(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】鉄-乳タンパク質複合体とプロバイオティクス細菌とを含む粉末形態の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20250225BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20250225BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20250225BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250225BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20250225BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20250225BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20250225BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20250225BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250225BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250225BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20250225BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20250225BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/745
A61K35/20
A61K38/17
A61K33/42
A61K33/26
A61P7/06
A61P3/02
A61P43/00 121
A61K9/14
A23L33/135
A23L33/19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000426
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2019526464の分割
【原出願日】2017-12-14
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ボークィー, バートランド
(72)【発明者】
【氏名】フスニ, ジョースカー
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/029978(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103349074(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164123(US,A1)
【文献】国際公開第2014/148887(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/148910(WO,A1)
【文献】Arch Dis Child., 1991, Vol.66, p.1390-1394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であり、前記乳タンパク質がカゼインであることを特徴とする、少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の組成物であって、前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、
前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、組成物。
【請求項2】
前記鉄-乳タンパク質複合体が外因性の鉄を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記鉄-乳タンパク質複合体が非ミセル複合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記鉄-乳タンパク質複合体が、外因性のリンを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記鉄-乳タンパク質複合体が、外因性のオルトリンを含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記鉄-乳タンパク質複合体中の前記鉄がFe
3+の形態であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
粉末形態の前記組成物が栄養組成物であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記鉄源が、組成物100g当たり1~300mgの鉄を提供するような量で存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であり、前記乳タンパク質がカゼインであることを特徴とする、少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌を含む鉄強化用粉末形態組成物における鉄源の使用であって、前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、使用。
【請求項10】
個体における鉄欠乏症の予防、軽減及び/又は治療に使用するための、少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌と添加鉄源とを含む粉末形態の食用組成物であって、
前記添加鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であり、前記乳タンパク質がカゼインであり、
前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記食用組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、
前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、食用組成物。
【請求項11】
粉末形態の組成物を製造するための方法であって、
a.粉末形態の第1の組成物を用意する工程と、
b.粉末形態の前記第1の組成物に鉄源を混合して、粉末形態の第2の組成物を得る工程と、
c.前記鉄源の前若しくは前記鉄源と同時に少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌を粉末形態の前記第1の組成物に混合する工程、又は、前記鉄源の添加の後に少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌を粉末形態の前記第2の組成物に混合する工程と
を含み、前記鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であり、前記乳タンパク質がカゼインであり、前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記粉末形態の組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、
前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、方法。
【請求項12】
製品を製造するための方法であって、
少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の組成物を液体で再構成する工程を含み、
前記鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であり、前記乳タンパク質がカゼインであり、前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記粉末形態の組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、方法。
【請求項13】
少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌と鉄源とを含み、前記鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であり、前記乳タンパク質がカゼインである、液体製品であって、前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記製品1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、液体製品。
【請求項14】
栄養補助食品である、請求項13に記載の液体製品。
【請求項15】
少なくとも1種の生きているプロバイオティクス細菌と添加鉄源とを含む粉末形態の組成物から液体で製品への再構成中の前記生きているプロバイオティクス細菌の減少を低減又は防止するための方法であって、
前記添加鉄源として鉄-乳タンパク質複合体が使用され、前記乳タンパク質がカゼインであり、前記生きているプロバイオティクス細菌が、乾燥重量基準で、前記粉末形態の組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で存在
し、
前記生きているプロバイオティクス細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記生きているプロバイオティクス細菌の生存能が、前記鉄源の存在によって損なわれない、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記鉄-乳タンパク質複合体が乳タンパク質でキレートされた鉄カチオンで形成された複合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクス細菌と少なくとも1種の鉄-乳タンパク質複合体とを含む粉末形態の組成物に関する。このような鉄-乳タンパク質複合体は、有利なことに、細菌の生存能を有意に低減させず、したがって、このような鉄源は、プロバイオティクス細菌を含む粉末形態の組成物を強化するために有利に使用される。
【背景技術】
【0002】
有益な細菌、特にプロバイオティクス細菌は、広範な製品、即ち、液体で再構成される粉末形態の製品、例えば、乳児、小児、妊娠中、授乳中若しくは妊娠前の女性、高齢者、又は有害な医学的状態が原因で特定の栄養を必要とする人々のための栄養組成物に添加される。このような製品は、通常、消費者の栄養必要量を満たすために、多種多様な多量栄養素及び微量栄養素を含む。栄養目的のために、消費者が適切な量のプロバイオティクス細菌及び他の栄養素を摂取することが最も重要である。
【0003】
特に重要な微量栄養素は鉄である。世界中で、鉄欠乏症は、最も広く認められる栄養素欠乏の1つである。ヒトでは、鉄は、酸素の結合及び輸送、遺伝子調節、神経機能、免疫機能、並びに細胞の成長及び分化の調節などの多数の生物学的過程の機能に不可欠である。鉄欠乏症は、貧血、並びに甲状腺、免疫及び精神機能、身体能力、認知発達の障害、インスリン及び疲労に対する感度の増大などの様々な健康問題をもたらし得る。鉄欠乏症は、妊婦及び授乳中の女性、並びに子供において特に蔓延している。
【0004】
鉄を用いた食品強化は、鉄欠乏症に対処するための1つのアプローチである。したがって、食事組成物又は補助食品、特に乳児、幼児、妊娠前、妊娠中及び/又は授乳中の女性のための食事用組成物又は補助食品中に添加鉄源を含むことが、非常に望ましい。多様な鉄化合物が、食品製品及び栄養補助食品における鉄強化剤として使用されてきた。例えば、硫酸第一鉄は、その比較的安価かつ高い生物学的利用能のため、広く使用されている。
【0005】
しかし、本発明者らは、いくつかの鉄化合物が、プロバイオティクス細菌を含有する組成物を強化するために使用される場合、プロバイオティクス細菌の生存能に有害な効果を有することを見出した(同時係属出願の国際出願PCT/EP2016/063170号及び欧州特許出願公開第16198292.1号も参照されたい)。
【0006】
ほとんどの場合、プロバイオティクス細菌の利益は、摂食時に細菌が生存しているときにのみ得られる。したがって、生存能のあるプロバイオティクス細菌の減少を補償し、適切な量の生菌を消費者に確実に供給するために、プロバイオティクス細菌は通常、製品中に過剰に添加される。しかし、過剰添加は非常に費用がかさみ、かつ廃棄を生じるので、この解決策は完全に満足するものではない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、プロバイオティクス細菌と添加鉄源とを含む組成物を提供することであり、この組成物では、プロバイオティクス細菌の生存能は、添加鉄源の存在によって損なわれない。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、鉄-乳タンパク質複合体が、プロバイオティクス細菌を含有する組成物において鉄源として使用される場合、細菌の生存能を低減させないことを見出した。
【0009】
第1の態様では、本発明は、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の組成物を提供する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を含む粉末形態の組成物の強化のための鉄源の使用に関する。
【0011】
第3の態様では、本発明は、粉末形態の組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、
a)粉末形態の第1の組成物を用意する工程と、
b)粉末形態の第1の組成物に鉄源を混合して、粉末形態の第2の組成物を形成する工程と、
c)鉄源の前若しくは鉄源と同時に少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を粉末形態の第1の組成物に混合する工程、又は、鉄源の添加の後に少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を粉末形態の第2の組成物に混合する工程と
を含み、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする。
【0012】
第4の態様では、本発明は、製品を製造するための方法であって、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の組成物を液体で再構成する工程を含み、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする、方法を提供する。
【0013】
第5の態様では、本発明は、本発明の方法により得ることが可能な、又は得られる製品を提供する。
【0014】
第6の態様では、本発明は、食用製品である本発明の製品を個体に与える工程を含む、個体に栄養を提供する方法を提供する。
【0015】
第7の態様では、本発明は、個体における鉄欠乏症の予防、軽減及び/又は治療に使用するための、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の食用組成物であって、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする、食用組成物を提供する。
【0016】
第8の態様では、本発明は、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と添加鉄源とを含む粉末形態の組成物の再構成中にプロバイオティクス細菌の減少を低減及び/又は防止するための方法であって、添加鉄源として鉄-乳タンパク質複合体が使用されることを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】組成物100g当たりそれぞれ10mg及び30mgの鉄を有する組成物における、ラクトバチルス・ラムノサス(CGMCC 1.3724として寄託)の生存能の減少についてのグラフ表示である。2つの異なる鉄源、すなわち、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄と、鉄-カゼイン複合体とを比較する。生存能のあるラクトバチルス・ラムノサスの減少は、鉄-カゼイン複合体の場合に両方の鉄濃度で有意に低い。
【
図3】
乳児用調合乳におけるB.ロンガムに対する鉄源の影響。
【
図4】
L.パラカゼイの生存に対する鉄源の影響。
【
図5】
乳児用調合乳におけるL.パラカゼイの生存に対する鉄源の影響。
【
図6】
乳児用調合乳におけるL.ラムノサスの生存に対する鉄源の影響。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で使用するとき、用語「鉄-乳タンパク質複合体」は、乳タンパク質でキレートされた鉄カチオンで形成された複合体を示す。乳タンパク質は、カゼイン、乳清タンパク質、及びこれらの混合物、並びにカゼイン又は乳清タンパク質の誘導体又は画分を包含することが意図される。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「プロバイオティクス細菌」は、宿主の健康又は幸福に有益な効果を有する生菌細胞調製物を指す[Salminen S,et al.,「Probiotics:how they should be defined」,Trends Food Sci.Zechnol,(1999),10,107~10]。
【0020】
細菌は、制御された培養条件下で増殖し、コロニー若しくは懸濁液を形成することができる場合、又は微生物代謝活性及び/若しくは膜完全性を、例えばフローサイトメトリーなどの当業者に既知の方法を使用して確認することができる場合、「生きている」と見なされる。乾燥プロバイオティクス細菌は、液体、例えば、水性液体、好ましくは水で細菌を再構成した後に、上記のように、増殖することができる場合、及び/又は膜完全性を確認することができる場合、生きていると考えられる。
【0021】
本発明において、「再構成」は、液体、例えば、水性液体、好ましくは水、分析微生物学で使用されるような特定の再構成培地、又はミルク若しくはジュースのような飲料における粉末の溶解又は懸濁を指す。再構成に使用される液体は、冷たくてもよいし、温かくてもよい。好ましくは、これは、水性液体、好ましくは水で再構成することを指す。
【0022】
「水性液体」は、本発明の目的において、少なくとも1つの水相を含む液体として意図される。これは、例えば、エマルション、水溶液、又は分散液、又は水であり得る。好ましくは、これは、水中油型エマルション、水溶液又は懸濁液又は水である。より好ましくは、これは、水溶液又は懸濁液又は水である。最も好ましくは、これは水である。
【0023】
用語「鉄」は、本明細書では、特に指定しない限り、使用される鉄源に応じて、Fe2+又はFe3+のいずれかを示すことを意図する。
【0024】
「添加鉄源」は、本発明において、鉄補給効果のみのために組成物に添加される第一鉄又は第二鉄化合物として意図される。その性質に応じて、組成物は、他の成分、例えば、乳、果物、野菜、穀物又は繊維成分に由来する鉄を含んでもよい。このような成分中に存在する鉄は、鉄含有量ではなくその全体的な栄養価を主な目的として加えられる成分中にもともと存在しているものであることから、本明細書では「添加鉄源」として意図されていない。
【0025】
鉄源は、本発明の目的に関し、組成物中の「実質的に唯一の添加鉄源」であることが意図され、ただし、他の添加鉄源は、生存能のあるプロバイオティクス細菌の統計的に有意な減少を引き起こさないように十分に少量で使用されるものとする。当業者は、本出願の実施例に記載されている方法を適用し、結果の分析のために一般的に既知の統計的手法を適用することによって、生存能のある細菌の統計的に有意な減少が引き起こされるかどうかを評価することができる。
【0026】
用語「外因性」は、複合体中の鉄又はリンを指す場合、複合体の製造過程中に添加された鉄及び/又はリンを指し、したがって、乳タンパク質により自然にキレートされていなかった鉄又はリンを指す。
【0027】
用語「栄養組成物」は、完全栄養又は補助栄養を個体に提供すること(即ち、そのような個体の必須の栄養必要量を満たすこと)を意図した製品を示し、その顕著な目的は栄養を提供することである。栄養組成物は、特別な食品(例えば、経管栄養組成物又は小児対象用組成物)を必要とする、乳児、小児、妊婦若しくは授乳中の女性、高齢者又は有害な医学的状態を有する人々などの、特別な栄養必要量を有する個体に、特定の栄養素を提供することを目的とする。嗜好性が顕著であり、栄養価がさほど重要ではない製品は、「栄養製品」から除外される。栄養組成物は、好ましくは、タンパク質、脂肪、炭水化物、及び多様な微量栄養素を含む。
【0028】
本発明において、用語「乳児」は、出生~12ヶ月齢の間の子供を意味する。用語「小児」は、12ヶ月齢~5歳の間、好ましくは12ヶ月齢~3歳の間の子供を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「乳児用調合乳」という表現は、乳児による特定の栄養的使用を目的とし、それ自体によって、このカテゴリーの人の栄養所要量を満たす食品を指す(乳児用調合乳及びフォローオン調合乳に関する2006年12月22日の欧州委員会指令91/321/EEC 2006/141/ECのArticle 2(c))。これは、乳児を対象とし、Codex Alimentarius(Codex STAN72-1981)で定義されているような栄養組成物、及び乳児用特別食(特別な医療目的用の食品を含む)も指す。乳児用調合乳は、スターター乳児用調合乳及びフォローアップ又はフォローオン調合乳を包含し得る。一般的に、スターター調合乳は、母乳代用物として、出生時からの乳児用である。フォローアップ又はフォローオン調合乳は、6か月目以降から与えられる。これは、このカテゴリーに該当する乳児の次第に多様化される食事において主要な液体要素を構成する。乳児に乳児用調合乳を単独で与えることができること、又は乳児用調合乳は、人乳の補助食品又は補足物として使用することができることを理解されたい。
【0030】
「グローイングアップミルク」(又はGUM)は、1年目以降から与えられる。これは、一般に、小児の特定の栄養必要量に適合された乳系飲料である。
【0031】
「乳児食」という表現は、乳児又は子供、例えば小児による、生後1年間の特定の栄養的用途を目的とする食品を意味する。
【0032】
「乳児用穀物組成物」という表現は、乳児又は子供、例えば小児による、生後1年間の特定の栄養用途を目的とする、穀物系の食品を意味する。
【0033】
用語「強化剤」は、母乳又は乳児用調合乳と混合するのに好適な栄養組成物を指す。「母乳」は、母親の乳若しくは母親の初乳又はドナーの乳若しくはドナーの乳の初乳として理解されるべきである。
【0034】
用語「補助食品」は、個体の栄養を補う、又は補足するために使用することができる組成物を指す。
【0035】
用語「プレバイオティクス」は、ヒトの結腸における健康な細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有益に影響する難消化性炭水化物を意味する(Gibson GR,Roberfroid MB.Dietary modulation of the human colonic microbiota:introducing the concept of prebiotics.,J Nutr.1995;125:1401~12)。
【0036】
組成物
本発明の組成物は、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の組成物であり、当該鉄源は鉄-乳タンパク質複合体である。
【0037】
本発明者らは、驚くべきことに、乳児用調合乳などの完全栄養組成物の多くの構成成分中で、添加された鉄が、再構成組成物中のプロバイオティクス細菌の有意な減少の原因となることを見出した。また、本発明者らは、鉄-乳タンパク質複合体を、そのようなプロバイオティクス細菌の生存能を有意に損なうことなく、プロバイオティクス細菌と組み合わせて、鉄の栄養源として有利に使用することができることを特定した。
【0038】
乳タンパク質は、カゼイン、カゼインの誘導体若しくは画分、乳清、乳清の誘導体若しくは画分、又はこれらの混合物であってよい。好ましくは、タンパク質はリンタンパク質である。好ましい実施形態では、鉄-乳タンパク質複合体中の乳タンパク質は、カゼイン及び/又はカゼインの誘導体若しくは画分を含む。最も好ましくは、複合体中の乳タンパク質はカゼインを含む。好ましい実施形態では、複合体中に存在する乳タンパク質は、カゼイン及び/又はカゼインの誘導体若しくは画分からなる。より好ましくは、複合体中の乳タンパク質はカゼインからなる。
【0039】
カゼインは、ミルク、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸アンモニウム、カゼイン酸レンネット、酸カゼイン、例えば、乳酸カゼイン及び/又は無脂乳固形分のような多様な供給源から得ることができる。好ましくは、これは、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸アンモニウム及び/又は乳酸カゼインである。
【0040】
好ましい実施形態では、複合体は非ミセル複合体である。
【0041】
一実施形態では、乳タンパク質は、少なくとも45:1のタンパク質対カルシウムの比を有する乳原料に由来する。好ましくは、乳原料中のタンパク質/カルシウムw/w比は、少なくとも58:1であり、より好ましくは58:1~640:1であり、最も好ましくは70:1~95:1である。これは、牛乳が通常26:1のタンパク質/カルシウムw/w比を有するので、乳原料中のカルシウムの量の有意な減少を示す。別の好ましい実施形態では、乳タンパク質は乳原料に由来し、少なくとも70%w/vのカルシウムが乳原料から除去されている。このような乳原料は、好ましくは、全乳、脱脂乳、低乳糖乳、限外濾過未透過液、濃縮乳、及びこれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、ミルクはウシ乳である。乳原料からカルシウムを除去することは、乳タンパク質への多量の鉄の結合に役立つという点で、即ち、キレート化カルシウムを除去し、これを鉄で置き換えることができることによって、有利である。
【0042】
別の実施形態では、鉄-乳タンパク質複合体は、外因性のリン、より好ましくは外因性のオルトリンを含む。好ましくは、タンパク質対リン(好ましくはオルトリン)のw/w比は、64:1~6.25:1、好ましくは32:1未満~6.25:1、好ましくは32:1未満~8:1、より好ましくは28:1~8:1、更により好ましくは25:1~8:1、最も好ましくは20:1~8:1である。リンの存在は、乳タンパク質への鉄の有効な結合に役立ち、したがって、複合体における多量の鉄の結合に寄与するという点で有利である。
【0043】
別の好ましい実施形態では、複合体は、生理的pH、好ましくはpH6.6~6.9の溶液に可溶性である。このような可溶性は、このようなpHの液体溶液中における不溶性沈殿物の形成を回避するのに有益であり、複合体に対する良好な生物学的利用能にも寄与する。
【0044】
好ましくは、複合体中の鉄は、外因性の鉄である。カゼインなどの乳タンパク質に自然に結合している鉄はごく少量であることから、複合体が外因的に添加された鉄を含むことは有利である。好ましくは、複合体は、1%w/wよりも大きい結合鉄、より好ましくは1~20w/w%の結合鉄、更により好ましくは1~8w/w%、最も好ましくは4~8w/w%の結合鉄を含む。より好ましくは、タンパク質対鉄(好ましくは外因性の鉄)のw/w比は、92:1~19.5:1、好ましくは90:1~19.5:1、より好ましくは80:1~19.5:1、最も好ましくは50:1~19.5:1である。複合体中の鉄の装入量が高くなるほど、製品を強化するために必要な複合体の量が少なくなることから、複合体において乳タンパク質に結合したこのような多量の鉄を有することができることは特に有利である。
【0045】
好ましい実施形態では、複合体中の鉄カチオンはFe3+である。
【0046】
好ましい実施形態では、複合体は粉末の形態で提供される。
【0047】
特に好ましい複合体は、米国特許出願公開第2015/0164123号及び国際公開第00/51446号に記載されているものであり、これらは共に参照として本明細書に組み込まれる。このような文献は、複合体、例えば、上記の複合体、及び本発明の目的のために有利に使用することができる、特定の実施形態の複合体を製造するために使用することができる方法の詳細な説明を提供する。
【0048】
最も好ましいのは、米国特許出願公開第2015/0164123号に記載の複合体である。これらは、多量の鉄が複合体中で乳タンパク質に結合している場合であっても、水性液体食品製品又は飲料に可溶性であるという点で特に有利である。したがって、複合体は、有利なことに、透明な飲料及び溶液に添加されたときにヘーズを生成し、望ましくないざらざらした質感を食品製品及び飲料にもたらし得る、不溶性沈殿物を形成しない。上記の複合体の更なる利点は、引用文献の米国特許出願公開第2015/0164123号に見出すことができる。
【0049】
ここで、本発明者らは、大部分の鉄供給源、例えば、広く使用されている硫酸第一鉄七水和物及び噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄が、両方ともプロバイオティクス細菌の生存能の有意な減少を引き起こし、一方、本明細書に記載されるような鉄-乳タンパク質複合体では、プロバイオティクス細菌の生存能の有意な減少は観察されないことを見出した。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、プロバイオティクス細菌は、粉末組成物を液体で再構成する際に、遊離鉄に対し感受性になることを特定した。粉末組成物を液体で再構成する際、遊離鉄の遊離が緩徐であると、プロバイオティクス細菌には、遊離鉄に遭遇するまでに再水和するのに十分な時間が与えられるので、プロバイオティクス細菌の生存能の減少を低減させると考えられる。
【0050】
この正の効果は、鉄-乳タンパク質複合体がそれ自体で使用される場合、及び複合体化構造が保たれることを条件として、そのような複合体が非晶質マトリックス中に分散される場合に、観察される。マトリックス中に分散した複合体を有するこのような成分は、担体溶液に複合体を混合し、かかる担体溶液を噴霧乾燥することによって得ることができる。好適な担体は、例えばマルトデキストリンを含む。当業者は、SDS-PAGEなどのタンパク質識別評価とICP原子発光分光法を用いたミネラル分析を組み合わせることによって、並びにFe2+及びFe3+の存在下での変色を伴うヘキサシアノ鉄酸カリウムなどの化合物を用いる「遊離鉄」試験を行うことによって、製品又は成分が鉄-乳タンパク質複合体を含むかどうかをルーチン的に評価することができる。
【0051】
上述の鉄-乳タンパク質複合体の使用は、これが、良好な生物学的利用能と、プロバイオティクス細菌の生存能に対する悪影響が低いこととを同時に特徴とするという点で特に有利である。上記のような鉄-乳タンパク質は、ヒトにおける生物学的利用能に関してゴールデンスタンダードである硫酸第一鉄のものと同様の生物学的利用能を特徴とすることが示されている。例えば、米国特許出願公開第2015/0164123号及び国際公開第00/51446号を参照されたい。
【0052】
好ましい実施形態では、添加された鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%は、上記で定義した鉄-乳タンパク質複合体の形態である。更により好ましくは、上記で定義した鉄-乳タンパク質複合体は、組成物中の実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、上記で定義した鉄-乳タンパク質複合体は、組成物中の唯一の添加鉄源である。
【0053】
添加鉄源は、好ましくは、組成物の総乾燥重量に基づいて、組成物100g当たり1~300mg、好ましくは1~250mg、より好ましくは1~200mg、より好ましくは1~100mg、更により好ましくは1~75mg、最も好ましくは1~50mgの鉄をもたらすような量で存在する。
【0054】
任意の生きているプロバイオティクス細菌を本発明の組成物に使用することができる。本出願で提供される実施例は、上述の複合体がプロバイオティクス細菌の生存能を損なわないことを示す。効果は菌株特異的ではなく、広範囲の細菌株に適用することができる。
【0055】
本発明の組成物中に存在し得るプロバイオティクス細菌の例としては、ビフィズス菌(bifidobacteria)、乳酸桿菌(lactobacilli)、乳酸球菌(lactococci)、腸球菌(enterococci)、連鎖球菌(streptococci)、ロイコノストック(Leuconostoc)、大腸菌類(Escherichia)、プロピオニバクテリア(propionibacteria)、又はこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、これは、ラクトバチルス属(Lactobacillus)又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の細菌である。
【0056】
好ましくは、プロバイオティクス細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリヴァリゥス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコッカス・ジアチラクティス(Lactococcus diacetylactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトバチルス・デルブリュッキ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブリュッキ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・へルベティカス(Lactobacillus helveticus)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・ヘシュウム(Enterococcus faecium)、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)の種、並びにこれらの亜種及び/又はこれらの混合物のいずれかの中から選択される。
【0057】
より好ましくは、プロバイオティクス細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・サリヴァリゥス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・デルブリュッキ亜種ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブリュッキ亜種ラクティス、ラクトバチルス・へルベティカス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・サケイの種及びこれらの混合物から選択される。
【0058】
組成物中に有利に存在し得る細菌株の例としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA-999として寄託)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(CNCM I-2618として寄託)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(CNCM I-3865として寄託)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(CNCM I-3446として寄託)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(CNCM I-1225として寄託)、ラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I-2116として寄託)、ラクトバチルス・ラムノサス(CGMCC 1.3724として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I-1422として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I-4153として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I-1985として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I-3915として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(CNCM I-1518として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(ACA-DC 6002として寄託)、大腸菌Nissle(DSM 6601として寄託)、ラクトバチルス・ブルガリカス(CNCM I-1198として寄託)、ラクトコッカス・ラクティス(CNCM I-4154として寄託)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
より好ましい細菌株としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA-999として寄託)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(CNCM I-2618として寄託)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(CNCM I-3865として寄託)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(CNCM I-3446として寄託)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(CNCM I-1225として寄託)、ラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I-2116として寄託)、ラクトバチルス・ラムノサス(CGMCC 1.3724として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(CNCM I-1518として寄託)、ラクトバチルス・カゼイ(ACA-DC 6002として寄託)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I-3915として寄託)、及びラクトバチルス・ブルガリカス(CNCM I-1198)又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
更なる好ましい実施形態では、プロバイオティクス細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA-999として寄託)、ラクトバチルス・ラムノサス(CGMCC 1.3724として寄託)及びラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I-2116として寄託)及びこれらの混合物から選択される。
【0061】
プロバイオティクス細菌は、好ましくは、乾燥重量基準で、組成物1グラム当たり少なくとも5E+06CFU、好ましくは、組成物1グラム当たり5E+06~1E+12CFU、より好ましくは、組成物1グラム当たり5E+06~5E+1CFU、最も好ましくは、組成物1グラム当たり5E+06~5E+10CFUの量で組成物中に存在する。
【0062】
選択されたプロバイオティクス細菌は、任意の好適な方法に従って培養することができ、組成物に添加するために、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥などの既知の技術によって調製することができる。あるいは、細菌調製物は、DSM、Dupont Danisco、Morinaga、Institut Rosell、Christian Hansen及びValioなどの専門供給業者から購入することができ、これは、粉末形態の組成物への添加に好適な形態で既に調製されている。
【0063】
粉末形態の組成物は、自由流動粉末の形態であってもよく、又は錠剤の形態などの圧縮粉末の形態であってもよい。好ましくは、粉末形態の組成物は、粉末の形態で使用されることが意図されるものではなく、使用前に、液体で、好ましくは水性液体で、最も好ましくは水で再構成されることが意図される。
【0064】
本発明の粉末形態の好ましい組成物としては、食品又は飲料製品、動物用飼料製品、ヒト若しくは動物用栄養補助食品、医薬組成物又は化粧品組成物が挙げられる。
【0065】
別の好ましい実施形態では、粉末形態の組成物は、食用組成物である。
【0066】
食品及び飲料製品としては、栄養及び/又は喜びを提供する目的で、ヒトによる経口摂取を意図した、全ての製品が挙げられる。好ましい実施形態では、製品は栄養組成物である。より好ましくは、これは、乳児用調合乳、グローイングアップミルク、乳児食、乳児用穀物組成物、強化剤、補助食品、及び妊婦又は授乳中の女性のための栄養組成物から選択される栄養組成物である。より好ましくは、これは、乳児用調合乳、グローイングアップミルク、乳児用穀物組成物、及び妊娠又は授乳中の女性のための栄養組成物から選択される。更により好ましくは、これは、乳児用調合乳、グローイングアップミルク及び乳児用穀物組成物から選択される。最も好ましくは、これは、乳児用調合乳又はグローイングアップミルクである。
【0067】
製品はまた、動物用飼料製品又は動物用栄養補助食品の形態であってもよい。好ましくは動物は哺乳動物である。動物の例としては、霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥などが挙げられる。
【0068】
粉末形態の栄養補助食品としては、自由流動粉末又は圧縮粉末の補助食品が挙げられ、典型的には、かかる補助食品は、水に溶解される補助食品を包含するか、又は湿潤食品又は飲料に振りかけられる補助食品を包含する。そのような補助食品は、追加の栄養素及び/又はそれを摂取する対象への健康上の利益、並びにプロバイオティクス細菌及び鉄を含めた他の有益な成分を提供することが意図される。本発明による補助食品は、上記で定義したように、ヒト及び動物に栄養素及び/又は健康上の利益を提供するために使用することができる。栄養補助食品としては、例えば、早産児又は低出生体重児のための、例えば、母乳に添加される粉末補助食品が挙げられる。これは、妊娠前、妊娠中及び/又は授乳中の女性のための補助食品も含む。
【0069】
医薬組成物は、有害な医学的状態を治療又は予防する必要がある対象において、有害な医学的状態を治療又は予防することを意図する組成物である。
【0070】
化粧品組成物は、典型的には、身体に対する美的効果を意図されており、好ましくは経口経路によって投与することができる。
【0071】
組成物、好ましくは栄養組成物は、タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、及び/又は他のミネラルを好ましくは含む。好ましくは、これは、これらのタイプの栄養素の全てを含む。
【0072】
タンパク質は、インタクトなものでもよく、又は加水分解されてもよい(広範囲に又は部分的に加水分解されてもよい)。
【0073】
本発明による栄養組成物は、一般に脂質源を含有する。本発明の栄養組成物が乳児用調合乳である場合、これは特に適切である。この場合、脂質源は、乳児用調合乳での使用に好適な任意の脂質又は脂肪であってもよい。いくつかの好適な脂肪源としては、パーム油、高オレイン酸ヒマワリ油、及び高オレイン酸ベニバナ油が挙げられる。必須脂肪酸のリノール酸及びα-リノレン酸を添加してもよく、並びにアラキドン酸(ARA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及び/又はエイコサペンタエン酸(EPA)などの少量の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を添加してもよい。このようなLC-PUFAは、魚油又は微生物油の形態で提供され得る。本明細書に記載されるような鉄-乳タンパク質複合体は、有利なことに、LC-PUFAの酸化をほとんど又は全く引き起こさない。
【0074】
本発明による組成物は、乳糖、マルトデキストリン、澱粉、及びこれらの混合物などの炭水化物源を含有してもよい。本発明による組成物はまた、特定のタイプの炭水化物:プレバイオティクスを含有してもよい。本発明に従って使用することができるプレバイオティクスとしては、特に限定されないが、腸内のプロバイオティクス又は健康に有益な微生物の増殖を促進する全ての食品物質が挙げられる。好ましくは、それらは、以下からなる群から選択することができる:任意にフルクトース、ガラクトース、及びマンノースを含有するオリゴ糖;食物繊維、特に可溶性繊維、大豆繊維;イヌリン;又はこれらの混合物。プレバイオティクスのいくつかの例は、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イソマルトオリゴ糖(IMO)、キシロオリゴ糖(XOS)、アラビノキシロオリゴ糖(AXOS)、マンナンオリゴ糖(MOS)、イヌリン、ポリデキストロース、グリコシルスクロース(GS)、ラクトスクロース(LS)、ラクツロース(LA)、パラチノースオリゴ糖(PAO)、マルトオリゴ糖、ガム及び/又はその加水分解物、ペクチン及び/又はその加水分解物である。特定の実施形態では、プレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖及び/又はイヌリンであってもよい。使用することができる好適な市販製品としては、FOSとイヌリンの組み合わせ、例えば、商標OraftiでBENEOにより販売されている製品、又は商標STA-LITE(登録商標)でTate&Lyleにより販売されているポリデキストロースが挙げられる。
【0075】
プレバイオティクスはまた、BMO(ウシ乳オリゴ糖)及び/又はHMO(ヒト乳オリゴ糖)、例えば、N-アセチル化オリゴ糖、シアリル化オリゴ糖、フコシル化オリゴ糖、及びこれらの任意の混合物であり得る。
【0076】
プレバイオティクスの特定の例は、ガラクトオリゴ糖(複数可)とN-アセチル化オリゴ糖(複数可)とシアリル化オリゴ糖(複数可)との混合物であり、N-アセチル化オリゴ糖(複数可)はオリゴ糖混合物の0.5~4.0重量%に相当し、ガラクトオリゴ糖(複数可)はオリゴ糖混合物の92.0~98.5重量%に相当し、シアリル化オリゴ糖(複数可)は、オリゴ糖混合物の1.0~4.0重量%に相当する。例えば、本発明による使用のための組成物は、組成物が、少なくとも0.02重量%のN-アセチル化オリゴ糖、少なくとも2.0重量%のガラクトオリゴ糖、及び少なくとも0.04重量%のシアリル化オリゴ糖を含むことを条件として、乾燥物基準で2.5~15.0重量%のCMOS-GOSを含有することができる。国際公開第2006087391号及び同第2012160080号は、そのようなオリゴ糖混合物の製造のいくつかの例を提供する。
【0077】
本発明の組成物はまた、毎日の食事で必須であると、及び栄養的に有意な量であると理解される、全てのビタミン、ミネラル、及び他の微量栄養素を含有してもよい。特定のビタミン及びミネラルに対する最小要件が確立されている。本発明の組成物中に任意に存在するミネラル類、ビタミン類、及びその他の栄養素の例としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、イノシトール、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、コリン、カルシウム、リン、ヨウ素、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、塩素、カリウム、ナトリウム、セレン、クロム、モリブデン、タウリン及びL-カルニチンが挙げられる。ミネラル類は、通常、塩形態で添加される。特定のミネラル及び他のビタミンの存在及び量は、意図される標的群に応じて変化する。
【0078】
本明細書に記載されるような鉄-乳タンパク質複合体は、有利なことに、ビタミンA及びビタミンCなどのビタミンの酸化をほとんど又は全く引き起こさない。また、本明細書に記載されるような鉄-乳タンパク質複合体は、ポリフェノールの酸化をほとんど又は全く引き起こさないので、本発明の組成物がポリフェノールを含むことも好ましい。
【0079】
粉末形態の組成物の製造方法
一実施形態では、本発明は、粉末形態の組成物を製造するための方法に関し、この方法は、
a)粉末形態の第1の組成物を用意する工程と、
b)鉄源を粉末形態の第1の組成物と混合して、粉末形態の第2の組成物を得る工程と、
c)鉄源の前若しくは鉄源と同時に少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を粉末形態の第1の組成物に混合する工程、又は、鉄源の添加の後に少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を粉末形態の第2の組成物に混合する工程と
を含み、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする。
【0080】
粉末形態の組成物、鉄源及びプロバイオティクス細菌は、「組成物」セクションで上述した実施形態のいずれかで定義されるとおりである。
【0081】
粉末形態の第1の組成物は、例えば噴霧乾燥などの当該技術分野において既知の任意の方法を使用して調製することができる。このような方法では、組成物の成分を湿性混合物に混合し、乾燥塔で噴霧して粉末を形成する。ミネラル又はビタミンのような反応性成分は、例えば、鉄源及び/又はプロバイオティクス細菌の添加の前に、その添加と同時に、又はその添加の後に、乾燥形態で添加することもできる。例えば、鉄源は、様々なミネラル及びビタミンを含む微量元素プレミックスとして粉末形態の第1の組成物に添加されることが一般的である。
【0082】
プロバイオティクス細菌は、好ましくは、担体及び任意に保護剤を含み予め混合された形態で添加される。プロバイオティクス細菌用担体は、プロバイオティクス細菌を製品に組み込む分野の当業者に周知である。担体は、好ましくは、例えばマルトデキストリンなどの炭水化物である。多種多様な保護剤が当業者に既知である。特に好適な保護剤は、同一出願人の同時係属特許出願の国際出願PCT/EP16/065359号に記載されているものである。
【0083】
プロバイオティクス細菌を混合する工程及び鉄源を混合する工程は、このようなタイプの成分を粉末組成物と混合するための、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、実施することができる。例えば、混合は、乾式混合によって、又は噴霧乾燥塔における直接添加によって、又は流動床、コーター若しくはアグロメレーターにおける直接添加によって、又は押出若しくはローラー乾燥の最終段階における直接添加によって、実施することができる。好ましくは、プロバイオティクス細菌及び/又は鉄源は、乾式混合によって、又は流動床に添加することにより、粉末形態の組成物と混合される。最も好ましくは、プロバイオティクス細菌及び/又は鉄源は、乾式混合によって粉末形態の組成物と混合される。
【0084】
好ましい実施形態では、組成物中の添加された鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%は、上記で定義された鉄源の形態である。更により好ましくは、上記で定義された鉄源は、組成物中の実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、上記に定義した鉄源は、組成物中の唯一の添加鉄源である。
【0085】
粉末形態の組成物の強化のための鉄-乳タンパク質複合体の使用
鉄-乳タンパク質複合体は、有利なことに、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を含む粉末形態の組成物の強化に使用することができる。このような鉄源は、有利なことに、生物学的に利用可能な鉄を提供する一方で、粉末を水などの液体で再構成する間に、プロバイオティクス細菌の生存能の有意な減少を引き起こさない。
【0086】
上述のように、硫酸第一鉄のものと同様の生物学的利用能を有する鉄-乳タンパク質複合体は、食品製品を強化するのに特に有用である。
【0087】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を含む粉末形態の組成物を強化するための方法に関し、この方法は、
a)粉末形態の第1の組成物を用意する工程と、
b)粉末形態の第1の組成物に鉄源を混合して、粉末形態の第2の組成物を製造する工程と、
c)鉄源の前若しくは鉄源と同時に少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を粉末形態の第1の組成物に混合する工程、又は、鉄源の添加の後に少なくとも1種のプロバイオティクス細菌を粉末形態の第2の組成物に混合する工程と
を含み、鉄源が、鉄-乳タンパク質複合体である。
【0088】
粉末形態の第1の組成物、粉末形態の第2の組成物、及び方法工程は、本発明の組成物を製造するための方法に関連する上記のセクションに定義されるとおりである。また、粉末形態の組成物、鉄源及びプロバイオティクス細菌は、「組成物」セクションの任意の実施形態において上述したとおりである。
【0089】
好ましい実施形態では、組成物中の添加された鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%は、上記の鉄源の形態である。更により好ましくは、上記で定義された鉄源は、組成物中の実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、上記に定義した鉄源は、組成物中の唯一の添加鉄源である。
【0090】
鉄欠乏症を予防する、軽減する、及び/又は治療する方法において使用するための組成物
上記のように、本発明の組成物は生物学的利用能が高い鉄源で強化されているので、本発明はまた、個体における鉄欠乏症を予防、軽減、及び/又は治療する方法において使用するための組成物にも関する。
【0091】
製品の製造方法
本発明は、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と鉄源とを含む粉末形態の組成物を液体で再構成する工程を含む、製品、好ましくは食用製品の製造方法であって、鉄源が鉄-乳タンパク質複合体であることを特徴とする、方法に関する。
【0092】
粉末形態の組成物、プロバイオティクス細菌及び鉄源は、上記の実施形態のいずれかに定義されるとおりである。
【0093】
鉄-乳タンパク質複合体の使用は、粉末形態の組成物が液体で再構成される場合に特に有利である。本発明者らは、プロバイオティクス細菌は再水和時に特に反応性であること、及び生存能の減少は、粉末形態の組成物を水などの液体で再構成した場合に特に激しいことを見出した。本発明者らはまた、鉄-乳タンパク質複合体は、一般的な鉄源、例えば、硫酸第一鉄七水和物又は噴霧乾燥形態の溶解された硫酸第一鉄とは対照的に、その重要な場面でプロバイオティクス細菌の生存能の有意な減少を引き起こさないことも発見した。
【0094】
再構成は、好ましくは、水性液体で、最も好ましくは水で実施される。再構成のために添加される液体、好ましくは水の量は、調製される製品のタイプによって異なる。本発明の目的のために重要なものは、プロバイオティクス細菌をその天然含水量へと再構成するのに十分な液体が添加されることである。
【0095】
製品
本発明はまた、上記の方法によって得ることができる、又は得られる製品、好ましくは食用製品にも関する。製品は、本発明の任意の実施形態で定義されるように、液体で再構成される粉末形態の組成物を含む。好ましくは、これは水性液体で、好ましくは水で再構成される。
【0096】
好ましくは、製品は、上記の栄養組成物の再構成によって得られる栄養製品である。
【0097】
栄養を提供する方法
本発明の食用製品、好ましくは本発明の栄養製品を個体に与える工程を含む、個体に栄養を提供する方法もまた企図される。この方法で使用される製品は、食品組成物又は飲料組成物である。好ましくは、かかる組成物は、上記で定義される栄養組成物である。かかる製品は、添加鉄源がプロバイオティクス細菌の有意な減少を引き起こさないことから、生物学的に利用可能な鉄源と、安定した濃度のプロバイオティクス細菌とを含むため、特に有利である。
【0098】
一実施形態では、この方法は、
a)本発明の実施形態のいずれかに従って粉末形態の食用組成物を再構成する工程と、
b)再構成した組成物を個体に与える工程と
を含む。
【0099】
一実施形態では、個体は、鉄欠乏を有する個体、又は鉄欠乏を発症するリスクのある個体である。
【0100】
別の好ましい実施形態では、食用組成物は栄養組成物である。
【0101】
プロバイオティクス細菌の減少を防止又は低減するための方法
本発明は、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と添加鉄源とを含む粉末形態の組成物の再構成中にプロバイオティクス細菌の減少を低減又は防止するための方法であって、添加鉄源として鉄-乳タンパク質複合体が使用されることを特徴とする、方法に関する。
【0102】
プロバイオティクス細菌、添加鉄源、及び粉末形態の組成物は、「組成物」セクションの任意の実施形態に記載されるとおりである。
【0103】
好ましい実施形態では、鉄-乳タンパク質複合体は、組成物中の添加された鉄の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%に相当する。より好ましくは、鉄-乳タンパク質複合体は、組成物中で使用される実質的に唯一の添加鉄源である。最も好ましくは、鉄-乳タンパク質複合体は、組成物中の唯一の添加鉄源である。換言すれば、組成物は、組成物中に鉄源として添加される他の第一鉄又は第二鉄化合物を含まない。
【0104】
本発明者らは、硫酸第一鉄七水和物又は噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄などの他の一般的に添加される鉄源の代わりに鉄-乳タンパク質複合体を使用することにより、組成物の再構成時のプロバイオティクス細菌の減少を防止又は少なくとも有意に低減することができることを示した。
【0105】
添加鉄源はプロバイオティクス細菌の生存に重要な影響を及ぼすが、鉄補給を主目的とするものではない成分の一部として存在する鉄源の影響は、そのような成分の複雑さのために、はるかに小さい。他にも理由があるが、中でも、これらが含む鉄は、通常、組成物を再構成するときに遊離鉄としては見られず、したがってプロバイオティクス細菌に対する潜在的な有害な効果が低減される。
【0106】
以下の実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。
【0107】
実施例1:ラクトバチルス・ラムノサスの生存に対する鉄源の効果
それぞれ、乾燥ラクトバチルス・ラムノサス(CGMCC 1.3724として寄託)、鉄源及び100gのマルトデキストリンを含む、4種の粉末組成物(試料A~D)を調製した。試料の組成を表1にまとめる。
【0108】
【0109】
試料を以下のように製造した。マルトデキストリン、乾燥プロバイオティクス粉末及び鉄源を500mLプラスチックビーカー中に一緒に添加し、Turbula(登録商標)T2F乾燥ミキサー(WAB、Switzerland)を使用して、34rpmで5分間混合した。25gの量の新たに混合した試料を、消泡剤を補充した37℃の水性トリプトン塩溶液で1/10に希釈した。Masticator(登録商標)(IUL、Spain)を使用して5分間均質化した後、10進希釈(decimal dilutions)を行った。次いで、インキュベーション後に30~300コロニーが得られる適切な希釈物をペトリ皿に移し、混釈平板法に従ってMRS寒天と混合した。いったん固化させた後、プレートを好気性条件下で37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、プレート上に存在するコロニーを計数した。
【0110】
結果を
図1にまとめる。このグラフから、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄を使用した場合に、再構成組成物において、生きているL.ラムノサスの有意な減少が観察されたことが明らかである。対照的に、同じ条件下で同じ量のL.ラムノサス及び同じ量の鉄を用いて鉄-カゼイン複合体を使用した場合、L.ラムノサスの有意な減少は観察されなかった。
【0111】
実施例2:ビフィドバクテリウム・ロンガムの生存に対する鉄源の効果
それぞれ、乾燥ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA-999として寄託)、鉄源及び100gのマルトデキストリンを含む、5種の粉末組成物(試料E~I)を調製した。5種の試料の組成を以下の表2にまとめる。
【0112】
【0113】
試料を以下のように製造した。マルトデキストリン、乾燥プロバイオティクス粉末及び鉄源を500mLプラスチックビーカー中に一緒に添加し、Turbula(登録商標)T2F乾燥ミキサー(WAB、Switzerland)を使用して、34rpmで5分間混合した。25gの量の新たに混合した試料を、消泡剤を補充した37℃の水性トリプトン塩溶液で1/10に希釈した。Masticator(登録商標)(IUL、Spain)を使用して5分間均質化した後、10進希釈を行った。次いで、インキュベーション後に30~300コロニーが得られる適切な希釈物をペトリ皿に移し、混釈平板法に従ってRCA寒天と混合した。いったん固化させた後、プレートを嫌気性条件で37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、プレート上に存在するコロニーを計数した。
【0114】
結果を
図2のグラフにまとめる。このグラフから、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄を使用した場合に、再構成組成物において、生きているB.ロンガムの有意な減少が観察されたことが明らかである。対照的に、同じ条件下で同じ量のB.ロンガム及び同じ量の鉄を用いて鉄-カゼイン複合体を使用した場合、B.ロンガムの有意な減少は観察されなかった。
【0115】
実施例3:ビフィドバクテリウム・ロンガムの生存に対する鉄源の効果
それぞれ、乾燥ビフィドバクテリウム・ロンガム(ATCC BAA-999として寄託)、鉄源及び100gの乳児用調合乳を含む、5種の粉末組成物(試料I~M)を調製した。5種の試料の組成を以下の表3にまとめる。
【0116】
【0117】
試料を以下のように製造した。乳児用調合乳、乾燥プロバイオティクス粉末及び鉄源を500mLプラスチックビーカー中に一緒に添加し、Turbula(登録商標)T2F乾燥ミキサー(WAB、Switzerland)を使用して、34rpmで5分間混合した。25gの量の新たに混合した試料を、消泡剤を補充した37℃の水性トリプトン塩溶液で1/10に希釈した。Masticator(登録商標)(IUL、Spain)を使用して5分間均質化した後、10進希釈を行った。次いで、インキュベーション後に30~300コロニーが得られる適切な希釈物をペトリ皿に移し、混釈平板法に従ってRCA寒天と混合した。いったん固化させた後、プレートを嫌気性条件で37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、プレート上に存在するコロニーを計数した。
【0118】
結果を
図3のグラフにまとめる。このグラフから、使用される鉄源が鉄-カゼインであった場合に、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄を同じ条件下でかつ同じ量のB.ロンガム及び同じ量の鉄を用いて使用した場合よりも、再構成組成物中の生きたB.ロンガムの減少が著しく小さくなったことが明らかである。
【0119】
実施例4:ラクトバチルス・パラカゼイの生存に対する鉄源の効果
それぞれ、乾燥ラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I-2116として寄託)、鉄源及び100gのマルトデキストリンを含む、5種の粉末組成物(試料N~R)を調製した。5種の試料の組成を以下の表4にまとめる。
【0120】
【0121】
試料を以下のように製造した。マルトデキストリン、乾燥プロバイオティクス粉末及び鉄源を500mLプラスチックビーカー中に一緒に添加し、Turbula(登録商標)T2F乾燥ミキサー(WAB、Switzerland)を使用して、34rpmで5分間混合した。25gの量の新たに混合した試料を、消泡剤を補充した37℃の水性トリプトン塩溶液で1/10に希釈した。Masticator(登録商標)(IUL、Spain)を使用して5分間均質化した後、10進希釈を行った。次いで、インキュベーション後に30~300コロニーが得られる適切な希釈物をペトリ皿に移し、混釈平板法に従ってMRS寒天と混合した。いったん固化させた後、プレートを好気性条件下で37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、プレート上に存在するコロニーを計数した。
【0122】
結果を
図4のグラフにまとめる。このグラフから、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄を使用した場合に、再構成組成物において、生きているL.パラカゼイの有意な減少が観察されたことが明らかである。対照的に、鉄-カゼイン複合体を同じ条件下で同じ量のL.パラカゼイ及び同じ量の鉄を用いて使用した場合、L.パラカゼイの有意な減少は観察されなかった。
【0123】
実施例5:ラクトバチルス・パラカゼイの生存に対する鉄源の効果
それぞれ、乾燥ラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I-2116として寄託)、鉄源、及び100gの乳児用調合乳を含む、5種の粉末組成物(試料S~W)を調製した。5種の試料の組成を以下の表5にまとめる。
【0124】
【0125】
試料を以下のように製造した。乳児用調合乳、乾燥プロバイオティクス粉末及び鉄源を500mLプラスチックビーカー中に一緒に添加し、Turbula(登録商標)T2F乾燥ミキサー(WAB、Switzerland)を使用して、34rpmで5分間混合した。25gの量の新たに混合した試料を、消泡剤を補充した37℃の水性トリプトン塩溶液で1/10に希釈した。Masticator(登録商標)(IUL、Spain)を使用して5分間均質化した後、10進希釈を行った。次いで、インキュベーション後に30~300コロニーが得られる適切な希釈物をペトリ皿に移し、混釈平板法に従ってMRS寒天と混合した。いったん固化させた後、プレートを好気性条件下で37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、プレート上に存在するコロニーを計数した。
【0126】
結果を
図5のグラフにまとめる。10mgの鉄を提供するような量で鉄源のそれぞれを添加した場合に、プロバイオティクスの著しい減少は観察されなかったが、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄を、30mgの鉄を提供する量で使用した場合に、再構成組成物において、L.パラカゼイの生存能に対する明らかな影響が観察された。対照的に、鉄-カゼイン複合体を同じ条件下で同じ量のL.パラカゼイ及び同じ量の鉄を用いて使用した場合、L.パラカゼイの有意な減少は観察されなかった。
【0127】
実施例6:ラクトバチルス・ラムノサスの生存に対する鉄源の効果
それぞれ、乾燥ラクトバチルス・ラムノサス(CGMCC 1.3724として寄託)、鉄源、及び100gの乳児用調合乳を含む、5種の粉末組成物(試料X~BB)を調製した。5種の試料の組成を以下の表6にまとめる。
【0128】
【0129】
試料を以下のように製造した。乳児用調合乳、乾燥プロバイオティクス粉末及び鉄源を500mLプラスチックビーカー中に一緒に添加し、Turbula(登録商標)T2F乾燥ミキサー(WAB、Switzerland)を使用して、34rpmで5分間混合した。25gの量の新たに混合した試料を、消泡剤を補充した37℃の水性トリプトン塩溶液で1/10に希釈した。Masticator(登録商標)(IUL、Spain)を使用して5分間均質化した後、10進希釈を行った。次いで、インキュベーション後に30~300コロニーが得られる適切な希釈物をペトリ皿に移し、混釈平板法に従ってMRS寒天と混合した。いったん固化させた後、プレートを好気性条件下で37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、プレート上に存在するコロニーを計数した。
【0130】
結果を
図6のグラフにまとめる。このグラフから、噴霧乾燥形態の溶解した硫酸第一鉄を使用した場合に、再構成組成物において、生きているL.ラムノサスの有意な減少が観察されたことが明らかである。対照的に、鉄-カゼイン複合体を同じ条件下で同じ量のL.ラムノサス及び同じ量の鉄を用いて使用した場合、L.ラムノサスの減少は有意に低減した。