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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】インク収容体及びインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/328 20140101AFI20250226BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250226BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20250226BHJP
【FI】
C09D11/328
B41J2/175 115
B41M5/00 120
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020163406
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055786
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】隈本 聖観
(72)【発明者】
【氏名】水瀧 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中野 智仁
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076048(JP,A)
【文献】特開2004-131559(JP,A)
【文献】特開2008-018663(JP,A)
【文献】特開平11-005932(JP,A)
【文献】特開2018-141102(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065636(WO,A1)
【文献】特表2009-512737(JP,A)
【文献】特開2020-116870(JP,A)
【文献】特開昭63-118258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41M 5/00
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物が収容されたインク収容体であって、
前記インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1
染料と、を含有し、
前記インク組成物における前記第1染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して
0.5質量%以上であり、
前記インク組成物が前記インク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm2)と
し、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm3)とした場
合に、比(A/V)の値が1.7以下であり、
前記インク組成物は、最大吸収波長を500nm以上580nm以下に有する第2染料
を含有し、
前記インク組成物における前記第2染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して
0.2質量%以上2.0質量%以下であり、
前記第2染料は、下記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(M-
2)で表される化合物又はその塩、から選択され、
前記インク組成物は、前記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、前記式(
M-2)で表される化合物又はその塩を含有し、
前記インク組成物における前記式(M-1)で表される化合物又はその塩の含有量は、
前記インク組成物における前記式(M-2)で表される化合物又はその塩の含有量よりも
小さい、インク収容体。
【化1】
・・・式(B-1)
【化2】
・・・式(M-1)
【化3】
・・・式(M-2)
【請求項2】
請求項1において、
最大吸収波長を480nm未満に有する第3染料を含有し、
前記第3染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.2質量%以上2.0質
量%以下である、インク収容体。
【請求項3】
請求項2において、
前記第3染料が、下記式(Y-1)で表される化合物又はその塩である、インク収容体

【化4】
・・・式(Y-1)
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
染料固形分の合計量が、前記インク組成物の総量に対して、6.8質量%以下である、
インク収容体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記インク収容体は、前記インク組成物が接する部分に金属を含まない、インク収容体
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記インク収容体に前記インク組成物が収容された状態で、前記インク組成物が空気と
接する構造を有する、インク収容体。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記インク組成物は、炭素数3以上のアルカノールアミンをさらに含有し、
前記アルカノールアミンの含有量と前記第1染料の含有量とが、以下の式(1)の関係
を満たす、インク収容体。
0.1<(アルカノールアミンの含有量)/(第1染料の含有量)<0.6・・・(1)
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記インク組成物は、有機酸をさらに含有し、
前記有機酸の含有量と前記第1染料の含有量とが、以下の式(2)の関係を満たす、イ
ンク収容体。
0.01<(有機酸の含有量)/(第1染料の含有量)<0.1・・・(2)
【請求項9】
インク収容体に収容されたインク組成物であって、
前記インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1
染料と、を含有し、
前記第1染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、
前記インク組成物が前記インク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm2)と
し、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm3)とした場
合に、比(A/V)の値が1.7以下であり、
前記インク組成物は、最大吸収波長を500nm以上580nm以下に有する第2染料
を含有し、
前記インク組成物における前記第2染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して
0.2質量%以上2.0質量%以下であり、
前記第2染料は、下記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(M-
2)で表される化合物又はその塩、から選択され、
前記インク組成物は、前記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、前記式(
M-2)で表される化合物又はその塩を含有し、
前記インク組成物における前記式(M-1)で表される化合物又はその塩の含有量は、
前記インク組成物における前記式(M-2)で表される化合物又はその塩の含有量よりも
小さい、インク組成物。
【化5】
・・・式(B-1)
【化6】
・・・式(M-1)
【化7】
・・・式(M-2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク収容体及びインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法において、無彩色画像をブラックインク単独で形成すると、その無彩色の色が薄い場合に粒状感が現れることがある。この粒状感の出現をなくすため、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクを併用して無彩色領域を形成することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブラックの特定の染料を含むブラックインクと、特定の染料を含むカラーインクと、をDuty30%以下で記録媒体に付着させ、無彩色画像を記録するインクジェット記録方法が開示され、Dutyが低くても、色相、粒状性、及び耐オゾン性に優れる無彩色画像が得られる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-168942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、得られる画像の粒状性や耐オゾン堅牢性を良好とする可能性のある特定の染料の中には、保存安定性に劣るものがあり、保存により発色性が劣化する場合があった。かかる保存による発色性の低下は、染料の化学構造が一因となっていると考えられるが、その機序は必ずしも解明されていなかった。すなわち、耐オゾン堅牢性が良好なインク組成物を、良好な保存安定性で収容できるインク収容体が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインク収容体の一態様は、
インク組成物が収容されたインク収容体であって、
前記インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、を含有し、
前記インク組成物における前記第1染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、
前記インク組成物が前記インク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下である。
【0007】
【化1】
・・・式(B-1)
【0008】
本発明に係るインク組成物の一態様は、
水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、
下記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(M-2)で表される化合物又はその塩から選択される第2染料と、
を含有し、
前記第1染料の含有量が、総量に対して0.5質量%以上である。
【0009】
【化2】
・・・式(B-1)
【0010】
【化3】
・・・式(M-1)
【0011】
【化4】
・・・式(M-2)
【0012】
本発明に係るインク組成物の一態様は、
インク収容体に収容されたインク組成物であって、
前記インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、を含有し、
前記第1染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、
前記インク組成物が前記インク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下である。
【0013】
【化5】
・・・式(B-1)
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】記録装置の第1実施形態の概略構成を透視状態で模式的に示す斜視図。
図2】記録装置の筐体内に備えられたインク供給ユニットを示す斜視図。
図3】同じくインク供給ユニットの平面図。
図4図3における4-4線矢視の一部破断面図。
図5図3における5-5線矢視の一部破断面図。
図6】キャップが取り外された状態にあるインク収容体の斜視図。
図7】インク収容体の側面図。
図8】インク収容体の正面図。
図9】インク収容体の平面図。
図10図9における10-10線矢視断面図。
図11図9における11-11線矢視断面図。
図12】インクタンクに対するインク補給作業直前の状態を示す一部破断正面図。
図13】インクタンクに対するインク補給作業直前の状態を示す一部破断側面図。
図14】インクタンクに対するインク補給作業中の状態を示す一部破断正面図。
図15】インクタンクに対するインク補給作業中の状態を示す一部破断側面図。
図16】インク補給時にインク収容体の位置決め部がインクタンク側の受け面に当接した状態を示す一部破断正面図。
図17】インク補給時にインク収容体の位置決め部がインクタンク側の受け面に当接した状態を示す一部破断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0016】
1.インク収容体
本実施形態に係るインク収容体は、インク組成物が収容されたインク収容体である。インク収容体に収容されたインク組成物は、水と、第1染料と、を含有する。そして、当該インク組成物における第1染料の含有量が、インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、インク組成物がインク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、インク収容体中に収容されたインク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下である。
【0017】
以下、インク収容体に収容されるインク組成物について説明した後、インク収容体について説明する。
【0018】
1.1.インク組成物
本実施形態のインク収容体に収容されるインク組成物は、水と、第1染料と、を含有する。インク組成物は、インクジェット記録に特に好適に用いることができるので、インクジェットインク組成物としてもよい。
【0019】
1.1.1.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含む。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
【0020】
水の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。水の含有量が40質量%以上であることにより、インク組成物の粘度を十分低くすることができる。また、水の含有量の上限は、インク組成物の総量に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0021】
1.1.2.第1染料
本実施形態に係るインク組成物は、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料を含有する。
【0022】
【化6】
・・・式(B-1)
【0023】
式(B-1)表される化合物の塩としては、4つのSOH基のHの少なくとも1つが、それぞれ独立にLi、Na、K、NHとなった化合物が挙げられる。すなわち、式(B-1)表される化合物の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及び、それらが混合した塩が挙げられる。また、式(B-1)表される化合物の塩は、水溶液中で電離した場合に、水素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びアンモニウムイオンの少なくとも1種が当該水溶液中に存在するものと言える。
【0024】
第1染料は、ブラック系の染料であって、550nm以上630nm以下に最大吸収波長を有する。インク組成物に第1染料が含有されることにより、ニュートラルなブラック(青味や赤味を帯びていないブラック)を発色させやすいブラックインク又はグレーインクとすることができる。
【0025】
また、第1染料は、耐オゾン堅牢性に優れるので、本実施形態のインク組成物により形成される画像の耐オゾン堅牢性を良好にすることができる。
【0026】
1.1.3.その他の染料
本実施形態のインク組成物は、上記第1染料の他に以下のような染料を含んでもよい。
【0027】
1.1.3.(1)第2染料
インク組成物は、最大吸収波長を500nm以上580nm以下に有する第2染料を含有してもよい。最大吸収波長が500nm以上580nm以下の範囲にある染料は、マゼンタの色相を有している。
【0028】
インク組成物が第2染料を含有する場合には、インク組成物により形成される画像の色相をニュートラルに近づけやすくなる。
【0029】
第2染料は、複数種の染料の混合物であってもよい。インク組成物が第2染料を含有する場合には、インク組成物における第2染料全体の含有量は、インク組成物の総量に対して0.15質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.2質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下である。
【0030】
また、インク組成物が第2染料を含有する場合、第1染料との比率で言うと、第2染料全体の含有量は、第1染料の含有量に対する第2染料の含有量の質量比として、第1染料の含有量を1としたとき、0.05以上1.00以下であることが好ましく、0.1以上0.8以下であることがより好ましく、0.1以上0.5以下であることがさらに好ましい。
【0031】
第2染料としては、発色性、耐オゾン性、耐光性等の観点から、下記式(M-1)で表される化合物又はその塩、下記式(M-2)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(M-3)で表される化合物又はその塩、から選択されることがより好ましい。
【0032】
【化7】
・・・式(M-1)
【0033】
【化8】
・・・式(M-2)
【0034】
【化9】
・・・式(M-3)
【0035】
式(M-1)、式(M-2)及び式(M-3)において、それぞれ構造中に幾つかの酸基を含むが、それらはそれぞれ独立に酸塩の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、各酸基におけるカウンターカチオンは同じでも異なってもよい。
【0036】
さらに、第2染料としては、発色性、耐オゾン性、耐光性等をさらに良好とする点から、上記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、上記式(M-2)で表される化合物又はその塩、から選択されることがさらに好ましい。特に式(M-1)は、耐オゾン性を良好に保つことができる傾向があり好ましい。特に式(M-2)は、発色性を良好とする観点で好ましい。
【0037】
第2染料が、式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、式(M-2)で表される化合物又はその塩、から選択される場合には、インク組成物により形成される画像の色相をさらにニュートラルに近づけやすくなる。
【0038】
第2染料を用いる場合、インク組成物に含まれる第1染料の色味の補色として第2染料が機能するので、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。なお、第1染料は、わずかにグリーンの色味を帯びている。
【0039】
インク組成物は、第2染料として、式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、前記式(M-2)で表される化合物又はその塩の両方を含有する場合、好ましい含有比率を有する。すなわち、この場合、インク組成物における式(M-1)で表される化合物又はその塩の含有量は、インク組成物における式(M-2)で表される化合物又はその塩の含有量よりも小さいことがより好ましい。これにより、耐オゾン性を良好に保ちつつ、ニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0040】
1.1.3.(2)第3染料
インク組成物は、最大吸収波長を480nm未満に有する第3染料を含有してもよい。最大吸収波長が480nm未満の範囲にある染料は、イエローの色相を有している。
【0041】
インク組成物が第3染料を含有する場合には、インク組成物により形成される画像の色相をニュートラルに近づけやすくなる。
【0042】
第3染料は、複数種の染料の混合物であってもよい。インク組成物が第3染料を含有する場合には、インク組成物における第3染料全体の含有量は、インク組成物の総量に対して0.15質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.2質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下である。
【0043】
また、インク組成物が第3染料を含有する場合、第1染料との比率で言えば、第3染料全体の含有量は、第1染料の含有量に対する第3染料の含有量の質量比として、第1染料の含有量を1としたとき、0.05以上1.00以下であることが好ましく、0.1以上0.8以下であることがより好ましく、0.1以上0.5以下であることがさらに好ましい。
【0044】
第3染料としては、発色性、耐オゾン性、耐光性等の観点から、下記式(Y-1)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(Y-2)で表される化合物又はその塩から選択されることがより好ましい。
【0045】
【化10】
・・・式(Y-1)
【0046】
【化11】
・・・式(Y-2)
【0047】
式(Y-1)及び式(Y-2)において、それぞれ構造中に幾つかの酸基を含むが、それらはそれぞれ独立に酸塩の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、各酸基におけるカウンターカチオンは同じでも異なってもよい。
【0048】
さらに、第3染料としては、発色性、耐オゾン性、耐光性等をさらに良好とする点から、上記式(Y-1)で表される化合物又はその塩であることがさらに好ましい。
【0049】
第3染料が、式(Y-1)で表される化合物又はその塩である場合には、インク組成物により形成される画像の色相をさらにニュートラルに近づけやすくなる。
【0050】
1.1.3.(3)その他の染料
本実施形態のインク組成物は、第1染料、第2染料及び第3染料以外の色材を含有してもよい。そのような色材としては、例えば。C.I.アシッドブラック1、2、24、41、94、C.I.ダイレクトブラック19、29、38、51、71、122、154、168、195、C.I.リアクティブブラック3、4、5、8、13、14、31、34、35、39、C.I.ベーシックブラック2、8、C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289等が挙げられる。しかし、これらの色材は、インク組成物の総量に対して0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下で用いることが好ましい。すなわち、インク組成物は、上述の第1染料、第2染料及び第3染料を主たる染料として用いることが好ましい。
【0051】
1.1.3.(4)ニュートラルな色相
本実施形態のインク組成物は、概ねブラックからグレーの色相を有しており、必要に応じて上記第2染料、上記第3染料及び上記その他の染料の少なくとも一種を用いることにより、黒又は灰色であって他の色味が小さいいわゆるニュートラルな色相が得られやすくなっている。なお、ニュートラルな色相とは、Lab表色系におけるa値の絶対値が2.5未満、b値の絶対値が2.5未満程度、より好ましくはa値の絶対値が1.5未満、b値の絶対値が1.5未満程度であることを指す。
【0052】
1.1.4.染料の含有量
本実施形態のインク組成物においては、染料固形分の合計量が、インク組成物の総量に対して、6.8質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。これにより、目詰まり回復性を良好なものとすることができる。また、得られる画像の粒状感をさらに抑えるとともに、ニュートラルな色相の画像を形成することができる。また、染料固形分の合計量は、インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
【0053】
1.1.5.染料以外のその他の成分
1.1.5.(1)アルカノールアミン
インク組成物は、炭素数3以上のアルカノールアミンをさらに含有してもよい。アルカノールアミンとしては、限定されないが、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ-、ジ-又はトリ-C1-C4アルカノールアミンが挙げられる。なお、アルカノールアミンの炭素数は、炭素の総数である。これらの中でも、炭素数3以上のヒドロキシアルキル基を有するトリアルカノールアミンは、インク組成物の保存安定性を良好とする観点でより好ましい。このようなアルカノールアミンとしては、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0054】
インク組成物がアルカノールアミンを含む場合、得られる画像の色相がよりニュートラルな画像を得やすい。また、インク組成物は、アルカノールアミンを複数種含有してもよい。さらに、インク組成物がアルカノールアミンを含む場合、アルカノールアミンの合計含有量と第1染料の含有量とが、以下の式(1)の関係を満たすことがより好ましい。
0.1<(アルカノールアミンの含有量)/(第1染料の含有量)<0.6・・・(1)
これにより、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0055】
1.1.5.(2)有機酸
インク組成物は、有機酸を含有してもよい。有機酸としては限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸等を例示できる。
【0056】
インク組成物が有機酸を含む場合、得られる画像の色相がよりニュートラルな画像を得やすい。インク組成物は、複数種の有機酸を含有してもよい。さらに、インク組成物が有機酸を含む場合、有機酸の合計含有量と第1染料の含有量とが、以下の式(2)の関係を満たしてもよい。
0.01<(有機酸の含有量)/(第1染料の含有量)<0.1・・・(2)
これにより、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0057】
1.1.5.(3)その他の成分
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤、有機溶剤、及び、その他の成分を含有してもよい。
【0058】
1)界面活性剤
インク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、インク組成物の表面張力を低下させて、記録媒体に対する浸透性を高める機能を有している。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を使用できる。
【0059】
インクに界面活性剤を添加する場合の含有量は、インクの全質量に対し、0.01質量%以上、3.00質量%以下である。好ましくは、0.05質量%以上、2.00質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以上、1.00質量%以下であり、さらにより好ましくは、0.20質量%以上、0.50質量%以下である。界面活性剤の含有量を上記範囲とすることによって、起泡を抑えて印刷時の吐出安定性を確保すると共に、記録媒体に付着した際のインクの濡れ広がり(濡れ性)を向上させることができる。
【0060】
ノニオン系界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などを用いることができる。これらの界面活性剤を用いることにより、比較的に少量の含有量で、記録媒体に対する濡れ性を向上させることができる。
【0061】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オールなどのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0062】
このようなアセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、サーフィノール(登録商標)104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(商品名、Air Products and Chemicals, Inc.社)、オルフィン(登録商標)B、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(商品名、日信化学工業社)、アセチレノール(登録商標)E00、E00P、E40、E100(商品名、川研ファインケミカル社)などが挙げられる。
【0063】
フッ素系界面活性剤としては、市販品が採用可能であり、例えば、メガファック(登録商標)F-479(商品名、DIC社)、BYK-340(商品名、BYK社)などが挙げられる。
【0064】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が採用可能である。ポリシロキサン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-302、306、307、333、341、345、346、347、348(商品名、BYK社)、KF-351A、352A、353、354L、355A、615A、945、640、642、643、6020、6011、6012、6015、6017、X-22-4515(商品名、信越化学工業社)などが挙げられる。
【0065】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩化合物、N-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩などのアミン塩化合物が挙げられる。
【0067】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルアミノ脂肪酸塩などのアミノ酸化合物が挙げられる。
【0068】
上述した界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
2)有機溶剤
インク組成物には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を添加することにより、粘度、表面張力などの物性や、記録媒体に付着させた際の乾燥、浸透などの挙動を制御することができる。有機溶剤としては、例えば、2-ピロリドン類、1,2-アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を用いることが可能である。
【0070】
2-ピロリドン類とは、2―ピロリドン骨格を有する化合物のことをいう。2-ピロリドン類としては、例えば、置換基を有していない2-ピロリドンの他に、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどの置換基を有する化合物が用いられる。2―ピロリドン骨格における置換基は、炭素数が1以上、5以下の、飽和又は不飽和の炭化水素基などの有機基が好ましい。これらの中でも、インクの保存安定性及び凝集物の発生を抑制する効果に優れている、2-ピロリドンを用いることがより好ましい。
【0071】
2-ピロリドン類を添加する場合の含有量は、インクの全質量に対して、0.9質量%以上、8.1質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0質量%以上、8.0質量%以下である。2-ピロリドン類の含有量を上記の範囲内とすることにより、インクの粘度の増加を抑えて、インクの吐出安定性を向上させることができる。
【0072】
1,2-アルカンジオール類としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなどが挙げられる。1,2-アルカンジオール類は、記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて、均一に濡らす作用に優れている。そのため、滲みを抑えた印刷物を作製することができる。1,2-アルカンジオール類を添加する場合の含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
【0073】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリンなどが挙げられる。多価アルコール類をインクに添加することよって、インクジェットヘッドの吐出ノズル内におけるインクの乾燥固化を抑制して、吐出ノズルの目詰まりや吐出不良などを低減することができる。多価アルコール類を添加する場合の含有量は、インクの全質量に対して、2質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。なお、20℃では固体の多価アルコール類も、有機溶剤の多価アルコール類と同様な作用を有しており、同様に用いてもよい。20℃で固体の多価アルコール類としては、例えば、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0074】
グリコールエーテル類としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテルやアルキレングリコールジエーテルなどが挙げられる。
【0075】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0076】
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0077】
グリコールエーテル類をインクに添加することよって、記録媒体に対する濡れ性や浸透速度を調整できるため、画像や模様などを鮮明に形成することができる。グリコールエーテル類を添加する場合の含有量は、インクの全質量に対して、0.05質量%以上、6質量%以下であることが好ましい。
【0078】
上述した有機溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。その場合、インクにおける有機溶剤の合計の含有量は、インクの全質量に対し、0.2質量%以上、30.0質量%以下であり、好ましくは、0.4質量%以上、20.0質量%以下であり、より好ましくは、0.5質量%以上、15.0質量%以下である。有機溶剤の合計の含有量を上記の範囲とすることにより、インクの粘度の増大の抑制、記録媒体に付着させた際の挙動(浸透及び濡れ広がり)の調節、印刷時の吐出安定性の向上などが可能となる。
【0079】
3)その他
インクには、その他の成分として、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0080】
pH調整剤としては、例えば、尿素類、モルホリン類、ピペラジン類、アミノアルコール類、等を例示できる。尿素類としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N-トリメチルアラニン、N,N,N-トリエチルアラニン、N,N,N-トリイソプロピルアラニン、N,N,N-トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、インク組成物の洗浄性を調節することができる。なお、上述のアルカノールアミンは、pH調節剤としての機能も有する。
【0081】
防かび剤・防腐剤としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。防かび剤・防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。
【0082】
1.1.6.インク組成物の物性、調製等
インク組成物の25℃における表面張力は、10mN/m以上、40mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN/m以上、40mN/m以下であり、さらに好ましくは、20mN/m以上、35mN/m以下である。25℃における表面張力を、上記の範囲とすることにより、インクジェット法に用いる際に、吐出ノズルからのインク組成物の吐出安定性が向上する。なお、インク組成物の表面張力は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社)を用いて、25℃の環境下にて、白金プレートの一部をインク組成物に浸漬させて測定することが可能である。
【0083】
インク組成物がインクジェット法により用いられる場合、インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s(ミリパスカル秒)以上、15mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは、2mPa・s以上、10mPa・s以下であり、さらに好ましくは、3mPa・s以上、6mPa・s以下である。なお、インク組成物の粘度は、例えば、粘弾性試験機MCR-300(Pysica社)を用いて測定することが可能である。具体的には、インク組成物の温度を20℃に調整し、Shear Rateを10から1000に上げ、Shear Rateが200のときの粘度を読み取ることにより測定される。
【0084】
本実施形態のインク組成物は、上述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネットスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、材料を順序添加して撹拌、混合する方法が用いられる。濾過の方法としては、遠心濾過、フィルター濾過などがある。
【0085】
1.2.インク組成物の他の特徴
インク組成物は、水と、第1染料と、第2染料と、を含有し、第1染料の含有量が、総量に対して0.5質量%以上であるという点に特徴を有してもよい。このようなインク組成物によれば、粒状性が抑制され、かつ、耐オゾン堅牢性が良好で、ニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0086】
また、インク組成物は、後述するインク収容体に収容されたインク組成物としてもよく、その場合、インク組成物は、水と、第1染料と、を含有し、第1染料の含有量が、インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、かつ、インク組成物がインク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下である、という点に特徴を有してもよい。このようにすれば、粒状性が抑制され、かつ、耐オゾン堅牢性が良好な画像を形成することができ、保存安定性も良好にすることができる。
【0087】
1.3.インク収容体
以下、本実施形態に係るインク収容体の一例について、図を参照しながら説明する。なお、この実施形態のインク収容体は、媒体に対してインクを吐出することによって、媒体に画像等の記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンター(記録装置)のインクタンクに対して、インク組成物を補給するためのボトルとなっている。また、以下の説明では、インク組成物を単にインクと称することがある。
【0088】
図1に示すように、記録装置21は、左右方向を長手方向とする直方体形状の筐体22を備えている。なお、図1は、記録装置21における筐体22内を透視した状態で簡略的に図示している。筐体22内における後方寄りの下部には、左右方向を長手方向とする支持台23が、その上面を略水平方向に沿わせるようにして設けられている。媒体の一例である用紙Pは、この支持台23の上面に支持されつつ、搬送方向となる前方に向けて搬送される。また、筐体22内における支持台23の上方位置には、左右方向に沿って延びるガイド軸24が架設され、そのガイド軸24にはインクを吐出する記録ヘッド25を下面側に備えたキャリッジ26が支持されている。すなわち、キャリッジ26は、左右方向に貫通する支持孔27にガイド軸24が挿通された状態で、そのガイド軸24に対して左右方向への往復移動自在に支持されている。
【0089】
また、筐体22内においてガイド軸24の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー28と従動プーリー29とがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー28にはキャリッジモーター30の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー28と従動プーリー29との間には一部がキャリッジ26に連結された無端状のタイミングベルト31が巻き掛けられている。そして、キャリッジモーター30の駆動によりキャリッジ26がタイミングベルト31を介してガイド軸24にガイドされつつ用紙Pに対する走査方向となる左右方向に沿って往復移動するときに、支持台23上を前方に搬送される用紙Pに対してキャリッジ26の下面側の記録ヘッド25から用紙Pに対してインクが吐出される。
【0090】
また、図1に示すように、筐体22の前面側において支持台23の前方側となる位置には、筐体22内で支持台23上を搬送されるときに記録ヘッド25からのインクの吐出により記録を行われた用紙Pを前方側に排出する矩形の排出口32が開口している。排出口32には、筐体22内から排出される用紙Pを支持可能な矩形板状の排出トレイ33が、排出方向である前方への出没自在に設けられている。また、排出口32内において、排出トレイ33の下側には記録に用いる複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な給紙カセット34が前後方向への挿抜自在に装着されている。
【0091】
また、図1に示すように、筐体22における前面であって排出口32よりも左右方向の端部側(図1では、右端部側)となる位置には、前面と上面が矩形状で右側面が直角三角形状をなす開閉扉35が、その下端に設けられた左右方向に沿う回転軸36を回転中心として前後方向への開閉動作自在に設けられている。この開閉扉35の前面には、矩形状の透明部材からなる窓部37が形成されており、ユーザーは開閉扉35を閉じた状態で筐体22の内部(特に、開閉扉35の前面の裏側)を視認できるようになっている。
【0092】
記録装置21の筐体22内において、開閉扉35の裏側となる位置、すなわち前面寄りで且つ端部寄り(この場合は右端部寄り)となる位置には、記録ヘッド25に対してインクを供給するインク供給ユニット40が収容されている。インク供給ユニット40は、複数(本実施形態では5つ)のインクタンク41~45を含んで一体的に取り扱い可能とされた構造体であり、後で述べるように、各インクタンク41~45にはインクが補給可能とされている。
【0093】
図2及び図3に示すように、インク供給ユニット40は、前後方向に長い変形箱形状の5つのインクタンク41~45と、各インクタンク41~45の後面側から引き出された5つのインク供給チューブ46と、それらのインクタンク41~45を一括にした状態で組み付けられる直方体形状のインク補給用アダプター47を含んで構成されている。このインク補給用アダプター47は、全てのインクタンク41~45が厚さ方向を左右方向にして横並びに配置された状態において、全てのインクタンク41~45の上部前半部分に切欠形成された段差部48に組み付けられることで、インクタンク41~45と一体化されている。なお、図1に示すように、インクタンク41~45から引き出されたインク供給チューブ46は、キャリッジ26内に形成されたインク流路(図示略)に接続され、そのインク流路を介して記録ヘッド25に接続されている。尚、インク補給用アダプター47は、インクタンク41~45を覆う筐体22の一部を構成するものであってもよく、インクタンク41~45と一体的に形成されていてもよい。
【0094】
図4及び図5に示すように、インクタンク41~45は、その内部にインク組成物IKを貯留可能なインク貯留室49を有している。本実施形態の場合、その横並び方向で右端に位置するインクタンク41のインク貯留室49にはブラックインクが貯留される。そして、横並び方向で右端のインクタンク41よりも左側に並ぶ他の各インクタンク42~45のインク貯留室49にはブラック以外のカラー(シアン、マゼンタ、イエローなど)インクが貯留される。また、インクタンク41~45において筐体22の前面の窓部37を介して視認可能とされる前壁部には、インク貯留室49内のインク組成物IKの液面を視認可能とする透明樹脂で形成された視認部50が設けられている。そして、その視認部50には、インク貯留室49内に貯留されるインク組成物IKの液面の上限の目安(インクをインク入口53から溢れさせずに注入可能なインク量の目安の例)を示す上限マーク51と下限の目安(例えば、インクの補給を促す目安)を示す下限マーク52が記されている。
【0095】
図4に示すように、インクタンク41~45において段差部48の水平部分の上側には外部からインク貯留室49内へのインクの流入を可能とするインク入口53が設けられている。インク入口53は、インク貯留室49の内部と外部とを連通する流路54,55を有して鉛直上方に向けて延びる針56を含んで構成されている。針56の流路54,55は、各々の先端開口が針56を中心とする放射方向に並んで配置された2つの流路54,55からなり、それら2つの流路54,55のうち一方(図4では右側)の流路54は、他方(図4では左側)の流路55よりも、その先端開口の高さが低く且つその流路の断面積が大きく形成されている。なお、インク貯留室49内の後方寄り下部には、インク貯留室49内のインク組成物IKの残量を検出するための残量センサー57が設けられている。尚、残量センサー57は設けられていなくてもよい。
【0096】
図2図5に示すように、インク補給用アダプター47は、その上面58が針56の延びる方向と直交(交差)する方向に沿う水平な面とされ、その上面58には下面59まで上下方向に貫通する貫通孔60がインク入口形成部として形成されている。この貫通孔60は、針56が中央に配置される円孔形状のインク入口53と、インク入口53の前後に連なる前後一対の矩形孔部からなり、その下側の開口はインクタンク41~45において針56を上方に向けて突設した段差部48の水平部分により塞がれている。
【0097】
そのため、貫通孔60において、インク入口53を中心とする放射方向でインク入口53の外側となる領域には、下側の開口を塞がれた前後一対の矩形孔部により、針56の延びる方向である上側に開口する前後一対の凹部61が、インク入口53を中心として点対称となるように鉛直下方を深さ方向として窪み形成される。すなわち、インクタンク41~45に一体化されたインク補給用アダプター47において針56を含むインク入口53の外側となる領域には、インク入口53を中心として点対称をなす複数(この場合は前後で対をなす2つ)の凹部61が形成されることになる。なお、この場合において、円孔形状のインク入口53の中心に配置される針56の先端は、インク入口53と凹部61とが含まれる貫通孔60の開口縁となるインク補給用アダプター47の上面58よりも、インク貯留室49側に位置している。すなわち、インク補給用アダプター47の上面58は、針56の延びる方向において該針56の先端よりも外側の位置で該針56が延びる方向と交差する方向に延びている。その一方、インク補給用アダプター47の下面59は、左右方向へ横並びにした複数のインクタンク41~45に対してそれらを一括にして上側から係合するタンク係合部として機能する。
【0098】
また、インク補給用アダプター47の上面58のうち、各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、特定の色に着色されている。すなわち、その貫通孔60のインク入口53を介してインクが流入されるインクタンク41~45のインク貯留室49に貯留されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給用アダプター47における各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、その貫通孔60のインク入口53とインク貯留室49が連通するインクタンク41~45が内部に貯留しているインクに関わる情報を外部に示す第1部分として機能している。因みに、インクタンク41~45に貯留されるインクは、特に制限はないが、本実施形態のインク組成物を収容したインク収容体から供給されるインクタンクをインクタンク41とすれば、ブラック又はグレーのブラックインクを貯留することとなるので、インクタンク41のインク貯留室49と連通するインク入口53が配置される貫通孔60の上側開口の周辺部分はブラック又はグレーに着色される。
【0099】
また、凹部61の内面(具体的には上下方向に沿う内側面)において、その凹部61の上側の開口縁よりも底面側(すなわち、段差部48の水平部分側)となる位置には、水平方向に特徴的な凹凸形状を呈する第1凹凸部(第1キー構造部)62が、凹部61の深さ方向(換言すると、インク入口53の中心軸の方向)に沿って延びるように設けられている。図2及び図3に示すように、第1凹凸部62は、複数(本実施形態では5つ)あるインクタンク41~45のインク入口53ごとに設けられる。そのため、インク補給用アダプター47において、各インクタンク41~45と上下方向で各々対応する位置に形成された各貫通孔60における矩形の凹部61には、それぞれ貫通孔60ごとに他の貫通孔60の凹部61の内面に設けられた第1凹凸部62とは異なる第1凹凸部62が形成されている。すなわち、これらの第1凹凸部62は、その第1凹凸部62が形成された貫通孔60内のインク入口53に接続されるインク出口65(図6等参照)を有するインク収容体63(図6等参照)を識別可能とする識別部として機能するものである。なお、「凹部61の上側の開口縁よりも底面側となる位置」とは、開口縁よりも若干でも底面側に後退した位置であればよいことを意味する。
【0100】
そこで次に、インクタンク41~45と共にインク補給システムを構成し、インク残量が少なくなったインクタンク41~45にインクを補給するインク補給容器として、インク収容体63について説明する。インク収容体63には、上述のインク組成物が収容されている。
【0101】
図6図8に示すように、インク収容体63は、その主体となる円筒状の容器本体部64と、容器本体部64の先端部に設けられ、インク収容体63内からのインクの流出を可能とするインク出口65が先端に開口形成されたインク出口形成部66と、インク出口形成部66にインク出口65を囲むように付加される容器付加部67とを備えている。インク出口形成部66のインク出口65は、その周りの容器付加部67も含めて有底筒状のキャップ68により覆われることで、インク収容体63の保管時には、外部から隠蔽される。すなわち、容器付加部67の円筒状をなす下端部の外周面には雄ねじ部69が形成される一方、キャップ68の内周面には図示しない雌ねじ部が形成されており、容器付加部67の雄ねじ部69にキャップ68の雌ねじ部を螺合させることにより、キャップ68はインク収容体63の先端部に対してインク出口65を覆うように取着される。
【0102】
なお、容器付加部67は、その外面全体が特定の色に着色されている。すなわち、その容器付加部67が付加される容器本体部64内に収容されているインクの色と同色に着色されている。因みに、ブラック又はグレーインクを収容するインク収容体63における容器付加部67の外面はブラック又はグレーに着色される。また、容器本体部64とキャップ68の各基端部の外周面には、等角度間隔(一例として90度間隔)で複数(本実施形態では4つ)の突起70が形成されている。因みに、これらの突起70は円筒状をなすインク収容体63の転がり防止を図るために形成されたものである。更に、例えばブラックインクを収容するインク収容体63の容器本体部64は、他の色のインクを収容するインク収容体63の容器本体部64よりも太く形成してもよい。その場合、インク出口形成部66はブラックインク用と他の色のインク用と共通の太さ、形状にしてもよい。
【0103】
また、図6図8に示すように、容器付加部67の外周面に雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部よりも上方部分には、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる領域に、インク出口65の中心軸の方向でインク出口65よりも容器本体部64とは反対方向となる上方に向けて突出する凸部71が形成されている。この凸部71は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端を挿入させるときに、インク補給用アダプター47の上面58の凹部61を第1嵌合部として嵌合可能な第2嵌合部として機能するものであり、インク入口53を前後から挟む一対の凹部61と同様にインク出口65を前後から挟んで対をなすように設けられている。なお、図6及び図7に示すように、凸部71は、インク収容体63においてインク出口65を中心とする放射方向で容器本体部64の外周面よりも内側に形成されている。
【0104】
図6及び図9に示すように、各凸部71の外面(図6及び図9では左右両側面)には、インク補給用アダプター47の凹部61の内面に形成された第1凹凸部(第1キー構造部)62と係合可能な第2凹凸部(第2キー構造部)72が形成されている。この第2凹凸部72は、凸部71の突出方向(換言すると、インク出口65の中心軸の方向)に沿って延びるように設けられており、凸部71を凹部61に嵌合させると共に、第2凹凸部72を第1凹凸部62に係合させたときに、インク収容体63のインク出口65をインクタンク41~45側のインク入口53に接続させる。
【0105】
また、容器付加部67の雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部と第2凹凸部72が形成された凸部71との間には、インク出口65の中心軸と直交(交差)する平面形状の位置決め部73が、インク出口65をその中心軸の方向に見たときインク出口65の放射方向外側に位置するように設けられている。すなわち、この位置決め部73は、インク収容体63の外面の一部である容器付加部67の外面の一部を構成し、インク出口65の中心軸の方向において凸部71の先端よりも容器本体部64側となる位置に設けられている。そして、この位置決め部73は、インク収容体63においてインク出口形成部66に付加される容器付加部67に設けられていることから、インク出口形成部66とは別部材の構成であり、且つインク出口形成部66の外側に備えられる構成であるといえる。
【0106】
また、図9に示すように、インク出口形成部66に形成されたインク出口65内には、そのインク出口65を開閉可能に封止する例えばシリコン膜等の弾性部材からなる弁74が設けられている。なお、弁74は、インク出口65の中心軸の方向において、位置決め部73の方が容器本体部64側となる位置に設けられている(例えば図14参照)。そして、この弁74には、その中心を交点として等角度間隔(一例として120度間隔)で交わる複数(本実施形態では3つ)のスリット75が設けられており、それらのスリット75がインク出口65の外側から内側に押し広げられることで開弁するように構成されている。すなわち、常閉弁である弁74は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端が挿入されたときに、その針56の先端で内側に押し広げられて開弁する。
【0107】
そして、その際には、インク出口65の放射方向の外側で位置決め部73がインク入口53及び凹部61を含む貫通孔60が形成されたインク補給用アダプター47の上面58に当接し、インク出口65の中心軸方向において弁74をインクタンク41~45に対して位置決めする。この点で、インク補給用アダプター47の上面58は、インクタンク41~45へのインク補給のためにインク収容体63のインク出口65の弁74が開弁されるときにインク収容体63の位置決め部73が当接するインクタンク41~45側の一部であって、平面形状の位置決め部73を受け止める受け面として機能する。
【0108】
図10及び図11に示すように、インク収容体63における容器本体部64は、その内部にインク組成物IKを収容可能なインク収容室76を有するボトル形状をなす部材であり、その上端部の頸部77の外周面には雄ねじ部78が形成されている。一方、容器本体部64の上端部に設けられるインク出口形成部66は、容器本体部64の頸部77の外周側に位置する大径部79と、容器本体部64から最も離れた位置でインク出口65を形成する小径部80と、その大径部79と小径部80の間を連結する中間部81とを有している。そして、大径部79の内周面に形成された雌ねじ部82を、容器本体部64の頸部77の外周面に形成された雄ねじ部78に螺合させることにより、インク出口形成部66は容器本体部64の上端部に取着されている。
【0109】
また、インク収容体63におけるインク出口形成部66にインク出口65を囲むように付加される容器付加部67は、その外周面に雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部が、その下端面をインク出口形成部66の大径部79の上端面に接合される接合部83を構成している。この接合部83は、その内周面の前後方向で対向する面領域がインク出口形成部66の中間部81の前側の外面及び後側の外面と面接触状態となってインク出口形成部66の大径部79に接合される。
【0110】
次に、上記のように構成されたインク補給システムの作用について、インク収容体63を用いてインク供給ユニット40のインクタンク41~45にインクを補給する際の作用に着目して以下説明する。
【0111】
なお、前提として、図2に示すように、複数の横並びに配置されたインクタンク41~45のうち一番右側に位置するブラックインクのインクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の下部に記された下限マーク52の高さまで低下しているため、以下においては、このインクタンク41にインク補給する場合について説明するものとする。また、インク補給に用いるインク収容体63にはブラックインクが十分に収容されているものとし、そのインク収容体63からは、前もってキャップ68が取り外されているものとする。さらに、そのインク収容体63の凸部71の外面に形成されている第2凹凸部72の形状はインクタンク41へのインク入口53の前後に位置する凹部61の内面に形成されている第1凹凸部62の形状と一致し、凹部61に対する凸部71の挿入に伴い係合可能であるものとする。
【0112】
さて、インクタンク41へのインク補給を行う際、まずユーザーは、筐体22の開閉扉35を図1に示す閉鎖状態から回転軸36を中心に前方へ回動させて開放状態とする。すると、インク供給ユニット40は、インクタンク41~45内へのインク入口53が形成されたインク補給用アダプター47の上面58が筐体22の外部に露出し、ユーザーは、所望のインク入口53に対して上方からインク収容体63のインク出口65を接続することが可能となる。
【0113】
そこで、図12及び図13に示すように、ユーザーは、インク補給に用いるインク組成物を収容したインク収容体63を上下逆さまにして、インク出口65がインク補給用アダプター47における一番右側の貫通孔60の上方に位置するように保持する。すなわち、そのインク収容体63のインク出口65の中心軸線をインク補給対象のインクタンク41のインク入口53の中心軸線と位置合わせする。このとき、ユーザーは、手に保持しているインク収容体63の容器付加部67に着色されている色(第2部分)と、そのときのインク補給対象であるインクタンク41のインク入口53が設けられた貫通孔60の上側の開口縁周辺に着色されている色(第1部分)とを見比べる。そして、それぞれの色が同じ(この場合は、ブラック同士)であれば、今回のインク補給に適合したインク収容体63を手に保持していると確認し、インク補給における後続作業に移行する。
【0114】
そして、図12及び図13に示す状態からインク収容体63を下降させ、そのインク収容体63の凸部71をインクタンク41と一体的なインク補給用アダプター47の凹部61に挿入する。すると、その凹部61に対する凸部71の挿入状態の実現により、インク入口53の中心軸線に対するインク出口65の中心軸線の一致状態が確保される。なお、この場合において凹部61はインク入口53の中心である針56に対して点対称の位置状態にあるため、凸部71は何れの凹部61に対しても挿入可能とされる。そのため、インク収容体63をインク出口65の中心軸線を中心にして何度も回転させて凹部61と凸部71との適合した位置関係を確かめる必要もなく、ユーザーは、凹部61に対する凸部71の挿入作業を容易に行い得る。
【0115】
但し、この時点では、凹部61に凸部71が僅かに挿入されただけで、インク入口53の中心に位置する針56の先端も、その凸部71の先端より少し突出したインク出口65の開口内には挿入されているものの、インク出口65の内奥に位置する弁74にまでは至っていない。その理由は、図13に示すように、凹部61の開口縁が位置するインク補給用アダプター47の上面58と凹部61内の第1凹凸部62の上端との距離L1よりも凸部71の先端とインク出口65内の弁74との距離L2の方が長いからである。そこで、その状態から凸部71を凹部61の深さ方向である下方に向けて更に挿入させると、凸部71の外面の第2凹凸部72が凹部61の内面の第1凹凸部62に係合する。そして、その係合状態を維持しつつ、更に凸部71を凹部61の深さ方向で底面側に向けて挿入すると、インク入口53の針56の先端がインク出口65の弁74の位置にまで至り、その弁74を開弁させる。
【0116】
すなわち、図14及び図15に示すように、針56の先端が弁74に対して、スリット75を下方から上方に(つまり、インク出口65の外側から内側に)押し広げることで、弁74を開弁状態とする。その結果、インク収容体63のインク出口65とインクタンク41のインク入口53の針56とが接続され、インク収容体63内からインクタンク41内へのインク組成物の補給が行われる。このとき、インク入口53の針56は2つある流路54,55のうち、弁74を開弁させてインク出口65から流出させたインクに対して先に先端開口が触れる一方の流路がインクを流通させるインク流路として機能し、他方の流路が空気を流通させる空気流路として機能する。例えば、ユーザーがインク収容体63を傾けた状態でインク入口53にインク出口65を接続しようとした場合には、その傾ける方向の違いにより、2つの流路54,55のうちインク流路となる流路も変更になる。
【0117】
なお、凹部61内に凸部71を挿入させた後において第2凹凸部72が第1凹凸部62に係合しない場合、その時点で、ユーザーはブラック以外の他の色のインク収容体63を間違って挿入しようとしていると認識できる。この場合、もし仮に第1凹凸部62の上端が凹部61の開口縁と同じ高さに位置している構成であると、その第1凹凸部62に対する第2凹凸部72の係合が拒否されるだけでなく、凹部61に対する凸部71の挿入も拒否されるため、ユーザーは、凹部61への凸部71の挿入を何度も試みて、いたずらに無駄な作業時間を費やしてしまうこともある。この点、本実施形態では、第1凹凸部62の高さが凹部61の開口縁よりも低いため、凸部71は凹部61に挿入されるときに凹部61の深さ方向で底面側に誘導され易くなり、作業時間が無駄に長くなることも抑制される。
【0118】
さらに、図14図16及び図17に示すように、インク収容体63のインク出口65内の弁74をインクタンク41側のインク入口53の針56が開弁させるとき、インク収容体63は位置決め部73がインクタンク41側の一部であるインク補給用アダプター47の上面58に当接する。すなわち、インク収容体63は、この位置決め部73とインク補給用アダプター47の上面58との当接により、弁74がインクタンク41側の針56に対してインク出口65の中心軸の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0119】
また、その際において、位置決め部73はインク出口65の放射方向外側に位置するため、インク収容体63はインク入口53にインク出口65を接続させた姿勢が安定的に保持される。また、図14及び図15に示すように、インク補給用アダプター47の上面58にインク収容体63の位置決め部73が当接したとき、インク入口53における針56の基端が位置するインク入口53の底面とインク収容体63のインク出口65の先端との間には隙間が存在する。そのため、インク入口53の針56の基端が位置する底面にはインクが溜まり易いが、そのように溜まっているインクがインク出口65の先端に付着してインク収容体63を汚すことも回避される。
【0120】
そして、図14及び図16に示すように、インクタンク41に対するインク収容体63からのインク補給が終了したとき、インクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の上限マーク51よりも未だ低い場合には、更に同じブラックのインク収容体63を用いて上限マーク51まで更に継ぎ足すインク補給を行ってもよい。なお、以上のようなインク補給作業は、インク組成物(ブラック又はグレーのインク組成物)のインクタンク41以外の他の色のインクタンク42~45に対する場合も同様に行われる。
【0121】
以上説明したインク収容体63は、インク組成物が接する可能性のある部位は、すべてポリオレフィン等の高分子化合物で形成されている。すなわち、インク収容体は、インク組成物が接する部分に金属を含まない構造となっている。
【0122】
したがって、インク収容体63は、インク組成物がインク収容体63中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、インク収容体63中に収容されたインク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下であることを満たしており、比(A/V)の値は0.0となっている。
【0123】
インク収容体63は、比(A/V)の値が0.0の例であるが、インク収容体は、比(A/V)の値が1.7以下であれば、インク組成物が金属と接する部分を有してもよい。そのような部分としては、例えば、バネ等であり、アルミニウム合金やステンレスにより構成されてもよい。また、比(A/V)の値は、1.0以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.2以下であることが殊更好ましい。
【0124】
発明者らは検討の結果、インク組成物の収容体が、インク組成物の保存安定性に影響を及ぼすことを見出している。そしてその影響は、収容体におけるインク組成物と金属との接触が、原因の一となっていると推定している。そして、インク収容体の比(A/V)の値が1.7以下であることにより、インク組成物中の第1染料が金属と接する頻度が少なくなるので、インク収容体中でインク組成物を保存した場合の第1染料の劣化が抑制されると考えられる。
【0125】
また上記のインク収容体63のように、比(A/V)の値が0.0である場合に第1染料の保存安定性をさらに高めることができることは、後述の実施例により立証される。
【0126】
また上記では、比較的強度の高いボトル型のインク収容体の例を説明したが、インク収容体は、フィルム等で形成された形状変化しやすいものであってもよい。そのようなインク収容体の形態としては、パック、チューブ等が挙げられる。インク収容体がパックやチューブの形態であっても、比(A/V)の値が1.7以下であることを満たせば、同様の効果が得られる。
【0127】
また一方、上記のインク収容体63のように、比較的強度の高いボトル型のインク収容体であると、インク収容体にインク組成物が収容された状態で、インク組成物が空気と接する構造となる。このような構造であると、インク組成物が保存中に空気と接することになる。この場合、空気中の酸素の酸化作用により、収容されたインク組成物に含有される染料が保存中に還元して劣化することを抑制することができる。なお、インク収容体がパックやチューブの形態であってもインク組成物が空気と接する状態で保存することができるが、この場合は、製造者又はユーザーがそのような状態として保存する。
【0128】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物中の第1染料を発色性の良好な状態で保存することができる。また、このインク収容体に収容されたインク組成物により、耐オゾン堅牢性の良好な画像を形成することができる。
【0129】
2.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお以降の評価は、特に断りが無い場合は、温度25℃、相対湿度40%の環境下で行った。
【0130】
2.1.インク組成物の調製
実施例及び比較例のインク組成物の組成を表1、表2に示す。インク組成物は、表1、表2に記載の成分を任意の順序で混合し、30分以上混合し、必要に応じて濾過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製した。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラーを備えた容器に、材料を順次添加して撹拌、混合した。その後フィルター濾過をして各例(実施例1~20、比較例1~6)のインク組成物とした。なお、表1及び表2における数値の単位は、「質量%」である。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
表1及び表2中、染料化合物式の欄に記載の「B-1」、「M-1」、「M-2」、「M-3」、「Y-1」、「Y-2」は、それぞれ上述した「式(B-1)で表される化合物のリチウム塩」、「式(M-1)で表される化合物のナトリウム塩」、「式(M-2)で表される化合物のナトリウム及び/又はアンモニウム塩」、「式(M-3)で表される化合物のリチウム塩」、「式(Y-1)で表される化合物のリチウム塩」、「式(Y-2)で表される化合物のカリウム塩」である。
【0134】
また、表1及び表2中、染料化合物式の欄に記載の「B-2」は、「下記式(B-2)で表される化合物のナトリウム及び/又はアンモニウム塩」である。
【0135】
【化12】
・・・(B-2)
【0136】
また、表1及び表2には、インク組成物のpH、染料固形分量、金属の合計表面積A(cm)、インク収容量V(cm)、比(A/V)、及び収容体中の空気の有無を記載した。金属の合計表面積A(cm)が0.0である例は、上述したインク収容体63を用いた。金属の合計表面積A(cm)が「12.0」、「19.0」及び「24.0」の例では、それぞれの表面積を持つ金属片をインク収容体63に入れた。なお、比較例1の金属の合計表面積A(cm)とインク収容量V(cm)は、インクジェットプリンターEP-803A(セイコーエプソン社製)等のインク収容体であるインクカートリッジの金属合計表面積とインク収容量に相当するものである。収容体中の空気「なし」の実施例20はポリエチレン製の可撓性のパックを用い、パック中に空気層が無いようインクを封入した。
【0137】
2.2.評価方法
2.2.1.インク組成物の保存安定性
各例のインク組成物を収容したインク収容体を、60℃恒温槽に7日間放置した。
放置前後におけるインク組成物の吸光度(ABS)の変化率によって下記の基準で判定し、結果を表1及び表2に記載した。なお吸光度は、各インクを超純水で1000倍希釈し、紫外可視分光光度計を用い、下記条件で紫外可視吸収スペクトルの最大ピークの最大吸光度を測定した。
S:変化率<2%
A:2%≦変化率<3%
B:3%≦変化率<5%
C:5%≦変化率<8%
D:8%≦変化率
装置:紫外可視分光光度計 V-770 series(日本分光株式会社製)
パラメーターファイル
測光モード:ABS
測定範囲:800-300nm
データ取込間隔:0.5nm
UV/Visバンド幅:2.0nm
NIRバンド幅:8.0nm
UV/Visレスポンス:0.06sec
NIRレスポンス:0.06sec
走査速度:400nm/min
光源切換:340nm
回折格子切換:850nm
光源:D2/WI
フィルター切換:ステップ
補正:ベースライン
【0138】
2.2.2.色相
下記条件で単色、Duty50%で印字した際のa値について下記の基準で判定し、その結果を表1及び表2に記載した。
機体:EP-10A(セイコーエプソン株式会社製)、EPSON光沢写真用紙
測色:i1(X-rite社製)
S:a値が-2以上+2以下の範囲内にあり、かつ、b値が-2以上+2以下の範囲内にある
A:S以外の範囲であり、かつ、a値が-4以上+4以下の範囲内にあり、かつ、b値が-4以上+4以下の範囲内にある
B:A以外の範囲であり、かつ、a値が-7以上+7以下の範囲内にあり、かつ、b値が-7以上+7以下の範囲内にある
C:a値及びb値の少なくとも一方が、-7以上+7以下の範囲外にある
【0139】
2.2.3.耐ガス堅牢性
下記条件で印字・放置したサンプルのOD(光学濃度)値の変化率について下記の基準で判定し、結果を表1及び表2に記載した。
機体:EP-10A(セイコーエプソン株式会社製)、EPSON光沢写真用紙
条件:オゾン濃度5ppm×80時間
S:OD残存率 85%以上
A:OD残存率 80%以上85%未満
B:OD残存率 70%以上80%未満
C:OD残存率 70%未満
【0140】
2.2.3.目詰まり回復性
各例のインク組成物をそれぞれEP-10A(セイコーエプソン株式会社製)のヘッドに供給し、全てのノズルからの吐出が正常であることを確認した後、40℃湿度24%環境下に1週間放置した。その後、全てのノズルからの吐出が正常となるまでに必要なクリーニング回数を下記の基準で判定し、結果を表1及び表2に記載した。
S:0回又は1回
A:2回又は3回
B:4回又は5回
C:6回以上
【0141】
2.3.評価結果
水と、式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、を含有し、その含有量が、インク組成物の総量に対して0.5質量%以上である、インク組成物が収容されたインク収容体であり、比(A/V)の値が1.7以下である、各実施例のインク収容体は、いずれもインク組成物の保存安定性が良好であった。また、各実施例のインク組成物は、いずれも耐オゾン堅牢性が良好な画像を形成できた。
【0142】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0143】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0144】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0145】
インク収容体は、
インク組成物が収容されたインク収容体であって、
前記インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、を含有し、
前記インク組成物における前記第1染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、
前記インク組成物が前記インク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下である。
【0146】
【化13】
・・・式(B-1)
【0147】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物中の第1染料を発色性の良好な状態で保存することができる。また、このインク収容体に収容されたインク組成物により、耐オゾン堅牢性の良好な画像を形成することができる。
【0148】
上記インク収容体において、
前記インク組成物は、最大吸収波長を500nm以上580nm以下に有する第2染料を含有し、
前記インク組成物における前記第2染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.2質量%以上2.0質量%以下であってもよい。
【0149】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物に含まれる第1染料の色味の補色として第2染料が機能するので、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0150】
上記インク収容体において、
前記第2染料は、下記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(M-2)で表される化合物又はその塩、から選択されてもよい。
【0151】
【化14】
・・・式(M-1)
【0152】
【化15】
・・・式(M-2)
【0153】
このインク収容体によれば、第2染料が第1染料の色味の補色としてより効果的に機能するので、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0154】
上記インク収容体において、
前記インク組成物は、前記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、前記式(M-2)で表される化合物又はその塩を含有し、
前記インク組成物における前記式(M-1)で表される化合物又はその塩の含有量は、前記インク組成物における前記式(M-2)で表される化合物又はその塩の含有量よりも小さくてもよい。
【0155】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0156】
上記インク収容体において、
最大吸収波長を480nm未満に有する第3染料を含有し、
前記第3染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.2質量%以上2.0質量%以下であってもよい。
【0157】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0158】
上記インク収容体において、
前記第3染料が、下記式(Y-1)で表される化合物又はその塩である、インク収容体。
【0159】
【化16】
・・・式(Y-1)
【0160】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0161】
上記インク収容体において、
染料固形分の合計量が、前記インク組成物の総量に対して、6.8質量%以下であってもよい。
【0162】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0163】
上記インク収容体において、
前記インク収容体は、前記インク組成物が接する部分に金属を含まなくてもよい。
【0164】
このインク収容体によれば、第1染料の保存安定性をさらに高めることができる。
【0165】
上記インク収容体において、
前記インク収容体に前記インク組成物が収容された状態で、前記インク組成物が空気と接する構造を有してもよい。
【0166】
このインク収容体によれば、空気中の酸素の酸化作用により、収容されたインク組成物に含有される染料が還元して劣化することを抑制することができる。
【0167】
上記インク収容体において、
前記インク組成物は、炭素数3以上のアルカノールアミンをさらに含有し、
前記アルカノールアミンの含有量と前記第1染料の含有量とが、以下の式(1)の関係を満たしてもよい。
0.1<(アルカノールアミンの含有量)/(第1染料の含有量)<0.6・・・(1)
【0168】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0169】
上記インク収容体において、
前記インク組成物は、有機酸をさらに含有し、
前記有機酸の含有量と前記第1染料の含有量とが、以下の式(2)の関係を満たしてもよい。
0.01<(有機酸の含有量)/(第1染料の含有量)<0.1・・・(2)
【0170】
このインク収容体によれば、収容されたインク組成物により、さらにニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0171】
インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、
下記式(M-1)で表される化合物又はその塩、及び、下記式(M-2)で表される化合物又はその塩から選択される第2染料と、
を含有し、
前記第1染料の含有量が、総量に対して0.5質量%以上である。
【0172】
【化17】
・・・式(B-1)
【0173】
【化18】
・・・式(M-1)
【0174】
【化19】
・・・式(M-2)
【0175】
このインク組成物によれば、粒状性が抑制され、かつ、耐オゾン堅牢性が良好で、ニュートラルな色相の画像を形成することができる。
【0176】
インク組成物は、
インク収容体に収容されたインク組成物であって、
前記インク組成物は、水と、下記式(B-1)で表される化合物又はその塩である第1染料と、を含有し、
前記第1染料の含有量が、前記インク組成物の総量に対して0.5質量%以上であり、
前記インク組成物が前記インク収容体中で接触する金属の合計表面積をA(cm)とし、前記インク収容体中に収容された前記インク組成物の収容量をV(cm)とした場合に、比(A/V)の値が1.7以下である。
【0177】
【化20】
・・・式(B-1)
【0178】
このインク組成物によれば、粒状性が抑制され、かつ、耐オゾン堅牢性が良好な画像を形成することができ、保存安定性も良好にすることができる。
【符号の説明】
【0179】
21…記録装置、22…筐体、23…支持台、24…ガイド軸、25…記録ヘッド、26…キャリッジ、27…支持孔、28…駆動プーリー、29…従動プーリー、30…キャリッジモーター、31…タイミングベルト、32…排出口、33…排出トレイ、34…給紙カセット、35…開閉扉、36…回転軸、37…窓部、40…インク供給ユニット、41~45…インクタンク、46…インク供給チューブ、47…インク補給用アダプター、48…段差部、49…インク貯留室、50…視認部、51…上限マーク、52…下限マーク、53…インク入口、54,55…流路、56…針(インク入口流路部)、57…残量センサー、58…上面(受け面)、59…下面(タンク係合部)、60…貫通孔、61…凹部(第1嵌合部)、62…第1凹凸部(識別部)、63…インク収容体、64…容器本体部、65…インク出口、66…インク出口形成部、67…容器付加部、68…キャップ、69…雄ねじ部、70…突起、71…凸部(第2嵌合部)、72…第2凹凸部、73…位置決め部、74…弁、75…スリット、76…インク収容室、77…頸部、78…雄ねじ部、79…大径部、80…小径部、81…中間部、82…雌ねじ部、83…接合部、L1…距離、L2…距離、P…用紙、IK…インク組成物
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