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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/47 20230101AFI20250225BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20250225BHJP
   H04N 25/533 20230101ALI20250225BHJP
【FI】
H04N25/47
H04N23/60
H04N25/533
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022527612
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021017017
(87)【国際公開番号】W WO2021241120
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2020093556
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】児玉 和俊
【審査官】奥田 雄介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066803(WO,A1)
【文献】特開2019-134271(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/47
H04N 25/533
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換して電気信号を生成する複数の光電変換素子を有する光電変換部と、
前記複数の光電変換素子のうちの所定領域のノイズレベルに応じて閾値を設定する設定部と、
前記複数の光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量が前記閾値を超えた場合に検出信号を検出する第1検出部と、
を備え
前記設定部は、前記所定領域における前記光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が、所定期間において前記閾値を超えた数に基づき、前記閾値を段階的に設定する、撮像装置。
【請求項2】
前記所定領域の前記光電変換素子は、遮光されており、
前記所定領域以外の前記光電変換素子は、それぞれが入射光を光電変換して前記電気信号を生成する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数の光電変換素子は、2次元の行列状に配置されており、前記遮光されている遮光領域は、行単位の前記光電変換素子の配置、及び列単位の前記光電変換素子の配置の少なくとも一方に対応する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記行単位の前記光電変換素子の配置、及び前記列単位の前記光電変換素子の配置は、前記2次元の行列状に配置された前記複数の光電変換素子の端部を含む、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1検出部は、前記電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が第1閾値を超えたときに第1検出信号を検出するとともに、前記電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が第2閾値を超えたときに第2検出信号を検出し、
前記設定部は、
前記所定領域における電変換素子で生成された前記電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が、所定期間において前記第1閾値を超えた数に基づき、前記第1閾値を設定し、
前記所定領域における電変換素子で生成された前記電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が、所定期間において前記第2閾値を超えた数に基づき、前記第2閾値を設定する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記設定部は、時間経過にしたがい、前記閾値の変化率を減少させる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記閾値の変化率を減少させ、初期設定置に漸近させる、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記設定部は、前記閾値を第1段階の閾値に設定した後に、前記変化率を減少させ、所定の設定値に漸近させる、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記設定部は、所定期間において前記閾値を超えた数が所定値未満である場合に、前記閾値を変更しない、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記設定部は、前記複数の光電変換素子に対応する温度に応じて、前記閾値を設定する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記設定部は、前記温度変化が大きくなるに従い、前記閾値の変化率を大きくする、請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記第1検出部は、前記所定領域の光電変換素子の前記電気信号を順繰りに読み出し、
前記設定部は、前記閾値を超えた前記検出信号の数を所定期間にわたってカウントする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
遮光された光電変換素子のノイズレベルに応じて閾値を設定し、
それぞれが入射光を光電変換して電気信号を生成する複数の光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が前記閾値を超えた場合に検出信号を検出する、撮像方法であって、
前記遮光された光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が、所定期間において前記閾値を超えた数に基づき、前記閾値を段階的に設定する、撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イベントドリブン方式の撮像装置の一つとして、DVS(Dynamic Vision Sensor)と呼ばれる非同期型の撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。非同期型の撮像装置では、シーンの中で何らかのイベント(例えば、動き)が発生したときだけ、当該イベントによって生じる輝度レベルの変化した部分のデータの取得が行われる。従って、非同期型の撮像装置は、固定フレームレートで不必要に画像の全てのデータを取得する一般的な同期型の撮像装置よりも遥かに高速に画像データを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-535999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DVSは、感度に優れるため、撮像装置内の光電変換素子のノイズによる電気信号の変化にも反応してしまい、本来的には動きがないシーンであっても、イベントを発生させるおそれがある。また、本来は必要な無駄なイベントを発生させることにより、DVSの消費電力が増大してしまう。
【0005】
そこで、本開示では、無駄なイベントを発生させるおそれがない撮像装置及び撮像方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、光電変換して電気信号を生成する複数の光電変換素子を有する光電変換部と、
前記複数の光電変換素子のうちの所定領域のノイズレベルに応じて閾値を設定する設定部と、
前記複数の光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量が前記閾値を超えた場合に検出信号を検出する第1検出部と、
を備える、撮像装置が提供される。
【0007】
前記所定領域の前記光電変換素子は、遮光されており、
前記所定領域以外の光電変換素子は、それぞれが入射光を光電変換して電気信号を生成してもよい。
【0008】
前記複数の光電変換素子は、2次元の行列状に配置されており、前記遮光されている遮光領域は、行単位の前記光電変換素子の配置、及び列単位の前記光電変換素子の配置の少なくとも一方に対応してもよい。
【0009】
前記行単位の前記光電変換素子の配置、及び前記列単位の前記光電変換素子の配置は、前記2次元の行列状に配置された前記複数の光電変換素子の端部を含のでもよい。
【0010】
前記設定部は、前記所定領域における光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が、所定期間において前記閾値を超えた数に基づき、前記閾値を設定してもよい。
【0011】
前記第1検出部は、前記電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が第1閾値を超えたときに第1検出信号を検出するとともに、前記電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が第2閾値を超えたときに第2検出信号を検出し、
前記設定部は、
前記所定領域における電変換素子で生成された前記電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が、所定期間において前記第1閾値を超えた数に基づき、前記第1閾値を設定し、
前記所定領域における電変換素子で生成された前記電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が、所定期間において前記第2閾値を超えた数に基づき、前記2閾値を設定してもよい。
【0012】
前記設定部は、前記所定期間において前記閾値を超えた数に基づき、前記閾値を段階的に設定してもよい。
【0013】
前記設定部は、時間経過にしたがい、前記閾値の変化率を減少させてもよい。
【0014】
前記設定部は、前記閾値の変化率を減少させ、初期設定置に漸近させてもよい。
【0015】
前記設定部は、前記閾値を第1段階の閾値に設定した後に、前記変化率を減少させ、所定の設定値に漸近させてもよい。
【0016】
前記設定部は、前記所定期間において前記閾値を超えた数が所定値未満である場合に、前記閾値を変更しなくてもよい。
【0017】
設定部は、前記複数の光電変換素子に対応する温度に応じて、前記閾値を設定してもよい。
【0018】
前記設定部は、前記温度変化が大きくなるに従い、前記閾値の変化率を大きくしてもよい。
【0019】
前記第1検出部は、前記所定領域の光電変換素子の前記電気信号を順繰りに読み出し、
前記設定部は、前記閾値を超えた前記検出信号の数を所定期間にわたってカウントしてもよい。
【0020】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、 遮光された光電変換素子のノイズレベルに応じて閾値を設定し、
それぞれが入射光を光電変換して電気信号を生成する複数の光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が前記閾値を超えた場合に検出信号を検出する、撮像方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示に係る技術が適用される撮像システムのシステム構成の一例を示すブロック図。
図2】本開示の第1構成例に係る撮像装置の構成の一例を示すブロック図。
図3】画素アレイ部の構成の一例を示すブロック図。
図4】画素の回路構成の一例を示す回路図。
図5】アドレスイベント検出部の第1構成例を示すブロック図。
図6】遮光画素のアドレスイベント検出部の第1構成例を示すブロック図。
図7】電流電圧変換部の構成の一例を示す回路図。
図8】アドレスイベント検出部における減算器及び量子化器の構成の一例を示す回路図。
図9】アドレスイベント検出部の第2構成例を示すブロック図。
図10】遮光画素のアドレスイベント検出部の第2構成例を示すブロック図。
図11】本開示の第2構成例に係る撮像装置の構成の一例を示すブロック図。
図12】撮像装置の積層型のチップ構造の概略を示す分解斜視図。
図13】第1構成例に係る撮像装置のカラム処理部の構成の一例を示すブロック図。
図14】ノイズイベントと温度との関係を示す模式図。
図15】閾値制御部の処理例を示すフローチャート。
図16】並列処理における閾値制御部の処理例を示すフローチャート。
図17図15及び図16のステップS1000の処理例を示すフローチャート。
図18図17で示す処理例を模式的に示す図。
図19図17で示す処理を3周期行った処理例を示す図。
図20】第1閾値と、第2閾値とを独立に調整する処理例を示すフローチャート。
図21】第1閾値と、第2閾値と、を独立に調整する処理例を模式的に示す図。
図22】並列処理における第1閾値と、第2閾値とを独立に調整する処理例を示すフローチャート。
図23】閾値を段階的に変更する例を示すフローチャート。
図24図23で示す処理例を模式的に示す図。
図25】第1閾値を段階的に変更する例を示すフローチャート。
図26】第1閾値を段階的に変更する例を模式的に示す図。
図27】第2閾値を段階的に変更する例を示すフローチャート。
図28】第2閾値を段階的に変更する例を模式的に示す図。
図29】不感帯を設けた例を示すフローチャート。
図30】不感帯を設けた第2閾値を段階的に変更する例を模式的に示す図。
図31】温度変化に応じて閾値の変更量を変更する例を示すフローチャート。
図32】温度変化に応じて閾値の変更量を変更する例を模式的に示す図。
図33】第1実施形態の変形例に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
図34】本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図。
図35】撮像部及び車外情報検出部の設置位置の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、撮像装置及び撮像方法の実施形態について説明する。以下では、撮像装置の主要な構成部分を中心に説明するが、撮像装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本開示に係る技術が適用される撮像システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、本開示に係る技術が適用される撮像システム10は、撮像レンズ11、記録部12、制御部13及び、撮像装置20、を備える構成となっている。この撮像システム10は、本開示の電子機器の一例であり、当該電子機器としては、産業用ロボットに搭載されるカメラシステムや、車載カメラシステムなどを例示することができる。
【0025】
上記の構成の撮像システム10において、撮像レンズ11は、被写体からの入射光を取り込んで撮像装置20の撮像面上に結像する。撮像装置20は、撮像レンズ11によって取り込まれた入射光を画素単位で光電変換して撮像データを取得する。この撮像装置20として、後述する本開示の撮像装置が用いられる。
【0026】
撮像装置20は、撮像した画像データに対して、画像認識処理等の所定の信号処理を実行し、その処理結果と、後述するアドレスイベントの検出信号(以下、単に「検出信号」と記述する場合がある)とを示すデータを記録部12に出力する。アドレスイベントの検出信号の生成方法については後述する。記録部12は、信号線14を介して撮像装置20から供給されるデータを記憶する。制御部13は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、撮像装置20における撮像動作の制御を行う。
【0027】
[第1構成例に係る撮像装置(アービタ方式)]
図2は、本開示に係る技術が適用される撮像システム10における撮像装置20として用いられる、第1構成例に係る撮像装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本開示の撮像装置としての第1構成例に係る撮像装置20は、DVSと呼ばれる非同期型の撮像装置であり、画素アレイ部21、駆動部22、アービタ部(調停部)23、カラム処理部24、信号処理部25、及び設定部26を備える構成となっている。また、設定部26は、カウント部26aと、閾値制御部26bとを有する。
【0029】
上記の構成の撮像装置20において、画素アレイ部21には、複数の画素30が行列状(アレイ状)に2次元配列されている。この行列状の画素配列に対して、画素列毎に、後述する垂直信号線VSLが配線される。
【0030】
複数の画素30のそれぞれは、光電流に応じた電圧のアナログ信号を画素信号として生成する。また、複数の画素30のそれぞれは、光電流の変化量が所定の閾値を超えたか否かにより、アドレスイベントの有無を検出する。そして、アドレスイベントが生じた際に画素30は、リクエストをアービタ部23に出力する。
【0031】
また、画素アレイ部21には、光を遮断する遮光領域21aが設けられている。一方で、遮光領域21a以外の画素アレイ部21には、受光領域21bが設けられている。
【0032】
遮光領域21aは、例えば上端部における行単位の複数の画素30に対応して設けられる。或いは、列単位の複数の画素30に対応して設けてもよい。このように、遮光領域21aは、画素アレイ部21の上端部、下端部、左端部、右端部の少なくともいずれかに、複数の画素30を覆うように、設けられている。遮光領域21aの画素30の構成は、光が入射しないことを除き、遮光領域21a以外の画素30と同等の構成である。これにより、遮光領域21aにおける複数の画素30は、例えば暗時ノイズによる電流の変化量が所定の閾値を超えたか否かにより、アドレスイベントの有無を検出する。また、本実施形態では、遮光領域21aの画素30を遮光画素30と称する場合がある。
温度センサ21cは、画素アレイ部21における複数の画素30に対応する温度を取得し、温度情報を含む信号を設定部26の閾値制御部26bに供給する。
【0033】
駆動部22は、遮光領域21a以外の受光領域21bに配置される複数の画素30のそれぞれを駆動して、各画素30で生成された画素信号をカラム処理部24に出力させる。
【0034】
アービタ部23は、複数の画素30のそれぞれからのリクエストを調停し、調停結果に基づく応答を画素30に送信する。アービタ部23からの応答を受け取った画素30は、検出結果を示す検出信号(アドレスイベントの検出信号)を駆動部22及び信号処理部25に供給する。画素30からの検出信号の読出しについては、複数行読出しとすることも可能である。
【0035】
カラム処理部24は、例えば、アナログ-デジタル変換器から成り、画素アレイ部21の画素列毎に、その列の画素30から出力されるアナログの画素信号をデジタル信号に変換する処理を行う。そして、カラム処理部24は、アナログ-デジタル変換後のデジタル信号を信号処理部25に供給する。
【0036】
信号処理部25は、カラム処理部24から供給されるデジタル信号に対して、CDS(Correlated Double Sampling)処理や画像認識処理などの所定の信号処理を実行する。そして、信号処理部25は、処理結果を示すデータと、アービタ部23から供給される検出信号とを信号線14を介して記録部12(図1参照)に供給する。
【0037】
設定部26は、アドレスイベントの有無を検出する際の閾値を設定する。この設定部26は、例えば複数の遮光画素30のノイズレベルに応じて閾値を設定する。カウント部26aは、遮光画素30で発生したアドレスイベントをカウントする。
【0038】
閾値制御部26bは、カウント部26aがカウントしたアドレスイベントの数に応じて、アドレスイベントの有無を検出する際の閾値を、後述するアドレスイベント検出部33に設定する。閾値制御部26bは例えばレジスタを有しており、レジスタによりアドレスイベントの閾値、及びアドレスイベントの発生数の閾値を設定することが可能である。なお、閾値制御部26bの詳細は後述する。
【0039】
[画素アレイ部の構成例]
図3は、画素アレイ部21の構成の一例を示すブロック図である。
【0040】
複数の画素30が行列状に2次元配列されて成る画素アレイ部21において、複数の画素30のそれぞれは、受光部31、画素信号生成部32、及び、アドレスイベント検出部33を有する構成となっている。
【0041】
上記の構成の画素30において、受光領域21bの受光部31は、入射光を光電変換して光電流を生成する。そして、受光部31は、駆動部22(図2参照)の制御に従って、画素信号生成部32及びアドレスイベント検出部33のいずれかに、光電変換して生成した光電流を供給する。
【0042】
一方で、遮光画素の受光部31は、例えば暗電流などのノイズ成分に対応する出力電流を出力する。そして、遮光画素の受光部31は、駆動部22(図2参照)の制御に従って、アドレスイベント検出部33に、ノイズ成分に対応する電流を供給する。
【0043】
画素信号生成部32は、受光領域21bの受光部31から供給される光電流に応じた電圧の信号を画素信号SIGとして生成し、この生成した画素信号SIGを、垂直信号線VSLを介してカラム処理部24(図2参照)に供給する。
【0044】
アドレスイベント検出部33は、受光領域21bの受光部31のそれぞれからの光電流の変化量が所定の閾値を超えたか否かにより、アドレスイベントの有無を検出する。アドレスイベント(以下では単に「イベント」と称する場合がある)は、例えば、光電流の変化量が上限の第1閾値を超えた旨を示すオンイベント、及び、その変化量が下限の第2閾値を下回った旨を示すオフイベントから成る。また、アドレスイベントの検出信号は、例えば、オンイベントの検出結果を示す1ビット、及び、オフイベントの検出結果を示す1ビットから成る。なお、アドレスイベント検出部33については、オンイベントのみを検出する構成とすることもできる。
【0045】
一方で、遮光画素のアドレスイベント検出部33は、遮光画素の受光部31のそれぞれが出力する出力電流の変化量が所定の閾値を超えたか否かにより、アドレスイベントの有無を検出する。アドレスイベントは、例えば、出力電流の変化量が上限の第1閾値を超えた旨を示すオンイベント、及び、その変化量が下限の第2閾値を下回った旨を示すオフイベントから成る。また、アドレスイベントの検出信号は、例えば、オンイベントの検出結果を示す1ビット、及び、オフイベントの検出結果を示す1ビットから成る。なお、アドレスイベント検出部33については、オンイベントのみ、又はオフイベントのみを検出する構成とすることもできる。
【0046】
アドレスイベントが発生した際に、受光領域21bのアドレスイベント検出部33は、アドレスイベントの検出信号の送信を要求するリクエストをアービタ部23(図2参照)に供給する。そして、アドレスイベント検出部33は、リクエストに対する応答をアービタ部23から受け取ると、アドレスイベントの検出信号を駆動部22及び信号処理部25に供給する。
【0047】
一方で、遮光画素のアドレスイベント検出部33は、アドレスイベントが発生した際に、アドレスイベントの検出信号を設定部26のカウント部26aに供給する。そして、カウント部26aは、オンイベント、及び、オフイベントそれぞれの数をカウントし、カウント数を閾値制御部26bに供給する。このような構成にすることにより、遮光画素のアドレスイベント検出部33は、受光領域21bのアドレスイベント検出部33と異なる経路でイベント情報を含む検出信号を設定部26に供給可能である。
【0048】
[画素の回路構成例]
図4は、画素30の回路構成の一例を示す回路図である。上述したように、複数の画素30のそれぞれは、受光部31、画素信号生成部32、及び、アドレスイベント検出部33を有する構成となっている。
【0049】
上記の構成の画素30において、受光部31は、受光素子(光電変換素子)311、転送トランジスタ312、及び、OFG(Over Flow Gate)トランジスタ313を有する構成となっている。転送トランジスタ312及びOFGトランジスタ313としては、例えば、N型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタが用いられる。転送トランジスタ312及びOFGトランジスタ313は、互いに直列に接続されている。
【0050】
受光領域21bの受光素子311は、転送トランジスタ312とOFGトランジスタ313との共通接続ノードNとグランドとの間に接続されており、入射光を光電変換して入射光の光量に応じた電荷量の電荷を生成する。
【0051】
一方で、遮光画素の受光素子311は、転送トランジスタ312とOFGトランジスタ313との共通接続ノードNとグランドとの間に接続されており、ノイズ成分に応じた電荷量の電荷を生成する。遮光画素の受光素子311の転送トランジスタ312は、常にOFF状態であり、画素信号生成部32への電荷供給は停止されている。このため、遮光画素30は、転送トランジスタ312及び画素信号生成部32を有さない構成でもよい。
【0052】
受光領域21bの転送トランジスタ312のゲート電極には、図2に示す駆動部22から転送信号TRGが供給される。転送トランジスタ312は、転送信号TRGに応答して、受光素子311で光電変換された電荷を画素信号生成部32に供給する。
【0053】
OFGトランジスタ313のゲート電極には、駆動部22から制御信号OFGが供給される。OFGトランジスタ313は、制御信号OFGに応答して、受光素子311で生成された電気信号をアドレスイベント検出部33に供給する。アドレスイベント検出部33に供給される電気信号は、電荷からなる光電流である。
【0054】
画素信号生成部32は、リセットトランジスタ321、増幅トランジスタ322、選択トランジスタ323、及び、浮遊拡散層324を有する構成となっている。リセットトランジスタ321、増幅トランジスタ322、及び、選択トランジスタ323としては、例えば、N型のMOSトランジスタが用いられる。
【0055】
画素信号生成部32には、受光部31から転送トランジスタ312によって、受光素子311で光電変換された電荷が供給される。受光部31から供給される電荷は、浮遊拡散層324に蓄積される。浮遊拡散層324は、蓄積した電荷の量に応じた電圧値の電圧信号を生成する。すなわち、浮遊拡散層324は、電荷を電圧に変換する。
【0056】
リセットトランジスタ321は、電源電圧VDDの電源ラインと浮遊拡散層324との間に接続されている。リセットトランジスタ321のゲート電極には、駆動部22からリセット信号RSTが供給される。リセットトランジスタ321は、リセット信号RSTに応答して、浮遊拡散層324の電荷量を初期化(リセット)する。
【0057】
増幅トランジスタ322は、電源電圧VDDの電源ラインと垂直信号線VSLとの間に、選択トランジスタ323と直列に接続されている。増幅トランジスタ322は、浮遊拡散層324で電荷電圧変換された電圧信号を増幅する。
【0058】
選択トランジスタ323のゲート電極には、駆動部22から選択信号SELが供給される。選択トランジスタ323は、選択信号SELに応答して、増幅トランジスタ322によって増幅された電圧信号を画素信号SIGとして垂直信号線VSLを介してカラム処理部24(図2参照)へ出力する。
【0059】
上記の構成の画素30が2次元配置されて成る画素アレイ部21を有する撮像装置20において、駆動部22は、図1に示す制御部13により受光領域21bのアドレスイベントの検出開始が指示されると、受光部31のOFGトランジスタ313に制御信号OFGを供給することによって当該OFGトランジスタ313を駆動してアドレスイベント検出部33に光電流を供給させる。
【0060】
一方で、駆動部22は、図1に示す制御部13により遮光画素のアドレスイベントの検出開始が指示されると、遮光画素の受光部31のOFGトランジスタ313に制御信号OFGを供給することによって当該OFGトランジスタ313を駆動してアドレスイベント検出部33に出力電流を供給させる。
【0061】
そして、受光領域21bの画素30においてアドレスイベントが検出されると、駆動部22は、その画素30のOFGトランジスタ313をオフ状態にしてアドレスイベント検出部33への光電流の供給を停止させる。次いで、駆動部22は、転送トランジスタ312に転送信号TRGを供給することによって当該転送トランジスタ312を駆動して、受光素子311で光電変換された電荷を浮遊拡散層324に転送させる。
【0062】
このようにして、上記の構成の画素30が2次元配置されて成る画素アレイ部21を有する撮像装置20は、アドレスイベントが検出された受光領域21bの画素30の画素信号のみをカラム処理部24に出力する。一方で、遮光画素30は、アドレスイベントの検出にのみ使用される。これにより、アドレスイベントの有無に関わらず、全画素の画素信号を出力する場合と比較して、撮像装置20の消費電力や、画像処理の処理量を低減することができる。
【0063】
尚、ここで例示した画素30の構成は一例であって、この構成例に限定されるものではない。例えば、画素信号生成部32を備えない画素構成とすることもできる。この画素構成の場合は、受光部31において、OFGトランジスタ313を省略し、当該OFGトランジスタ313の機能を転送トランジスタ312に持たせるようにすればよい。
【0064】
[アドレスイベント検出部の第1構成例]
図5は、受光領域21bのアドレスイベント検出部33の第1構成例を示すブロック図である。図6は、遮光画素のアドレスイベント検出部33の第1構成例を示すブロック図である。図5及び6に示すように、本構成例に係るアドレスイベント検出部33は、電流電圧変換部331、バッファ332、減算器333、量子化器334、及び、転送部335を有する構成となっている。
【0065】
電流電圧変換部331は、画素30の受光部31からの光電流を、その対数の電圧信号に変換する。電流電圧変換部331は、変換した電圧信号をバッファ332に供給する。バッファ332は、電流電圧変換部331から供給される電圧信号をバッファリングし、減算器333に供給する。
【0066】
減算器333には、駆動部22から行駆動信号が供給される。減算器333は、行駆動信号に従って、バッファ332から供給される電圧信号のレベルを低下させる。そして、減算器333は、レベル低下後の電圧信号を量子化器334に供給する。量子化器334は、減算器333から供給される電圧信号をデジタル信号に量子化してアドレスイベントの検出信号として転送部335に出力する。
【0067】
図5に示すように、受光領域21bの転送部335は、量子化器334から供給されるアドレスイベントの検出信号をアービタ部23等に転送する。この転送部335は、アドレスイベントが検出された際に、アドレスイベントの検出信号の送信を要求するリクエストをアービタ部23に供給する。そして、転送部335は、リクエストに対する応答をアービタ部23から受け取ると、アドレスイベントの検出信号を駆動部22及び信号処理部25に供給する。
【0068】
一方で、図6に示すように、遮光画素の転送部335は、量子化器334から供給されるアドレスイベントの検出信号を設定部26に転送する。
【0069】
続いて、アドレスイベント検出部33における電流電圧変換部331、減算器333、及び、量子化器334の構成例について説明する。
【0070】
(電流電圧変換部の構成例)
図7は、アドレスイベント検出部33における電流電圧変換部331の構成の一例を示す回路図である。図7に示すように、本例に係る電流電圧変換部331は、N型トランジスタ3311、P型トランジスタ3312、及び、N型トランジスタ3313を有する回路構成となっている。これらのトランジスタ3311~3313としては、例えば、MOSトランジスタが用いられる。
【0071】
N型トランジスタ3311は、電源電圧VDDの電源ラインと信号入力線3314との間に接続されている。P型トランジスタ3312及びN型トランジスタ3313は、電源電圧VDDの電源ラインとグランドとの間に直列に接続されている。そして、P型トランジスタ3312及びN型トランジスタ3313の共通接続ノードNには、N型トランジスタ3311のゲート電極と、図5、及び図6に示すバッファ332の入力端子とが接続されている。
【0072】
P型トランジスタ3312のゲート電極には、所定のバイアス電圧Vbiasが印加される。これにより、P型トランジスタ3312は、一定の電流をN型トランジスタ3313に供給する。N型トランジスタ3313のゲート電極には、信号入力線3314を通して、受光部31から光電流が入力される。
【0073】
N型トランジスタ3311及びN型トランジスタ3313のドレイン電極は電源側に接続されており、このような回路はソースフォロワと呼ばれる。これらのループ状に接続された2つのソースフォロワにより、受光部31からの光電流は、その対数の電圧信号に変換される。
【0074】
(減算器及び量子化器の構成例)
図8は、アドレスイベント検出部33における減算器333及び量子化器334の構成の一例を示す回路図である。
【0075】
本例に係る減算器333は、容量素子3331、インバータ回路3332、容量素子3333、及び、スイッチ素子3334を有する構成となっている。
【0076】
容量素子3331の一端は、図5及び図6に示すバッファ332の出力端子に接続され、その他端は、インバータ回路3332の入力端子に接続されている。容量素子3333は、インバータ回路3332に対して並列に接続されている。スイッチ素子3334は、容量素子3333の両端間に接続されている。スイッチ素子3334にはその開閉制御信号として、駆動部22から行駆動信号が供給される。スイッチ素子3334は、行駆動信号に応じて、容量素子3333の両端を接続する経路を開閉する。インバータ回路3332は、容量素子3331を介して入力される電圧信号の極性を反転する。
【0077】
上記の構成の減算器333において、スイッチ素子3334をオン(閉)状態とした際に、容量素子3331のバッファ332側の端子に電圧信号Vinitが入力され、その逆側の端子は仮想接地端子となる。この仮想接地端子の電位を、便宜上、ゼロとする。このとき、容量素子3331に蓄積されている電荷Qinitは、容量素子3331の容量値をCとすると、次式(1)により表される。一方、容量素子3333の両端は、短絡されているため、その蓄積電荷はゼロとなる。
init=C×Vinit ・・・(1)
【0078】
次に、スイッチ素子3334がオフ(開)状態となり、容量素子3331のバッファ332側の端子の電圧が変化してVafterになった場合を考えると、容量素子3331に蓄積される電荷Qafterは、次式(2)により表される。
after=C×Vafter ・・・(2)
【0079】
一方、容量素子3333に蓄積される電荷Qは、容量素子3333の容量値をCとし、出力電圧をVoutとすると、次式(3)により表される。
=-C×Vout ・・・(3)
【0080】
このとき、容量素子3331及び容量素子3333の総電荷量は変化しないため、次の式(4)が成立する。
init=Qafter+Q ・・・(4)
【0081】
式(4)に式(1)乃至式(3)を代入して変形すると、次式(5)が得られる。
out=-(C/C)×(Vafter-Vinit) ・・・(5)
【0082】
式(5)は、電圧信号の減算動作を表し、減算結果の利得はC/Cとなる。通常、利得を最大化することが望まれるため、Cを大きく、Cを小さく設計することが好ましい。一方、Cが小さすぎると、kTCノイズが増大し、ノイズ特性が悪化するおそれがあるため、Cの容量削減は、ノイズを許容することができる範囲に制限される。また、画素30毎に減算器333を含むアドレスイベント検出部33が搭載されるため、容量素子3331や容量素子3333には、面積上の制約がある。これらを考慮して、容量素子3331,3333の容量値C,Cが決定される。
【0083】
図8において、量子化器334は、コンパレータ3341を有する構成となっている。コンパレータ3341は、インバータ回路3332の出力信号、即ち、減算器430からの電圧信号を非反転(+)入力とし、所定の閾値電圧Vthを反転(-)入力としている。そして、コンパレータ3341は、減算器430からの電圧信号と所定の閾値電圧Vthとを比較し、比較結果を示す信号をアドレスイベントの検出信号として転送部335に出力する。
【0084】
[アドレスイベント検出部の第2構成例]
図9は、受光領域21bのアドレスイベント検出部33の第2構成例を示すブロック図である。図10は、遮光画素のアドレスイベント検出部33の第2構成例を示すブロック図である。図9、及び図10に示すように、本構成例に係るアドレスイベント検出部33は、電流電圧変換部331、バッファ332、減算器333、量子化器334、及び、転送部335の他に、記憶部336及び制御部337を有する構成となっている。
【0085】
記憶部336は、量子化器334と転送部335との間に設けられており、制御部337から供給されるサンプル信号に基づいて、量子化器334の出力、即ち、コンパレータ3341の比較結果を蓄積する。記憶部336は、スイッチ、プラスチック、容量などのサンプリング回路であってもよいし、ラッチやフリップフロップなどのデジタルメモリ回路でもあってもよい。
【0086】
制御部337は、設定部26の閾値制御部26bの制御信号に従い、コンパレータ3341の反転(-)入力端子に対して所定の閾値電圧Vthを供給する。制御部337からコンパレータ3341に供給される閾値電圧Vthは、時分割で異なる電圧値であってもよい。例えば、制御部337は、光電流の変化量が上限の閾値を超えた旨を示すオンイベントに対応する閾値電圧Vth1、及び、その変化量が下限の閾値を下回った旨を示すオフイベントに対応する閾値電圧Vth2を異なるタイミングで供給することで、1つのコンパレータ3341で複数種類のアドレスイベントの検出が可能になる。
【0087】
記憶部336は、例えば、制御部337からコンパレータ3341の反転(-)入力端子に、オフイベントに対応する閾値電圧Vth2が供給されている期間に、オンイベントに対応する閾値電圧Vth1を用いたコンパレータ3341の比較結果を蓄積するようにしてもよい。尚、記憶部336は、画素30の内部にあってもよいし、画素30の外部にあってもよい。また、記憶部336は、アドレスイベント検出部33の必須の構成要素ではない。すなわち、記憶部336は、無くてもよい。
【0088】
[第2構成例に係る撮像装置(スキャン方式)]
上述した第1構成例に係る撮像装置20は、非同期型の読出し方式にてイベントを読み出す非同期型の撮像装置である。但し、イベントの読出し方式としては、非同期型の読出し方式に限られるものではなく、同期型の読出し方式であってもよい。同期型の読出し方式が適用される撮像装置は、所定のフレームレートで撮像を行う通常の撮像装置と同じ、スキャン方式の撮像装置である。
【0089】
図11は、本開示に係る技術が適用される撮像システム10における撮像装置20として用いられる、第2構成例に係る撮像装置、即ち、スキャン方式の撮像装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0090】
図11に示すように、本開示の撮像装置としての第2構成例に係る撮像装置20は、画素アレイ部21、駆動部22、信号処理部25、設定部26、読出し領域選択部27、及び信号生成部28を備える構成となっている。
【0091】
画素アレイ部21は、複数の画素30を含む。複数の画素30は、読出し領域選択部27の選択信号に応答して出力信号を出力する。複数の画素30のそれぞれについては、例えば図6に示すように、画素内に量子化器を持つ構成とすることもできる。複数の画素30は、光の強度の変化量に対応する出力信号を出力する。複数の画素30は、図11に示すように、行列状に2次元配置されていてもよい。
【0092】
また、図2と同様に、画素アレイ部21には、光を遮断する遮光領域21aと、遮光領域21a以外の受光領域21bとが設けられている。遮光領域21aは、行単位の複数の画素30の配置、及び列単位の複数の画素30の配置の少なくとも一方に対応する。また、遮光領域21aは、画素アレイ部21の上端部、下端部、左端部、右端部の少なくともいずれかに設けられる。このように、遮光領域21aは、画素アレイ部21の端部の複数の画素30を覆うように、設けられている。遮光領域21aの画素30の構成は、光が入射しないことを除き、受光領域21b以外の画素30と同等の構成としてもよい。これにより、遮光領域21aにおける複数の画素30は、ノイズによる電流の変化量が所定の閾値を超えたか否かにより、アドレスイベントの有無を検出する。
【0093】
駆動部22は、複数の画素30のそれぞれを駆動して、各画素30で生成された画素信号を信号処理部25に出力させる。尚、駆動部22及び信号処理部25については、階調情報を取得するための回路部である。従って、イベント情報のみを取得する場合は、駆動部22及び信号処理部25は無くてもよい。
【0094】
読出し領域選択部27は、画素アレイ部21に含まれる複数の画素30のうちの一部を選択する。例えば、読出し領域選択部27は、画素アレイ部21に対応する2次元行列の構造に含まれる行のうちのいずれか1つもしくは複数の行を選択する。読出し領域選択部27は、予め設定された周期に応じて1つもしくは複数の行を順次選択する。また、読出し領域選択部27は、画素アレイ部21の各画素30からのリクエストに応じて選択領域を決定してもよい。
【0095】
信号生成部28は、読出し領域選択部27によって選択された画素の出力信号に基づいて、選択された画素のうちのイベントを検出した活性画素に対応するイベント信号を生成する。イベントは、光の強度が変化するイベントである。活性画素は、出力信号に対応する光の強度の変化量が予め設定された第1閾値を超える、又は、第2閾値を下回る画素である。例えば、信号生成部28は、電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が第1閾値を超えたときに第1検出信号を検出するとともに、電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が第2閾値を超えたときに第2検出信号を検出する。そして、第1検出信号又は第2検出信号を検出した画素を活性画素とし、活性画素に対応するイベント信号を生成する。
【0096】
信号生成部28については、例えば、信号生成部28に入ってくる信号を調停するような列選択回路を含む構成とすることができる。また、信号生成部28については、イベントを検出した活性画素の情報の出力のみならず、イベントを検出しない非活性画素の情報も出力する構成とすることができる。
【0097】
信号生成部28からは、出力線15を通して、イベントを検出した活性画素のアドレス情報及びタイムスタンプ情報(例えば、(X,Y,Ton), (X,Y,Toff)が出力される。但し、信号生成部28から出力されるデータについては、アドレス情報及びタイムスタンプ情報だけでなく、フレーム形式の情報(例えば、(0,0,1,0,・・・))であってもよい。Tonは、オンイベントを検出した時間を示し、Toffはオフイベントを検出した時間を示す。
【0098】
設定部26のカウント部26aは、活性画素のアドレス情報及びタイムスタンプ情報(例えば、(X,Y,Ton)、(X,Y,Toff)を用いて、所定期間内のオンイベント、及び、オフイベントそれぞれの数をカウントし、カウント数を閾値制御部26bに供給する。カウント部29aは、オンイベント、又はオフイベントの一方をカウントし、カウント数を閾値制御部26bに供給してもよい。
【0099】
[チップ構造の構成例]
上述した第1構成例又は第2構成例に係る撮像装置20のチップ(半導体集積回路)構造としては、例えば、積層型のチップ構造を採ることができる。図12は、撮像装置20の積層型のチップ構造の概略を示す分解斜視図である。
【0100】
図12に示すように、積層型のチップ構造、所謂、積層構造は、第1のチップである受光チップ201、及び、第2のチップである検出チップ202の少なくとも2つのチップが積層された構造となっている。そして、図4に示す画素30の回路構成において、受光素子311のそれぞれが受光チップ201上に配置され、受光素子311以外の素子の全てや、画素30の他の回路部分の素子などが検出チップ202上に配置される。受光チップ201と検出チップ202とは、ビア(VIA)、Cu-Cu接合、バンプなどの接続部を介して電気的に接続される。
【0101】
尚、ここでは、受光素子311を受光チップ201に配置し、受光素子311以外の素子や画素30の他の回路部分の素子などを検出チップ202に配置する構成例を例示したが、この構成例に限られるものではない。
【0102】
例えば、図4に示す画素30の回路構成において、受光部31の各素子を受光チップ201に配置し、受光部31以外の素子や画素30の他の回路部分の素子などを検出チップ202に配置する構成とすることができる。また、受光部31の各素子、及び、画素信号生成部32のリセットトランジスタ321、浮遊拡散層324を受光チップ201に配置し、それ以外の素子を検出チップ202に配置する構成とすることができる。更には、アドレスイベント検出部33を構成する素子の一部を、受光部31の各素子などと共に受光チップ201に配置する構成とすることができる。
【0103】
[カラム処理部の構成例]
図13は、第1構成例に係る撮像装置20のカラム処理部24の構成の一例を示すブロック図である。図13に示すように、本例に係るカラム処理部24は、画素アレイ部21の画素列毎に配置された複数のアナログ-デジタル変換器(ADC)241を有する構成となっている。
【0104】
尚、ここでは、画素アレイ部21の画素列に対して、1対1の対応関係でアナログ-デジタル変換器241を配置する構成例を例示したが、この構成例に限定されるものではない。例えば、複数の画素列を単位としてアナログ-デジタル変換器241を配置し、当該アナログ-デジタル変換器241を複数の画素列間で、時分割で用いる構成とすることもできる。
【0105】
アナログ-デジタル変換器241は、垂直信号線VSLを介して供給されるアナログの画素信号SIGを、先述したアドレスイベントの検出信号よりもビット数の多いデジタル信号に変換する。例えば、アドレスイベントの検出信号を2ビットとすると、画素信号は、3ビット以上(16ビットなど)のデジタル信号に変換される。アナログ-デジタル変換器241は、アナログ-デジタル変換で生成したデジタル信号を信号処理部25に供給する。
【0106】
[ノイズイベントについて]
ところで、撮像装置20は、画素アドレス毎に、その画素の光量が所定の閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出する検出部(即ち、アドレスイベント検出部33)を画素30毎に備えた撮像装置である。
【0107】
この撮像装置では、本来、シーンの中で何らかのイベント(即ち、真イベント)が発生したとき、当該真イベントの発生に要因するデータの取得が行われる。しかし、真イベントの発生の無いシーンでも、センサノイズ等のノイズイベント(偽イベント)に要因して、無駄に、データの取得が行われる場合がある。これにより、ノイズ信号が読み出されてしまうだけでなく、信号出力のスループットを低下させることになる。以下に説明する本開示の撮像装置20は、遮光画素におけるイベント数により、真イベントと偽イベントとに対する感度調整を行うようにしたものである。
【0108】
図14は、ノイズイベントと温度との関係を示す模式図である。横軸は時間を示し、縦軸はイベント数と温度を示す。ラインL12Aは、温度の時間変化を示し、ラインL12Bは、暗時(遮光時)におけるノイズイベントである暗時イベント数の時間変化を示す。画素30は、暗時でも光電変換を行うおうことにより暗時電流を出力する。これが、暗時イベントとしてカウントされる。
【0109】
図14に示すように、暗時イベント数の時系列変化は、例えば温度の時系列変化と相関する。例えば、ノイズイベントに対する感度を下げると、ノイズイベントは減るが、真イベントの検出感度も低下してしまう。一方で、真イベントの検出感度を上げるとノイズイベントに対する感度も増加してしまう。
【0110】
このため、閾値制御部26bは、撮像装置20の状態に応じて、感度調整を行うことにより、真イベントに対する感度と、暗時ノイズを要因とする偽イベントに対する感度との調整を行う。より詳細に以下に説明する。
【0111】
図15は、設定部26の閾値制御部26bの処理例を示すフローチャートである。ここでは、遮光領域21aの遮光画素30を用いて感度調整した後に、受光領域21bの画素30によるイベントの検出を行う例を説明する。上述のように、非同期型の第1構成例に係る撮像装置と、第2構成例に係る撮像装置(スキャン方式)とでは、イベントの検出信号の読みだし方法が異なるが、非同期型の第1構成例に係る撮像装置の閾値の設定方法と、第2構成例に係る撮像装置(スキャン方式)の閾値の設定方法とは、同等の処理を行うことが可能である。
【0112】
図15に示すように、まず、閾値制御部26bは、遮光領域21aの遮光画素30のノイズレベルに応じて閾値を設定する(ステップS1000)。
【0113】
次に、受光領域21bのアドレスイベント検出部33は、受光領域21bの画素30で生成された電気信号の変化量が閾値制御部26bに設定された閾値を超えた場合に検出信号を検出する(ステップS1100)。
【0114】
次に、閾値制御部26bは、全体処理を終了するか否かを判定し(ステップS1200)、終了しない場合(ステップS1200のNO)、ステップS102からの処理を繰り返す。一方で、終了する場合(ステップS1200のYES)、全体処理を終了する。
【0115】
このように、閾値制御部26bは、遮光領域21aの遮光画素30のノイズレベルに応じて閾値を設定するので、真イベントと暗時ノイズイベントとに対する感度調整を行うことができる。
【0116】
図16は、並列処理における閾値制御部26bの処理例を示すフローチャートである。図16に示すように、遮光画素30のノイズレベルに応じた閾値の設定(ステップS1000)と、受光領域21bのアドレスイベント検出部33の検出処理(ステップS1100)とを、並列に行う。
【0117】
このように、処理を並列に行うことにより、受光領域21bのアドレスイベント検出部33のイベント検出を停止することなく、真イベントと暗時ノイズイベントとに対する感度調整を行うことができる。
【0118】
図17は、図15及び図16のステップS1000の処理例を示すフローチャートである。
図18は、図17で示す処理例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は閾値を示す。図18に示すように、オンイベントに対する第1閾値、及び、オフイベントに対する第2閾値の基準レベル(AZレベル)に対する変化量を模式的に示す。ここでは、オンイベントに対する第1閾値、及び、オフイベントに対する第2閾値の基準レベル(AZレベル)に対する変化量の絶対値を同値として扱う。例えば、第1閾値を初期設定置からVh1ボルト増加させる場合には、第2閾値を初期設定置からVh1ボルト減少させる。
【0119】
図17に示すように、閾値制御部26bは、第1閾値電圧Vth1、及び、第2閾値電圧Vth2を、遮光画素30及び受光領域21bのコンパレータ3341(図8,10を参照)の反転(-)入力端子に供給する(ステップS100)。コンパレータ3341は、電流の変化量が上限の第1閾値電圧Vth1を上側に超えた旨を示すオンイベントに対応するイベント検出信号と、第2閾値電圧Vth2を下側に超えた旨を示すオフイベントに対応するイベント検出信号を設定部26のカウント部26aに出力する。カウント部26aは、所定期間内に発生したイベント数をカウントし、閾値制御部26bに供給する(ステップS102)。
なお、図16で示す並列処理の場合には、図17で示すステップS102の所定期間は、全撮影期間である必要はなく、遮光画素のイベント数をカウントする所定期間と、遮光画素のイベント数をカウントしない期間とを交互に設けてもよい。
【0120】
第2構成例に係る撮像装置(スキャン方式)の場合には、読出し領域選択部27は、遮光領域21aに含まれる複数の画素30のうちの一部を選択する。例えば、読出し領域選択部27は、遮光領域21aに対応する2次元行列の構造に含まれる行のうちのいずれか1つもしくは複数の行を選択する。読出し領域選択部27(図11参照)は、予め設定された周期に応じて1つもしくは複数の行を順次選択し、遮光画素30の活性画素のアドレス情報及びタイムスタンプ情報(例えば、(X,Y,Ton)、(X,Y,Toff))を順繰りに読み出し、信号生成部28を介してカウント部26aに供給する。設定部26のカウント部26aは、活性画素のアドレス情報及びタイムスタンプ情報((例えば、(X,Y,Ton)、(X,Y,Toff))を用いて、所定期間内のオンイベント、及び、オフイベントそれぞれの数をカウントし、カウント数を閾値制御部26bに供給する。
【0121】
次に、閾値制御部26bは、所定時間内のイベントのカウント数(オンイベント数+オフイベント数)が所定範囲であるか否かを判定する(ステップS104)。閾値制御部26bは、イベント数が所定範囲外である場合(ステップS104のYES)、更に、イベントのカウント数が所定値以上か否かを判定する(ステップS106)。閾値制御部26bは、イベント数が所定値以上である場合(ステップS106のYES)、閾値の感度を下げる(ステップS108)。すなわち、閾値制御部26bは、画素アレイ部21全体の画素30に対して、第1閾値電圧Vth1から所定値Th1aボルト増加させ、第2閾値電圧Vth2から所定値Th1aボルト減少させる。
【0122】
一方で、イベント数が所定値未満である場合(ステップS106のNO)、閾値の感度を上げる。閾値制御部26bは、画素アレイ部21全体の画素30に対して、第1閾値電圧Vth1から所定値Th2aボルト減少させ、第2閾値電圧Vth2から所定値Th2aボルト増加させる(ステップS110)。
【0123】
一方で、イベント数が所定値未満である場合(ステップS104のNO)、閾値の感度を維持する。すなわち、閾値制御部26bは、画素アレイ部21全体の画素30に対して、第1閾値電圧Vth1及び第2閾値電圧Vth2を変更しない(ステップS112)。
【0124】
図19は、図17で示す処理を3周期行った処理例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は閾値を示す。図19に示すように、オンイベントに対する第1閾値、及び、オフイベントに対する第2閾値を時間経過とともに変動させることが可能である。
【0125】
このように、遮蔽領域21aにおける光電変換素子311で生成された電気信号の基準レベルからの変化量の絶対値が、所定期間において閾値(第1閾値電圧Vth1又は第2閾値電圧Vth2)を超えた数に基づき、閾値(第1閾値電圧Vth1又は第2閾値電圧Vth2)を設定する。これにより、遮光領域21aの遮光画素30における暗時ノイズイベントの発生数に応じて閾値制御が可能となり、真イベントと暗時ノイズイベントとに対する感度調整を行うことができる。
【0126】
図20は、オンイベントに対する第1閾値と、オフイベントに対する第2閾値と、を独立に調整する処理例を示すフローチャートである。図20に示すように、まず、閾値制御部26bは、遮光領域21aの遮光画素30のオンイベントに応じて第1閾値を設定し(ステップS1000a)、並行して、遮光領域21aの遮光画素30のオフイベントのレベルに応じて第2閾値を設定する(ステップS1000b)。
【0127】
次に、受光領域21bのアドレスイベント検出部33は、受光領域21bの画素30で生成された電気信号の変化量が閾値制御部26bに独立に設定された第1閾値又は第2閾値を超えた場合にオンイベントの検出信号、及びオフイベントの検出信号を検出する(ステップS1100)。
【0128】
図21は、オンイベントに対する第1閾値と、オフイベントに対する第2閾値と、を独立に調整する処理例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は閾値を示す。
【0129】
このように、閾値制御部26bは、遮光領域21aの遮光画素30のノイズレベルに応じて第1閾値、及び第2閾値を独立に設定する。これにより、電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が第1閾値を超える真イベントとオンイベントに対応する暗時ノイズイベントと、に対する感度調整を行うことができる。また、同時に、電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が第2閾値を超え超える真イベントとオフイベントに対応する暗時ノイズイベントと、に対する感度調整を行うことができる。このように、第1閾値と第2閾値とを独立して調整できるので、オンイベントに対応する暗時ノイズイベントと、オフイベントに対応する暗時ノイズイベントとの発生分布に統計的に偏りがある場合にも、より適切に感度調整が可能となる。
【0130】
図22は、並列処理における第1閾値と、第2閾値と、を独立に調整する処理例を示すフローチャートである。図21に示すように、閾値制御部26bは、遮光領域21aの遮光画素30のオンイベントのレベルに応じて第1閾値を設定する処理(ステップS1000a)と、並行して、遮光領域21aの遮光画素30のオフイベントのレベルに応じて第2閾値を設定する処理(ステップS1000b)と、受光領域21bのアドレスイベント検出部33の検出処理(ステップS1100)とを、並列に行う。
【0131】
このように、処理を並列に行うことにより、受光領域21bのアドレスイベント検出部33のイベント検出を停止することなく、第1閾値と第2閾値とを独立して調整できる。
【0132】
図23は、閾値の設定処理(ステップS1000)の処理において閾値を段階的に変更する例を示すフローチャートである。
図24は、図23で示す処理例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は閾値を示す。図20に示すように、オンイベントに対する第1閾値、及び、オフイベントに対する第2閾値の基準レベル(AZレベル)に対する変化量を時系列に段階的に変化させる。例えば、収束想定値である閾値に達するまでに数段階の閾値の変化を与える。ここでは、想定収束値がAZレベル+所定値Vhfである場合、所定値Th1をAZレベル+Vhf×0.8、所定値Th2をAZレベル+Thf×0.96などのように、閾値の想定収束値に時間経過とともに漸近的に近づくように変更する。
【0133】
図23に示すように、閾値制御部26bは、初期設定した閾値Th0に対する所定時間内のイベントのカウント数(オンイベント数+オフイベント数)が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。閾値制御部26bは、イベント数が所定値以上である場合(ステップS104のYES)、閾値の感度を段階的に下げる(ステップS108a)。すなわち、閾値制御部26bは、第1期間では、画素アレイ部21全体の画素30に対して、第1閾値電圧Vth1を基準レベルから所定値Th1ボルト増加させ、第2閾値電圧Vth2を基準レベルから所定値Th1ボルト減少させる。次の、第2期間では、画素アレイ部21全体の画素30に対して、第1閾値電圧Vth1を基準レベルから所定値Th2ボルト増加させ、第2閾値電圧Vth2を基準レベルから所定値Th2ボルト減少させる。この場合、(Th2-Th1)の絶対値は、(Th1-Th0)の絶対値より小さくなる。
【0134】
一方で、閾値制御部26bはイベント数が所定値未満である場合(ステップS104のNO)、現在の閾値を変更せず、全体処理を終了する。
【0135】
このように、段階的に閾値を変更するので、目的とする暗時ノイズイベン数に近い感度に設定可能である。また、段階的に閾値を変更するので、受光領域21bの画素30の時間あたりのイベントの発生数の変化を抑制しつつ閾値を変更できる。
【0136】
図25は、閾値の設定処理(ステップS1000a)の処理において第1閾値を段階的に変更する例を示すフローチャートである。図25に示すように、遮光画素のオンイベントをカウントし(ステップS102a)、所定範囲でない場合に、第1閾値を段階的に変更する(ステップS110a)。このように、第1閾値と第2閾値とを独立して調整する場合にも、第1閾値を段階的に変更する処理をおこなうことが可能である。
【0137】
図26は、第1閾値を段階的に変更する例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は第1閾値を示す。図26に示すように、初期設定された第1閾値Th0aを、第1段階目に第1閾値Th1aに変更し、第2段階目に第1閾値Th2aに変更する。このように、第1閾値粗く調整した後に、少しずつ収束させることで、発散を抑制しつつ、収束を早めることができる。なお、図26に示す処理は、閾値の設定処理(ステップS1000)にも適用可能である。
【0138】
図27は、閾値の設定処理(ステップS1000b)の処理において第2閾値を段階的に変更する例を示すフローチャートである。図27に示すように、遮光画素のオフイベントをカウントし(ステップS102b)、所定範囲でない場合に、第2閾値を段階的に変更する(ステップS110b)。このように、第1閾値と第2閾値とを独立して調整する場合にも、第2閾値を段階的に変更する処理をおこなうことが可能である。
【0139】
図28は、第2閾値を段階的に変更する例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は第1閾値を示す。図28に示すように、初期設定された第1閾値Th0bを、第1段階目に第1閾値Th1bに変更し、第2段階目に第1閾値Th2bに変更する。このように、第2閾値を粗く調整した後に、少しずつ収束させることで、発散を抑制しつつ、収束を早めることができる。なお、図28に示す処理は、閾値の設定処理(ステップS1000)にも適用可能である。
【0140】
図29は、閾値の設定処理(ステップS1000b)の処理において不感帯を設けた例を示すフローチャートである。図30は、不感帯を設けた第2閾値を段階的に変更する例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は第2閾値を示す。
【0141】
ここで、不感帯とは、第2閾値Th0b、Th1b、Th2bなどの上下に設けられている閾値を意味する。例えば、AZレベルと第2閾値Th0bの差の絶対値の前後10パーセントを不感帯とする。より具体的には、AZレベルが例えば100であり、第2閾値Th0bが50であれば、AZレベルと第2閾値Th0bの差の絶対値は(100-50)であり、差の絶対値の前後10パーセントは50×0.1=±5となる。すなわち、不感帯は、45~55の範囲となる。例えば、第2閾値Th0bの閾値を変更する場合に、第2閾値Th1bが不感帯の範囲内なら、閾値を変更せず、不感帯外なら閾値を変更する。図30では、第2閾値Th1bが第2閾値Th0bの不感帯の範囲外であるので、第2閾値Th1bの値は、第2閾値Th0bから変更されている。一方で、第2閾値Th2bが第2閾値Th1bの不感帯の範囲内であるので、第2閾値Th2bの値は、第2閾値Th1bと同値とし、変更されない。
【0142】
図29に示すように、閾値制御部26bは、オフイベント数が所定の範囲である場合(ステップS104bのNO)、変更予定の第2閾値Th1bの値が現在の第2閾値Th0bの不感帯の範囲か否かを判定する(ステップS112b)、不感帯の範囲外である場合(ステップS112bのNO)、の第2閾値Th1bの値を第2閾値Th0bから変更する。一方で、不感帯の範囲内である場合(ステップS112bのYES)、第2閾値Th1bの値を第2閾値Th0bの値に維持して処理を終了する。
このように閾値の変更すべき量が不感帯の範囲であれば、閾値を変更しないこととした。なお、図30に示す処理は、閾値の設定処理(ステップS1000、ステップS1000a)にも適用可能である。
【0143】
例えば、閾値の変更を行うと画像のばらつきを観察者は感じてしまう場合がある。このため、不感帯の範囲を大きくすると閾値が変更されず、観察者が画像のばらつきを感じすることが抑制される。一方で、不感帯の範囲を大きくすると感度調整が抑制される。このため、不感帯の範囲を調整することで、感度調整と、画像のばらつきとをバランスさせることが可能となる。
【0144】
図31は、閾値の設定処理(ステップS1000b)の処理において温度変化に応じて閾値の変更量を変更する例を示すフローチャートである。図32は、温度変化に応じて閾値の変更量を変更する例を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は第2閾値を示す。図32に示すよう、温度の時系列値Tmaの時間変化が大きい領域での第2閾値Th1bの変化量を大きくする。
【0145】
図31に示すように、閾値制御部26bは、オフイベント数が所定の範囲である場合(ステップS104bのNO)、記録部12に時系列に記録されている受光領域21bの画素30に対応する温度情報を用いて、温度の時間変化量を演算する。例えば、温度の時間差分の絶対値を演算する(ステップS116b)。温度センサ21cから取得した温度は、記録部12に時系列に記録されている。
【0146】
次に、閾値制御部26bは、温度の変化量に基づき、第2閾値の変更量を演算して、第2閾値を変更する(ステップS118b)。このように、温度の時間変化量に応じて第2閾値の変化量を調整する。図14に示すように、温度変化とノイズ変化は相関するため、温度変化が大きなタイミングで、第2閾値の変化量を大きくできるので、より効率的に感度調整が可能となる。
【0147】
以上説明したように、本実施形態によれば、閾値制御部26bが、遮光領域21aの遮光画素30のノイズレベルに応じて閾値を設定することとした。これにより、暗時ノイズイベントの発生量を調整できるので、真イベントと暗時ノイズイベントとに対する感度調整を行うことが可能となる。
【0148】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例に係る撮像システム10は、閾値を設定する演算処理部15を撮像装置20の外部に有する点で、第1実施形態に係る撮像システム10と相違する。以下に1実施形態に係る撮像システム10と相違する点を説明する。
【0149】
図33は、第1実施形態の変形例に係る撮像装置20の構成を示すブロック図である。図33では、駆動部22、アービタ部23、カラム処理部24の記載を省略している。図33に示すように、演算処理部15を撮像装置20の外部に有する。演算処理部15は、ユーザーが演算プログラムや、処理パラメータを変更可能な装置である。これにより、ユーザーが任意のアルゴリズムで閾値設定を行う事ができる。
【0150】
<本開示に係る技術の適用例>
本開示に係る技術は、様々な製品に適用することができる。以下に、より具体的な適用例について説明する。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される測距装置として実現されてもよい。
【0151】
[移動体]
図34は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図31に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0152】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図34では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0153】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0154】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0155】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0156】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0157】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0158】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0159】
ここで、図35は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0160】
尚、図35には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0161】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0162】
図34に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0163】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0164】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0165】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0166】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0167】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX、LTE(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0168】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0169】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。尚、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0170】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。尚、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0171】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0172】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0173】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0174】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0175】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図34の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0176】
尚、図34に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0177】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部7910,7912,7914,7916,7918や、車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930や、運転者状態検出部7510等に適用され得る。具体的には、これらの撮像部や検出部に対して、本開示の撮像装置を有する図1の撮像システム10を適用することができる。そして、本開示に係る技術を適用することにより、センサノイズ等のノイズイベントの影響を緩和し、真イベントの発生を確実に、かつ、迅速に感知することができるため、安全な車両走行を実現することが可能となる。
【0178】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
【0179】
(1)光電変換して電気信号を生成する複数の光電変換素子を有する光電変換部と、
前記複数の光電変換素子のうちの所定領域のノイズレベルに応じて閾値を設定する設定部と、
前記複数の光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量が前記閾値を超えた場合に検出信号を検出する第1検出部と、
を備える、撮像装置。
【0180】
(2)前記所定領域の前記光電変換素子は、遮光されており、
前記所定領域以外の光電変換素子は、それぞれが入射光を光電変換して電気信号を生成する、(1)に記載の撮像装置。
【0181】
(3)前記複数の光電変換素子は、2次元の行列状に配置されており、前記遮光されている遮光領域は、行単位の前記光電変換素子の配置、及び列単位の前記光電変換素子の配置の少なくとも一方に対応する、(2)に記載の撮像装置。
【0182】
(4)前記行単位の前記光電変換素子の配置、及び前記列単位の前記光電変換素子の配置は、前記2次元の行列状に配置された前記複数の光電変換素子の端部を含む、(3)に記載の撮像装置。
【0183】
(5)前記設定部は、前記所定領域における光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が、所定期間において前記閾値を超えた数に基づき、前記閾値を設定する、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0184】
(6)前記第1検出部は、前記電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が第1閾値を超えたときに第1検出信号を検出するとともに、前記電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が第2閾値を超えたときに第2検出信号を検出し、
前記設定部は、
前記所定領域における電変換素子で生成された前記電気信号の信号レベルが増大する方向の変化量の絶対値が、所定期間において前記第1閾値を超えた数に基づき、前記第1閾値を設定し、
前記所定領域における電変換素子で生成された前記電気信号の信号レベルが減少する方向の変化量の絶対値が、所定期間において前記第2閾値を超えた数に基づき、前記2閾値を設定する、(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0185】
(7)前記設定部は、前記所定期間において前記閾値を超えた数に基づき、前記閾値を段階的に設定する、(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0186】
(8)前記設定部は、時間経過にしたがい、前記閾値の変化率を減少させる、(7)に記載の撮像装置。
【0187】
(9)前記設定部は、前記閾値の変化率を減少させ、初期設定置に漸近させる、(8)に記載の撮像装置。
【0188】
(10)前記設定部は、前記閾値を第1段階の閾値に設定した後に、前記変化率を減少させ、所定の設定値に漸近させる、(8)に記載の撮像装置。
【0189】
(11)前記設定部は、前記所定期間において前記閾値を超えた数が所定値未満である場合に、前記閾値を変更しない、(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0190】
(12)前記設定部は、前記複数の光電変換素子に対応する温度に応じて、前記閾値を設定する、(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0191】
(13)前記設定部は、前記温度変化が大きくなるに従い、前記閾値の変化率を大きくする、(12)に記載の撮像装置。
【0192】
(14)前記第1検出部は、前記所定領域の光電変換素子の前記電気信号を順繰りに読み出し、
前記設定部は、前記閾値を超えた前記検出信号の数を所定期間にわたってカウントする、(1)乃至(13)のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0193】
(15)遮光された光電変換素子のノイズレベルに応じて閾値を設定し、
それぞれが入射光を光電変換して電気信号を生成する複数の光電変換素子で生成された前記電気信号の変化量の絶対値が前記閾値を超えた場合に検出信号を検出する、撮像方法。
【0194】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0195】
10 撮像システム、20 撮像装置、21 画素アレイ部、21a 遮光領域、21b 受光領域、22 駆動部、23 アービタ部、24 カラム処理部、25 信号処理部、26 設定部、26a カウント部、26b 閾値制御部、30 画素、31 受光部、33 アドレスイベント検出部。
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