(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉用パッシブ格納容器冷却システムおよびその設置方法
(51)【国際特許分類】
G21C 15/00 20060101AFI20250225BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20250225BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20250225BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
G21C15/00 B
G21C13/00 200
G21C13/00 300
G21C15/18 L
G21C15/18 W
G21D1/00 Q
G21D1/00 L
(21)【出願番号】P 2022539403
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020067139
(87)【国際公開番号】W WO2021138248
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-12-19
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー,ゲイリー エム.
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-024594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0006052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/00-15/28
G21C 13/00-13/10
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉であって、
原子炉建屋であって、
その中に貫通部を形成する上壁部と、
底壁部と、
少なくとも1つの側壁部と、
を含み、前記上壁部、前記底壁部、および前記少なくとも1つの側壁部は、
前記原子炉建屋内にチャンバーを形成する、原子炉建屋と、
前記原子炉建屋に隣接する原子炉キャビティプールと、
一次格納容器であって、同一次格納容器の少なくとも一部は、前記原子炉建屋の前記チャンバー内にある、一次格納容器と、
水を受承するとともに熱水を排出するように構成されたパッシブ格納容器冷却システムと、
を備え、同パッシブ格納容器冷却システムは、
少なくとも1本の熱交換パイプを含み、同少なくとも1本の熱交換パイプは、
第1の外側パイプ端および第2の外側パイプ端を有する外側パイプであって、前記第1の外側パイプ端は閉鎖しており、前記第2の外側パイプ端は開口しており、前記第1の外側パイプ端は前記一次格納容器内にあり、前記第2の外側パイプ端は、前記外側パイプが前記一次格納容器および前記原子炉キャビティプールに流体連通するように前記原子炉建屋の前記上壁部内の前記貫通部を通って、前記原子炉キャビティプール内に延びて
おり、前記外側パイプは、その内部に開口部を形成する側部パイプ壁部を含む、外側パイプと、
少なくとも部分的に前記外側パイプ内にある内側パイプであって、同内側パイプは第1の内側パイプ端および第2の内側パイプ端を有し、前記第1の内側パイプ端および前記第2の内側パイプ端は開口しており、前記第2の内側パイプ端は、同第2の内側パイプ端が前記原子炉キャビティプールと流体連通するように、前記外側パイプから前記原子炉キャビティプール内に延びて
おり、前記内側パイプは、前記第1の内側パイプ端と前記第2の内側パイプ端との間に湾曲部を含み、前記湾曲部は、前記側部パイプ壁部の前記開口部を通って、前記原子炉キャビティプール内に延びている、内側パイプと、を含む、沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記外側パイプは、200mm乃至520mmの直径を有する、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記内側パイプは、50mm乃至200mmの直径を有する、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項4】
前記内側パイプおよび前記外側パイプが、ステンレス
鋼からなる、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項5】
前記外側パイプの周囲に、前記原子炉建屋の前記上壁の前記貫通部に隣接する少なくとも1つのシールをさらに備える、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項6】
前記パッシブ格納容器冷却システムは、複数の熱交換パイプを含む、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項7】
前記パッシブ格納容器冷却システムは、2乃至20本の熱交換パイプを含む、請求項
6に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項8】
前記一次格納容器内の少なくとも1つの支持体であって、前記熱交換パイプの前記第1の外側パイプ端を支持するように構成された支持体をさらに備える、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項9】
前記支持体は、バネ支持体からなり、同バネ支持体は、熱の吸収による膨張によって生じる前記熱交換パイプの上下動を許容するように構成されている、請求項
8に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項10】
前記パッシブ格納容器冷却システムが、バルブフリー、ポンプフリー、またはバルブフリーおよびポンプフリーの両者である、請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項11】
パッシブ格納容器冷却システムであって、
熱交換パイプを備え、同熱交換パイプは、
第1の外側パイプ端および第2の外側パイプ端を有する外側パイプであって、前記第1の外側パイプ端は閉鎖しており、前記第2の外側パイプ端は開口しており、前記第1の外側パイプ端は沸騰水型原子炉の一次格納容器内にあり、前記第2の外側パイプ端は、前記外側パイプ
が原子炉キャビティプールに流体連通するように前記原子炉キャビティプール内に延び
、前記外側パイプは、その内部に開口部を形成する側部パイプ壁部を含む、外側パイプと、
少なくとも部分的に前記外側パイプ内にある内側パイプであって、同内側パイプは第1の内側パイプ端および第2の内側パイプ端を有し、前記第1の内側パイプ端および前記第2の内側パイプ端は開口しており、前記第2の内側パイプ端は、同第2の内側パイプ端が前記原子炉キャビティプールと流体連通するように、前記外側パイプから前記原子炉キャビティプール内に延びて
おり、前記内側パイプは、前記第1の内側パイプ端と前記第2の内側パイプ端との間に湾曲部を含み、前記湾曲部は、前記側部パイプ壁部の前記開口部を通って、前記原子炉キャビティプール内に延びている、内側パイプと、
を含む、パッシブ格納容器冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、沸騰水型原子炉用のパッシブ格納容器冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉が停止した後も、核反応の副生成物は放射性崩壊を起こし、熱を発生し続ける。核反応による副生成物の崩壊熱を除去し、核燃料の損傷を抑制および/または防止する。原子炉が格納システムを有する場合に、格納システムの過圧化および損傷を抑制および/または回避するために、崩壊熱を格納システムから除去することができる。受動的安全機能を備える原子力発電所では、この崩壊熱を自然対流、伝導、放射熱伝達により、強制的な流れや電力に妨害されることなく除去することができる。
【0003】
原子炉の設計によっては、原子炉の崩壊熱を格納システムから除去するためのパッシブ格納容器冷却システム(PCCS)を備えているものもある。PCCSシステムは、炉心冷却の失敗や漏洩があった場合に発生する蒸気を凝縮可能なPCCS復水器を備えてもよい。PCCS復水器は、チャネル(例えば、チューブおよび/または平行なプレート)を含み、熱を格納容器外のプールに移し、水蒸気として大気に放出するか、または直接大気に移すことができる。
【0004】
事故シナリオでは、原子炉は格納システムまで減圧され得る。PCCSを備える原子力発電所では、原子炉から格納システムへの減圧により、蒸気や窒素などの非凝縮性の気体を一次格納容器に強制的に流入させ得る。原子炉の減圧後に、蒸気はPCCS復水器の外部で凝縮し、ほとんどが蒸気であり、微量の非凝縮性の気体(例えば、水素、酸素、窒素)を含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの例示的な実施形態は、原子炉建屋、原子炉キャビティプール、一次格納容器、およびパッシブ格納容器冷却システム(PCCS)を備える沸騰水型原子炉に関するものである。原子炉建屋は、その中に貫通部を形成する上壁部と、底壁部と、少なくとも1つの側壁部とを含む。上壁部、底壁部、および少なくとも1つの側壁部は、チャンバーを形成する。原子炉キャビティプールは、原子炉建屋に隣接している。一次格納容器の少なくとも一部は、原子炉建屋のチャンバー内にある。パッシブ格納容器冷却システムは、水を受承するとともに熱水を排出するように構成されている。パッシブ格納容器冷却システムは、熱交換パイプを含む。熱交換パイプは、第1の外側パイプ端および第2の外側パイプ端を有する外側パイプを含む。第1の外側パイプ端は閉鎖しており、第2の外側パイプ端は開口している。第1の外側パイプ端は、一次格納容器内にある。第2の外側パイプ端は、外側パイプが一次格納容器および原子炉キャビティプールと流体連通するように、原子炉建屋の上壁部の貫通部を通って、原子炉キャビティプール内に延びる。熱交換パイプは、少なくとも一部が外側パイプの中にある内側パイプをさらに含む。内側パイプは、第1の内側パイプ端および第2の内側パイプ端を有する。第1の内側パイプ端および第2の内側パイプ端は開口している。第2の内側パイプ端が原子炉キャビティプールと流体連通するように、第2の内側パイプ端は外側パイプから原子炉キャビティプール内に延びる。
【0006】
少なくとも1つの例示的な実施形態では、外側パイプは、開口部を形成するパイプ壁部で構成されている。内側パイプは、第1の内側パイプ端と第2の内側パイプ端との間の部分からなる。この部分は、パイプ壁部の側面の開口部を通って延びる。
【0007】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、外側パイプは、200mm乃至520mmの直径を有する。内側パイプは、50mm乃至200mmの直径を有する。内側パイプおよび外側パイプは、保圧および腐食のためにステンレス鋼または適切な材料からなる。
【0008】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、沸騰水型原子炉は、外側パイプの周囲に、原子炉建屋の上壁部の貫通部に隣接する少なくとも1つのシールをさらに備える。
【0009】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、パッシブ格納容器冷却システムは、複数の熱交換パイプを含む。パッシブ格納容器冷却システムは、2乃至20本の熱交換パイプを含む。
【0010】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、沸騰水型原子炉は、一次格納容器内に少なくとも1つの支持体をさらに備える。少なくとも1つの支持体は、熱交換パイプの外側パイプの第1の端を支持するように構成される。少なくとも1つの支持体は、バネ支持体からなり、熱の吸収による膨張によって生じる熱交換パイプの上下動を許容するように構成される。
【0011】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、パッシブ格納容器冷却システムは、バルブフリー、ポンプフリー、またはバルブフリーおよびポンプフリーの両者である。
【0012】
少なくとも1つの例示的な実施形態は、パッシブ格納容器冷却システムに関するものである。
【0013】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、パッシブ格納容器冷却システムは、熱交換パイプを含む。熱交換パイプは、外側パイプおよび内側パイプを含む。外側パイプは、第1の外側パイプ端および第2の外側パイプ端を有する。第1の外側パイプ端は閉鎖しており、第2の外側パイプ端は開口している。第1の外側パイプ端は、沸騰水型原子炉の一次格納容器内にある。第2の外側パイプ端は、外側パイプが、一次格納容器および原子炉キャビティプールと流体連通するように、原子炉キャビティプール内に延びる。内側パイプは、少なくとも一部が外側パイプ内にある。内側パイプは、第1の内側パイプ端および第2の内側パイプ端を有する。第1の内側パイプ端および第2の内側パイプ端は開口している。第2の内側パイプ端が原子炉キャビティプールと流体連通するように、第2の内側パイプ端は外側パイプから原子炉キャビティプール内に延びる。
【0014】
少なくとも1つの例示的な実施形態では、外側パイプは、開口部を形成するパイプ壁部で構成されている。内側パイプは、第1の内側パイプ端と第2の内側パイプ端との間に湾曲部を含む。湾曲部は、パイプ壁部に設けられた開口部を通って延びる。外側パイプは、200mm乃至520mmの直径を有する。内側パイプは、50mm乃至200mmの直径を有する。内側パイプおよび外側パイプはステンレス鋼からなる。
【0015】
少なくとも1つの例示的な実施形態は、パッシブ格納容器冷却システムの設置方法に関するものである。パッシブ格納容器冷却システムの設置方法は、熱交換パイプの一部が原子炉キャビティプールに延びるように、熱交換パイプを少なくとも部分的に一次格納容器内に配置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、少なくとも1つの例示的な実施形態によるパッシブ格納容器冷却システムを含む沸騰水型原子炉を示す模式図である。
【
図2】
図2は、少なくとも1つの例示的な実施形態による、
図1の沸騰水型原子炉を示す斜視断面図である。
【
図3】
図3は、少なくとも1つの例示的な実施形態による、
図1および
図2のパッシブ格納容器冷却システムの熱交換パイプを示す側面断面図である。
【
図4】
図4は、少なくとも1つの例示的な実施形態による
図1の沸騰水型原子炉の一部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の非限定的な実施形態の様々な要素および効果は、添付の図面と併せて詳細な説明を検討すると、より明らかになるであろう。添付の図面は、単に例示のためにのみ提供されたものであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。添付の図面は、明示的に記載されていない限り、縮尺通りに描かれているとはみなされない。わかりやすくするために、図面の様々な寸法が誇張されている場合がある。
【0018】
以下、いくつかの例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより完全に説明する。しかしながら、例示的な実施形態は、多くの異なる形態で具体化され得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの例示的な実施形態は、この開示が網羅的かつ完全であるように、そして当業者に例示的な実施形態の範囲を完全に伝達するように提供されている。図面において、図面中の同様の参照数字は同様の要素を示すため、その説明を省略することがある。
【0019】
ある要素や層が、他の要素や層に対して「on」、「connected to」、「coupled to」、または「covering」と呼ばれる場合、他の要素や層の上に直接設けられても、他の要素や層に直接接続していても、結合していても、または覆っていてもよいし、あるいは介在する要素や層が存在していてもよいことを理解すべきである。一方、ある要素が他の要素または層に「directly on」、「directly connected to」、または「directly coupled to」などと表現される場合、そこには介在する要素または層は存在しない。同様の符号は、明細書中全体にわたって同様の要素を指す。本明細書では、「および/または」という用語には、関連付けられるリストの項目の1つまたは複数の任意およびすべての組み合わせが含まれる。
【0020】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、層、および/または区分を説明するために、第1、第2、第3などの用語が使用されることがあるが、これらの要素、コンポーネント、領域、層、および/または区分は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、層、あるいは区分を、他の領域、層、あるいは区分と区別するためにのみ使用される。したがって、後述する第1の要素、構成要素、領域、層、または区分は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または区分と称することができる。
【0021】
本明細書では、説明を容易にするために、空間的に相対的な用語(例えば、「beneath」、「below」、「lower」、「above」、「upper」など)を使用して、図示のように、ある要素または特徴の、他の1つ以上の要素または1つ以上の特徴との関係を説明することができる。空間的に相対的な用語は、図に描かれている配向に加えて、使用時や操作時における装置の様々な配向を包含することを意図していることを理解すべきである。例えば、図の装置を裏返すと、他の要素や特徴の「below」または「beneath」と記載された要素は、他の要素や特徴の「above」に配向されたものといえる。このように、「below」という用語は、上および下の両者の配向を包含し得る。装置は他の配向(90度回転させたり、他の配向にしたり)でもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0022】
本明細書で使用されている用語は、様々な実施形態を説明するためのみのものであり、例示された実施形態を限定することを意図していない。本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに他を示す場合を除き、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用されている「includes」、「including」、「comprises」、および/または「comprising」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/またはコンポーネントの存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが、さらに理解されるであろう。
【0023】
例示的な実施形態は、本明細書において、例示的な実施形態の理想化された実施形態(および中間構造体)の模式図である断面図を参照して説明される。したがって、例えば製造技術および/または公差の結果、図の形状とは異なる変形例が予想される。このように、例示された実施形態は、ここに例示された領域の形状に限定して解釈されるものと解釈されるべきではなく、例えば製造上の結果として生じる形状の偏差を包含するものである。したがって、図面に示す領域は本質的に模式的なものであり、その形状は、装置の領域の実際の形状を示すものではなく、例示された実施形態の範囲を限定するものではないことを意図するものである。
【0024】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示された実施形態が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用されている辞書で定義されているものを含む用語は、関連する技術の文脈における意味と一致するように解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された、または過度に形式的な意味で解釈されることはないものと理解される。
【0025】
また、いくつかの代替的な実装では、指摘された機能/行為は、図面に指摘された順序または明細書に記載された順序から外れて発生する可能性があることに留意されたい。例えば、連続して表示される2つの図面やステップは、実際には実質的に同時に実行されることもあれば、関係する機能/行為に応じて、時には逆の順序で、または繰り返し実行される可能性がある。
【0026】
図1は、少なくとも1つの例示的な実施形態によるパッシブ格納容器冷却システムを含む沸騰水型原子炉を示す模式図である。
【0027】
図1に示すように、少なくとも1つの例示的な実施形態において、沸騰水型原子炉100はBWRX-300原子炉であってもよく、BWRX-300原子炉の構成要素および特性を有していてもよい。本明細書に記載された構成要素は、他のプラント構成にも使用可能であることが理解される。
【0028】
図1を参照すると、原子炉100は、原子炉建屋110、一次格納容器120、原子炉キャビティプール130、およびパッシブ格納容器冷却システム(PCCS)140を備えることができる。少なくとも1つの例示的な実施形態において、一次格納容器120は、原子炉建屋110のチャンバー内に収容される。原子炉キャビティプール130は、事故時および/または使用時にパッシブ格納容器冷却システムからの熱水を冷却するために使用される、水を満たした槽である。原子炉キャビティプール130は、原子炉建屋110と、少なくとも部分的に原子炉建屋110内にある一次格納容器120の上方に着座してもよい。
【0029】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、沸騰水型原子炉100は、燃料、チャンネル、制御棒、および計装を含む炉心と、シュラウド、シュラウド支持体、トップガイド、コアプレート、制御棒ガイド管、およびオリフィス付き燃料支持体を含む炉心支持構造体と、煙突、蒸気ドライヤーアセンブリ、給水スパージャ、および炉内ガイド管(図示しない)をさらに備える。
【0030】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、PCCS140は、少なくとも1つの熱交換パイプ150を含む。熱交換パイプ150は、一次格納容器内のチャンバーから、一次格納容器の壁部を通り、原子炉建屋110の壁部を通り、原子炉キャビティプール130内に延びている。
【0031】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、PCCS140は、原子炉キャビティプール130からの水が熱交換パイプ150を介して一次格納容器120に入るように構成されている。熱交換パイプ150が熱を吸収すると、水が加熱されて熱水となり、密度差により熱交換パイプ150内の経路を経由して放出される。熱交換パイプ150を出た熱水は、原子炉キャビティプール130に入り、原子炉キャビティプールの水と混合し、蒸発することで冷却される。PCCS140は、弁およびポンプを含まず、重力を頼りに原子炉キャビティプール130から一次格納容器120に水を供給する。PCCS140の冷却プロセスは連続的なプロセスであり、水は強制的に作用することなく自然に循環している。
【0032】
図2は、少なくとも1つの例示的な実施形態による、
図1の沸騰水型原子炉を示す斜視断面図である。
【0033】
図2に示すように、少なくとも1つの例示的な実施形態では、沸騰水型原子炉100は、
図1と同様であるが、より詳細に示されている。
図2に示すように、原子炉建屋110は、上壁部200と、底壁部210と、少なくとも1つの側壁部220とを含む。原子炉建屋110は、コンクリートで形成されている。上壁部200、底壁部210、および少なくとも1つの側壁部220は、一次格納容器120を収容するチャンバー230を形成する。原子炉建屋110の上壁部220は、その中に貫通部240を形成してもよい。熱交換パイプ150は、貫通部240を通って延びている。図示のように、沸騰水型原子炉100は、複数の熱交換パイプ150および複数の貫通部240を含む。各熱交換パイプ150は、対応する1つ以上の貫通部240を通って、原子炉キャビティプール130内に延びる。
【0034】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、一次格納容器120は、その壁部に少なくとも1つの通路250を形成している。熱交換パイプ150の各々は、少なくとも1つの通路250の対応する1つを通って、一次格納容器120の中に延びている。
【0035】
図3は、少なくとも1つの例示的な実施形態による、
図1および
図2のパッシブ格納容器冷却システムの熱交換パイプを示す側面断面図である。
【0036】
図3に示すように、少なくとも1つの例示的な実施形態では、PCCS140の熱交換パイプ150の各々は、第1の外側パイプ端310および第2の外側パイプ端320を有する外側パイプ300を含む。第1の外側パイプ端310は、一次格納容器120内に配置される閉端である。第2の外側パイプ端320は、原子炉キャビティプール130内に配置される出口325を有する開放端である。出口325は、原子炉キャビティプール130に熱水を放出するように構成されている。
【0037】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、第2の外側パイプ端320は、角度をなしてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、第2の外側パイプ端320は、約10°乃至約80°(例えば、約20°乃至約70°、約30°乃至約60°、または約40°乃至約50°)の角度「A」を有している。例えば、角度「A」は45°であってもよい。外側パイプ300は、約200mm乃至約520mm(例えば、約250mm乃至約350mm)の直径を有してもよい。外側パイプ300は、約5,000mm乃至約25,000mm(例えば、約10,000mm乃至約20,000mm)の長さを有してもよい。
【0038】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、熱交換パイプ150は、第1の内側パイプ端340および第2の内側パイプ端360を有する内側パイプ330を含む。第1の内側パイプ端340は出口365を含み、第2の内側パイプ端360は入口370を含み、これにより、内側パイプ330と、原子炉キャビティプール130と、外側パイプ300の内側部分との間が流体連通する。原子炉キャビティプール130からの水は、入口370を介して内側パイプ330に入り、出口365を介して外側パイプ300内に出る。少なくとも1つの例示的な実施形態において、内側パイプ330は、外側パイプ300内に少なくとも部分的に収容される。
【0039】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、内側パイプ330は、約50mm乃至約200mm(例えば、約100mm乃至約175mm、または約120mm乃至約160mm)の直径を有する。内側パイプ330は、第1の内側パイプ出口365が外側パイプ300の第1の外側パイプの閉鎖端310から約100mm乃至約300mm(例えば、約150mm乃至約250mmまたは約175mm乃至約225mm)に位置されるように、外側パイプ300の長さよりもわずかに短い長さを有していてもよい。
【0040】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、内側パイプ330は、内側パイプ330の一部が外側パイプ300の壁部に形成された穴390を通って延びるように、湾曲部350を有していてもよい。湾曲部350は、内側パイプ330の残部に対して約90°の角度をなしていてもよい。他の例示的な実施形態では、湾曲部350は、内側パイプ330の残部に対して約10°乃至約80°の角度をなしていてもよい。他の例示的な実施形態では、部分350は、角度をなす部分であってもよいし、直線的な部分であってもよい。
【0041】
図3に示すように、少なくとも1つの例示的な実施形態では、熱交換パイプ150は、一次格納容器120の通路250を通り、原子炉建屋110の上壁部200の貫通部240を通って延びている。
【0042】
少なくとも1つの例示的な実施形態では、PCCS140は、各熱交換パイプ150が上壁部200の貫通部240を出る箇所に、熱交換パイプ150を包囲するシール375を含むことができる。シール375は、任意の適切な耐熱性シールであってもよい。
図3に示すように、湾曲部350は、シール375および原子炉建屋110の上壁部200の上方の地点から開始する。
【0043】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、熱交換パイプ150の各々は、支持体380によって支持される。支持体380は、バネ385(または可撓性を備えた支持体)および基部390を含んでもよい。バネ385または可撓性を備えた支持体は、外側パイプの閉鎖端に対して作用する第1の端と、基部390に対して作用する第2の端とを有する。支持体380にバネ385または可撓性を備えた支持体を使用することで、熱交換パイプ150が熱吸収により膨張しても、熱交換パイプ150をなお支持することができる。
【0044】
少なくとも1つの例示的な実施形態において、バネ385は、長さが約300mm乃至約500mmであってよい。例えば、バネの長さは約400mmであってもよい。バネ385は、ステンレス鋼など、任意の適切な材料で形成されてもよい。
【0045】
図4は、少なくとも1つの例示的な実施形態による
図1の沸騰水型原子炉の一部を示す上面図である。
【0046】
図4に示すように、少なくとも1つの例示的な実施形態では、PCCS140は、水で満たされた原子炉キャビティプール130内に延びる複数の熱交換パイプ150を含む。PCCS140は、2乃至20本の熱交換パイプ150(例えば、3乃至19本、4乃至18本、5乃至17本、6乃至16本、7乃至15本、8乃至14本、9乃至13本、または10乃至12本)を含むことができる。
図4に示すように、例えば、PCCS140は、10本の熱交換パイプ150を含む。熱交換パイプ150は、一次格納容器120の周囲に実質的に一様に間隔を空けて配置されてもよい。他の例示的な実施形態では、熱交換パイプ150は、一次格納容器120の周囲に非一様に配置されてもよく、または一群に配置されてもよい。
【0047】
使用時には、PCCS140の熱交換パイプ150により、熱交換パイプ150の内側パイプ330の入口370を介して、原子炉キャビティプール130から一次格納容器120内に水を自然に循環させることができる。熱交換パイプ150が熱を吸収すると、水は加熱されて熱水に変化し、熱交換パイプ150の外側パイプ300に設けられた出口325から放出される。
【0048】
少なくとも1つの例示的な実施形態は、パッシブ格納容器冷却システムの設置方法に関するものである。パッシブ格納容器冷却システムの設置方法は、熱交換パイプの一部が原子炉キャビティプールに延びるように、熱交換パイプを少なくとも部分的に一次格納容器内に配置することを含む。パッシブ格納容器冷却システムが既存の沸騰水型原子炉に改修される場合に、方法は、原子炉建屋の上壁部および一次格納容器の一部を通る貫通部および/または通路の掘削を含んでもよい。また、この方法は、各熱交換パイプの支持体を設置することと、熱交換パイプを設置することとを含んでもよい。
【0049】
本明細書において、いくつかの例示的な実施形態を開示してきたが、他の変形が可能であることを理解すべきである。このような変形は、本開示の趣旨および範囲から逸脱するものとはみなされず、当業者には明らかであろうすべてのこのような変更は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。