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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】塗装システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20250225BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20250225BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20250225BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20250225BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20250225BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20250225BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C11/00
B05C5/00 101
B05B12/00 A
B05B13/04
B25J13/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024196036
(22)【出願日】2024-11-08
【審査請求日】2024-11-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7562901(JP,B1)
【文献】特開2019-177690(JP,A)
【文献】特開2024-92320(JP,A)
【文献】特開2023-145057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00-21/00
B05C 5/00- 5/04
B05B 12/00-12/14
B05B 13/00-13/06
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットを備える塗装システムであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルを有する塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドでの塗装がなされた塗装部位の塗装データを取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段の作動を制御すると共に、前記塗装ヘッドおよび前記ロボットアームの作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記画像取得手段を作動させて、塗装実行前に、測定用画像を前記画像取得手段で走査して、前記画像取得手段の振動状態が反映された測定画像データを取得し、
前記画像取得手段で取得された前記測定画像データに基づいて、前記塗装ヘッドから吐出された液滴の着弾位置のずれを解消するための補正用塗装データを作成し、
その補正用塗装データに基づいて前記ロボットアームおよび前記塗装ヘッドの駆動制御を実行する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記画像取得手段は、前記塗装部位の3次元塗装データを取得する3次元スキャナであり、
前記制御部は、前記塗装実行前における前記測定用画像の計測に基づいて、前記塗装部位における平面方向の前記着弾位置のずれと共に、前記塗装部位における厚み方向の前記着弾位置のずれを解消するための前記補正用塗装データを作成する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記画像取得手段は、前記塗装ヘッドに固定されている、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記制御部は、前記振動状態とは逆位相で、前記補正用塗装データを作成する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記振動状態の影響が塗装部位のエッジに及ぶ場合において、前記塗装ヘッドのノズル形成面のノズルがある範囲のうち、前記塗装ヘッドの副走査方向の端部から所定範囲内の前記ノズルを補正用ノズルとし、その所定範囲よりも前記塗装ヘッドの中央側に位置する前記ノズルを通常塗装用ノズルとし、
前記制御部は、
前記塗装ヘッドが前記振動状態ではないとしたときに、前記塗装部位へ塗装を行うためのデータである塗装データのエッジが前記補正用ノズルには差し掛からない状態としつつ、
前記塗装データのエッジにおける振動を、前記補正用ノズルで吸収するように前記補正用塗装データを作成する、
ことを特徴とする塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、以下の構成が開示されている。この特許文献1に開示の塗装ロボットにおいては、複数のチェックラインを有するテストパターンに基づいて、ノズルの吐出不良を判定する、といった技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-009853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成では、複数の撮像部から得られた撮像データから、3次元画像データを生成することは開示されているものの、3次元スキャナの振動等の揺らぎに基づく、吐出不良の解消を図る点までは開示されていない。ここで、揺らぎが存在することが不明のまま塗装ヘッドから液滴を吐出すると、液滴が本来の着弾位置からずれた位置に着弾されてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、画像取得手段に振動等の揺らぎが生じていても、塗装品質を向上させることが可能な塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットを備える塗装システムであって、塗料の液滴を吐出する複数のノズルを有する塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、塗装ヘッドでの塗装がなされた塗装部位の塗装データを取得する画像取得手段と、画像取得手段の作動を制御すると共に、前記画像取得手段から送信された前記画像データに基づいて、前記塗装ヘッドおよび前記ロボットアームの作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、画像取得手段を作動させて、塗装実行前に、測定用画像を画像取得手段で走査して、画像取得手段の振動状態が反映された測定画像データを取得し、画像取得手段で取得された測定画像データに基づいて、塗装ヘッドから吐出された液滴の着弾位置のずれを解消するための補正用塗装データを作成し、その補正用塗装データに基づいてロボットアームおよび塗装ヘッドの駆動制御を実行する、ことを特徴とする塗装システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、画像取得手段に振動等の揺らぎが生じていても、塗装品質を向上させることが可能な塗装システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
図2図1に示す塗装ロボットを備える塗装システムの概略的な構成を示す図である。
図3図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドユニットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
図4図3に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
図5図1に示す塗装ロボットにおいて、塗装に際して補正用塗装データを作成して塗装を実行する際の制御に関するフローを示す図である。
図6図1に示す塗装ロボットが備える3次元スキャナが走査する測定用画像の一例を示す図である。
図7図1に示す塗装ロボットが備える3次元スキャナでの走査により得られる測定画像データを示す図である。
図8図7に示す測定画像データに基づいて作成された補正用塗装データを示す図である。
図9図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドにおける通常塗装用ノズルおよび補正用ノズルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る塗装システム1および塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は図3における右側、X2側は図3における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は図3における紙面上側、Y2側は図3における紙面下側とする。
【0010】
(1.塗装ロボット10の概要について)
本実施の形態の塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0011】
また、本実施の形態の塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0012】
(1-1.塗装システム1および塗装ロボット10の全体構成について)
図1は、本発明の一実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。図2は、図1に示す塗装ロボット10を備える塗装システム1の概略的な構成を示す図である。図2に示すように、塗装システム1は、塗装ロボット10と、画像処理装置200とを備えている。
【0013】
(1-2.塗装ロボット10について)
塗装ロボット10は、図1に示すように、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0014】
(1-3.ロボット本体20について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、第1~第6回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるモータM1~M6と、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0015】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、モータM1(図2参照)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0016】
また、脚部23の上端には、モータM2の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、モータM3の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0017】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、モータM4の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、モータM5およびモータM6の駆動によって、たとえば2つ等の複数の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0018】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0019】
(1-4.塗料供給部40について)
図2に示すように、塗装システム1および塗装ロボット10には、塗料供給部40が設けられている。塗料供給部40は、塗装ヘッドユニット50に向けて塗料を供給するための部分である。このため、塗料供給部40は、不図示の塗料貯留部から塗料を供給するための供給路41と、不図示のポンプと、不図示の弁等と、吐出されなかった塗料を回収するための戻り流路42を備えている。
【0020】
なお、塗料が塗装ロボット10の外部から供給される構成を採用する場合には、塗装ロボット10は、塗料を貯留する部分を備えなくても良く、塗装ロボット10の外部に塗料を貯留する部分を備えても良い。
【0021】
(1-5.塗装ヘッドユニット50について)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。図3は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。図3に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、塗装ヘッド53を始めとする種々の構成が内蔵されている。なお、塗装ヘッド53には、塗料を吐出するための多数のノズル54が設けられている。
【0022】
図3に示すように、塗装ヘッド53のうち、塗料を吐出する側の面(ノズル形成面52)には、複数のノズル54の開口部分が露呈している。なお、以下の説明では、ノズル54の開口部分も、ノズル54と称呼する。
【0023】
また、ノズル形成面52においては、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0024】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0025】
また、図3に示す構成では、第1ノズル列55Aのノズル54の配列と、第2ノズル列55Bのノズル54の配列とは、塗装ヘッド53の短手方向(Y方向;主走査方向)に対して傾斜している。しかしながら、このようなノズル54の配列を採用しなくても良い。例えば、ノズル列55は、塗装ヘッド53の短手方向(Y方向)に沿うように配置されていても良い。また、ノズル列55は、塗装ヘッド53の短手方向(Y方向;主走査方向)において、第1ノズル列55Aと第2ノズル列55Bとに分けられずに1つのノズル列55であっても良く、3つ以上のノズル列に分けられていても良い。
【0026】
上記の塗装ヘッド53の内部には、不図示の塗料を流すための流路が設けられている。また、塗装ヘッド53の内部には、不図示のノズル加圧室が設けられていて、そのノズル加圧室のいずれかの壁面には、当該ノズル加圧室の体積を変化させて塗料をノズル54から吐出させるための圧電基板62(図2参照)が配置されている。したがって、外部から圧電基板62に電圧を印加することで圧電基板62が伸縮してノズル加圧室の体積が変化し、ノズル54から塗料を吐出可能となっている。
【0027】
なお、塗装ヘッド53は、図3に示す構成には限られない。例えば、図4に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。また、図4に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。
【0028】
たとえば、図3に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して角度αだけ傾斜しているとすると、塗装ヘッド53の長手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して角度αだけ傾斜させるようにすればよい。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、図3に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0029】
(1-6.塗装システム1の制御的な構成について)
次に、塗装システム1の作動を制御するための制御的な構成について説明する。なお、以下に説明する制御的な構成は、制御部に対応する。図2に示すように、塗装ロボット10は、ロボットアーム制御部70と、塗料供給制御部80と、ヘッド制御部90と、主制御部100と、スキャナ制御部110と、位置センサ120と、傾きセンサ130と、3次元スキャナ140とを備えている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続されることで、塗装システム1を構成している。ただし、塗装ロボット10が画像処理装置200の機能を備えるようにしても良い。
【0030】
なお、ロボットアーム制御部70、塗料供給制御部80、ヘッド制御部90、主制御部100、スキャナ制御部110、および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)等のメモリ、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。なお、メモリには、ロボットアーム制御部70におけるメモリ71や、主制御部100におけるメモリ101が含まれるが、これらロボットアーム制御部70および主制御部100は、その他のメモリを備えても良い。
【0031】
塗装ロボット10には、図示を省略する各種のセンサも備えていて、それら各センサからの出力が、ロボットアーム制御部70、塗料供給制御部80、ヘッド制御部90、および主制御部100の何れかに入力される。各種のセンサとしては、上記の位置センサ120、傾きセンサ130および3次元スキャナ140を含み、さらに加速度センサ、角速度センサ、イメージセンサ等が挙げられるが、これら以外のセンサを用いても良い。
【0032】
これらのうち、ロボットアーム制御部70は、上述したモータM1~M6の駆動を制御する部分である。このロボットアーム制御部70は、メモリ71を備えていて、メモリ71には、ロボットティーチングによって作成されたプログラムおよびデータが記憶されている。
【0033】
そして、ロボットアーム制御部70では、メモリ71に記憶されたプログラムやデータ、および画像処理装置200の画像処理部210での画像処理に基づいて、モータM1~M6の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッドユニット50は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。
【0034】
メモリ71には、塗装ヘッド53における塗装可能な塗装幅を勘案したロボットティーチングによって作成された、塗装ヘッド53の軌跡に関するデータ(軌跡データ)、および塗装ヘッド53の傾き等の姿勢に関する姿勢データが記憶されている。なお、メモリ71は、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にメモリ71が存在し、そのメモリ71に対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0035】
また、塗料供給制御部80は、塗装ヘッドユニット50への塗料の供給を制御する部分であり、具体的には、塗料供給部40が備えるポンプや弁等の作動を制御する。なお、塗料供給制御部80は、塗料が供給される塗装ヘッドユニット50に対して、定圧にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁の作動を制御することが好ましい。
【0036】
また、ヘッド制御部90は、画像処理部210での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。このヘッド制御部90は、後述する位置センサ120、傾きセンサ130等の位置を検出する手段によって軌跡データにおける所定の位置に到達したときに、その位置および塗装パスに対応した分割塗装データに基づいて、塗料の吐出を制御する。なお、この場合、塗装部位の膜厚が均一となるように、圧電基板62の駆動周波数を制御してノズル54から吐出されるドット数(液滴の数)を制御したり、圧電基板62に印加する駆動周波数および/または電圧に基づいて、当該圧電基板62の変形量を制御することで、ノズル54から吐出される液滴のサイズを制御する。
【0037】
なお、圧電基板62に印加する駆動周波数に基づいて圧電基板62の変形量を制御することで、液滴サイズの制御を行う場合、当該圧電基板62の固有振動数と一致する駆動周波数にて圧電基板62を駆動させる場合が、液滴サイズが最も大きくなる。このため、印加する駆動周波数が固有振動数からずれるにしたがって、液滴サイズが小さくなるように制御することができる。また、圧電基板62に印加する電圧に基づいて圧電基板62の変形量を制御することで、液滴サイズの制御を行う場合、当該圧電基板62に印加する電圧が高くなるほど、液滴サイズが大きくなるように制御することができる。
【0038】
主制御部100は、上記のモータM1~M6、塗料供給部40および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したロボットアーム制御部70、塗料供給制御部80、ヘッド制御部90に所定の制御信号を送信する部分である。なお、主制御部100は、メモリ101を備えていて、このメモリ101には、3次元スキャナ140で取得された測定画像データD1(図7参照)が記憶される。しかしながら、かかるメモリ101を備えずに、3次元スキャナ140で取得された測定画像データD1を、画像処理装置200のメモリ220に記憶させるようにしても良い。
【0039】
スキャナ制御部110は、3次元スキャナ140の作動を制御する。このスキャナ制御部110は、塗装ロボット10の制御的な構成である制御部内において、例えば主制御部100が代用するようにしても良い。
【0040】
また、位置センサ120は、塗装ヘッド53の現在の位置を検出するセンサである。かかる位置センサ120としては、ロータリエンコーダ、レゾルバ、レーザセンサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。また、傾きセンサ130は、塗装ヘッド53の傾斜角度を検出するセンサである。かかる傾きセンサ130としては、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ等、種々のセンサを用いることが可能である。
【0041】
なお、本実施の形態では、上記の位置センサ120、傾きセンサ130とは異なる、振動センサ150を備えるようにしても良い。この振動センサ150では、3次元スキャナ140(塗装ヘッド53)における振動を検出するよう、塗装ヘッドユニット50のいずれかの部位に取り付けられることが好ましい。
【0042】
また、塗装ロボット10は、3次元スキャナ140を備えている。この3次元スキャナ140は、平面的な2次元データの取得に加えて、高さ(厚み)データの取得も可能とするセンサである。このような3次元スキャナ140としては、LiDAR(ライダー)スキャナ、レーザスキャナ、フォトグラメトリー等が挙げられる。なお、3次元スキャナ140は、画像取得手段に対応する。
【0043】
この3次元スキャナ140は、例えば塗装ヘッドユニット50に取り付けられている。したがって、後述する塗装部位の3次元データを取得する場合には、ロボットアームR1を作動させることになる。しかしながら、3次元スキャナ140は、塗装ヘッドユニット50とは別体的に設けられていても良い。このような構成としては、例えば、3次元スキャナ140は、塗装ヘッドユニット50とは別途のロボットアームR1の所定部位に設けるようにしても良い。また、塗装ロボット10に3次元スキャナ140を取り付けるための専用のアームを設け、そのアームに3次元スキャナ140を取り付ける構成を採用しても良い。
【0044】
また、塗装システム1には、画像処理装置200が設けられている。画像処理装置200は、画像処理部210と、メモリ220とを備えている。
【0045】
画像処理部210は、塗装ヘッド53が塗装を実行する経路である塗装パス毎の画像データを作成する部分である。
【0046】
また、メモリ220は、主制御部100から送信された測定画像データD1を記憶すると共に、画像処理部210で作成された補正用塗装データC1を記憶する等、画像データやその他のデータを記憶する部分である。
【0047】
なお、画像処理装置200は、たとえばコンピュータが対応するが、そのコンピュータは、塗装ロボット10の一部の構成要素であっても良く、塗装ロボット10とは別体的に設けられていても良い。画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられている場合、画像処理装置200と塗装ロボット10の間で、有線通信または無線通信により、データの送受信が行われる。なお、画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられていても、塗装ロボット10の概念に含めるようにしても良く、塗装ロボット10の概念に含めないようにしても良い。
【0048】
(2.塗装に際して、補正用塗装データを作成して塗装を実行する際の制御に関して)
次に、上述のような構成の塗装システム1および塗装ロボット10において、塗装に際して、補正用塗装データを作成して塗装を実行する際の制御について説明する。なお、補正用塗装データとは、塗装ヘッド53の振動による液滴の着弾位置のずれを抑えるように、塗装ヘッド53の振動状態(振動の振幅、周波数、波長等)を反映させた塗装用の画像データである。
【0049】
かかる補正用塗装データを作成する際の制御に関して、図5のフローチャートに基づいて説明する。まず、主制御部100は、図6に示すような測定用画像S1を3次元スキャナ140で読み取るように、ロボットアーム制御部70に指令を与えると共に、3次元スキャナ140を作動させる(ステップS01)。それにより、ロボットアームR1が作動して、塗装ヘッド53に取り付けられている3次元スキャナ140が測定用画像S1を走査する(ステップS02)。
【0050】
ここで、測定用画像S1の一例を図6に示す。なお、測定用画像S1とは、3次元スキャナ140での走査の際に撮像される、塗装済みの部分である。この測定用画像S1は、図6に示す状態では、細長の矩形状となっているが、その形状は、どのようなものであっても良い。また、測定用画像S1は、厚み方向に凹凸を有していても良い。
【0051】
このような、図6に示す測定用画像S1に対し、主制御部100からの指令により、ロボットアーム制御部70は、ロボットアームR1を作動させると共に、スキャナ制御部110は3次元スキャナ140を作動させる。そして、測定用画像S1を3次元スキャナ140で走査させて、図7に示すような測定画像データD1を取得する(ステップS03)。
【0052】
かかる測定画像データD1には、現在の塗装ヘッド53の物理的な状態(気温や圧力による塗料の粘度、塗装ロボット10の各部位の機械的な特性等)が、振動となって反映される状態となる。
【0053】
ところで、上記の図6に示す測定用画像S1においては、そのエッジS1aは、直線状となっている。したがって、塗装ヘッド53に振動が生じていない場合、その塗装ヘッド53に取り付けられている3次元スキャナ140で測定用画像S1を走査すると、その走査によって得られる測定画像データD1(図7参照)においては、そのエッジD1aは、直線状となるはずである。
【0054】
しかしながら、ロボットアームR1その他の振動の影響で、塗装ヘッド53には振動が生じている場合が多い。このため、3次元スキャナ140の走査により得られる測定画像データD1には、例えば図7に示すように、塗装ヘッド53の振動が反映される。このとき、測定画像データD1のエッジD1aに沿って、例えば塗装ヘッド53が走査する方向(主走査方向)に対応する方向(図7における縦方向)に移動すると、所定の周期で振動する波形状となる。
【0055】
なお、図7に示す測定画像データD1において、塗装ヘッド53が走査する方向(主走査方向)に対応する方向(図7における縦方向)をy方向とし、その主走査方向と直交する副走査方向に対応する方向(図7における横方向)をx方向とする。このとき、測定画像データD1においては、主として、x方向に、塗装ヘッド53の振動の影響が反映されている。しかしながら、測定画像データD1においては、主走査方向であるy方向(図7における縦方向)や、厚み方向であるz方向に、振動の影響が反映される場合もある(この点は後述)。
【0056】
以上のように、測定画像データD1に振動の影響が反映されている場合においては、塗装用の画像データに基づいて、塗料の液滴を塗装ヘッド53のノズル54から吐出させると、着弾位置が、その振動の影響の分だけ、ずれてしまう。
【0057】
そこで、このようなずれを解消するために、主制御部100は、図7に示すような、取得された測定画像データD1を画像処理装置200へ送信する(ステップS04)。そして、画像処理装置200の画像処理部210では、塗装用の画像データに対し、上記の塗料の着弾位置のずれを解消するための画像処理(補正)を行い、その結果として、図8に示すような、補正用塗装データC1を作成する(ステップS05)。かかる図8に示す補正用塗装データC1では、測定画像データD1において影響が生じている振動とは逆位相の振動を与えるように、塗装用の画像データに対する補正(画像処理)を行っている。
【0058】
ここで、測定用画像S1の走査により測定画像データD1を取得した場合において、その測定用画像S1の所定の位置P1において、振動の影響によって+x1の位置ずれが生じていることを考える(図7参照)。このとき、測定用画像S1と同じ形状の塗装部位を形成することを考える。このとき、補正用塗装データC1では、上記の所定の位置P1での+x1の位置ずれを解消するべく、-x1だけ位置をずらすように処理を行う。すなわち、測定画像データD1において生じている振動とは逆位相の振動を与えるようにして、塗装のための補正用塗装データC1を作成している。
【0059】
以上のようにして作成された補正用塗装データC1を、画像処理装置200から主制御部100へと送信し、補正用塗装データC1をメモリ101に記憶する(ステップS06)。そして、塗装ロボット10においては、主制御部100の指令により、ロボットアーム制御部70は、塗装すべき所定の位置へと塗装ヘッド53を移動させるように、ロボットアームR1の作動を制御する。また、主制御部100の指令により、塗料供給制御部80は、補正用塗装データC1に基づいて、ノズル54から液滴を吐出する。すなわち、塗装部位への塗装を実行する(ステップS10)。
【0060】
なお、上記のように、補正用塗装データC1を作成した場合であっても、位置ずれが生じることも考えられる。すなわち、振動の影響を考慮しない通常の塗装であれば、位置センサ120等での測定により、液滴の着弾位置の精度を高めることができる。しかしながら、振動が生じている場合においては、同じ位置に液滴を着弾させようとしても、振動の振幅が+x1となる時間t1では+x1だけ位置ずれが生じ、また振動の振幅が-x2となる別の時間t2では-x2だけ位置ずれが生じるなど、位置センサ120等での位置の測定のみでは定まらない。
【0061】
また、塗装ヘッド53に振動が生じている場合において、その振動状態のどのタイミングで、塗装ヘッド53が移動し始めたのかも、通常は不明である。
【0062】
そこで、実際に塗装を行う場合には、次のようにしても良い。すなわち、塗装を開始するのに際して、所定の待機位置に塗装ヘッド53を待機させる(ステップS07)。そして、この塗装ヘッド53の待機位置への待機状態においては、傾きセンサ130(振動センサ150が存在する場合には振動センサ150)等のセンサが、塗装ヘッド53の振動状態を計測する(ステップS08)。
【0063】
かかる振動の計測において、塗装ヘッド53の振動が所定の位相に到達した際に、ロボットアーム制御部70は、ロボットアームR1を作動させて、塗装ヘッド53を塗装部位へと移動させる(ステップS09)。このようにすることで、本来、塗装ヘッド53での塗装において、振動の影響を解消するはずが、それとは逆に振動の影響が増幅されてしまうのを抑制可能となる。
【0064】
なお、ステップS08の振動計測においては、ステップS08の振動状態の計測で計測された周波数に基づいて、塗装ヘッド53の移動速度を調整するのが好ましい。このように塗装ヘッド53の移動速度の調整を行う場合、塗装ヘッド53の振動状態とは逆位相となるように作成された補正用塗装データC1の位相がずれてしまうのを抑制可能となる。
【0065】
また、塗装ヘッド53の振動は、副走査方向であるx方向に沿ってのみ振動することは稀であり、その振動方程式は、xyzの3次元空間内で、それぞれx方向成分、y方向成分、およびz方向成分を有するのが通常である。
【0066】
したがって、測定画像データD1において生じている振動とは逆位相の振動を与えるよう、補正用塗装データC1を作成する場合には、x方向成分のみならず、y方向成分およびz方向成分についても、夫々の方向における振動とは逆位相の振動を与えるように、測定画像データD1の補正(画像処理)を行って、補正用塗装データC1を作成するのが好ましい。このように、測定画像データD1において生じているx方向、y方向およびz方向のそれぞれの方向の振動とは逆位相の振動を与えるようにして、補正用塗装データC1を作成することで、主走査方向であるy方向や、厚み方向であるz方向においても、塗装の際に振動の影響を低減することができる。
【0067】
また、塗装ヘッド53における振動状態が、塗装部位のエッジに及ぶ場合においては、全てのノズル54から液滴を吐出させるような塗装データを、振動状態のない通常の塗装において作成していたのでは、塗装ヘッド53の振動状態の解消が不能となる場合がある。なぜならば、塗装ヘッド53の振動によって、本来塗装すべき部位に、ノズル54が存在しない(位置していない)状態となってしまう事態が考えられるためである。
【0068】
そこで、塗装用の補正用塗装データC1を、画像処理装置200(画像処理部210)で作成するのに際しては、図9に示すように、副走査方向の端部から所定範囲内のノズル54を補正用ノズル54Cとする。一方、副走査方向の端部から所定範囲よりも、塗装ヘッド53の中央側に位置するノズル54を通常塗装用ノズル54Nとする。
【0069】
そして、画像処理装置200(画像処理部210)での画像処理においては、塗装ヘッド53が振動状態ではないとしたときに、塗装部位へ塗装を行うためのデータである塗装データE1のエッジE1aが補正用ノズル54Cには差し掛からない状態とする。また、塗装データE1のエッジE1aにおける振動を、補正用ノズル54Cで吸収するように塗装用の補正用塗装データC1を作成する。このようにすることで、塗装ヘッド53の振動の際に、その振動の振幅は、補正用ノズル54Cで吸収することが可能となる。
【0070】
(3.変形例)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0071】
上述の実施の形態では、画像取得手段として、3次元スキャナ140を用いる場合について説明している。しかしながら、画像取得手段は、3次元スキャナ140に限られるものではない。たとえば、CCD(Charge-Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いた、2次元的なカメラや、所定方向に走査可能なラインセンサを用いるようにしても良い。
【0072】
また、3次元スキャナ140としては、例えば、2次元データを取得可能な通常のカメラを複数組み合わせることで、3次元データを取得可能な構成とする場合、これら複数のカメラの組み合わせが、本発明でいう3次元スキャナ140に該当する。
【0073】
また、上述の実施の形態においては、例えば異常なモータ振動が発生する等、何等かの異常要因により、塗装ヘッド53の振動状態が変化した、と推定される場合もある。そこで、図7に示すような測定画像データD1を新たに取得した場合において、その新たな測定画像データD1を、過去に取得した測定画像データD1と比較して、異常検知に使用することも可能である。
【0074】
また、上述の実施の形態においては、新たに取得した測定画像データD1を解析した際に、過去に取得した測定画像データD1と比較して、明らかに大きな振幅等の異常値を検出することも考えられる。このような異常値の検出を、例えば塗装ロボット10がアラートを出す等の異常検出に使用するようにしても良く、その異常検出によって塗装を中止するようにしても良い。それにより異常状態での塗装を避けて、補正用塗装データC1を活用した塗装の成功確率を高めるようにしても良い。
【0075】
(4.付記)
上述した実施の形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
[1]すなわち、
車両の所定部位への塗装を行う塗装システム1であって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズル54を有する塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、
塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、
塗装ヘッド53での塗装がなされた塗装部位の塗装データを取得する3次元スキャナ140(画像取得手段)と、
3次元スキャナ140(画像取得手段)の作動を制御すると共に、塗装ヘッド53およびロボットアームR1の作動を制御する制御部(主制御部100、ロボットアーム制御部70、ヘッド制御部90、スキャナ制御部110)と、を備え、
制御部(主制御部100、ロボットアーム制御部70、ヘッド制御部90、主制御部100)は、
3次元スキャナ140(画像取得手段)を作動させて、塗装実行前に、測定用画像S1を3次元スキャナ140(画像取得手段)で走査して、3次元スキャナ140(画像取得手段)の振動状態が反映された測定画像データD1を取得し、
3次元スキャナ140(画像取得手段)で取得された測定画像データD1に基づいて、塗装ヘッド53から吐出された液滴の着弾位置のずれを解消するための補正用塗装データC1を作成し、
その補正用塗装データC1に基づいてロボットアームR1および塗装ヘッド53の駆動制御を実行する。
【0076】
このように、3次元スキャナ140(画像取得手段)の振動状態(揺らぎ)の計測から、その振動状態(揺らぎ)に基づく着弾位置のずれの解消を図る補正用塗装データC1を作成することで、塗装ヘッド53から吐出される液滴の着弾位置のずれの解消を図ることが可能となる。それにより、振動状態(揺らぎ)の影響が解消された、高精細な塗装が可能となる。
【0077】
[2]また、上記の実施の形態においては、上記の[1]に記載の内容に加え、
画像取得手段は、塗装部位の3次元塗装データを取得する3次元スキャナ140であり、
制御部(主制御部100、ロボットアーム制御部70、ヘッド制御部90、スキャナ制御部110)は、塗装実行前における測定用画像S1の計測に基づいて、塗装部位における平面方向の着弾位置のずれと共に、塗装部位における厚み方向の着弾位置のずれを解消するための補正用塗装データC1を作成する、ようにしても良い。
【0078】
このように、画像取得手段として3次元スキャナ140を用い、その3次元スキャナ140での測定用画像S1の計測に基づいて、補正用塗装データC1を作成することで、塗装部位の平面方向における液滴の着弾位置のずれのみならず、塗装部位の厚み方向における液滴の着弾位置のずれも解消することが可能となる。そのため、振動状態(揺らぎ)の影響が3次元的に解消された、高精細な塗装が可能となる。
【0079】
[3]また、上記の実施の形態においては、上述した[1]と[2]、またはそれらの組み合わせに記載の内容に加え、
3次元スキャナ140(画像取得手段)は、塗装ヘッド53に固定される、ようにしても良い。
【0080】
このように、塗装ヘッド53に3次元スキャナ140が固定されていることで、塗装ヘッド53の振動状態を高精度に測定することが可能となる。それにより、振動状態(揺らぎ)に基づく着弾位置のずれを高精度に予測可能となり、揺らぎの影響が解消された、高精細な塗装が可能となる。
【0081】
[4]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[3]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、
制御部(主制御部100、ロボットアーム制御部70、ヘッド制御部90、スキャナ制御部110)は、振動状態とは逆位相で、前記補正用塗装データを作成する、ようにしても良い。
【0082】
このように、振動状態とは逆位相で、補正用塗装データC1を作成することで、振動状態(揺らぎ)の影響が解消された、高精細な塗装が可能となる。
【0083】
[5]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[4]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、
振動状態の影響が塗装部位のエッジに及ぶ場合において、塗装ヘッド53のノズル形成面52のノズル54がある範囲のうち、塗装ヘッド53の副走査方向の端部から所定範囲内のノズル54を補正用ノズル54Cとし、その所定範囲よりも塗装ヘッド53の中央側に位置するノズル54を通常塗装用ノズル54Nノズルとし、
制御部(主制御部100、ロボットアーム制御部70、ヘッド制御部90、スキャナ制御部110)は、
塗装ヘッド53が振動状態ではないとしたときに、塗装部位へ塗装を行うためのデータである塗装データのエッジが補正用ノズル54Cには差し掛からない状態としつつ、
塗装データのエッジにおける振動を、補正用ノズル54Cで吸収するように補正用塗装データC1を作成する、ようにしても良い。
【0084】
このように塗装することで、通常塗装用ノズル54Nからの液滴の吐出により塗装部位の塗装を実行するものの、その外側のノズル54を補正用ノズル54Cとして塗装を実行することで、塗装ヘッド53の振動の際に、その振動の振幅は、補正用ノズル54Cで吸収することが可能となる。そのため、液滴の着弾位置のずれの影響を良好に解消することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1…塗装システム、10…塗装ロボット、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、23…脚部、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、40…塗料供給部、41…供給路、42…戻り流路、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、54C…補正用ノズル、54N…通常塗装用ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、62…圧電基板、70…ロボットアーム制御部(制御部の一部に対応)、71…メモリ、80…塗料供給制御部、90…ヘッド制御部(制御部の一部に対応)、100…主制御部(制御部の一部に対応)、101…メモリ、110…スキャナ制御部(制御部の一部に対応)、120…位置センサ、130…傾きセンサ、140…3次元スキャナ、150…振動センサ、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…メモリ、C1…補正用塗装データ、D1…測定画像データ、D1a…エッジ、E1…塗装データ、E1a…エッジ、M1~M6…モータ、R1…ロボットアーム、S1…測定用画像、S1a…エッジ
【要約】
【課題】画像取得手段に振動等の揺らぎが生じていても、塗装品質を向上させることが可能な塗装システムを提供する。
【解決手段】塗装システム1は、塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装部位の塗装データを取得する画像取得手段と、3次元スキャナ140の作動を制御すると共に、塗装ヘッド53およびロボットアームR1の作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、画像取得手段を作動させて、塗装実行前に、測定用画像を画像取得手段で走査して、画像取得手段の振動状態が反映された測定画像データを取得し、画像取得手段で取得された測定画像データに基づいて、液滴の着弾位置のずれを解消するための補正用塗装データを作成し、その補正用塗装データに基づいてロボットアームおよび塗装ヘッドの駆動制御を実行する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9