(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】消波ブロックの据付シミュレーションプログラム及びシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20250225BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20250225BHJP
【FI】
G06T19/00 C
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2022037707
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2024-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】三井 順
(72)【発明者】
【氏名】久保田 真一
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-157411(JP,A)
【文献】特開2019-060614(JP,A)
【文献】特開昭52-039939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消波ブロックの据付に関するシミュレーションのためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータのディスプレイ手段に表現される仮想空間において、物体の三次元モデルを物理法則に従って動作させるシミュレーション機能と、
消波ブロックの三次元のブロックモデルを、前記仮想空間内に表示させ、動的シミュレーションを実行させるブロックモデル表示機能と、
前記ブロックモデルを吊り上げる三次元のワイヤーモデルを、前記仮想空間内に表示させ、コンピュータの入力装置の操作に基づいて前記仮想空間内において移動させ、動的シミュレーションを実行させるワイヤーモデル表示機能と、
前記ワイヤーモデルに前記ブロックモデルを連結させて、前記ワイヤーモデルによってブロックモデルを吊り上げる処理と、当該連結を解除して、ワイヤーモデルからブロックモデルを切り離す処理とを実行させる連結/切り離し機能と、
施工環境の三次元形状データに基づいて三次元の環境モデルを生成し、前記仮想空間内に表示させる環境モデル表示機能と、
をコンピュータにおいて実現させることを特徴とする、消波ブロックの据付シミュレーションプログラム。
【請求項2】
前記ワイヤーモデルが、複数本の棒状体を直列的に配置し、隣接する端部同士をヒンジによってそれぞれ連結したものとして定義されていることを特徴とする、請求項1に記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラム。
【請求項3】
前記ブロックモデルにおいて、吊り上げ姿勢が異なる複数の連結点が設定され、前記ワイヤーモデルと前記ブロックモデルとが、それらの連結点のうち、選択された一つの連結点において連結されるように構成され、連結点を変更することにより、吊り上げ姿勢が変更されるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記ブロックモデルは、前記連結点を通る垂直軸線を中心として回動させ、向きを変更することができるように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラム。
【請求項5】
特定の消波ブロックの三次元のブロックモデルのデータを予め保有し、当該消波ブロックのブロックモデルを、前記仮想空間内に表示させることができるように構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラム。
【請求項6】
特定の消波ブロックの三次元形状、寸法、及び、重量のデータを入力することにより、当該消波ブロックの三次元のブロックモデルを生成して、前記仮想空間内に表示させることができるように構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラム。
【請求項7】
請求項1に記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラムを使用して、消波ブロックの据付シミュレーションを行う方法であって、
検討対象となる既設の消波工を含む施工環境の三次元形状データをコンピュータに入力して前記環境モデルを生成し、前記仮想空間内に表示させるステップと、
前記ブロックモデルと前記ワイヤーモデルを前記仮想空間内に表示させ、連結させるステップと、
前記ブロックモデルが、消波ブロックの据付検討位置の上方に位置するように、前記ワイヤーモデルを移動させ、そこから前記ワイヤーモデルを下降させて、前記ブロックモデルを、据付検討位置に配置するステップと、
前記ワイヤーモデルが撓んだ状態となった後に、連結を解除して、前記ブロックモデルを前記ワイヤーモデルから切り離すステップと、
を実行することにより、前記環境モデルの上に前記ブロックモデルを積み上げて、消波工のシミュレーションモデルを生成することを特徴とする消波ブロックの据付シミュレーション方法。
【請求項8】
請求項3に記載の消波ブロックの据付シミュレーションプログラムを使用して、消波ブロックの据付シミュレーションを行う方法であって、
検討対象となる既設の消波工を含む施工環境の三次元形状データをコンピュータに入力して前記環境モデルを生成し、前記仮想空間内に表示させるステップと、
前記ブロックモデルと前記ワイヤーモデルを前記仮想空間内に表示させ、前記ブロックモデルにおいて設定されている複数の連結点からいずれかを選択し、その選択された連結点において前記ブロックモデルと前記ワイヤーモデルを連結させるステップと、
前記ブロックモデルが、消波ブロックの据付検討位置の上方に位置するように、前記ワイヤーモデルを移動させ、そこから前記ワイヤーモデルを下降させて、前記ブロックモデルを、据付検討位置に配置するステップと、
前記ワイヤーモデルが撓んだ状態となった後に、連結を解除して、前記ブロックモデルを前記ワイヤーモデルから切り離すステップと、
を実行することにより、前記環境モデルの上に前記ブロックモデルを積み上げて、消波工のシミュレーションモデルを生成することを特徴とする消波ブロックの据付シミュレーション方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の消波ブロックの据付シミュレーション方法を実行することによって生成した消波工のシミュレーションモデルのデータを出力し、流体解析プログラムに入力し、前記消波工のシミュレーションモデルに対して任意の規模の波浪を到達させる波浪解析シミュレーションを行うことを特徴とする解析シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾や海岸等において消波ブロックを積み上げて消波工を新設する場合や、既設の消波工に対し消波ブロックを追加配置する場合等において、消波ブロックの据付位置や据付姿勢等を事前に検討する際に利用することができ、また、消波工の水理機能や耐波安定性等を数値シミュレーションで評価する際に、入力データとして用いる消波ブロック群の設置状況の三次元データの作成に利用することができる、消波ブロックの据付シミュレーションプログラム及びシミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の消波工に対し消波ブロックを追加配置する場合において、追加する消波ブロックの適切な据付位置や姿勢等の検討を行う際には、まず、3Dプリンタ等を用いて消波工の模型を製作し、その上に消波ブロックの模型を一つずつ手作業で積み上げるという方法が行われていた。この場合、模型製作のためのコストが嵩むという問題があるほか、非常に時間がかかるという問題がある。
【0003】
また近年では、機構解析ソフトウェアを用いて、コンピュータのディスプレイ上に表現される仮想空間に既設の消波工等の三次元モデル(施工環境モデル)を表示するとともに、その上に、消波ブロックの三次元モデル(ブロックモデル)を積み上げる操作を行って据付シミュレーションを行い、消波ブロックの据付位置等の検討を行うという方法も試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-157411号公報
【文献】特開2004-12395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機構解析ソフトウェアを用いて消波ブロックの据付シミュレーションを行う場合、ディスプレイ上に表示させた施工環境モデル(既設の消波工等)の上方の位置からブロックモデルを自由落下させる操作を行うことになるため、ブロックの据付位置や姿勢を細かく制御することができないという問題がある。
【0006】
実際に施工現場において消波ブロックを据え付ける場合、据え付けようとする消波ブロックと既存の消波ブロックとの噛み合わせを考慮するとともに、適切な据付位置や姿勢を見定めて、消波ブロックを一つずつ微調整を行いながら積み上げていくことになるところ、ブロックモデルを自由落下させる据付シミュレーションによって積み上げた場合、実際の設置情況とはかけ離れたものとなってしまう可能性があり、消波ブロックの据付位置等の検討に際し、有効に利用することができない可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、消波ブロックの適切な据付位置や姿勢を検討する際に有効に利用することができる消波ブロック据付シミュレーションプログラム及びシミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る消波ブロックの据付シミュレーションプログラムは、消波ブロックの据付に関するシミュレーションのためのコンピュータプログラムであって、コンピュータのディスプレイ手段に表現される仮想空間において、物体の三次元モデルを物理法則に従って動作させるシミュレーション機能と、消波ブロックの三次元のブロックモデルを仮想空間内に表示させ、動的シミュレーションを実行させるブロックモデル表示機能と、ブロックモデルを吊り上げる三次元のワイヤーモデルを仮想空間内に表示させ、コンピュータの入力装置の操作に基づいて仮想空間内において移動させ、動的シミュレーションを実行させるワイヤーモデル表示機能と、ワイヤーモデルにブロックモデルを連結させて、ワイヤーモデルによってブロックモデルを吊り上げる処理と、当該連結を解除して、ワイヤーモデルからブロックモデルを切り離す処理とを実行させる連結/切り離し機能と、施工環境の三次元形状データに基づいて三次元の環境モデルを生成し、仮想空間内に表示させる環境モデル表示機能とを、コンピュータにおいて実現させることを特徴としている。
【0009】
尚、ワイヤーモデルは、複数本の棒状体を直列的に配置し、隣接する端部同士をヒンジによってそれぞれ連結したものとして定義されていることが好ましく、また、ブロックモデルにおいて、吊り上げ姿勢が異なる複数の連結点が設定され、ワイヤーモデルとブロックモデルとが、それらの連結点のうち、選択された一つの連結点において連結されるように構成され、連結点を変更することにより、吊り上げ姿勢が変更されるように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、ブロックモデルは、連結点を通る垂直軸線を中心として回動させ、向きを変更することができるように構成されていることが好ましく、更に、特定の消波ブロックの三次元のブロックモデルのデータを予め保有し、当該消波ブロックのブロックモデルを、仮想空間内に表示させることができるように構成されていることが好ましい。また、特定の消波ブロックの三次元形状、寸法、及び、重量のデータを入力することにより、当該消波ブロックの三次元のブロックモデルを生成して、仮想空間内に表示させることができるように構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る消波ブロックの据付シミュレーション方法は、検討対象となる既設の消波工を含む施工環境の三次元形状データをコンピュータに入力して環境モデルを生成し、仮想空間内に表示させるステップと、ブロックモデルとワイヤーモデルを仮想空間内に表示させ、ブロックモデルにおいて設定されている複数の連結点からいずれかを選択し、その選択された連結点においてブロックモデルとワイヤーモデルを連結させるステップと、ブロックモデルが、消波ブロックの据付検討位置の上方に位置するように、ワイヤーモデルを移動させ、そこからワイヤーモデルを下降させて、ブロックモデルを、据付検討位置に配置するステップと、ワイヤーモデルが撓んだ状態となった後に、連結を解除して、ブロックモデルをワイヤーモデルから切り離すステップとを実行することにより、環境モデルの上にブロックモデルを積み上げて、消波工のシミュレーションモデルを生成することを特徴としている。
【0012】
本発明に係る解析シミュレーション方法は、消波ブロックの据付シミュレーション方法を実行することによって生成した消波工のシミュレーションモデルのデータを出力し、流体解析プログラムに入力し、消波工のシミュレーションモデルに対して任意の規模の波浪を到達させる波浪解析シミュレーションを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る消波ブロックの据付シミュレーションプログラムは、コンピューターの仮想空間において、消波ブロック等の三次元モデルを、意図した通りの据付位置に、意図した通りの姿勢で積み上げることができ、消波ブロックの適切な据付位置や姿勢等の検討をコンピューター上で実施することができ、その結果、検討に要する時間や費用を大幅に低減できる。
【0014】
また、本発明に係る消波ブロックの据付シミュレーション方法を実行することによって、消波工のシミュレーションモデルのデータ(積み上げた各ブロックモデルの三次元形状、寸法、重量、三次元位置情報、及び、姿勢情報を含む)を出力することができ、それらのデータは、各種の解析シミュレーション(波浪解析シミュレーション、消波工の耐波安定性等の数値シミュレーション等)の入力データとして活用することができる。更に、出力した各ブロックモデルの位置情報及び姿勢情報は、消波ブロック据付の実施工においても、据付目標位置情報として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る消波ブロックの据付シミュレーションプログラムにおいて動作可能なブロックモデル1及びワイヤーモデル2を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る消波ブロックの据付シミュレーションプログラムにおいて動作可能なブロックモデル1の連結点11a~11cを示す図である。
【
図3】
図3は、四脚型消波ブロックを実際に据え付ける場合に採用されている消波ブロックの吊り上げ方法の説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る消波ブロックの据付シミュレーションプログラムによってディスプレイ手段に表示させた環境モデル3の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、消波ブロックの据付シミュレーションプログラムとして実施することができるほか、このプログラムを使用した消波ブロックの据付シミュレーション方法として実施することができる。また、このプログラムの実行(据付シミュレーション方法の実行)後に得られたデータを利用することにより、各種の解析シミュレーション方法を実施することがができる。以下、添付図面に沿って、本発明の実施形態(第一~三実施形態)を説明する。
【0017】
(第一実施形態: 消波ブロックの据付シミュレーションプログラム)
本実施形態の据付シミュレーションプログラムは、シミュレーション機能と、ブロックモデル表示機能と、ワイヤーモデル表示機能と、連結/切り離し機能と、環境モデル表示機能とを、コンピュータにおいて実現させることができるように構成されている。
【0018】
・シミュレーション機能
このプログラムは、「物理演算エンジン」等と称される、質量、速度、摩擦等の力学的な物理法則に従った物体の動的シミュレーション(衝突判定を含む)を実行することができるコンピュータプログラム(例えば、オープンソースの物理演算エンジンである「PyBullet(商標)」等)をベースとするものであり、コンピュータのディスプレイ手段(VRヘッドセットを含む)に表現される仮想空間において、物体の三次元モデルを動作させることができるようになっている。
【0019】
・ブロックモデル表示機能
このプログラムは、シミュレーション対象となる特定の消波ブロックの三次元モデル(ブロックモデル)のデータ(三次元形状、寸法、及び、重量のデータを含む)を予め保有しており、このブロックモデルを、ディスプレイ手段に表現される仮想空間内の任意の位置に表示させることができる。
【0020】
尚、本実施形態においては、
図1(1)に示すような、截頭円錐形状の四つの脚部によって構成される消波ブロック(四脚型消波ブロック)のブロックモデル1のデータを予め保有している。また、他の消波ブロックの三次元形状、寸法、及び、重量のデータ等を入力することにより、当該消波ブロックの三次元ブロックモデルを生成して、表示させることも可能である。
【0021】
・ワイヤーモデル表示機能
更に、このプログラムは、仮想空間内においてブロックモデル1を吊り上げるワイヤーの三次元モデル(
図1(2)に示すワイヤーモデル2)のデータを予め保有しており、このワイヤーモデル2を、仮想空間内の任意の位置に表示させることができる。
【0022】
尚、本実施形態におけるワイヤーモデル2は、複数本の棒状体21(剛体)を直列的に配置し、隣接する端部同士をヒンジ22(全方向へ屈曲可能)によってそれぞれ連結したものとして定義され、かつ、上端部23以外の部分は、重力に従って、上端部23から吊り下げられた状態にあるものと定義されている。
【0023】
ワイヤーモデル2の上端部23は、コンピュータの入力装置(キーボード、マウス、ジョイスティックコントローラ、ゲームパッドコントローラ、VR用ハンドコントローラ等)を操作することにより、仮想空間内において移動させる、即ち、仮想空間内における三次元座標位置(x軸、y軸、及び、z軸方向の位置)を変更することができる。このとき、上端部23の移動速度、及び、各棒状体21の重量等のデータに基づいて、上端部23よりも下方側の部分の動作が物理演算(剛体演算)され、動的シミュレーションがリアルタイムで実行される。尚、入力装置の非操作時においては、上端部23は表示位置に固定される。
【0024】
・連結/切り離し機能
また、コンピュータの入力装置を操作することにより、ワイヤーモデル2の下端部24に、ブロックモデル1を連結させることができる。ブロックモデル1には、
図2(1)~(3)に示す三箇所の連結点11a~11cが用意されており、これらの連結点11a~11cのいずれかに対し、ワイヤーモデル2の下端部24を連結させることにより、
図2(1)~(3)に示すような姿勢でブロックモデル1を吊り上げることができ、更に、その連結を解除して、ワイヤーモデル2からブロックモデル1を切り離すことができる。
【0025】
尚、四脚型消波ブロックを施工現場で実際に据え付ける場合において、消波ブロックを吊り上げる方法として、
図3(1)~(3)に示すような方法が採用されている。具体的には、
図3(1)は、一つの脚部のみが上向きとなるような姿勢で、横向きの二つの脚部の外側を捲くようにワイヤーを回し掛けるとともに、上向きの脚部の側方で当該ワイヤーの輪を閉じて吊り上げる方法(斜め吊り)である。また、
図3(2)は、二つの脚部が斜め上を向き、残りの二つの脚部が斜め下を向くような姿勢で、斜め上向きの二つの脚部にワイヤーを一つずつ回し掛けて吊り上げる方法(2点吊り)である。更に、
図3(3)は、一つの脚部のみが下向きとなるような姿勢で、上方の三つの脚部にワイヤーを一つずつ回し掛けて吊り上げる方法(3点吊り)である。
【0026】
図2(1)に示す連結点11aを選択して、ワイヤーモデル2の下端部24にブロックモデル1を連結した場合、
図3(1)に示す方法で吊り上げた場合と同じ姿勢でブロックモデル1を吊り上げることができる。また、
図2(2)に示す連結点11bを選択した場合、
図3(2)に示す方法で吊り上げた場合と同じ姿勢でブロックモデル1を吊り上げることができる。更に、
図2(3)に示す連結点11cを選択した場合、
図3(3)に示す方法で吊り上げた場合と同じ姿勢でブロックモデル1を吊り上げることができる。
【0027】
尚、ブロックモデル1の吊り上げ姿勢は、随時切り換えることができる。例えば、
図2(1)に示す姿勢でブロックモデル1が吊り上げられている状態(連結点11aにおいてワイヤーモデル2が連結されている状態)から、コンピュータの入力装置を操作することにより、
図2(2)に示す姿勢で吊り上げられている状態(連結点11bにおいて連結されている状態)や、
図2(3)に示す姿勢で吊り上げられている状態(連結点11cにおいて連結されている状態)等に変更することができる。
【0028】
また、ブロックモデル1は、
図2(1)~(3)に示す吊り上げ姿勢から、連結点11(11a~11c)を通る垂直軸線を中心として回動させることにより、それぞれ向きを変更することができる。
【0029】
・環境モデル表示機能
更に、本実施形態においては、施工環境の三次元形状データの入力及び三次元モデル化が可能であり、例えば、対象となる既設の消波工(多数の消波ブロックを積み重ねて形成した消波構造物)(ケーソン等によって構成される堤体を含む)に対して三次元測量(例えば、無人航空機を使用したUAV測量、三次元レーザー測量)を行って取得した消波工等の三次元形状データを入力することにより、
図4に示すように、消波ブロック31、及び、堤体32からなる消波工等を含む施工環境の三次元モデル(環境モデル3)を生成し、ディスプレイ手段に表現される仮想空間内の任意の位置に剛体として表示させることができる。
【0030】
以上に説明したように、本実施形態に係る据付シミュレーションプログラムは、シミュレーション機能、ブロックモデル表示機能、ワイヤーモデル表示機能、連結/切り離し機能、及び、環境モデル表示機能を有し、これらの機能をコンピュータに実行させることができるように構成されており、ディスプレイ手段に表現される仮想空間において、ブロックモデルを意図した通りの据付位置に、意図した通りの姿勢で積み上げることができ、消波ブロックの適切な据付位置や姿勢を検討する際に有効に利用することができる。
【0031】
尚、仮想空間及び三次元モデルを表示するディスプレイ手段として、卓上型のディスプレイ装置ではなく、使用者の頭部に装着されるヘッドセットであって、右眼用の映像と左眼用の映像を個別に表示することにより、使用者に対し仮想空間を立体的に認識させることができるVRヘッドセットが使用される場合には、VRヘッドセットの向きの変化に応じて映像の視点が自動的に移動するように構成することが好ましく、また、ワイヤーモデル2の移動操作を行うための入力装置として、三軸の加速度センサーを内蔵するVR用ハンドコントローラが使用され、これを把持する使用者の手の位置(動き)に連動して、ワイヤーモデル2の位置が変化するように構成することが好ましい。この場合、ブロックモデル1の据付位置を調整する操作を、より直感的に行うことが可能となる。
【0032】
(第二実施形態: 消波ブロックの据付シミュレーション方法)
第一実施形態として説明したプログラムを使用することにより、消波ブロックの据付シミュレーション方法を実施することができる。例えば、まず、検討対象となる既設の消波工等の三次元形状データを入力し、
図4に示すような環境モデル3(消波ブロック31、及び、堤体32からなる消波工等を含む施工環境の三次元モデル)を生成し、ディスプレイ手段に表現される仮想空間内の任意の位置に表示させる。
【0033】
次に、
図1に示すようなブロックモデル1とワイヤーモデル2を表示させ、
図2に示す連結点11a~11cのいずれかを選択し、ブロックモデル1とワイヤーモデル2の下端部24(
図1(2)参照)とを連結させる。そして、ワイヤーモデル2によって吊り下げられた状態のブロックモデル1が、消波ブロックの据付検討位置(消波ブロックの追加配置を検討する位置であって、環境モデル3上の位置、又は、環境モデル3の上に載置した他のブロックモデル上の位置)の上方に位置するように、ワイヤーモデル2の上端部23(
図1(2)参照)を移動させ、そこからワイヤーモデル2を下降させて、ブロックモデル1を、据付検討位置に配置する。
【0034】
尚、ワイヤーモデル2によってブロックモデル1が吊り上げられた状態にあるとき、ワイヤーモデル2は、ブロックモデル1の荷重が作用して鉛直下方向へ引っ張られ、直線状(まっすぐに延びた状態)となるが、ブロックモデル1が環境モデル3等の上に完全に(安定的に)載置された状態から、ワイヤーモデル2の上端部23を更に下降させると、ブロックモデル1の荷重から解放され、ヒンジ22を介して連結されている上下の棒状体21(
図1(2)参照)が屈曲し、ワイヤーモデル2は部分的或いは全体的に撓んだ状態となる。
【0035】
従って、据付検討位置の上方からワイヤーモデル2の上端部23を下降させていき、ワイヤーモデル2が撓んだ状態に変化した場合、ブロックモデル1が環境モデル3等の上に完全に載置されたことがわかる。このように、環境モデル3の上方でワイヤーモデル2が撓んだ状態となったら、連結を解除して、ブロックモデル1を切り離す(据付完了)。
【0036】
この手順を繰り返し実行することにより、環境モデル3の上に、複数のブロックモデル1を積み上げることができ、環境モデル3及び複数のブロックモデル1(ブロックモデル群)からなる消波工のシミュレーションモデルを生成することができ、データ出力が可能となる。
【0037】
尚、据付検討位置にブロックモデル1を配置した場合において、安定性が十分でない場合や、既存の消波ブロックとの噛み合わせが良好でない場合等、据付位置や姿勢が不適切であると認められる場合には、連結を解除せずに、ワイヤーモデル2を上昇させてブロックモデル1を再度吊り上げ、ブロックモデル1を回動させて向きを変更し、或いは、連結点11を変更したうえで、適切な据付位置及び姿勢が得られるまで、据付シミュレーションを繰り返す。
【0038】
このように、本実施形態の消波ブロックの据付シミュレーション方法によれば、ブロックモデル1を意図した通りの据付位置に、意図した通りの姿勢で積み上げることができる。また、ワイヤーモデル2に対するブロックモデル1の連結点11が複数箇所用意され、四脚型消波ブロックを施工現場で実際に据え付ける場合に採用されている吊り上げ姿勢を再現できるため、実際の施工時と同様に、収まりの良い位置へ微調整しながら、状況に応じた適切な姿勢でブロックを設置するシミュレーションが可能となる。
【0039】
(第三実施形態: 解析シミュレーション方法)
第一実施形態として説明したプログラムの実行後に得られたデータを利用して、各種の解析シミュレーション方法を実施することができる。例えば、当該プログラムを使用して消波ブロックの据付シミュレーション方法を実施し、得られた消波工のシミュレーションモデルのデータ(環境モデル3と、その上に積み上げた各ブロックモデル1の三次元形状、寸法、重量、三次元位置情報、及び、姿勢情報)をCADデータとして出力して、流体解析プログラム(例えば、オープンソースの「OpenFOAM(商標)」等)に入力する。
【0040】
そして、流体解析プログラムにおいて、環境モデル3の消波工のみに対して任意の規模の波浪を到達させる波浪解析シミュレーションと、環境モデル3の上にブロックモデル1を積み上げた消波工に対して同規模の波浪を到達させる波浪解析シミュレーションを行って、越波情況或いは消波情況をそれぞれ考察し、比較することにより、積み上げられたブロックモデル1の水理機能や有効性等の検討を行うことができる。
【0041】
また、消波ブロックの据付シミュレーション方法を実施することによって得られた消波工のシミュレーションモデルのデータは、消波工の耐波安定性等を数値シミュレーションで評価する際にも、入力データとして利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:ブロックモデル、
11,11a~11c:連結点、
2:ワイヤーモデル、
21:棒状体、
22:ヒンジ、
23:上端部、
24:下端部、
3:環境モデル、
31:消波ブロック、
32:堤体