(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】ダイレクトドライブシステム及びその制御方法、電子機器並びに記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H02P 25/064 20160101AFI20250225BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
H02P25/064
H02K41/03 A
(21)【出願番号】P 2023529111
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2023080438
(87)【国際公開番号】W WO2024108807
(87)【国際公開日】2024-05-30
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】202211487267.9
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522237667
【氏名又は名称】エーエーシー テクノロジーズ (ナンジン) カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Technologies (Nanjing) Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】銭林
(72)【発明者】
【氏名】郭順
(72)【発明者】
【氏名】朱学園
(72)【発明者】
【氏名】史衛領
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第115085628(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112803859(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K41/00-41/06
H02P7/02-7/025
25/032-25/034
25/06-25/066
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子に設けられ、前記固定子の長手方向に沿って隣接して配列された巻線を有する複数の一次ユニットと、複数の前記一次ユニット内の前記巻線にそれぞれ接続された複数のドライバと、前記複数のドライバに接続されたコントローラと、前記固定子に設けられ、前記複数の一次ユニットにそれぞれ対応して対応する前記ドライバに接続された複数の第1位置フィードバックデバイスと、前記固定子に設けられ、複数の前記一次ユニットの対向両側にそれぞれ位置するガイドレールと、前記ガイドレールに摺動接続された複数の可動子と、を備え、前記可動子ごとに磁石鋼および第2位置フィードバックデバイスが設けられ、前記第1位置フィードバックデバイスが前記第2位置フィードバックデバイスに対応し、前記巻線が前記磁石鋼に対応しており、
前記巻線は、通電時に進行波磁界を発生させることにより、自身と前記磁石鋼との間に推力を発生させることで、前記可動子を前記ガイドレールに沿って移動させるために用いられ、
前記第1位置フィードバックデバイスは、前記第2位置フィードバックデバイスを感知して前記可動子と前記一次ユニットとの間の相対位置情報を得るために用いられ、
前記コントローラは、前記相対位置情報に基づいて前記可動子の前記ガイドレール上の絶対位置情報を算出し、前記相対位置情報に基づいて前記一次ユニットの動作モードを切り替えるために用いられ、
前記動作モードは、位置モードと電流モードを含み、
前記位置モードにおいて、前記コントローラは、前記絶対位置情報と、前記可動子の前記ガイドレール上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて位置制御命令を出力するために用いられ、前記ドライバは、前記位置制御命令に応じて前記巻線の電流の大きさを調整して前記可動子を前記予め設定位置に移動させるために用いられ、
前記電流モードにおいて、前記コントローラは、電流制御命令を出力するために用いられ、前記ドライバは、前記電流制御命令に応じて、前記可動子の移動時の推力損失を補償するように前記巻線に電流を供給するために用いられ
、
前記相対位置情報に基づいて前記一次ユニットの動作モードを切り替えることは、
前記磁石鋼の外縁が前記一次ユニットの外縁内にあれば、前記一次ユニットの作動モードを前記位置モードに切り替えることと、
前記磁石鋼が直前の前記一次ユニットから完全に離れて現在の前記一次ユニットに入ると、直前の前記一次ユニットの動作モードを前記電流モードに切り替えるとともに、現在の前記一次ユニットの動作モードを前記位置モードに切り替えることと、
前記磁石鋼が2つの前記一次ユニット間の隣接箇所にあれば、2つの前記一次ユニットの動作モードを前記位置モードに切り替えるか、あるいは、一方の前記一次ユニットの動作モードを前記位置モードに切り替え、他方の前記一次ユニットの動作モードを前記電流モードに切り替えることと、
を含む、
ことを特徴とするダイレクトドライブシステム。
【請求項2】
前記一次ユニットは、前記固定子に設けられた第1透磁体をさらに備え、
前記巻線は、前記第1透磁体の前記固定子から離れた側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブシステム。
【請求項3】
各前記一次ユニットは、複数の前記巻線を有し、
前記第1透磁体は、前記固定子に設けられた本体を備え、
前記本体の前記固定子から離れた側には、前記固定子から離れた方向に延び、互いに間隔を空ける複数のスリーブ接続部が形成され、
前記複数の巻線は、それぞれ前記複数のスリーブ接続部に嵌設される、
ことを特徴とする請求項2に記載のダイレクトドライブシステム。
【請求項4】
前記可動子ごとに前記磁石鋼が複数設けられ、
前記可動子には、第2透磁体がさらに設けられ、
複数の前記磁石鋼は、いずれも前記第2透磁体の前記可動子から離れた側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブシステム。
【請求項5】
前記第1位置フィードバックデバイスは、リードヘッドである、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブシステム。
【請求項6】
前記第2位置フィードバックデバイスは、インクリメンタルスケールである、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブシステム。
【請求項7】
前記インクリメンタルスケールは、ラスタスケールと磁気スケールのいずれかである、
ことを特徴とする請求項6に記載のダイレクトドライブシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のダイレクトドライブシステムに適用されるダイレクトドライブシステムの制御方法であって、
第1位置フィードバックデバイスが第2位置フィードバックデバイスを感知するように制御して、可動子と一次ユニットとの間の相対位置情報を得ることと、
前記相対位置情報に基づいて、前記可動子のガイドレール上の絶対位置情報を算出することと、
前記相対位置情報に基づいて前記一次ユニットの動作モードを切り替えることと、を含み、
ここで、前記動作モードは、位置モードと電流モードを含み、
前記位置モードにおいて、前記絶対位置情報と、前記可動子の前記ガイドレール上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて位置制御命令を出力することによって、前記ドライバが前記位置制御命令に応じて前記一次ユニット内の巻線の電流の大きさを調整し、前記巻線と磁石鋼との間の推力の大きさを変更して前記可動子を前記予め設定位置に移動させ、
前記電流モードにおいて、電流制御命令を出力することによって、前記ドライバが前記電流制御命令に応じて、前記可動子の移動時の推力損失を補償するように前記巻線に電流を供給する、
ことを特徴とするダイレクトドライブシステムの制御方法。
【請求項9】
メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記メモリは、少なくとも1つのプログラムを記憶するために用いられ、かつ、前記少なくとも1つのプログラムが前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項8
に記載の方法を実行させる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
実行可能命令が記憶されており、
前記実行可能命令が実行されるときに、請求項8
に記載の方法が実行される、
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトドライブ伝送技術分野に関し、特に、ダイレクトドライブシステム及びその制御方法、電子機器並びに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術において、ダイレクトドライブ伝送システムは、通常、複数の可動子と、磁界を発生させることによって複数の可動子を押して所定方向に直線運動させるための複数の固定子と、複数の固定子にそれぞれ駆動連結された複数のドライバとを含み、その一般的な制御方式は、主従切替制御を用いて、可動子から固定子へのスムーズな遷移を実現するものである。この制御方式は、主軸モードと従動軸モードを備え、主軸モードでは、ドライバにより各固定子内の巻線の電流の大きさを調整して各可動子の推力を変化させ、さらに各固定子の位置を変更させ、従動軸モードでは、ドライバから各固定子内の巻線に送られる電流の大きさは一定である。しかしながら、このような制御方式は、例えばドライバの機能をカスタマイズ、改造する必要があり、ドライバの使用に対する汎用性が低下したり、可動子から固定子へ移行する過程で、単一マスタ制御の期間が存在し、可動子に対する推力の損失を招いたりするなど、未だ多くの欠点がある。
【0003】
そのため、上記したダイレクトドライブ伝送システムの制御方式を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、関連技術におけるダイレクトドライブ伝送システム内のドライバの使用汎用性が悪く、可動子への推力が損失しやすいという問題を解決するためのダイレクトドライブシステム及びその制御方法、電子機器並びに記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
関連技術における上述の課題を解決するために、本願実施例の第1態様は、ダイレクトドライブシステムを提供し、固定子と、固定子に設けられ、固定子の長手方向に沿って隣接して配列された巻線を有する複数の一次ユニットと、複数の一次ユニット内の巻線にそれぞれ接続された複数のドライバと、複数のドライバに接続されたコントローラと、固定子に設けられ、複数の一次ユニットにそれぞれ対応して対応するドライバに接続された複数の第1位置フィードバックデバイスと、固定子に設けられ、複数の一次ユニットの対向両側にそれぞれ位置するガイドレールと、ガイドレールに摺動接続された複数の可動子と、を備え、可動子ごとに磁石鋼および第2位置フィードバックデバイスが設けられ、第1位置フィードバックデバイスが第2位置フィードバックデバイスに対応し、巻線が磁石鋼に対応しており、
巻線は、通電時に進行波磁界を発生させることにより、自身と磁石鋼との間に推力を発生させることで、可動子をガイドレールに沿って移動させるために用いられ、
第1位置フィードバックデバイスは、第2位置フィードバックデバイスを感知して可動子と一次ユニットとの間の相対位置情報を得るために用いられ、
コントローラは、相対位置情報に基づいて可動子のガイドレール上の絶対位置情報を算出し、相対位置情報に基づいて一次ユニットの動作モードを切り替えるために用いられ、
動作モードは、位置モードと電流モードを含み、
位置モードにおいて、コントローラは、絶対位置情報と可動子のガイドレール上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて位置制御命令を出力するために用いられ、ドライバは、位置制御命令に応じて巻線の電流の大きさを調整して可動子を予め設定位置に移動させるために用いられ、
電流モードにおいて、コントローラは、電流制御命令を出力するために用いられ、ドライバは、電流制御命令に応じて、可動子の移動時の推力損失を補償するように巻線に電流を供給するために用いられる。
【0006】
本願実施例の第2態様は、ダイレクトドライブシステムの制御方法を提供し、本願実施例の第1態様に記載のダイレクトドライブシステムに適用されるものであって、
第1位置フィードバックデバイスが第2位置フィードバックデバイスを感知するように制御して、可動子と一次ユニットとの間の相対位置情報を得ることと、
相対位置情報に基づいて可動子のガイドレール上の絶対位置情報を算出することと、
相対位置情報に基づいて一次ユニットの動作モードを切り替えることと、を含み、
ここで、動作モードは、位置モードと電流モードを含み、
位置モードにおいて、絶対位置情報と可動子のガイドレール上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて位置制御命令を出力することによって、ドライバが位置制御命令に応じて一次ユニット内の巻線の電流の大きさを調整し、巻線と磁石鋼との間の推力の大きさを変更して可動子を予め設定位置に移動させ、
電流モードにおいて、電流制御命令を出力することによって、ドライバが電流制御命令に応じて、可動子の移動時の推力損失を補償するように巻線に電流を供給する。
【0007】
本願実施例の第3態様は、電子機器を提供し、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、メモリは、少なくとも1つのプログラムを記憶するために用いられ、かつ、少なくとも1つのプログラムが少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、少なくとも1つのプロセッサに本願実施例の第2態様に記載のダイレクトドライブシステムの制御方法を実行させる。
【0008】
本願実施例の第4態様は、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、実行可能命令が記憶されており、この実行可能命令が実行されるときに、本願実施例の第2態様に記載のダイレクトドライブシステムの制御方法が実行される。
【発明の効果】
【0009】
上記の記述から分かるように、関連技術に比べて、本願の有益な効果は以下の点にある。
【0010】
一次ユニットに対して、位置モードと電流モードとの2種類の動作モードが設計されている。位置モードでは、可動子のガイドレール上の絶対位置情報と可動子のガイドレール上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて、位置制御命令を出力することができ、これにより、ドライバは位置制御命令に応じて巻線の電流の大きさを調整し、その目的は、巻線と磁石鋼の間の推力の大きさを変更して可動子を予め設定位置に移動させることである。電流モードでは、電流制御命令を出力することができ、これにより、ドライバは電流制御命令に応じて巻線に電流を供給し、その目的は、可動子の位置を制御せずに可動子の移動時の推力損失を補償することである。これから分かるように、本願では、一次ユニットの位置モードによって可動子の正常な移動を確保するとともに、一次ユニットの電流モードによって可動子の移動時の推力損失を効果的に補償し、しかも、ドライバの機能をカスタマイズ、改造する必要がなく、これにより、ドライバの使用の汎用性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0011】
関連技術または本願実施例における技術案をより明確に説明するために、関連技術または本願実施例の説明において使用する図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者にとっては、創造的な労働を払うことなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図1】
図1は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの側面図である。
【
図3】
図3は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの分解図である。
【
図4】
図4は、本願実施例による一次ユニットの分解図である。
【
図5】
図5は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本願実施例による一次ユニットおよび磁石鋼の第1相対位置を示す図である。
【
図7】
図7は、本願実施例による一次ユニットおよび磁石鋼の第2相対位置を示す図である。
【
図8】
図8は、本願実施例による一次ユニットおよび磁石鋼の第3相対位置を示す図である。
【
図9】
図9は、本願実施例による電子機器のモジュールブロック図である。
【
図10】
図10は、本願実施例によるコンピュータ可読記憶媒体のモジュールブロック図である。
【
図11】
図11は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願の目的、技術案および利点をより明確かつ分かりやすくするために、以下に本願の実施例および図面を結合して、本願を明確かつ完全に記載し、そのうち、最初から最後まで同一または類似の符号は、同一または類似の要素や同一または類似の機能を有する要素を示す。なお、以下に述べる本願の各実施例は、あくまでも本願を解釈するものであり、本願を限定するものではなく、すなわち、本願の各実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく取得した他のすべての実施例は、本願の保護範囲に属することを理解すべきである。また、以下に説明する本願の各実施例に係る技術的特徴は、互いに競合しない限り組み合わせることが可能である。
【0013】
図1は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの構成を示す図であり、
図2は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの側面図である。本願実施例によるダイレクトドライブシステムは、固定子10と、巻線21を有する複数の一次ユニット20と、複数のドライバ(図示せず)と、コントローラ(図示せず)と、複数の第1位置フィードバックデバイス30と、ガイドレール40と、複数の可動子50と、複数の磁石鋼60と、複数の第2位置フィードバックデバイス70とを備える。そのうち、複数の一次ユニット20は、固定子10に設けられ、固定子10の長手方向に沿って隣接して配列され、複数のドライバは、複数の一次ユニット20内の巻線21にそれぞれ接続され、コントローラは、複数のドライバに接続され、複数の第1位置フィードバックデバイス30は、固定子10に設置され、複数の一次ユニット20のそれぞれに対応し、複数の第1位置フィードバックデバイス30は、それぞれ対応するドライバに接続され、ガイドレール40は、固定子10に設置され、かつ複数の一次ユニット20の対向する両側にそれぞれ位置し、複数の可動子50は、ガイドレール40に摺動接続され、可動子50ごとに磁石鋼60及び第2位置フィードバックデバイス70が設けられ、第1位置フィードバックデバイス30は、第2位置フィードバックデバイス70に対応し、巻線21は、磁石鋼60に対応する。第1位置フィードバックデバイス30は、一次ユニット20の中間位置にあり、複数のドライバは、高速バスを用いてコントローラにカスケード接続されることが好ましい。
【0014】
具体的には、ダイレクトドライブシステムの待機時には、可動子50の磁石鋼60とその近傍の一次ユニット20の巻線21との間にエアギャップ磁界が発生し、ドライバにより巻線21に電流を出力することで、巻線21に進行波磁界を発生させ、さらに可動子50の磁石鋼60と通電された巻線21との間に推力を発生させて、可動子50をガイドレール40に沿って推力の方向に運動させる。実際の応用では、第1位置フィードバックデバイス30は、第2位置フィードバックデバイス70を感知して、可動子50と一次ユニット20との間の相対位置情報を得るために用いられる。コントローラは、相対位置情報に基づいて可動子50のガイドレール40上の絶対位置情報を算出し、相対位置情報に基づいて一次ユニット20の動作モードを切り替えるために用いられる。ここで、動作モードは、位置モードと電流モードを含み、位置モードにおいて、コントローラは、絶対位置情報と、可動子50のガイドレール40上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて位置制御命令を出力するために用いられ、ドライバは、位置制御命令に応じて巻線21の電流の大きさを調整して可動子50を予め設定位置に移動させるために用いられ、電流モードにおいて、コントローラは、電流制御命令を出力するために用いられ、ドライバは、電流制御命令に応じて、可動子50の位置を制御せずに可動子50の移動時の推力損失を補償するように、巻線21に電流を供給するために用いられる。好ましくは、第1位置フィードバックデバイス30はリードヘッドを用い、第2位置フィードバックデバイス70は、ラスタスケールと磁気スケールを含むがこれらに限定されないインクリメンタルスケールを用いる。
【0015】
幾つかの実施形態では、
図3は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの分解図である。可動子50ごとに複数の磁石鋼60が設けられ、可動子50に第2透磁体80がさらに設けられている。このような構成では、複数の磁石鋼60は、いずれも第2透磁体80の可動子50から離れた側に設けられている。
【0016】
幾つかの実施形態では、
図3を参照して、一次ユニット20は、固定子10に配置される第1透磁体22をさらに備え、このような構成では、巻線21は、第1透磁体22の固定子10から離れた側に配置される。その一実施形態として、
図4は本願実施例による一次ユニット20の分解図であり、各一次ユニット20は、複数の巻線21を有し、第1透磁体22は、固定子10に設けられた本体221を備え、本体221の固定子10から離れた側には、固定子10から離れる方向に延び、互いに間隔を空ける複数のスリーブ接続部222が形成され、複数の巻線21は、それぞれ複数のスリーブ接続部222に嵌設されている。
【0017】
上記の実施形態は、本願実施例の好適なものとして実現されているに過ぎず、その記述内容を一義的に限定するものではなく、当業者にとっては、本願実施例に基づき、実際の適用シーンに応じて柔軟に設定できることを注意されたい。
【0018】
以上より、本願実施例では、一次ユニット20に対して、位置モードと電流モードとの2種類の動作モードが設計されている。位置モードでは、可動子50のガイドレール40上の絶対位置情報と可動子50のガイドレール40上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて、位置制御命令を出力することができ、これにより、ドライバは位置制御命令に応じて一次ユニット20内の巻線21の電流の大きさを調整し、その目的は、巻線21と磁石鋼60の間の推力の大きさを変更して可動子50を予め設定位置に移動させることである。電流モードでは、電流制御命令を出力することができ、これにより、ドライバは電流制御命令に応じて巻線21に電流を供給し、その目的は、可動子50の位置を制御せずに可動子50の移動時の推力損失を補償することである。本願実施例は、一次ユニット20の位置モードによって可動子50の正常な移動を確保するとともに、一次ユニット20の電流モードによって可動子50の移動時の推力損失を効果的に補償し、しかも、ドライバの機能をカスタマイズ、改造する必要がなく、これによりドライバの使用の汎用性が向上したことを理解できる。また、位置制御命令、電流制御命令の発行は、全てコントローラによって実行され、異なる一次ユニット20の推力を受けることによる同一の可動子50の速度変動を効果的に回避することができる。
【0019】
図5は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの制御方法を示すフローチャートである。本願実施例はさらに、本願実施例による前述のダイレクトドライブシステムに適用されるダイレクトドライブシステムの制御方法を提供し、このダイレクトドライブシステムの制御方法は、以下のステップ501~503を含む。
【0020】
ステップ501:第1位置フィードバックデバイスが第2位置フィードバックデバイスを感知するように制御して、可動子と一次ユニットとの間の相対位置情報を得る。
【0021】
本願実施例において、ダイレクトドライブシステムを利用する際には、ガイドレール40に沿ってスライドしている可動子50上の第2位置フィードバックデバイス70を、一次ユニット20に対応する第1位置フィードバックデバイス30により誘導する必要があり、これにより可動子50と一次ユニット20との間の相対位置情報を取得する。
【0022】
ステップ502:相対位置情報に基づいて、可動子のガイドレール上の絶対位置情報を算出する。
【0023】
本願実施例では、可動子50と一次ユニット20との間の相対位置情報を取得した後、取得した相対位置情報に基づいて可動子50のガイドレール40上の絶対位置情報を算出する必要がある。理解できるように、一次ユニット20、ガイドレール40はいずれも固定子10に固定されており、可動子50のみがガイドレール40に沿って摺動するので、可動子50と一次ユニット20との間の相対位置情報から可動子50のガイドレール40における絶対位置情報を算出することができる。
【0024】
ステップ503:相対位置情報に基づいて一次ユニットの動作モードを切り替える。
【0025】
本願実施例では、可動子50のガイドレール40上の絶対位置情報を算出した後、相対位置情報に基づいて一次ユニット20の動作モードを切り替える必要がある。具体的には、動作モードは、位置モードと電流モードを含む。位置モードでは、可動子50のガイドレール40上の絶対位置情報と可動子50のガイドレール40上の全ストローク範囲内の予め設定位置に基づいて、位置制御命令を出力することによって、ドライバは位置制御命令に応じて一次ユニット20内の巻線21の電流の大きさを調整し、その目的は、巻線21と磁石鋼60の間の推力の大きさを変更して可動子50を予め設定位置に移動させることである。電流モードでは、電流制御命令を出力することによって、ドライバは電流制御命令に応じて、可動子50の位置を制御せずに可動子50の移動時の推力損失を補償するように、巻線21に電流を供給する。
【0026】
幾つかの実施形態では、ステップ503は、具体的には以下のことを含んでよい。すなわち、
図6に示すように、磁石鋼60が一次ユニット20に完全に入る(すなわち、磁石鋼60の外縁が一次ユニット20の外縁内にある)と、一次ユニット20の動作モードを位置モードに切り替えることと、
図7に示すように(図中のxは磁石鋼60の運動方向を示す)、磁石鋼60が直前の一次ユニット20から完全に離れて現在の一次ユニット20に入ると、直前の一次ユニット20の動作モードを電流モードに切り替えるとともに、現在の一次ユニット20の動作モードを位置モードに切り替えることと、
図8に示すように(図中のxは磁石鋼60の運動方向を示す)、磁石鋼60が現在2つの一次ユニット20の間の隣接箇所にあると、2つの一次ユニット20の動作モードを共に位置モードに切り替えるか、あるいは、一方の一次ユニット20の動作モードを位置モードに切り替え、他方の一次ユニット20の動作モードを電流モードに切り替えることである。
【0027】
上記の実施形態は、本願実施例の好適なものとして実現されているに過ぎず、その記述内容を一義的に限定するものではなく、当業者にとっては、本願実施例に基づき、実際の適用シーンに応じて柔軟に設定できることを注意されたい。
【0028】
図9は、本願実施例による電子機器のモジュールブロック図である。本願実施例は、電子機器900をさらに提供し、この電子機器900は、メモリ910と、少なくとも1つのプロセッサ920とを備え、そのうち、メモリ910は、少なくとも1つのプログラムを記憶するために用いられ、かつ、少なくとも1つのプログラムが少なくとも1つのプロセッサ920によって実行されるとき、少なくとも1つのプロセッサ920に本願実施例による前述のダイレクトドライブシステムの制御方法を実行させる。
【0029】
さらに、電子機器900は、メモリ910と少なくとも1つのプロセッサ920との間の通信接続に用いられるバス930も備える。
【0030】
図10は、本願実施例によるコンピュータ可読記憶媒体のモジュールブロック図である。本願実施例は、コンピュータ可読記憶媒体100をさらに提供し、このコンピュータ可読記憶媒体100は、実行可能命令110が記憶されており、この実行可能命令110が実行されるときに(即ち、プロセッサにより呼び出された場合)、本願実施例による前述のダイレクトドライブシステムの制御方法を実行する。
【0031】
本明細書に開示された実施例で説明した方法またはアルゴリズムを結合する手順は、ハードウェア、プロセッサで実行されるソフトウェアモジュールをそのまま用いても、両者の組み合わせで実施してもよい。ソフトウェアモジュールは、ランダムメモリ(RAM)、メモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的プログラマブルROM、電気的消去可能プログラマブルROM、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、または技術分野で知られている他の任意の形態の記憶媒体に配置することができる。
【0032】
図11は、本願実施例によるダイレクトドライブシステムの構成を示す図であり、
図11には、本願実施例によるダイレクトドライブシステムにおける固定子、可動子、複数のドライバとコントローラとの間の相対空間位置関係が示されている。
【0033】
上述の実施例において、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせによって、全てまたは一部が実現されてもよい。ソフトウェアを用いて実現する場合、全てまたは一部をコンピュータプログラム製品として実現してもよい。コンピュータプログラム製品は、一つまたは複数のコンピュータ命令を含む。コンピュータ上でコンピュータプログラム命令をロードして実行するとき、本願に記載のフローまたは機能が全てまたは部分的に生成される。コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、またはその他のプログラマブルデバイスであってもよい。コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよいし、一方のコンピュータ可読記憶媒体から他方のコンピュータ可読記憶媒体へと伝送されてもよい。例えば、コンピュータ命令は、一つのウェブサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンターから、有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、デジタル加入者線)または無線(例えば、赤外線、無線、マイクロ波など)を介して、他のウェブサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンターに伝送されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータがアクセス可能な任意の利用可能な媒体、あるいは一つまたは複数の利用可能な媒体が統合されたサーバ、データセンタ等のデータ記憶装置であってもよい。利用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、または半導体媒体(例えば、ソリッドステートハードディスクSolid State Disk)などであってもよい。
【0034】
なお、本願の内容における各実施例は、いずれもプログレッシブ方式で記載されたものであり、各実施例において重点的に説明されたものは、他の実施例と異なる点であり、各実施例の間において互いに類似する部分は互いに参照されればよい。製品クラスの実施例については、方法クラスの実施例と類似しているため、説明は比較的簡単であり、関連する事項は方法クラスの実施例の一部の説明を参照すればよい。
【0035】
また、本願の内容において、第1、第2などの関係性用語は、一つのエンティティ又は操作を他のエンティティ又は操作と区別するためにのみ使用され、必ずしもこれらのエンティティ又は操作の間にそのような実際の関係または手順が存在することを要求または暗示するものではない。また、「含む」、「含み」、またはその他の任意変形は、一連の要素を含むプロセス、方法、物品または装置が、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素を含むか、あるいはこれらのプロセス、方法、物品または装置に固有の要素を含むように、非排他的な包含をカバーすることを意味している。それ以上の制約が無い限り、「一つの・・・を含む」という文章によって定義される要素は、その要素を含むプロセス、方法、物品、またはデバイスに別の同じ要素が存在することを除外するものではない。
【0036】
開示された実施例に対する上記の説明は、当業者が本願の内容を実現または利用できるようにする。これらの実施例に対する様々の変更は、当業者にとって自明なことであり、本願の内容において定義される一般的な原理は、本願内容の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施例において実現されることが可能である。したがって、本願の内容は、本願内容に示されたこれらの実施例に制限されることなく、本願内容に開示される原理および新規な特徴に一致する最も広い範囲に適合しなければならない。