(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6827 20180101AFI20250225BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20250225BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250225BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6883 Z
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2023527434
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2021015884
(87)【国際公開番号】W WO2022098116
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145749
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512250119
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ヒ・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ライ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウォン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥク・リュル・ナ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒュク・ジュン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533949(JP,A)
【文献】特表2012-531195(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203878(WO,A1)
【文献】Alzheimer's Research & Therapy,2021年,vol.13,Article No.117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)個体から性別、年齢および教育水準からなる個体特性を収集するステップと、
b)前記個体の生物学的試料においてAPOE ε4遺伝子型、およびrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型を測定するステップと、
c)前記収集された個体特性、および測定されたAPOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を組み合わせて脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するステップと
を含む脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するための情報の提供方法。
【請求項2】
前記b)ステップの生物学的試料は、全血、血漿、唾液、口腔粘膜および髪の毛からなる群より選択された1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記c)ステップは、個体特性、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型をそれぞれ独立変数として設定し、これに対する特定係数を従属変数として設定して、統計分析により脳アミロイドベータ蓄積評価モデルを作製するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記統計分析は、線形または非線形回帰分析方法、線形または非線形classification分析方法、ANOVA、ニューラルネットワーク分析方法、深層ニューラルネットワーク分析方法、遺伝的分析方法、サポートベクターマシン分析方法、階層分析またはクラスタリング分析方法、決定ツリーを用いた階層アルゴリズムまたはKernel principal components分析方法、Markov Blanket分析方法、recursive feature eliminationまたはエントロピー-基本recursive feature elimination分析方法、前方floating searchまたは後方floating search分析方法、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される分析方法を用いて行われるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脳アミロイドベータ蓄積評価モデルは、下記数式1で表されるものである、請求項3に記載の方法。
【数1】
(前記数式1中、
αは、SNPがrs6978259の時に-0.612であり、rs6958464の時に-0.652、rs11983537の時に-0.658、rs3828947の時に-0.571であり、rs2903923の時に-0.612であり、rs73375428の時に-0.633である。)
【請求項6】
APOE ε4遺伝子型またはSNP遺伝子型を含む塩基配列に特異的に結合するプライマーセット、プローブおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群より選択される製剤
であって、前記SNP遺伝子型は、rs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択される、製剤を含む
、脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物を含む脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、韓国人を対象にアルツハイマー病をはじめとする脳アミロイドベータ蓄積による疾患の発生を予測するために脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する方法に関し、より具体的には、脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するための情報の提供方法、脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease、AD)は、認知症の約70%を占める代表的な退行性脳疾患であり、高齢者で発病する認知症の最も多い原因に相当する。遺伝率(heritability)が58~79%で遺伝的素因(genetic predisposition)が強いため、遺伝的要因はAD発病において重要な役割をする。アポリポタンパク質E(Apolipoprotein E、APOE)ε4は、ADについてよく知られた危険変異であり、最近は、全長遺伝体関連分析研究(genome-wide association studies、GWAS)によりADに対する多くの遺伝的危険変異が発見された。しかし、AD遺伝性の多くの部分は依然として説明されていない。
【0003】
一方、AD患者の脳の初期変化は、脳でアミロイドベータ(amyloid beta、Aβ)が蓄積されるもので、以後、タウ(tau)蓄積、神経退化(neurodegeneration)、認知機能障害が伴う。すなわち、脳アミロイドベータは、ADの臨床的症状が発現する10~15年前から蓄積され始める。したがって、脳アミロイドベータ蓄積を有する個体を検出または発見することは、ADの早期診断と早期治療において最も重要である。従来は、陽電子放出断層撮影(positron emission tomography、PET)を用いたり、脳脊髄液検査により脳アミロイドベータ蓄積を確認したが、PETは高い撮影費用および接近の制限性によって大型病院を中心に行われ、放射線露出といった危険要因があり、脳脊髄液分析は侵襲的な腰推穿刺施術が必要であり、機関による信頼度の差があるというデメリットがある。したがって、低費用、非侵襲的な方法で脳アミロイドベータ蓄積を予測できるバイオマーカーが必要なのが現状である。
【0004】
遺伝体は人種間で差が大きいため、アルツハイマー病および脳アミロイドベータ蓄積に関連づけられた遺伝因子は人種ごとに差がある。従来の大部分のアルツハイマー病遺伝子研究はヨーロッパ人を対象に行われ、非ヨーロッパ人を対象にした遺伝的変異研究は不足しているのが現状である。また、アルツハイマー病早期診断マーカーである脳アミロイドベータ関連遺伝子研究は海外でも非常に珍しく(Yan Q,et al.Mol Psychiatry.2018:1-13;Apostoloval LG et al.JAMA Neurol.2018:328-341;Raghavan NS,et al.JAMA Neurol.2020:1288-1298)、韓国国内では皆無であるのが現状である。
【0005】
したがって、低費用、最小侵襲的な方法(基本臨床情報および遺伝情報)で韓国人のアルツハイマー病早期診断マーカーである脳アミロイドベータ蓄積を予測するためには、韓国人データに基づく予測モデルが必要である。また、同一モデルが独立したコホートでも作動するかの検証手続きも経なければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国登録特許第10-2130929号
【文献】韓国登録特許第10-1989695号
【文献】韓国公開特許第10-2020-0073156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、個体特性および遺伝情報の組み合わせに基づく脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するための情報の提供方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、遺伝情報を確認できる脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記組成物を含む脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、韓国人に対する大量試料を用いて脳アミロイドベータ蓄積に関連するSNP(single nucleotide polymorphism)を確認するためにGWAS分析を行った結果、アミロイドベータ蓄積に対する6個の新規SNPを確認し、韓国人の独立したコホート(cohort)でその関連性について再現検証を行い、このような新規SNP遺伝子型と個体特性、APOE遺伝子型を統合して新規アミロイドベータ予測モデルを開発することにより、韓国人を対象に脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測できる方法および関連組成物を提供するという本発明を完成した。
【0011】
本発明の一態様は、人口統計特性、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型の組み合わせにより脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するための情報の提供方法を提供する。より具体的には、前記脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するための情報の提供方法は、a)個体から性別、年齢および教育水準からなる個体特性を収集するステップと、b)前記個体の生物学的試料においてAPOE ε4遺伝子型、およびrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型を測定するステップと、c)前記収集された個体特性、および測定されたAPOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を組み合わせて脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するステップとを含む。
【0012】
本発明において、「脳アミロイドベータ蓄積の可能性」は、個体から脳アミロイドベータ蓄積が現れる危険度を意味し、その危険度が高いほどアミロイドベータ蓄積による疾患が発生する可能性が高いと評価することができる。ここで、アミロイドベータ蓄積による疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、大脳アミロイドアンギオパチーなどであってもよいが、これに限定されるものではない。このような脳アミロイドベータ蓄積の可能性の予測は、個体からアルツハイマー病またはアルツハイマー性認知症を診断する技術と区別される。本発明では、脳にアミロイドベータが蓄積される可能性があったり、またはすでに蓄積された場合を陽性(positive)と判定することができる。
【0013】
前記a)~c)ステップについて詳しくみると、次の通りである。
【0014】
前記a)ステップは、脳アミロイドベータ蓄積の有無に対する検査が必要な個体から個体特性を収集する過程である。
【0015】
前記個体は、大脳にアミロイドベータが蓄積される可能性を予測する対象で、脳アミロイドベータ蓄積に起因した疾病(例えば、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、大脳アミロイドアンギオパチー)に関して家族歴があったり、記憶力減退、言語能力低下、判断力低下などの臨床症状が一部発現して脳疾患が疑われる疑心患者、または特別な臨床症状がない人などになってもよい。
【0016】
前記個体特性は、人口統計特性(demographics)のような個体の基本的な特性で、性別、年齢および教育水準からなるものであってもよい。
【0017】
前記性別は、生物学的性別を意味し、男性に比べて、女性においてアルツハイマー性認知症の発病の可能性が高いと知られている。前記年齢は、実際に生まれた時を起算点として検査時点で計算された実際の年齢を意味し、年を取るほどアミロイドベータ蓄積の可能性が増加して、特にアルツハイマー病が主に65歳の高齢者で発病することが知られている。前記教育水準は、正規教育過程を含む全体教育水準を意味し、中退した場合、中退した年を除いて教育水準を算定しており、最近は、低学歴の場合、認知症の危険が増加するという報告があった。したがって、個体の性別、年齢および教育水準は、脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する上で有意な変数になり得る。
【0018】
前記b)ステップは、生物学的試料においてバイオマーカーが存在する水準を測定する過程である。
【0019】
前記生物学的試料は、個体から採取して脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するのに利用可能な試料を意味し、一例として、血液、脳脊髄液、涙、唾、尿などであってもよい。本発明では、脳脊髄液に比べて相対的に採取過程で苦痛が少なく費用が安価な血液、唾液、口腔粘膜、または髪の毛を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の一具体例によれば、前記生物学的試料は、全血(whole blood)、血漿(plasma)、唾液、口腔粘膜および髪の毛からなる群より選択された1種であってもよい。
【0021】
前記バイオマーカー(biomarker)は、一般的に、生物学的試料から検出可能な物質として生体変化を知ることができるポリペプチド、タンパク質、核酸、遺伝子、脂質、糖脂質、糖タンパク質、糖などのような有機生体分子をすべて含む。本発明では、バイオマーカーとしてAPOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を用いることを特徴とする。
【0022】
APOE遺伝子は、ε2(cys112、cys158)、ε3(cys112、arg158)およびε4(arg112、arg158)と呼ばれる3種類の対立形質に分類されるが、すべての人は各親から1つの対立遺伝子を受け継ぐことになって、1個体の遺伝子型はε2/ε2、ε2/ε3、ε2/ε4、ε3/ε3、ε3/ε4またはε4/ε4型で存在する。このうち、ε4対立形質は人口の約20%程度で発見され、アルツハイマー認知症の発病の危険度を増加させることが知られているので、APOE ε4はADの発病と関連性が高い危険因子である。したがって、APOE ε4遺伝子型を保有することは、脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する上で有意な変数になり、保有個数に応じて脳アミロイドベータ蓄積に対する危険性が増加しうる。
【0023】
本発明の一実施例によれば、韓国人を対象に個体特性と共にAPOE ε4遺伝子型を組み合わせて脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する場合には、AUC(Area Under Curve)値が向上できる。
【0024】
ここで、AUCは、ROC分析により計算されたROCカーブの下の全体面積値を意味し、ランダムモデルの場合に0.5を示し、モデルの予測性能が向上するほど1に収斂すると知られている。
【0025】
前記SNPは、1つの遺伝子座位(locus)に2つ以上の対立遺伝子(allele)が存在する場合を意味し、多形成部位(polymorphic site)中において単一塩基だけが異なるものを意味する。本発明では、韓国人集団を対象にしたGWAS分析により脳アミロイドベータ蓄積に関連することが確認されたrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型であってもよい。このようなrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537は、ヒトの7番染色体内のCCDC146遺伝子(coiled-coil domain containing 146 gene)のイントロン(intron)に存在して互いに高い連鎖不平衡(linkage disequilibrium)(LD:r2>0.75)を示し、それぞれ7番染色体の76907550番座位、76909167番座位、76907750番座位、76908199番座位、76909035番座位、76908690番座位に位置する。このような6個のSNPは脳アミロイドベータ蓄積との関連性についてかつて報告されたことがなく、韓国人を対象にした脳アミロイドベータ蓄積との関係も報告されたことがなかった。
【0026】
また、本発明の一実施例によれば、個体特性およびAPOE ε4遺伝子型と共にSNP遺伝子型を組み合わせて脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する場合には、AUCが向上できる。
【0027】
前記c)ステップは、個体特性、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を組み合わせて脳アミロイドベータ蓄積評価モデルを作製する過程である。
【0028】
本発明の一具体例によれば、前記c)ステップは、個体特性、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型をそれぞれ独立変数として設定し、これに対する特定係数(coefficient)を従属変数として設定して、統計分析により脳アミロイドベータ蓄積評価モデルを作製するものであってもよい。
【0029】
本発明の一具体例によれば、前記統計分析は、線形または非線形回帰分析方法、線形または非線形classification分析方法、ANOVA、ニューラルネットワーク分析方法、深層ニューラルネットワーク分析方法、遺伝的分析方法、サポートベクターマシン分析方法、階層分析またはクラスタリング分析方法、決定ツリーを用いた階層アルゴリズムまたはKernel principal components分析方法、Markov Blanket分析方法、recursive feature eliminationまたはエントロピー-基本recursive feature elimination分析方法、前方floating searchまたは後方floating search分析方法、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される分析方法を用いて行われるものであってもよい。
【0030】
本発明の一実施例によれば、独立変数として設定された個体特性、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型と、従属変数として設定された各特定係数の関係を多変量ロジスティック回帰分析で分析して脳アミロイドベータ蓄積評価モデルを作製した。
【0031】
本発明の一具体例によれば、前記脳アミロイドベータ蓄積評価モデルは、下記数式1で表されるものであってもよい。
【0032】
【0033】
(前記数式1中、
αは、SNPがrs6978259の時に-0.612であり、rs6958464の時に-0.652であり、rs11983537の時に-0.658であり、rs3828947の時に-0.571であり、rs2903923の時に-0.612であり、rs73375428の時に-0.633である。)
【0034】
本発明の一実施例によれば、個体特性、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を組み合わせて脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測する場合には、AUCが向上でき、この時、脳アミロイドベータ蓄積評価モデルにおけるAUCは、SNPの種類に関係なく、0.74以上(rs6978259の時、0.748;rs6958464の時、0.749;rs11983537の時、0.749;rs3828947の時、0.751;rs2903923の時、0.748;rs73375428の時、0.749)であり、個体特性のみを単独にした場合(0.506)または個体特性およびAPOE ε4遺伝子型を組み合わせた場合(0.723)に比べて正確度が高いことが分かった。
【0035】
このような脳アミロイドベータ蓄積評価モデルにおいて導出された値が高いほど、検査対象になった個体の脳アミロイドベータ蓄積の可能性が高く予測されるといえる。
【0036】
また、本発明の他の態様は、APOE ε4遺伝子型;およびrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型を検出できる製剤を含む脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用組成物を提供する。
【0037】
本発明において、「脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用組成物」は、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を含む塩基配列を検出して脳アミロイドベータ蓄積を予測する一連の行為のための組成物を意味し、これによって脳アミロイドベータ蓄積による疾病発生の危険性または発病の有無を早期に診断することができる。
【0038】
ここで、APOE ε4遺伝子型および6個のSNP遺伝子型は、前述したものと説明が同一である。
【0039】
前記製剤は、脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するためのバイオマーカー、すなわち、APOE ε4遺伝子型およびSNP遺伝子型を検出できるものであってもよい。
【0040】
本発明の一具体例によれば、前記製剤は、APOE ε4遺伝子型またはSNP遺伝子型を含む塩基配列に特異的に結合するプライマーセット、プローブおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群より選択された1種以上であってもよい。本発明では、遺伝子の核酸配列情報に基づいて遺伝子の特定領域を特異的に増幅するようにデザインされたプライマーセットまたはプローブであることが好ましい。
【0041】
前記「特異的に結合する」とは、結合によって標的物質の存在の有無を検出できるほど他の物質に比べて標的物質に対する結合力に優れていることを意味する。
【0042】
前記プライマーセットは、APOE ε4遺伝子型またはSNP遺伝子型を含む全体または一部の塩基配列を認知する短鎖RNAまたはDNA配列であるプライマーの組み合わせを意味し、一例としては、APOE ε4遺伝子型またはSNP遺伝子型を含む塩基配列に結合できる正方向および逆方向プライマーからなるすべての組み合わせのプライマーセットであってもよい。プライマーの核酸配列は、試料中に存在する非標的配列と不一致する配列であるため、相補的なプライマー結合部位を含有する標的遺伝子配列のみを増幅させ、非特異的増幅を誘発しないプライマーの時、高い特異性を付与することができる。
【0043】
前記プローブは、試料中の検出しようとする標的物質と特異的に結合できる物質を意味し、前記結合により特異的に試料中の標的物質の存在を確認できる物質を意味する。前記プローブの構成物質は、前記標的物質と特異的に結合できる物質で、一例としては、PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA、DNAなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
また、本発明の他の態様は、前記組成物を含む脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用キットを提供する。
【0045】
本発明において、「脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測用キット」は、検査対象者から採取した生物学的試料により脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測できる物質を意味し、これによって脳アミロイドベータ蓄積による疾病発生の危険性または発病の有無を早期に迅速かつ簡便に診断することができる。前記キットの一例としては、PCR(polymerase chain reaction)キット、DNAチップキットなどであってもよいが、これに限定されるものではない。また、前記キットは、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分組成物、溶液または装置を追加的に含むことができる。
【0046】
本発明の一具体例によれば、前記キットは、PCRを行うために必要な必須要素を含むものであってもよい。この時、APOE ε4遺伝子型、またはrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型を含む塩基配列に特異的に結合するプライマーセットのほか、テストチューブまたは他の適切なコンテナ、反応緩衝液(pHおよびマグネシウム濃度は条件によって多様であり得る)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq-ポリメラーゼおよび逆転写酵素のような酵素、DNAse、RNAse抑制剤、DEPC水(DEPC-water)、滅菌水などを含むことができる。
【0047】
本発明の一具体例によれば、前記キットは、DNAチップを行うために必要な必須要素を含むものであってもよい。この時、APOE ε4遺伝子型、またはrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型を含む塩基配列全体またはその断片に相当するcDNAまたはオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)が付着している基板、および蛍光標識プローブを作製するための試薬、製剤、酵素などを含むことができる。また、基板は、対照群遺伝子またはその断片に相当するcDNAまたはオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明による脳アミロイドベータ蓄積の可能性を予測するための情報の提供方法は、早期に脳アミロイドベータ蓄積の可能性が高い個体を効果的に選別することにより、脳アミロイドベータ蓄積による疾病の発生を抑制したり、発病した個体に対して適切な治療法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の一実施例によりP値に対するQ-Qプロット(quantile-quantile plot)を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施例により全長遺伝体において19番染色体と7番染色体に位置したアミロイドベータ蓄積と有意性があるSNPを示すグラフである。
【
図3】本発明の一実施例によりrs6978259の染色体上の位置を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施例によりボクセルベースの形態分析のための被験者のアミロイドPET(positron emission tomography)映像を示す図であって、(A)は、rs6978259対立遺伝子を有する被験者においてAβ沈着が減少することを確認した映像であり、(B)は、APOE ε4遺伝子を有する被験者においてAβ沈着が増加することを確認した映像である。
【
図5】本発明の一実施例によりrs6978259に対する評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのAUC値を示した結果である。
【
図6】本発明の一実施例によりrs6958464に対する評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのAUC値を示した結果である。
【
図7】本発明の一実施例によりrs11983537に対する評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのAUC値を示した結果である。
【
図8】本発明の一実施例によりrs3828947に対する評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのAUC値を示した結果である。
【
図9】本発明の一実施例によりrs2903923に対する評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのAUC値を示した結果である。
【
図10】本発明の一実施例によりrs73375428に対する評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのAUC値を示した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明をより詳細に説明する。しかし、このような説明は本発明の理解のために例として提示されたものに過ぎず、本発明の範囲がこのような例示的な説明によって制限されるものではない。
【0051】
実施例1.脳アミロイドベータ蓄積の可能性予測のための評価モデル開発
【0052】
1-1.被験者募集
評価モデル開発用データセット(dataset)のために、2013年1月から2019年7月まで韓国国内の14の病院で計1,214人の韓国人を募集した。そのうち、923人はサムスンソウル病院で、201人はADの早期診断および予測のための韓国脳老化研究(KBASE-V)の多機関研究で、90人は認知症コホートに基づく臨床研究プラットフォームの多機関研究で募集された。
【0053】
妥当性検証用データセットのために、2016年から2018年まで募集された慢性脳血管疾患コンソーシアムのバイオバンク(biobank)で韓国人306人のデータを募集した。これは進行中のアルツハイマー病研究と共に慢性脳血管疾患のためのバイオバンク革新(BICWALZS)および神経障害融合研究センターの一環であった。
【0054】
募集された検査対象者は、i)詳細な神経精神学的検査に基づいて軽度認知障害(amnestic mild cognitive impairment、aMCI)、AD認知症(AD dementia、ADD)または認知機能正常群(cognitively unimpaired、CU)として診断を受け、ii)アミロイドPET映像撮影をした人から選定し、PSEN1、PSEN2およびAPPのようなADに対する原因遺伝子突然変異がある場合は除外した。以後、説明したようなQC(quality control)を行って、評価モデル開発用データのために計1,190人(CU383人、aMCI330人、ADD477人)、妥当性検証用データのために計284人(CU46人、aMCI167人、ADD71人)を用いた。すべての被験者は書面にて事前同意書を提出し、研究は各センターの機関審議委員会の承認を受けた。
【0055】
その結果、2つのデータセット(評価モデル開発用および妥当性検証用データ)に対する基本的な人口統計特性を下記表1に示した。評価モデル開発用被験者は、妥当性検証用データに比べて若く、女性の割合が高かった。予想どおり、2つのデータセット共に、PETにより確認されたアミロイドベータ(Aβ)陽性(positivity)被験者は、Aβ陰性(negative)被験者に比べてaMCIとADの割合が高かった。また、妥当性検証用データで、Aβ陽性被験者は、Aβ陰性被験者に比べて年齢が多かった。
【0056】
【0057】
1-2.遺伝型分析(Genotyping)およびインピュテーション(imputation)
評価モデル開発用データのためにIllumina Asian Screening Array Beadchip(Illumina、米国)を、妥当性検証用データのためにAffymetrix customized Korean chips(Affymetrix、米国)を用いて被験者の遺伝型分析を行ってSNPマーカー(marker)を分析した。PLINKソフトウェア(version1.9)を用いてQCを行った。被験者は次の基準により除外された:(i)CR(call rate)<95%の場合、(ii)報告された性別(sex)と遺伝的に推論された性別とが一致しない場合、(iii)各母集団媒介変数において統計的異常値に相当する場合、(iv)異型接合率(平均で標準偏差5)超過の場合、および(v)評価モデル開発用データセットと妥当性検証用データセット内で(IBD(identity by descent)≧0.125と確認された)関連対の場合。
【0058】
SNPは次の基準により除外された:(i)CR(call rate)<98%の場合、(ii)MAF(minor allele frequency)<1%の場合、および(iii)Hardy-Weinberg equilibrium testでP値<1.0×10-6の場合。
【0059】
QCの後、全長遺伝体インピュテーションは米国ミシガン大学のImputation ServerのHRC-r1.1で使用できるすべての基準ハプロタイプ(reference haplotype)と共にMinimac4ソフトウェアを用いて行われた。ポストインピュテーション(post-imputation)QCのために、下記の基準を適用してSNPを除外した:(i)インピュテーション品質が不良の場合(R2≦0.8)、および(ii)MAF≦1%の場合。結果的に、計4,906,407個のSNPが分析された。
【0060】
1-3.Aβ PET収集およびボクセルベースの形態分析
Aβ PET映像はDiscovery STE PET/CTスキャナ(GE Medical Systems、米国)を用いて取得した。PET映像はFBB(18F-florbetaben)またはFMM(18F-flotemetamol)を静脈注射した後、90分から始めて20分間取得した。Aβ陽性または陰性はFBBおよびFMM PETに対する肉眼測定法を用いて決定された。評価モデル開発用コホートの被験者の一部(n=824)はボクセルベースの形態(voxel base morphometry、VBM)分析に使用できるAβ PETデータを有していた。
【0061】
VBM分析のために、MATLAB(MathWorks 2014b)で実行されるStatistical Parametric Mappingソフトウェアバージョン12(SPM、http://www.fil.ion/uc.ac.uk/spm)を用いて次の事前処理を行った:(1)T1強調構造MRI(T1-weighted structural MRI)に対するPETの共同登録(co-registration)、(2)構造MRI分割および変換マトリックス計算、(3)MNI(Montreal Neurological Institute)空間に対するPETの正規化、および(4)半分最大(half-maximum)で全幅8mmのガウスカーネル(Gaussian kernel)を有する空間平滑化(spatial smoothing)。
【0062】
各PET映像に対する標準化された吸収値比率(standardized uptake value ratio、SUVR)を計算するために、2つの基準領域(FBBの場合に小脳皮質、FMMの場合に橋脳(pons))を用いた。基準領域のマスク(mask)はGAAINウェブサイト(http://www.GAAIN.org)から入手した。
【0063】
1-4.統計分析
[1]GWAS分析
年齢、性別および人口小集団効果を補正した状態で、SNPとAβ陽性間の関連性を探知するために、ロジスティック回帰分析(logistic regression analysis)を行い、少数対立遺伝子(minor allele)の数に応じて0、1および2で暗号化された加法模型(additive model)を用い、人口小集団効果を補正するために、遺伝子データに主成分分析を行って、1番目、2番目、そして3番目の主成分を補正変数として用いた。報告されたP値はtwo-tailedであり、前の研究に基づいて5.0×10-8未満のP値は統計的有意水準、1.0×10-5未満のP値は統計的示唆水準と定義した。GWAS分析から導出されたカイ二乗統計量(chi-squared statistics)の中央値(median)を、自由度(freedom)が1であるカイ二乗分布(chi-square distribution)の中央値(0.456)で割って、遺伝体インフレーション(genomic inflation)を評価した。妥当性検証分析の場合、評価モデル開発用データセットの結果と同じ方向で効果が発生すると予想されるという点を勘案して、one-tailed P値を報告した。SNPがAPOE遺伝子型と独立したAβ陽性に関連づけられているかを確認するために、APOE遺伝子型に対して追加的に補正して条件付き分析(conditional analysis)を実施した。
【0064】
また、P値ベースのメタ分析(P-value based meta-analysis)を行い、研究別効果サイズの標準誤差(standard error)を反映する重み付けを適用してまとめ効果サイズ(summary effect size)を計算した。
【0065】
その結果、
図1を参照すれば、P値のQ-Qプロット(quantile-quantile plot)は遺伝体インフレーションを示さなかった(λ=1.008)。
図2を参照すれば、評価モデル開発用データにおいて、19番染色体に位置した61個の有意な全長遺伝体SNP(P値<5×10
-8)を確認した(下記表2参照)。しかし、すべての有意なSNPはAPOE遺伝子を取り囲む500kb領域内に位置しており、APOE ε4対立遺伝子を補正した時、全長遺伝体に対する有意性が失なわれた。APOE領域以外では1、7、8、12、22番染色体に位置した38個のSNPが示唆的な有意性(P値<1.0×10
-5)を示した(下記表3参照)。妥当性検証分析において、38個の示唆的な(suggestive)SNPのうち、7番染色体に位置した6個のSNP(rs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537)が評価モデル開発用データから得られた結果と同じ方向で有意な関連性を示した。6個のSNPのうち、2個のSNP(rs6958464およびrs11983537)は直接遺伝子型が分析され、残りのSNP(rs73375428、rs6978259、rs2903923およびrs3828947)はインピュテーションにより分析された。特に、6個のSNPのうち、2個(rs73375428およびrs2903923)は評価モデル開発用および妥当性検証用データセットのメタ分析で全長遺伝体に対する重要な関連性を示した(下記表4および5参照)。APOE ε4対立遺伝子の効果が補正された時、6個のSNPはすべて全長遺伝体に対して示唆的な水準でP値を示し、その関連性は妥当性検証用データで検証された。確認された6個のSNPは、下記表6に示しているように、互いに高い連鎖不平衡(linkage disequilibrium)(LD:r
2>0.75)を示し、これによって、6個のSNPのうち、rs6978259を代表にして後続の分析に使用した。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
[2]新たに確認されたSNPsの影響
関連SNPを確認した後、総被験者と各認知水準(CU、aMCI、ADD)においてAβ蓄積に対して6個のSNPの危険(risk)を計算した。
【0074】
次に、年齢、性別、遺伝的PC、APOE遺伝子型およびAβ PETトレーサー類型(tracer type)の効果に合わせて調整した後、SNPとどのような局所的(regional)Aβ蓄積が関連づけられているかを評価するためにVBM分析を実施した。
【0075】
新たに確認されたSNPの臨床的有用性(clinical utility)を試験するために、各個人でAβ陽性を予測する多変量ロジスティックモデル(multivariable logistic model)を開発した。ロジスティックモデルの性能を評価するために、ROC分析(receiver operating characteristic curve analysis)でAUC(area under curve)を測定した。
【0076】
内部検証(validation)として、評価モデル開発用データを用いて100回反復で10倍交差検証(cross-validation)を実施した。モデルの95%信頼区間(confidence interval、CI)を有する平均AUCを報告した。外部検証(external validation)として、妥当性検証用データ間のAβ予測性能を計算するために、評価モデル開発用データから推定された媒介変数を用いた。前記統計分析および結果視覚化のためにRソフトウェア(http://www.r-project.org)とMATLABを用いた。
【0077】
その結果として、rs6978259の少数対立遺伝子(C)の数に対する被験者の特性を下記表7に示した。
【0078】
【0079】
下記表8に示しているように、ロジスティックモデルにおいて、APOE ε4対立遺伝子はAβ陽性の危険が5倍増加し(OR(odds ratio)=5.330、95%CI=4.188-6.788)、rs6978259はAβ陽性の危険が2倍減少した(OR=0.521.95%CI=0.407-0.670)。下位グループ(subgroup)分析において、Aβ陽性とrs6978259との関連性はCUグループとaMCIグループで有意であったが、ADDグループでは有意でなく、APOE ε4の関連性はすべての認知状態にわたって有意であった。
【0080】
【0081】
図4を参照すれば、VBM分析において、APOE ε4は前頭葉、頭頂葉および側頭葉の広い皮質部位のAβ蓄積の増加と関連があることが明らかになった。rs6978259は年齢、性別、教育水準、APOE ε4およびAβ PETトレーサー類型と独立して楔前部(precuneus)、側頭部および前頭部のAβ蓄積の減少と関連があることが明らかになった。
【0082】
APOE ε4対立遺伝子の臨床有用性を試験するために様々な予測モデルを開発し、6個のSNP(rs6978259、rs6958464、rs11983537、rs3828947、rs2903923およびrs73375428)に対する各モデルを開発した(数式1参照)。
図5を参照すれば、100回反復10倍交差検証で個体特性(年齢、性別および教育水準)だけを含むモデル1はAUC=0.506(95%CI=0.500-0.512)となり、前記モデル1にAPOE ε4対立遺伝子を統合したモデル2はAUC=0.723(95%CI=0.717-0.729)で予測性能が増加し、前記モデル2にrs6978259を統合したモデル3(数式1)はAUC=0.748(95%CI=0.742-0.755)で予測性能がさらに増加した。評価モデル開発用データで学習された各モデルを妥当性検証用データに試験した結果、個体特性、APOE ε4遺伝子型およびrs6978259を統合したモデル3でモデル1および2に比べて高いAUC値を示した(モデル1のAUC=0.509、モデル2のAUC=0.693、モデル3のAUC=0.713)。
図6~
図10を参照すれば、rs6958464、rs11983537、rs3828947、rs2903923およびrs73375428に対しても類似の結果が現れた。
【0083】
[3]機能分析
最後に、生物情報学ツール(bioinformatic tool)と前に報告された結果を活用して確認された6個のSNPの機能を特徴化した。まず、1000ゲノムプロジェクトデータセット(1000 Genomes Project dataset)を用いて、本実施例で確認されたSNPのMAFが東アジア人口のMAFと類似であるかを確認した。ヒトの脳組織で確認されたSNPの遺伝子型別発現を評価するために、Genotype-Tissue Expression portal(https://gtexportal.org)によりcis-eQTL(cis-expression quantitative trait loci)分析を行った。
【0084】
その結果、
図3に示しているように、rs6978259はCCDC146遺伝子(coiled-coil domain containing 146 gene)のイントロンに位置していることが明らかになった。
【0085】
このような結果は、コホートの差によって脳アミロイドベータ蓄積と関連性が高いSNPの種類に差があり、韓国人を対象に性別、年齢および教育水準からなる個体特性と共に、血液バイオマーカーとしてAPOE ε4遺伝子型、およびrs73375428、rs6978259、rs2903923、rs3828947、rs6958464およびrs11983537からなる群より選択された1種以上のSNP遺伝子型を組み合わせて分析する場合、早期に脳アミロイドベータ蓄積の可能性が高い個体を効果的に選抜できることを示唆する。
【0086】
これまで本発明についてその好ましい実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明が本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で変形された形態で実現できることを理解するであろう。そのため、開示された実施例は限定的な観点ではなく説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は上述した説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等範囲内にあるすべての差異は本発明に含まれたものと解釈されなければならない。