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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】繊維体堆積装置および推定方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/40 20120101AFI20250226BHJP
   B27N 3/02 20060101ALI20250226BHJP
   D01G 23/08 20060101ALI20250226BHJP
   D01G 25/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
D04H1/40
B27N3/02 A
D01G23/08 A
D01G23/08 Z
D01G25/00 A
D01G25/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020146206
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041156
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 健作
(72)【発明者】
【氏名】樋口 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌英
(72)【発明者】
【氏名】小野木 智英
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141031(JP,A)
【文献】特開2016-137608(JP,A)
【文献】特開2020-083575(JP,A)
【文献】特開2020-084395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04、
B27N1/00-9/00、
D01G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、繊維を含む材料を導入し、放出するドラムと、前記ドラム内に回転可能に設けられた回転体と、を備える堆積部と、
前記ドラム内の前記材料の存在を検出する検出部と、
前記検出部が前記材料を検出する検出頻度に基づいて前記ドラム内の前記材料の量を推定する推定部と、を備え
前記ドラムは、多孔質スクリーンで構成されている部分を有し、
前記検出部は、エネルギー線を出射する出射部と、前記出射部が出射した前記エネルギー線が入射する入射部と、を有し、
前記出射部および前記入射部は、前記ハウジングに、互いに離間し、対向して配置されており、
前記検出頻度と前記ドラム内の前記材料の量との関係を示す検量線が記憶された記憶部を備え、
前記推定部は、前記検出頻度の情報を算出し、前記検量線を参照して前記ドラム内の前記材料の量を推定することを特徴とする繊維体堆積装置。
【請求項2】
記推定部は、前記エネルギー線が前記入射部に入射する頻度に基づいて前記検出頻度を算出する請求項1に記載の繊維体堆積装置。
【請求項3】
前記ドラム内における前記エネルギー線の進行方向は、前記ドラムの中心軸に沿っている請求項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項4】
前記ドラム内において、前記エネルギー線は、前記ドラムの中心軸よりも鉛直方向上方側を通過する請求項またはに記載の繊維体堆積装置。
【請求項5】
前記エネルギー線は、超音波である請求項ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項6】
前記出射部および前記入射部は、前記ドラム内の異なる位置に複数対配置されている請求項ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項7】
前記推定部の推定結果に応じて、前記堆積部の作動を制御して前記材料の放出量を調整する駆動制御部を備える請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項8】
前記堆積部は、前記ドラム内に設置され、回転することにより前記ドラム内の前記材料を攪拌する回転体を有し、
前記制御部は、前記推定部の推定結果に応じて前記回転体の回転速度を調整する請求項に記載の繊維体堆積装置。
【請求項9】
ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、繊維を含む材料を導入し、放出するドラムと、前記ドラム内に回転可能に設けられた回転体と、を備える堆積部内の前記材料の量を推定する推定方法であって、
前記ドラムは、多孔質スクリーンで構成されている部分を有し、
前記ドラム内の前記材料の存在を検出し、前記材料を検出する検出頻度と前記ドラム内の前記材料の量との関係を示す検量線を参照して前記ドラム内の前記材料の量を推定することを特徴とする推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体堆積装置および推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート製造装置においては、繊維を含む原料を水に投入し、主に機械的作用により離解して、抄き直す、いわゆる湿式方式が採用されている。このような湿式方式のシート製造装置は、大量の水が必要であり、装置が大きくなる。さらに、水処理施設の整備のメンテナンスに手間がかかる上、乾燥工程に係るエネルギーが大きくなる。
【0003】
そこで、小型化、省エネルギーのために、水を極力利用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。例えば特許文献1には、原料を乾式で解繊し、その解繊物を堆積させ、シート状に成形する装置が開示されている。この装置では、解繊物を堆積させる堆積部は、ハウジングと、ハウジング内に設けられ、多孔質体で構成された円筒状のスクリーンと、スクリーンの内側で回転する回転体とを有している。スクリーン内に供給された解繊物は、回転体の回転によりスクリーン内でほぐされながらスクリーンを通過して気中に放出、分散されベルト上に堆積する。これにより、ウェブが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-292959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円筒状のスクリーン内の解繊物の量の増減に合わせて、解繊物の放出量が変わってくる。この場合、ウェブの厚さが所望の厚さ分布にならず、シート品質の低下を招くおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載されている装置では、円筒状のスクリーン内の解繊物の量を検出することができない。このため、解繊物の放出量の調整を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下のものとして実現することが可能である。
【0007】
本発明の繊維体堆積装置は、繊維を含む材料を導入し、放出するドラムを備える堆積部と、
前記ドラム内の前記材料の存在を検出する検出部と、
前記検出部が前記材料を検出する検出頻度に基づいて前記ドラム内の前記材料の量を推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の推定方法は、繊維を含む材料を導入し、放出するドラムを備える堆積部内の前記材料の量を推定する推定方法であって、
前記ドラム内の前記材料の存在を検出し、検出頻度に基づいて前記ドラム内の前記材料の量を推定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の繊維体堆積装置の第1実施形態を示す概略側面図である。
図2図2は、図1に示す分散部および第2ウェブ形成部を示す斜視図である。
図3図3は、図2中のA-A線断面図である。
図4図4は、図2中のB-B線断面図である。
図5図5は、図1に示す繊維体堆積装置のブロック図である。
図6図6は、記憶部に記憶されている検量線を説明するためのグラフである。
図7図7は、図1に示す制御部が実行する推定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、本発明の繊維体堆積装置の第2実施形態の堆積部の断面図である。
図9図9は、第2実施形態にかかる繊維体堆積装置の記憶部に記憶されている複数の検量線を1つのグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の繊維体堆積装置および推定方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の繊維体堆積装置の第1実施形態を示す概略側面図である。図2は、図1に示す分散部および第2ウェブ形成部を示す斜視図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図2中のB-B線断面図である。図5は、図1に示す繊維体堆積装置のブロック図である。図6は、記憶部に記憶されている検量線を説明するためのグラフである。図7は、図1に示す制御部が実行する推定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0012】
なお、以下では、説明の便宜上、図1図4に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、図1の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1中の左側を「上流側」、右側を「下流側」と言う。
【0013】
図1に示すように、シート製造装置100は、繊維体堆積装置10と、シート成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、を備えている。また、繊維体堆積装置10は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、堆積部18と、第2ウェブ形成部19と、制御部28と、を備えている。
【0014】
また、図1に示すように、シート製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236とを備えている。その他、シート製造装置100は、ブロアー173と、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263とを備えている。
【0015】
また、シート製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、分散工程と、第2ウェブ形成工程と、シート成形工程と、切断工程とがこの順に実行される。
【0016】
以下、各部の構成について説明する。
図1に示すように、原料供給部11は、粗砕部12に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、セルロース繊維を含む繊維含有物からなるシート状材料を用いることができる。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。また、本実施形態では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙である。
【0017】
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1を大気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行なう部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート122とを有している。
【0018】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上、70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0019】
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0020】
また、シュート122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含む図示しないフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式、特に、温風気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
【0021】
シュート122は、管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0022】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0023】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、ローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0024】
また、解繊部13は、ローターの回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0025】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0026】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上、30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0027】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0028】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
【0029】
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0030】
また、ドラム部141からの第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0031】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0032】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0033】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0034】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0035】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0036】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0037】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0038】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0039】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0040】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0041】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と樹脂P1とを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、樹脂供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0042】
管172は、細分部16のハウジング部162と、堆積部18とを接続しており、細分体M6と樹脂P1との混合物M7が通過する流路である。
【0043】
管172の途中には、樹脂供給部171が接続されている。樹脂供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、樹脂P1を粉体または粒子として管172に供給することができる。管172に供給された樹脂P1は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0044】
なお、樹脂P1は、後の工程で繊維同士を結着させるものであり、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
【0045】
なお、樹脂供給部171から供給されるものとしては、樹脂P1の他に、例えば、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集や樹脂P1の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための紙力増強剤等が含まれていてもよい。または、予めそれらを樹脂P1に含ませて複合化したものを樹脂供給部171から供給してもよい。
【0046】
また、管172の途中には、樹脂供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と樹脂P1とが混合される。また、ブロアー173は、堆積部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と樹脂P1とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と樹脂P1とが均一に分散した状態で、堆積部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0047】
堆積部18は、繊維を含む材料、すなわち、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐして気中に分散させる分散工程を行うものである。堆積部18の構成については、後に詳述する。この堆積部18によって気中に分散された混合物M7は、落下して、下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。
【0048】
第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0049】
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0050】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0051】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0052】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0053】
堆積部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0054】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上、20質量部以下であるのが好ましい。
【0055】
第2ウェブ形成部19の下流側には、シート成形部20が配置されている。シート成形部20は、第2ウェブM8からシートSを成形するシート成形工程を行なう部分である。このシート成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0056】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。なお、このときの加熱の程度としては、例えば、樹脂P1を溶融させない程度であるのが好ましい。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0057】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、樹脂P1が溶融して、この溶融した樹脂P1を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0058】
シート成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0059】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0060】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。
【0061】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の形状、大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0062】
次に、堆積部18について説明する。
図2図4に示すように、堆積部18は、ハウジング3と、ハウジング3内に位置し、収容された混合物M7を分散させるドラム4と、ドラム4に混合物M7を供給する供給部5と、ドラム4内に設けられた回転体6と、を有する。
【0063】
ハウジング3は、筒状のハウジング本体31を有する。ハウジング本体31は、4つの側壁311を有する。ハウジング本体31は、これら側壁311で囲まれた空間S1にドラム4を収納し、ドラム4とメッシュベルト191との間の部分を覆っている。
【0064】
また、ハウジング本体31は、メッシュベルト191に臨む下側開口312と、反対側に位置する上側開口313とを有する。下側開口312は、ドラム4から分散された混合物M7を放出する放出口である。また、上側開口313は、ドラム4の天板41で覆われている。
【0065】
このように堆積部18は、ドラム4とメッシュベルト191との間の部分である空間S1を覆い、メッシュベルト191に臨む位置に下側開口312が形成されたハウジング3を有する。これにより、吸引部193の吸引力によって、空間S1内に下側に向う気流を効果的に形成することができる。よって、ドラム4から分散された混合物M7のメッシュベルト191への堆積を促進することができる。
【0066】
また、図1に示すように、ハウジング3には、加湿部234が接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング3内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング3内を加湿することができ、よって、分散された混合物M7がハウジング3の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0067】
ドラム4は、ハウジング3の上側開口313を塞ぐ天板41と、天板41の下側に設置された一対の側壁42と、多孔質スクリーン43とを有する。
【0068】
天板41は、その厚さ方向に貫通して設けられた供給口411を有する。供給口411は、供給部5と連通しており、混合物M7が通過する部分である。また、供給口411は、y軸方向に延在する長尺状をなし、天板41において、x軸方向の略中央部に設けられている。一対の側壁42は、y軸方向に延在する長尺状をなし、天板41の下面で、かつ、供給口411を介して対向配置されている。
【0069】
多孔質スクリーン43は、y軸方向に延在し、-z軸方向に向って突出している半円筒状をなしている。すなわち、多孔質スクリーン43は、y軸を法線とする断面視にて、y軸方向のどの位置でも円弧状の部分を有している。これにより、混合物M7がドラム4内で円滑に移動することができ、良好に撹拌することができる。また、多孔質スクリーン43は、各側壁42に連結されており、多孔質スクリーン43、各側壁42および天板41で画成された空間が、混合物M7を収容する収容空間S2として機能する。
【0070】
なお、ドラム4では、収容空間S2の+y軸側および-y軸側は、図示しない壁部によって塞がれている。各壁部は、後述する回転体6を回転可能に支持している。
【0071】
多孔質スクリーン43は、例えば、網状体や、多数の貫通孔を有する板材とすることができる。これにより、ドラム4内の混合物M7は、多孔質スクリーン43を介して収容空間S2の外側に放出され分散される。また、多孔質スクリーン43の目開きサイズや貫通孔の大きさを適宜設定することにより、所望の繊維長さを有する混合物M7を優先的に分散させてメッシュベルト191上に堆積させることができる。
【0072】
図2に示すように、供給部5は、天板41の上方に設置されたポートである。供給部5は、ポート本体51と、ポート本体51に設けられた接続部52とを有する。
【0073】
ポート本体51は、下側に四角形の開口511を有する箱状をなしている。開口511は、天板41の供給口411を十分に包含する程度の大きさを有する長尺な四角形をなしている。ポート本体51は、開口511を介して天板41の供給口411と連通するように天板41の上部に設置されている。これにより、供給部5を介して混合物M7をドラム4内に供給することができる。
【0074】
また、図2に示すように、ポート本体51は、x軸方向から見たとき略三角形をなしている。このため、z軸を法線とする断面で見たとき、ポート本体51は、下側にいくに従って広くなっている。
【0075】
また、ポート本体51の-x軸側の側壁512の上部には、接続部52が設けられている。この接続部52は、-x軸方向に円筒状に突出形成された部分であり、混合物M7が流下する管172が接続されている。
【0076】
管172を流下してきた混合物M7は、まず、接続部52を介してポート本体51内に流入する。そして、ポート本体51内に流入すると、混合物M7は側壁512と対向する側壁513とぶつかるか、その付近まで気流によって搬送される。この際、混合物M7は、ある程度ほぐされて下方に向う。これにより、混合物M7にダマが生じていても、そのままの状態でドラム4内に供給されるのを防止することができる。そして、開口511および供給口411を介してドラム4内に供給される。
【0077】
また、図3に示すように、混合物M7がドラム4に流入する際、前述したように、側壁513に沿って下方に流下するため、ドラム4の中心軸Oよりも+x軸側に流入する。後述するように、回転体6は、+y軸側から見て反時計回りに回転する構成であるため、ドラム4に流入した混合物M7は、そのまま回転体6の回転方向に沿った気流に乗る。すなわち、供給部5は、回転体6の回転方向に沿って、材料である混合物M7を供給する。これにより、混合物M7がドラム4内で滞留してしまうことや、混合物M7を供給部5側に巻き上げることを低減し、ドラム4内で円滑にほぐすことができる。
【0078】
図1図4に示すように、回転体6は、ドラム4内で回転することにより、ドラム4内に供給された混合物M7を撹拌してほぐしつつ、多孔質スクリーン43からの分散を促進する機能を有する。回転体6は、4つの羽根61と、各羽根61を支持する固定されるシャフト62と、を有する。また、シャフト62の中心軸が回転体6の中心軸Oとなっている。この中心軸Oは、回転体6の回転軸でもある。
【0079】
このような回転体6が回転すると、羽根61がドラム4内の混合物M7と接触して撹拌し、繊維をほぐしながら、多孔質スクリーン43に適量を押しつける。これにより、混合物M7が多孔質スクリーン43にて目詰まりするのを防止しつつ、かつ、多孔質スクリーン43の全域から万遍なく混合物M7を分散させることができる。
【0080】
回転体6は、図4に示すように、モーター60に接続されており、モーター60の回転力が伝達されて回転する。また、モーター60は、図示しないモータードライバーを介して制御部28の駆動制御部281と電気的に接続されており、駆動制御部281が通電条件を変更することにより回転速度が調整される。
【0081】
次に、検出部7について説明する。図2図4に示すように、検出部7は、エネルギー線Eを出射する出射部71と、出射部71が出射したエネルギー線Eが入射する入射部72とを有し、混合物M7の存在を検出するものである。
【0082】
図5に示すように、出射部71および入射部72は、制御部28と電気的に接続されており、出射部71の作動は、駆動制御部281によって制御される。また、入射部72は、エネルギー線Eが入射した情報を推定部282に送信する。
【0083】
出射部71と入射部72との間を混合物M7が通過する際、出射部71が出射したエネルギー線Eが混合物M7によって遮られて遮断状態となり、入射部72は、一時的にエネルギー線Eを検出しない。この遮断状態となった情報は、入射部72から後述する推定部282に送信され、推定部282が遮蔽状態となる頻度、すなわち、検出頻度に基づいて混合物M7の量を推定する。このことに関しては、後に詳述する。
【0084】
エネルギー線Eとしては、特に限定されず、例えば、超音波、可視光、赤外光等の光等が挙げられる。これらの中でもエネルギー線Eは、超音波であるのが好ましい。すなわち、検出部7は、超音波センサーであるのが好ましい。検出部7が超音波センサーであると、サンプリング周期を調整して短くすることができる。よって、検出頻度の制度を高めることができる。
【0085】
図2および図4に示すように、出射部71および入射部72は、ハウジング本体31の内面に設置されている。具体的には、出射部71は、+Y軸側の側壁311の内面に設置されており、入射部72は、-Y軸側の側壁311の内面に設置されている。換言すれば、出射部71および入射部72は、Y軸に沿って対向配置されている。なお、出射部71および入射部72は、ハウジング本体31の外面に設置されていてもよい。この場合、ハウジング本体31に貫通孔をそれぞれ形成し、各貫通孔をエネルギー線Eが通過する向きで出射部71および入射部72が設置される。
【0086】
なお、出射部71は、-Y軸側の側壁311の内面に設置され、入射部72は、+Y軸側の側壁311の内面に設置されていてもよい。
【0087】
出射部71は、入射部72に向かって、すなわち、+Y軸側から-Y軸側に向かってエネルギー線Eを出射する。このため、ドラム4内におけるエネルギー線Eの進行方向は、ドラム4の中心軸Oに沿っている。これにより、中心軸O回りに回転する方向に沿って移動する混合物M7が、エネルギー線Eが入射部72に入射するのを遮蔽したり許容したりする挙動がより顕著に表れる。よって、後述するように、検出頻度を正確に把握することができる。
【0088】
また、出射部71および入射部72は、ドラム4内において、中心軸Oよりも上方に位置している。すなわち、ドラム4内において、エネルギー線Eは、ドラム4の中心軸Oよりも鉛直方向上方側、すなわち、中心軸Oよりも+Z軸側を通過する。ドラム4内の中心軸Oよりも下方には、混合物M7が滞留しやすく、遮蔽状態が比較的長く続きやすい傾向を示す。これに対し、上記構成であると、中心軸O回りに回転する方向に沿って移動する混合物M7が一時的に遮蔽状態とすることができる。よって、後述するように、検出頻度を正確に把握することができる。なお、ドラム4の中心軸Oよりも鉛直方向上方側とは、中心軸Oがある位置よりも高い位置のことを言い、中心軸Oの直上に限定されない。
【0089】
次に、制御部28について説明する。
図5に示すように、制御部28は、駆動制御部281と、推定部282と、記憶部283と、を有する。
【0090】
駆動制御部281は、シート製造装置100の各部の駆動を制御するものである。また、前述したように、駆動制御部281は、回転体6を制御し、回転体6の回転速度を調整する。これにより、堆積部18からの混合物M7の放出量を調整することができる。
【0091】
駆動制御部281は、少なくとも1つのプロセッサーで構成される。プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)等が挙げられる。
【0092】
推定部282は、検出部7が混合物M7を検出する検出頻度、すなわち、前述した遮蔽頻度に基づいてドラム4内の混合物M7の量を推定する。検出頻度とは、前述した遮蔽頻度のことであり、単位時間あたりに入射部72にエネルギー線Eが入射するのが阻害された回数、または、単位時間あたりに入射部72にエネルギー線Eが入射するのが阻害された時間の割合のことを言う。
【0093】
推定部282は、このような検出頻度を算出し、検量線Kを参照してドラム4内の混合物M7の量を推定する。検量線Kは、例えば、図6に示すように、横軸が遮蔽頻度、縦軸が滞留量、すなわち、ドラム4内の混合物M7の量で表される。検量線Kは、予め実験的に、検出頻度毎にドラム4内の混合物M7の量を測定し、その値をプロットして得られたデータである。この検量線Kは、記憶部283に記憶されている。
【0094】
なお、検量線Kでは、所定の回転数で回転した場合の回転体6が遮蔽する頻度、すなわち、出射部71および入射部72の間を羽根61が通過する頻度を考慮した検量線である。
【0095】
このような推定部282は、少なくとも1つのプロセッサーで構成される。プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)等が挙げられる。
【0096】
記憶部283は、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラムや、検量線Kや、その他の検量線またはテーブル、各種閾値等が記憶されている。
【0097】
また、この制御部28は、シート製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、シート製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークがシート製造装置100を介して接続されている場合等がある。
【0098】
また、駆動制御部281および推定部282と、記憶部283とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、駆動制御部281および推定部282がシート製造装置100に内蔵され、記憶部283が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部283がシート製造装置100に内蔵され、駆動制御部281および推定部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0099】
このように、繊維体堆積装置10は、検出頻度とドラム4内の材料である混合物M7の量との関係を示す検量線Kが記憶された記憶部283を備える。そして、推定部282は、検出頻度の情報を算出し、検量線Kを参照してドラム4内の混合物M7の量を推定する。これにより、簡単な制御で、ドラム4内の混合物M7を把握することができる。よって、後述するように、堆積部18の作動の制御にフィードバックして、堆積部18からの混合物M7の放出量を調整することができる。よって、第2ウェブM8を、所望の厚さ分布を有するものとすることができ、シートSの品質を高めることができる。
【0100】
また、検出部7は、エネルギー線Eを出射する出射部71と、出射部71が出射したエネルギー線Eが入射する入射部72と、を有し、推定部282は、エネルギー線Eが入射部72に入射する頻度に基づいて検出頻度を算出する。これにより、正確な検出頻度を算出することができる。
【0101】
以上説明したように、繊維を含む材料である混合物M7導入するとともに放出するドラム4を備える堆積部18と、ドラム4内の混合物M7の存在を検出する検出部7と、検出部7が混合物M7を検出する検出頻度に基づいてドラム4内の混合物M7の量を推定する推定部282と、を備える。これにより、ドラム4内の混合物M7の量を把握することができる。よって、後述するように、堆積部18の作動の制御にフィードバックして、堆積部18からの混合物M7の放出量を調整することができる。よって、第2ウェブM8を、所望の厚さ分布を有するものとすることができ、シートSの品質を高めることができる。
【0102】
特に、検出頻度に基づいて混合物M7の量を推定する構成であるため、ドラム4内の混合物M7の重量を測定したりする構成に比べて、装置構成を簡素にすることができるとともに、迅速に混合物M7の量を把握することができる。
【0103】
次に、制御部28が行う制御動作、すなわち、本発明の推定方法の一例について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0104】
まず、ステップS101において、シート製造を開始するとともに、ドラム4内の滞留量の測定、すなわち、検出を開始する。すなわち、検出部7が混合物M7を検出する検出頻度を求める。次いで、ステップS102において、所定の条件で回転体6を稼働する。すなわち、所定の回転数で回転体6を回転させる。これにより、ドラム4内の混合物M7が良好にほぐされ、ドラム4から放出し、第2ウェブM8が生成される。
【0105】
次いで、ステップS103において、ドラム4内の混合物M7の滞留量が規定量を超えているか否かを判断する。この判断は、前述したように、検出部7が混合物M7を検出する検出頻度と、ドラム4内の混合物M7の量との関係を示す検量線Kとに基づいて滞留量を推定し、その推定結果と予め設定された閾値である規定量とを比較することによりなされる。
【0106】
ステップS103において、滞留量が規定量を超えていると判断した場合、ステップS104での回転体6の回転数を上げるようモーター60の作動を制御する。滞留量が規定量を超えていた場合、混合物M7にダマが生じ混合物M7の放出量が所望の量よりも減っているとみなして、回転体6の回転数を上げて、混合物M7の攪拌、ほぐしを促進する。これにより、混合物M7の放出量を増やすように調整することができる。よって、混合物M7の放出量を所望量付近で安定させることができる。
【0107】
なお、ステップS104における回転数の調整は、予め設定された回転数に調整する構成であってもよく、滞留量のレベルに応じて回転数を変更する構成であてもよい。この場合、滞留量と回転数との関係を示す検量線またはテーブルを記憶部283に記憶しておき、この検量線またはテーブルを参照することにより回転数を求めることができる。これらのことは、ステップS106に関しても同様である。
【0108】
なお、ステップS103において、滞留量が規定量を超えていないと判断した場合、ステップS102に移行する。
【0109】
次いで、ステップS105において、再度、ドラム4内の混合物M7の滞留量が規定量を超えているか否かを判断する。ステップS105において、滞留量が規定量を超えていないと判断した場合、ステップS106において、回転体6の回転数を下げるようモーター60の作動を制御する。滞留量が規定量を下回った場合、ドラム4内の混合物M7の滞留量が適正であるとみなし、ステップS102での回転体6の回転数に戻すよう調整する。これにより、混合物M7の放出量を所望量付近で安定させることができる。
【0110】
次いで、ステップS107において、製紙終了か否か、すなわち、シート製造が完了したか否かを判断する。この判断は、例えば、製造されたシートSの枚数が予定数に達したか否かに基づいて行われる。
【0111】
ステップS107において完了したと判断した場合、ステップS108において、規定時間経過後に回転体6を停止するとともに、シート製造装置100の各部の作動を停止する。なお、ステップS107において、完了していないと判断した場合、ステップS102に戻り、以降のステップを順次繰り返す。
【0112】
以上説明したように、本発明の推定方法は、繊維を含む材料を導入し、放出するドラム4を備える堆積部18の前記ドラム4内の混合物M7の量を推定する推定方法である。また、本発明の推定方法は、ドラム4内の混合物M7の存在を検出し、検出頻度に基づいてドラム4内の混合物M7の量を推定する。これにより、ドラム4内の混合物M7の量を把握することができる。よって、例えば、堆積部18の作動の制御にフィードバックして、堆積部18からの混合物M7の放出量を調整することができる。その結果、第2ウェブM8を、所望の厚さ分布を有するものとすることができ、シートSの品質を高めることができる。
【0113】
特に、検出頻度に基づいて混合物M7の量を推定する構成であるため、ドラム4内の混合物M7の重量を測定したりする構成に比べて、装置構成を簡素にすることができるとともに、迅速に混合物M7の量を把握することができる。
【0114】
また、繊維体堆積装置10は、推定部282の推定結果に応じて、堆積部18の作動を制御して混合物M7の放出量を調整する駆動制御部281を備える。これにより、第2ウェブM8を、所望の厚さ分布を有するものとすることができ、シートSの品質を高めることができる。
【0115】
また、堆積部18は、ドラム4内に設置され、回転することによりドラム4内の材料である混合物M7を攪拌する回転体6を有する。そして、駆動制御部281は、推定部282の推定結果に応じて回転体6の回転速度を調整する。これにより、簡単な方法で放出量を調整することができる。よって、第2ウェブM8を、簡単に所望の厚さ分布を有するものとすることができ、シートSの品質を高めることができる。
【0116】
<第2実施形態>
図8は、本発明の繊維体堆積装置の第2実施形態の堆積部の断面図である。図9は、第2実施形態にかかる繊維体堆積装置の記憶部に記憶されている複数の検量線を1つのグラフで示した図である。
【0117】
以下、これらの図を参照して本発明の繊維体堆積装置および推定方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0118】
図8に示すように、本実施形態では、検出部7は、出射部71および入射部72の対を3対有する。1対目は、Y軸方向から見たとき、中心軸O付近に位置している。2対目は、Y軸方向から見たとき、1対目よりもドラム4の外周側に位置している。3対目は、Y軸方向から見たとき、最も外周側に位置している。すなわち、1対目、2対目および3対目は、この順で、中心軸Oから外周側に向かって並んで配置されている。
【0119】
また、これらの3対の出射部71および入射部72は、中心軸Oよりも鉛直方向上方側に位置している。また、1対目、2対目の出射部71および入射部72は、回転体6が回転する際、回転体6が出射部71および入射部72の間を通過する位置に配置されている。一方、3対目の出射部71および入射部72は、回転体6が回転する際、回転体6が出射部71および入射部72の間を通過しない位置に配置されている。
【0120】
このような構成によれば、例えば、ドラム4内の混合物M7の量が多いモードの時は、1対目、すなわち、最も中心軸Oに近い出射部71および入射部72を使用して検出頻度を求める。また、ドラム4内の混合物M7の量が標準量のモードの時は、2対目、すなわち、1対目の外側に位置する出射部71および入射部72を使用して検出頻度を求める。そして、ドラム4内の混合物M7の量が少ないモードの時は、3対目、すなわち、最も外側に位置する出射部71および入射部72を使用して検出頻度を求める。
【0121】
このような構成により、ドラム4内の混合物M7の量に応じて、すなわち、モードに応じて適正な位置で検出頻度を求めることができる。また、本実施形態では、図9に示すように、検量線K1、検量線K2および検量線K3が記憶部283に記憶されている。検量線K1~検量線K3では、検出頻度と滞留量との関係が異なっている。すなわち、同じ検出頻度であったとしても、検出する位置によって、滞留量が異なっている。
【0122】
このように、検出位置の違いによる滞留量の変動を考慮した検量線K1~検量線K3を記憶部283に記憶しておき、検出頻度から滞留量を求める際、最適な検量線を参照することにより、モードによらず、正確に滞留量を推定することができる。
【0123】
このように、本実施形態では、出射部71および入射部72は、ドラム4内の異なる位置に複数対配置されている。これにより、前述したような、ドラム4内の混合物M7の滞留量が異なるモードに応じて、適した位置の出射部71および入射部72を用いて検出頻度を求めることができる。よって、モードによらず、正確に滞留量を推定することができる。
【0124】
なお、検量線K1および検量線K2に関しては、所定の回転数で回転した場合の回転体6が遮蔽する頻度を考慮した検量線であり、検量線K3に関しては、回転体6が遮蔽するのを考慮していない検量線である。
【0125】
以上、本発明の繊維体堆積装置および推定方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、繊維体堆積装置および推定方法を構成する各部、各工程は、同様の機能を発揮し得る任意の構成、工程と置換することができる。また、任意の構成物、工程が付加されていてもよい。
【0126】
また、本発明の繊維体堆積装置および推定方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や特徴を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0127】
3…ハウジング、4…ドラム、5…供給部、6…回転体、7…検出部、10…繊維体堆積装置、11…原料供給部、12…粗砕部、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、17…混合部、18…堆積部、19…第2ウェブ形成部、20…シート成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、31…ハウジング本体、41…天板、42…側壁、43…多孔質スクリーン、51…ポート本体、52…接続部、60…モーター、61…羽根、62…シャフト、71…出射部、72…入射部、100…シート製造装置、121…粗砕刃、122…シュート、141…ドラム部、142…ハウジング部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング部、171…樹脂供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1カッター、212…第2カッター、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…駆動制御部、282…推定部、283…記憶部、311…側壁、312…下側開口、313…上側開口、411…供給口、511…開口、512…側壁、E…エネルギー線、K…検量線、K1…検量線、K2…検量線、K3…検量線、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、O…中心軸、S…シート、S1…空間、S2…収容空間、P1…樹脂
図1
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図9