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特許7639127ジルコニア強化アルミナセラミック焼結体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】ジルコニア強化アルミナセラミック焼結体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/119 20060101AFI20250225BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20250225BHJP
【FI】
C04B35/119
H01L21/302 101G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023518192
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2021054947
(87)【国際公開番号】W WO2022115175
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】63/092,181
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン、マシュー、ジョセフ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-083566(JP,A)
【文献】特開2020-050536(JP,A)
【文献】特開2006-027914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/00 -35/047
35/053-35/106
35/109-35/22
35/45 -35/457
35/547-35/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面を有する焼結セラミック体であって、前記焼結セラミック体が、Alを含む第1の結晶相と、8体積%~20体積%のZrOを含む第2の結晶相とを含み、前記第1の結晶相が連続マトリックスであり、前記第2の結晶相が連続マトリックス中に分散しており、前記焼結セラミック体が、SEMで測定して0.1~5μmの最大孔径を有する細孔を有し、焼結セラミック体が、ASTM E228-17に従って測定して25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.899~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を示し、前記焼結セラミック体が、98%超の相対密度を有し、最大寸法にわたって2%以下の密度変動を有し、前記最大寸法が200~625mmであり、Siが、前記焼結セラミック体中に存在しないか、又は前記焼結セラミック体中に100ppm以下の量で存在するかのいずれかである、焼結セラミック体。
【請求項2】
Siが、存在する場合、14ppm以下で存在する、請求項1に記載の焼結セラミック体。
【請求項3】
ICPMSで測定して50ppm以下の微量元素Li、Na、Mg、K、Ca、B、P、Fe、Cu、Cr、Zn、In、Sn、及びSb(合計)の総不純物含有量を有する、請求項1または2に記載の焼結セラミック体。
【請求項4】
前記最大孔径が、SEMで測定して0.1~3μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項5】
前記焼結セラミック体が、エッチングされていない領域の算術平均高さ(Sa)3~20nmを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項6】
ISO規格25178-2-2012のセクション4.1.7に従って、エッチングされていない領域において0.05~1.5umの最大高さSzを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項7】
99.985%及びそれより高い純度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項8】
ASTM E1461-13に従って測定した場合、20℃で約27W/mKの熱伝導率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項9】
ASTM E1461-13に従って測定した場合、200℃で約14W/mKの熱伝導率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項10】
前記ZrOを含む第2の結晶相が14体積%~18体積%で存在し、前記熱膨張係数が、ASTM E228-17に従って測定して、25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって7.520~9.558×10-6/℃である、請求項1~9のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項11】
焼結セラミック体を作製する方法であって、前記方法が、
a)酸化アルミニウム粉末と酸化ジルコニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、前記酸化アルミニウム粉末及び前記酸化ジルコニウム粉末が各々、150ppm未満の総不純物含有量を有する、作製する工程と、
b)加熱して前記粉末混合物の温度を600℃~1400℃の焼成温度に上昇させることによって前記粉末混合物を焼成し、焼成を実施するために前記焼成温度を4~12時間の期間維持して焼成粉末混合物を形成する工程と、
c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に前記焼成粉末混合物を配置し、前記容積内に真空条件を作り出す工程であって、前記ツールセットが、前記容積を画定するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に結合された第1及び第2のパンチとを備え、前記ダイが、内壁と、第1及び第2の開口部とを有し、前記第1及び第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1及び第2のパンチの少なくとも一方が前記ダイの前記容積内を移動するときに、前記第1及び第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを作り出し、前記ギャップが10μm~100μmの幅である、作り出す工程と、
d)1000~1700℃の焼結温度に加熱しながら前記焼成粉末混合物に5MPa~100MPaの圧力を加えて焼結を行なって、前記焼結セラミック体を形成する工程と、
e)焼結セラミック体の温度を低下させる工程であって、前記焼結セラミック体が、少なくとも1つの表面を有し、前記焼結セラミック体が、Alを含む第1の結晶相と、8体積%~20体積%のZrOを含む第2の結晶相とを含み、前記第1の結晶相が連続マトリックスであり、前記第2の結晶相が連続マトリックス中に分散しており、前記焼結セラミック体が、SEMで測定して0.1~5μmの最大孔径を有する細孔を有し、焼結セラミック体は、ASTM E228-17に従って測定して25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.899~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を示し、前記焼結セラミック体が、98%超の相対密度を有し、最大寸法にわたって2%以下の密度変動を有し、前記最大寸法が200~625mmであり、Siは、前記焼結セラミック体中に存在しないか、又は前記焼結セラミック体中に100ppm以下の量で存在するかのいずれかである、低下させる工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
更に以下の工程:
f)アニーリング温度に達するまで熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、焼結セラミック体をアニールする工程と;
g)前記アニールした焼結セラミック体の温度を低下させる工程
と、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
更に以下の工程:
h)前記焼結セラミック体を機械加工して、誘電体窓若しくはRF窓、フォーカスリング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナ、プラズマソースアダプター、ガス入口アダプター、ディフューザー、電子ウエハチャック、チャック、パック、混合マニホールド、イオンサプレッサー要素、フェースプレート、アイソレーター、スペーサー、及び/又はエッチングチャンバー内の保護リングの形態の焼結セラミック構成要素を作り出す工程
を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記焼結温度が1000~1300℃である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記焼結温度に加熱しながら、5~59MPaの圧力を前記焼成粉末混合物に加える、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体加工ツールの構成要素として使用される場合に、高強度及びRF伝送の低損失を示す、アルミナ及びジルコニアを含む焼結セラミック組成物に関する。これらは、チャンバーライナ、RF又はマイクロ波透過窓、シャワーヘッド、フォーカスリング、ウエハチャック、ガスインジェクタ又はノズル、シールドリング、クランプリング、混合マニホールド、及びガス分配アセンブリなどの構成要素であってもよい。本開示はまた、焼結セラミック組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ基焼結物体は、耐熱性、耐薬品性、耐プラズマ性及び熱伝導性に優れ、高周波領域における誘電正接(tanδ)が小さい。そのため、アルミナ基焼結物体は、例えば、プラズマ処理装置、半導体・液晶表示装置製造用エッチャ、CVD装置等に用いられる部材、又はコーティングされる耐プラズマ性部材の基板として用いられている。
【0003】
アルミナ基焼結物体の耐食性及び誘電正接(誘電損失)を向上させるために種々の提案がなされているが、耐食性、高熱伝導率及び低誘電損失特性を併せ持ち、緻密な膜を均一に成膜できる基板として好適なアルミナ基焼結物体が当該技術分野において依然として求められている。当該技術分野ではまた、これらの性能要件を満たすが、例えば最大寸法が200mm~600mmを超えるような大きな寸法の構成要素を製造するのに十分な大きさでもあるアルミナ系焼結物体が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
これら及び他の必要性は、本明細書に開示する様々な実施形態、態様、及び構成によって対処される。
【0005】
実施形態1.少なくとも1つの表面を有する焼結セラミック体であって、焼結セラミック体が、Alを含む第1の結晶相と、8体積%~20体積%のZrOを含む第2の結晶相とを含み、第1の結晶相が連続マトリックスであり、第2の結晶相が連続マトリックス中に分散しており、焼結セラミック体が、SEMで測定して0.1~5μmの最大孔径を有する細孔を有し、焼結セラミック体が、ASTM E228-17に従って測定して25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.899~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を示し、焼結セラミック体が、99%~100%の相対密度を有し、最大寸法にわたって0.2~5%未満の密度変動を有し、最大寸法が200~625mmであり、Siが、焼結セラミック体中に存在しないか、又は焼結セラミック体中に100ppm以下の量で存在するかのいずれかである、焼結セラミック体。
【0006】
実施形態2.第2の結晶相が、12~25%の量で存在する、実施形態1に記載の焼結セラミック体。
【0007】
実施形態3.第2の結晶相が、焼結セラミック体の5~15体積%の量で存在する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0008】
実施形態4.Siが、14~100ppm存在する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0009】
実施形態5.Siが、存在する場合、14ppm以下で存在する、実施形態1~3のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0010】
実施形態6.ICPMSで測定して50ppm以下の微量元素Li、Na、Mg、K、Ca、B、P、Fe、Cu、Cr、Zn、In、Sn、及びSb(合計)の総不純物含有量を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0011】
実施形態7.ICPMSで測定して15ppm以下の微量元素Li、Na、Mg、K、Ca、B、P、Fe、Cu、Cr、Zn、In、Sn、及びSb(合計)の総不純物含有量を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0012】
実施形態8.最大孔径が、SEMで測定して0.1~3μmである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0013】
実施形態9.最大孔径が、SEMで測定して0.1~1μmである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0014】
実施形態10.焼結セラミック体が、99%~99.99%の相対密度を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0015】
実施形態11.焼結セラミック体が、エッチングされていない領域の算術平均高さ(Sa)3~20nmを有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0016】
実施形態12.ISO規格25178-2-2012のセクション4.1.7に従って、エッチングされていない領域において0.05~1.5umの最大高さSzを有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0017】
実施形態13.25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.685~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0018】
実施形態14.99.985%及びそれより高い純度を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0019】
実施形態15.ASTM E1461-13に従って測定した場合、約27W/mKの周囲温度での熱伝導率を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0020】
実施形態16.ASTM E1461-13に従って測定した場合、200℃で約14W/mKの熱伝導率を有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0021】
実施形態17.ZrOを含む第2の結晶相が14体積%~18体積%で存在し、熱膨張係数が、ASTM E228-17に従って測定して、25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって7.520~9.558×10-6/℃である、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0022】
実施形態18.ZrOを含む第2の結晶相が16体積%で存在し、熱膨張係数が、ASTM E228-17に従って測定して、25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって7.711~9.558×10-6/℃である、先行する実施形態のいずれか一つに記載の焼結セラミック体。
【0023】
実施形態19.焼結セラミック体を作製する方法であって、a)酸化アルミニウム粉末と酸化ジルコニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末が各々、150ppm未満の総不純物含有量を有する、作製する工程と、b)加熱して粉末混合物の温度を600℃~1400℃の焼成温度に上昇させることによって粉末混合物を焼成し、焼成温度を4~12時間の期間維持して焼成粉末混合物を形成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を配置し、容積内に真空条件を作り出す工程であって、ツールセットが、容積を画定するグラファイトダイと、内壁と、第1及び第2の開口部と、ダイと動作可能に結合された第1及び第2のパンチとを備え、第1及び第2のパンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1及び第2のパンチの少なくとも一方がダイの容積内を移動するときに、第1及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを作り出し、ギャップが10μm~100μmの幅である、作り出す工程と、d)1000~1700℃の焼結温度に加熱しながら、焼成粉末混合物に5MPa~100MPaの圧力を加えて焼結を行ない、焼結セラミック体を形成する工程と、e)焼結セラミック体の温度を低下させる工程であって、焼結セラミック体が少なくとも1つの表面を有し、焼結セラミック体が、Alを含む第1の結晶相と、8体積%~20体積%のZrOを含む第2の結晶相とを含み、第1の結晶相が連続マトリックスであり、第2の結晶相が連続マトリックス中に分散しており、焼結セラミック体が、SEMで測定して0.1~5μmの最大孔径を有する細孔を有し、焼結セラミック体が、ASTM E228-17に従って測定して25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.899~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を示し、焼結セラミック体が、99%~100%の相対密度を有し、最大寸法にわたって0.2~5%未満の密度変動を有し、最大寸法が200~625mmであり、Siが、焼結セラミック体中に存在しないか、又は焼結セラミック体中に100ppm以下の量で存在するかのいずれかである、低下させる工程と、を含む、方法。
【0024】
実施形態20.工程a)の粉末混合物が、焼結セラミック体が5~25体積%のジルコニアを有するような量で酸化ジルコニウムを含む、実施形態19に記載の方法。
【0025】
実施形態21.f)アニーリング温度に達するまで熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、焼結セラミック体をアニールする工程と、g)アニールした焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を更に含む、実施形態19又は20に記載の方法。
【0026】
実施形態22.h)焼結セラミック体を機械加工して、誘電体窓若しくはRF窓、フォーカスリング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナ、プラズマソースアダプター、ガス入口アダプター、ディフューザー、電子ウエハチャック、チャック、パック、混合マニホールド、イオンサプレッサー要素、フェースプレート、アイソレーター、スペーサー、及び/又はエッチングチャンバー内の保護リングの形態の焼結セラミック構成要素を作り出す工程を更に含む、実施形態19~21のいずれか一つに記載の方法。
【0027】
実施形態23.焼結温度が1000~1300℃である、実施形態19~22のいずれか一つに記載の方法。
【0028】
実施形態24.焼結温度に加熱しながら、5~59MPaの圧力を焼成粉末混合物に加える、実施形態19~23のいずれか一つに記載の方法。
【0029】
実施形態25.圧力が5~40MPaである、実施形態24に記載の方法。
【0030】
実施形態26.圧力が5~20MPaである、実施形態25に記載の方法。
【0031】
実施形態27.実施形態19~26のいずれか一つに記載の方法によって作製された、焼結セラミック体。
【0032】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】アルミナマトリックス中に分布したジルコニアを示す、5000倍のSEM顕微鏡写真である。
図2】25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって様々な量のジルコニアを有する組成物を比較する、熱膨張係数のプロットである。
図3】16体積%のZrOを含む、本明細書に開示する焼結セラミック体の焼結セラミック体の表面のSEM顕微鏡写真(5000倍)である。
図4】16体積%のZrOを含む本明細書に開示する焼結セラミック体の表面についての細孔面積対孔径のプロットである。
図5】15体積%のZrOを含む本明細書に開示する焼結セラミック体の表面のXRDパターンを示すグラフである。
図6】サイズ及び頻度による第2の結晶相の総面積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで特定の実施形態について詳細に言及する。特定の実施形態の例を添付の図に示す。本発明をこれらの特定の実装形態と併せて説明するが、本発明をそのような特定の実施形態に限定することを意図するものではないことは理解される。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替、改変、及び等価物を包含することを意図している。以下の記述では、開示する実施形態を完全に理解できるように、多くの具体的な詳細を記載する。本発明はこれらの具体的な詳細のうちのいくつか又は全てを使用せずに実施することができる。
【0035】
定義
本明細書で使用される場合、「アルミナ」という用語は、Alを含む酸化アルミニウムであると理解される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「イットリア」という用語は、Yを含む酸化イットリウムであると理解される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「シリカ」という用語は、SiOを含む二酸化ケイ素であると理解される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「半導体ウエハ」、「ウエハ」、「基板」、及び「ウエハ基板」という用語は互換的に使用される。半導体デバイス産業で使用されるウエハ又は基板は、典型的には、200mm、又は300mm、又は450mmの直径を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック体」という用語は、「焼結物」、「本体」、又は「焼結体」と同義であり、粉末混合物からモノリシック体を作り出す加圧及び熱処理プロセスに供されると、本明細書に開示する粉末混合物から形成される固体セラミック物品を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、粉末混合物が形成され得るバルク出発材料中、また加工後の粉末混合物中、及び本明細書に開示する焼結セラミック体中の様々な汚染物質の存在を指す。汚染物質又は「不純物」は、意図された用途を妨害し得るものであると考えられる。例えば、出発ジルコニア粉末中に存在し得るHfOなどのいくつかの元素又は化合物は、ZrOと非常に類似した化学的挙動のために汚染物質とみなされない場合があり、したがって、純度を報告するときに考慮されない場合がある。Yは、相転移安定剤としてジルコニアに添加されてもよく、したがって、純度を報告するときに考慮されない場合がある。より高い純度(100%に近い)は、汚染物質又は不純物を本質的に含まないか、又は非常に少量しか含まない材料を表し、開示された出発粉末中に存在する材料組成物を実質的に含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、a)粉末混合物が形成され得る出発材料、b)加工後の粉末混合物、並びにc)Zr、Al及びO並びに任意選択でドーパントを含む出発材料自体以外の不純物を含む焼結セラミック体中に存在するが、他に意図的に添加されない化合物/汚染物質を指す。不純物は、出発材料、粉末加工及び/又は焼結中に生じる場合があり、本明細書に開示する焼結セラミック体の特性に悪影響を及ぼす場合がある。ICPMS法を使用して、本明細書に開示する焼結体の粉末、粉末混合物及び形成された層の不純物含有量を決定した。
【0042】
本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、セラミック材料に所望の特性をもたらすために(例えば、電気的特性を変えるために)バルク材料に添加される物質である。典型的には、ドーパントは、使用される場合、低濃度、すなわち、>0.002重量%~<0.05重量%で存在する。
【0043】
不純物は、本明細書で定義されるドーパントが、例えば、多層焼結セラミック体中の粒径の修正などの特定の電気的、機械的、光学的、又は他の特性を得るために出発粉末又は粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、ドーパントとは異なる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「体積多孔率」という用語は、バルクセラミック内の空隙率のレベルが表面上の空隙率を表すので、「多孔率」と同義であってもよい。
【0045】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック体構成要素」という用語は、半導体加工チャンバーで使用するために必要な特定の形態又は形状を作り出すための機械加工工程後の焼結セラミック体を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「粉末混合物」という用語は、焼結プロセスの前に一緒に混合された1つ又は複数の粉末を意味し、焼結工程の後、それによって「焼結セラミック体」へと形成される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、ダイと2つのパンチ、及び任意選択で追加のスペーサー要素を含み得る。
【0048】
「相」又は「結晶相」という用語は同義であり、本明細書で使用される場合、化学量論相若しくは化合物相又は固溶体相を含む、材料の結晶格子を形成する規則構造を意味すると理解される。本明細書で使用される「固溶体」は、同じ結晶格子構造を共有する異なる元素の混合物として定義される。格子内の混合物は、一方の出発結晶の原子が他方の出発結晶の原子と置き換わる置換型であってもよいし、原子が格子内の通常空いている位置を占める侵入型であってもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「剛直性」及び「剛性」という用語は、当業者に知られているようにヤング率の定義と同義であり、それと一致する。
【0050】
「焼成」という用語は、加熱処理プロセスに関して使用される場合、本明細書では、水分及び/又は不純物を除去し、結晶化度を増加させ、場合によっては粉末混合物表面積を変更するために、焼結温度未満の温度で空気中で、粉末に対して行なうことができる加熱処理工程を意味すると理解される。
【0051】
セラミックの熱処理に適用される場合、「アニーリング」という用語は、本明細書では、開示されたセラミック焼結体又は焼結セラミック体構成要素を一定の温度にして、徐々に放冷して応力を緩和し、及び/又は化学量論を標準化する熱処理を意味すると理解される。多くの場合、空気又は酸素含有環境を使用することができるが、真空、不活性及び還元性などの他の雰囲気も可能である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数と関連して使用されるとき、プラス又はマイナス10%の分散を許容する。
【0053】
以下の詳細な説明は、半導体ウエハ基板の作製の一部として必要なエッチング又は堆積チャンバーなどの装置内で実施される実施形態を想定している。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料であってもよい。半導体ウエハ加工に加えて、本明細書に開示する実施形態を利用し得る他のワークピースは、微細特徴サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイス等の種々の物品を含む。
【0054】
組成
以下の詳細な説明は、本発明が、半導体ウエハ基板の作製の一部として必要なエッチング又は堆積チャンバーなどの装置内で実施されると想定している。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料であってもよい。半導体ウエハ加工に加えて、本発明を利用し得る他のワークピースは、微細特徴サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイス等の種々の物品を含む。
【0055】
半導体デバイスの加工中に、耐食性部品又はチャンバー構成要素がエッチング及び堆積チャンバー内で使用され、エッチングチャンバー内への粒子の放出を引き起こす過酷な腐食環境にさらされ、その結果、ウエハレベルの汚染による歩留まり損失が生じる。本明細書に開示する焼結セラミック体及び関連する構成要素は、以下に記載される特定の材料特性及び特徴によって、改善されたプラズマエッチング耐性及び半導体加工チャンバー内で洗浄される強化された能力を提供する。
【0056】
エッチング又は堆積プロセスに関連する半導体加工リアクタ-は、半導体加工に必要な反応性プラズマによる化学的腐食に対して高い耐性を有する材料から製造されたチャンバー構成要素を必要とする。これらのプラズマ又はプロセスガスは、多くの場合、O、F、Cl、HBr、BCl、CCl4、2、NF、NO、NO、C4、CF、SF6、C、CHF3,CHなどの様々なハロゲン、酸素及び窒素ベースの化学物質で構成されていてもよい。本明細書に開示する耐食性材料の使用は、使用中の低減された化学腐食を提供する。更に、非常に高い純度を有する焼結セラミック体などのチャンバー構成要素材料を提供することにより、腐食の開始部位として働く可能性がある不純物が少ない均一な耐腐食性体が提供される。浸食又は剥離に対する高い耐性もまた、チャンバー構成要素として使用するための材料に要求される。浸食又は剥離は、Arなどの不活性プラズマガスの使用による構成要素表面のイオン衝撃から生じる可能性がある。高い硬度値を有するこれらの材料は、それらの高められた硬度値がイオン衝撃及びそれによる浸食に対するより大きな耐性を提供するため、構成要素として使用するのに好ましい場合がある。更に、微細なスケールで分布した最小の多孔率を有する高密度材料から製造された構成要素は、エッチング及び堆積プロセス中の腐食及び浸食に対するより大きな耐性を提供し得る。その結果、好ましいチャンバー構成要素は、プラズマエッチング、堆積及びチャンバー洗浄プロセス中に高い耐浸食性及び耐腐食性を有する材料から製造されたものであってもよい。腐食及び浸食に対するこの耐性により、半導体加工中における構成要素表面からエッチング又は堆積チャンバー内への粒子の放出を防止する。プロセスチャンバー内へのそのような粒子の放出又は飛散は、ウエハ汚染、半導体プロセスドリフト及び半導体デバイスレベル歩留まり損失の一因となる。
【0057】
加えて、チャンバー構成要素は、構成要素の設置、除去、洗浄、及びプロセスチャンバー内での使用中に必要とされる取扱い性のために、十分な曲げ強度及び剛性を有していなければならない。高い機械的強度は、破損、亀裂又は欠けを生じることなく、焼結セラミック体に微細な形状の複雑な特徴を機械加工することを可能にする。曲げ強度又は剛性は、最新のプロセスツールで使用される大きな構成要素サイズで特に重要になる。200~620mm又は625mm程度の直径の半導体処理チャンバーで使用される誘電体又はRF窓などのいくつかの構成要素用途では、真空条件下での使用中に著しい応力が窓にかかり、高強度及び剛性の耐食性材料、又は基板として使用される本明細書で開示される焼結セラミック体の選択を必要とする。
【0058】
特に、プラズマ加工チャンバーで使用される1MHz~20GHzの高周波数で、プラズマ発生効率を改善するために、好ましくは、半導体チャンバー構成要素は、可能な限り低い誘電損失を有する材料である。より高い誘電損失を有するこれらの構成要素材料におけるマイクロ波エネルギーの吸収によって生成される熱は、不均一な加熱及び構成要素に対する熱応力の増加を引き起こし、使用中の熱応力及び機械応力の組み合わせは、製品設計の制限及び複雑化をもたらす可能性がある。
【0059】
要件を満たすために、少なくとも1つの表面を有する焼結セラミック体であって、焼結セラミック体が、Alを含む第1の結晶相と、8体積%~20体積%のZrOを含む第2の結晶相とを含み、第1の結晶相が連続マトリックスであり、第2の結晶相が連続マトリックス中に分散しており、焼結セラミック体が、SEMで測定して0.1~5μmの最大孔径を有する細孔を有し、焼結セラミック体が、ASTM E228-17に従って測定して25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.899~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を示し、焼結セラミック体が、99%~100%の相対密度を有し、最大寸法にわたって0.2~5%未満の密度変動を有し、最大寸法が200~625mmであり、Siが、焼結セラミック体中に存在しないか、又は焼結セラミック体中に100ppm以下の量で存在するかのいずれかである、焼結セラミック体が本明細書に開示される。アルミナ及びジルコニアの混合物を含む組成物は、本明細書において「ジルコニア強化アルミナ」又は「ZTA」と呼ばれることがある。
【0060】
図1によって例示される実施形態では、本明細書に開示する焼結セラミック体は、2つ以上の不連続相又は連続相のマトリックス又は複合構造を有し、ここで、第1の結晶相はAlを含み、第2の結晶相はZrOを含み、第1の結晶相は連続マトリックスであり、第2の結晶相は連続マトリックス中に分散されている。図1において、別個のジルコニア結晶相(白色)は、アルミナ結晶マトリックス(黒色)全体にわたって均一に分布しており、これは、不連続ジルコニア相のより大きな領域が存在する程度まで、不連続ジルコニア相が、54μm×54μmの面積を有する研磨表面にわたって15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは8μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは3μm以下、好ましくは1μm以下の最大寸法を含むことを意味する。実施形態では、ジルコニア結晶相は、焼結セラミック体中に、焼結セラミック体の8体積%~20体積%、いくつかの実施形態では12体積%~25体積%、又は5体積%~25体積%、又は10体積%~25体積%、又は15体積%~25体積%、又は15体積%~17体積%、又は20体積%~25体積%、又は5体積%~20体積%、14体積%~18体積%、又は5体積%~15体積%、又は5体積%~10体積%、又は15体積%~20体積%の量で存在する。
【0061】
開示される方法に従って調製される焼結セラミック体、及び当該焼結体から作製される焼結セラミック体構成要素は、好ましくは高密度を有する。密度測定は、当該技術分野において既知であるアルキメデス水浸漬法を用いて行なった。本明細書に開示するセラミック焼結体は、例えば、98~100%、99~100%、99.5~99.99%、又は99.5~100%の密度を有してもよく、これは、プラズマ及び堆積加工から生じる浸食及び腐食の影響に対する向上した耐性を提供し得る。
【0062】
以下の表は、本開示によるアルミナ及びジルコニアで作製された大きな部品の密度の例を提供する。
【0063】
【表1】
【0064】
所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示すように、試料のアルキメデス法を用いて測定された密度の同じ材料の報告された理論密度に対する比として定義される。体積多孔率(Vp)は密度測定値から以下のように計算される:
【0065】
【数1】
式中、ρ sampleはASTM B962-17に従って測定された(アルキメデス)密度であり、ρ theoreticalは報告された理論密度であり、RDは相対分率密度である。この計算を使用して、約0.1~2%のパーセントによる多孔率レベルが、本明細書に開示するセラミック焼結体について測定された密度値から計算された。したがって、実施形態では、焼結セラミック体は、焼結セラミック体中に0.1~2%、好ましくは0.1~1.5%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%の量の体積多孔率を含んでもよい。
【0066】
本明細書に開示するセラミック焼結体の高い密度、及びそれによる高い機械的強度はまた、特に大きな寸法において、向上した取扱い性を提供する。焼結ZTA体の製造の成功は、少なくとも1つの最長寸法(例えば、約200~625mm)にわたる密度の変動を制御することによって達成される。最大寸法にわたって5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下の密度の変動で、上に示される98.5%以上及び99.5%以上の平均密度が得られ、それによって最大寸法は、例えば、約625mm以下、622mm以下、610mm以下、好ましくは575mm以下、好ましくは525mm以下、好ましくは100~625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~625mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~625mm、好ましくは500~625mmであってもよい。密度の変動を低減することにより、取扱い性が向上し、セラミック焼結体全体の応力を低減することができる。
【0067】
本明細書に開示するセラミック焼結体は、表面及び全体の両方に非常に小さい細孔を有し得る。好ましくは、本明細書に開示するプロセスに従って作製されるセラミック焼結体は、したがって、全体にわたって均一に分布した細孔を有するインテグラルボディである。言い換えれば、表面上で測定された細孔又は空隙又は間隙は、バルク耐食層内の細孔又は空隙又は間隙を表し得る。したがって、本明細書に開示するバルクセラミック体内に存在する体積多孔率は、表面にわたって測定された間隙も表す。
【0068】
それに対応して、本明細書に開示する焼結セラミック体は細孔又は空隙を有するが、多孔率のレベルは非常に低く、プラズマエッチング及び堆積用途において改善された性能を提供し、半導体加工システムに必要とされるレベルまでの広範な洗浄を容易にし得る。この結果、構成要素の寿命が延び、プロセス安定性が向上し、クリーニング及びメンテナンスのためのチャンバーのダウンタイムが減少する。最小の多孔率を有する、ほぼ緻密又は完全に緻密な固体焼結セラミック体が、本明細書に開示される。この最小の多孔率は、エッチング及び堆積プロセス中に焼結セラミック体の表面における汚染物質の捕捉を防止することによって、粒子生成の低減を可能にし得る。焼結セラミック体がエアロゾル、プラズマスプレー及び他の技術による耐食層のその後の堆積のための基板として機能し得るいくつかの実施形態では、この低いレベルの多孔率は、均一であり、空隙又は間隙がなくてもよい、例えば約1~20μmなどの非常に薄い耐食膜の形成を可能にし得る。
【0069】
それに対応して、焼結セラミック体が、小さな直径の間隙及び制御された孔径分布と組み合わせて、間隙で構成される小さな割合の表面積を有することが有利であり得る。本明細書に開示する耐食性焼結セラミック体は、焼結セラミック体において2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満の多孔率を有し得、表面の制御された間隙面積、間隙頻度、及び微細な間隙寸法によって改善されたエッチング耐性を提供する。好ましくは、細孔は、SEMで測定して、0.1~5μm、好ましくは0.1~4μm、より好ましくは0.1~3μm、より好ましくは0.1~2μm、最も好ましくは0.1~1μmの最大孔径を有する。
【0070】
実施形態では、本明細書に開示する焼結セラミック体の表面にわたる多孔率は、0.0005~2%、好ましくは0.0005~1%、好ましくは0.0005~0.5%、好ましくは0.0005~0.05%、好ましくは0.0005~0.005%、好ましくは0.0005~0.003%、好ましくは0.0005~0.001%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.5~2%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.005~1%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.05~1%、好ましくは0.5~2%の量である。
【0071】
高い密度に加えて、高い硬度値は、プラズマチャンバー構成要素として使用中の浸食に対する強化された耐性を更に提供する。したがって、ビッカース硬度測定は、ASTM規格C1327「Standard Test Method for Vickers Indentation Hardness of Advanced Ceramics」に従って行なった。17~23GPa、好ましくは18~22GPa、好ましくは約20GPaの硬度値が、本明細書に開示する焼結セラミック体について得ることができる。これらの高い硬度値は、半導体エッチングプロセス中のイオン衝撃に対する耐性の向上及び使用中の浸食の低減に寄与し得、焼結セラミック体が微細スケール特徴を有する焼結セラミック体構成要素に機械加工されるときの寿命の延長を提供する。
【0072】
本明細書に開示する焼結セラミック体は、25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって、6.899~9.630×10-6/℃、いくつかの実施形態では7.113~7.326×10-6/℃、他の実施形態では6.685~6.899×10-6/℃、他の実施形態では6.685~7.113×10-6/℃、他の実施形態では6.685~7.54×10-6/℃、更に他の実施形態では7.540~9.515×10-6/℃、更に他の実施形態では7.326~9.515×10-6/℃、更に他の実施形態では7.113~9.515×10-6/℃、更に他の実施形態では6.899~9.515×10-6/℃、更に他の実施形態では6.685~9.515×10-6/℃の熱膨張係数を示す。ここで図2を参照すると、25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって、8~20体積%の様々な量のジルコニアを有する組成物を比較して、熱膨張係数がプロットされている。焼結セラミック体の組成は、アルミナ中のジルコニアの体積に基づいて特定のCTE特性を生じるように調整することができる。焼結セラミック体は、図2によって示されるデータを列挙する以下の表に示されるように、CTEが25~200℃から25~1400℃まで、10体積%のジルコニアの場合の約6.899×10-6/℃から約25体積%のジルコニアの場合の約9.630×10-6/℃まで変化し得るようなジルコニアの組成範囲にわたって形成され得る。
【0073】
【表2】
【0074】
図6は、本明細書に開示する実施形態によるジルコニアの不連続領域を含む第2の結晶相について、第2の相サイズによる総不連続領域面積、及び第2の相サイズによる総不連続領域面積の頻度を示す。不連続領域面積の最大頻度は、244領域のカウントで生じ、したがって、これは、本明細書に開示する第2の相を含む不連続領域の平均面積とみなされる。したがって、実施形態では、本明細書に開示されるのは、不連続領域を有する第2の結晶相を含む焼結セラミック体であって、任意の1つの領域が、10~30μm、好ましくは10~25μm、好ましくは10~20μm、好ましくは15~25μm、好ましくは約23μmの平均面積を有する焼結セラミック体である。第2の結晶相を含む不連続領域の平均面積は、制御されたCTE特性、高い破壊靱性、及び高い強度を有する焼結セラミック体の形成を可能にする。不連続領域の最大面積が、例えば、100umより大きい場合、第1の結晶相と第2の結晶相との間のCTE差は、第2の結晶相の大きな不連続領域に近接する微細構造において亀裂を引き起こす可能性がある。第2の結晶相の平均面積及び最大面積によって表される微細に分散した不連続領域は、焼結セラミック体に向上した破壊靱性及び強度を提供する。したがって、実施形態では、ジルコニアの第2の相を含む不連続領域の最大面積は、約60um以下、好ましくは約55um以下、好ましくは約50um以下であることが好ましい。
【0075】
機械的強度特性は、粒径の減少と共に改善することが知られている。粒径を評価するために、ASTM規格E112-2010「Standard Test Method for Determining Average Grain Size」に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って、線形切片粒径測定を行なった。例えば、200~600mmの大きな構成要素として反応器チャンバー内で使用するための高い曲げ強度及び剛性の要件を満たすために、本明細書に開示する焼結セラミック体は、微細粒径を有する。実施形態では、第1の結晶相は、ASTM E112-2010に従って測定した場合、1~5μm、好ましくは2~5μm、好ましくは3~5μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~3μmの粒径を有し、第2の結晶相は、0.5~4μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~4μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは0.5~2μmの粒径を有する。これらの粒径は、300MPa以下、好ましくは350MPa以下、好ましくは少なくとも400MPaの4点曲げ曲げ強度を有する焼結セラミック体をもたらし得る。20um以上のオーダーで直径が大きすぎる粒径は、低い曲げ強度値を有するセラミック焼結体をもたらす可能性があり、これは、特に大きな寸法のエッチングチャンバー構成要素としての使用にセラミック焼結体を不適切なものにする可能性があり、したがって、焼結セラミック体が好ましくは3um未満の平均粒径を有することが好ましい。
【0076】
誘電損失の低い材料を提供することも、周波数が高くなるにつれて重要になる。本明細書に開示するセラミック焼結体は、1MHz~20GHzの周波数範囲にわたって約5×10-2~5×10-5以下の特定の用途固有の範囲内で調整することができる。出発粉末の純度、特に、焼結セラミック体中のシリカ含有量などの材料特性は、誘電損失に影響を及ぼし得る。実施形態では、出発材料中のシリカ含有量が低い場合、上述の誘電損失要件を満たす焼結セラミック体を提供することができる。好ましい実施形態では、Siは、焼結セラミック体中に検出可能なレベルで存在しないか、又は100ppm以下、例えば、14ppm~100ppm、好ましくは14~75ppm、好ましくは14~50ppm、好ましくは14~25ppm、好ましくは14~20ppmの量で存在する。一実施形態では、Siは、たとえ焼結セラミック体中に存在するとしても、50ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、Siは、たとえ焼結セラミック体中に存在するとしても、14ppm以下の濃度で存在する。別の実施形態では、Siは、たとえ焼結セラミック体中に存在するとしても、10ppm以下の濃度で存在する。更に別の実施形態では、Siは、たとえ焼結セラミック体中に存在するとしても、7ppm以下の濃度で存在する。
【0077】
更に、誘電損失は、粒径及び粒径分布によって影響を受ける可能性がある。微細な粒径はまた、低減された誘電損失を提供し得、それによって、より高い周波数での使用時の低減された加熱を提供し得る。これらの材料特性は、加工チャンバー内の構成要素用途に依存する特定の損失値を満たすように、材料合成を通じて調節することができる。
【0078】
本明細書に開示する焼結セラミック体は、知られている最も耐エッチング性の高い材料のうちの1つであり得、出発材料として非常に高い純度及び密度の焼結セラミック体を製造するための高純度出発材料の使用は、セラミック焼結構成要素に固有のエッチング耐性を提供する。しかしながら、高純度の酸化物は、半導体エッチングチャンバーへの適用に必要とされる高密度に焼結することが困難である。焼結助剤が、高い(98%超、99%超又は99.5%超)密度を達成するために多くの場合必要とされることから、高い焼結温度及び高いプラズマエッチング耐性の材料特性は、必要な高純度を維持しながら高密度に焼結する際の課題を提示する。この高純度は、ハロゲン系ガス種による焼結セラミック体の表面の粗面化を防止し、これは、そうでなければ、純度の低い粉末から作製された構成要素を化学的に攻撃し、表面を粗面化し、エッチングする可能性がある。前述の理由から、アルミナ及びジルコニア出発材料において、99.99%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9999%超の完全純度が好ましい場合がある。それに対応して、実施形態では、焼結セラミック体が作製されるアルミナ及びジルコニア粉末は、開示された範囲で存在し得るマグネシア及びシリカを除いて、焼結助剤を含まない。
【0079】
本明細書に開示する焼結セラミック体の全純度は、99.985%以上、99.99%以上、好ましくは99.995%以上、より好ましくは99.999%以上の純度を有し得る。別の言い方をすれば、本明細書に開示する焼結セラミック体は、ICPMS法を使用して測定した場合、焼結セラミック体の総質量に対して100ppm未満、好ましくは75ppm未満、50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは5~30ppm、好ましくは5~20ppmの総不純物含有量を有し得る。本明細書に開示する総不純物含有量は、シリカの形態のSiを含まない。
【0080】
特に、本明細書に開示する焼結セラミック体は、ICPMSで測定して50ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する。別の実施形態では、本明細書に開示する焼結セラミック体は、ICPMSで測定して5ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する。更に別の実施形態では、本明細書に開示する焼結セラミック体は、ICPMSで測定して50ppm以下の微量元素Li、Na、Mg、K、Ca、B、P、Fe、Cu、Cr、Zn、In、Sn、及びSb(合計)の純度を有する。
【0081】
より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示するICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えばSc以上の元素は、より軽い元素、例えばLiからAl(例えば0.7ppm程度の低い精度で検出される)よりも高い精度、例えば0.06ppm程度の低い精度で検出される。したがって、LiからAlまでのようなより軽い元素を含むこれらの粉末の不純物含有量は、約0.7ppm以上と測定することができ、Sc(スカンジウム)からU(ウラン)までのより重い元素の不純物含有量は、約0.06ppm以上と測定することができる。本明細書に開示するICPMS法を使用して、K(カリウム)及びCa(カルシウム)を1.4ppm以上の量で同定することができる。鉄は、0.14ppmという低い量の精度で検出することができる。微量のイットリア及びハフニアは、これらの酸化物がジルコニアの安定剤としてしばしば使用され、したがって不純物ではないので、焼結セラミック体中に存在してもよい。焼結セラミック体の純度とは別に、セラミック焼結構成要素の純度が保持され得る。
【0082】
したがって、エッチングプロセスの前及び後の両方で、焼結セラミック体の表面は、加工チャンバー内の微粒子生成に相関し得る。したがって、一般に、低減された表面粗さを有することが有益である。焼結セラミック体について、Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)及びSdr(界面展開面積)のパラメーターを測定した。一般に、プラズマエッチングプロセス後の表面粗さは、耐食性材料によってもたらされる低い表面粗さがチャンバー内への混入粒子の放出を低減し、それに対応して、エッチング後のより高い表面粗さが、粒子生成及びウエハ上への放出に寄与し得るという点で、チャンバー粒子生成に影響を及ぼし得る。加えて、Sa、Sz及びSdrのより低い表面粗さ値によって示されるようなより平滑な表面は、本明細書に開示するチャンバー構成要素が半導体グレードレベルまでより容易に洗浄されることを可能にする。
【0083】
表面粗さの測定は、クラス1のクリーンルームの環境条件下で、Keyenceの3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを用いて行なうことができる。顕微鏡は2.8Hzの固有振動数を有するTMC tableTop CSP卓上型パッシブ除振台の上に置く。この非接触システムは、レーザービーム光と光学センサを使用して、表面を反射光の強度を介して解析する。顕微鏡は、x方向で1,024のデータポイントとy方向で786のデータポイントの合計786,432データポイントを取得する。所与のスキャンが完了すると、対物レンズがz方向に設定されたピッチで移動し、強度をスキャン間で比較して焦点を決定する。ISO25178表面テクスチャー(Areal Roughness測定)は表面粗さの分析に関連する国際標準集であり、この顕微鏡はそれに準拠している。
【0084】
共焦点顕微鏡を使用して10倍の倍率で試料の表面を通常レーザースキャンして、試料の詳細な画像を撮影する。7つの区画化されたブロックのプロファイルでライン粗さを得る。測定サンプリング長を表すラムダカイ(λ)を、ISO仕様4288:製品の幾何特性仕様(GPS)--表面テクスチャー:プロファイル方法-表面テクスチャーの評価のための規則と手順に従って線の読取りが7つのうちの5つの中央ブロックからの測定値に制限されるように調整することができる。
【0085】
面積は、測定のために試料のエッチングされた領域及びエッチングされていない領域内で選択することができ、Sa、Sz及びSdrを計算するために使用することができる。
【0086】
Saは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたって計算された平均粗さ値を表す。Szは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山-谷距離を表す。Sdrは、「界面展開面積比」として定義される計算数値であり、完全に平坦な表面に対する実際の表面積の増加分の比例表現である。平坦な表面には0のSdrが割り当てられ、その値は表面の勾配と共に増加する。より大きな数値は、表面積のより大きな増加と一致する。これにより、試料間の表面積増加の程度の数値比較が可能になる。それは、平面領域と比較して、テクスチャー又は表面特徴から生じる追加の表面積を表す。
【0087】
Sa、Sz及びSdrの表面粗さの特徴は基礎となる技術分野において公知のパラメーターであり、例えば、ISO規格25178-2-2012のセクション4.3.2に記載されている。
【0088】
本開示は、ISO規格25178-2-2012のセクション4.1.7に従って、30nm未満、より好ましくは20nm未満、より好ましくは15nm未満、より好ましくは12nm未満、より好ましくは10nm未満、好ましくは3~25nm、好ましくは3~20nm、好ましくは3~10nm、好ましくは3~8nmの算術平均高さSaを提供する、エッチング又は堆積プロセス前の耐食性表面を有する焼結セラミック体に関し、表面粗さが特定の値を超えず、多孔率の分布が制御されている。
【0089】
以下の表は、本明細書に開示する焼結セラミック体についてのSa、Sz及びSdr測定結果を列挙する。
【0090】
【表3】
【0091】
本開示は、ISO規格25178-2-2012のセクション4.1.7に従って、5.0μm未満、より好ましくは4.0μm未満、最も好ましくは3.5μm未満、より好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm未満、より好ましくは1.5μm未満、より好ましくは1μm未満の最大高さSzを提供するエッチング又は堆積プロセス前の耐食性表面を有する焼結セラミック体に関し、表面粗さが特定の値を超えず、多孔率の分布が制御されている。
【0092】
本開示は、ISO規格25178-2-2012のセクション4.1.7に従って、100×10-5未満、より好ましくは80×10-5未満、より好ましくは600×10-5未満、より好ましくは50×10-5未満の展開界面面積Sdrを提供するエッチング又は堆積プロセス前の耐食性表面を有する焼結セラミック体に関し、表面粗さが特定の値を超えず、多孔率の分布が制御されている。
【0093】
焼結セラミック体が、エアロゾル、プラズマ溶射、及び他の技術による耐食層のその後の堆積のための基板として機能し得るいくつかの実施形態では、本明細書に開示するSa、Sz、及びSdrのこれらの低い値は、均一であり得、空隙又は間隙がなくてもよい、例えば約1~20umなどの非常に薄い耐食膜の形成を可能にし得る。
【0094】
調製方法
焼結セラミック体の調製は、直流焼結及び関連技術と組み合わせた加圧支援焼結を用いて行なうことができ、これは直流を使用して導電性のダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって材料を焼結するものである。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な結晶粒径のセラミック焼結体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。
【0095】
焼結セラミック体を作製する方法であって、a)酸化アルミニウム粉末と酸化ジルコニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、ここで、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末は各々、150ppm未満の総不純物含有量を有する、工程と、b)加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を形成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加えて焼結を行なって、焼結セラミック体を形成する工程と、e)焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を含む方法が開示される。以下の追加の工程は任意である:f)任意選択でアニーリング温度に達するまで熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより焼結セラミック体をアニールする工程;g)焼結セラミック体に加えられた熱源を除去することによって、アニールした焼結セラミック体の温度を周囲温度まで低下させる工程並びにh)焼結セラミック体を機械加工して、誘電体窓若しくはRF窓、フォーカスリング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナ、プラズマソースアダプター、ガス入口アダプター、ディフューザー、電子ウエハチャック、チャック、パック、混合マニホールド、イオンサプレッサー要素、フェースプレート、アイソレーター、スペーサー、及び/又はエッチングチャンバー内の保護リングなどの焼結セラミック体構成要素を作り出す工程。結果、少なくとも1つの表面を有する焼結セラミック体であって、焼結セラミック体が、Alを含む第1の結晶相と、8体積%~20体積%のZrOを含む第2の結晶相とを含み、第1の結晶相が連続マトリックスであり、第2の結晶相が連続マトリックス中に分散しており、焼結セラミック体が、SEMで測定して0.1~5μmの最大孔径を有する細孔を有し、焼結セラミック体が、ASTM E228-17に従って測定して25~200℃から25~1400℃までの温度範囲にわたって6.899~9.630×10-6/℃の熱膨張係数を示し、焼結セラミック体が、99%~100%の相対密度を有し、最大寸法にわたって0.2~5%未満の密度変動を有し、最大寸法が200~625mmであり、Siが、焼結セラミック体中に存在しないか、又は焼結セラミック体中に100ppm以下の量で存在するかのいずれかである、焼結セラミック体が得られる。
【0096】
焼結セラミック体から形成される耐食性構成要素の上述の特性は、特に、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムの粉末の純度、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムの粉末に対する圧力、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムの粉末の温度、粉末の焼結持続時間、任意選択のアニーリング工程中の焼結セラミック体/焼結セラミック体構成要素の温度、並びにアニーリング工程の持続時間を適合させることによって達成される。
【0097】
本明細書に開示する方法は、ジルコニア強化酸化アルミニウムで構成される焼結セラミック体構成要素の調製を提供する。前述の組成物はまた、いくつかの実施形態では、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLu並びにそれらの酸化物からなる群から選択される任意選択の希土類酸化物ドーパントを1重量%以下の量で用いて作製されてもよく、これは工程a)で粉末混合物に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末は、ドーパントなしで混合される。
【0098】
一実施形態による焼結セラミック体及び焼結セラミック体構成要素の特性は、工程a)粉末混合/結合及びb)焼結前の粉末混合物の熱処理、工程a)で使用される酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウム粉末の出発粉末の純度、粒径及び表面積、工程a)で使用される出発材料の表面積及び均一性、工程d)での粉末混合物への圧力、工程d)での粉末混合物の焼結温度、工程d)での粉末混合物の焼結時間、工程f)での任意でのアニーリング工程中の焼結セラミック体又は構成要素の温度、並びに任意でのアニーリング工程f)の時間を適合させることによって達成される。得られた焼結セラミック体は、特に半導体製造装置などのプラズマ加工装置における焼結セラミック体又は耐食性部材として好適に用いることができる。そのような部品又は部材は、他の構成要素の中でも、窓、ノズル、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、(エッチング)チャンバーライナ、混合マニホールド、ウエハ支持体、電子ウエハチャック、並びにフォーカスリング及び保護リングなどの様々なリングを含み得る。
【0099】
本開示のセラミック焼結体は、半導体加工ツールにおいて使用される場合に、高い強度を示すだけでなく、RF伝送の低損失も示す。この特徴は、それらを誘電体又はRF窓としての使用に特に適したものにする。
【0100】
本明細書に開示する方法の工程a)は、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムを含む粉末を組み合わせて粉末混合物を作製することを含む。焼結物及び/又は構成要素を形成するための酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムの出発材料は、好ましくは高純度の市販の粉末である。
【0101】
一実施形態による出発原料として用いられる酸化アルミニウム粉末の粒径は、通常0.05~5μm、好ましくは0.1~3μm、より好ましくは0.2~2μmである。酸化アルミニウム粉末は、通常、1~18m/g、より好ましくは4~16m/g、最も好ましくは6~12m/gの比表面積を有する。酸化アルミニウム出発材料の純度は、典型的には99.0%超、好ましくは99.96%超、より好ましくは99.995%超である。
【0102】
酸化ジルコニウム粉末は、0.08~0.20umのd10、0.3~0.7umのd50、及び0.9~5μmのd90を有する粒径分布を有し得る。本発明の一実施形態による混合物の出発材料として使用される酸化ジルコニウム粉末の平均粒径は、1~3umであってもよい。ジルコニア粉末は、典型的には、1~16m/g、好ましくは2~10m/g、より好ましくは5~8m/gの比表面積を有する。ジルコニア粉末出発材料の純度は、典型的には99.0%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.97%超、好ましくは99.99%超である。
【0103】
アルミナ及びジルコニア粉末は、ジルコニアが、焼結セラミック体の各々5~25体積%、好ましくは10~25体積%、好ましくは15~25体積%、好ましくは20~25体積%、好ましくは5~20体積%、好ましくは5~15体積%、好ましくは5~10体積%、好ましくは15~20体積%で混合物中に存在するような割合で混合される。
【0104】
アルミナ粉末とジルコニア粉末とを混合して粉末混合物を作製することは、ボールミル粉砕、湿式混合及び乾式混合の従来の粉末調製技術を使用して行なうことができる。ボールミル粉砕は、一例としてアルミナ媒体を使用して達成することができ、当業者に公知の方法に従って行なうことができる。他の例では、酸化ジルコニウムなどのより硬い媒体が使用されてもよい。ボールミル粉砕の使用は、微粒子及び凝集体を破壊し、焼成前に均質な粉末混合物を提供し得る高エネルギープロセスである。ボールミル粉砕は、湿潤又は乾燥条件のいずれかで行ってもよい。湿式混合は、様々な溶媒、例えばエタノール又は水を使用して、混合中に最小限の媒体を用いて又は媒体を用いずに行なうことができ、当業者に公知の方法に従って行なうことができる。湿式混合は移動度の向上を通じて粉末の分散を改善し、熱処理又は焼成の前に微細スケールの均一な混合を与える。乾式混合は、最終焼結セラミック体における純度要件に従って媒体を用いて又は用いずに行なわれてもよく、当業者に公知の方法に従って行なうことができる。アトリションミリング、高せん断混合、プラネタリーミリング、及び他の既知の手順の追加の粉末調製手順も適用することができる。粉末スラリーは既知の方法に従って乾燥させる。上述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで、又はその後に合わされて最終的な焼結セラミック体にされる2つ以上の粉末混合物に、使用することができる。
【0105】
本明細書に開示する方法の工程b)は、加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことによって粉末混合物を焼成することである。この工程は、水分を除去し、粉末混合物の表面条件が焼結前に均一になるように行なわれ得る。熱処理工程に従った焼成は、約600℃~約1400℃の温度で、4~12時間、酸素含有環境中で行なわれてもよい。粉末混合物の表面積は、1~18m/g、3~15m/g、又は3~10m/gであってもよい。焼成後、既知の方法に従って、粉末を篩い分け及び/又はタンブリングしてもよい。
【0106】
焼成後、焼成粉末混合物は、典型的には、1~12m/g、好ましくは2~10m/g、好ましくは3~9m/g、好ましくは4~8m/gの比表面積を有する。
【0107】
本明細書に開示する方法の工程c)は、放電プラズマ焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空条件環境を作り出すことである。一実施形態によるプロセスにおいて使用される焼結装置は、少なくとも1つのグラファイトダイを含み、このグラファイトダイは、通常、円筒形グラファイトダイである。グラファイトダイにおいて、粉末混合物は、2つのグラファイトパンチの間に、又は場合によってはスペーサー要素の間に配置される。少なくとも1つの粉末混合物を焼結装置のダイにロードすることができる。当業者に知られている真空条件がパンチ及びダイによって作り出された容積内に確立される。
【0108】
好ましい実施形態では、放電プラズマ焼結(SPS)ツールは、少なくとも1つのセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する内壁、及び外壁、を有する側壁を備えたダイと、ダイと動作可能に連結された上部パンチと下部パンチと、を含み、上部パンチと下部パンチの各々はダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチと下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間のギャップを画定し、ここで、ギャップは10μm~100μmの幅を有する。好ましくは、ダイ及びパンチはグラファイト製である。このようなSPSツールは、2020年10月3日に出願された米国仮特許出願第63/087,204号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
開示する方法は、市販の粉末又は化学合成技術から調製されるものを利用し、焼結助剤、コールドプレス、焼結前の白地の成形又は機械加工を必要としない。
【0110】
方法の工程d)は、焼結温度に加熱しながら、焼成粉末混合物に圧力を加えて焼結を行なって焼結セラミック体を形成し、工程eは、例えば、焼結装置への熱源を取り除き、焼結物を冷却することによって、焼結セラミック体の温度を低下させる。粉末混合物がダイ及びパンチによって画定された容積内に入れられた後、グラファイトパンチ間に入れられた粉末混合物に圧力が加えられる。それにより、圧力は、5MPa~100MPa、好ましくは10MPa~50MPa、好ましくは15MPa~45MPa、好ましくは20~40MPaの圧力に増加される。圧力は、ダイの中に入れられた材料上に軸方向に加えられる。
【0111】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチとダイによって直接加熱される。ダイ及びパンチは、抵抗性/ジュール加熱を促進するグラファイトなどの導電性材料から構成され得る。焼結装置及び手順は米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。したがって、示された温度が粉末混合物中で実際に実現されているように、温度は加工されている粉末の可能な限り近くで測定されることが好ましい。
【0113】
ダイに提供された粉末混合物への熱の適用は、約1000~1700℃、好ましくは約1050~1600℃、より好ましくは約1300~1500℃の焼結温度を容易にする。最終焼結は、典型的には、0.5~1440分、好ましくは0.5~720分、好ましくは0.5~360分、好ましくは0.5~240分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~30分、好ましくは0.5~20分、好ましくは0.5~10分、好ましくは0.5~5分の時間で達成され得る。プロセスの工程e)において、焼結セラミック体は、熱源の除去によって受動的に冷却される。自然対流は、任意選択のアニールプロセスを容易にし得る温度に達するまで起こり得る。
【0114】
焼結中、典型的には体積の減少が生じ、その結果、焼結セラミック体は、焼結装置のツールセットに入れたときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を有し得る。
【0115】
一実施形態で、圧力と温度の適用の順序は、本開示に従って変更し得、このことは、最初に示された圧力を加え、その後に所望の温度に達するように熱を加えることが可能であることを意味する。更に、他の実施形態ではまた、最初に所望の温度に達するように示された加熱を行ない、その後に、示された圧力を加えることが可能である。本開示による第3の実施形態では、焼結する粉末混合物に温度と圧力を同時に加えて、示された値に達するまで上昇させてもよい。
【0116】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内の粉末混合物を間接的に加熱するために使用することができる。
【0117】
他の焼結技術とは対照的に、焼結前の試料の調製、すなわち、コールドプレス又は白地の成形による試料の調製は必須ではなく、予備混合粉末を型に直接充填する。これは、最終的な焼結セラミック体においてより高い純度を提供し得る。
【0118】
他の焼結技術とは更に対照的なことに、焼結助剤は必須ではない。更に、最適なエッチング性能及び低いRF透過損失のためには、高純度の出発粉末が望ましい。焼結助剤がなく、純度が99.99%~99.9999%を超える高純度の出発材料を使用することにより、半導体エッチングチャンバー内のセラミック焼結部品として使用するための改善されたエッチング耐性を提供する高純度の焼結セラミック体の製造が可能になる。
【0119】
したがって、等温滞留時間下での焼結は、典型的には0分~1440分、好ましくは0分~720分、好ましくは0分~360分、好ましくは0分~240分、好ましくは0分~120分、好ましくは0分~60分、好ましくは0分~30分、好ましくは0分~20分、好ましくは0分~10分、好ましくは0分~5分の期間にわたって行なわれる。
【0120】
本発明の一実施形態では、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.1℃/分~100℃/分、好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは2~25℃/分の特定の加熱勾配での予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0121】
本発明の更なる実施形態では、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.50MPa/分~30MPa/分、好ましくは0.75MPa/分~20MPa/分、より好ましくは1MPa/分~10MPa/分の特定の加圧勾配での予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0122】
別の実施形態では、プロセス工程d)は、上述の特定の加熱勾配と上述の特定の加圧勾配とを用いる予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0123】
プロセス工程d)の終わりに、一実施形態では、方法は、工程e)、当業者に知られているように真空条件下でプロセスチャンバーの自然冷却(非強制的冷却)によって焼結セラミック体を冷却することを更に含んでもよい。プロセス工程e)による更なる実施形態では、焼結セラミック体を、不活性ガス、例えば、1バールのアルゴン又は窒素の対流下で冷却してもよい。1バール超又は1バール未満の他のガス圧力も使用することができる。更なる実施形態では、焼結セラミック体は、酸素環境中、強制対流条件下で冷却される。冷却工程を開始するために、焼結工程d)の終わりに、焼結装置に加えられた電力を除き、焼結セラミック体に加えられた圧力を除き、その後に、工程e)に従って冷却を行なう。
【0124】
本明細書に開示する方法の工程f)は、任意選択で、アニーリング温度に達するまで熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより焼結セラミック体をアニールすることを含み、工程g)は、アニールした焼結セラミック体の温度を低下させることを含む。任意選択の工程f)において、工程d)又はh)のそれぞれで得られた焼結セラミック体又は構成要素をアニール手順に供することができる。他の例では、焼結セラミック体又は構成要素にアニールを行なわなくてもよい。他の状況下では、アニールは焼結装置の外部の炉内で、又は装置から取り出すことなく、焼結装置自体の中で行なわれてもよい。
【0125】
本開示によるアニールの目的ために、プロセス工程e)による冷却後に焼結セラミック体を焼結装置から取り出して、アニールのプロセス工程を、炉などの別個の装置内で行なってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、本開示によるアニールの目的のために、工程d)における焼結セラミック体を、焼結工程d)と任意でのアニーリング工程f)との間に焼結装置から取り出す必要なしに、焼結装置内で続けてアニールしてもよい。
【0127】
このアニールによって、焼結体の化学的及び物理的特性を改良することができる。アニールの工程は、ガラス、セラミック、及び金属のアニールに使用される従来の方法によって行なうことができ、改良の程度は、アニーリング温度及びアニールを継続させる持続時間の選択によって選択することができる。
【0128】
通常、焼結セラミック体をアニールする任意での工程f)は、約900~約1800℃、好ましくは約1250~約1700℃、より好ましくは約1300~約1650℃の温度で行なわれる。
【0129】
任意でのアニーリング工程f)は、結晶構造内の酸素空孔を修正して化学量論比に戻すことを意図している。ジルコニア強化アルミナをアニールする工程は、通常、5分~24時間、好ましくは20分~20時間、より好ましくは60分~16時間を必要とする。
【0130】
通常、焼結セラミック体をアニールする任意でのプロセス工程f)は酸化雰囲気中で行なわれ、それによってアニーリングプロセスは、アルベドを上昇させ、応力を低下させて、機械的な取扱いを改善し、多孔率を低下させ得る。任意選択のアニーリング工程は空気中で行なわれてもよい。
【0131】
焼結セラミック体をアニールする任意選択のプロセス工程f)を行なった後、焼結された、またいくつかの場合ではアニールした焼結セラミック体の温度を、プロセス工程g)に従って周囲温度まで低下させ、焼結された、また任意選択でアニールされたセラミック体を、アニーリング工程が焼結装置の外部で行なわれる場合は炉から取り出すか、又はアニーリング工程f)が焼結装置内で行なわれる場合はツールセットから取り出す。
【0132】
本明細書に開示する方法の工程h)は、任意選択で、焼結セラミック体を機械加工してセラミック焼結構成要素を作り出すことであり、ジルコニア強化アルミナを含む、本明細書に開示する焼結セラミック体から耐食性構成要素を機械加工するための既知の方法に従って行なわれてもよい。半導体エッチングチャンバーに必要とされる耐食性セラミック焼結構成要素は、他の構成要素の中でも、RF又は誘電体窓、ノズル又はインジェクタ-、シャワーヘッド、(エッチング)チャンバーライナ、混合マニホールド、ウエハ支持体、電子ウエハチャック、及びフォーカスリング及び保護リングなどの様々なリングを含み得る。
【0133】
焼結セラミック体/構成要素は、プラズマエッチング及び堆積チャンバーで使用するための大きな本体サイズの製造を可能にするのに十分な機械的特性を有する。本明細書に開示する構成要素は、各々焼結体の最大寸法に関して、200mm~600mm、好ましくは300~600mm、好ましくは350~600mm、好ましくは400~600mm、より好ましくは450~600mm、より好ましくは500~600mm、より好ましくは550~600mmのサイズを有し得る。
【0134】
本明細書に開示する方法により、最大孔径にわたる制御改善、より高い密度、改善された機械的強度が得られ、それによって、特に、例えば最大フィーチャサイズにわたって200mmを超える寸法のセラミック体のための耐食性セラミック焼結構成要素の取扱い性、及び耐食性セラミック焼結構成要素の格子中の酸素空孔の低減がもたらされる。
【0135】
本明細書に開示する焼結セラミック体の実施形態は、任意の特定の焼結セラミック体で組み合わせることができる。したがって、本明細書に開示される特徴のうちの2つ以上を組み合わせて、例えば実施形態に概説されるように、焼結セラミック体をより詳細に記載することができる。
【0136】
本明細書にはまた、a)酸化アルミニウム粉末と酸化ジルコニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、ここで、酸化アルミニウム粉末及び酸化ジルコニウム粉末は各々、150ppm未満の総不純物含有量を有する、作製する工程と、b)加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を形成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加えて焼結を行なって、焼結セラミック体を形成する工程と、e)焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、を含む方法によって調製される焼結セラミック体が開示される。
【実施例
【0137】
以下の実施例に本開示の全体的な性質をより明確に示す。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0138】
以下の実施例の各々に使用されるSPSツールは、少なくとも1つのセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する内壁、及び外壁、を有する側壁を備えたダイと、ダイと動作可能に連結された上部パンチと下部パンチと、を含み、上部パンチと下部パンチの各々はダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチと下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間のギャップを画定し、ここで、ギャップは10μm~100μmの幅を有する。
【0139】
出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaモデルLA-960レーザー散乱型粒径分布分析器を使用して測定した。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の比表面積は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoribaのBET表面積アナライザーモデルSA-9601を使用して測定した。比表面積(SSA)測定は、ASTM C1274に従って行なった。
【0140】
実施例1:湿式ボールミル粉砕
6~8m/gの比表面積、0.5~0.2umのd10粒径、0.2~0.5umのd50粒径、及び1.2~3umのd90粒径を有するジルコニア粉末と、6~8m/gの比表面積、0.05~0.15umのd10粒径、0.2~0.5umのd50粒径、及び0.4~1umのd90粒径を有するアルミナ粉末とを秤量して合わせ、焼結時にジルコニア強化アルミニウム相を形成するモル比で粉末混合物を作り出し、ここで、ジルコニアは8~20体積%で存在する。ジルコニア粉末は、固溶体中に約2重量%のハフニウムを含有し、3モル%の酸化イットリウムで安定化されている。HfO及びイットリアは、本明細書に開示するジルコニア中の不純物とはみなされない。本明細書に開示するICPMSを使用してより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。言い換えれば、本明細書の表によれば、Sc以上などのより重い元素は、例えばLiからCaまでなどのより軽い元素よりも高い精度で検出される。Si、Na、Ca及びMgなどのこれらのより軽い元素は、報告限界未満の量で存在するか、又は検出されない可能性があるが、これらの元素の量は、約14ppm以上のレベルの精度で報告され得る。Si、Ca、Na及びMgは、当業者に知られているICPMSを使用してジルコニア及びアルミナ粉末中に検出されなかったので、ジルコニア及びアルミナ粉末は、シリカ、カルシア(CaO)、NaO及びマグネシアの形態で約14ppm以下のSi、Ca、Na及び/又はMgを含み得る。HfO、イットリア及び本明細書で定義されるより軽い元素を除いて、ジルコニア粉末は、約20ppmの総不純物を有していた。粉末混合物を、粉末重量に対して75~80%の負荷で高純度(>99.99%)アルミナ媒体及び溶媒としてのエタノールを使用する湿式ボールミル粉砕のためにプラスチック容器に移す。ボールミル粉砕を20時間行ない、その後、ロータリーエバポレーターを用いて粉末混合物からエタノールを抽出した。乾燥粉末混合物を約100umの顆粒に篩い分けし、600℃で8時間焼成した。焼成後、粉末混合物をタンブリングによってドライブレンドし、最後に篩にかけて100~400umの粒子を造粒する。次いで、この状態の粉末から物理的及び化学的特性を測定する。次いで、本明細書に開示する方法に従って、焼成粉末混合物を、1600℃の温度、15MPaの圧力で60分間、真空下で焼結する。
【0141】
焼成粉末の純度を以下の表に示す。表は、PPM中での焼成後の3つの粉末ロットについてのICPMSデータを含み、NDは検出されない。表に記載されていない元素は、本方法及び装置の検出限界未満であり、したがって含まれていない。
【0142】
【表4】
【0143】
次いで、本明細書に開示する方法に従って、上記の焼成粉末混合物を、1450℃の温度、30MPaの圧力で30分間、真空下で焼結した。焼結セラミック体の実施形態の密度を以下の表に報告する。理論密度は、当業者に公知の体積混合則に従って計算した。実施例1による焼結セラミック体について測定した特性を以下にまとめる
【0144】
【表5】
【0145】
図3は、16体積%のZrOを含む本開示により作製された焼結セラミック体の表面のSEM顕微鏡写真(5000倍)である。図3は、非常に低いレベルの多孔度と、存在する範囲で非常に小さい孔径とを有する高密度(約99%密度)の本体を示す。
【0146】
図4は、16体積%のZrOを有する試料の表面から撮影した8つの画像についての細孔面積対孔径のプロットであり、濃い線は、分析した8つの画像に基づく平均を表す。図4において、全表面積は、0.2μmの細孔直径において1.03μmの最大細孔面積を含んでいた。測定は、5000倍の倍率で撮影された8つの画像にわたって行ない、各々53.7μm×53.7μmの面積であり、全測定面積は約2884μmであった。0.5umの最大孔径を、撮影された画像にわたって測定し、したがって、図4のプロットは、0.5umのx軸限界を有する。
【0147】
図5は、15体積%のZrOを含む本開示により作製された焼結セラミック体のXRDパターンを示すグラフである。XRDパターンは、アルミナ及びジルコニアの2つの結晶相を示し、イットリアは、ジルコニアの安定剤として使用されるため、非常に少量(0.0545)である。X線回折は、約+/-5%までの結晶相同定が可能なPANanlytical AerisモデルXRDを用いて行なった。本明細書に開示する焼結セラミック体は、開示される体積による量のジルコニア及びアルミナの結晶相の粒子複合体を含み得る。粒子複合体は、アルミナのマトリックス中に分散されたジルコニアの粒子又は領域を含むことができ、粒子複合体は2つの別個の結晶相を含み、好ましくは焼結セラミック体は固溶体を形成しない。固溶体の形成は、熱伝導率を低下させる可能性があり、したがって、焼結セラミック体は、好ましくはジルコニア及びアルミナの別個の結晶相を含む。熱伝導率の理由から、焼結セラミック体中のジルコニアの最小量に実際的な下限はなくてもよいが、アルミナの熱伝導率のオーダーの高い熱伝導率を提供するためには、約10体積%~25体積%のジルコニアの第1の結晶相を含み、残りが約75体積%~90体積%のアルミナの第2の結晶相を含む焼結セラミック体が好ましい場合がある。約25体積%~30体積%超のジルコニアを有する焼結セラミック体は、例えば、高い熱伝導率が要求される半導体加工チャンバー内の構成要素として使用するのに十分な熱伝導率を提供しない場合がある。したがって、焼結セラミック体は、16体積%の量のジルコニアを含む。更に、焼結助剤としてのMgO及び/又はシリカの使用は、粒子間に存在する低熱伝導率ガラス相をもたらし、したがって熱伝導率並びに耐腐食性及び耐浸食性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0148】
熱伝導率測定は、周囲温度及び200℃の温度でASTM E1461-13に従って行なわれ、約16体積%のジルコニア及び残りがアルミナを含む本明細書に開示される焼結セラミック体について、それぞれ27及び14W/mKの値が測定された。本明細書に開示する範囲内の組成を有する焼結セラミック体は、高い熱伝導率が必要とされるチャンバー構成要素に使用するのに十分な熱伝導率を提供する。
【0149】
以下の表は、アルミナマトリックス中に約16%のZrOを含む焼結セラミック体についての材料特性を記載する。本明細書に開示する焼結セラミック体から形成される焼結物体は、大きな寸法を有する物体の製造にこれらの物体を適用するために必要な高強度及び増加した剛性/ヤング率の特性を有し得る。本明細書に開示する焼結セラミック体は、アルミナの機械的強度及び剛性/ヤング率の範囲内の機械的強度及び剛性/ヤング率を提供することができる一方で、用途特有の要件に従って、25~200から25~1400℃までの温度範囲にわたって熱膨張係数(CTE)を調整する能力を提供することができる。本明細書に開示するセラミック焼結体の使用は、大きな寸法の物品の強度及び剛性を有意に高めることができる。
【0150】
【表6】
【0151】
本明細書に開示するセラミック焼結体の、理論値に近い、及び理論値の100%までの高い密度、並びに関連する低い多孔率は、先の表に示されるように、非常に低い吸水率を提供する。本明細書に開示するセラミック焼結体の低吸水特性は、非常に薄く均一な耐食性膜の形成を可能にし得る。したがって、本明細書に開示する実施形態では、焼結セラミック体は、本明細書に開示する理論密度のパーセントに対して、0~0.8%、好ましくは0~0.5%、好ましくは0~0.3%、好ましくは0.1~0.3%、好ましくは0~0.1%の量の水を含む。
【0152】
多くの実施形態を本明細書に開示されるとおり記載した。しかしながら、本明細書に開示された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行なうことができることは理解される。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6