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特許7639008肝再生促進又は肝細胞死の抑制もしくは防止のためのプロテインキナーゼ阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】肝再生促進又は肝細胞死の抑制もしくは防止のためのプロテインキナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20250225BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20250225BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20250225BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250225BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
A61K31/437
A61K31/506
A61P1/16
A61P31/12
C07D471/04 CSP
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022543158
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021050527
(87)【国際公開番号】W WO2021144287
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】20151929.5
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522282014
【氏名又は名称】ヘパリジェニックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼーリヒ,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ラウファー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト,ヴォルフガング
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/134254(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/149738(WO,A1)
【文献】特許第7365393(JP,B2)
【文献】特表2008-546797(JP,A)
【文献】特表2014-504640(JP,A)
【文献】国際公開第2019/243315(WO,A1)
【文献】ACS Chem. Biol.,2017年,Vol.12,p.1245-1256,https://doi.org/10.1021/acschembio.6b01060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体:
【化1】
式中、
は、H、又はアルキル;
は、H、又はアルキル;
は、H、又はアルキル;
は、H、又はアルキル;
は、-NR10SO12
10は、H、アルキル、又はフェニルアルキル;
12は、H、アルキル、又はフェニルアルキル(フェニル基は、アルキル及びハロゲンから独立して選択される1もしくは2個の基で任意に置換されている);
、R、R、及びRzzは、以下から選択される:
a)RとRはFであり、RとRzzはHである;及び、
b)R、R、及びRzzであり、RはHである;
、以下から独立して選択される1、2又は3個の基で置換されたフェニルである
-POジ(アルキル);及び、
ヒドロキシアルキル-ONH-CO-。
【請求項2】
式(Ia)又は式(Ib)を有する、請求項1に記載の化合物、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体。
【化2】
【化3】
【請求項3】
、R、R、及びRがHである、請求項1または2に記載の化合物、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体。
【請求項4】
以下から選択される化合物、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体を含む医薬組成物。
【請求項6】
プロテインキナーゼJNK1及びMKK7よりもプロテインキナーゼMKK4を選択的に阻害するために使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体、あるいは、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
肝再生の促進又は肝細胞死の防止に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは光学異性体、あるいは、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ4(MKK4)を阻害するプロテインキナーゼ阻害剤に関し、特に、プロテインキナーゼJNK1及びMKK7よりもMKK4を選択的に阻害するプロテインキナーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肝疾患は、感染、傷害、アルコールや薬物等の毒性化合物への曝露、自己免疫過程、遺伝的欠陥及びその他の要因によって引き起こされる場合がある。肝臓には顕著な再生能力があるが、病態においては正常に機能しないことがあり、したがって、肝細胞や臓器機能の損失を補うには不十分な場合がある。
【0003】
特許文献1には、プロテインキナーゼの異常な活性に関連する疾患及び状態の治療に有用なプロテインキナーゼ阻害剤である化合物が記載されている。これらの化合物は、Rafプロテインキナーゼ、特にB-Raf及びc-Raf並びにそれらの変異体の阻害剤であり、したがって癌治療に有用である。また、それらは他の多種多様なプロテインキナーゼ、とりわけc-Jun N-末端キナーゼ(JNK)、特にJNK1を阻害すると言われている。
【0004】
特許文献2には同様の開示があり、特許文献3及び特許文献4は、Rafプロテインキナーゼ阻害活性を有する修飾化合物を開示する。H.Vinらは、JNKシグナル伝達のオフターゲット阻害を介してアポトーシスを抑制するB-Raf阻害剤として、特許文献5の2つの化合物に言及する。
【0005】
特許文献6には、ピラゾロ[3,4-b]ピリジン化合物が記載されており、この化合物はRafプロテインキナーゼが介在する疾患や状態、例えば癌などの治療に有用なプロテインキナーゼ阻害剤である。さらに、これらは、他の多種多様なプロテインキナーゼ、とりわけc-Jun N-末端キナーゼ(JNK)、特にJNK1を阻害すると言われている。特許文献7は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ4(MKK4)の阻害剤として、肝不全の治療、アポトーシスからの肝細胞の保護、及び肝細胞の再生に有用であると記載されているいくつかの化合物を開示している。
【0006】
非特許文献1は、肝細胞の再生能力を高めるために利用できる遺伝子標的の同定のための機能的遺伝学的アプローチを記載する。特に、非特許文献1は、プロテインキナーゼMKK4を肝細胞再生の重要な調節因子として特定し、MKK4の抑制が、MKK7の代償的アップレギュレーションと、ATF2及びELK1のJNK1依存性活性化を介して肝細胞の再生を増加させたことを報告している。先行技術の発見に基づいて、MKK4及びJNK1阻害剤は、JNK1介在性疾患の治療に有用であり得ると結論づけられた。
【0007】
しかしながら、臨床治療において、そのような化合物を用いた肝疾患の治療が失敗したことは認識されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2007/002433号
【文献】国際公開第2010/002325号
【文献】国際公開第2012/109075号
【文献】国際公開第2014/194127号
【文献】国際公開第2007/002433号
【文献】国際公開第2010/111527号
【文献】国際公開第2012/136859号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Wuestefeld et al.(Cell 153:389-401,2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底にある課題は、MKK4阻害剤である有用な化合物、特にMKK7やJNK1よりもMKK4を選択的に阻害するMKK4阻害剤を提供することであった。さらなる課題は、MKK7やJNK1よりもMKK4を選択的に阻害する肝疾患の治療に有用なMKK4阻害剤、特に肝再生促進又は肝細胞死の抑制もしくは防止に有用なMKK4阻害剤である化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、式(I)の化合物を提供することによって解決された。
したがって、本発明は、以下の実施形態に関する:
【0012】
1.式(I)を有する化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体:
【0013】
【化1】
【0014】
は、H、又はアルキル;
は、H、又はアルキル;
は、H、又はアルキル;
は、H、又はアルキル;
は、-NR10SO12
10は、H、アルキル、又はフェニルアルキル;
12は、H、アルキル、ハロアルキル、又はフェニルアルキル(フェニル基は、アルキル及びハロゲンから独立して選択される1もしくは2個の基で任意に置換されている);
【0015】
、R、R、及びRzzは、以下から選択される:
a)RとRはFであり、RとRzzはHである;及び、
b)R、R、及びRzzは独立してハロゲンであり、RはHである;
【0016】
は、以下から選択される:
(a)以下から独立して選択される1、2又は3個の基で置換されたフェニル:
-POジ(アルキル);及び、
ヒドロキシアルキル-ONH-CO-;
(b)以下から独立して選択される1、2又は3個の基で置換されたピリミジニル;
アルキル;
シクロアルキル;
アルコキシ;及び、
アルキルスルファニル。
【0017】
2.Rが、-POジ(アルキル)及びヒドロキシアルキル-ONH-CO-から独立して選択される1又は2個の基で置換されたフェニルである、実施形態1の化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0018】
3.Rが、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、及びアルキルスルファニルから独立して選択される1又は2個の基で置換されたピリミジニルである、実施形態1の化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0019】
4.ピリミジニルが、5位で1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンに結合し、2位がアルキル、シクロアルキル、又はアルコキシで置換され、任意に4位がアルキル又はアルキルスルファニルで置換されている、実施形態3の化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0020】
5.ピリミジニルが、5位で1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンに結合し、2位がシクロアルキル又はアルキルで置換されている、実施形態4の化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0021】
6.ピリミジニルが、5位で1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンに結合し、4位又は2位および4位がアルキルで置換されており、4位及び6位のアルキルが同じであっても異なっていてもよい、実施形態3の化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0022】
7.R12が、C-C-アルキル又はフェニルアルキルであり、フェニルアルキルが特にベンジルである、実施形態1~6のいずれか一つの化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0023】
8.R12が、C-C-アルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、又はプロピルである、実施形態7の化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体。
【0024】
9.式(Ia)を有する、実施形態1~8のいずれか一つの化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体:
【0025】
【化2】
【0026】
式中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、実施形態1~8のいずれか一つで定義される通りである。
【0027】
10.式(Ib)を有する、実施形態1~8のいずれか一つの化合物、並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体:
【0028】
【化3】
【0029】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、及びRzzは、実施形態1~8のいずれか一つで定義される通りである。
【0030】
11.R、R、R、R、及びRが、H又はアルキル、特にHである、実施形態1~10のいずれか一つの化合物。
【0031】
12.R10がH又はアルキル、特にHである、実施形態1~11のいずれか一つの化合物。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明の詳細な説明]
一実施形態では、本発明は、選択的MKK4阻害剤の化合物並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体に関する。該化合物は式Iの化合物であり、R~R、R10、A及びQは、任意の組み合わせで、上記の実施形態で定義された通りである。
【0033】
一実施形態では、本発明の化合物並びに、その薬学的に許容される塩、溶媒和物及び光学異性体は、プロテインキナーゼJNK1及びMKK7よりもプロテインキナーゼMKK4を選択的に阻害する。
【0034】
さらに、本発明は、肝再生を促進し、又は肝細胞死を抑制もしくは防止し、同時に肝細胞の増殖を増加させる使用のための前記化合物にも関する。
【0035】
用語「本発明の化合物」又は「式(I)の化合物」は、その薬学的に許容される塩、プロドラッグ、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物及び立体異性体を含む。
【0036】
本発明には、上記化合物の薬学的に許容される塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、特に、薬学的に許容される酸又は塩基を用いた酸又は塩基付加塩である。好適な薬学的に許容される有機酸及び無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸等のC-C-アルキルスルホン酸、S-(+)-10-樟脳スルホン酸等の脂環式スルホン酸、ベンゼンスルホン酸やトルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、炭素数2~10のジカルボン酸やトリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、アジピン酸及び安息香酸である。
【0037】
他の利用可能な酸は、例えば「Fortschritte der Arzneimittelforschung[Advances in drug research],Volume 10,pages 224 ff.,Birkhaeuser Verlag,Basel and Stuttgart,1966」に記載されている。薬学的に許容される好適な有機塩基及び無機塩基の例は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機窒素塩基、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール、メグルミン、プロカイン等、L-アルギニン、L-リジン、エチレンジアミン、又はヒドロキシエチルピロリジンである。
【0038】
また本発明は、本発明の化合物及びその塩の任意の互変異性体、結晶体及び多形体、並びにそれらの混合物を含む。
【0039】
また本発明は、水和物等の溶媒和物も含む。
【0040】
本発明の化合物は、1つ以上のキラル中心を含んでいてもよく、エナンチオマーやジアステレオマー等の異なる光学活性形態で存在する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、何らかの生理学的な化学的プロセスによってin vivoで親薬物に変換される薬剤をいう。プロドラッグの例としては、これには限定されないが、エステルの形態の本発明の化合物である。
【0042】
プロドラッグは、多くの有用な特性を有する。例えば、プロドラッグは、最終的な薬物よりも水溶性が高く、それにより薬物の静脈内投与が容易になる場合がある。またプロドラッグは、最終的な薬剤よりも高いレベルの経口バイオアベイラビリティを有する場合がある。投与後、プロドラッグは、酵素的又は化学的に切断され、最終的な薬物が血液又は組織に送達される。
【0043】
例示的なプロドラッグとして、これには限定されないが、遊離水素が、(C-C)アルキル,(C-C12)アルカノイルオキシ-メチル,(C-C)1-(アルカノイルオキシ)エチル,炭素数5~10の1-メチル-1-(アルカノイルオキシ)-エチル,炭素数3~6のアルコキシカルボニルオキシメチル,炭素数4~7の1-(アルコキシカルボニル-オキシ)エチル,炭素数5~8の1-メチル-1-(アルコキシカルボニルオキシ)-エチル,炭素数3~9のN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル,炭素数4~10の1-(N-(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル,3-フタリジル,4-クロトノ-ラクトニル,γ-ブチロラクトン-4-イル,ジ-N,N-(C-C)アルキルアミノ(C-C)アルキル(例えば、β-ジメチルアミノエチル),カルバモイル-(C-C)アルキル,N,N-ジ(C-C)-アルキルカルバモイル-(C-C)アルキル,及びピペリジノ-,ピロリジノ-もしくはモルホリノ(C-C)アルキルで置換されたカルボン酸置換基を有する化合物を挙げることができる。
【0044】
他の例示的なプロドラッグは式(I)のアルコールを放出する。式中、ヒドロキシル置換基(例えば、R基はヒドロキシルを含む)の遊離水素は、(C-C)アルカノイルオキシ-メチル,1-((C-C)アルカノイルオキシ)-エチル,1-メチル-1-((C-C)アルカノイルオキシ)エチル,(C-C12)アルコキシ-カルボニル-オキシメチル,N-(C-C)-アルコキシ-カルボニルアミノメチル,スクシノイル,(C-C)アルカノイル,α-アミノ(C-C)アルカノイル,アリール,アシル,及びα-アミノアシルもしくはα-アミノアシル-α-アミノアシルで置換されている。前記α-アミノアシル部分は独立して、タンパク質に含まれる天然のL-アミノ酸、P(O)(OH),-P(O)(O(C-C)アルキル)又はグリコシル(炭水化物のヘミアセタールのヒドロキシルの脱離から生じる基)のいずれかである。
【0045】
語句「MKK4阻害剤」は、投与においてMKK4のキナーゼ活性を<10μmol/l、好ましくは<1μmol/l、特に<0.5μmol/lのIC50で阻害するものを意味する。本明細書で使用される表現「プロテインキナーゼJNK1及びMKK7よりもプロテインキナーゼMKK4を選択的に阻害する」は、対照又はKdのいずれかのパーセントで表される、MKK4阻害活性に対するMKK7阻害活性の比、又はMKK4阻害活性に対するJNK1阻害活性の比が、KINOMEscan(商標)を用いて測定したとき、≧10であることを意味する。
【0046】
本明細書で使用される表現「肝再生促進又は肝細胞死の抑制もしくは防止」は、治療開始時の増殖細胞の数と比較して、増殖している肝細胞の相対的な数が少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%増加することを意味する。特に、当該表現は、治療開始時の増殖細胞数と比較して、≧100%の増加を意味する。
【0047】
これに関連して、実験的な測定及び定量は、標準的な方法、例えば、細胞増殖に正確に関連するタンパク質Ki67の定量を用いて行われる。組織スライド中の増殖する肝細胞の定量化のために、いくつかの免疫組織化学標準法が利用可能であり、これは、一次抗Ki67抗体を使用し、次いで、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体を使用して抗Ki67結合の可視化を行うものである。発色基質の酵素変換によって可視化されるペルオキシダーゼ活性の量は、Ki67タンパク質の量及び増殖細胞の数と相関する。
【0048】
以下に説明する実験では、肝細胞増殖は、Abcamの1次ポリクローナルウサギ抗Ki67抗体(品番:ab 15580,Abcam,ケンブリッジ,USA)及びInvitrogenの2次ヤギポリクローナル抗体(品番:16101,Invitrogen/ThermoFisher)を含む蛍光体テトラメチルローダミンを用いたKi67染色により定量化した。
【0049】
いくつかの前臨床マウスモデルから得られたデータに基づいて、CCl(四塩化炭素)による慢性肝障害マウスモデルにおけるshRNA(スモールヘアピンRNA)を介したMKK4の抑制が、肝細胞増殖を13%から27%に増加させ(対照のshRNAとの比較)、そして肝障害(トランスアミナーゼ)の減少と肝線維症の減少に関連することが明らかになった。
【0050】
前章の定義によれば、増殖細胞の相対的な増加率は108%であった。アルコール誘発性脂肪性肝炎(ASH)のモデルでは、MKK4のshRNA媒介サイレンシングにより、対照のshRNAを使用した場合の2%と比較して、4%の肝細胞増殖率が得られた(相対的増加率:100%)。肝細胞増殖の繰返しは、脂肪症(脂肪沈着)の減少及びトランスアミナーゼにより測定される肝障害の減少と関連していた。同様に、部分肝切除モデル(肝臓の3分の2の外科的切除後48時間)において、shRNA媒介MKK4サイレンシングは、肝細胞増殖を16%(対照shRNA)から33%(相対的増加:106%)に増加させた。繰り返しになるが、肝細胞増殖の増加は、肝再生の改善と肝質量の迅速な回復に関連していた。
【0051】
上記の可変部の定義で言及された有機部分は、ハロゲンなる用語と同様に、個々のグループのメンバーの個々のリストの総称である。接頭辞C-Cは、それぞれの場合において、グループ内の炭素原子の可能な数を示す。
【0052】
ハロゲンなる用語は、それぞれの場合にフッ素、臭素、塩素又はヨウ素を表し、特にフッ素又は塩素を表す。
【0053】
アルキルは、直鎖又は分岐アルキル基であり、好ましくはC-C-アルキル基(すなわち、1~6個の炭素原子を有するアルキル基)、より好ましくはC-C-アルキル基である。アルキル基の例は、メチル,エチル,n-プロピル,イソプロピル,n-ブチル,2-ブチル,イソブチル,tert-ブチル,ペンチル,1-メチルブチル,2-メチルブチル,3-メチルブチル,2,2-ジメチルプロピル,1-エチルプロピル,ヘキシル,1,1-ジメチルプロピル,1,2-ジメチルプロピル,1-メチルペンチル,2-メチルペンチル,3-メチルペンチル,4-メチルペンチル,1,1-ジメチルブチル,1,2-ジメチルブチル,1,3-ジメチルブチル,2,2-ジメチルブチル,2,3-ジメチルブチル,3,3-ジメチルブチル,1-エチルブチル,2-エチルブチル,1,1,2-トリメチルプロピル,1,2,2-トリメチルプロピル,1-エチル-1-メチルプロピル,及び1-エチル-2-メチルプロピルである。
【0054】
アルキルの定義は、アルキル基を含む任意の基にも同様に適用できる。
【0055】
シクロアルキルは脂環式基であり、好ましくはC-C-シクロアルキル、すなわち3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。特に、3~6個の炭素原子が、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等の環状構造を形成する。環状構造は、非置換であってもよく、又は1、2、3もしくは4個のC-Cアルキル基(好ましくは、1つ以上のメチル基)を有していてもよい。
【0056】
本発明の化合物(その薬学的に許容される塩、プロドラッグ、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物及び立体異性体を含む)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2007/002433に開示される通り、又は類似の手順に従って調製することができる。酸又は塩基付加塩は、遊離塩基を対応する酸と混合するか、遊離酸を所望の塩基と混合することにより、慣用的な方法で調製される。任意に、反応は、有機溶媒、例えばメタノール、エタノールもしくはプロパノール等の低級アルコール、メチルtert-ブチルエーテルもしくはジイソプロピルエーテル等のエーテル、アセトンもしくはメチルエチルケトン等のケトン、又はEtOAc等のエステルの溶液中で行われる。
【0057】
本発明の化合物は、肝再生を促進するか、又は肝細の死を抑制もしくは防止し、同時に肝細胞の増殖を増加させるのに有用である。したがって、本発明の化合物は、感染、傷害、毒性化合物への暴露、血液中の正常物質の異常な蓄積、自己免疫過程、遺伝的欠陥、又は不明の原因によって引き起こされ得る肝臓への急性又は慢性の損傷を伴う疾患の治療、調節、改善、又は予防に有用である。
【0058】
これらの肝疾患は、可能性のある治療効果(すなわち、肝機能の部分的又は完全な回復)を達成するために、肝再生を促進し、肝細胞死を抑制又は防止することが有用であると考えられる全ての疾患を含む。これらの疾患には、以下が含まれる:
急性及び慢性の肝疾患又は急性増悪した肝疾患、例えば、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス及び他のウイルスによる肝炎等の急性及び慢性ウイルス性肝炎、全てのタイプの自己免疫性肝炎、原発性硬化性肝炎、アルコール性肝炎;
【0059】
代謝性肝疾患、例えば、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝(NAFL)等の脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性脂肪肝炎(ASH)、ウィルソン病(Morbus Wilson)、ヘモクロマトーシス、α1-アンチトリプシン欠乏症、グリコーゲン貯蔵疾患;
【0060】
全てのタイプの肝硬変、例えば、原発性胆汁性肝硬変、エチル中毒性肝硬変、特発性肝硬変;
【0061】
急性(劇症)又は慢性肝不全、例えば、アセトアミノフェン(パラセタモール)誘発性肝不全、α-アマニチン誘発性肝不全、薬物誘発性肝毒性、例えば、抗生物質、非ステロイド性抗炎症薬及び抗痙攣薬によって引き起こされる肝不全、ハーブサプリメント(カバ、エフェドラ、スカルキャップ、ペニーロイヤル等)によって引き起こされる急性肝不全等の中毒性肝不全、バッドキアリ症候群等の血管疾患による肝疾患及び肝不全、原因不明の急性肝不全、右心不全による慢性肝疾患;
【0062】
ガラクトース血症、嚢胞性線維症、ポルフィリン症、肝虚血灌流障害、肝移植後の過小グラフト症候群、原発性硬化性胆管炎又は肝性脳症。
【0063】
肝再生を促進するため、又は肝細胞死を抑制もしくは防止するために、本発明の化合物は、それを必要とする患者に治療有効量で投与される。肝疾患の存在を検出するために、様々な診断方法が利用できる。臨床的に許容される正常範囲を超えたアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血中濃度は、進行中の肝障害を示すことが知られている。血中ビリルビン濃度又は他の肝酵素は、検出又は診断基準として使用される。
【0064】
ALTとASTの血中濃度についての肝疾患患者の日常的モニタリングは、治療中の肝疾患の進行を測定するために使用される。上昇したALT及びAST濃度の許容範囲内への低下は、患者の肝障害の重症度の低下を反映した臨床的証拠と見なされる。FibroTest/FibroSURE,HepaScore(商標),FibroMeter又はCirrhometer等の商業的な試験は、脂肪肝、線維症、肝硬変の検出用に5つ以上の生化学的パラメーターの組み合わせ結果を評価する。さらに、磁気共鳴画像法、ソノグラフィー、特にエラストグラフィー法等の非侵襲的で革新的な物理的画像法は、肝疾患の状態と進行を検出及び監視するために利用できる。
【0065】
さらに、shRNAを介したMKK4の抑制は、変形性関節症におけるTNF-α駆動の軟骨基質分解を軽減させることが判明している(Cell Death and Disease (2017)8,e3140)。したがって、本発明の化合物を使用したMKK4の活性の阻害は、さらに変形性関節症及び関節リウマチの治療に有用である。
【0066】
本発明の化合物は、慣習的に、本発明による少なくとも1つの化合物、任意に不活性担体(例えば、薬学的に許容される賦形剤)及び、適切な場合には他の薬物を共に含む医薬組成物の形態で投与される。これらの組成物は、例えば、経口、直腸、経皮、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内又は鼻腔内に投与することができる。
【0067】
適切な医薬組成物の例は、粉末、顆粒、錠剤、特にフィルム錠剤、トローチ剤、サッシェ剤、カシェ剤、糖衣錠等の固体医薬形態、ハードゼラチンカプセル及びソフトゼラチンカプセル又は坐剤等のカプセル、軟膏、クリーム、ヒドロゲル、ペースト又は膏薬等の半固体医薬形態、並びに溶液、エマルション、特に水中油型エマルション、懸濁液(例えば、ローション)、注射製剤及び注入製剤等の液状医薬形態である。さらに、リポソーム又はミクロスフェアを使用することも可能である。
【0068】
組成物を製造する際、場合により本発明による化合物は、1つ以上の担体(賦形剤)と混合又は希釈される。担体(賦形剤)は、活性化合物のためのビヒクル、担体又は媒体として機能する固体、半固体又は液体の材料とすることができる。
【0069】
適切な担体(賦形剤)は、専門の医薬研究論文に記載されている。さらに製剤は、薬学的に許容される補助物質を含むことができる。例えば、湿潤剤;乳化剤及び懸濁剤;保存料;抗酸化剤;抗刺激剤;キレート剤;コーティング助剤;乳化安定剤;フィルム形成剤;ゲル形成剤;臭気マスキング剤;矯味剤;樹脂;親水コロイド;溶剤;可溶化剤;中和剤;拡散促進剤;顔料;第四級アンモニウム化合物;再脂肪化及び過脂肪化剤;軟膏、クリーム又はオイルの原料;シリコーン誘導体;拡散助剤;安定剤;滅菌剤;坐剤基剤;結合剤、充填剤、流動促進剤、崩壊剤又はコーティング等の錠剤補助剤;噴霧剤;乾燥剤;乳白剤;増粘剤;ワックス;可塑剤及び白色鉱油である。この点に関する処方は、例えば「Fiedler,H.P.,Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie,Kosmetik und angrenzende Gebiete[薬学、化粧品及び関連分野の補助物質の百科事典],第4版,Aulendorf:ECV-Editio-Cantor-Verlag,1996」に記載されている専門知識に基づいている。
【0070】
また本発明の化合物は、他の治療薬との組み合わせに好適な場合もある。したがって、さらに本発明は、特に肝再生の促進又は肝細胞死の抑制もしくは防止に使用するための、本発明の化合物及び1以上のさらなる治療薬を含む組み合わせに関する。本発明の併用療法は、補助的に投与することができる。補助的投与とは、別々の医薬組成物又はデバイスの形態での各成分の同時又は重複投与を意味する。
【0071】
2つ以上の治療剤の治療的投与のこの方法(regime)は、通常、当業者によって、そして本明細書では補助的治療的投与と呼ばれる;追加的治療的投与としても知られている。患者が本発明の化合物及び少なくとも1つのさらなる治療剤を別々であるが同時に又は重複して治療投与を受ける任意の及び全ての治療計画は、本発明の範囲内である。本明細書に記載される補助治療的投与の一実施形態では、典型的には患者は1つ以上の成分の治療的投与で一定期間、安定化され、その後、別の成分の投与を受ける。
【0072】
本発明の併用療法は、同時に投与することもできる。同時投与とは、両方の成分を有するもしくは含有する単一の医薬組成物もしくはデバイスの形態で、又はそれぞれが同時に投与される成分の1つを含む別々の組成物もしくはデバイスとして、各々の成分が一緒に投与される治療計画を意味する。同時に組み合わせるための別々の各々の成分のこの組み合わせは、部品のキットの形で提供されてもよい。
【0073】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適した薬剤としては、例えば以下が挙げられる:
【0074】
TOFA(5-(テトラデシルオキシ)-2-フロ酸)、フィルソコスタット(以前はGS 0976として知られた)、PF-05221304、及びWO2016/112305に開示されたACC阻害剤等のACC阻害剤;
アンジオテンシンII受容体拮抗薬;
エナラプリル等のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;
セロンセルチブ(以前はGS-4997として知られた)又はSRT-015等のASK1(アポトーシスシグナル調節キナーゼ1;MAP3K5)阻害剤;
エムリカサン等のカスパーゼ阻害剤;
混合カテプシンB/C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤等のカテプシンB阻害剤(VBY-376等);
混合CCR2/CCR5ケモカイン拮抗薬等のCCR2ケモカイン拮抗薬(セニクリビロック等);
CCR5ケモカイン拮抗薬;
コビプロストン等の塩素イオンチャネル刺激薬;
コレステロール可溶化剤;
【0075】
BI 1467335(以前はPXS-4728Aとして知られた)等の銅アミンオキシダーゼ3(AOC3)阻害剤;
LCQ908又はGSK-3008356等のジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ1(DGAT1)阻害剤;
PF-06865571等のジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)阻害剤;
リナグリプチン等のジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)阻害剤;
INT-747(オベチコール酸)、クリオフェクサー(以前はGS-9674又はPX-102として知られた)、トロピフェクサー(以前はLJN452として知られた)、EDP-305又はLMB-763等のファルネソイドX受容体(FXR)作動薬;
【0076】
線維芽細胞増殖因子(FGF)及びその類似体、例えばFGF19の長時間作用型類似体(例:アルダフェルミン;以前はNGM-282として知られた)又はFGF21の長時間作用型類似体(例:TEV-47948;Bio89-100もしくはARK01もしくはPF-05231023とも示される);
INT-767等のFXR/TGR5デュアルアゴニスト;
GR-MD-02等のガレクチン-3阻害剤;
リラグルチド又はエクセナチド等のグルカゴン様ペプチド1(GLP1)作動薬;
グルカゴン様ペプチド1(GLP1)/グルカゴンデュアルアゴニスト(例えば共受容体作動薬);
デュアルグルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)、及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬(例えば、チルゼパチド(以前はLY3298176として知られた));
グルタチオン前駆体;
【0077】
混合カテプシンB/C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤等のC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤(VBY-376等);
スタチン等のHMG CoAレダクターゼ阻害剤(アトルバスタチン等);
R05093151等の11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD1)阻害剤;
IL-1β拮抗薬;
混合IL-6/IL-1β/TNFαリガンド阻害剤等のIL-6拮抗薬(BLX-1002等);
ペグイロデカキン等のIL-10作動薬;
【0078】
抗IL-11抗体又はIL-11拮抗薬;
KD-025等のIL-17拮抗薬;
ボリキシバット(以前はSHP-626として知られた)等の回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤;
選択的αvβ1-阻害剤等のインテグリン阻害剤(例えば、PLN-1474、又はWilkinson et al.,Eur.J.Pharmacol.,842,239-247(2019)で報告されているもの);
PF-06835919等のケトヘキソキナーゼ阻害剤;
メトレレプチン等のレプチン類似体;
混合5-リポキシゲナーゼ/PDE3/PDE4/PLC阻害剤等の5-リポキシゲナーゼ阻害剤(タイペルカスト等);
【0079】
アリポジーンティパルボベック等のLPL遺伝子刺激剤;
シムツズマブ(以前はGS-6624として知られた)のような抗LOXL2抗体等のリシルオキシダーゼホモログ2(LOXL2)阻害剤、又はWO2017/136870に開示されたもの等の小分子阻害剤;
MCC950等のNOD様受容体ファミリーピリンドメイン含有タンパク質3(NLRP3)インフラマソーム小分子阻害剤;
オメガ-3多価不飽和脂肪酸及びその誘導体(例えば、イコサブテート及びUS8,735,436 B2に開示された例;
25-ヒドロキシコレステロール3-サルフェート及び25-ヒドロキシコレステロール3、25-ジサルフェート等のオキシステロールサルフェート;
【0080】
ASP-9831等のPDE4阻害剤;
PPARα作動薬(例えば、混合PPARα/δ作動薬エラフィブラノール(以前はGFT-505として知られた)、混合PPARα/γ/δ作動薬ラニフィブラノール、又は混合PPARα/γ作動薬サログリタザール);
ピオグリタゾン等のPPARγ作動薬;
セラデルパー等のPPARδ作動薬;
KD-025等のRho関連プロテインキナーゼ2(ROCK2)阻害剤;
レモグリフロジンエタボネート等のナトリウムグルコーストランスポーター-2(SGLT2)阻害剤;
リコグリフロジン等のナトリウムグルコーストランスポーター-1/2(SGLT1/2)阻害剤;
アラムコール又はCVT-12805等のステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤;
MGL-3196又はVK2809等の甲状腺ホルモン受容体β作動薬;
【0081】
腫瘍壊死因子α(TNFα)リガンド阻害剤;
メルカプタミン等のトランスグルタミナーゼ阻害剤及びトランスグルタミナーゼ阻害剤前駆体;
A119505,A220435,A321842,CPT633,ISIS-404173,JTT-551,MX-7014,MX-7091,MX-7102,NNC-521246,OTX-001,OTX-002,又はTTP814等のPTPlb阻害剤;並びに、
ナマシズマブ;カンナビノイド1受容体(CB1)を不活性型に安定化させる抗体(ナマシズマブ。
【0082】
いくつかの実施形態では、1以上のさらなる治療剤は、アセチルサリチル酸、アリポジーンティパルボベック、アラムコール、アトルバスタチン、BLX-1002、セニクリビロク、コビプロストン、コレセベラム、エムリカサン、エナラプリル、GFT-505、GR-MD-002、ヒドロクロロチアジド、イコサペント エチルエステル(エイコサペンタエン酸エチル)、IMM-124E、KD-025、リナグリプチン、リラグルチド、メルカプトアミン、MGL-3196、オベチコール酸、オレソキシム。ペグイロデカキン、ピオグリタゾン、GS-9674、レモグリフロジン エタボネート、SHP-626、ソリスロマイシン、ティペルカスト、TRX-318、ウルソデオキシコール酸、及びVBY-376から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、1又は複数のさらなる治療薬の1つは、アセチルサリチル酸、アリポジーンチパルボベック、アラムコール、アトルバスタチン、BLX-1002、及びセニクリビロックから選択される。
【0084】
一実施形態では、本発明は、以下の方法に関する:
【0085】
プロテインキナーゼMKK4の阻害;
プロテインキナーゼJNK1及びMKK7よりもMKK4を選択的に阻害し、肝再生を促進すること、又は肝細胞死を防止すること;
急性、急性増悪した、又は慢性の肝疾患の治療;
【0086】
急性及び慢性の、又は急性増悪した肝疾患、例えば、B型、C型、E型肝炎、エプスタイン・バー・ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス及び他のウイルスによる肝炎等の急性及び慢性ウイルス性肝炎、全てのタイプの自己免疫性肝炎、原発性硬化性肝炎、アルコール性肝炎の治療;
【0087】
代謝性肝疾患、例えば、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝(NAFL)等の脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性脂肪肝炎(ASH)、ウィルソン病(Morbus Wilson)、ヘモクロマトーシス、α1-アンチトリプシン欠乏症、グリコーゲン貯蔵疾患の治療;
【0088】
全てのタイプの肝硬変、例えば、原発性胆汁性肝硬変、エチル中毒性肝硬変、特発性肝硬変の治療;
【0089】
急性(劇症)又は慢性肝不全、例えば、アセトアミノフェン(パラセタモール)誘発性肝不全、α-アマニチン誘発性肝不全、薬物誘発性肝毒性、例えば、抗生物質、非ステロイド性抗炎症薬及び抗痙攣薬によって引き起こされる肝不全、ハーブサプリメント(カバ、エフェドラ、スカルキャップ、ペニーロイヤル等)によって引き起こされる急性肝不全等の中毒性肝不全、バッドキアリ症候群等の血管疾患による肝疾患及び肝不全、原因不明の急性肝不全、右心不全による慢性肝疾患の治療;
【0090】
ガラクトース血症、嚢胞性線維症、ポルフィリン症、肝虚血灌流障害、肝移植後の過小グラフト症候群、原発性硬化性胆管炎もしくは肝性脳症の治療;又は、
【0091】
変形性関節症もしくは関節リウマチの治療;
【0092】
該方法は、上で定義された化合物又は組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0093】
一実施形態において、本発明の化合物は、治療される対象の0.2~15mg/kg又は0.5~12mg/kgの投与量で投与される。化合物は1日1回又は数回投与することができる。化合物は4~12週間にわたって投与される。
【0094】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【実施例
【0095】
略語:
ATP = アデノシン三リン酸
DCM = ジクロロメタン
4-DMAP = (4-)ジメチルアミノピリジン
DMA = ジメチルアセトアミド
DMF = ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
DPPA = ジフェニルホスホリルアジド
DTT = ジチオスレイトール
EtOH = エタノール
EtOAc = 酢酸エチル
【0096】
FCC = フラッシュカラムクロマトグラフィー
HEPES = 2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸
HOBt = ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC = 高速液体クロマトグラフィー
IPA = イソプロピルアルコール(又はiPrOH)
LCMS = 液体クロマトグラフィー質量分析
MeCN = アセトニトリル
MeOH = メタノール
NaHCO = 炭酸水素ナトリウム
NBS = N-ブロモスクシンイミド
【0097】
NMP = N-メチルピロリドン
NMR = 核磁気共鳴
Pd(dppf)Cl = [1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)二塩化物
PE = 石油エーテル
rt又はRT = RT
TEA = トリエチルアミン
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
TLC = 薄層クロマトグラフィー
【0098】
[実施例]
実施例01:2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸の合成
化学式:CNO(MW:203.10)
【0099】
【化4】
【0100】
工程1:1-ブロモ-2,4-ジフルオロ-3-ニトロベンゼンの合成
SO(400mL)中の1,3-ジフルオロ-2-ニトロベンゼン(1eq.、50.0g、314.29mmol)の撹拌溶液に、NBS(1.20eq.、67.12g、377.14mmol)を加え、反応混合物を80℃に16時間加熱した。反応をTLC(100%ヘキサン)でモニターし、完了後、反応混合物を氷冷水に注ぎ、EtOAc(2L)で抽出した。有機層を分離し、飽和NaHCO溶液及びブラインで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をFCC(n-ヘキサン中の勾配1-5%EtOAc)によって精製して、1-ブロモ-2,4-ジフルオロ-3-ニトロベンゼン(50g、67%)を黄色の液体として得た。
【0101】
分析データ:H NMR(400MHz,CDCl)δ7.78-7.71(m,1H),7.09-7.03(m,1H)。
【0102】
工程2:3-アミノ-2,4-ジフルオロ安息香酸メチルの合成
MeOH(1000mL)中の1-ブロモ-2,4-ジフルオロ-3-ニトロベンゼン(1eq.、60.0g、252.21mmol)の撹拌溶液を窒素で15分間脱気した。TEA(5eq.、127.49g、1261.03mmol)を加え、反応混合物をさらに5分間脱気した。Pd(dppf)Cl x DCM(0.10eq.、20.58g、25.22mmol)を加え、反応混合物を一酸化炭素で2回フラッシュした。反応混合物を室温で30分間撹拌し、さらに一酸化炭素(200psi)下で100℃に12時間加熱した。反応をTLC(100%DCM)でモニターした。完了後、反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。未精製のジエチルエーテルを加え、室温で30分間撹拌し、セライトのパッドを通して濾過し、揮発性物質を減圧下で除去して、3-アミノ-2,4-ジフルオロ安息香酸メチル(38.0g、未精製)を黄色のシロップとして得た。
【0103】
分析データ:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.08-6.96(m,2H),5.46(s,2H),3.81(s,3H)
【0104】
工程3:2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸メチルの合成
30%H(68.40mL)を撹拌し、TFA(205mL)中の3-アミノ-2,4-ジフルオロ安息香酸メチル(19.0g,101.52mmol)溶液を室温で60分間かけて滴下した。反応混合物を80℃で1時間撹拌した。反応をTLC(ヘキサン中30%EtOAc)でモニターした。完了後、反応混合物を砕いた氷に注ぎ、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄した。未精製の化合物を真空下で乾燥させて、2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸メチル(19.0g、未精製)を薄茶色の固体として得た。これをさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0105】
分析データ:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.30-8.21(m,1H),7.62(t,J=9.29Hz,1H),3.90(d,J=0.98Hz,3H)。
【0106】
工程4:2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸の合成
THF(200mL)中の2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸メチル(19.0g、87.51mmol)の撹拌溶液に、HO(100mL)に溶解したLiOHxHO(1.20eq.、4.40g、105.01mmol)を30分かけて室温で一部分ずつ加えた。反応混合物をさらに室温で3時間撹拌した。反応をTLC(DCM中の10%MeOH)でモニターした。完了後、反応混合物を1N HCl溶液で中和し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を1N HCl溶液で酸性化し、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸(15.50g、未精製)をオフホワイトの固体として得た。
【0107】
分析データ:H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.85(br s,1H),8.27-8.16(m,1H),7.62-7.53(m,1H)。
【0108】
実施例02:N-(3-(1-(2,6-ジクロロベンゾイル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-2,6-ジフルオロフェニル)プロパン-1-スルホンアミドの合成
化学式:C3028BClS(MW:678.34)
【0109】
【化5】
【0110】
工程1:(5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)(2,4-ジフルオロ-3-ニトロフェニル)メタノンの合成
工程1a:2,4-ジフルオロ-3-ニトロ安息香酸(12.4g、60.9mmol)をニトロメタン(50ml、全量の20%)に懸濁し、塩化オキサリル(5.44mL,63.4mmol)及びDMF(0.197mL,2.54mmol)を滴下した。
【0111】
工程1b:第2のフラスコ内で、5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(10g、50.8mmol)と塩化アルミニウム(33.8g,254mmol)をニトロメタン(204ml、全量の80%)に溶解し、約1時間撹拌した。溶液と共にその場で生成した塩化2,4-ジフルオロ-3-ニトロベンゾイルを、10分間にわたって第2のフラスコに加えた。溶液を55℃で一晩撹拌した。TLC分析は反応の完了を示した。混合物を0℃に冷却し、MeOH(102ml)を滴下して加えた後、生成物が沈殿し始めた。水(169ml)を加え、沈殿物を濾別し、真空内で乾燥させた。生成物はベージュ色の固体として得られた(15.2g;75%の収率;95%の純度)。
【0112】
分析データ:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ13.12(br s,1H),8.64(d,J=2.45Hz,1H),8.52-8.48(m,1H),8.38-8.34(m,1H),8.07-7.99(m,1H),7.64(t,J=9.29Hz,1H).
【0113】
工程2:(3-アミノ-2,4-ジフルオロフェニル)(5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メタノンの合成
(5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-(2,4-ジフルオロ-3-ニトロフェニル)メタノン(15.1g、37.5mmol)をEtOAc(659mL)とTHF(659mL)に懸濁した。混合物を60℃に加熱し、塩化スズ(II)二水和物(29.6g、131mmol)を一部分ずつ加えた。2日間撹拌した後、TLC分析は反応の完結を示した。混合物を室温に冷却し、半飽和NaHCO溶液を加えた。沈殿物を海砂とセライトのパッドで濾別した。濾液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。固体をMeCN(50ml)に懸濁し、濾別し、真空内で乾燥させた。(3-アミノ-2,4-ジフルオロフェニル)-(5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メタノン(11.9g、31.8mmol、収率85%)が淡いオレンジ色の固体として得られた。
【0114】
工程3:(3-(3-アミノ-2,4-ジフルオロベンゾイル)-5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)(2,6-ジクロロフェニル)メタノンの合成
THF(338mL)中の(3-アミノ-2,4-ジフルオロフェニル)-(5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メタノン(11.9g、31.7mmol)の氷浴冷却溶液に、TEA(4.65mL、33.3mmol)を加えた。2,6-ジクロロベンゾイルクロリド(4.60mL、32.1mmol)を滴下し、続いて4-ジメチルアミノピリジン(0.194g、1.59mmol)を加えた。氷浴を取り除き、出発物質が完全に消費されるまで混合物を室温で撹拌した。溶媒の量を約1/10の体積に減少させ、残留物をEtOAc(500ml)で希釈した。有機相を1M HClで2回(各100ml)、ブラインで1回(100ml)洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残留物をTHF(66ml)に溶解した。n-ヘプタン(330ml)を激しく撹拌しながら一部分ずつ加え、完了後、室温で1時間撹拌を続けた。沈殿物を濾別し、真空で乾燥させた。(3-アミノ-2,4-ジフルオロフェニル)-[5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロベンゾイル)ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]メタノンが、ベージュ色の固体として得られた(14.7g、26.5mmol、84%の収率)。
【0115】
工程4:N-(3-(5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-2,6-ジフルオロフェニル)プロパン-1-スルホンアミドの合成
工程4a:THF(76.2mL)中の(3-アミノ-2,4-ジフルオロフェニル)-[5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロベンゾイル)ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]メタノン(8.00g、14.5mmol)の冷却溶液(-10℃、MeOH/氷)に、TEA(15.5mL、111mmol)を加えた。THF(3.6mL)中の1-プロパンスルホニルクロリド(3.58mL、31.8mmol)の溶液を滴下して加え、TLCが完了を示すまで、反応混合物を-10℃で撹拌した。
【0116】
工程4b:冷溶液に2N NaOH(8eq.、61mL)を加え、溶液を室温に温めた。TLCがジスルホンアミドの完全な加水分解を示した後、混合物を1M HCl(pH=2)で酸性化し、EtOAcで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空で除去した。残留物をEtOAc(50mL)に溶解し、さらなる沈殿物が形成されなくなるまでn-ペンタンで処理した。固体を濾別し、真空で乾燥させた(生成物の主要画分)。濾液を減圧下で濃縮し、溶離液としてPE/EE 30%を使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した(生成物の2番目の画分)。
【0117】
工程5:(3-(3-アミノ-2,4-ジフルオロベンゾイル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)(2,6-ジクロロフェニル)メタノンの合成
乾燥1,4-ジオキサン(100mL)中の(3-(3-アミノ-2,4-ジフルオロベンゾイル)-5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)(2,6-ジクロロフェニル)メタノン(1eq.、7.0g、13.33mmol)の撹拌溶液に、ビス(ピナコラト)二ホウ素(1.20eq、4.06g、16.00mmol)を加え、続いて酢酸カリウム(溶融、2.50eq、3.28g、33.33mmol)を加えた。Pd(dppf)Cl×DCM(0.05eq.、0.54g、0.67mmol)を混合物に加え、撹拌を80℃で3時間続けた。反応の進行をTLC(ヘキサン中20%EtOAc)及びLC-MSでモニターした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、セライトのパッドを通して濾過した。得られた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をジエチルエーテル(200mL)に溶解し、濾過し、有機層を減圧下で濃縮した。粗生成物をアセトニトリルで磨砕し、続いて濾過して、(3-(3-アミノ-2,4-ジフルオロベンゾイル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)(2,6-ジクロロフェニル)メタノン5(7.0g、)を薄茶色の固体として得た。
【0118】
実施例03:4-(3-(2,4-ジフルオロ-3-(プロピルスルホンアミド)ベンゾイル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)-N-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンズアミドの合成
工程1:4-ブロモ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンズアミドの合成
【0119】
【化6】
【0120】
4-ブロモベンゾイルクロリド(1eq.、0.200mg、0.91mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、トリエチルアミン(4eq.、0.262mg、3.64mmol)を加え、続いて2-(アミノオキシ)エタン-1-オールを加えた(1eq.、0.070mg、0.91mmol)。反応をTLCでモニターした。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を氷冷水に注ぎ、DCM(10ml)で抽出した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、次に減圧下で濃縮して、粗化合物を得た。カラムクロマトグラフィーにより粗化合物を精製し、4-ブロモ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンズアミド(0.120g、50%)を得た。
【0121】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.85(s,1H),7.72(m,4H),4.76(s,1H),3.92(m,2H),3.60(m,2H)
LCMS:260.80[M+H],261.80[M+H],261.8[M+Na],260.8[M+Na]
【0122】
工程2:4-(3-(2,4-ジフルオロ-3-(プロピルスルホンアミド)ベンゾイル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)-N-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンズアミド
【0123】
【化7】
【0124】
N-(3-(1-(2,6-ジクロロベンゾイル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-2,6-ジフルオロフェニル)プロパン-1-スルホンアミド(180mg、0.265mmol)、4-ブロモ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンズアミド(75mg、290mmol)及びフッ化カリウム(46.2mg、0.795mmol)を1,4-ジオキサン(0.9mL)と水(0.45mL)に懸濁し、アルゴンで5分間脱気した。Pd(dppf)Cl(8.09mg、0.0111mmol)を加え、混合物を90℃に6時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残留物を10mLのMeOHに溶解した。炭酸カリウム(1g)を加え、混合物を室温で撹拌した。6時間後、水を加え、HCl水溶液(1N)でpHを約7に調整した。水相をEtOAcで3回抽出し、合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空で除去した。生成物を分取RP-HPLCにより精製した。
【0125】
分析データ:
1H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.94(s,1H),11.85(s,1H),9.66(s,1H),8.74(d,J=8.7Hz,2H),8.10(s,1H),7.89(dd,J=19.2,8.2Hz,4H),7.70-7.58(m,1H),7.35(t,J=8.7Hz,2H),4.79(t,J=5.6Hz,1H),3.95(t,J=4.6Hz,2H),3.69-3.61(m,2H),3.18-3.10(m,2H),1.88-1.77(m,2H),1.00(t,J=7.4Hz,3H).
LC-MS:559.20[M+H]
【0126】
実施例2及び3と同様に、以下の生成物を調製した:
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
実施例15:生物活性
本発明の化合物のキナーゼ活性は、ProQinase GmbH(フライブルク,ドイツ)が提供する33PanQinase(商標)アッセイサービスを用いて測定した。アッセイ条件の詳細は、ProQinaseのウェブサイト(https://www.proqinase.com/products-services-biochemical-assay-services/kinase-assays)に開示されている。
要約すると、全てのキナーゼアッセイは、PerkinElmer(ボストン,MA,USA)の96ウェル FlashPlates(商標)を用いて、50μlの反応量で実施した。反応カクテルは、以下の順序で4つのステップでピペッティングした。
・20μlのアッセイバッファー(標準バッファー)
・5μlのATP溶液(HO溶液)
・5μlの被験化合物(10%DMSO液)
・20μlの酵素/基質ミックス
【0131】
全てのタンパク質キナーゼアッセイは、70mM HEPES-NaOH pH7.5、3mM MgCl、3mM MnCl、3μM Na-オルトバナジン酸、1.2mM DTT、50μg/ml PEG20000、ATP(可変濃度、各キナーゼの見かけのATP-Kmに対応)、[γ-33P]-ATP(ウェルあたり約8×1005cpm)、タンパク質キナーゼ及び基質を含んでいた。
反応カクテルを30℃で60分間インキュベートした。反応を50μlの2%(v/v)HPOで停止し、プレートを吸引し、200μlの0.9%(w/v)NaClで2回洗浄した。33Piの導入は、マイクロプレートシンチレーションカウンター(Microbeta、Wallac)を用いて決定した。
全てのアッセイは、BeckmanCoulter/SAGIANTMコアシステムで行った。
【0132】
単一濃度アッセイの場合、試験化合物の有効性は残存活性%として表される。IC50値を決定するために、100μM~3nM(10濃度)の最終濃度範囲で段階的希釈を試験した。IC50値の決定のための適合モデルは、パラメータ「頂点(top)」を100%に固定し、「底(bottom)」を0%に固定した「シグモイド応答(可変勾配)」であった。使用した適合方法は最小二乗法であった。
【0133】
MKK4有効性:
【0134】
【表4】
【0135】
BRaf、JNK1、及びMKK7に対する試験化合物の選択性は、全てオフターゲットと称され、IC50(オフターゲット)/IC50(MKK4)の比によって計算され、以下の通り分類された:
【0136】
【表5】
【0137】
結果を以下の表1に示す。
【0138】
【表6】