【0014】
「冷水可溶性」とは、室温(すなわち、約25℃)で水溶液を形成する物質である。
【0015】
「疎水性」は、その表面上において、90°以上の水接触角を示す材料を指す。
【0016】
「不透明」とは、最大10%の光透過率を有する基材を指す。
【0017】
「粉末」は、0.1マイクロメートルから最大400マイクロメートルの範囲の平均直径を有する超微粒子状物質を指す。
【0018】
「再構成培地」とは、冷水可溶性粉末と水性液体との再構成によって形成される溶液又はゲルを指す。
【0019】
「微生物及び水蒸気に対して実質的に非浸透性である」とは、本明細書において使用される場合、輸送、貯蔵、及び薄膜培養デバイスの使用中における、冷水可溶性粉末の下地層の望ましくない汚染及び水和を防止する、並びに再構成培地がインキュベーション期間中に微生物の増殖を支援するのに好適であるように、再構成培地の乾燥を回避する、カバーシートを指す。
【0020】
「実質的に水を含まない」とは、本明細書において使用される場合、含水量が、ほぼ周囲環境の含水量以下であることを示す。
【0021】
「試験試料」とは、本明細書において使用される場合、食品製品、ヒト若しくは動物試験対象、医薬若しくは化粧品、土壌、水、空気若しくは他の環境源、又は好気性及び/若しくは耐気性細菌の存在及び、任意選択的に、計数が測定される任意の他の供給源から採取される成分又は部分を指す。試験試料は、例えば、注ぎ入れ、ピペット分注、拭き取り、濾過、及び接触を含む、当業者に既知の技術を使用して、供給源から採取され得る。加えて、試験試料は、例えば、ブレンド、消化、均質化、増菌、選択増菌、又は希釈を含む、当該技術分野において既知の様々な試料調製方法に供されてもよい。
【0022】
「透明」とは、少なくとも90%の光透過率を有する基材を指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
図1】本開示による更なる別の例示的なデバイスの上面斜視図、部分的に断面図である。
図2】その上にある量の流体を有する、本開示のチャネル付き微細構造化表面の概略図である。
【0024】
一定の縮尺で描かれないことがある、上記で特定された図面は、本開示の様々な実施形態を明らかにしているが、発明を実施するための形態で指摘されるように、他の実施形態も企図される。いかなる場合でも、本開示は、明示された制限によってではなく、例示的実施形態の表示によって、本開示の発明を説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる多くの他の修正及び実施形態が、当業者によって考案され得ることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示のいずれかの実施形態が詳細に説明される前に、本発明が、その適用において、以下の記載で示される、使用、構造、及び成分の構成の詳細に限定されないことが理解される。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ、本開示を読み取る際に当業者にとって明らかになる様々な方法において、実施されること又は実行されることが可能である。また、本明細書で使用される専門用語及び用語は、説明目的のためであり、限定するものとみなされるべきではないことが理解される。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形の使用は、その後に列記される項目及びこれらの同等物、並びに追加的な項目を包含することを意味する。他の実施形態が活用されてもよく、かつ、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的又は論理的な変更がなされてもよいことが理解される。
【0026】
本明細書で使用するとき、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5等を含む)。
【0027】
特に指示がない限り、明細書及び実施形態で使用される分量又は成分、性質の測定値などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されることを理解されたい。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストにおいて述べる数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0028】
図1は、微生物を増殖させるためのデバイスの例示的な実施形態を示す。デバイス10は、第1の主面12a(例えば、上面)と、第2の主面12b(例えば、下面)とを有する基材12と、本体部材11の少なくとも一部に取り付けられたカバーシート22であって、本体部材11を向いた第1の主面22a(例えば、内側表面)を備えるカバーシート22と、を備える本体部材11を含む。デバイス10は、カバーシート22の第1の主面22aの一部上に配置されている実質的に乾燥した第1の微生物増殖栄養素組成物24と、第1の微生物増殖栄養素組成物24に接着されている第1の接着剤組成物26と、第1の接着剤組成物26に接着されている冷水可溶性の第1のヒドロゲル形成組成物28と、を更に含む。好ましくは、デバイスはまた、基材12の第1の主面12a上に配置されている任意の疎水性スペーサ要素19を含む。一般に、スペーサ要素19は、孔又は開口20を画定する非水溶性基材を備える。スペーサ要素19は、疎水性発泡体シート、例えばポリスチレン発泡体シート又はポリエチレン発泡体シートであり得る。使用時には、ユーザーは、カバーシート22を基材12から十分に分離して、スペーサ19によって画定された孔又は開口20内に少なくとも1種の微生物を含有する量の試料を添加して、カバーシート22を基材12に戻して接触して配置させて、接種されたデバイスを形成し、接種されたデバイスをインキュベートする。開口20によって画定されている基材12の第1の主面12a上の領域はまた、試料受け入れゾーン17と称されてもよい。流体制御フィルム18は、疎水性スペーサ要素19の孔内、及び基材12の第1の主面12a上に配置することができる。デバイス10は、自己支持型防水性基材12の上面12aに接着された第2の接着剤組成物13を更に含み、第2の接着剤組成物13は、疎水性スペーサ要素19と基材12との間にある。
【0029】
開口20は、任意の形状であり得る。開口20に有用な形状の非限定的な例としては、正方形、矩形、円形、楕円形、多角形、六角形、及び八角形が挙げられる。試料受け入れゾーン(及び開口20)の面積は、例えば、ゾーン内に注入される試料(例えば、水性液体)の体積に基づいて選択され得る。任意の実施形態において、0.5ミリリットル~3ミリリットルの試料に関して、試料受け入れゾーンの面積は、約10cm又は約15cmである。任意の実施形態において、1ミリリットル~5ミリリットルの体積の試料に関して、試料受け入れゾーンの面積は、約20cm、約25cm、約30cm、約31cm、又は約25cm~35cmである。
【0030】
基材12は防水性であり、任意選択的に自己支持型防水性基材である。いくつかの実施形態において、基材12は、水を吸着しないか又はそうでなくとも水による影響を受けない、ポリエステル、ポリプロピレン、シリコーン、又はポリスチレンなどの材料のフィルムである。約20マイクロメートル~約250マイクロメートルの厚さを有するポリエステルフィルム及びポリプロピレンフィルム、並びに約380マイクロメートルの厚さを有するポリスチレンフィルムが、各々、基材12に好適であることが見出されている。他の好適な基材には、ポリエチレン又は他の防水性コーティングを有する紙が挙げられる。好適なポリエチレンコーティング紙基材の例は、「Schoeller Type MIL」写真印画紙(Schoeller Pulaski(New York)から市販)である。基材12は、使用者が細菌のコロニーを、基材を介して見ることを望むか否かにより、透明又は不透明のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、基材12は、細菌コロニーのカウントを容易にするために第2の主面12b上に印刷された正方形格子パターンを有する。
【0031】
実質的に乾燥した、第1又は第2の微生物増殖栄養素組成物は、2ミリグラム/平方インチ(mg/in)以上、5mg/in以上、10mg/in以上、12mg/in以上、又は15mg/in以上のコーティング重量で、及び50mg/in以下、45mg/in以下、40mg/in以下、35mg/in以下、30mg/in以下、24mg/in以下、22mg/in以下、20mg/in以下、又は18mg/in以下のコーティング重量で微生物増殖栄養素組成物を含むことができる。微生物増殖栄養素組成物を基質上に適用するための1つの好適な方法は、少なくとも微生物増殖栄養素組成物を含む水溶液又は懸濁液を調製することと、溶液又は懸濁液のコーティングを基材表面上に配置することと、コーティングを乾燥させて実質的に乾燥した微生物増殖栄養素組成物を形成することと、を含む。当業者は、例えば、限定するものではないが、ナイフコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティングスプレーコーティング、ダイコーティング、ドローバーコーティング、又はカーテンコーティング若しくはロールコーティングを含む好適なコーティング方法を選択することができる。コーティングは、任意選択的に、高温(例えば、50℃~100℃の範囲)又は周囲条件で乾燥させる。いくつかの実施形態において、微生物増殖栄養素組成物は、75重量%以上の微生物増殖栄養素、又は80重量%以上、又は85重量%以上、又は90重量%以上、又は95重量%以上の微生物増殖栄養素を含有する。有利には、特定の実施形態において、微生物増殖栄養素組成物が接着層に粉末コーティングされ、及び/又はかなりの量の冷水可溶性ゲル化剤と組み合わせたデバイスにおけるよりも多量の微生物増殖栄養素をデバイスに含めることができる。
【0032】
第1又は第2の接着剤組成物は、(実質的に)非水溶性であり、微生物の増殖を阻害しない。いくつかの実施形態では、第1の接着剤組成物16は、接着剤でコーティングされたフィルムを通して細菌コロニーを見ることができるように濡れたとき十分に透明である。いくつかの実施形態では、第1又は第2の接着剤組成物は、感圧接着剤である。いくつかの他の実施形態では、より融点の低い物質がより融点の高い基材上にコーティングされている熱活性化接着剤を用いてもよい。ゴム糊等の水活性化接着剤も有用である場合がある。
【0033】
好適な接着剤は、水で濡らしたとき透明である。上記のように、接着剤組成物は、多くの場合、非水溶性である。特定の実施形態において、接着剤組成物が、溶剤型接着剤を含む。第1の接着剤組成物、及び存在する場合、第2の接着剤組成物は、感圧接着剤であることが多い。例えば、接着剤は、アルキルアクリレートモノマーとアルキルアミドモノマーとのコポリマー、又はアルキルアクリレートモノマーとアクリル酸とのコポリマーを含む非水溶性接着剤などの感圧接着剤であり得る。好ましくは、これらのコポリマーにおけるアルキルアクリレートモノマーのアルキルアミドモノマーに対する重量比は、約90:10~99:1、より好ましくは94:6~98:2である。アルキルアクリレートモノマーとしては、例えば、イソオクチルアクリレート(IOA)、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、イソアミルアクリレート、及びこれらの混合物を含む、アクリル酸の低級アルキル(C2~C10)モノマーが挙げられ、アルキルアミドモノマーとしては、限定するものではないが、アクリルアミド(ACM)、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルカプロラクタム(NVCL)、N-ビニル-2-ピペリジン、N-(モノ-又はジ-低級アルキル(C2~C5))(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はこれらの混合物を挙げることができる。好適な接着剤には、米国特許第4,565,783号、同第5,089,413号、同第5,681,712号、及び同第5,232,838号に記載のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第7,695,818号及び同第7,371,464号に記載されているものなどのシリコーン感圧接着剤を用いてもよい。
【0034】
本開示において、カバーシート22は、通常、微生物コロニーのカウントを容易にするために透明であるように選択され、典型的にはまた、細菌を透過せず、低い水蒸気透過速度を有するように選択される(すなわち、カバーシート22は、デバイスの輸送、保管及び使用中の脱水培地の望ましくない汚染を防ぎ、インキュベーション期間中の微生物の増殖を支援する環境を提供する)。いくつかの実施形態において、カバーシート22は、基材12と同じ特性(例えば、防水性)を有する。カバーシート22は、増殖することが所望される微生物の種類に必要な酸素透過量を提供するように、選択することができる。例えば、いくつかのポリエステルフィルムは、低い酸素透過性を有し(厚さ25マイクロメートル当たり5g/645cm/24時間未満)、嫌気性細菌を増殖させるのに好適である。他方、いくつかのポリエチレンは、高い酸素透過性を有し(例えば、厚さ25マイクロメートル当たり約500g/645cm/24時間)、好気性生物に好適である。カバーシート22に好適な材料としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、又はシリコーンが挙げられる。特定の実施形態において、カバーシート22は、2軸配向ポリプロピレンのような配向ポリプロピレンを含み、これはいくつかの例示的な実施形態において、約40マイクロメートルの厚さを有する。
【0035】
特定の実施形態において、冷水可溶性ヒドロゲル形成組成物は、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、タラガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレンオキシドなどの1種以上の有機冷水可溶性剤を含有する。天然及び/又は合成ゲル化剤の組み合わせが考えられる。好ましいゲル化剤としては、グアーガム、キサンタンガム、及びローカストビーンガムが挙げられ、これらのゲル化剤は、個々に、又は任意の実施形態において、お互いに組み合わせて有用である。冷水可溶性ヒドロゲル形成組成物の均一層は、水和のために十分な、露出した表面積を有することが望ましい。任意の実施形態において、冷水可溶性の第1及び/又は第2のヒドロゲル形成組成物は、ゲル化剤の混合物を含む。任意選択的に、粉末にした冷水可溶性ヒドロゲル形成組成物は、誘導物質、指示薬、又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0036】
流体制御フィルムは、米国特許出願第2017/0045284(A1)号(Meulerら)に記載されているものを含むことができる。
【0037】
例えば、流体制御フィルムは、チャネル長手方向軸に沿って延びる流体制御チャネルを含む。流体制御チャネルのそれぞれは、表面を有し、チャネル内における液体の毛管移動を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、流体制御フィルムは、流体制御チャネルの表面の少なくとも一部に共有結合した親水性表面処理を更に含むことができる。いくつかの他の実施形態では、流体制御フィルムは、流体制御チャネルの表面の少なくとも一部に配置された、非共有結合性の親水性表面処理、例えば、界面活性剤処理を有することができる。流体制御フィルムは、少なくとも10%の毛管上昇回復率を呈する。典型的には、親水性表面処理は、非双性イオン性スルホネート、非双性イオン性カルボキシレート、双性イオン性スルホネート、双性イオン性カルボキシレート、双性イオン性ホスフェート、双性イオン性ホスホン酸、双性イオン性ホスホネート、又はこれらの組み合わせから選択される官能基を含む。
【0038】
本開示による流体制御フィルムは、複数の高精細構造(microreplicated structure)を有する微細構造化表面を含む。流体制御フィルムは、様々なトポグラフィを有し得る。例示的な流体制御フィルムは、V字形状又は矩形の断面を有する複数のチャネル、及びこれらの組み合わせ、並びに2次チャネル、すなわち、チャネル内のチャネルを有する構造体から構成される。加えて、トポグラフィは、微細構造化ポスト及び突出部を含み得る。
【0039】
微細構造化表面上のチャネルは、チャネル端部を有する。ある特定の実施形態では、流体制御フィルムは除去手段を含んでもよい。除去手段は、一般に、チャネル端部のうちの1つに隣接するチャネルから流体を引き出す。別の実施形態では、除去手段は、両方のチャネル端部に隣接するチャネルから流体を引き出す。除去手段は、チャネルと連通して配置された吸収性材料を含んでもよい。一実施形態では、除去手段は、流体ドリップコレクタを含む。
【0040】
一般に、微細構造内のチャネルは、第1の高さを有する第1の組の隆起部と、第2のより高い高さを有する第2の組の隆起部とを含む、概ね平行な隆起部によって画定される。第2の組の隆起部の各隆起部の上部は、その下部よりも低い融解温度を有し得る。チャネルは、直線、曲線、放射状、平行、非平行、ランダム、又は交差からなる群から選択されるパターン形状を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、流体制御フィルムは、90度未満の接触角を有する。接触角シータ(θ)は、表面上の流体からなるビーズの表面に、表面に対するその接触点において接している線と、表面の平面との間の角度である。表面の平面に対して接線が垂直である流体のビーズは、90度の接触角を有することになる。典型的には、接触角が45度以下である場合、固体表面は、流体によって濡れていると考えられる。水又は水溶液の液滴が45度未満の接触角を呈する表面を、一般に「親水性」と呼ぶ。本明細書で使用する場合、「親水性」は、材料の表面特性、すなわち、それが水溶液によって濡れること、を指すに過ぎず、その材料が水溶液を吸収するかしないかは表現しない。したがって、ある材料からなるシートが水溶液に対して不透過性又は透過性であるか否かに関わらず、その材料を親水性と呼ぶことができる。このように、本出願で使用される親水性フィルムは、例えばポリ(ビニルアルコール)などの本質的に親水性である樹脂材料から調製されたフィルムから形成することができる。表面上で接触角がほぼゼロの接触角をもたらす流体は、表面を完全にウェットアウトしていると考えられる。しかしながら、ポリオレフィンは、典型的には本質的に疎水性であり、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムの水との接触角は、典型的には90度超である。
【0042】
一般に、微細構造内のチャネルは、第1の高さを有する第1の組の隆起部と、第2のより高い高さを有する第2の組の隆起部とを含む、概ね平行な隆起部によって画定される。第2の組の隆起部の各隆起部の上部は、その下部よりも低い融解温度を有し得る。チャネルは、直線、曲線、放射状、平行、非平行、ランダム、又は交差からなる群から選択されるパターン形状を有する。
【0043】
図2は、例示的な実施形態による、流体制御フィルム200の断面図である。流体制御フィルム200は、一次及び二次隆起部220、221によって画定される一次及び二次チャネル230、231を有する流体制御フィルム層201を備え、チャネル230、231及び隆起部220、221は、流体制御フィルム層201の長手方向軸、例えばx軸に対して角度θをなすチャネル軸に沿って走る。各一次チャネル230は、一次チャネル230のいずれの側にもある一組の(第1及び第2の)一次隆起部220によって画定される。一次隆起部220は、チャネル230の底面230aから隆起部220の頂面220aまでで測定される高さhを有する。いくつかの実施形態では、微細構造が一次チャネル230内に配置される。いくつかの実施形態では、微細構造は、一次チャネル230の第1及び二次一次隆起部220間に配置された二次チャネル231を備える。二次チャネル231はそれぞれ、少なくとも1つの二次隆起部221と関連付けられる。二次チャネル231は、一組の二次隆起部221間、又は二次隆起部221と一次隆起部220との間に位置してもよい。
【0044】
一次隆起部間の中心間距離dprは、約25マイクロメートル~約3000マイクロメートルの範囲であってもよく、一次隆起部と最も近い二次隆起部との間の中心間距離dpsは、約5マイクロメートル~約350マイクロメートルの範囲であってもよく、2つの二次隆起部間の中心間距離dssは、約5マイクロメートル~約350マイクロメートルの範囲であってもよい。場合によっては、一次及び/又は二次隆起部は、基部からの距離と共に先細になってもよい。基部における一次隆起部の外側表面間の距離dpbは、約15マイクロメートル~約250マイクロメートルの範囲であってもよく、約1マイクロメートル~約25マイクロメートルの範囲のより小さな距離dptまで先細になってもよい。基部における二次隆起部の外側表面間の距離dsbは、約15マイクロメートル~約250マイクロメートルの範囲であってもよく、約1マイクロメートル~約25マイクロメートルの範囲のより小さな距離dstまで先細になってもよい。一例において、dpr=0.00898インチ(228マイクロメートル)、dps=0.00264インチ(67マイクロメートル)、dss=0.00185インチ(47マイクロメートル)、dpb=0.00251インチ(64マイクロメートル)、dpt=0.00100インチ(25マイクロメートル)、dsb=0.00131インチ(33マイクロメートル)、dst=0.00100インチ(25マイクロメートル)、h=0.00784インチ(199マイクロメートル)、及びh=0.00160インチ(41マイクロメートル)である。
【0045】
二次隆起部は、チャネル230の底面230aから二次隆起部221の頂面221aまでで測定される高さhを有する。一次隆起部220の高さhは、二次隆起部221の高さhより大きい場合が多い。いくつかの実施形態では、一次隆起部の高さは、約25マイクロメートル~約3000マイクロメートルであり、二次隆起部の高さは、約5マイクロメートル~約350マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、二次隆起部221の高さhと一次隆起部220の高さhとの比は、約1:5である。一次隆起部220は、流体制御フィルム200への耐久性、並びに二次チャネル231、二次隆起部、及び/又は一次隆起部220間に配置された他の微細構造への保護とをもたらすように設計することができる。
【0046】
流体制御フィルム200は、任意に、流体制御フィルム層201の底面201a上に配置された接着層205を有する。接着層205により、外部表面にわたる液体分散の管理を助けるために、一部の外部表面202に、流体制御フィルム200を取り付け可能とすることができる。接着層205と流体制御フィルム層201との組み合わせは、流体制御テープを形成する。接着層205は、一続きであっても一続きでなくてもよい。
【0047】
流体制御フィルム層201は、流体の蒸発を促すために、流体制御フィルム層201の表面にわたって流体を分散させるように構成されている。いくつかの実施形態では、接着層205は、接着層205と外部表面202との間の境界面202aにおいて液体をはじき、境界面202aにおいて液体が集まるのを低減する疎水性材料であってよいか、又はこれを含んでよい。
【0048】
接着層205は厚さtを有し、流体制御フィルム層201は、チャネル230、231の底面230aから流体制御フィルム層201の底面201aまでの厚さtを有する。いくつかの実施形態では、チャネル230、231の底面230aと接着層205の底面205aとの間の総厚さ、t+tは、約300マイクロメートル未満、例えば、約225マイクロメートルであり得る。この総厚さt+tは、流体制御フィルム層201の縁部のチャネル開口を通ってチャネル230、231内へと外部表面202から液体を効率的にウィッキングするのに十分小さいように選択されてもよい。
【0049】
試料中の少なくとも1種の微生物を検出及び計数する方法が提供される。本方法は、本開示によるデバイスを提供することと、少なくとも1種の微生物を含有する所定の体積の試料をスペーサ要素19の開口20に添加して接種されたデバイスを形成することと、カバーシートを基材に接触させることと、接種されたデバイスをインキュベートすることと、デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出することと、を含む。カバーシート上の冷水可溶性ヒドロゲル形成組成物は水和され、水性試料がデバイス内に配置されたときにヒドロゲルを形成し、ヒドロゲルは、自己拡散して、流量制御フィルムのチャネルを満たすことができる。コロニーは、このような点状の(punctate)コロニーを形成し、流体制御フィルムのチャネルのチャネル長手方向軸に沿って増殖しないことが予想外に発見された。
【0050】
本方法は更に、デバイスを、標的微生物の増殖及び検出を促進する温度で、ある時間インキュベートする工程を含む。当業者であれば、インキュベーションの温度及び期間は、多数の因子(例えば、標的微生物、試料中に存在する栄養素、デバイス内に存在する栄養素、試料及び/又はデバイス内に存在する阻害剤)に左右されることを認識し、インキュベーションの時間及び温度を適宜調整するであろう。
【0051】
本方法は更に、デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出する工程を含む。任意の実施形態において、デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出することは、デバイスの第1のコンパートメントにおいてコロニーを検出すること(例えば、視覚的に、又は機械的視覚を用いて)を含み得る。任意の実施形態において、デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出することは、指示試薬と関連する変化を検出することを含み得る。指示試薬は、標的微生物のコロニーにおいて、及び/又はその周囲で、第1の状態(例えば、実質的に無色又は無蛍光)から第2の状態(例えば、着色された又は蛍光性)に変化し得る。任意の実施形態において、コロニーを計数することができ、任意選択的に、標的微生物のコロニーの数を記録することができる。いくつかの実施形態では、自動コロニーカウンターなどの、自動化システムを用いて微生物をカウントすることができる。
【0052】
以下の実施形態は、本開示を例示することが意図され、限定するものではない。
【0053】
実施形態
実施形態1は、微生物を増殖させるためのデバイスであって、上面及び下面を有する自己支持型防水性基材を備える本体部材と、基材の上面に接着されて、基材と接触する所定量の液体を保持するための側壁を形成する疎水性スペーサ要素であって、疎水性スペーサ要素がその中に孔を有する、疎水性スペーサ要素と、疎水性スペーサ要素の孔内の流体制御フィルムと、内側を向いた表面及び外側を向いた表面を有するカバーシートであって、本体部材の少なくとも一部に接着されている、カバーシートと、カバーシートの内側表面の一部に配置された、実質的に乾燥した第1の微生物増殖栄養素組成物と、第1の微生物増殖栄養素組成物に接着された第1の接着剤組成物と、第1の接着剤組成物に接着された冷水可溶性の第1のヒドロゲル形成組成物と、を備える、デバイスである。
【0054】
実施形態2は、流体制御フィルムが、複数の高精細構造を備える、実施形態1に記載のデバイスである。
【0055】
実施形態3は、流体制御フィルムが、チャネル長手方向軸に沿って延びる複数の流体制御チャネルを備え、流体制御チャネルのそれぞれが、表面を備えており、チャネル内における液体の毛管移動を可能にするように構成されている、実施形態1又は2に記載のデバイスである。
【0056】
実施形態4は、流体制御フィルムが、流体制御チャネルの表面の少なくとも一部に共有結合した親水性表面処理を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0057】
実施形態5は、流体制御フィルムが、流体制御チャネルの表面の少なくとも一部に配置された非共有結合性の親水性表面処理を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0058】
実施形態6は、流体制御フィルムが、90度未満の接触角を有する、実施形態1~5いずれか1つに記載のデバイスである。
【0059】
実施形態7は、自己支持型防水性基材の上面に接着された第2の接着剤組成物を更に含み、第2の接着剤組成物が、疎水性スペーサ要素と基材との間にある、実施形態1~6のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0060】
実施形態8は、スペーサ要素が、疎水性発泡体シートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0061】
実施形態9は、疎水性発泡体が、ポリスチレン発泡体又はポリエチレン発泡体である、実施形態8に記載のデバイスである。
【0062】
実施形態10は、カバーシートが、透明なフィルムを備える、実施形態1~9のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0063】
実施形態11は、フィルムが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びシリコーンからなる群から選択される、実施形態10に記載のデバイスである。
【0064】
実施形態12は、基材が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレンからなる群から選択されるフィルムである、実施形態1~11のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0065】
実施形態13は、ゲル化剤が、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びアルギンからなる群から選択される、実施形態1~12のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0066】
実施形態14は、実施形態1~13のいずれか1つに記載のデバイスを提供することと、少なくとも1種の微生物を含有する所定の体積の試料をデバイスに添加して接種されたデバイスを形成することと、カバーシートを自己支持型防水性基材に接触させることと、接種されたデバイスをインキュベートすることと、デバイスにおける標的微生物のコロニーの存在又は非存在を検出することと、を含む、方法である。
【0067】
以下の実施例は、本開示の説明を目的としたものであって限定的なものではない。
【実施例
【0068】
【表1】
【0069】
インキュベーション及び接種
細菌株大腸菌(Escherichia coli)(ATCC25922)を、Microbiologics Incorporated(St.Cloud,MN)から得て、INNOVA44インキュベーター(New Brunswick Scientific,Enfield,CT)中で、トリプシン大豆ブロス(TSB)中で37℃、200rpmで一晩インキュベートした。各培養試料を、Butterfield緩衝液(3M Corporation,St.Paul,MN)で連続希釈することによって、接種材料を調製した。培養試料を希釈し、接種材料1mL当たり約50コロニー形成単位数(cfu)~250コロニー形成単位数(cfu)の最終濃度を得た。
【0070】
調製例1.流体制御フィルムの製造
図2の流体制御フィルムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第20017/0045284号(Meuler)に記載の押出エンボス加工手順に従って調製した。図2からの指示薬を使用すると、実施例の流体制御フィルムは、次の直径を有した:dpr=0.00898インチ(228ミクロン)、dps=0.00264インチ(67ミクロン)、dss=0.00185インチ(47ミクロン)、dpb=0.00251インチ(64ミクロン)、dpt=0.00100インチ(25ミクロン)、dsb=0.00131インチ(33ミクロン)、dst=0.00100インチ(25ミクロン)、hp=0.00784インチ(199ミクロン)、hs=0.00160インチ(41ミクロン)。フィルムは、低密度ポリエチレンポリマー(Dow Chemical Company,Midland,MIから商品名「DOW LDPE9551」で入手)から作製した。
【0071】
調製例2.流体制御フィルムのプラズマ処理
ケイ素含有フィルム層[米国特許第6696157号(David)及び同第8664323号(Iyer)及び米国特許出願第2013/0229378号(Iyer)に記載の形成方法]を、Plasma-Therm 3032バッチプラズマ反応器(Plasma-Therm LLC,St.Petersburg,FLから入手)を使用して調製例1の流体制御フィルムに適用した。この器具は、26インチの低電力電極及び中央ガス圧送を用いて反応性イオンエッチングのために構成された。チャンバを、乾式機械ポンプ(Edwards Engineeringから入手したモデルiQDP80)によって裏打ちされた根型送風機(Edwards Engineering,Burgess Hill,UKから入手したモデルEH1200)でポンプ圧送した。RF電力は、3kW、13.56Mhzのソリッドステートジェネレータ(Advanced Energy Industries,Fort Collins,COから入手したRFPPモデルRF30S)によって供給された。このシステムは、5mTorrの公称ベース圧力を有した。ガスの流量は、MKS流量調節器(MKS Instruments,Andover,MAから入手)によって制御した。
【0072】
流体制御フィルムのサンプルをプラズマ反応器の電源電極上に固定した。ベース圧にポンプダウンした後、様々な流量でガスのテトラメチルシラン(TMS)及び酸素(O)を導入した(表2を参照されたい)。一旦反応器内のガスの流れが安定化したら、rf電力(1000ワット)を電極に対して印加して、プラズマを発生させた。プラズマ曝露時間も変化した(表2を参照されたい)。プラズマ処理の完了後、チャンバを大気に排気し、処理された流体制御フィルムをチャンバから取り出した。
【0073】
【表2】
【0074】
調製例3.界面活性剤を含有する流体制御フィルム
押出エンボス加工プロセスで使用される低密度ポリエチレンポリマーに、0.5重量%の非イオン性界面活性剤TRITON-X100が組み込まれたことを除いて、調製例1の説明に従って、流体制御フィルムを調製した。得られた流体制御フィルムは、流体制御フィルムEとして表示された。
【0075】
実施例1.微生物検出デバイス
図1のデバイスによる微生物検出デバイスを作製した。各デバイスについて、本体部材の基材は、幅76mm×長さ102mmの切片に切断された透明な2軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルム(1.6mil(0.04mm)の厚さ及び両面にコロナ処理)であった。本体部材は、幅76mm×長さ102mmのポリエチレンフィルムスペーサ(Optimum Plastics(Bloomer,WI))を基材の一方の側に接着積層することによって完成させた。スペーサは、厚さ約20mil(0.51mm)であり、スペーサの中心付近に位置決めされている円形の孔(5.1cmの直径)を備えた。円形孔は、デバイスの試料受け入れゾーンの外周部を画定した。流体制御フィルム(表2でA~Eと表示された流体制御フィルムから選択される)の円形部分を切断し、孔に嵌合するようにサイズ決めし(直径5.1cm)、フィルムの非高精細表面が、孔によって画定された露出した基材表面に接着積層されたように配向させた。
【0076】
デバイスのカバーシートは、微生物増殖栄養素組成物、接着剤組成物、及びグアーガム(例えば、冷水可溶性ヒドロゲル形成)組成物を、以下の手順によって一方の側の上に順次コーティングした透明な2軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルム(1.6mil(0.04mm)の厚さ及び両面にコロナ処理)であった。
【0077】
微生物増殖栄養素コーティング組成物は、TSBが完全に溶解するまで、30gのトリプシン大豆ブロス(TSB)、及び500mLの精製水[MILLI-Q Gradient Water Purification System(型番号:ZMQS6V00Y、Merck Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手]を、(JIFFY型混合インペラを有するエア駆動オーバーヘッドミキサーを使用して)激しく混合することによって調製した。得られた溶液は7.3のpHであった(Mettler-Toledo FE20 FIVEEASY pHメーター、Mettler-Toledo LLC(Columbus,OH))。グアーガム(10g)を栄養素溶液に添加し、約10分間激しい撹拌を継続した。得られた溶液を、14mil(0.35mm)の間隙設定で、BOPPカバーシートフィルムの一方の側の上にナイフコーティングした。栄養素コーティングしたフィルムを85℃のオーブン内で12分間乾燥させて、約360mg/24in(2.3mg/cm)の乾燥コーティング重量を得た。
【0078】
米国特許第5,409,838号(参照により本明細書に組み込まれる)の実施例4に記載されるようなTTC(2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド)指示薬を含有するイソオクチルアクリレート/アクリル酸(98/2の重量比)の感圧接着剤(PSA)コーティング配合物を、2mil(0.05mm)の間隙設定で、露出した栄養素コーティング上にナイフコーティングした。得られたコーティングしたフィルムを65℃のオーブン内で6分間乾燥させて、約180mg/24in(1.15mg/cm)の乾燥コーティング重量を有するPSAコーティングを得た。次いで、カバーシートフィルムの接着剤コーティングした側をグアーガムで粉末コーティングした。粉末は均等に適用され、過剰な粉末は、フィルムを手で振盪することによって接着層から取り除かれ、その後、ペーパータオルで表面を軽く磨いた。グアーガムの最終コーティング重量は、約400mg/24in(2.6mg/cm)であった。
【0079】
次いで、コーティングしたカバーシートフィルムを切断して、本体部材の寸法と一致させた。両面接着テープを使用して、スペーサの一方の縁部(76mmの縁部)に沿って、カバーシートを本体部材(ヒンジ様式で)に取り付けることによって、仕上げたデバイスを組み立てた。各デバイスについて、カバーシート及び本体部材は、カバーシートのコーティングされた表面が本体部材のスペーサ側を向くように配向された。
【0080】
完成した検出装置に、大腸菌接種材料を接種した。デバイスのカバーシートを持ち上げ、1mLの接種材料(すなわち、上記の最終希釈物)をピペットで、流体制御フィルムの全体に添加し、これにより、チャネルを液体で満たした。カバーシートを元の位置に穏やかに戻した。全てのデバイスは、グアーガムが均一に湿潤され、流体制御フィルムのチャネルを満たすヒドロゲルを形成するように、チャネル内の水の自己拡散を示した。デバイスを37℃で24時間にわたってインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、赤く着色したコロニーを、目視検査によりカウントした。全てのデバイスに関して、ヒドロゲルの表面にわたって配置された、点状のコロニーが観察された。結果を表3に報告する。
【0081】
【表3】
【0082】
本明細書において引用された全ての参考文献及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本開示に明示的に組み込まれる。本発明の例示的実施形態を検討し、発明の範囲内で可能な変形例を参照した。例えば、1つの例示的な実施形態との関連において記載される機構が、本発明の他の実施形態との関連において使用され得る。本発明におけるこれら及び他の変形及び改変は本発明の範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかであり、本発明が本明細書に記載される例示的実施形態に限定されないことは理解されるべきである。したがって、本発明は、以下に提供されている請求項及びその同等物によってのみ制限されるべきである。
図1
図2