(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】スピーカシステム及びその応用方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20250225BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20250225BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250225BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250225BHJP
H04R 1/24 20060101ALI20250225BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20250225BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20250225BHJP
【FI】
H04R1/02 102Z
H04N5/64 541N
G09F9/30 365
G09F9/00 350Z
H04R1/24 A
H04R17/00
H10K59/95
(21)【出願番号】P 2023568639
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2022105912
(87)【国際公開番号】W WO2023035772
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】202111042000.4
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523284158
【氏名又は名称】山東華菱電子股フン有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】片桐 譲
(72)【発明者】
【氏名】渡部 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】徐継清
(72)【発明者】
【氏名】張東娜
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0058690(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107301029(CN,A)
【文献】特開2019-033242(JP,A)
【文献】特開2015-046947(JP,A)
【文献】特開2007-300426(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04N 5/64
G09F 9/30
G09F 9/00
H04R 1/24
H04R 17/00
H10K 59/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電スピーカと電磁式スピーカとを備え、前記圧電スピーカと前記電磁式スピーカとの交差周波数は500Hz以上であり、前記圧電スピーカは表示装置の背面に設けられており、前記電磁式スピーカは表示装置の底部に設けられて
おり、
前記表示装置は、OLEDディスプレイであり、
前記圧電スピーカは圧電スピーカ振動子を備え、前記OLEDディスプレイの背面には、2つの異なるサイズの圧電スピーカ振動子が貼り付けられている、スピーカシステムであって、
前記スピーカシステムは、デジタルオーディオ処理及び駆動回路をさらに備え、前記デジタルオーディオ処理及び駆動回路は、オーディオ信号増幅器にそれぞれつながる高周波左チャンネル出力回路、高周波右チャンネル出力回路及び低周波出力回路を備え、前記高周波左チャンネル出力回路及び前記高周波右チャンネル出力回路には、それぞれハイパスフィルタが設けられており、前記ハイパスフィルタの出力端は、それぞれ前記2つの異なるサイズの圧電スピーカ振動子につながり、前記ハイパスフィルタは、送り込まれたオーディオ信号に対して一次6dB/oct処理を行い、前記低周波出力回路には、ローパスフィルタが設けられており、前記ローパスフィルタの出力端は、前記電磁式スピーカにつながり、前記ローパスフィルタは、送り込まれたオーディオ信号に対して-6dB/oct処理を行い、
前記圧電スピーカ振動子は、圧電素子を備えて湾曲振動を自動的に誘導するユニモルフ型構造又はバイモルフ型構造を採用し、前記圧電スピーカ振動子には、金属薄板が設けられており、前記金属薄板の上側及び下側には、導電接着剤により2つの圧電素子がそれぞれ接着されて固定されており、各圧電素子の圧電セラミックス板の上下両面には、互いに導通しない外部電極が設けられており、2つの圧電素子は、偏波方向に沿って前記金属薄板の上側及び下側に対応して設けられており、外部駆動信号が送り込まれた後、前記金属薄板の上側の圧電素子が収縮し、前記金属薄板の下側の圧電素子が伸張し、前記金属薄板の両端には、前記OLEDディスプレイに接続して固定するための支持部材がそれぞれ設けられており、外部が交流電気信号を送り込んだ後、前記金属薄板の上側及び下側の圧電素子は、前記支持部材を中心とした前記圧電スピーカ振動子の上下の湾曲振動を実現するように、異なる方向に繰り返して伸縮して湾曲振動が発生する、
スピーカシステム。
【請求項2】
前記圧電スピーカと前記電磁式スピーカとの交差周波数は3000Hz以下である、
請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項3】
前記OLEDディスプレイのサイズは420mm×240mm×0.7mmであり、前記OLEDディスプレイの背面には、それぞれが45mm×15mm×0.5mmの矩形の圧電スピーカ振動子、90mm×30mm×0.5mmの矩形の圧電スピーカ振動子である2つの異なるサイズの圧電スピーカ振動子が貼り付けられて
いる、
請求項
1に記載のスピーカシステム。
【請求項4】
前記OLEDディスプレイのサイズは1770mm×996mm×0.7mmであり、前記OLEDディスプレイの背面には、それぞれが45mm×15mm×0.5mmの矩形の圧電スピーカ振動子、90mm×30mm×0.5mmの矩形の圧電スピーカ振動子である2つの異なるサイズの圧電スピーカ振動子が貼り付けられて
いる、
請求項
1に記載のスピーカシステム。
【請求項5】
前記圧電スピーカ振動子は、高圧電界分極処理を経た後の圧電素子を備え、前記圧電素子は、積層して設けられた10~20層の30μm厚さの、チタン酸ジルコン酸鉛材料製の圧電セラミックスシートを備え、第1の外部電極及び第2の外部電極は、それぞれ、前記圧電素子の上側及び下側に印刷されており、前記圧電素子の上側又は下側には、同側の外部電極に電気的に接続されていない第3の外部電極が設けられており、前記第3の外部電極は、前記圧電素子の側面を迂回してから異なる側の外部電極につながり、前記高圧電界分極処理は、前記第1の外部電極、前記第2の外部電極及び前記第3の外部電極に高圧電界が加わることを含む、
請求項
3又は
4に記載のスピーカシステム。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のスピーカシステムをテレビに応用し、前記テレビの厚さ範囲が0.5mm~2.0mmであり、且つ、前記テレビが出力するオーディオ信号が500Hz未満であると決定されたことに応じて、電磁式スピーカを採用して音声を放送し、前記テレビの厚さ範囲が0.5mm~2.0mmであり、前記テレビが出力するオーディオ信号が3000Hzより大きいと決定されたことに応じて、
前記圧電スピーカを採用して音声を放送
する、
スピーカシステムの応用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年9月7日に中国専利局に提出された、出願番号が202111042000.4で受理された中国特許出願の優先権を主張し,この出願の全ての内容は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、スピーカ製造の技術分野、例えば、スピーカシステム及びその応用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テレビ業界では、ブラウン管方式を用いた表示機器の台頭から、プラズマ方式や液晶方式などを用いた薄型表示機器である薄型テレビへと変遷している。近年、有機発光半導体などを用いた、自発光方式の表示機能を有する超薄型テレビが、市場で広く認められて、ほとんどのブラウン管式のテレビメーカが生産を停止している。冷陰極管の発光装置から発光ダイオード(Light-Emitting Diode、LED)の発光装置への変遷は、液晶テレビの薄型化を実現した。理想的な形式は、冷陰極管などの重量を持つ機器が削除された後の軽量化の付加価値と組み合わせた壁掛け式テレビ製品であり、そのうち、特に、自発光型表示装置である有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode、OLED)は、厚さが0.5mm~0.7mmであり、さらに、外部にLEDなどの発光装置が必要とされないため、従来の液晶表示装置よりも更に薄い超薄型テレビを実現する可能性がある。また、LEDを取り付けるスペースが不要なため、窄額縁型テレビの製品化も実現した。しかしながら、OLEDは、上記1mm以下の圧倒的な薄型のメリットを有しているものの、現在は窄額縁しか実用化されておらず、壁掛け構造を有する薄型テレビの実用化はまだ困難である。
【0004】
テレビの基本的な機能は、画像の表示及び音声の出力であり、画像の表示は、OLEDが窄額縁構造を有するという付加価値により実現される。音声の出力は主に、テレビ筐体の背面に電磁式スピーカを取り付けるという方法により実現されるが、電磁式スピーカの凹凸形状は、その厚さが厚すぎてしまう。現在、薄型電磁式スピーカの限界直径は20mm程度で、テレビに必要な再現周波数を実現するために実際に用いられる電磁式スピーカの最小直径は約25mm程度であり、このサイズの
図22に示されるようなスピーカをテレビの背面に取り付けると、OLEDにより得られた1mm以下の厚さのメリットは相殺され、テレビのケースは厚くなる。また、テレビの背面に突起部が生じてしまい、壁掛け式スピーカは、デザイン性の面からも実現しにくい。スピーカをテレビの側面に取り付ければ、テレビの背面が平らになり、壁掛けの実用化は可能であるが、窄額縁のデザイン性が崩されてしまう。
【0005】
ここでは、ライブ感を最大付加価値とした映画館の映像再生原理を簡単に紹介する。映画館におけるメッシュ状のスクリーンの背面には、視聴者へ音声を出すように、視聴者に向けたスピーカが設けられており、このメッシュ状物を通じた音声が視聴者に直接伝えられるため、視聴者は、登場人物の声がスクリーンから発せられていると感じたり、映像から直接効果音が聞こえていると感じることができ、ライブ感を強く感じられる。しかし、上記のテレビのように、背面にスピーカが配置されている場合、視聴者へ直接音声を発することができないため、映像と音声との空間的な偏差が生じ、ライブ感が欠いた映像表示となってしまう。
【0006】
関連技術におけるフラットパネルスピーカは、励振素子が薄パネルを振動させることにより音声を発生させ、薄板状部材に駆動源、例えば電磁ソレノイド、圧電セラミックスなどの励振素子が貼り付けられて励振されたパネルが音声を発生させる機能を有する。ディスプレイから直接音声を発することができるため、臨場感のある映像再生が可能になる。
【0007】
しかしながら、関連技術におけるフラットパネルスピーカ装置は、使用過程における現在のOLEDなどの超薄型表示機器への振動影響を考慮していない。被励振物から得られた音声の大きさPは、幅の大きさXによって決まり、且つ、通常はP∝Xの関係を築くことができる。また、Xは、励振物が有する力Fと被励振物の剛性Kとの関係に基づいて、フックの法則X=F/Kを成立させる。LEDが必要な液晶パネルの場合、背面の導光板を含めると、液晶パネル及び導光板を備える表示パネルの全体的な厚さは3mm~4mmである。OLED液晶パネルの厚さは、上記のように、0.5mm~0.7mmである。この表示装置の全体的な表示パネルの剛性はKであり、そのヤング率をEとし、断面二次モーメントをIとし、表示パネルの幅をaとし、長さをLとし、厚さをhとするとき、I=ah
3/3であるため、K=48EI/L
3=16Eah
3/L
3が得られ、同じ長さの構造において、表示パネルの厚さの剛性Kは、表示パネルの厚さの3乗によって決まることが分かる。仮にOLEDの厚さが0.7mmであり、液晶パネルの厚さが3mmであれば、
が得られ、OLED及びLED液晶パネルの剛性は、大きく異なっていると表明される。OLED及びLED液晶パネルの等価曲げに必要な力の間には、
倍の差が生じる。
【0008】
関連技術では、OLEDの背面に振動アクチュエータが貼り付けられた構造が提出された。OLEDは、表示機能を有する被励振物であり、励振素子により小さな力で比較的大きな振動を発生させて映像及び画像を表示することができる。そのため、励振素子の励振により大きな音声が得られる場合、OLEDに振動が加わらなければならないが、表示機器が振動すると、視聴者が見ている映像又は画像に画面ぶれが発生するという問題がある。
【発明の概要】
【0009】
本願は、OLED自発光式表示装置の振動により発音する圧電スピーカと、表示装置と分離して設けられる電磁式駆動スピーカとを兼備し、映像と音声との空間的な偏差を減少し、さらに、ライブ感を有する映像表示を提供することができる、特にテレビに適用されるスピーカシステム及びその応用方法を提出している。
【0010】
本願の実施例は、圧電スピーカと電磁式スピーカとを備えるスピーカシステムを提出し、そのうち、圧電スピーカと電磁式スピーカとの交差周波数は500Hz以上であり、前記圧電スピーカは表示装置の背面に設けられており、前記電磁式スピーカは表示装置の底部に設けられている。
【0011】
本願は、前記スピーカシステムをテレビに応用するスピーカシステムの応用方法をさらに提出し、前記テレビの厚さ範囲が0.5mm~2.0mmであり、且つ前記テレビが出力するオーディオ信号が500Hz未満であると決定されたことに応じて、電磁式スピーカを採用して音声を放送し、前記テレビの厚さ範囲が0.5mm~2.0mmであり、前記テレビが出力するオーディオ信号が3000Hzより大きいと決定されたことに応じて、圧電スピーカを採用して音声を放送する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の一実施例におけるOLEDスクリーンに対する異なるサイズの圧電セラミックス素子の貼り付け位置の模式図である。
【
図2】関連技術におけるディスプレイの励振された後の10KHz周波数における調波振動のシミュレーション解析の模式図である。
【
図3】本願の一実施例に係る異なるテレビのスクリーンサイズにおける、振動が発生したときの共振周波数である。
【
図4】本願の一実施例に係るOLEDをディスプレイとして採用したテレビの発声の模式図である。
【
図5】本願の一実施例に係る視聴者がテレビを見ているときの人とテレビとの位置の模式図である。
【
図6】本願の一実施例に係る年齢層が10代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数データである。
【
図7】本願の一実施例に係る年齢層が10代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
【
図8】本願の一実施例に係る年齢層が20代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
【
図9】本願の一実施例に係る年齢層が40代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
【
図10】本願の一実施例に係る年齢層が60代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
【
図11】本願の一実施例に係る異なるテレビのサイズの画像ぶれに対して視聴者が感知可能な周波数のグラフである。
【
図12】本願の一実施例に係る低周波スピーカがテレビの下部に視聴者に面して設けられる模式図である。
【
図13】本願の一実施例に係るフラットパネル式スピーカ及び電磁式スピーカを採用してなるデジタルオーディオ処理及び駆動回路の模式図である。
【
図14】本願の一実施例に係る19インチのテレビが放送している異なる番組に対する異なる年齢層の視聴者の臨場感の周波数データである。
【
図15】本願の一実施例に係る50インチのテレビが放送している異なる番組に対する異なる年齢層の視聴者の臨場感の周波数データである。
【
図16】本願の一実施例に係る80インチのテレビが放送している異なる番組に対する異なる年齢層の視聴者の臨場感の周波数データである。
【
図17】本願の一実施例に係る圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
【
図18】本願の一実施例に係る圧電素子がOLEDの背面側に貼り付けられる模式図である。
【
図19】本願の一実施例に係る圧電スピーカ振動子のリード電極の模式図である。
【
図20】本願の一実施例に係る異なる信号状態におけるOLED表示パネルの形態の模式図である。
【
図21】本願の一実施例に係るOLED表示パネルの周波数応答グラフである。
【
図22】本願の一実施例に係る低音反射型スピーカシステムの構造模式図である。
【
図23】本願の一実施例に係る低音反射型スピーカシステムの周波数応答グラフである。
【
図24】本願の一実施例に係る圧電スピーカ及び電磁スピーカシステムを同時に駆動した周波数応答グラフである。
【
図25】本願の他の実施例に係る圧電素子が追加された後のOLED表示パネルの貼り付け方式の模式図である。
【
図26】本願の一実施例に係る複数の圧電素子の構造におけるOLED表示パネルの周波数応答グラフである。
【
図27】本願の一実施例に係る圧電スピーカがローパスフィルタリングを採用した後の周波数応答グラフである。
【
図28】本願の一実施例に係る圧電スピーカ及び電磁スピーカシステムを駆動した周波数応答グラフである。
【
図29】本願の他の実施例に係る圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
【
図30】本願の一実施例に係る異なる電圧における分極された後の圧電素子の歪みの模式図である。
【
図31】本願の一実施例に係る分極された後の圧電素子に交流電圧が加わるときの変位歪みの模式図である。
【
図32】本願の一実施例に係る振動素子が支持部材を中心に上下に湾曲変形する模式図である。
【
図33】本願の一実施例に係る振動素子が支持部材を中心に上下に湾曲振動する模式図である。
【
図34】本願の他の実施例に係るフラットパネル圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
【
図35】本願の他の実施例に係るフラットパネル圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
【
図36】本願の他の実施例に係るフラットパネル圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
【符号の説明】
【0013】
第1の圧電素子1、第1の外部電極2、第3の外部電極3、高圧電界方向4、第2の外部電極5、半田6、第1のリード7、第2のリード8、透明ガラス基板9、有机ELパネル10、第2の圧電素子11、反射性スピーカシステム12、開口腔13、サブウーファ14、筐体15、分極方向16、金属薄板17、支持部材18。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本願についてさらに説明する。
【0015】
関連技術において、液晶ディスプレイなどの表示装置に励振用のアクチュエータを貼り付けて音声を生成するができる。
図1は、本願の一実施例におけるOLEDスクリーンに対する異なるサイズの圧電セラミックス素子の貼り付け位置の模式図である。
図2は、関連技術におけるディスプレイの励振された後の10KHz周波数における調波振動のシミュレーション解析の模式図であり、励振されたディスプレイは、
図2に示されるように、10k周波数の分割振動を有し、前記分割振動は、空气を振動させ、音声として人の耳に伝えられる。振動体に振動変位が発生して音声の出力が発生したときの音声強度Iは、
という数式で表され、数式において、ρ、cは気体の温度及び気圧によって少し異なるが、ここでは、ρ及びcを定数として考察を行うことができる。
【0016】
このような場合、音声の強度Iは、
という数式で表され、すなわち、音声強度Iは振動体の周波数及び変位量によって決まり、且つ、高周波では、大きな変位を必要とせずに所望の音声の強度を得られることを意味する。しかしながら、テレビの実際の使用における広い周波数範囲、特に低周波範囲において音声の一定の強度を保持するには、高周波範囲よりも大きな変位量が必要である。
【0017】
本願に記載のディスプレイは、テレビ画像を展示する装置とされているため、ディスプレイ自身に大きな振動が発生すると、見られている画像にも大きな揺れが発生し、画像にぶれ現象(以下、画面ぶれ現象と称する)が現れ、これにより、テレビの基本的な機能が損なわれてしまう。そのため、テレビのディスプレイの振動により音声を発生させる場合、ディスプレイの振動のみにより、低周波から高周波までの全帯域の音声の再生を行うことは現実的ではない。
【0018】
したがって、本願は、ディスプレイの振動が音声を発生させる圧電スピーカと、上記低周波振動における画像ぶれを防ぐために、低周波帯域を再現するように効果的に駆動する電磁式スピーカとを同時に使用し、両者は、テレビ用の圧電スピーカが実用化されるキーとなる要素である。
【0019】
一般的には、家庭で用いられているテレビのスクリーンサイズは、19インチから80インチ程度である。OLEDにより映像を出力する場合、振動の共振周波数は、テレビのスクリーンサイズによって異なる。
図3は、本願の一実施例に係る異なるテレビのスクリーンサイズにおける振動が発生したときの共振周波数である。19インチから80インチの異なるサイズの共振周波数を算出することにより得られた結果である。
図3において、tはテレビのスクリーンの厚さを表し、xはテレビのスクリーンの長さを表し、yはテレビのスクリーンの幅を表す。ここで、OLEDの外周の解析モデルを作成し、且つ、厚さを0.3mmから1mmにする。
図3からわかるように、共振周波数はスクリーンのサイズ及び厚さによって決まる。
【0020】
また、0.3mm~1mmのスクリーンの厚さの範囲では、多くのテレビの1次共振周波数はいずれも100Hz以下であるが、一般的には、テレビ用のスピーカの再現帯域は100Hz~12kHzであるため、音声を再生するように、OLEDを励振して、その共振周波数を増加させる必要がある。
【0021】
ここで、人の視覚において画面ぶれを感じさせるパネルの振動周波数を把握する必要がある。そこで、以下の実験が行われる。
【0022】
(1)10~60歳の視聴者を年齢により6つの部分に区分し、10名の視聴者をランダムに抽出する。
【0023】
(2)OLED液晶スクリーンがディスプレイとされるテレビを視聴者に見させる。
【0024】
(3)この際に用いられるテレビの表示装置が採用したOLED液晶スクリーンの厚さは0.6mmであり、画像信号に一般的な映画テレビジョン技術者協会(Society of Motion Picture and Television Engineers、SMPTE)のカラーバー信号を入力する。
【0025】
(4)上記(3)の表示装置の背面に
図4のような直径50mm、厚さ30mmの加振器を貼り付け、振動を加え、表示装置から音声を出す。この際、信号発生コントローラが発生した励振信号は、10kHzから徐々に100Hzに下げられる正弦波スイープ信号を用いたものである。そのうち、
図4は、本願の一実施例に係るOLEDを表示スクリーンとして採用したテレビの発声の模式図である。
【0026】
(5)
図5に示されるように、視聴者とテレビとの距離はLであり、Lを0.5m、1.0m、2.0m、5.0mとし、視聴者は、異なる位置で上記ステップ(3)のSMPTEカラーバーを見るとともに、上記ステップ(4)により出力された音声を聴取する。そのうち、
図5は、本願の一実施例に係る視聴者がテレビを見ているときの人とテレビとの位置の模式図である。
【0027】
(6)上記ステップ(5)の見る期間において、表示機器の振動により図像がぶれ始まるときの周波数を記録する。そのうち、
図6は、本願の一実施例に係る年齢層が10代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数データである。
【0028】
(7)上記ステップ(1)乃至(6)の実験は、画像サイズ19インチ、32インチ、50インチ、65インチ、80インチで行われ、さらに、年齢層10代(The teenage)、20代、40代、60代に基づいて分類される。
【0029】
上記一連の実験により、異なる年齢層が異なるサイズのテレビの画像ぶれを感知する周波数を把握することができる。
【0030】
図6は、10代の視聴者に対してこの実験が行われたときの詳細結果を示すデータである。
図7は、本願の一実施例に係る年齢層が10代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。全てのデータにおいて、10名の視聴者の平均値を採集した。
図6からわかるように、視聴者の実感として、テレビのサイズを大きくすると、画面ぶれの周波数が高くなると考える傾向にある。また、人とテレビとの距離を長くさせると、画面ぶれを感知させる周波数が低くなり、そのテータをグラフに纏めたのが
図7である。80インチの大型テレビであっても、約400Hz以上の振動は、人に画面ぶれを感じさせることがない。
【0031】
図8~
図10は、20代、40代、60代について纏めた結果である。
図8は、本願の一実施例に係る年齢層が20代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
図9は、本願の一実施例に係る年齢層が40代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
図10は、本願の一実施例に係る年齢層が60代である視聴者を選出して異なるテレビのサイズの画像ぶれを感知させた周波数のグラフである。
図7~
図10からわかるように、異なるテレビのサイズの画像ぶれに対する視聴者の感知は基本的に年齢と関係なく、いずれも同じ傾向を示している。また、年齢の増加に連れて、画面がぼやけていると感じる頻度も低くなる。10代の人は、画風に対する感知度が最も高い。これらの
図8~
図10の全てのデータを重ね合わせると、
図11に示されるようになる。
図11は、本願の一実施例に係る異なるテレビのサイズの画像ぶれに対して視聴者が感知可能な周波数のグラフである。ハッチングで囲まれた枠部分は、パネルの振動により画像ぶれが感じられた周波数領域である。これらの結果から、500Hz以上の周波数でOLEDを駆動することにより、ほとんどの視聴者は、画面ぶれがない状態において映像を見ることができる。
【0032】
しかしながら、500Hz以上の周波数のみを音声信号として再現しても十分な情報とは言えない。ギター、ドラムなどに基づく低周波の周波数は、楽曲の再生に不可欠なものであり、300~500Hzの周波数は、人の声を判断することに必要な再生帯域である。したがって、500Hz以下の周波数を補うために、表示装置と分離した電磁式駆動が同時に駆動するスピーカシステムを構成する必要がある。
【0033】
上記条件に基づいて圧電スピーカだけで音声を再現すると、500Hz以下の周波数を再現することができないため、低音の音圧が足りない。そのため、本願は、主に、低周波で音声を再生する電磁スピーカに対して考察を行う必要がある。原則的には、電磁式スピーカは、映像表示機器とは完全に異なる位置に設けられているため、発声による映像ぶれを懸念する必要がない。また、電磁スピーカは、圧電スピーカに比べてより幅広い再現帯域を有し、そのため、テレビの音声全体の再現をカバーすることもでき、視聴者は、テレビ画面の高さの3倍の距離からテレビを見る。この距離は、テレビ視聴において理想的な位置と考えられる上記ステップ(2)の距離内にあり、テレビ画面の中心部分の高さにマイクを設けて騒音を採集する。しかしながら、上記のように、映画館で得られる臨場感は、表示映像の画面から音声が出ることにより得られるものなので、テレビで臨場感を有する音声を得るために、圧電スピーカを使用して音声再生を行わなければならない。
【0034】
特に、映画館と同様な、映像画像から直接音声を出して視聴者に感じさせる臨場感というものであり、これは、圧電スピーカの数量を増加させることによりステレオのサラウンド効果を生じさせる又は位相操作を行う信号を出力することにより模擬サラウンド効果を得るシステムなどと異なる。検証のため、以下の実験を行った。
【0035】
ステップ1において、上記
図4の加振器をOLED表示スクリーンの背部に貼り付けて、振動を加え、表示機器のOLEDが音声を出して画面を放送することにより、テレビの視聴機能を実現し(すなわち、本願に記載のスピーカシステムにおける圧電スピーカを設ける)、ここでは、19インチ、50インチ、80インチのテレビが用いられている。
【0036】
ステップ2において、視聴者は、テレビ画面からの高さの3倍の位置からテレビを見る。経験上、この距離は、テレビを見る上で理想的な位置である。
【0037】
ステップ3において、
図12の、この距離がテレビ視聴において理想的な位置と考えられる上記2)の距離及びテレビ画面の中心部分の高さにマイクを設ける。そのうち、
図12は、本願の一実施例に係る低周波スピーカがテレビの下部に視聴者に面して設けられる模式図である。
【0038】
ステップ4において、
図12における低周波スピーカ(すなわち、本願に記載のスピーカシステムにおける電磁式スピーカを設ける)は、テレビの下部に視聴者に面して設けられる。
【0039】
ステップ5において、上記ステップ1における圧電スピーカ及びステップ4における電磁式スピーカに、それぞれピンクノイズを入れ、この際、上記ステップ3におけるマイクでノイズを測定し、各スピーカの入力信号の大きさを調整して、圧電スピーカ(フラットパネルスピーカ)及び電磁スピーカのノイズレベルを等しくする。
【0040】
ステップ6において、
図13のようなデジタルオーディオ処理及び駆動回路を構成し、ハイパスフィルタを圧電スピーカ(Piezo Driver)に接続し、そのカットオフ周波数を500Hzとし、これにより、OLEDの画像ぶれが発生しない。そのうち、
図13は、本願の一実施例に係るフラットパネル式スピーカ及び電磁式スピーカを採用してなるデジタルオーディオ処理及び駆動回路の模式図である。
【0041】
ステップ7において、同様に、ローパスフィルタを
図13の電磁スピーカ(SUB WOOWER)(すなわち、低音スピーカ)に接続し、そのカットオフ周波数は3kHz以下で変化することができる。
【0042】
ステップ8において、ビデオ信号を
図13に示される音声駆動回路を有するOLEDに入力し、音声信号を
図13に示される駆動システムにより、圧電スピーカ(
図13では、圧電セラミックスアクチュエータとして表される)及び電磁スピーカ(
図13では、低音スピーカとして表される)に同時に入力し、これにより、OLEDの映像と同期して圧電スピーカ及び電磁式スピーカから音声を発生させることができる。
【0043】
ステップ9において、20代、40代、50代の視聴者から10名の視聴者をランダムに抽出し、これらの視聴者は、上記OLED表示スクリーン及び駆動システムを通じて映像及び音声を見る。ここで、
図14~16に示されるように、サンプル映像において、それぞれ、映画(STAR WARSのファイトシーン)、ミュージシャンのコンサート、スポーツ中継(サッカーワールドカップ)を見せた。そのうち、
図14は、本願の一実施例に係る19インチのテレビが放送している異なる番組に対する異なる年齢層の視聴者の臨場感の周波数データである。
図15は、本願の一実施例に係る50インチのテレビが放送している異なる番組に対する異なる年齢層の視聴者の臨場感の周波数データである。
図16は、本願の一実施例に係る80インチのテレビが放送している異なる番組に対する異なる年齢層の視聴者の臨場感の周波数データである。
【0044】
上記ステップ9の場合において、電磁式スピーカ(低音スピーカ)に接続されたローパスフィルタのカットオフ周波数は、10kHzから徐々に100Hzに下げられ、基本的には、カットオフ周波数が高いほど、電磁式スピーカが出した音声が主導的な地位を占めていく。したがって、カットオフ周波数を低くすることにより、圧電スピーカの音声の影響が主導的な地位を占めるようになる。視聴者がカットオフ周波数の変化に伴って臨場感を感じた周波数が得られる。
【0045】
上記感知結果により、圧電スピーカ及び電磁式スピーカのカットオフ周波数と視聴者への臨場感との依存度を把握することができる。
【0046】
これらの実験の結果を、
図14~16に纏めると、試聴の傾向のタイプに依存して異なるが、年齢に関わらず、2000Hz~3000Hz以下であれば臨場感を感じることができる。
【0047】
したがって、自発光式表示装置に貼り付けられた変位素子が振動により表示装置を振動させて音声を出す圧電スピーカ、及び同時に駆動する、表示装置と分離した電磁式駆動スピーカシステムでは、上記圧電スピーカと電磁スピーカとの交差周波数が500Hz以上且つ3000Hz以下であることが、画面ぶれを防ぎ、且つ、臨場感を得ることができる周波数条件である。
【0048】
図17~
図24を参照し、上記カットオフ周波数の最適化条件に基づいてOLEDを用いた圧電スピーカの実施例を説明する。以下の説明において、OLED圧電スピーカが音声を発生させる方向を、OLED圧電スピーカの正面側とし、その反対面を背面側として説明する。圧電スピーカは、圧電スピーカ振動子を備え、圧電スピーカ振動子は圧電素子を備える。
【0049】
図17(a)は、圧電スピーカ振動子の構造外観図であり、
図17(b)は、圧電スピーカ振動子の構造が外部電極に接続される模式図であり、
図17(c)は、圧電スピーカ振動子の高圧電界が加えられた構造模式図である。
図18は、本願の一実施例に係る圧電素子がOLEDの背面側に貼り付けられる模式図である。ここで、採用した圧電素子には、チタン酸ジルコン酸鉛の圧電材料が用いられる。圧粉体にされた後、10~20枚の30μmのシートが積層されてから、圧着されて焼成される。焼結温度は1050℃である。第1の外部電極2及び第2の外部電極5はそれぞれ、焼成された第1の圧電素子1の上下表面に印刷して焼成される。第1の外部電極2の一側の部分には、第1の外部電極2に電気的に接続されていない第3の外部電極3が同時に形成され、第3の外部電極3が、
図17(b)に示されるような第1の圧電素子1の側面の電極により、第1の圧電素子1の背面の第2の外部電極5に接続される。第1の外部電極2、第3の外部電極3、第2の外部電極5の焼結温度はいずれも600℃である。そして、
図17(c)に示されるように、上下表面の第1の外部電極2、第2の外部電極5、及び第3の外部電極3の間に高圧電界が加わることにより、第1の圧電素子1が分極され、高圧電界方向4は、第1の外部電極2から第2の外部電極5に指向している。分極された後の第1の圧電素子1は、第1の圧電素子1の上部に位置する第1の外部電極2と、第1の圧電素子1の下部に位置する第2の外部電極5とに電圧が加わることにより、第1の圧電素子1が縦方向に延びる。本実施例においては、焼成後、90mm×30mm×0.5mmの矩形の圧電スピーカ振動子が生成される。
【0050】
図19に示されるように、
図17(a)における圧電スピーカ振動子がOLED表示スクリーンの背面に貼り付けられる。本願に用いられるOLED表示スクリーンの構成は、
図18に示されるような透明ガラス基板9に、ガラス基板側から、透明電極層、有機発光層、反射層が積層された有機エレクトロルミネッセンス(Electro-Luminescence、EL)パネル10が貼り付けられるというものである。ここでは、420mm×240mm×0.7mmのOLEDが用いられている。
図18~
図20を参照して説明し、このOLEDの背面中心部にエポキシ接着剤により第1の圧電素子1が貼り付けられる。
図19は、本願の一実施例に係る圧電スピーカ振動子のリード電極の模式図である。
図20は、本願の一実施例に係る異なる信号状態におけるOLED表示パネルの形態である。この時、
図19に示されるように、第1の圧電素子1の第1の外部電極2には、半田6により第1のリード7が設けられ、さらに、第3の外部電極3には、同様に半田6により第2のリード8が設けられる。第1のリード7と第2のリード8との間に電圧が加わると、第1の圧電素子1が伸張していくが、エポキシ接着剤により固定された面がOLEDに拘束されることから、伸びることができず、そのため、
図20に示されるように、そのうち、
図20(a)は、外部信号入力がないときのOLED表示パネルの形態であり、
図20(b)は、外部信号入力があるときのOLED表示パネルの形態であり、外部信号が入力されると、OLEDが湾曲変形することが分かる。例えば、第1のリード7及び第2のリード8の間に交流電圧が加わることにより、OLEDは、上下に湾曲振動し、空气を振動させて音声を発生させる。
【0051】
このOLEDをホルダに固定し、
図13に示されるデジタルオーディオ処理及び駆動回路を採用する。
図21は、本願の一実施例に係るOLED表示パネルの周波数応答グラフであり、そのうち、
図21におけるA曲線が、このような場合においてハイパスフィルタ(High Pass Filter、HPF)をショートさせて1mの距離で測定された音圧特性である。有效な音声周波数は、およそ300Hzぐらいから6kHz付近である。しかし、A曲線の周波数特性では、高周波の音圧が足りず、聴覚において比較的低い音声が発生する。
図20の湾曲振動の共振周波数は第1の圧電素子1のサイズに由来し、圧電素子のサイズが大きいほど、共振周波数が低くなる。したがって、
図1に示されるように、異なるサイズの第2の圧電素子11が貼り付けられている。この時、第2の圧電素子11のサイズは45mm×15mm×0.5mmである。上記方法によりこのOLEDを駆動するときの音圧特性は、
図21におけるB曲線に示されるようになる。低周波における特性は、
図21におけるA曲線と同じであるが、5kHz~10kHzの音圧が大きくなる。聴覚からいうと、高周波の音声もはっきりと伸びてくることができる。しかし、400Hzで有效な音声を出しているため、OLEDの画像ぶれを確認することができる。そこで、
図13に示されるデジタルオーディオ処理及び駆動回路におけるハイパスフィルタを用いて、第1の圧電素子1、第2の圧電素子11に加わった信号の周波数を一次6dB/Octでカットすると、画面ぶれがなくなる。
【0052】
上記のように、OLEDだけで音声を発生させれば、低周波の音声が聞こえなくなるので、電磁式低音を用いて低周波の補正が行われる。ここで、
図22に示されるような低音反射型スピーカシステム12が用いられている。
図22は、本願の一実施例に係る低音反射型スピーカシステムの構造模式図である。反射性スピーカシステム12は、開口腔13と、サブウーファ14と、筐体15とを備える。これらのうちの低音スピーカは、インピーダンス8Ω、口径160mmのムービングコイル型のものである。
図23は、本願の一実施例に係る低音反射型スピーカシステムの周波数応答グラフである。
図23におけるA曲線には、その周波数特性(1mで測定された)が示されている。
図13に示される駆動回路において、
図21におけるA曲線の周波数特性での1kHz付近の音圧とほぼ等しくなるように、Audio AmpによりSUB WOOWER側への入力がゲイン制御されている。再生帯域は一般的に、20Hz~10kHzの特性を有する。前記した臨場感を得るために、
図23におけるB曲線に示されるように、
図13に示される駆動回路におけるローパスフィルタでは、1kHzからの-6dB/Octの減衰設定が行われている。
【0053】
図24は、本願の一実施例に係る圧電スピーカ及び電磁スピーカシステムを同時に駆動した周波数応答グラフであり、
図13に示される駆動回路においてこれらの圧電スピーカ及び電磁スピーカシステム12を同時に駆動して測定した結果である。20Hzから10kHzの平坦性からは、この圧電スピーカシステムに音声を含む映像信号が加えられて視聴確認が行われており、画面がぶれず、臨場感が充満した視聴を行うことができることが得られる。
【0054】
図25~
図28に示される実施例は、前記実施例における第1の圧電素子1、第2の圧電素子11を用い、1770mm×996mm×0.7mmのOLEDを表示パネルとして採用する。前記実施例に比べて、OLEDのサイズが大きくなるため、
図25に示されるように、第1の圧電素子1及び第2の圧電素子11は、数量が増加して貼り付けが行われている。
図25は、本願の他の実施例2に係る圧電素子が加えられた後のOLED表示パネルの貼り付け方式の模式図であり、OLED表示パネルの長辺方向、短辺方向のそれぞれの3等分の位置に合計で4つの素子が貼り付けられている。
図26は、本願の一実施例に係る複数の圧電素子の構造におけるOLED表示パネルの周波数応答グラフである。前記実施例に比べて、OLED表示パネルの面積が大きくなり、空气の排除容積が増加するため、全体的な音圧が上昇する。また、再生帯域も300Hz付近に下げられる。このOLED表示パネルに音楽信号を有する映像信号が入力され、放送後に画面ぶれを確認する。したがって、前記実施例と同様に、
図13に示される駆動回路におけるハイパスフィルタ(HPF)を用いて、第1の圧電素子1、第2の圧電素子11に加わった信号の周波数を6dB/Octでカットすると、画像ぶれの発生がなくなる。
【0055】
前記実施例と同様に、OLED表示パネルだけで音声を発生させれば、低周波の音声が聞こえなくなるので、低周波の補正に電磁式スピーカが用いられ、例えば、電磁式サブウーファが用いられる。ここでも、
図22に示されるような低音反射型スピーカシステム12が用いられる。
図27は、本願の一実施例に係る圧電スピーカがローパスフィルタリングを採用した後の周波数応答グラフである。
図27における曲線Aには、その周波数特性(1mの距離で測定された)が示されている。親族の実施例と同様に、Audio Ampは、SUB WOOWER側への出力を、
図26の周波数特性での1kHz付近の音圧とほぼ等しくなるように制御している。再生帯域は一般的に、20Hz~10kHzの特性を有する。前記した臨場感を得るために、
図27における曲線Bに示されるように、
図13に示される駆動回路におけるローパスフィルタでは、1kHzからの-6dB/Octの減衰設定が行われている。
【0056】
図28は、本願の一実施例に係る圧電スピーカ及び電磁スピーカシステムを駆動した周波数応答グラフである。すなわち、
図28は、
図13の回路においてこれらの圧電スピーカ及び電磁スピーカシステム12を同時に駆動して測定した結果である。20Hzから10kHzの平坦性からは、大型OLEDを用いる場合も、ぶれなしに臨場感のある映像鑑賞を行うことができることがすでに発見されている。
【0057】
第1の圧電素子1のような、簡単な伸縮変位を発生させる圧電素子を説明したが、
図29~
図33を参照して他の圧電素子の例も説明する。
図29は、本願の他の実施例に係る圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
図29(a)は、他の圧電スピーカ振動子の構造外観図であり、
図29(b)は、他の圧電スピーカ振動子の構造が外部電極に接続される模式図であり、
図29(c)は、他の圧電スピーカ振動子の高圧電界が加えられた構造模式図である。
図29(b)に示されるように、第1の圧電素子1(例えば、圧電セラミックス板であってよい)の上下両面には、導通しない第1の外部電極2がそれぞれ設けられている。
図29(c)に示されるように、回路が接続されて上下表面の第1の外部電極2に高圧が加わると、高圧電界方向4は、第1の圧電素子1の上表面の第1の外部電極2から下表面の第1の外部電極2に指向するように示される。
図30は、本願の一実施例に係る異なる電圧における分極された後の圧電素子の歪みの模式図である。
図30(a)は、分極された後の圧電素子の非通電時の構造模式図であり、
図30(b)は、分極された後の圧電素子の通電時の歪みの模式図である。
図30(a)に示されるように、偏波方向16を参照して、2つの第1の圧電素子1が、導電性を有する接着剤を採用して、それぞれ金属薄板17の上下の2つの表面に貼り付けられ、回路が形成される。回路の通電時、
図30(b)に示されるように、金属薄板17の上表面の第1の圧電素子1が収縮し、金属薄板17の下表面の第1の圧電素子1が伸張する。このような作用により、2つの第1の圧電素子1は、金属薄板17に境界面が形成され、且つ、それぞれ湾曲形状に変形する。この作用は、電圧が加わる方向を逆にすることにより、逆の形状に変形するようになる。
図31は、本願の一実施例に係る分極された後の圧電素子に交流電圧が加わるときの変位歪みの模式図である。
図31からもわかるように、金属薄板17の上表面及び下表面の第1の圧電素子は、異なる方向に繰り返して伸縮するために、湾曲振動が発生している。金属薄板17及びその上下表面に挟んだ第1の圧電素子1は共に、1つの振動素子を構成している。
図32は、本願の一実施例に係る振動素子が支持部材を中心に上下に湾曲変形する模式図である。
図32に示されるように、支持部材18は、この振動素子の2つの端部に固定されている。これにより、振動素子は、支持部材18を中心に上下に湾曲振動する。
図32(a)は、支持部材を中心とした振動素子の非通電時の構造示意図であり、
図32(b)は、支持部材を中心とした振動素子の通電時の歪みの模式図である。
図33は、本願の一実施例に係る支持部材を中心とした振動素子に交流電圧が加わるときの変位歪みの模式図である。
図33に示されるように、振動素子の支持部材18がOLED表示パネルの背面に接続されて駆動信号が入力されると、湾曲振動は、支持部材18を通じてOLED表示パネルの表面に伝わり、且つ、前記実施例と同様に、OLED表示パネルの表面に振動が発生する。したがって、第1の圧電素子の形態は、湾曲振動を自動的に誘導するユニモルフ型構造及びバイモルフ型構造を採用してもよい。
【0058】
本願の実施例は、上記スピーカシステムに適用されるフラットパネル圧電スピーカ振動子を提供し、
図34は、本願の他の実施例に係るフラットパネル圧電スピーカ振動子の構造模式図である。
図34に示されるように、単一の圧電セラミックスシートが9層設けられており、5層目は内部隔離層であり、内部隔離層より上の単一の圧電セラミックスシートの分極方向は、使用時に加わる電界の方向と逆であり、これにより、短縮変位が発生し、内部隔離層より下の単一の圧電セラミックスシートの分極方向は、使用時に加わる電界の方向と同じであり、これにより、伸縮変位が発生し、さらに、全体的な変位量が増加する。
【0059】
図35及び
図36は、本願の他の実施例に係るフラットパネル圧電スピーカ振動子の構造模式図である。そのうち、
図35及び
図26に示される圧電セラミックスシートのアスペクト比が異なっている。
図35、36に示されるように、フラットパネル圧電スピーカ振動子における圧電セラミックスシートは長方形をなしており、アスペクト比が3:1~10:1である。前記フラットパネル圧電スピーカ振動子は、中高周波発声に用いられるフラットパネル圧電スピーカ振動子と、中低周波発声に用いられるフラットパネル圧電スピーカ振動子とを備える。そのうち、中高周波発声に用いられるフラットパネル圧電スピーカ振動子における圧電セラミックスシートの面積は、中低周波発声に用いられるフラットパネル圧電スピーカ振動子における圧電セラミックスシートの面積の1/10である。
【0060】
分極時に、3-1に加わる電極は負極であり、3-2のは正極であり、3-3のは接地GND電極であり、これにより、分極方向は、
図34に示されるように、1、3、7、9層目の圧電セラミックスシートにおける分極方向が下向きで、2、4、6、8層目の圧電セラミックスシートにおける分極方向が上向きであることが保証される。圧電セラミックスが正常に機能するとき、負極3-1、正極3-2は、導電リードを採用して半田付けられてオンされ、これにより、電界正極が導入され、3-3は、GND電極回路がアクセスされるものである。圧電セラミックスシートの内部に発生した電界の方向は、
図34に示されるように、1、3、6、8層目の圧電セラミックスシートにおける電界の方向が下向きで、2、4、7、9層目の圧電セラミックスシートにおける電界の方向が上向きである。これにより、5層目の内部隔離層の上に位置する上半分の圧電セラミックスシートの分極方向は、加わる電界の方向と逆であり、5層目の内部隔離層の下に位置する下半分の圧電セラミックスシートの分極方向は、加わる電界の方向と同じであり、これにより、変位形態が発生し、変位量が増加し、これにより、位相振幅が増加して、発音音量が向上する。
【0061】
前記フラットパネル圧電スピーカ振動子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)又は他のシリーズの無鉛又は鉛含有材料を採用して製造され、積層工程は、プレス機又は或等方圧機器を採用し、100~300MPa/cm2の圧力を採用してプレスされてなり、前記フラットパネル圧電スピーカ振動子は、内部電極が銀/パラジウム(Ag/Pd)の金属材料を採用して製造されており、外部電極が金Au、銀Agなどの金属材料を用いて製造されている。
【0062】
本願に係るスピーカシステムは、体積が小さく、映像と音声とのディストーションが小さく、映像と音声との空間的な偏差を減少し、さらに、よりライブ感を有する映像表示を提供することができる。