(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】制御アルゴリズムベースの薬物送達システムのための安全制約
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20250225BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20250225BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20250225BHJP
A61B 5/145 20060101ALN20250225BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/142 520
A61M5/172 500
G16H20/10
A61B5/145
(21)【出願番号】P 2022127877
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020561633の分割
【原出願日】2019-05-03
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ボク リ
(72)【発明者】
【氏名】トラン リー
(72)【発明者】
【氏名】イービン ジェン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アーノルド パイザー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー レナ シュナイダー
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502361(JP,A)
【文献】特表2008-501426(JP,A)
【文献】特表2012-527981(JP,A)
【文献】特表2017-516548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/172
G16H 20/10
A61B 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療管理デバイスを動作させる方法であって、前記方法は、前記医療管理デバイスのプロセッサによって実行され、前記方法は、
前記プロセッサが、センサからグルコース測定値を受信することに応答して、医療デバイスが、インスリン送達履歴のある期間の間、インスリン送達の第2の率を下回る第1の率でインスリンを送達していることを決定することであって、前記第1の率及び前記第2の率におけるインスリン送達量の比較によって負のインスリン残量値を
生じ、前記第2の率は、ユーザが打ち込んだインスリン送達率、平均APアルゴリズムベースの1日の送達量に基づいてAPアルゴリズムによって計算されたインスリン送達率、並びにユーザの体重、年齢、及び/又は1日の総インスリン量に基づくインスリン送達率の何れか1つであることと、
前記負のインスリン残量値が閾値よりも大きいことを決定することと、
前記負のインスリン残量値が前記閾値よりも大きいことに応答して、前記医療デバイスによるインスリンの送達を1日あたりベースの総基底量を送達するように、または、個人化されたインスリンの体積を送達するように変更することと、
通知メッセージを出力することであって、前記通知メッセージは、インスリンの変更された送達に対して肯定応答することをユーザに要求する、または、インスリンの較正された量を送達のために計算する際に前記プロセッサによって使用される新しい較正値を要求することをユーザに要求する、ことと、含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記インスリンの変更された送達のユーザ肯定応答を受信することに応答して、前記インスリンの変更された送達を継続することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記新しい較正値のための前記要求を受信することに応答して、前記プロセッサが、前記新しい較正値を生成することと、
前記プロセッサが、前記新しい較正値を適用することにより、インスリンの前記較正された量を送達のために計算することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読媒体は、プロセッサによって実行可能なプログラミングコードで具現化され、前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行すると、
センサからグルコース測定値を受信することに応答して、インスリン送達履歴のある期間の間、インスリン送達の第2の率を下回る第1の率でインスリンを送達していることを決定することであって、前記第1の率及び前記第2の率におけるインスリン送達量の比較によって負のインスリン残量値を
生じ、前記第2の率は、ユーザが打ち込んだインスリン送達率、平均APアルゴリズムベースの1日の送達量に基づいてAPアルゴリズムによって計算されたインスリン送達率、並びにユーザの体重、年齢、及び/又は1日の総インスリン量に基づくインスリン送達率の何れか1つであり、
前記負のインスリン残量値が閾値よりも大きいことを決定し、
前記負のインスリン残量値が前記閾値よりも大きいことに応答して、医療デバイスによるインスリンの送達を1日あたりベースの総基底量を送達するように、または、個人化されたインスリンの体積を送達するように変更し、
通知メッセージを出力することであって、前記通知メッセージは、インスリンの変更された送達に対して肯定応答することをユーザに要求する、または、インスリンの較正された量を送達のために計算する際に前記プロセッサによって使用される新しい較正値を要求することをユーザに要求する、ことと、を行うように動作可能である、コンピュータ可読媒体。
【請求項5】
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサは、インスリンの変更された送達のユーザ肯定応答を受信することに応答して、前記インスリンの変更された送達を継続することをさらに行う、請求項4に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサは、
前記新しい較正値のための前記要求を受信することに応答して、前記プロセッサが、前
記新しい較正値を生成し、
前記プロセッサが、前記新しい較正値を適用し、インスリンの前記較正された量を送達のために計算することと、をさらに行う、請求項4に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
システムであって、
医療デバイスであって、前記医療デバイスは、ポンプと、インスリンを含有するように構成されているリザーバと、プロセッサと、送受信機とを備え、前記医療デバイスは、前記プロセッサからの出力に応答して、インスリンを送達するように動作可能である、医療デバイスと、
センサであって、前記センサは、送信機と、プロセッサと、カニューレとを備え、前記センサは、血糖を測定し、血糖値を出力するように動作可能である、センサと、
管理デバイスであって、前記管理デバイスは、管理デバイスプロセッサと、人工膵臓アルゴリズムを含むプログラミング命令を記憶するように構成されている管理デバイスメモリと、管理デバイス送受信機とを備え、前記管理デバイスプロセッサは、前記プログラミング命令の実行に応じて、
前記センサからグルコース測定値を受信することに応答して、前記医療デバイスが、インスリン送達履歴のある期間の間、インスリン送達の第2の率を下回る第1の率でインスリンを送達していることを決定することであって、前記第1の率及び前記第2の率におけるインスリン送達量の比較によって負のインスリン残量値を
生じ、前記第2の率は、ユーザが打ち込んだインスリン送達率、平均APアルゴリズムベースの1日の送達量に基づいてAPアルゴリズムによって計算されたインスリン送達率、並びにユーザの体重、年齢、及び/又は1日の総インスリン量に基づくインスリン送達率の何れか1つであることと、
前記負のインスリン残量値が閾値よりも大きいことを決定し、
前記負のインスリン残量値が前記閾値よりも大きいことに応答して、前記医療デバイスによるインスリンの送達を1日あたりベースの総基底量を送達するように、または、個人化されたインスリンの体積を送達するように変更し、
通知メッセージを出力し、前記通知メッセージは、インスリンの変更された送達に対して肯定応答することをユーザに要求する、または、インスリンの較正された量を送達のために計算する際に前記プロセッサによって使用される新しい較正値を要求することをユーザに要求する、ことと、を行うように動作可能である、管理デバイスとを備える、システム。
【請求項8】
前記管理デバイスプロセッサは、前記インスリンの変更された送達のユーザ肯定応答を受信することに応答して、前記インスリンの変更された送達を継続することをさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記管理デバイスプロセッサは、
前記新しい較正値のための前記要求を受信することに応答して、前記プロセッサが、前
記新しい較正値を生成し、
前記プロセッサが、前記新しい較正値を適用し、インスリンの前記較正された量を送達のために計算することと、をさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、2018年5月4日に出願された、米国仮特許出願第62/667,118号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
説明される実施例は、センサ入力に基づいて、薬物の自動送達を提供し、ユーザが制御アルゴリズムに基づいて自動的に提供される薬剤を過剰送達または過少送達しないことを確実にする、薬物送達システムのための安全制約を提供する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
薬剤送達システムは、典型的には、ユーザの健康条件に基づいて、薬剤をユーザに送達する。例えば、制御アルゴリズムベースの薬物送達システムは、ユーザのグルコースレベルを監視し、グルコースレベル等の監視された医療条件に基づいて、ユーザのためのインスリン等の薬剤の適切なレベルを決定し、続いて、薬剤をユーザに分注することができる。制御アルゴリズムベースの薬物送達システムおよび他の薬剤送達システムにおいて使用される制御アルゴリズムは、概して、インスリン送達量および提供されるユーザデータ等、ユーザによって提供されるデータおよび/または異なる手段によって決定される予期されるグルコースおよび薬剤レベルに依拠する。しかしながら、提供されるデータまたは予期されるレベルは、正しくないまたは誤っている場合があり、これは、正しくない薬剤投薬量および正しくない薬剤送達スケジュールにつながり得る。データおよび測定値誤差は、ユーザ混乱(例えば、正しくない時間を有する、正しくない数を入力する、または同等物)、グルコースセンサドリフトまたはバイアス(グルコースセンサに関連する多くの異なる要因に起因し得る)、薬剤送達システムにおける誤差、または同等物等の多くの異なる理由に起因して生じ得る。その結果、従来の薬剤送達システムは、自動化された薬剤送達システムが正しくないデータおよび測定値誤差に応答することを可能にする、安全制約を提供しない。したがって、安全制約、アラート、および是正作用としてのそのような特徴を含む、インスリン管理システム等の薬剤送達システムの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要約)
開示されるものは、プロセッサによって実行可能なプログラミングコードで具現化される、非一過性コンピュータ可読媒体である。プロセッサは、プログラミングコードを実行すると、規則的時間間隔で、グルコースモニタとの無線接続を介して、グルコース測定値を受信するための機能を含む、機能を実施するように動作可能である。グルコース測定は、グルコースモニタによって実施される。将来のグルコース値は、以前のグルコース測定値に基づいて、予測されてもよい。インスリン基底送達率(insulin basal
delivery rate)は、予測される将来のグルコース値に基づいて、医療デバイスによって提供されるように調節されてもよい。インスリンは、調節されたインスリン基底送達率に従って、医療デバイスを介して送達されてもよい。
【0005】
開示されるものは、無線接続を介してグルコースモニタに結合されるプロセッサによって実施される、方法である。本方法は、プロセッサによって、グルコースモニタから、いくつかのグルコース測定値を受信するステップを含む。いくつかのグルコース測定値の各グルコース測定値は、ある期間にわたって規則的時間間隔で受信され、規則的時間間隔は、その期間未満である。いくつかの将来のグルコース測定値は、いくつかの受信されたグルコース測定値のうちの少なくとも1つを使用して予測されてもよい。後続グルコース測定値が次の規則的時間間隔内に受信されていないことが決定され得る。後続グルコース測定値が到着されていないことの決定に応答して、1日の総インスリンベースの基底送達率は、予測されるいくつかの将来のグルコース測定値のうちの少なくとも1つに基づいて、医療デバイスによって提供されるように調節されてもよい。インスリンは、調節された1日の総インスリンベースの基底送達率に従って、医療デバイスを介して送達されてもよい。
【0006】
開示されるものは、医療デバイスに結合されるプロセッサが、医療デバイスが設定時間量にわたって事前に設定されたものより多いインスリンの体積を送達していることを決定する、別の方法である。事前に設定されたインスリンの体積は、ユーザ入力基底率(user input basal rate)、1日の平均送達率を使用して人工膵臓アルゴリズムによって計算される率、ユーザ体重および/またはユーザ年齢に基づく率、送達される1日の総インスリン量、または送達される1日の総基底量のうちの1つ以上のものに基づく。決定に応答して、調節された基底投薬量として医療デバイスによって送達されるべきインスリンの量は、設定時間量にわたって送達されるインスリンの体積および人工膵臓アルゴリズムによって計算されるような送達されるべき1日の総インスリン量を使用した計算に基づいて、調節される。
【0007】
開示されるものは、医療デバイスと、センサと、管理デバイスとを含む、システムである。医療デバイスは、ポンプと、インスリンを含有するように構成される、リザーバと、プロセッサと、送受信機とを含み、医療デバイスは、プロセッサからの出力に応答して、インスリンを送達するように動作可能である。センサは、送信機と、プロセッサと、カニューレとを含んでもよい。センサは、血糖を測定し、血糖値を出力するように動作可能である。管理デバイスは、プロセッサと、人工膵臓アルゴリズムを記憶するように構成される、メモリと、送受信機とを含んでもよい。人工膵臓アルゴリズムは、ユーザに送達されるべきインスリンの回数および投薬量を決定するように動作可能であって、時間および投薬量は、ユーザの性別、ユーザの年齢、ユーザの体重、ユーザの身長、および/またはセンサによって提供されるグルコースレベルに基づいて計算されてもよい。管理デバイスのプロセッサは、人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、低血糖事象の発生を決定するように動作可能である。低血糖事象の発生の決定に応答して、グルコース変化率フィルタが、所定の期間にわたって、実装されてもよい。変化率フィルタは、インスリンの送達のための時間および送達されているインスリンの投薬量の決定において人工膵臓アルゴリズムによって使用される測定された血糖値における変化率を限定する。プロセッサは、医療デバイスに、インスリンの決定された投薬量を送達するための決定された時間に送達するように命令する。
【0008】
さらに開示されるものは、医療管理デバイスのプロセッサによって、センサからのグルコース測定値の受信に応答して、医療デバイスがインスリン送達履歴のある期間にわたって固定個人化基底率を下回ってインスリンを送達していることを決定するステップを含む、別の方法である。固定個人化基底率を下回ってインスリンを送達することの結果は、負のインスリン残量(insulin on board)値である。プロセッサは、負のインスリン残量値が、ユーザの1日の総インスリンベースの1時間あたり基底値(total daily insulin-based hourly basal value)の3倍を上回ることを決定してもよい。負のインスリン残量値がユーザの1日の総インスリンベースの1時間あたり基底値の数倍を上回ることに応答して、医療デバイスによるインスリンの送達は、1日あたりベースの総基底量または個人化されたインスリンの体積を送達するように改変されてもよい。通知メッセージが、出力され、ユーザに、インスリンの改変された送達量に肯定応答すること、または送達のための較正されたインスリンの量を計算する際にプロセッサによる使用のための新しい較正値のための要件を要求してもよい。
【0009】
開示されるものは、プロセッサによって実行可能なプログラミングコードで具現化される、非一過性コンピュータ可読媒体の別の実施例である。プロセッサは、プログラミングコードを実行すると、グルコースモニタによって規則的時間間隔で測定されるような一連のグルコース濃度値を取得するための機能を含む、機能を実施するように動作可能である。プロセッサは、グルコース濃度の高速増加率を検出し得る。グルコース濃度の高速増加率の検出に反応して、プロセッサは、グルコース濃度の高速増加率への応答を実装してもよい。
【0010】
グルコースセンサに結合されるプロセッサが、インスリン送達量が低血糖事象から回復するために好適な率で減退していないことを決定する、別の方法の実施例も、開示される。決定に応答して、インスリンの一時停止の尤度が、要求されるインスリン送達量がユーザ入力基底送達量を下回るように、人工膵臓アルゴリズム内の推定される転帰のペナルティを低減させること、またはユーザ入力基底送達量に比例するように、ユーザ入力基底送達量を下回るインスリン送達量の逸脱をスケーリングすることのいずれかによって、増加されてもよい。
【0011】
グルコースセンサに結合されるプロセッサが、低血糖リスクの増加を誘発し得る、運動または他の活動の間、インスリン送達がグルコース濃度を維持するために好適な率で減退していないことを決定する方法のさらなる実施例も、開示される。決定に応答して、制御標的グルコース値のいずれかは、現在の標的グルコース値より高いグルコース値に増加されてもよい、または入力基底送達は、現在の入力基底値より低い入力基底値に低減されてもよい。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
非一過性コンピュータ可読媒体であって、前記非一過性コンピュータ可読媒体は、プロセッサによって実行可能なプログラミングコードで具現化され、前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行すると、
規則的時間間隔で、グルコースモニタによって行われるグルコース測定の値を受信することと、
以前のグルコース測定値に基づいて、将来のグルコース値を予測することと、
前記予測される将来のグルコース値に基づいて、医療デバイスによって提供されるべきインスリン基底送達率を調節することと、
前記医療デバイスを介して、前記調節されたインスリン基底送達率に従って、インスリンを送達することと
を行うための機能を含む機能を実施するように動作可能である、非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目2)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、
前記グルコースモニタとの無線接続を介して、後続グルコース測定値を受信することと、
前記受信された後続グルコース測定値および過去の期間からの以前のグルコース値を使用して、1日の総インスリンベースの基底グルコースレベルを決定することと、
前記1日の総インスリンベースの基底グルコースレベルとユーザ設定基底グルコース設定点を比較することと、
前記ユーザ設定基底グルコース設定点が誤っていることを示す前記比較の結果に応答して、前記医療デバイスによって送達されるべき更新されたインスリン基底送達率を決定することであって、前記更新されたインスリン基底送達率は、前記調節されたインスリン基底送達率から更新される、ことと
を行うための機能を実施する、項目1に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目3)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、
1つ以上のグルコース測定値を前記グルコースモニタから受信することと、
ユーザ入力基準較正値を受信することと、
前記グルコースモニタからの1つ以上のグルコース測定値と前記ユーザ入力基準較正値との間の相違を識別することと、
前記識別された相違に基づいて、前記調節されたインスリン基底送達率を修正することと
を行うための機能を実施する、項目1に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目4)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、前記識別された相違に基づいて前記調節されたインスリン基底送達率を修正することに先立って、
前記識別された相違に基づいて、前記グルコースモニタを較正することと、
前記識別された相違が送達されているインスリンの量の正のステップ変化であることを決定することと、
前記識別された相違が正のステップ変化であることに応答して、現在の新しい血糖測定値を前記較正されたグルコースモニタから取得することと、
前記現在の新しい血糖測定値を使用して、前記識別された相違に基づいて、前記調節されたインスリン基底送達率を修正することと
を行うための機能を実施する、項目3に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目5)
前記正のステップ変化は、送達されるインスリンの量の増加である、項目4に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目6)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、前記識別された相違に基づいて前記調節されたインスリン基底送達率を修正することに先立って、
前記識別された相違に基づいて、前記グルコースモニタを較正することと、
前記識別された相違が負のステップ変化であることを決定することと、
前記識別された相違が負のステップ変化であることに応答して、所定の時間量にわたってインスリンの送達を一時停止するための命令を提供することと
を行うための機能を実施する、項目3に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目7)
前記負のステップ変化は、送達されるインスリンの量の減少である、項目6に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目8)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、
前記グルコースモニタによって提供される測定値に基づいて、低血糖事象が生じていることを決定することと、
低血糖事象が生じていることの決定に応答して、前記調節されたインスリン基底送達率を修正することと
を行うための機能を実施する、項目1に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目9)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、低血糖事象が生じていることの決定に応答して前記調節されたインスリン基底送達率を修正するとき、
前記低血糖事象の発生の決定に続いて、所定の期間にわたって、投薬計算において使用される前記医療デバイスの低減された一時的基底送達率を設定すること
を行うための機能を実施する、項目8に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目10)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、低血糖事象が生じていることの決定に応答して前記調節されたインスリン基底送達率を修正するとき、
前記低血糖事象の発生の決定に続いて、血糖レベルの変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、投薬計算において使用される前記医療デバイスの低減された一時的基底送達率を設定すること
を行うための機能を実施する、項目8に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目11)
前記プログラミングコードが前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサはさらに、低血糖事象が生じていることの決定に応答して前記調節されたインスリン基底送達率を修正するとき、
前記低血糖事象の発生の決定に続いて、血糖レベルが所定の閾値を上回るまで、投薬計算において使用される前記医療デバイスの低減された一時的基底送達率を設定すること
を行うための機能を実施する、項目8に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目12)
無線接続を介してグルコースモニタに結合されるプロセッサによって実施される方法であって、前記方法は、
前記プロセッサによって、前記グルコースモニタから、いくつかのグルコース測定値を受信することであって、前記いくつかのグルコース測定値の各グルコース測定値は、ある期間にわたって規則的時間間隔で受信され、前記規則的時間間隔は、前記ある期間未満である、ことと、
前記いくつかのグルコース測定値のうちの少なくとも1つを使用して、いくつかの将来のグルコース測定値を予測することと、
後続グルコース測定値が次の規則的時間間隔内に受信されていないことを決定することと、
前記後続グルコース測定値が到着されていないことの決定に応答して、前記予測されるいくつかの将来のグルコース測定値のうちの少なくとも1つに基づいて、医療デバイスによって提供されるべき1日の総インスリンベースの基底送達率を調節することと、
前記調節された1日の総インスリンベースの基底送達率に従って、前記医療デバイスを介して、インスリンを送達することと
を含む、方法。
(項目13)
前記インスリンは、前記調節された1日の総インスリンベースの基底送達率に従って、信頼された予測期間にわたって、前記医療デバイスを介して送達される、項目12に記載の方法。
(項目14)
最後に受信されたグルコース測定値が前のグルコース測定値の特定の範囲内にあり、かつ、前記信頼された予測期間が所定の数の規則的時間間隔に対応する持続時間に及ぶことに応答して、インスリンの送達が一時停止されるべきであることを決定することと、
前記最後に受信されたグルコース測定値の値がグルコース測定値の複数の範囲の特定の範囲内に該当することに基づいて、前記インスリンの送達を一時停止するための期間を複数の事前に設定された期間から選択することと、
前記選択された期間にわたって、インスリンの送達を一時停止することと
をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
方法であって、
医療デバイスに結合されるプロセッサによって、前記医療デバイスが設定時間量にわたって事前に設定されたインスリンの体積より多いインスリンの体積を送達していることを決定することであって、前記事前に設定されたインスリンの体積は、ユーザ入力基底率、1日の平均送達率を使用して人工膵臓アルゴリズムによって計算される率、ユーザ体重および/またはユーザ年齢に基づく率、送達される1日の総インスリン量、または送達される1日の総基底量のうちの1つ以上のものに基づく、ことと、
前記決定に応答して、前記設定時間量にわたって送達されるインスリンの体積および人工膵臓アルゴリズムによって計算されるような送達されるべき1日の総インスリン量を使用した計算に基づいて、調節された基底投薬量として前記医療デバイスによって送達されるべきインスリンの量を調節することと、
前記調節された基底投薬量が投与される時間インクリメントまたは1時間あたり基底率のパーセンテージのいずれかによって除算されるユーザの基底インスリン送達体積の最大体積に、前記調節された基底投薬量として送達されるべきインスリンの量を限定することであって、前記時間インクリメントは、1時間未満である、ことと
を含む、方法。
(項目16)
グルコース測定値をグルコースセンサから規則的時間間隔で受信することをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
システムであって、
医療デバイスであって、前記医療デバイスは、ポンプ、インスリンを含有するように構成されるリザーバ、プロセッサ、および送受信機を備え、前記医療デバイスは、前記プロセッサからの出力に応答して、インスリンを送達するように動作可能である、医療デバイスと、
センサであって、前記センサは、送信機、プロセッサ、およびカニューレを備え、前記センサは、血糖を測定し、血糖値を出力するように動作可能である、センサと、
管理デバイスであって、前記管理デバイスは、管理デバイスプロセッサ、人工膵臓アルゴリズムを含むプログラミング命令を記憶するように構成される管理デバイスメモリ、および管理デバイス送受信機を備え、前記管理デバイスプロセッサは、前記人工膵臓アルゴリズムを含む前記プログラミング命令の実行に応じて、
低血糖事象の発生を決定することと、
前記低血糖事象の発生の決定に応答して、所定の期間にわたって、グルコース変化率フィルタを実装することであって、前記グルコース変化率フィルタは、インスリンの送達のための時間および前記送達されるべきインスリンの投薬量の決定において前記人工膵臓アルゴリズムによって使用される測定された血糖値における変化率を限定する、ことと、
前記医療デバイスに、送達のための決定された時間において前記インスリンの決定された投薬量を送達するように命令することと
を行うように動作可能である、管理デバイスと
を備える、システム。
(項目18)
前記管理デバイスのプロセッサはさらに、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、
測定されたグルコース値が前記低血糖事象に関連する所定の閾値を最初に下回ったとき、
測定されたグルコース値が前記低血糖事象の発生後に別の所定の閾値を上回るとき、
前記グルコース変化率がさらなる所定の閾値を下回って減少するまで、または
前記グルコースが付加的な所定の閾値を上回るまで
からの1つ以上の限定を適用することによって、前記グルコース変化率フィルタの実装のための持続時間を限定するように動作可能である、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記管理デバイスプロセッサは、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、常時、正および負のグルコース変化率の両方が決定されるとき、または正のグルコース変化率のみが決定されるときのうちの1つにおいて、前記グルコース変化率フィルタを適用する、項目17に記載のシステム。
(項目20)
前記管理デバイスのプロセッサはさらに、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、
ユーザに送達されるべきインスリンの回数および投薬量を決定すること
を行うように動作可能であり、前記時間および前記投薬量は、ユーザの性別、ユーザの年齢、ユーザの体重、ユーザの身長、および/または前記センサによって提供されるグルコースレベルに基づいて計算される、項目17に記載のシステム。
(項目21)
前記管理デバイスのプロセッサはさらに、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、
閉ループ動作モードから開ループ動作モードに変化すること、
事象の検出後、設定期間にわたって、または事象が終わるまで、ユーザのために個人化された基底送達率に従って、最大インスリン送達量を制約することであって、前記事象は、前記低血糖事象と異なる、こと、
前記低血糖事象の検出後、設定期間にわたって、または前記低血糖事象が終わるまで、設定された個人化基底率を送達すること、
前記事象の検出後、設定期間にわたって、または前記事象が終わるまで、前記プロセッサによって使用されるような前記変化率を限定すること、または
前記グルコース変化率フィルタが、常時、または低血糖事象に続いて、前記人工膵臓アルゴリズムによる応答を限定するように適用されるようにすること
のうちの1つを実施するように動作可能である、項目17に記載のシステム。
(項目22)
前記管理デバイスのプロセッサはさらに、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、
前記人工膵臓アルゴリズムの閉ループ動作の開始に応じて、十分なグルコース履歴が前記人工膵臓アルゴリズムによる使用のために利用不可能であることを決定することと、
十分なグルコース履歴が利用不可能であることの決定に応答して、
設定時間量にわたって、インスリンの最大送達量を所定の値に限定すること、または
非基底インスリン用量が前の持続時間内に送達されたかどうかのクエリに対するユーザ応答を要求すること
のうちのいずれかを行う、ことと
を行うように動作可能である、項目17に記載のシステム。
(項目23)
前記管理デバイスのプロセッサはさらに、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、
前記人工膵臓アルゴリズムの閉ループ動作の開始に応じて、十分なグルコース履歴が前記人工膵臓アルゴリズムによる使用のために利用不可能であることを決定することと、
十分なグルコース履歴が利用不可能であることの決定に応答して、前記管理デバイスに医療デバイスによって送達されるインスリンの量を提供するように、ユーザの打ち込みを要求することと、
前記要求に応答して送達されるインスリンの量を受信することに応答して、前記送達されるインスリンの量に基づいて、ユーザのインスリン残量を計算することと、
前記計算されたユーザのインスリン残量が所定の閾値を下回ることになるとき、前記計算されたユーザのインスリン残量を使用して、ユーザの個人化されたインスリン減衰曲線を利用することを決定することと
を行うように動作可能である、項目17に記載のシステム。
(項目24)
方法であって、
医療管理デバイスのプロセッサによって、センサからのグルコース測定値の受信に応答して、医療デバイスがインスリン送達履歴のある期間にわたって固定個人化基底率を下回ってインスリンを送達していることを決定することであって、固定個人化基底率を下回ってインスリンを送達することの結果は、負のインスリン残量値である、ことと、
前記負のインスリン残量値がユーザの1日の総インスリンベースの1時間あたり基底値の数倍を上回ることを決定することと、
前記負のインスリン残量値が前記ユーザの1日の総インスリンベースの1時間あたり基底値の数倍を上回ることに応答して、1日あたりベースの総基底量または個人化されたインスリンの体積を送達するように前記医療デバイスによるインスリンの送達を改変することと、
ユーザに、前記インスリンの改変された送達量に肯定応答するか、または、送達のための較正されたインスリンの量を計算する際、前記プロセッサによる使用のための新しい較正値を要求するように要求する通知メッセージを出力することと
を含む、方法。
(項目25)
前記インスリンの改変された送達量のユーザ肯定応答の受信に応答して、
前記インスリンの改変された送達量を継続することをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記新しい較正値のための前記要求の受信に応答して、前記プロセッサによって、前記新しい較正値を生成することと、
前記プロセッサによって、前記新しい較正値を適用し、送達のための前記較正されたインスリンの量を計算することと
をさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目27)
非一過性コンピュータ可読媒体であって、前記非一過性コンピュータ可読媒体は、プロセッサによって実行可能なプログラミングコードで具現化され、前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行すると、
グルコースモニタによって規則的時間間隔で測定されるような一連のグルコース濃度値を取得することと、
グルコース濃度の高速増加率を検出することと、
前記グルコース濃度の高速増加率の検出に反応して、前記グルコース濃度の高速増加率への応答を実装することと
を行うための機能を実施するように動作可能である、非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目28)
前記グルコース濃度の高速増加率は、ある閾値を超え、
前記グルコース濃度の高速増加率は、ある一連のグルコース濃度値を横断し、前記一連のグルコース濃度値の第1の値は、第1の閾値を下回り、
前記グルコース濃度の高速増加率は、ある一連のグルコース濃度値を横断し、前記一連のうちの任意の値は、第2の閾値を下回り、および/または
前記高速増加率は、ある閾値より高い前記グルコース濃度の二次導関数から決定される、
項目27に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目29)
前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行することに応じて、前記グルコース濃度の高速増加率への応答を実装するとき、
低血糖事象後、規定された持続時間にわたって、推奨される送達量をユーザに個人化された送達最大量に限定すること、
低血糖事象後、変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、推奨される送達量を前記ユーザに個人化された送達最大量に限定すること、
低血糖事象後、前記グルコース濃度が所定の閾値を上回るまで、推奨される送達量を前記ユーザに個人化された送達最大量に限定すること、または
それらの組み合わせ
を行うための機能を実施するように動作可能である、項目27に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目30)
前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行することに応じて、前記グルコース濃度の高速増加率への応答を実装するとき、
i.)低血糖事象後、所定の期間にわたって、ii.)低血糖事象後、前記グルコース濃度が所定の閾値を上回るまで、iii.)低血糖事象後、前記変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、またはiv.)i.)、ii.)、またはiii.)の任意の組み合わせにおいて、インスリンの送達量を限定する前記プロセッサによって実行される人工膵臓アルゴリズムの利得、人工膵臓アルゴリズムコスト関数、および/または積極性を低減させる
ための機能を実施するように動作可能であり、
前記人工膵臓アルゴリズムの利得は、前記人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて適用されるようなインスリンの単位あたりのユーザのグルコース変化量のインジケーションであり、
前記コスト関数は、前記測定されたグルコースおよび予期されるグルコースにおける逸脱および/または予期されるインスリンの量および基底インスリン量における逸脱に関連する測定値であり、
積極性は、前記コスト関数における逸脱に対する人工膵臓アルゴリズムの応答性に関連する、
項目27に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目31)
前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行することに応じて、前記グルコース濃度の高速増加率への応答を実装するとき、
低血糖事象に続いて、所定の期間にわたって、グルコース変化率フィルタを実装すること
を行うための機能を実施するように動作可能であり、前記グルコース変化率フィルタは、人工膵臓アルゴリズムに提供される前記グルコースの変化率を限定するように動作可能である、項目27に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目32)
前記グルコース変化率フィルタは、低血糖事象に続いて、
前記変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、
前記グルコース濃度が所定の閾値を上回るまで、
正および負の変化率の両方または正の変化率のみにわたって、または
それらの任意の組み合わせにおいて
実装される、項目31に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目33)
前記グルコース変化率フィルタは、低血糖事象に続いて、常時、実装される、項目31に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目34)
前記プロセッサは、前記プログラミングコードを実行することに応じて、前記グルコース濃度の高速増加率への応答を実装するとき、
低血糖事象に続いて、所定の期間にわたって、投薬計算のために使用され得る低減された標的血糖値を設定すること、
低血糖事象後、グルコース変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、投薬計算のために使用され得る低減された標的血糖値を設定すること、
前記グルコースが所定の閾値を上回るまで、投薬計算のために使用され得る低減された標的血糖値を設定すること、または
それらの任意の組み合わせに対し、低減された標的血糖値を設定すること
を行うための機能を実施するように動作可能である、項目27に記載の非一過性コンピュータ可読媒体。
(項目35)
方法であって、
グルコースセンサに結合されるプロセッサによって、インスリン送達量が低血糖事象から回復するために好適な率で減退していないことを決定することと、
前記決定に応答して、
要求されるインスリン送達量がユーザ入力基底送達量を下回るように、人工膵臓アルゴリズム内の推定される転帰のペナルティを低減させること、または
前記ユーザ入力基底送達量に比例するように、前記ユーザ入力基底送達量を下回るインスリン送達量の逸脱をスケーリングすること
のいずれかによって、インスリンの一時停止の尤度を増加させることと
を含む、方法。
(項目36)
方法であって、
グルコースセンサに結合されるプロセッサによって、低血糖リスクの増加を誘発し得る運動または他の活動の間、インスリン送達量がグルコース濃度を維持するために好適な率で減退していないことを決定することと、
前記決定に応答して、
制御標的グルコース値を現在の標的グルコース値より高いグルコース値まで増加させることによって、前記制御標的グルコース値を改変すること、または
前記入力基底送達量を現在の入力基底値より低い入力基底値まで低減させることによって、入力基底送達量を改変すること
のいずれかを行うことと、
前記改変に応答して、インスリン送達量をより高速率で減退させ、グルコース濃度を維持することと
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本明細書に説明される技法およびプロセスを実装するように動作可能である、薬物送達システムの実施例を図示する。
【0013】
【
図2】
図2は、ユーザのTDIベースのインスリン量にほぼ限定されている、ユーザのための固定インスリン送達率の実施例を図示する。
【0014】
【
図3】
図3は、新しいグルコース測定値に基づいて予測軌道を調節する実施例を図示する。
【0015】
【
図4】
図4は、将来の血糖値の推定された軌道より低くなるように意図される人工膵臓アルゴリズムの実施例によって行われる、血糖値予測に対する変化率フィルタの効果の実施例を図示する。
【0016】
【
図5】
図5は、最大インスリン送達量を制約する実施例を図示する。
【0017】
【
図6】
図6は、グルコース値が所定の閾値を下回るとき、インスリン送達量を固定インスリン率以下に制約する実施例を図示する。
【0018】
【
図7A】
図7Aは、本明細書に説明される実施例による、予測される将来のグルコース値を利用してインスリン基底送達量を調節する、プロセスのフローチャートを示す。
【0019】
【
図7B】
図7Bは、
図1に示される例示的薬物送達システム等の薬物送達システム内の通信問題に応答して安全制約の実施例を実装するための、プロセスのフローチャートを示す。
【0020】
【
図8】
図8は、インスリンの過剰送達に応答して安全制約の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートを示す。
【0021】
【
図9】
図9は、インスリンの過少送達に応答して安全制約の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートを示す。
【0022】
【
図10】
図10は、グルコース濃度の高速増加率に対する応答の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートを示す。
【0023】
【
図11】
図11は、インスリンの一時停止の尤度を増加させる応答の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートを示す。
【0024】
【
図12】
図12は、インスリン送達量を減退させる応答の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
種々の実施例は、「人工膵臓」アルゴリズムベースのシステム、より一般的には、人工膵臓アルゴリズムとも称される、センサ入力に基づいて、薬物の自動送達を提供する、制御アルゴリズムベースの薬物送達システムのための安全制約を提供する。例えば、人工膵臓(AP)アルゴリズムは、プロセッサによって実行されると、システムが、ユーザのグルコースレベルを監視し、監視されたグルコースレベル(例えば、グルコース濃度またはグルコース測定値)およびユーザ提供情報等の他の情報に基づいて、ユーザのためのインスリンの適切なレベルを決定し、続いて、インスリンをユーザに分注することを可能にする。加えて、APアルゴリズムは、監視されたグルコースレベルおよび他の情報を利用して、コマンドを生成し、ポンプ等の医療デバイスに送信し、制御する、例えば、インスリンのボーラス用量をユーザに送達する、将来の用量の量またはタイミングを変化させる、または他の制御可能機能を行う。本明細書に説明される安全制約は、例えば、センサ入力が欠落または誤っているとき、計画されていない食事等の予期しない事象の間を含む、種々の動作シナリオの間、薬物送達システムの安全動作を提供する。開示される安全制約は、薬物送達システムのユーザに過度に負担をかけずに、かつ薬物送達システムの性能を犠牲にせずに、薬物の過少送達または過剰送達を軽減する。
【0026】
図1は、薬物送達システム100の実施例を図示する。薬物送達システム100は、医療デバイス102と、センサ104と、管理デバイス(PDM)106とを含むことができる。種々の実施例では、薬物送達システム100は、自動化された薬物送達システムであることができる。種々の実施例では、医療デバイス102は、ユーザまたは患者の身体に取り付けられることができ、インスリンまたは同等物等の任意の薬物または薬品を含む、任意の療法用作用物質を、ユーザに送達することができる。例えば、医療デバイス102は、装着可能デバイスであることができる。例えば、医療デバイス102は、直接、ユーザに結合される(例えば、直接、ユーザの身体部分および/または皮膚に取り付けられる)ことができる。例えば、医療デバイス102の表面は、接着剤を含み、ユーザへの取付を促進することができる。
【0027】
医療デバイス102は、いくつかの構成要素を含み、ユーザへの薬物(療法用作用物質とも称される)の自動化された送達を促進することができる。医療デバイス102は、任意の薬剤または薬物を貯蔵し、ユーザに提供することができる。種々の実施例では、医療デバイス102は、自動化された装着可能インスリン送達デバイスであることができる。例えば、医療デバイス102は、薬物(インスリン等)を貯蔵するためのリザーバ125と、薬物をユーザの身体の中に送達するための針またはカニューレと、薬物をリザーバ125から針またはカニューレ(図示せず)を通してユーザの身体の中に移送するためのポンプ機構(機構)124または他の駆動機構とを含むことができる。医療デバイス102はまた、電力をポンプ機構124および/または医療デバイス102の他の構成要素(プロセッサ121、メモリ123、および通信デバイス126等)に供給するためのバッテリ等の電源128を含むことができる。医療デバイス102は、多くの場合、薬物をユーザへの送達のためのリザーバ125から排出する動作を参照して、ポンプまたはインスリンポンプと称される。リザーバ125は、インスリン、モルヒネ、または自動化された送達のために好適な別の薬物を貯蔵するように構成されてもよい。
【0028】
医療デバイス102は、センサ104および/または管理デバイス(PDM)106によって提供される情報に基づいて、貯蔵された療法用作用物質をユーザに提供することができる。例えば、医療デバイス102はまた、薬剤の送達を制御するためのプロセッサ121(またはコントローラ)として実装され得る、アナログおよび/またはデジタル回路構成を含有することができる。回路構成は、プロセッサ121を実装するために使用されてもよく、離散特殊論理および/または構成要素、特定用途向け集積回路、メモリデバイス(メモリ123等)内に記憶されるソフトウェア命令、ファームウェア、プログラミング命令(人工膵臓アルゴリズム129等)を実行する、マイクロコントローラまたはプロセッサ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。種々の実施例では、プロセッサ161は、ポンプに、薬剤の用量をユーザに所定の間隔で送達させるように構成されることができる。例えば、プロセッサ161は、人工膵臓アルゴリズム(APアルゴリズム)169等の制御アルゴリズムを実行してもよい。用量のサイズおよび/またはタイミングは、例えば、ユーザによって、または第三者(医療従事者、医療デバイス製造業者、または同等者等)によって、有線または無線リンクを使用して、人工膵臓アルゴリズム169の中にプログラムされてもよい。
【0029】
ユーザへの薬剤の送達(例えば、薬剤の任意の用量のサイズおよび/またはタイミング)を決定するための命令は、ローカルで生じてもよい(例えば、医療デバイス102によって決定を行うために使用される医療デバイス102に結合される、メモリ123内に記憶される、人工膵臓アルゴリズム129の事例等、プログラミング命令に基づいて)、または遠隔で生じ、医療デバイス102に提供されてもよい。遠隔命令は、人工膵臓アルゴリズム169を実行する、電子デバイス(PDM)106によって、有線または無線リンクを経由して、医療デバイス102に提供されることができる。医療デバイス102は、任意の受信された命令(ユーザへの薬剤の送達のために、内部から、または管理デバイス106から生じる)を実行することができる。このように、いずれのシナリオ下でも、ユーザへの薬剤の送達は、自動化されることができる。
【0030】
種々の実施例では、医療デバイス102は、管理デバイス106との無線リンク110を介して、通信することができる。管理デバイス106は、例えば、Apple Watch(登録商標)等の任意の電子デバイスであることができる。管理デバイス106は、装着可能無線付属デバイスであることができる。無線リンク108、110、および112は、任意の公知の無線規格によって提供される、任意のタイプの無線リンクであってもよい。実施例として、無線リンク108、110、および112は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、近距離通信規格、セルラー規格、または任意の他の無線光学または無線周波数プロトコルに基づいて、医療デバイス102、管理デバイス106、およびセンサ104間の通信を可能にしてもよい。
【0031】
センサ104は、血糖を測定し、血糖値または血糖値を表すデータを出力するように動作可能である、グルコースセンサであってもよい。例えば、センサ104は、グルコースモニタまたは持続グルコースモニタ(CGM)であってもよい。センサ104は、プロセッサ141と、メモリ143と、感知/測定デバイス144と、通信デバイス146とを含んでもよい。センサ104の通信デバイス146は、無線リンク112を経由して、管理デバイス106と、またはリンク108を経由して、医療デバイス102と通信するために、1つ以上の感知要素、電子送信機、受信機、および/または送受信機を含むことができる。感知/測定デバイス144は、グルコース測定値、心拍数モニタ、または同等物等の1つ以上の感知要素を含んでもよい。例えば、センサ104は、持続グルコースモニタ(CGM)であることができる。プロセッサ141は、離散特殊論理および/または構成要素、特定用途向け集積回路、メモリデバイス(メモリ143等)内に記憶される、ソフトウェア命令、ファームウェア、プログラミング命令を実行する、マイクロコントローラまたはプロセッサ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、メモリ143は、プロセッサ141によって実行可能である、APアルゴリズム149のインスタンスを記憶してもよい。センサ104は、医療デバイス102と別個として描写されるが、種々の実施例では、センサ104および医療デバイス102は、同一ユニットの中に組み込まれてもよい。すなわち、種々の実施例では、センサ104は、医療デバイス102の一部であって、医療デバイス102の同一筐体内に含有されることができる(例えば、センサ104は、医療デバイス102内に位置付けられる、またはその中に埋設されることができる)。センサ104によって決定されるグルコース監視データ(例えば、測定されたグルコース値)は、医療デバイス102および/または管理デバイス106に提供されることができ、医療デバイス102によるインスリンの自動化された送達を調節するために使用されることができる。管理デバイス106は、個人用糖尿病管理装置であることができる。
【0032】
センサ104はまた、例えば、接着剤または同等物によって、ユーザに結合されることができ、ユーザの1つ以上の医療条件および/または物理的属性に関する情報またはデータを提供することができる。センサ104によって提供される情報またはデータは、医療デバイス102の薬物送達動作を調節するために使用されてもよい。管理デバイス106は、医療デバイス102および/またはセンサ104の動作をプログラムまたは調節するために使用されることができる。管理デバイス106は、例えば、プロセッサ161、スマートフォン、またはタブレット等の専用コントローラを含む、任意のポータブル電子デバイスであることができる。ある実施例では、管理デバイス(PDM)106は、プロセッサ161と、管理デバイスメモリ163と、通信デバイス164とを含んでもよい。管理デバイス106は、ユーザのグルコースを管理するためのプロセスを実行するため、かつ薬剤の送達を制御するために、プロセッサ161(またはコントローラ)として実装され得る、アナログおよび/またはデジタル回路構成を含有してもよい。プロセッサ161はまた、管理デバイスメモリ163内に記憶されるプログラミングコードを実行するように動作可能であってもよい。例えば、管理デバイスメモリ163は、プロセッサ161によって実行され得る、人工膵臓アルゴリズム169を記憶するように構成されてもよい。プロセッサ161は、人工膵臓アルゴリズム169を実行するとき、図中の実施例に関して説明されるもの等の種々の機能を実施するように動作可能であってもよい。通信デバイス164は、1つ以上の無線周波数プロトコルに従って動作する、受信機、送信機、または送受信機であってもよい。
【0033】
医療デバイス102およびセンサ104は、無線リンク108を経由して通信してもよい。医療デバイス102および管理デバイス106は、無線リンク110を経由して通信してもよい。センサ104および管理デバイス106は、無線リンク112を経由して通信してもよい。無線リンク108、110、および112は、任意の公知の無線規格によって提供される、任意のタイプの無線リンクであってもよい。実施例として、無線リンク108、110、および112は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、近距離通信規格、セルラー規格、または個別の通信デバイス126、146、および164を介した任意の他の無線プロトコルに基づいて、通信リンクを提供することができる。いくつかの実施例では、医療デバイス102および/または管理デバイス106は、ユーザが、情報を打ち込む(enter)ことを可能にし、管理デバイスが、ユーザへの提示のために、情報を出力することを可能にするように動作可能である、キーパッド、タッチスクリーンディスプレイ、ボタン、マイクロホン、スピーカ、ディスプレイ、または同等物等のユーザインターフェースを含んでもよい。
【0034】
種々の実施例では、薬物送達システム100は、インスリン薬物送達システムであることができる。種々の実施例では、医療デバイス102は、米国特許第7,303,549号、米国特許第7,137,964号、または米国特許第6,740,059号(それぞれ、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるように、OmniPod(登録商標)(Insulet Corporation(Billerica, MA))インスリン送達デバイスであることができる。
【0035】
種々の実施例では、薬物送達システム100は、人工膵臓(AP)アルゴリズム(および/またはAP機能性を提供する)を実装し、ユーザへの自動化されたインスリンの送達を統制または制御することができる(例えば、正常血糖値、すなわち、血液中のグルコースの正常レベルを維持するために)。APアルゴリズムは、医療デバイス102および/またはセンサ104によって実装されることができる。APアルゴリズムは、インスリン送達の回数および投薬量を決定するために使用されることができる。種々の実施例では、APアルゴリズムは、ユーザの性別、年齢、体重、または身長等のユーザについて既知の情報、および/またはユーザの物理的属性または条件について集められた情報(例えば、センサ104から)に基づいて、送達のための回数および投薬量を決定することができる。例えば、APアルゴリズムは、センサ104を通したユーザのグルコースレベルの監視に基づいて、インスリンの適切な送達量を決定してもよい。APアルゴリズムはまた、ユーザが、インスリン送達を調節することを可能にし得る。例えば、APアルゴリズムは、ユーザが、インスリンボーラスを送達するためのコマンド等、コマンドを医療デバイス102に発行する(例えば、入力を介して)ことを可能にし得る。いくつかの実施例では、APアルゴリズムの異なる機能は、管理デバイス106、ポンプ102、またはセンサ104のうちの2つ以上のものの間に分散されてもよい。他の実施例では、APアルゴリズムの異なる機能は、管理デバイス106、ポンプ102、またはセンサ104等の1つのデバイスによって実施されてもよい。種々の実施例では、薬物送達システム100は、2016年11月22日に出願された米国特許出願第15/359,187号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明される、薬物送達システムの特徴または機能性のいずれかに従って動作することができる、またはそれを含むことができる。
【0036】
本明細書に説明されるように、薬物送達システム100またはその任意の構成要素は、AP機能性を提供する、またはAPアルゴリズムを実装すると見なされ得る。故に、APアルゴリズム(例えば、その機能性、動作、または能力)の参照は、便宜上行われ、薬物送達システム100またはその任意の構成体である構成要素(例えば、医療デバイス102および/または管理デバイス106)の動作および/または機能性を指し、および/またはそれを含み得る。例えば、APアルゴリズムを実装するインスリン送達システムとしての薬物送達システム100は、センサ入力(例えば、センサ104によって収集されたデータ)を使用する、薬物送達システムまたはAPアルゴリズムベースの送達システムであると見なされ得る。
【0037】
薬物送達システム100は、薬物送達の適切な動作のために、センサ入力に依拠するため、薬物送達システム100は、安全上の理由から、送達限界を課し得る。送達制約は、ユーザへの薬物(例えば、インスリン)の安全な自動送達を確実にするために課され得るが、いくつかの実施例では、APアルゴリズム制御性能を過度に低減させる制約またはユーザに過度に負担をかける制約を有しないことが望ましくあり得る。本明細書に説明される技法は、薬物送達システム100が、ユーザ安全性を最大限にしながら、グルコース制御性能を最適化し、ユーザに課される任意の付加的負担または不便を最小限にすることを可能にする。
【0038】
例えば、CGMとしてのセンサ104は、ユーザへの薬物の過剰送達または過少送達につながり得る、決定されたデータ値のセンサバイアス、ドリフト、または他の相違に伴って動作する、または別様にそれを呈し得る。本明細書に説明される技法は、センサ104の故障、センサ104によって提供される誤った値、および/またはセンサ104から、およびセンサ104に依拠することと関連付けられた他のリスクからの、欠落データの場合の安全上の軽減策を含む、薬物送達システム100の動作のための安全制約を提供する。本明細書に説明される技法はまた、より低いグルコース値等のより高いリスク条件に特有の安全制約および残留炭水化物または同等物等の外部摂動に対する実装されたAPアルゴリズムの応答を提供する。
【0039】
薬物送達システム100は、いくつかの実施例では、医療デバイス102と、センサ104と、管理デバイス106とを含む、装着可能な自動化された薬物送達システムであってもよい。装着可能な自動化された薬物送達システムの一実施例では、医療デバイス102は、装着可能なインスリン送達デバイスであってもよく、管理デバイス106は、ハンドヘルド電子コンピューティングデバイスであってもよく、センサ104は、持続グルコースモニタであってもよい。管理デバイス106は、モバイルデバイスまたは携帯電話であることができる、または専用カスタム電子デバイスであることができる。装着可能な自動化された薬物送達システムの一部として、医療デバイス102およびセンサ104はそれぞれ、直接、ユーザに結合されてもよい。
【0040】
センサ104は、センサデータを医療デバイス102および/または管理デバイス106に提供することができる。管理デバイス106は、コントローラまたはプロセッサと、メモリとを含むことができる。メモリは、コントローラまたはプロセッサによって実行され得る、命令を記憶することができる。命令は、実行されると、「人工膵臓」アルゴリズムを実装することができる。一般に、管理デバイス106は、センサ104からのデータに基づいて、ユーザへのインスリンの送達量(例えば、投薬量および回数の観点から)を決定し、インスリンの決定された送達に関する対応する命令を医療デバイス102に提供するためのコントローラを含むことができる。
【0041】
種々の実施例では、上記に述べられるように、センサ104は、装着可能インスリン送達デバイス102の一部として提供される、またはその中に埋設されることができる。加えて、種々の実施例では、上記に述べられるように、システム100は、
図1に描写されるデバイス間において情報を無線で中継し得る、中間無線デバイス(例えば、管理デバイス106)を含むことができる。
【0042】
一般に、システム100は、ユーザのグルコースレベルを自動的に監視し、監視されたグルコースレベルに基づいて、ユーザへのインスリンの送達を自動的に決定し、決定されたインスリンの量をユーザに自動的に提供することができる。これらのステップはそれぞれ、任意のユーザ入力または相互作用を伴わずに実施されることができる。種々の実施例では、ユーザ確認が、上記に議論されるように、インスリンがユーザに提供される前に、要求されることができる。例えば、管理デバイス106が、携帯電話として実装されるとき、追加セキュリティのために、ユーザは、ユーザへの決定されたインスリンの送達を確認(confirm)または肯定応答(acknowledge)することが要求されてもよい。そのような確認を受信しないと、インスリン送達は、遮断または防止されてもよい。本セキュリティ特徴は、ハッキングまたは他のサイバーセキュリティリスクを軽減することができる。
【0043】
種々の実施例では、薬物送達システム100は、グルコース値がセンサ104によってプロセッサ上で実行されるAPアルゴリズム(例えば、医療デバイス102および/または管理デバイス106)に定期的に提供されるように、動作することができる。例えば、グルコース値は、例えば、約5分毎(例えば、システム100の制御サイクルに対応する)等、周期的に提供されることができる。医療デバイス102は、受信されたグルコース値に基づいて、送達のためのインスリンの量を調節することができる。
【0044】
図7Aを参照してシステム100によって実施される動作実施例を簡潔に説明することが、有用であり得る。
図1の管理デバイスプロセッサ161または121上で実行される、
図1のAPアルゴリズム169または129は、
図7Aに示されるように、プロセス700を実装してもよい。710では、APアルゴリズムは、規則的時間間隔で、グルコースモニタ(センサ104等)との無線接続(例えば、108または112)を介して、グルコース測定値を受信し得る。規則的時間間隔は、約5分、10分、1時間、1日の特定の時間毎等の間隔であってもよい。以前のグルコース値に基づいて、APアルゴリズムは、将来のグルコース値を予測し得る(720)。720から予測される将来のグルコース値に基づいて、APアルゴリズムは、730において、例えば、予測される将来のグルコース値に基づいてインスリン基底送達率を調整することによって、インスリン送達量を調節し得る。740では、インスリンは、調節されたインスリン基底送達率に従って、医療デバイスを介して送達され得る。例えば、医療デバイス102は、約5分毎等の規則的期間で、受信されたグルコース値に基づいて調節された量を用いて、インスリンの量をユーザに送達することができる。
【0045】
図7Aの実施例のプロセス700は、継続し、プロセッサは、グルコースモニタとの無線接続を介して、後続グルコース測定値を受信し得る。1日の総インスリンベースの基底グルコースレベルが、受信された後続グルコース測定値および過去の期間からの以前のグルコース値を使用して決定され得る。プロセッサは、1日の総インスリンベースの基底グルコースレベルとユーザ設定基底グルコース設定点(例えば、110~120mg/dLまたは同等物)を比較し得る。比較の結果がユーザ設定基底グルコース設定点が誤っていることを示すことに応答して、プロセッサは、医療デバイスによって送達されるべき更新されたインスリン基底送達率を決定し得る。実施例では、更新されたインスリン基底送達率は、ステップ730からの調節されたインスリン基底送達率から更新される。
【0046】
本明細書に説明される技法は、センサ104の既知または未知の故障または不正確性に基づいて、インスリンの送達のための安全制約を提供する。種々の動作シナリオおよびシステム100によるそれに対する応答の実施例が、本明細書に説明される。
【0047】
動作実施例では、システム100は、以下の議論に従って、血糖測定値idがグルコース閾値を下回るとき、インスリン送達の自動一時停止で反応し得る。動作実施例では、APアルゴリズムによって行われる予測にかかわらず、APアルゴリズムは、センサ104によって決定されるグルコースレベルが閾値を下回る(例えば、60mg/dLを下回る)と、自動一時停止モードに入ることができる。APアルゴリズムは、グルコース値が閾値を上回って上昇すると、モデル予測制御(MPC)アルゴリズムに基づいて、インスリン送達を自動的に再開することができる。種々の実施例では、低血糖症が検出されると(例えば、グルコースレベルが所定の閾値を下回ることに基づいて)、薬物送達システム100は、ユーザへのインスリンの送達を停止することができる。ユーザへの送達の自動的再開は、グルコースレベルが閾値を上回って上昇すると、提供されることができる。APアルゴリズムの一部として動作する、MPCアルゴリズムは、自動始動のために使用されることができる。
【0048】
他の動作実施例では、システム100は、以下の議論に従って、APアルゴリズムを閾値を下回る基底量に制約することで反応し得る。種々の実施例では、APアルゴリズムは、グルコース値が所定の閾値を下回ると、固定インスリン率以下で送達するように制約されることができる。
図6は、そのようなシナリオ下で送達を固定インスリン率以下に制約する実施例を図示する。APアルゴリズムは、グルコース値が閾値を下回ると、インスリン送達を減退または一時停止させ得る。固定インスリン送達率は、ユーザに個人化されることができ、ユーザが打ち込んだ基底率、平均APアルゴリズムベースの1日の送達量に基づいてAPアルゴリズムによって計算された率、ユーザの体重、年齢、1日の総インスリン量(TDI)に基づく率、および/または他の計測値によって決定されることができる。
【0049】
実施例として、「TDIベースの基底量」は、ユーザの1日の総インスリン要件、すなわち、24時間等の過去の期間にわたるユーザのインスリン送達量の和を、0.5(基底量が、自然に、1日あたりのユーザの総インスリン要件の半分によって網羅されるであろう一方、1日あたりのユーザの総インスリン要件の残り半分は、食事の際に、またはボーラスとして提供される、インスリンによって網羅されると仮定して)で乗算し、次いで、その値を24(すなわち、1日の時間)で除算することによって、計算されることができる。例えば、ユーザのTDIが、48である場合、ユーザのTDIベースの基底量は、48×0.5/24、すなわち、1U/時である。これは、ユーザが1日に実際に必要とし得る総基底量の推定値を与え、任意の誤ってユーザが打ち込んだ基底値に対して影響を受けにくい。
【0050】
所定の閾値は、固定(例えば、ハードワイヤード)閾値、ユーザ設定閾値、または固定(正または負の)逸脱値によって調節されたユーザ設定閾値(例えば、固定10mg/dL調節量を差し引いたユーザ設定標的グルコース量)であってもよい。実施例として、固定インスリン送達率は、グルコースレベルが所定の閾値を下回るとき、設定基底送達量の約半分であり得る。
図2は、ユーザのTDIベースのインスリン量に概ね限定されるユーザに関する、固定インスリン送達率の実施例を図示する。
【0051】
本明細書に説明される技法は、センサ独立安全制約を提供することによって、任意の数の理由から正しくないまたは誤っている場合がある、APアルゴリズム/薬物送達システム100に提供されるセンサ値を考慮することができる。そのような事例では、システム100は、下記に説明されるように、ある期間にわたって、インスリンの最大送達量に関するグルコース独立安全制約を実装してもよい。
【0052】
例えば、
図8は、インスリンの過剰送達に応答して安全制約の実施例を実装するための、プロセスのフローチャートを示す。プロセス800等における種々の実施例では、APアルゴリズムは、APアルゴリズムがユーザに個人化された事前に設定されたものより多いインスリンの体積を送達している場合、設定時間量にわたって、最大固定インスリン送達率に制約されることができる。例えば、プロセスは、APアルゴリズムがユーザの基底送達量の和の3倍を過去3時間以内に送達している場合(多くの場合、3×3ルールと称される)、APアルゴリズムの実行に応じて、ユーザが打ち込んだ基底量またはTDIベースの基底量の最大量を送達するように動作可能である。医療デバイス(ポンプであり得る、102等)に結合されるプロセッサ(プロセッサ161等)は、医療デバイスが設定時間量にわたって事前に設定されたものより多いインスリンの体積を送達していることを決定し得る(810)。調節された基底投薬量として医療デバイスによって送達されるべきインスリンの量は、設定時間量にわたって送達されるインスリンの体積および人工膵臓アルゴリズムによって計算されるような送達されるべき1日の総インスリン量を使用した計算に基づいて、調節され得る(820)。830では、プロセッサは、調節された基底投薬量として送達されるべきインスリンの量を、調節された基底投薬量が投与される時間インクリメントまたは1時間あたり基底率のパーセンテージのいずれかによって除算される、ユーザの基底インスリン送達体積の最大体積に限定し得る。
図8の実施例では、時間インクリメントは、規則的時間間隔であってもよい。規則的時間間隔の実施例は、例えば、5分、9分、23分、または同等物等の1時間未満、1時間より長い、または同等物であってもよい。代替として、時間インクリメントは、単に、カウンタ値または同等物に基づく、インクリメントであってもよい。
【0053】
APアルゴリズムは、この場合、インスリン送達を減退または一時停止させ得るが、最大インスリン送達量に制約される。
図5は、最大インスリン送達量を制約する実施例を図示する。固定インスリン送達率および事前に設定されたインスリン送達の体積は、ユーザに個人化されることができ、ユーザが打ち込んだ基底率、平均APアルゴリズムベースの1日の送達量に基づいてAPアルゴリズムによって計算される率、体重、年齢、送達される1日の総インスリン量、送達される1日の総基底量に基づく率、または他の計測値によって決定されることができる。加えて、制約される送達は、それを示すユーザへのアラートまたはアラームを伴ってもよい。
【0054】
他の事例では、システム100は、下記に説明されるように、一度のインスリンの最大送達量に関するグルコース独立安全制約を実装してもよい。種々の実施例では、APアルゴリズムは、任意の1つの制御サイクルにわたってユーザに個人化されたインスリンの固定体積以下で送達するように制約されることができる。例えば、APアルゴリズムは、5分インクリメントで除算されるユーザの基底量の6倍(例えば、多くの場合、6×ルールと称される)、または1つのアルゴリズム送達量において1時間あたり基底率の50%(例えば、1.2u/時/2=.6ユニットの基底率)以下を送達することができる。インスリン送達の固定体積は、ユーザに個人化されることができ、ユーザが打ち込んだ基底率、平均APアルゴリズムベースの1日の送達量に基づいてAPアルゴリズムによって計算される率、体重、年齢、送達される1日の総インスリン量、送達される1日の総基底量に基づく率、または他の計測値によって決定されることができる。
【0055】
さらなる事例では、システム100は、下記に説明されるように、グルコース独立安全制約を実装し、インスリンの過少送達を限定してもよい。種々の実施例では、APアルゴリズム/薬物送達システム100は、負のインスリン残量(IOB)制約を実装することができる。APアルゴリズムは、APアルゴリズムが、IOBを組み込む、ある期間にわたって、ユーザに個人化されたインスリンの体積を上回って、インスリンを過少送達する場合、ユーザに個人化された固定インスリン送達率モードに入ることができる。例えば、IOB減衰曲線を適用後、過去4時間以内におけるユーザの基底量の2.5倍である。APアルゴリズムは、各制御サイクルにおいて残りのIOBを計算する。負のIOB決定は、アルゴリズムが、インスリン送達履歴のある期間にわたって、固定個人化率(すなわち、基底量)を下回って送達していたことを示し得る。負のIOB値は、IOB減衰を考慮する累積「過少基底」送達量であり得る。
【0056】
図9は、インスリンの過少送達に応答して安全制約の実施例を実装するための、プロセスのフローチャートを図示する。プロセス905では、プロセッサ(
図1の121または161等)は、医療デバイスから、医療デバイス(
図1の102等)によって送達されているインスリンの量を示す信号を受信し得、プロセッサは、送達されるインスリンの総量(例えば、体積)を、例えば、インスリン送達履歴として、メモリ(
図1の123または163等)内に維持し得る。インスリン送達履歴は、例えば、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、医師との予約間の期間、数年、または同等物に及び得る。例示的プロセス905では、医療管理デバイス(
図1の106等)のプロセッサは、センサ(
図1の104等)からのグルコース測定値の受信に応答して、医療デバイスがインスリン送達履歴のある期間にわたって固定個人化基底率を下回ってインスリンを送達していることを決定し得る(915)。固定個人化基底率を下回ってインスリンを送達することの結果は、負のインスリン残量値である。925では、プロセッサは、負のインスリン残量値が、ユーザの1日の総インスリンベースの1時間あたり基底値の3倍を上回ることを決定し得る。負のインスリン残量値がユーザの1日の総インスリンベースの1時間あたり基底値の数倍(3、6、2.5、または同等物等)を上回ることに応答して、医療デバイスによるインスリンの送達は、1日あたりベースの総基底量または個人化されたインスリンの体積を送達するように改変され得る(935)。945では、通知メッセージが、出力され、ユーザに、インスリンの改変された送達量に肯定応答すること、または送達のための較正されたインスリンの量を計算する際のプロセッサによる使用のための新しい較正値のための要件を要求し得る。
【0057】
プロセス905は、955に継続し、プロセス905は、新しい較正値のための要求のユーザ肯定応答が受信されたかどうかを決定し得る。インスリンの改変された送達量のユーザ肯定応答の受信に応答して、医療デバイスは、インスリンの改変された送達量を継続する(962)。新しい較正値の受信に応答して、プロセッサは、新しい較正値を生成し(965)、新しい較正値は、プロセッサによって、送達のためのインスリンの較正された量を計算するために適用される(975)。
【0058】
種々の実施例では、本負のIOB決定が、ユーザのTDIベースの1時間あたり基底値の3倍を上回る場合、APアルゴリズムは、TDIベースの基底量または個人化されたインスリンの体積の送達に戻り、ユーザにそれを知らせることができる。ユーザ入力が、通知メッセージを介して、ユーザがシステム状態に肯定応答すること、または新しい較正値のための要件のために要求されることができる。システム100は、通知メッセージが肯定応答される、または較正が打ち込まれるまで、基底量を送達することができる。さらに、システム100は、ユーザ肯定応答および/または、本実施例では、持続グルコースモニタ(CGM)であり得る、センサ104の較正の実施に応答して、負のIOB決定に先立って、ある様式で動作を再開することができる。
【0059】
開示されるものは、
図1を参照して説明されるもの等の薬物送達システム内のセンサ(104等)およびポンプ102および/または管理デバイス(106等)のいずれか間のもの等の通信問題の決定および解決に関する、実施例である。
【0060】
図7Bは、
図1に示される例示的薬物送達システム等の薬物送達システム内の通信問題に応答して安全制約の実施例を実装するための、プロセスのフローチャートを示す。種々の実施例では、センサ104からの測定値がAPアルゴリズムによって受信されていないシナリオ(例えば、センサ104からの欠落値)下では、システム100は、
図7Bに示される例示的プロセス705に従って応答し得る。
図7Bの実施例では、プロセス705は、センサ104からの最後の既知の値(または複数の値)に基づいて、応答し得る。例えば、715では、121、141、または161等のプロセッサは、いくつかのグルコース測定値をセンサ104から受信し得る。実施例では、いくつかのグルコース測定値の各グルコース測定値は、ある期間にわたって規則的時間間隔で受信され得、規則的時間間隔は、その期間未満である。当然ながら、規則的時間間隔は、
図7Aの議論において述べられたものの同等物であってもよい。プロセッサは、725において、いくつかの受信されたグルコース測定値のうちの少なくとも1つを使用して、将来のグルコース値を予測し得る。例えば、プロセッサ上で実行されるAPアルゴリズムが値を受信する度に、将来の時間間隔において受信されるべき将来のグルコース値が、予測され得る。プロセッサは、後続グルコース測定値が次の規則的時間間隔内に受信されていないことを決定し得る(735)。例えば、センサ104からのグルコース測定値が、予期されるが、受信されていないとき、システム100は、センサ104からの最後の受信された値が受信されたときに生成された予測されるグルコース値を使用することができる。例えば、後続グルコース測定値が到着されていないことの決定に応答して、1日の総インスリンベースの基底送達率は、予測されるいくつかの将来のグルコース測定値のうちの少なくとも1つに基づいて、医療デバイスによって提供されるように調節され得る(745)。プロセッサは、命令を
図2の102等の医療デバイスに発行し得、したがって、インスリンは、755において、調節された1日の総インスリンベースの基底送達率に従って、医療デバイス102を介して送達され得る。
【0061】
さらなる実施例では、インスリンは、信頼された予測期間にわたって、調節された1日の総インスリンベースの基底送達率に従って、医療デバイスを介して送達され得る。さらなる実施例では、プロセッサはさらに、最後に受信されたグルコース測定値が前のグルコース測定値の特定の範囲内にあって、信頼された予測期間が所定の数の規則的時間間隔に対応する持続時間に及ぶことに応答して、インスリンの送達を一時停止することを決定し得る。その間にインスリンの送達が一時停止されるべき期間は、最後に受信されたグルコース測定値の値がグルコース測定値の複数の範囲の特定の範囲内に該当することに基づいて決定され得る。それに応答して、インスリンの送達を一時停止するための期間は、いくつかの事前に設定された期間から選択され得、プロセッサは、選択された期間にわたって、インスリンの送達を一時停止し得る。
【0062】
代替として、医療デバイスは、許容される「信頼された予測」期間にわたって、以前の予測されるグルコース値(および対応するインスリン投薬量値)を使用して、インスリンを送達し得る。さらに別の実施例では、インスリン送達は、センサ104からの最後の受信された値が、閾値を上回り、インスリンのベースライン率を上回って送達することが予測される場合、継続することができ、予測は、15分またはより長い時間にわたって使用されることができる。
【0063】
センサ104からの値が、信頼された予測期間が終了する前に再開しない場合、APアルゴリズム応答は、センサ104からの最後の受信された値(または複数の値)およびAPアルゴリズムによるそれに基づく予測に依存し得る。種々の実施例では、APアルゴリズムは、例えば、以下の表に従って、管理デバイス106を介して、インスリン送達量と、可能性として、ユーザへの通知とで応答することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0064】
種々の実施例では、上記で参照される各サイクル(例えば、制御サイクル)は、限定ではないが、約5分、8分、または同等物を含む、任意の持続時間であることができる。
【0065】
種々の実施例では、APアルゴリズムは、恒久的または一時的に、グルコースレベルのみ、グルコースレベルおよびAPアルゴリズム予測、またはAPアルゴリズム予測のみに応答して、延長ボーラスの延長部分を減退させてもよい。種々の実施例では、APアルゴリズムは、グルコースレベルのみ、グルコースレベルおよびAPアルゴリズム予測、またはAPアルゴリズム予測のみに応答して、延長ボーラスの延長部分を自動的に中止してもよい。延長ボーラスの延長部分は、将来の自動化または手動インスリン投薬決定のための補正または食事IOBに適用されてもよい。補正IOBに適用される場合、APアルゴリズムは、低血糖症においてより保守的であってもよい。補正IOBに適用される場合、APアルゴリズムは、高血糖症においてより保守的であってもよい。
【0066】
他の事例では、システム100は、下記に説明されるように、救助的炭水化物を摂取する等、システムの応答を低血糖事象応答に限定してもよい。例えば、ユーザが低血糖事象(例えば、グルコース濃度が、70mg/dL低血糖閾値を下回る)を被る場合では、ユーザは、即効性の炭水化物を摂取し、ユーザの血糖を迅速に増加させることによって対応し得る。これは、システム100にとって事前通知なしの食事であって、これは、システム100によってグルコースの非常に高速増加として見なされる潜在性を有する。それに応答して、システム100は、付加的インスリンを送達し、これらの炭水化物を補償することによって応答し得る。しかしながら、これは、ユーザのグルコースレベルを増加させるために特異的に炭水化物が摂取されたため、好ましい応答ではなくなり得、ユーザは、これらの炭水化物に対抗するためにインスリンを受容することを所望し得ない。
【0067】
ある実施例では、プロセッサは、メモリ内に記憶されるプログラミングコードを実行することによって、グルコースモニタ(
図1のセンサ104等)によって提供される測定値に基づいて、低血糖事象が生じていることを決定するための機能を実施してもよい。低血糖事象が生じていることの決定に応答して、システム100は、121、141、または161等のプロセッサを介して、調節されたインスリン基底率を修正してもよい。例えば、プロセッサは、低血糖事象の発生の決定に続いて、所定の期間にわたって、投薬計算のために使用される医療デバイスの低減された一時的基底率を設定することによって、調節されたインスリン基底率を修正してもよい。代替として、システム100は、プロセッサを介して、低血糖事象の発生の決定後にグルコース変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、投薬計算において使用され得る低減された一時的基底率を設定してもよい。別の代替では、システム100は、低血糖事象の発生の決定に続いて、血糖(
図1の104等のセンサによって測定された)が所定の閾値を上回るまで、投薬計算において使用され得る低減された一時的基底率を設定してもよい。
【0068】
例えば、そのようなシナリオを検出する(例えば、システム100が低血糖事象に対処するための即効性の炭水化物の摂取を検出する)ための技法が、本明細書に説明され、以下の検出技法、すなわち、1)ある閾値(例えば、2mg/dL/分)を超える、グルコース濃度の高速増加率の検出、2)一連のうちの第1の値が第1の閾値を下回るときの、ある一連のグルコース濃度値を横断したグルコース濃度の高速増加率の検出(例えば、一連のうちの第1の値が70mg/dLの低血糖閾値を下回るとき、(1)におけるような高速変化率を検出する)、3)一連のうちの任意の値が第2の閾値を下回るときの、グルコース濃度の高速増加率の検出(例えば、一連のうちの任意の値が120mg/dLのシステム標的グルコースを下回るとき、(1)におけるような高速変化率を検出する)、および/または4)所定の閾値より高いグルコース濃度の二次導関数(例えば、加速度)の高速変化の検出(例えば、任意の数の点を横断したグルコース濃度の変化率の有意な変化、例えば、グルコース濃度の2mg/dL/分の減少~2mg/dL/分の増加を見出す)を含み得る。
【0069】
図10は、グルコース濃度または測定値の高速増加率に対する応答の実施例を実装するための、例示的プロセスのフローチャートである。
図10の実施例では、APアルゴリズム等のプログラミングコードを実行する、プロセッサが、プロセス1000を実施し得る。プロセッサは、グルコースモニタによって規則的時間間隔で測定されるような一連のグルコース濃度値を取得するように動作可能であり得る(1010)。プロセッサは、グルコース濃度の高速増加率を検出し得、グルコース濃度または測定値の高速増加率の検出に反応して、グルコース濃度の高速増加率への応答を実装し得る(1020)。
【0070】
例えば、低血糖事象に対処するための即効性の炭水化物の摂取を示す、グルコース濃度の高速増加率を検出する(例えば、上記の検出技法を使用して)ことに応答して、低血糖事象に対処するための即効性の炭水化物の摂取の検出に対する応答(例えば、システム100による)が、実装され得る(1030)。ある実施例では、システム100内のプロセッサは、プログラミングコードを実行することに応じて、下記に説明されるもの等の、グルコース濃度の高速増加率への応答を実装するとき、機能を実施するように動作可能であり得る。グルコース濃度の高速増加率に応答して、即効性の炭水化物の摂取の検出(グルコース濃度の高速増加率に基づいて)に対する応答を実装し得る、プログラミングコードを実行するプロセッサを介してシステムによって実装される技法の実施例は、下記に説明され、以下のうちの1つ以上のものを含み得る。
【0071】
i.事象後、規定された持続時間(例えば、25分)にわたって、APアルゴリズム推奨送達量をユーザに個人化された送達最大量(例えば、基底量以下)に限定する。
【0072】
ii.低血糖事象後、変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、APアルゴリズム推奨送達量をユーザに個人化された送達最大量(例えば、基底量以下)に限定する。
【0073】
iii.低血糖事象後、グルコースが所定の閾値を上回るまで、APアルゴリズム推奨送達量をユーザに個人化された送達最大量(例えば、基底量以下)に限定する。
【0074】
iv.技法i、ii、またはiiiの任意の組み合わせを用いて、インスリンのAPアルゴリズム送達量を限定する。
【0075】
v.低血糖事象後、所定の期間にわたって、APアルゴリズム利得、コスト関数、および/または積極性を低減させる。APアルゴリズム利得は、例えば、ユーザのグルコースがインスリンの単位あたりで変化するであろう量のインジケーションである、モデル利得であり得る。コスト関数は、例えば、設定点からのグルコース誤差値の脱線の測定値であり得る。設定点は、例えば、標的グルコース値(例えば、113mg/dL)であり得、これは、実施例では、約110~120mg/dLまたは同等物の範囲内に設定され得る。一般に、グルコース測定値が、標的グルコース値から離れるほど(より高くなるか、またはより低くなるかのいずれか)、コスト関数によって生成されたコスト値は、より高くなる一方、標的グルコース値により近いグルコース測定値は、より低いコスト値を有する。ある実施例では、コスト関数は、測定されたグルコースおよび予期されるグルコースにおける逸脱および/または予期されるインスリンの量および基底インスリン量における逸脱に関連し得る。積極性は、コスト関数における逸脱に対するAPアルゴリズムの応答性に関連し得る。積極性は、APアルゴリズムが、コスト関数を低減させ、グルコース測定値を設定点に向かわせるように定める速度と見なされ得る。高積極性設定は、グルコース測定値を設定点に迅速に向かわせようと試み得る一方、低積極性設定は、グルコース値をより平滑に補正し得る。
【0076】
vi.低血糖事象後、グルコースが所定の閾値を上回るまで、APアルゴリズム利得、コスト関数、および/または積極性を低減させる。
【0077】
vii.低血糖事象後、変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、APアルゴリズム利得、コスト関数、および/または積極性を低減させる。
【0078】
viii.技法v、vi、またはviiの任意の組み合わせを用いて、インスリンのAPアルゴリズム送達を限定する。
【0079】
ix.低血糖事象に続いて、所定の期間にわたって、グルコース変化率フィルタを実装する。
図4は、変化率フィルタが、APアルゴリズムによって行われる予測に影響を及ぼし、将来の血糖値のより低い推定軌道をもたらし得る様子の実施例を図示する。変化率フィルタは、APアルゴリズムによって認められる(それによって作用される)、またはそれに提供される、グルコースの変化率を限定するために、APアルゴリズムを実行するプロセッサ(プロセッサ121、141、または161等)によって使用され得る。例えば、グルコース測定値は、グルコースセンサによって提供されてもよい。複数のグルコース測定値を使用して、グルコース測定値の変化率が、決定され得る。変化率フィルタは、APアルゴリズムによって利用されるグルコース測定値の変化率の減退または増幅のいずれかを行うために使用され得る。変化率フィルタの適用は、例えば、プロセッサが、グルコース測定値が所定の閾値を初めて下回ったことを決定したときから、またはグルコースが誘起された後に所定の閾値を上回った状態になるときから、ある持続時間にわたって限定され得る。例えば、変化率が、救助的炭水化物摂取に続いて、高くなる(例えば、4mg/dL)場合、変化率フィルタは、アルゴリズムによって認められる変化率を、炭水化物に対するAPアルゴリズム応答を低減させるために、70mg/dLを上回った状態に戻った後、30分にわたって2mg/dLに限定することができる。
【0080】
x.低血糖事象に続いて、変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、グルコース変化率フィルタを実装する。
【0081】
xi.低血糖事象に続いて、グルコースが所定の閾値を上回るまで、グルコース変化率フィルタを実装する。
【0082】
xii.常時、グルコース変化率フィルタを実装する。
【0083】
xiii.変化率フィルタは、正および負の両方の変化率または正の変化率のみのためのものであってもよい。
【0084】
xiv.技法ix、x、xi、xii、またはxiiiの任意の組み合わせを使用して、グルコース変化率フィルタを実装する。
【0085】
xv.システム100は、低血糖事象に続いて、所定の期間にわたって、投薬計算のために使用され得る、低減された標的血糖値を設定することができる。
【0086】
xvi.システム100は、低血糖事象後、グルコース変化率が所定の閾値を下回って減少するまで、投薬計算のために使用され得る、低減された標的血糖値を設定することができる。
【0087】
xvii.システム100は、グルコースが所定の閾値を上回るまで、投薬計算のために使用され得る、低減された標的血糖値を設定することができる。
【0088】
xviii.システム100は、上記の技法xv、xvi、またはxviiの任意の組み合わせのために、低減された標的血糖値を設定することができる。
【0089】
全ての前述の所定の閾値は、ユーザ定義される、固定される、APアルゴリズムパラメータを使用して経時的に適合される、またはTDIまたはTDI派生物に基づいてユーザに個人化されてもよい。加えて、投薬計算のために使用される一時的基底率を低減させる等の他の応答も、他の実施例を参照してさらに詳細に説明される。
【0090】
図1のシステム実施例に戻ると、システム100内の管理デバイス106の管理デバイスプロセッサ161は、人工膵臓アルゴリズムを含む、プログラミング命令の実行に応じて、種々の機能を実施するように動作可能であり得る。例えば、管理デバイスプロセッサは、ユーザに送達されるべきインスリンの回数および投薬量を決定し得る。回数および投薬量は、ユーザの性別、ユーザの年齢、ユーザの体重、ユーザの身長、および/またはセンサによって提供されるグルコースレベルに基づいて計算されてもよい。
【0091】
ある実施例では、管理デバイスプロセッサ161は、低血糖事象の発生を決定し得る。低血糖事象の発生の決定に応答して、管理デバイスプロセッサは、所定の期間にわたって、グルコース変化率フィルタを実装し得る。グルコース変化率フィルタは、インスリンの送達のための時間および送達されているインスリンの投薬量の決定の際に人工膵臓アルゴリズムによって使用される測定された血糖値における変化率を限定し得る。管理デバイスプロセッサは、無線リンク110を介して、医療デバイスに、インスリンの決定された投薬量を、送達するための決定された時間に送達するように命令し得る。管理デバイスプロセッサ161は、測定されたグルコース値が低血糖事象に関連する所定の閾値を最初に下回ったとき、低血糖事象の発生後、測定されたグルコース値が別の所定の閾値を上回った状態になるときから、グルコース変化率がさらなる所定の閾値を下回って減少するまで、またはグルコースが付加的所定の閾値を上回るまでを含む、1つ以上の限定を適用することによって、グルコース変化率フィルタの実装のための持続時間を限定し得る。
【0092】
管理デバイスプロセッサ161はさらに、常時、正および負のグルコース変化率の両方が決定されるとき、または正のグルコース変化率のみが決定されるときのうちの1つにおいて、グルコース変化率フィルタを適用するように動作可能であり得る。
【0093】
別の実施例では、管理デバイスプロセッサ161はさらに、人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、閉ループ動作モードから開ループ動作モードに変化すること、ある事象の検出後、設定期間にわたって、またはある事象が終わるまで、ユーザのために個人化された基底送達率に従って、最大インスリン送達量を制約することであって、事象は、低血糖事象と異なる事象である、こと、低血糖事象の検出後、設定期間にわたって、または低血糖事象が終わるまで、設定された個人化基底率を送達すること、事象の検出後、設定期間にわたって、または事象が終わるまで、プロセッサによって使用されるような変化率を限定すること、または変化率フィルタが、常時、または低血糖事象に続いて、人工膵臓アルゴリズムによる応答を限定するように適用されるようにすることのうちの1つを実施するように動作可能である。
【0094】
いくつかのシナリオでは、インスリン送達量は、例えば、低血糖事象の発生または差し迫った発生の場合、所望に応じて急速に(例えば、回復するために好適な率で)、減退されない場合がある。例えば、システム100は、ユーザのグルコース値が閾値を下回る、または閾値を下回って低減される傾向にある場合、システム100を伴わずにユーザが受容し得るインスリンの量またはそれを下回ってインスリン送達量を減退させ得る。しかしながら、ユーザが差し迫った低血糖リスクを有するときでも、システム100が所望に応じて急速にインスリン送達量を減退させず、プロセッサに、例えば、医療デバイスにインスリンを送達させるように導き得るというリスクが存在し得る。
図11は、インスリンの一時停止の尤度を増加させる応答の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートを示す。プロセス1100では、例えば、システム100内のグルコースセンサに結合されるプロセッサは、インスリン送達が低血糖事象または差し迫った低血糖事象から回復するために好適な率で減退していないことを決定し得る(1110)。それに応答して、プロセッサは、安全制約を適用し、インスリンをさらに低減させ得る。
【0095】
例えば、プロセッサは、プロセッサによって実行されるAPアルゴリズムおよび説明される安全制約を介してプロセッサ反応を修正する、前述の技法を利用して、本より低速の減退に対処し得る。1120では、プロセッサは、以下の様式において、そのようなシナリオに対処し得る。
【0096】
a.種々の実施例では、人工膵臓アルゴリズムによって行われる計算が、インスリン送達要求がユーザ入力基底送達量を下回る場合、推定された転帰のペナルティを低減させることによって、インスリンの一時停止の尤度を増加させ得る、または
【0097】
b.種々の実施例では、人工膵臓アルゴリズムによって行われる計算が、ユーザ入力基底送達量に比例するように、ユーザ入力基底量を下回るインスリン送達量の逸脱をスケーリングすることによって、インスリンの一時停止の尤度を増加させ得る。
【0098】
他の実施例では、システム100は、いくつかの技法を使用して、低血糖リスクの増加を誘発し得る運動または他の活動の間、インスリン送達量が減退されていない、他のシナリオを管理してもよい。例えば、システム100は、運動または活動等のシステム100に対する外部擾乱がグルコース濃度の低減および低血糖リスクの増加を生じさせるとき、インスリン送達量を減退させることができる。システム100は、本外部擾乱を自動的に検出し得る。代替として、外部擾乱は、ユーザによってシステム100に知らされる、または示されてもよい(例えば、医療デバイス102および/または管理デバイス106上のユーザインターフェース(図示せず)を通して)。
図12は、インスリン送達量を減退させる応答の実施例を実装するための、プロセス実施例のフローチャートである。例示的プロセス1200では、システム100内のグルコースセンサに結合されるプロセッサは、グルコース濃度を維持する、または低血糖事象または差し迫った低血糖事象を軽減させるために好適な率で、インスリン送達が減退していないことを決定し得る(1210)。それに応答して、プロセッサは、安全制約を適用し、インスリンをさらに低減させ得る。例えば、プロセッサは、制御標的(すなわち、グルコース設定点)を現在の標的より高いグルコース値まで(例えば、より低い現在の標的から150mg/dLまたは同等物まで)増加させることによって、制御標的グルコース値を改変し得る。代替として、システム100は、入力基底値を現在の入力基底値より低い値に(例えば、ユーザの入力基底量の約25%)低減させ得る(1220)。種々の実施例では、システム100は、インスリン送達における付加的上界を被り得る(例えば、システム100は、ユーザの入力基底量の約75%を上回るインスリン送達量を要求し得ない)。安全制約の適用の結果、インスリン送達量をより高速率で減退させ、グルコース濃度を維持する(1230)。
【0099】
いくつかの実施例では、システム100は、ユーザに関連する十分なインスリン履歴を有していない場合がある。それに応答して、インスリン送達履歴データおよびグルコース値履歴データは、システム100によって、事実上閉ループ動作モード内で動作するように使用されることができる。閉ループモード内にあるとき、既知のインスリン履歴が存在しない場合、ユーザがIOBを有するリスクが存在し得、APアルゴリズムは、必要より多くのインスリンを送達し得る。本明細書における技法は、システム100が十分な履歴動作データを有していない場合がある、そのようなシナリオに対処することができる。
【0100】
種々の実施例では、システム100が、閉ループ動作を開始するとき、十分なグルコース履歴を有していない場合、システム100は、以下の方法のうちの1つにおいて応答し得る。
【0101】
I.ユーザに、非基底インスリン量が前の持続時間において送達されたかどうかのクエリをプロンプトする。回答が、「はい」である場合、インスリンのAPアルゴリズム最大送達量を設定時間量にわたって所定の値に限定する(例えば、送達量を2時間にわたってユーザの基底量の1.5倍に限定する)。
【0102】
II.非基底インスリン用量が前の持続時間内に送達されたかどうかのクエリに対するユーザ応答を要求する。回答が、「はい」(すなわち、肯定応答)である場合、ユーザに、送達されるインスリンの量と、随意にまた、かかった時間を打ち込ませる。本情報を使用して、ユーザのIOBが、計算され、インスリンを送達する安全のために、APアルゴリズムに提供されることができる。IOBは、予測アルゴリズムによって使用されてもよい、またはIOBが残っている間、直接、送達されるべきインスリンの量を限定してもよい。または
【0103】
III.閉ループモードを開始するとき、十分なインスリン履歴が存在しない場合、APアルゴリズムによって、設定時間量にわたって、最大送達量を所定の値(例えば、100~120mg/dL等)に限定する。
【0104】
図1のシステム実施例に戻ると、管理デバイス106の管理デバイスプロセッサ161は、人工膵臓アルゴリズムの実行に応じて、付加的機能を実施するように動作可能であり得る。
【0105】
例えば、管理デバイスプロセッサ161は、人工膵臓アルゴリズムの閉ループ動作の開始に応じて、人工膵臓アルゴリズムによる使用のための十分なグルコース履歴が利用不可能である(すなわち、グルコース履歴が不十分である)ことを決定し得る。十分なグルコース履歴が利用不可能であることの決定に応答して、管理デバイスプロセッサは、ユーザに、送達されるインスリンの量を管理デバイスに打ち込むように要求し得る。要求はまた、インスリンが送達された時間またはそれ以降の推定経過時間に関する要求を含んでもよい。送達されるインスリンの量を受信することに応答して、ユーザのインスリン残量が、送達されるインスリンの量に基づいて計算され得る。随意に、インスリンが送達された時間またはインスリン送達以降の推定経過時間が、提供される場合、これらの個別の時間または経過時間が、計算内に含まれてもよい。例えば、管理デバイスプロセッサは、インスリンが送達される時間のみが提供される場合、経過時間を決定するように動作可能であり得る。管理デバイスプロセッサは、計算されたユーザのインスリン残量を使用して、ユーザの計算されたインスリン残量が所定の閾値を下回ることになるとき、ユーザの個人化されたインスリン減衰曲線の利用を決定し得る。代替として、管理デバイスプロセッサは、十分なグルコース履歴が利用不可能であることの決定に応答して、設定時間量にわたって、インスリンの最大送達量を所定の値に限定するか、または非基底インスリン用量が前の持続時間内に送達されたかどうかのクエリに対するユーザ応答を要求するかのいずれかを行い得る。
【0106】
いくつかの実施例では、APアルゴリズム/システム設定点は、種々の入力または事象(例えば、運動または食事の摂取)に応答して変化する。システム100は、ユーザを具体的標的または設定点(例えば、所望のグルコースレベル)に維持するように動作することができる。種々の実施例では、システム100は、ユーザが、あるシナリオ下またはある事例のために、システム100の設定点を設定または変化させることを可能にし得る。種々の実施例では、システム100は、ユーザが、ユーザ定義時間量にわたって、一時的に、システム100の設定点を設定または変化させることを可能にし得、その満了後、システム100は、前の標的に戻り得る。
【0107】
種々の実施例では、設定点は、異なる設定点が1日の異なる時間区画にわたって設定されている、プロファイルとして定義されてもよい。標的血糖レベルは、各時間区画において自動的に変化し得る。種々の実施例では、設定点が変化する場合、システム100は、ステップ変化に急激に応答し、多すぎるまたは少なすぎるインスリンを送達し得る。システム100がステップ変化に応答することを防止するために、APアルゴリズムによる予測は、標的変化の量だけ偏移され得る。これは、予測が標的のステップ変化によって影響されることを防止することができる。
【0108】
いくつかの実施例では、APアルゴリズムを介して実装される安全制約は、APアルゴリズムが、
図3において表されるもの等のセンサ収差、すなわち、雑音および値のステップ変化に応答することを可能にし得る。例えば、技法が、システム100がセンサ104の収差または非生理学的である急激なステップ変化に対する応答を事実上管理することを可能にする。例えば、センサ104の非生理学的収差が、雑音が多いセンサ104によって、またはセンサ104上にかかる圧力等のセンサ104との物理的相互作用によって、またはセンサ104に衝突または衝打することによって引き起こされ得る。システム100は、センサ104からの値の本突然の変化に応答し、薬物を誤って送達し得る。本明細書に説明される技法は、以下の方法において、すなわち、A)センサ値傾向のみを決定することによって、B)1つの方向におけるセンサ値傾向に続いて、反対傾向を決定し、傾向の突然の変化を検出することによって、C)センサ値の変化率を決定することによって、および/またはD)一次導関数または他のフィルタリングが使用され得ることを決定することによって、本望ましくない応答に対処し、そのような事象がシステム100によって検出されることを可能にすることができる。加えて、または代替E)として、いくつかの実施例では、104等のセンサ内の加速度計から取得されるデータが、傾向と組み合わせて使用されてもよい。例えば、圧力誘発センサ問題は、例えば、人物が睡眠中であるとき、より高い率で生じ得、したがって、加速度計データを介した睡眠検出もまた、インシデントの検出を向上させるために使用されてもよい。加速度計データはまた、センサまたは送達ユニットに対する影響を感知し、検出を向上させるために使用されてもよい。例えば、プロセッサは、センサが圧力誘発センサ問題を被っているとき、加速度計データを処理し、人物の睡眠または配向を検出してもよい。
【0109】
種々の実施例では、上記に列挙された事象A-Eのいずれかの検出に応じて、システム100は、以下の方法のいずれかにおいて応答し得る。すなわち、AA)APアルゴリズムは、閉ループ動作から開ループ動作への変化等、モードを変化させ得る、BB)事象(すなわち、上記に列挙された事象A-Eのうちの1つ)の検出後、設定期間にわたって、または事象が終わるまで、システム100をユーザに個人化された最大送達量(例えば、基底量)に制約する、CC)事象の検出後、設定期間にわたって、または事象が終わるまで、設定された個人化率(例えば、基底率)を送達する、DD)APアルゴリズムは、事象の検出後、設定期間にわたって、または事象が終わるまで、システム100によって使用されるような変化率を限定し得る、またはEE)変化率フィルタは、常時、または低血糖事象に続いて、APアルゴリズムによる応答を限定するように実装され得る。
【0110】
APアルゴリズムに適用され、システム100内のプロセッサによって実行されるような安全制約は、特に、センサが持続グルコースモニタであるとき、センサ較正に対するシステム応答を制御し得る。例えば、センサ較正が要求され得る、ある状況下では、センサ値の結果として生じるステップ変化が存在し得る。それに応答して、システム100は、そのようなステップ変化に応答して、薬物を送達し得る。例えば、それに予測が基づき得る、システム100の現在の状態は、各制御ステップにおける入力センサ値に依存し得る。これらのセンサ値は、ユーザ入力基準較正値(例えば、指穿刺)に依存し得、センサ読取値と較正のために使用される指穿刺値との間に有意な相違が存在する場合、有意に変化し得る。
【0111】
これらのセンサ値の高速変化は、グルコース濃度における実際の傾向の真の反映ではない、グルコース軌道の人工ステップ変化(例えば、
図3に示されるような較正ジャンプ)を導入し得る。さらに、較正時の指穿刺血糖(BG)値とCGM値との間の有意な相違の存在は、較正基準入力に先立ってシステム100に入力されたCGM値およびそれらのCGM値に起因する状態推定が、殆ど信頼性がなく、現在の状態を反映させ得ないことを意味する。したがって、これらの事象が、検出されるとき、APアルゴリズムの予測「軌道」は、現在の新しいCGM値に合致する平坦値にリセットされる。
図3は、新しいCGM値に基づいて予測軌道を調節する実施例を図示する。
【0112】
種々の実施例では、本再初期化は、正および負のステップ変化のために実装されてもよい。種々の実施例では、本再初期化は、血糖値の負のステップ変化は、数サイクルのみにわたってインスリン送達における低減または一時停止を誘発し得、これが、容認可能であり得るため、較正に起因する血糖値の正のステップ変化のみに限定されてもよい。
【0113】
例えば、
図1のシステム100では、121、141、または161等のプロセッサは、それによってプロセッサが1つ以上のグルコース測定値をセンサ104等のグルコースモニタから受信する、プロセスを実行するように動作可能であり得る。プロセッサはまた、ユーザ入力基準較正値を受信し得る。1つ以上のグルコース値およびユーザ入力基準較正値を使用して、プロセッサは、グルコースモニタからの1つ以上のグルコース値とユーザ入力基準較正値との間の相違を識別し得る。識別された相違に基づいて、プロセッサは、調節されたインスリン基底送達率を修正し得る。
【0114】
いくつかの実施例では、識別された相違に基づいて調節されたインスリン基底送達率を修正することに先立って、プロセッサは、識別された相違に基づいて、グルコースモニタを較正し得る。プロセッサはさらに、識別された相違が送達されているインスリンの量の正のステップ変化であることを決定し得る。正のステップ変化は、例えば、送達されるインスリンの量の増加であり得る。識別された相違が正のステップ変化であることに応答して、プロセッサは、現在の新しい血糖測定値を較正されたグルコースモニタから取得し得る。現在の新しい血糖測定値を取得後、プロセッサは、現在の新しい血糖値を使用して、識別された相違に基づいて、調節されたインスリン基底送達率を修正し得る。代替として、識別された相違は、送達されるインスリンの量の減少である、負のステップ変化であると決定され得る。識別された相違が負のステップ変化であることに応答して、プロセッサは、識別された相違に基づいて調節されたインスリン基底送達率を修正することに先立って、所定の時間量にわたって、インスリンの送達を一時停止するための命令を提供し得る。
【0115】
薬物送達システム(例えば、システム100またはその任意の構成要素)のための安全制約を提供するための本明細書に説明される技法は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせ内に実装されることができる。例えば、システム100またはその任意の構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせ内に実装されることができる。本明細書に説明される技法のソフトウェア関連実装は、限定ではないが、ファームウェア、特定用途向けソフトウェア、または1つ以上のプロセッサによって実行され得る、任意の他のタイプのコンピュータ可読命令を含むことができる。本明細書に説明される技法のハードウェア関連実装は、限定ではないが、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)、および/またはプログラマブル論理デバイス(PLD)を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される技法および/または本明細書に説明される任意のシステムまたは構成体である構成要素は、1つ以上のメモリ構成要素上に記憶されるコンピュータ可読命令を実行するプロセッサとともに実装されることができる。
【0116】
開示されるデバイスのいくつかの実施形態は、例えば、機械(すなわち、プロセッサまたはマイクロコントローラ)によって実行される場合、機械に、本開示の実施形態による方法および/または動作を実施させ得る、命令または命令のセットを記憶し得る、記憶媒体、コンピュータ可読媒体、または製造品を使用して実装されてもよい。そのような機械は、例えば、任意の好適な処理プラットフォーム、コンピューティングプラットフォーム、コンピューティングデバイス、処理デバイス、コンピューティングシステム、処理システム、コンピュータ、プロセッサ、または同等物を含んでもよく、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の好適な組み合わせを使用して実装されてもよい。コンピュータ可読媒体または物品は、例えば、任意の好適なタイプのメモリユニット、メモリデバイス、メモリ物品、メモリ媒体、記憶デバイス、記憶物品、記憶媒体、および/または記憶ユニット、例えば、メモリ(非一過性メモリを含む)、リムーバブルまたは非リムーバブル媒体、消去可能または非消去可能媒体、書込可能または再書込可能媒体、デジタルまたはアナログ媒体、ハードディスク、フロッピーディスク、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD-ROM)、記録可能コンパクトディスク(CD-R)、再書込可能コンパクトディスク(CD-RW)、光ディスク、磁気媒体、磁気光学媒体、リムーバブルメモリカードまたはディスク、種々のタイプのデジタル多用途ディスク(DVD)、テープ、カセット、または同等物を含んでもよい。命令は、ソースコード、コンパイルコード、解釈コード、実行可能コード、静的コード、動的コード、暗号化コード、プログラミングコード、および同等物等の任意の好適なタイプのコードを含み、任意の好適な高レベル、低レベル、オブジェクト指向、ビジュアル、コンパイル、および/または解釈プログラミング言語を使用して実装されてもよい。非一過性コンピュータ可読媒体具現化プログラミングコードは、プロセッサに、プログラミングコードを実行すると、本明細書に説明されるもの等の機能を実施させ得る。
【0117】
本開示のある実施例または実施形態が、上記に説明された。しかしながら、本開示は、それらの実施形態に限定されず、むしろ、本明細書に明示的に説明された内容への追加および修正もまた開示される実施例の範囲内に含まれることが意図されることに明示的に留意されたい。さらに、本明細書に説明される種々の実施例の特徴は、相互に排他的ではなく、開示される実施例の精神および範囲から逸脱することなく、種々の組み合わせおよび順列内に存在し得ることを理解されたい(そのような組み合わせまたは順列が、本明細書で明示的に行われない場合でも)。実際、本明細書に説明された内容の変形例、修正、および他の実装は、開示される実施例の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。したがって、開示される実施例は、先行する例証的説明のみによって定義されないものとする。