(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-21
(45)【発行日】2025-03-04
(54)【発明の名称】通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20250225BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20250225BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20250225BHJP
H04L 41/16 20220101ALI20250225BHJP
G06N 3/094 20230101ALI20250225BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W24/08
H04W88/18
H04L41/16
G06N3/094
(21)【出願番号】P 2024197160
(22)【出願日】2024-11-12
【審査請求日】2024-11-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特許第7521145(JP,B1)
【文献】特許第7541207(JP,B1)
【文献】特許第7578859(JP,B1)
【文献】特開2021-118416(JP,A)
【文献】特表2021-525933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04L41/00-43/55
H04W4/00-99/00
G06N3/094
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信エリア間を移動する複数の通信端末の通信を管理する通信管理装置であって、
各通信エリアに在圏する間の各通信端末の通信量を含む、前記複数の通信エリアでの前記各通信端末の通信量データを収集するように構成された収集部と、
収集された前記各通信端末の通信量データに基づいて、前記各通信端末が移動した前記複数の通信エリアにおける前記各通信端末の前記通信量の合計を求め、求めた前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを選択するように構成された選択部と、
選択された、前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを真の通信量データとして、前記真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器と、前記生成器によって生成された前記疑似通信量データと前記真の通信量データとを識別する識別器とを有する生成モデルの敵対的学習を行うように構成された学習部と、
前記学習部によって構築された学習済み生成器を通信管理情報として前記複数の通信端末に通知するように構成された通知部と
を備える通信管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記収集部は、前記各通信端末が、前記各通信エリアに移動した際に発信する位置登録要求信号を契機として、前記各通信端末の前記通信量データを収集する
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記複数の通信端末は、共通の識別情報が割り当てられた複数の通信端末である
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の通信管理装置において、
前記収集部は、コアネットワークが備えるユーザプレーン機能から、前記共通の識別情報が割り当てられた前記複数の通信端末の各々の前記通信量データを収集する
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の通信管理装置において、
前記疑似通信量データは、前記真の通信量データのデータ分布との統計的な距離が最小となるデータ分布を有する
ことを特徴とする通信管理装置。
【請求項6】
複数の通信エリア間を移動する複数の通信端末の通信を管理する通信管理方法であって、
各通信エリアに在圏する間の各通信端末の通信量を含む、前記複数の通信エリアでの前記各通信端末の通信量データを収集する収集ステップと、
収集された前記各通信端末の通信量データに基づいて、前記各通信端末が移動した前記複数の通信エリアにおける前記各通信端末の前記通信量の合計を求め、求めた前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを選択する選択ステップと、
選択された、前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを真の通信量データとして、前記真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器と、前記生成器によって生成された前記疑似通信量データと前記真の通信量データとを識別する識別器とを有する生成モデルの敵対的学習を行う学習ステップと、
前記学習ステップで構築された学習済み生成器を通信管理情報として前記複数の通信端末に通知する通知ステップと
を備える通信管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の通信管理方法において、
前記収集ステップは、前記各通信端末が、前記各通信エリアに移動した際に発信する位置登録要求信号を契機として、前記各通信端末の前記通信量データを収集する
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の通信管理方法において、
前記複数の通信端末は、共通の識別情報が割り当てられた複数の通信端末である
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の通信管理方法において、
前記収集ステップは、コアネットワークが備えるユーザプレーン機能から、前記共通の識別情報が割り当てられた前記複数の通信端末の各々の前記通信量データを収集する
ことを特徴とする通信管理方法。
【請求項10】
請求項6に記載の通信管理方法において、
さらに、前記複数の通信端末の各々が、
通知された前記通信管理情報の前記学習済み生成器を取得する取得ステップと、
前記学習済み生成器を用いて、前記真の通信量データに類似する前記疑似通信量データを生成する生成ステップと、
生成された前記疑似通信量データに基づいて、各通信エリアでのデータの送信を制御する通信ステップと
を備える通信管理方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載の通信管理装置と、
前記複数の通信端末と
を備える通信管理システムにおいて、
前記複数の通信端末の各々は、
前記通信管理装置から通知された前記通信管理情報の前記学習済み生成器を取得するように構成された取得部と、
前記学習済み生成器を用いて、前記真の通信量データに類似する前記疑似通信量データを生成するように構成された生成部と、
生成された前記疑似通信量データに基づいて、各通信エリアでのデータの送信を制御するように構成された通信部と
を備える通信管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル通信ネットワークに接続するIoT端末の数が増加しており、特に移動するIoT端末の利用も増加している。例えば、コネクテッドカーなどに実装される5G等の通信規格に対応する通信モジュールは、インターネットを通じてデータセンターと接続する。このような通信モジュールは、モバイル通信ネットワークを経由してインターネットを接続することで、様々な情報管理や関連サービスの提供を実現している。しかし、IoT端末が通信エリア間を移動する場合、移動先の通信エリアが混雑している場合がある。そこで、例えば、特許文献1は、移動中の通信端末に対して、ネットワークの混雑状況に応じて動的にリソースを割り当て、スループットを最適化する技術を開示している。
【0003】
特許文献1が開示する通信管理技術では、通信するデータが存在するIoT端末について、音声通信やデータ通信などの通信の種類に応じたスケジューリング係数を計算して優先度を決定する。そして、係数の比較および判定によりスケジューリング係数の値が相対的に大きいIoT端末に対して優先的に無線リソースを割り当てることで、ネットワーク全体で、移動するIoT端末のスループットを向上させている。このように、特許文献1では、ネットワーク全体で、スループットの最適化を行うため、管理対象として選択された、移動する特定の複数の通信端末の各々のスループットを向上させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、より簡易な構成で、管理対象の移動する複数の通信端末の各々のスループットを向上させることが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、より簡易な構成で、管理対象の移動する複数の通信端末の各々のスループットを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理装置は、複数の通信エリア間を移動する複数の通信端末の通信を管理する通信管理装置であって、各通信エリアに在圏する間の各通信端末の通信量を含む、前記複数の通信エリアでの前記各通信端末の通信量データを収集するように構成された収集部と、収集された前記各通信端末の通信量データに基づいて、前記各通信端末が移動した前記複数の通信エリアにおける前記各通信端末の前記通信量の合計を求め、求めた前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを選択するように構成された選択部と、選択された、前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを真の通信量データとして、前記真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器と、前記生成器によって生成された前記疑似通信量データと前記真の通信量データとを識別する識別器とを有する生成モデルの敵対的学習を行うように構成された学習部と、前記学習部によって構築された学習済み生成器を通信管理情報として前記複数の通信端末に通知するように構成された通知部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る通信管理装置において、前記収集部は、前記各通信端末が、前記各通信エリアに移動した際に発信する位置登録要求信号を契機として、前記各通信端末の前記通信量データを収集してもよい。
【0009】
また、本発明に係る通信管理装置において、前記複数の通信端末は、共通の識別情報が割り当てられた複数の通信端末であってもよい。
【0010】
また、本発明に係る通信管理装置において、前記収集部は、コアネットワークが備えるユーザプレーン機能から、前記共通の識別情報が割り当てられた前記複数の通信端末の各々の前記通信量データを収集してもよい。
【0011】
また、本発明に係る通信管理装置において、前記疑似通信量データは、前記真の通信量データのデータ分布との統計的な距離が最小となるデータ分布を有していてもよい。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理方法は、複数の通信エリア間を移動する複数の通信端末の通信を管理する通信管理方法であって、各通信エリアに在圏する間の各通信端末の通信量を含む、前記複数の通信エリアでの前記各通信端末の通信量データを収集する収集ステップと、収集された前記各通信端末の通信量データに基づいて、前記各通信端末が移動した前記複数の通信エリアにおける前記各通信端末の前記通信量の合計を求め、求めた前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを選択する選択ステップと、選択された、前記通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを真の通信量データとして、前記真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器と、前記生成器によって生成された前記疑似通信量データと前記真の通信量データとを識別する識別器とを有する生成モデルの敵対的学習を行う学習ステップと、前記学習ステップで構築された学習済み生成器を通信管理情報として前記複数の通信端末に通知する通知ステップとを備える。
【0013】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記収集ステップは、前記各通信端末が、前記各通信エリアに移動した際に発信する位置登録要求信号を契機として、前記各通信端末の前記通信量データを収集してもよい。
【0014】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記複数の通信端末は、共通の識別情報が割り当てられた複数の通信端末であってもよい。
【0015】
また、本発明に係る通信管理方法において、前記収集ステップは、コアネットワークが備えるユーザプレーン機能から、前記共通の識別情報が割り当てられた前記複数の通信端末の各々の前記通信量データを収集してもよい。
【0016】
また、本発明に係る通信管理方法において、さらに、前記複数の通信端末の各々が、通知された前記通信管理情報の前記学習済み生成器を取得する取得ステップと、前記学習済み生成器を用いて、前記真の通信量データに類似する前記疑似通信量データを生成する生成ステップと、生成された前記疑似通信量データに基づいて、各通信エリアでのデータの送信を制御する通信ステップとを備えてもよい。
【0017】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信管理システムは、上記の通信管理装置と、前記複数の通信端末とを備える通信管理システムにおいて、前記複数の通信端末の各々は、前記通信管理装置から通知された前記通信管理情報の前記学習済み生成器を取得するように構成された取得部と、前記学習済み生成器を用いて、前記真の通信量データに類似する前記疑似通信量データを生成するように構成された生成部と、生成された前記疑似通信量データに基づいて、各通信エリアでのデータの送信を制御するように構成された通信部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、選択された、通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを真の通信量データとして、真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器と、生成器によって生成された疑似通信量データと真の通信量データとを識別する識別器とを有する生成モデルの敵対的学習を行う。そのため、より簡易な構成で、管理対象の移動する複数の通信端末の各々のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信管理装置を含む通信管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係る通信端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態に係る通信管理装置が収集する通信量データを説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る通信管理装置が収集する通信量データを説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態に係る通信管理システムが備える設定情報テーブルの構造を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態に係る通信管理装置が備える学習部の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態に係る通信管理装置が備える学習部を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態に係る通信管理装置が備える学習部を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態に係る通信管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態に係る通信管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態に係る通信管理システムの動作の概要を示すシーケンス図である。
【
図12】
図12は、本実施の形態に係る通信管理システムの動作の概要を示すシーケンス図である。
【
図13】
図13は、本実施の形態に係る通信管理装置による学習処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図13を参照して詳細に説明する。
【0021】
[通信管理システムの構成]
まず、本発明の実施の形態に係る通信管理装置1および通信端末2を備える通信管理システムの概要について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る通信管理システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
本実施の形態に係る通信管理システムは、例えば、5G通信規格に対応したモバイル通信ネットワークに設けられる。通信管理システムは、通信管理装置1、通信端末2、基地局3、コアネットワーク4、およびデータネットワーク5を備える。通信管理システムは、複数の通信エリア3A間を移動する複数の通信端末2の各々の最適なデータ送信のタイミングを基地局3単位で管理する。
【0023】
通信端末2は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータなどのモバイル通信端末、通信モジュール、ウェアラブルデバイスなど5Gモバイル通信ネットワークを用いるIoT端末により実現される。通信端末2は、コネクテッドカーや自律移動ロボットなどに実装される通信モジュールとして構成することができる。通信端末2は、SIM2aを備え、SIM2aの契約プロファイルには、ユーザの加入者識別情報が格納され、携帯電話の回線契約に割り当てられる加入者識別子(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)、加入者であるユーザの電話番号(MSISDN:Mobile Subscriber International Subscriber Directory Number)、SIMカード番号(ICCID:Integrated Circuit Card Identifier)などの識別子情報が含まれる。通信端末2は、IMSIによって一意に識別される。
【0024】
通信端末2には、また、端末を一意に識別する端末IPアドレスが割り当てられる。IPアドレスは、セッション確立後にSMF42を通じて通信端末2に割り当てられる。本実施の形態では、通信端末2は、複数台存在し、所定の属性に基づいてグループID(共通の識別情報)が割り当てられる。グループIDは、複数の通信エリア3Aに在圏する複数の通信端末2のうち、通信やサービスに関する属性が共通する端末に割り当てることができる。例えば、企業などの組織が管理および運営する配車サービスのタクシーなどの複数の車両に搭載される通信端末2に対して、同じグループIDが割り当てられる。本実施の形態の通信管理処理は、同じグループIDの複数の通信端末2ごとに行われる。
【0025】
複数の通信端末2は、複数の通信エリア3A間を移動する。各通信端末2の移動経路は、それぞれ異なる場合を含む。また、各通信端末2が移動を開始する時間、および各通信エリア3Aを経由する時間や順番が異なる場合がある。通信端末2は、移動先の通信エリア3Aを跨ぐと、移動先の通信エリア3Aの基地局3に位置登録要求信号を送信する。位置登録要求信号には、通信端末2のIMSIが含まれている。なお、グループIDが同じ複数の通信端末2の各々は、経由する順番や時間は異なっていても1~Nまでの通信エリア3Aの全てに移動するものとする。
【0026】
基地局3は、5G通信規格に対応した無線基地局で構成され、通信エリア3Aに在圏する通信端末2とコアネットワーク4との間の通信を中継する。基地局3は、バックホールリンクを介してコアネットワーク4と接続する。基地局3は、事前に定義された無線リソースを用いて、通信端末2からのデータを受信する。本実施の形態では、1台の基地局3が、1つの通信エリア3Aをカバーし、基地局IDによって基地局3および通信エリア3Aが特定されるものとして説明する。
【0027】
コアネットワーク4は、通信管理装置1とLAN、WANやインターネットなどのネットワークNWを介して接続されている。コアネットワーク4は、C-plane内のノードであるAMF(Access and Mobility Management Function)40、UDM(Unified Data Management)/UDR(Unified Data Repository)41、SMF(Session Management Function)42、およびPCF(Policy Control Function)43を備える。また、コアネットワーク4は、U-plane内の複数のUPF(User Plane Function)44を備える。コアネットワーク4が備える、上記以外のU-planeやC-plane内の機能ノードについては図示を省略している。
【0028】
AMF40は、モビリティ制御機能を提供し、位置登録、ページング、およびハンドオーバ等の移動制御を行うノードである。
【0029】
UDM/UDR41は、加入者プロファイルの管理、認証、モビリティ管理を行う。本実施の形態では、UDM/UDR41は、通信管理装置1の指示に応じて、
図5に示すように、複数の通信端末2のIMSI、グループID、基地局ID、および複数の通信端末2のデータ通信において設定されたUPF44の通信パスを互いに関連付けた設定情報テーブルT3を作成し記憶する。通信管理装置1からの指示には、事前に指定されている管理対象の複数のIMSIとグループIDとが関連付けられたグループ化情報が含まれる。なお、設定情報テーブルT3のUPF44のIPアドレスの値は、後述のSMF42およびPCF43により通信パスが設定された後に登録される。
【0030】
UDM/UDR41は、加入者プロファイルにグループIDのフィールドを追加することで設定情報テーブルT3を構成することができる。本実施の形態に係るUDM/UDR41は、通信管理装置1との通信を行うための通信インターフェース41aを備える。UDM/UDR41によって管理される設定情報テーブルT3は、通信管理装置1でも同期され、同一の内容が記憶される(第1記憶部14)。また、UDM/UDR41は、UDMとUDRとが一つの装置として構成される場合の他、UDM/UDR41は、UDMとUDRとが分離して配置された装置であってもよい。
【0031】
SMF42は、セッション管理機能であり、通信端末2からインターネット等のデータネットワーク間のPDU(Packet Data Unit)セッションの確立、変更、リリース等を行う。SMF42は、PCF43からのPCC(Policy and Charging Control)ポリシーに基づいて、通信端末2とUPF44との間のデータ通信に対して適切な通信パスを設定する。
【0032】
PCF43は、QoSやポリシーを決定しSMF42に提供する。PCF43は、3GPP(登録商標)の仕様によるPCCルールを適用し、通信管理装置1からの指示に応じて、通信端末2が通信するUPF44の通信パスの設定についてのPCCポリシーを作成する。
【0033】
UPF44は、ユーザプレーン機能であり、基地局3と、インターネットなどのデータネットワーク5との間のデータを処理する。UPF44は、コアネットワーク4に複数設けられる。本実施の形態では、UPF44は、各基地局3がカバーする通信エリア3Aに通信端末2が在圏する間の通信量のデータをメモリに記録する。本実施の形態では、UPF44は、通信管理装置1と通信するための通信インターフェース44aを備える。
【0034】
図3は、各UPF44で記録され、後述の通信管理装置1の収集部11で収集される通信量データを説明するための図である。
図3のテーブルT1に示すように、各UPF44は、メモリに、IMSIおよびグループIDごとに、各通信エリア3Aに在圏する期間の通信量のログを記録する。t
i(i=1、2、・・・、N)は、通信端末2が在圏するN個の基地局3の基地局IDを表す。また、x
iは、基地局IDごとに、通信端末2が在圏する間にデータ通信がある場合には「1」、データ通信がない場合には「0」の値をとる二値通信量を表す。なお、UPF44で記録される通信量データは、二値通信量に変換される前の各基地局IDでの通信量[G]をさらに含む。
【0035】
図4は、通信量データを説明するための図である。
図4のテーブルT2は、IMSI_1の通信端末2における、通信量データを示す。
図4に示すように、通信量データは、基地局IDと、基地局IDでの通信量[G]および通信量[G]を二値通信量に変換したデータとが関連付けられたデータである。IMSI_1の通信端末2は、基地局IDが「t
1」の基地局3がカバーする通信エリア3Aに在圏する間に、通信量3[G]のデータ通信を行い、基地局IDが「t
2」の基地局3がカバーする通信エリア3Aに在圏する間には通信量は0となっている。また、基地局ID「t
1」では、通信量は3[G]であるため二値通信量は「1」(データ通信あり)、基地局ID「t
2」では、通信量は発生しないため二値通信量は「0」(データ通信なし)の値を取る。その他の基地局IDに対応する通信量についても同様に、二値通信量に変換される。前述したように、通信量データ(t
i,x
i)は、二値通信量の系列を含むデータとして表される。他のIMSIの通信量データについても同様に求められる。なお、通信量[G]を二値通信量に変換する処理は、UPF44ではなく、通信管理装置1の収集部11が行う構成としてもよい。
【0036】
データネットワーク5は、インターネット、クラウドネットワーク等の外部ネットワークである。通信端末2は、基地局3およびコアネットワーク4のUPF44を経由して、データネットワーク5とデータ通信を行う。
【0037】
[通信管理装置の機能ブロック]
図1に示すように、通信管理装置1は、設定部10、収集部11、選択部12、学習部13、第1記憶部14、第2記憶部15、および通知部16を備える。通信管理装置1は、移動する複数の通信端末2のうち、スループットが最も良好な通信端末2の基地局3単位のデータ送信のタイミングを真の通信量データとして、敵対的学習により生成モデルを学習し、学習により構築された学習済み生成器を通信管理情報として、管理対象の複数の通信端末2に通知する。
【0038】
設定部10は、各通信端末2からの位置登録要求信号に基づいてIMSIおよびグループIDを指定し、各通信端末2のUPF44の設定を指示する。具体的には、設定部10は、事前に登録されている管理対象のIMSIとグループIDとが関連付けられたグループ化情報をUDM/UDR41に送信する。設定部10からのグループ化情報に基づいて、UDM/UDR41で設定情報テーブルT3(
図5)が作成される。さらに、設定部10は、各通信端末2からの位置登録要求信号に含まれるIMSIに関連付けられたグループIDに基づいて、各通信端末2のデータ通信に対するユーザプレーン機能の設定を指示する。
【0039】
設定部10は、コアネットワーク4のPCF43に対して、グループID、IMSI、通信管理装置1のIPアドレスを指定して、PCCポリシーの作成要求を行う。作成要求に応じて、コアネットワーク4のPCF43、SMF42、およびUDM/UDR41は連携して、通信端末2のデータ通信に対するUPF44の適切な通信パスを設定する。通信端末2のデータ通信に対してUPF44の通信パスが設定されると、UDM/UDR41で更新された設定情報テーブルT3は、例えば、第1記憶部14と同期し、第1記憶部14において更新された設定情報テーブルT3が記憶される。
【0040】
収集部11は、各通信エリア3Aに在圏する間の各通信端末2の通信量を含む、複数の通信エリア3Aでの各通信端末2の通信量データを収集する。より具体的には、収集部11は、各通信端末2が、各通信エリア3Aに移動した際に発信する位置登録要求信号を契機として、各通信エリア3Aに在圏する期間の各通信端末2の通信量[G]および通信量[G]を二値データに変換した二値通信量を収集する。すなわち、通信端末2が通信エリア3Aを移動するごとに発信する位置登録要求信号を契機とし、各移動先の通信エリア3A(基地局ID)での通信量および対応する二値通信量が収集され、最終的に、複数の通信エリア3Aでの通信量データが収集される。
【0041】
また、収集部11は、コアネットワーク4が備えるUPF44から、グループIDが割り当てられた複数の通信端末2の各々の通信エリア3Aごと(基地局IDごと)の通信量[G]、および通信量を二値データに変換した二値通信量の系列で表される通信量データを収集する。収集部11は、設定部10による通信端末2のデータ通信の通信パスの設定に係るUPF44から、ネットワークNWを介してグループIDごとの複数の通信端末2の各々の通信量データを収集する。
図3に示すように、収集部11は、「グループ1」が割り当てられているIMSI_1~IMSI_Nの各々の、各通信エリア3Aをカバーする基地局3の基地局ID(t
1、t
2、・・・、t
N)において、それぞれの通信量[G]が二値データで表される、データ通信あり「1」、または、データ通信なし「0」の二値通信量の系列を含む通信量データ(t
i,x
i)を収集する。
【0042】
選択部12は、収集された各通信端末2の通信量データに基づいて、各通信端末2が移動した全ての通信エリア3A(基地局ID:t1~tN)での各通信端末2の通信量の合計を求め、求めた通信量の合計が最も大きい通信端末2の通信量データ(ti,xi)を選択する。より具体的には、選択部12は、収集部11が収集した複数の通信エリア3Aの通信量データ(ti,xi)に基づいて、グループIDが共通のIMSIごとに、各基地局ID(基地局ID:t1~tN)での通信量[G]を合計した値が最も大きい通信端末2の通信量データを選択する。各通信エリア3Aをカバーする基地局3(基地局ID:t1~tN)での通信量[G]の合計値が最も大きい通信端末2は、グループIDに含まれる複数の通信端末2のうち、スループットが最も高い通信端末2である。
【0043】
より具体的には、選択部12は、グループIDが共通のすべてのIMSIが各通信エリア3Aに在圏した際の通信量の合計値を比較し、合計値が大きい順にN個(Nは2以上の正の整数)の通信量データを選択することができる。N個のデータの選択は、例えば、上位の4%など、後述の学習部13による敵対的学習で十分な精度を得るために必要な数とすることができる。
【0044】
学習部13は、選択された、通信量の合計が最も大きい通信端末2の通信量データを真の通信量データとして、真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器131と、生成器131によって生成された疑似通信量データと真の通信量データとを識別する識別器132とを有する生成モデルの敵対的学習を行う。
【0045】
学習部13は、
図6に示すように、生成器131および識別器132を有するGAN(Generative Adversarrial Network:GAN)を敵対的に学習させる。学習部13の学習によって学習済み生成器131’が構築される。
【0046】
図7および
図8は、学習部13が用いるGANの生成器131および識別器132のニューラルネットワーク構成を模式的に表した図である。
図7に示すように、生成器131は、入力層、隠れ層、および出力層を有するニューラルネットワークで構成される。隠れ層は、全結層およびデコンボリューション層で構成することができる。生成器131は、ランダムな雑音から疑似通信量データを生成するモデルである。生成器131の入力ノードには、例えば、ガウス雑音のベクトルがランダムにm個サンプルされて入力される(z
1~z
m)。生成器131は、入力と重みパラメータの積和演算および活性化関数によるしきい値処理を経て出力G(z
1)~G(z
N)を出力する。
【0047】
図8に示す識別器132は、入力層、隠れ層、および出力層を有するニューラルネットワークで構成される。隠れ層は、畳み込み層、出力層は全結層で構成することができる。
図8の例では、N個サンプルされた訓練データである、通信量データx
1~x
Nが入力として与えられる。前述したように、通信量データは二値系列で表現される。したがって、識別器132を構成するニューラルネットワークの入力層の各入力ノードには、基地局ID(t
i)ごとの0または1の二値通信量の値が入力される。
図6の例では、訓練データ134として、真の通信量データを識別器132に入力している。
【0048】
識別器132は、入力と重みパラメータの積和演算および活性化関数によるしきい値処理を経て、例えば、1または0の出力を出す。識別器132は、入力された真の通信量データに係る訓練データを正しく真の通信量データであると識別すると出力y=1を出力する。一方、入力された疑似通信量データに係る訓練データを正しく疑似通信量データであると識別すると出力y=0を出力する。このように、識別器132は、生成器131が生成したモデル分布を真の分布である訓練データのデータ分布から区別するモデルである。疑似通信量データは、真の通信量データのデータ分布との統計的な距離が最小となるデータ分布を有する。
【0049】
図6は、学習部13によるGANの敵対的学習を説明するためのブロック図である。学習部13が採用するGANの生成器131を関数G、識別器132を関数Dと表す。また、真の通信量データをx、識別器132による出力である予測値はyと表し、正解ラベルをtと表す。正解ラベルtは、真の通信量データに対して1、生成器131で生成された疑似通信量データに対して0と設定される。このとき、識別器132は、二値分類問題として次式(1)の交差エントロピーE
CEで表すことができる。
【0050】
【0051】
上式(1)のブレース内の第1項が表すtnlnynにおいて、識別器132の予測値ynが、真の通信量データの正解ラベルtn=1の値に近づくことが望ましい。一方、ブレース内の第2項が表す(1-tn)ln(1-yn)においては、識別器132の予測値ynが、疑似通信量データと識別する正解ラベルの値(1-tn)=0に近づくことが望ましい。このように交差エントロピーECEは、予測値が正解ラベルの値に一致している場合に最大値となる。
【0052】
ここで、GANを構成する生成器131は、パラメータw
G,θ
Gを有し、関数G(w
G,θ
G)と表す。また、識別器132は、パラメータw
D,θ
Dを有し、関数D(w
D,θ
D)と表す。上式(1)の交差エントロピーE
CEに基づいた生成器131と識別器132とを備えるGANの目的関数Eは、次式(2)で表すことができる。
【数2】
【0053】
上式(2)の第1項が表すED(x)=1lnD(wD,θD)は、識別器132が真の通信量データを真の通信量データであると識別する期待値である。上式(2)の第2項が表すED(x)=0ln(1-D(G(wG,θG),wD,θD))は、生成器131により生成された疑似通信量データを識別器132が疑似通信量データであると識別する期待値である。GANの学習では、目的関数Eのmin-max最適化により、生成器131と識別器132とを敵対的に学習する。したがって、識別器132をだますような疑似通信量データを生成できるように生成器131を学習し、生成器131が生成した疑似通信量データを疑似通信量データであると識別するように識別器132を学習する。
【0054】
識別器132の学習では、真の通信量データが与えられた場合に、識別器132がy=1に近い出力を出すことで、上式(2)の目的関数Eの第1項を最大化する。一方、疑似通信量データが与えられた場合に、識別器132がy=0に近い出力を出すことで目的関数Eの第2項を最大化するように学習が行われる。
【0055】
生成器131の学習では、上式(2)のD(G(w
G,θ
G),w
D,θ
D)(
図6のD(G(z)))が1に近くなるようなG(w
G,θ
G)(
図6のG(z))を出力することで、目的関数Eを最小化する。学習部13は、生成器131のパラメータと識別器132のパラメータとを交互に更新する学習手順を用いる。なお、学習部13による生成器131および識別器132の学習手順の詳細は後述する。
【0056】
学習部13は、GANの目的関数Eが最適化されると、学習済み生成器131’を第2記憶部15に記憶する。
【0057】
第1記憶部14は、設定部10による通信パスの設定に係るUPF44のIPアドレス、IMSI、グループID、および基地局IDが互いに関連付けられた設定情報テーブルT3(
図5)を記憶する。第1記憶部14は、UDM/UDR41で作成され更新された設定情報テーブルT3と同期することができる。あるいは、UDM/UDR41で作成され更新された設定情報テーブルT3を定期的に取得、または、更新された設定情報テーブルT3を参照し反映する構成であってもよい。
【0058】
第2記憶部15は、学習部13によって構築された学習済み生成器131’を記憶する。学習済み生成器131’は、グループIDごとに構築された生成器であるため、学習済み生成器131’にはグループIDが関連付けられている。
【0059】
通知部16は、学習部13によって構築された学習済み生成器131’を通信管理情報として、複数の通信端末2に通知する。より具体的には、通知部16は、グループIDごとに構築された学習済み生成器131’を、同じグループIDを有する複数の通信端末2に、ネットワークNWを介して通知する。
【0060】
[通信端末の機能ブロック]
次に、本実施の形態にかかる通信端末2の機能ブロックについて、
図2を参照して説明する。なお、複数の通信端末2は、同じ機能ブロックで構成される。
【0061】
第3記憶部20は、通信管理装置1の通知部16から通知された、学習済み生成器131’を通信管理情報として記憶する。
【0062】
取得部21は、通信管理装置1から通知された通信管理情報の学習済み生成器131’を取得する。具体的には、取得部21は、第3記憶部20から、学習済み生成器131’を読み出す。
【0063】
生成部22は、学習済み生成器131’を用いて、真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する。生成された疑似通信量データは、グループIDの中で、スループットが最も良好な通信端末2の基地局3(通信エリア3A)単位のデータ通信量に極めて類似するデータ通信量を示す情報である。例えば、疑似通信量データ(ti,xi)が、基地局ID(t1,t2,t3,t4,・・・,tN)の各基地局3の通信エリア3Aにおいて、(x1,x2,x3,x4,・・・,xN)=(0,1,1,0,・・・,1)である場合を考える。この場合、基地局IDがt1の通信エリア3Aに在圏する間は、データを送信しない「0」、基地局IDがt2の通信エリア3Aに在圏する間では、データを送信する「1」、・・・というデータ送信の有無が二値通信量の系列で示される。
【0064】
通信部23は、生成された疑似通信量データに基づいて、各通信エリア3Aでのデータの送信を制御する。例えば、基地局IDがt1の通信エリア3Aに在圏する間は、データを送信しない「0」ように制御することができる。一方、基地局IDがt2の通信エリア3Aに在圏する間は、データを送信する「1」よう制御を行うことができる。通信部23は、例えば、基地局3の追加の許可を必要とせずに決められたタイミングでデータを送信するグラント・フリー方式により、通信を制御することができる。
【0065】
[通信管理装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信管理装置1を実現するハードウェア構成の一例について、
図9を用いて説明する。
【0066】
図9に示すように、通信管理装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。また、通信管理装置1は、バス101を介して接続される表示装置107を備えることができる。
【0067】
プロセッサ102は、CPU、GPU、FPGA、ASICなどによって実現される。
【0068】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、
図1に示した設定部10、収集部11、選択部12、学習部13、通知部16など通信管理装置1の各機能が実現される。
【0069】
通信インターフェース104は、通信管理装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0070】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0071】
補助記憶装置105は、通信管理装置1が実行するGANの学習プログラムおよび通信管理プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、補助記憶装置105は、グループIDとIMSIとが対応付けられたグループ化情報を格納する領域を有する。補助記憶装置105によって、
図1で説明した第1記憶部14、および第2記憶部15が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0072】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0073】
表示装置107は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどによって構成される。
【0074】
[通信端末のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信端末2を実現するハードウェア構成の一例について、
図10を用いて説明する。
【0075】
図10に示すように、通信端末2は、バス201を介して接続されるプロセッサ202、主記憶装置203、通信インターフェース204、補助記憶装置205、入出力I/O206を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。さらに、通信端末2は、バス201を介して接続される表示装置207を備えることができる。
【0076】
主記憶装置203には、プロセッサ202が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ202と主記憶装置203とによって、
図2に示した取得部21、生成部22、通信部23など通信端末2の各機能が実現される。
【0077】
補助記憶装置205は、通信端末2が実行する学習済み生成器131’の演算プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、通信端末2が実行する通信プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置205によって、
図2で説明した第3記憶部20が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0078】
[通信管理装置の動作]
次に、上述した構成を有する通信管理装置1の動作を、
図11および
図12のシーケンス図、ならびに
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0079】
図11は、通信管理システムによる通信端末2のグループ化、およびデータ通信に対する通信パスの設定処理を示すシーケンスである。まず、通信管理装置1は、UDM/UDR41に、グループIDおよびIMSIが対応付けられたグループ化情報を送信する(ステップS100)。グループ化情報は、事前に通信管理装置1に記憶されている。次に、UDM/UDR41は、受信したグループ化情報に基づいて、設定情報テーブルT3(
図5)を作成する(ステップS101)。ステップS101では、設定情報テーブルT3の「グループID」および「IMSI」の値が登録され、その他の項目の各値は未だエントリーがない状態である。
【0080】
その後、ある通信エリア3Aに移動した通信端末2は、位置登録要求信号を、基地局3からコアネットワーク4に送信する(ステップS102)。位置登録要求信号には、通信端末2のIMSIおよび在圏する通信エリア3Aの基地局3の基地局IDが含まれる。AMF40を経由し、さらにUDM/UDR41が位置登録要求信号を受信すると、UDM/UDR41は、ステップS101で作成された設定情報テーブルT3(
図5)の情報から、受信した位置登録要求信号に含まれる基地局ID、IMSIに対してグループIDを関連付けて、位置登録要求信号をさらに通信管理装置1へ転送する(ステップS103)。なお、ステップS103において、設定情報テーブルT3の基地局IDの値が設定される。
【0081】
次に、通信管理装置1の設定部10は、ステップS103で受信した位置登録要求信号に含まれるIMSI、基地局ID、グループID、さらには、自装置のIPアドレスを指定して、PCF43に対してPCCポリシーの作成を要求する(ステップS104)。続いて、PCF43は、指定された要件に基づいてPCCポリシーを作成する(ステップS105)。PCF43は、通信端末2のデータ通信がどのUPF44を経由するかについての情報を含むPCCポリシーを作成する。PCCポリシーは、通信端末2からデータネットワーク5へのデータ通信の通信パスとして最適なUPF44を指定する。
【0082】
続いて、PCF43は、作成したPCCポリシーをSMF42に送信する(ステップS106)。その後、SMF42は、PCCポリシーによって指定されるUPF44に対して、PCCポリシーで規定される通信パスの設定などのユーザプレーン機能に関連するデータ通信パスの設定情報が送信される(ステップS107)。次に、UPF44は、受信したデータ通信パスの設定情報をメモリに登録する(ステップS108)。
【0083】
続いて、UPF44は、SMF42にACKを送信し、UPF44のIPアドレスを通知する(ステップS109)。さらに、SMF42は、通信管理装置1にACKを送信して、UPF44のIPアドレスを通知する(ステップS110)。その後、通信管理装置1は、UDM/UDR41にUPF44のIPアドレスを通知し、かつ、通信端末2に対してACKを送信する(ステップS111)。その際、通信端末2と通信するUPF44のIPアドレスは、設定情報テーブルT3に設定される。また、UDM/UDR41で更新された設定情報テーブルT3は、通信管理装置1の第1記憶部14においても記憶される。さらにその後、通信端末2とUPF44との間のデータ通信の通信パスが確立される(ステップS112)。通信端末2は、データネットワーク5とのデータ通信を行う。
【0084】
その後、UPF44は、複数の通信端末2の各々が、通信エリア3Aに在圏する間の通信量のログを記録する(ステップS113)。UPF44に記録される通信量のログは、
図3のテーブルT1に示すように、グループIDのIMSIごとに記録された各通信エリア3Aに在圏する間の通信量[G]および対応する二値通信量である。また、通信量データ(t
i,x
i)は、通信エリア3A(基地局ID)ごとの通信量[G]および対応する二値通信量の系列データである。したがって、通信端末2が移動先の通信エリア3Aに到達するたびに、ステップS102からステップS112の処理が繰り返されて、ステップS113では、各通信エリア3Aに在圏した期間の通信量のログが記録される。その後、通信管理装置1は、通信管理処理を実行する(ステップS114)。
【0085】
次に、
図12のシーケンスを参照し、
図11で説明した通信管理処理(ステップS114)についてより詳細に説明する。まず、通信管理装置の収集部11は、グループIDが共通のIMSI(通信端末2)の各通信エリア3Aに在圏した期間での通信量を複数の通信エリア3A(基地局ID)にわたって記録したデータである通信量データをUPF44から収集する(ステップS1)。収集部11は、第1記憶部14が記憶する設定情報テーブルT3を参照して、例えば、グループID「1」のIMSI_1~IMSI_Nが通信するUPF44のIPアドレス「IP11」を特定し、特定したIPアドレス「IP11」のUPF44から、通信量または系列データの通信量データを収集する(
図3のテーブルT1)。なお、通信端末2の基地局3の移動にともなって接続先のUPF44が変わる場合には、新たに設定されたUPF44から、移動先の基地局IDでの通信量または二値通信量を収集し、複数の通信エリア3Aにわたる各通信エリア3A(各基地局ID)での通信量および対応する二値通信量の系列で表現される通信量データを収集する。
【0086】
次に、通信管理装置1の選択部12は、収集された通信量データに基づいて、複数の通信エリア3Aでの通信量[G]の合計が最も大きい通信端末2の通信量データを選択する(ステップS2)。ステップS2では、選択部12は、収集部11が収集した通信量データ(ti,xi)に基づいて、グループIDが共通のIMSIごとに、各通信エリア3A(基地局ID:t1~tN)での通信量[G]を合計した値が最も大きい、スループットが最も良好な通信端末2の通信量データを選択する。
【0087】
また、ステップS2では、スループットが最も高いN個の通信量データを取得する。例えば、全てのIMSIの通信量の合計を比較し、最も大きい値から順にN個のデータを収集することができる。ステップS2で選択された通信量データは、敵対的学習における訓練データ、すなわち真の通信量データとして用いられる。
【0088】
次に、通信管理装置1の学習部13は、生成器131と識別器132とを備えるGANの学習処理を行う(ステップS3)。より詳細には、ステップS3では、学習部13は、ステップS2で選択された、通信エリア3A(基地局ID)ごとの通信量の合計が最も大きい通信端末2の通信量データを真の通信量データとして、真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器131と、生成器131によって生成された疑似通信量データと真の通信量データとを識別する識別器132とを有する生成モデルの敵対的学習を行う(ステップS3)。
【0089】
図13は、通信管理装置1が備える学習部13によるGANの学習処理を示すフローチャートである。まず、学習部13は、訓練データとして用いる真の通信量データを取得する(ステップS50)。ステップS50では、N個の真の通信量データのセットが取得される。真の通信量データは、グループIDが共通の複数の通信端末2のなかで、高いスループットを有する通信端末2のデータ送信の有無を表す。
【0090】
ここで、
図6の学習部13によるGANの学習処理に示すように、ステップS50で取得された真の通信量データは、識別器132を学習する際に入力される訓練データ134として用いられる。
【0091】
次に、学習部13は、真の通信量データを訓練データ134として識別器132に入力し、真の通信量データを真の通信量データ(y=1)と識別するように、識別器132のパラメータwD,θDを学習し、更新する(ステップS51)。ステップS51において、学習部13は、例えば、誤差逆伝播法などを用いて識別器132に真の通信量データを学習させることができる。ステップS51により、真の通信量データを真の通信量データと識別することができる識別器132が事前に構築される。
【0092】
次に、学習部13は、ガウス雑音130を発生し、発生したガウス雑音130のランダムなベクトルを生成器131に入力として与える(ステップS52)。続いて、生成器131は、与えられたガウス雑音130に基づいて、入力zと重みパラメータwG,θGの積和演算および活性化関数によるしきい値処理を行い、疑似通信量データG(z)を生成する(ステップS53)。
【0093】
次に、識別器132の学習を行う。識別器132の学習は、生成器131のパラメータwD,θDを固定して行われる。まず、学習部13は、ステップS50で収集された真の通信量データの訓練データ134を識別器132に入力として与え、上式(2)の目的関数Eが最大となるように誤差逆伝播法などを用いてパラメータwD,θDを更新する(ステップS54)。なお、訓練データ134のラベルは1(真の通信量データ)が設定されている。
【0094】
次に、学習部13は、ステップS53で生成器131によって生成された疑似通信量データを識別器132に入力として与え、上式(2)の目的関数Eが最大となるように、誤差逆伝播法などを用いてパラメータwD,θDを更新する(ステップS55)。すなわち、ステップS54およびステップS55では、上式(2)の目的関数Eを最大にするために、第1項はD(wD,θD)=1が出力され、第2項はD(G(wG,θG),wD,θD)=0となるように最適化が行われる。なお、訓練データ134には、ラベルは0(疑似通信量データ)が設定されている。
【0095】
ステップS54およびステップS55での識別器132の学習は、
図6に示すように、識別器132からの出力133に基づいて、目的関数Eのブロック135で識別器誤差が算出され、その後、識別器132へ誤差逆伝播されることを示す破線の矢印(「訓練」)に対応する。
【0096】
次に、生成器131の学習を行う。生成器131の学習では、識別器132のパラメータが固定されて行われる。学習部13は、ランダムなガウス雑音130を生成器131に与えた際に疑似通信量データが生成されるように生成器131を学習する。具体的には、学習部13は、上式(2)の目的関数Eを最小とするために、誤差を算出し、誤差逆伝播法などによりパラメータwG,θGを更新する(ステップS56)。
【0097】
ステップS56での学習は、
図6に示す、生成器131へ誤差逆伝播されることを示す破線の矢印に対応する。すなわち、ステップS56は、
図6の生成器131で生成された疑似通信量データが識別器132に入力され、その出力133から目的関数Eのブロック135で生成器誤差が算出され、さらには、生成器131へ誤差逆伝播される破線矢印(「訓練」)に対応する。
【0098】
その後、目的関数Eの値がナッシュ均衡に到達して収束するまで(ステップS57:NO)、ステップS53からステップS56までの識別器132および生成器131の学習が繰り返し行われる。一方、目的関数Eの値が収束した場合(ステップS57:YES)、N個の真の通信量データのうち、残りのN-1個の真の通信量データを用いて、生成器131および識別器132の学習が行われるまで(ステップS58:NO)、ステップS51からステップS57までの処理が繰り返される。
【0099】
その後、残りのN-1個の真の通信量データを用いて生成器131および識別器132の学習が行われた場合(ステップS58:YES)、学習部13は、学習済み生成器131’を第2記憶部15に記憶する(ステップS4)。以上の処理によって学習済み生成器131’が構築される。
【0100】
次に、
図12に戻り、通知部16は、グループIDごとに構築された学習済み生成器131’を通信管理情報として、同じグループIDを有する複数の通信端末2に、ネットワークNWを介して通知する(ステップS5)。その後、通信端末2の取得部21は、学習済み生成器131’を取得する(ステップS6)。次に、通信端末2の生成部22は、学習済み生成器131’を用いて、真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する(ステップS7)。その後、通信端末2の通信部23は、ステップS7で生成された疑似通信量データに基づいて、自端末が移動した先の通信エリア3Aでのデータ送信を制御する(ステップS8)。
【0101】
同じグループID(グループ1)の他の管理対象の複数の通信端末2(IMSI_2~IMSI_N)についても同様に、それぞれステップS6からステップS8までの処理を行う。また、異なるグループIDの複数の通信端末2の通信管理処理についても同様に、ステップS1からステップS8までの処理が行われる。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、スループットの高い通信端末2の通信量データを、敵対的学習における真のデータとして選択し、GANの学習により、高いスループットの通信端末2の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器131を学習する。そして、学習済み生成器131’を通信管理情報として複数の通信端末2に通知する。そのため、より簡易な構成で、管理対象の移動する複数の通信端末2の各々のスループットを向上させることができる。
【0103】
また、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、管理対象の移動する複数の通信端末2を事前にグループ化し、グループ単位で、基地局3ごとの最適なデータの送信タイミングを学習する。そのため、ネットワーク全体ではなく、特定の通信端末2群のスループットを向上させることが可能である。
【0104】
また、本実施の形態に係る通信管理装置1によれば、通信端末2が移動先の通信エリア3Aを跨ぐ際に発信する位置登録要求信号を契機として、在圏する基地局3での通信量データを収集する。そのため、より簡易な構成により、特定の複数の通信端末2の各々のスループットを向上させることが可能である。
【0105】
なお、上述の実施の形態では、5Gに準拠する通信管理システムである場合を例示したが、4G/LTEや6G等に準拠する通信管理システムであってもよい。
【0106】
また、説明した実施の形態では、生成モデルとしてGANを採用する場合について説明したが、生成モデルは、GANに限定されるものではない。例えば、VAE(Variational Autoencoder)、Autoregressive Models、Energy-Based Models、Transformer-Based Generative Modelsなどを採用することができる。
【0107】
以上、本発明の通信管理装置、通信管理方法、および通信管理システムにおける実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…通信管理装置、10…設定部、11…収集部、12…選択部、13…学習部、14…第1記憶部、15…第2記憶部、16…通知部、2…通信端末、2a…SIM、3…基地局、3A…通信エリア、4…コアネットワーク、40…AMF、41…UDM/UDR、42…SMF、43…PCF、44…UPF、5…データネットワーク、101、201…バス、102、202…プロセッサ、103、203…主記憶装置、41a、44a、104、204…通信インターフェース、105、205…補助記憶装置、106、206…入出力I/O、107、207…表示装置、130…雑音、131…生成器、132…識別器、131’…学習済み生成器、133…出力、134…訓練データ、135…目的関数Eのブロック、T1、T2、T3…テーブル、NW…ネットワーク。
【要約】
【課題】より簡易な構成で、管理対象の移動する複数の通信端末の各々のスループットを向上させることを目的とする。
【解決手段】
通信管理装置1は、選択された、通信量の合計が最も大きい通信端末の通信量データを真の通信量データとして、真の通信量データに類似する疑似通信量データを生成する生成器131と、生成器131によって生成された疑似通信量データと真の通信量データとを識別する識別器132とを有する生成モデルの敵対的学習を行う学習部13と、学習部13によって構築された学習済み生成器131’を通信管理情報として複数の通信端末2に通知する通知部16とを備える。
【選択図】
図1