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特許7639303樹脂組成物、硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20250226BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20250226BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250226BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20250226BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20250226BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250226BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20250226BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20250226BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08G59/42
C08K3/013
B32B27/20 Z
B32B27/38
B32B27/00 101
B32B27/26
H01L23/12 501P
H05K1/03 610L
H05K1/03 610S
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020188129
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077323
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滑方 奈那
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028928(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073606(WO,A1)
【文献】特開2007-302635(JP,A)
【文献】特開2020-138996(JP,A)
【文献】特開2018-199797(JP,A)
【文献】特開2016-138051(JP,A)
【文献】特開2006-324410(JP,A)
【文献】特開2014-152306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08G 59/42
C08K 3/013
B32B 27/20
B32B 27/38
B32B 27/00
B32B 27/26
H01L 23/12
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)無機充填材と、(C)かご型シルセスキオキサン化合物とを含有する樹脂組成物であって、
(B)成分が、シリカを含み、
(C)成分が、ダブルデッカー型シルセスキオキサン化合物であり、
(C)成分が、(C-1)分子中に少なくともつの反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサン化合物を含み、
反応性官能基が、酸無水物基、カルボキシ基及びアミノ基並びにこれらの基のいずれか1種以上の基を含有する基、からなる群から選ばれる基である、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂と、(B)無機充填材と、(C)かご型シルセスキオキサン化合物とを含有する樹脂組成物であって、
(B)成分が、シリカを含み、
(C)成分が、(C-1)分子中に少なくともつの反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサン化合物を含み、
反応性官能基が、酸無水物基である、樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の含有量(質量部)の(B)成分の含有量(質量部)に対する質量割合(質量%)が、5質量%以上300質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ダブルデッカー型シルセスキオキサン化合物が、下記式(C1)に示すかご型構造を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
・・・(C1)
[上記式(C1)中、
Xは、それぞれ独立して、水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよい炭素数1~40のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基、及び、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基が炭素数1~8のアルキレン基に結合したアリールアルキル基から選択される基であり;
Yは、それぞれ独立して、水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよい炭素数1~40のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基、及び、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基が炭素数1~8のアルキレン基に結合したアリールアルキル基から選択される基であり;
Zは、それぞれ独立して、Si原子と結合しかつ2つの結合手を含む3価の基であり、反応性官能基は、Zを含んで構成され
X又はYが炭素数1~40のアルキル基である場合、当該アルキル基に含まれる-CH-は、-O-又は-CH=CH-で置き換えられていてもよく;
X又はYがアリール基である場合において、当該アリール基の水素原子が炭素数1~20のアルキル基で置き換えられているときは、当該炭素数1~20のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよく、当該炭素数1~20のアルキル基に含まれる-CH-は、-O-又は-CH=CH-で置き換えられていてもよく;
X又はYがアリールアルキル基である場合、当該アリールアルキル基に含まれる-CH-は、-O-で置き換えられていてもよい。]
【請求項5】
Xがいずれもフェニル基である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
反応性官能基が酸無水物基である、請求項1、3~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
酸無水物基が、下記式(1)~(7)に示す構造のいずれかの構造に含まれる3つの結合手のうちの2つの結合手と、-CO-O-CO-とが互いに連結することによりなる、請求項2又はに記載の樹脂組成物。
【化2】
【請求項8】
さらに、(D)硬化剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、(D)硬化剤を含み、
(C-1)成分の含有量と(D)成分の含有量の合計に対する、(D)成分の含有量の質量割合が、10質量%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(D)成分が、活性エステル系硬化剤を含む、請求項又はに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
さらに、(E)ラジカル重合性化合物を含有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
樹脂組成物の硬化物の誘電率(Dk)の値が3.2未満である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
樹脂組成物の硬化物の誘電正接(Df)の値が0.0045以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項18】
支持体と、当該支持体上に設けられた請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを有する樹脂シート。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項20】
請求項19に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主鎖中にダブルデッカー骨格を有する重合体の原料となる脂環式酸無水物基を有するシルセスキオキサン化合物を硬化剤として用いる架橋反応によって得られるエポキシ樹脂が開示されており、斯かる重合体は、絶縁膜、液晶配向膜、発光ダイオードの封止剤、光導波路等の光電子材料に有用であるとされている(請求項1、9、段落[0009]及び[0010])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4946169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、例えば埋め込み型の配線層を備える配線板に使用される絶縁層は、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れることが求められる。
【0005】
本発明の課題は、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)エポキシ樹脂と、(B)無機充填材とを含有する樹脂組成物が、さらに、(C)かご型シルセスキオキサンを含有することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂と、(B)無機充填材と、(C)かご型シルセスキオキサン化合物とを含有する樹脂組成物。
[2] (C)成分が、ダブルデッカー型シルセスキオキサン化合物である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] ダブルデッカー型シルセスキオキサン化合物が、下記式(C1)に示すかご型構造を含む、[2]に記載の樹脂組成物。
【化1】
・・・(C1)
[上記式(C1)中、
Xは、それぞれ独立して、水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよい炭素数1~40のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基、及び、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基が炭素数1~8のアルキレン基に結合したアリールアルキル基から選択される基であり;
Yは、それぞれ独立して、水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよい炭素数1~40のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基、及び、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基が炭素数1~8のアルキレン基に結合したアリールアルキル基であり;
Zは、それぞれ独立して、Si原子と結合しかつ2つの結合手を含む3価の基であり;
X又はYが炭素数1~40のアルキル基である場合、当該アルキル基に含まれる-CH-は、-O-又は-CH=CH-で置き換えられていてもよく;
X又はYがアリール基である場合において、当該アリール基の水素原子が炭素数1~20のアルキル基で置き換えられているときは、当該炭素数1~20のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよく、当該炭素数1~20のアルキル基に含まれる-CH-は、-O-又は-CH=CH-で置き換えられていてもよく;
X又はYがアリールアルキル基である場合、当該アリールアルキル基に含まれる-CH-は、-O-で置き換えられていてもよい。]
[4] Xがいずれもフェニル基である、[3]に記載の樹脂組成物。
[5] (C)成分が、(C-1)分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサン化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 反応性官能基が酸無水物基である、[5]に記載の樹脂組成物。
[7] 酸無水物基が、下記に示す構造のいずれかを含む、[6]に記載の樹脂組成物。
【化2】
[8] さらに、(D)硬化剤を含み、
(C-1)成分の含有量と(D)成分の含有量の合計に対する、(D)成分の含有量の質量割合が、10質量%以上である、[5]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 活性エステル系硬化剤を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] さらに、(E)ラジカル重合性化合物を含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 樹脂組成物の硬化物の誘電率(Dk)の値が3.2未満である、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14] 樹脂組成物の硬化物の誘電正接(Df)の値が0.0045以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] プリント配線板の絶縁層用である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[17] 支持体と、当該支持体上に設けられた[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを有する樹脂シート。
[18] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[19] [18]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)無機充填材と、(C)かご型シルセスキオキサンとを含有する。これにより、本発明の樹脂組成物は、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物をもたらすことができる。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加えて、さらに任意の成分を含有していてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)硬化剤(ただし、(A)成分~(C)成分を除く。)、(E)ラジカル重合性化合物、(F)重合開始剤、(G)熱可塑性樹脂、(H)硬化促進剤、(I)その他の添加剤、及び(J)有機溶剤等が挙げられる。以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0012】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する硬化性樹脂を意味する。(A)成分からは後述する(C)成分は除かれる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0015】
エポキシ樹脂には、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0016】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0017】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX8000」(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、信越化学社製「KF-101」(エポキシ変性シリコーン樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(A)エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、又はそれらの組み合わせの何れであってもよいが、固体状エポキシ樹脂を含むことが好ましく、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂との組み合わせであることが特に好ましい。
【0023】
(A)エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(固体状エポキシ樹脂:液状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは3:1~1:3である。
【0024】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.、さらにより好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0025】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0026】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、0質量%超であり、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。したがって、好適な一実施形態において、(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1~50質量%である。
【0027】
<(B)無機充填材>
樹脂組成物は、(B)成分として、無機充填材を含有する。(B)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、機械特性に優れる硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。また、(B)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることが可能となる。
【0028】
無機充填材としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(B)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC-C2」;などが挙げられる。
【0030】
(B)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0031】
(B)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0032】
(B)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定することで得られる。
【0033】
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0034】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製のN-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0036】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0037】
(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0038】
(B)無機充填材の含有量は、0質量%超であり、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、上限は特に限定されないが、例えば90質量%以下であり、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得る観点からは、80質量%以下、好ましくは78質量%以下、より好ましくは75質量%以下であり、低誘電正接(Df)の硬化物を得る観点からは、50質量%以下、45質量%以下又は40質量%以下としてもよい。
【0039】
<(C)かご型シルセスキオキサン化合物>
樹脂組成物は、(C)成分として、かご型シルセスキオキサン化合物(以下、「かご型PSQ」ともいう)を含有する。(C)かご型PSQは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分と組み合わせてこの(C)成分を含有することにより所期の効果を奏することができる。
【0040】
シルセスキオキサン化合物(PSQ:ポリシルセスキオキサン)は、通常、シロキサン結合を含む骨格を有し、(RSiO3/2で表されるケイ素含有骨格を有しうる。前記のRは、炭化水素基等の有機基を表し、nは整数を表す。シルセスキオキサン化合物には、不定形構造、ラダー構造、不完全縮合型構造及び完全縮合型構造のものが知られている。本発明の樹脂組成物が含むかご型PSQは、かご型構造を有する。かご型構造とは、複数の環状構造(シルセスキオキサン化合物の場合はケイ素含有骨格で構成される環状構造)を含み、斯かる複数の環状構造によって、閉じた空間を形成するか又は反応後に閉じた空間を形成し得る構造をいう。かご型PSQには、例えば、T8型シルセスキオキサン化合物、ダブルデッカー型シルセスキオキサン化合物(以下、「DDSQ」ともいう)及びT12型シルセスキオキサン化合物が含まれ、反応により閉じた空間を形成し得るT7型シルセスキオキサン化合物が含まれてもよく、他方で、かご型PSQからは、かご型構造を有していないPSQ、例えばラダー構造を有するPSQや不定形構造を有するPSQは除外される。
【0041】
かご型PSQは、本発明の所期の効果を高める観点から、DDSQであることが好ましい。
【0042】
DDSQは、好ましくは、下記式(C1)に示すかご型構造を含む。
【化3】
・・・(C1)
[上記式(C1)中、
Xは、それぞれ独立して、水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよい炭素数1~40のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基、及び、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基が炭素数1~8のアルキレン基に結合したアリールアルキル基から選択される基であり;
Yは、それぞれ独立して、水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよい炭素数1~40のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基、及び、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~20のアルキル基で置き換えられていてもよいアリール基が炭素数1~8のアルキレン基に結合したアリールアルキル基であり;
Zは、それぞれ独立して、Si原子と結合しかつ2つの結合手を含む3価の基であり;
X又はYが炭素数1~40のアルキル基である場合、当該アルキル基に含まれる-CH-は、-O-又は-CH=CH-で置き換えられていてもよく;
X又はYがアリール基である場合において、当該アリール基の水素原子が炭素数1~20のアルキル基で置き換えられているときは、当該炭素数1~20のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置き換えられていてもよく、当該炭素数1~20のアルキル基に含まれる-CH-は、-O-又は-CH=CH-で置き換えられていてもよく;
X又はYがアリールアルキル基である場合、当該アリールアルキル基に含まれる-CH-は、-O-で置き換えられていてもよい。]
【0043】
X及びYにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、t-ブチル基、オクチル基、デシル基が挙げられる。水素原子がハロゲン原子で置き換えられたアルキル基としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル基が挙げられる。アルキル基に含まれる-CH-が-O-で置き換えられた基としては、例えば、3-メトキシプロピル基、3-ヘプタフルオロイソプロポキシプロピル基が挙げられる。アルキル基に含まれる-CH-が-CH=CH-で置き換えられた基としては、例えば、エテニル基、3-ブテニル基、アリルオキシウンデシル基などが挙げられる。
【0044】
X及びYにおいて、シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基およびデカリル基が挙げられる。
【0045】
X及びYにおいて、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントニル基、フルオレニル基が挙げられる。水素原子がハロゲン原子で置き換えられたアリール基としては、例えば、4-フルオロフェニル基、4-クロロフェニル基、4-ブロモフェニル基などが挙げられる。水素原子がアルキル基で置き換えられたアリール基としては、例えば、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、4-オクチルフェニル基、4-デシルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル基、4-(2-エチルヘキシル)フェニル基などが挙げられる。アリール基の水素原子がアルキル基で置き換えられ、且つ、このアルキル基に含まれる-CH-が-O-で置き換えられた基としては、例えば、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-ブトキシフェニル基、4-ヘプチルオキシフェニル基、メトキシエチルフェニル基が挙げられる。
【0046】
誘電正接が低い硬化物を得る観点から、好ましくは、上記式(C1)に示すかご型構造において、X及びYの少なくとも一方、より好ましくは双方が疎水性基を含む。疎水性基としては、炭素数1~40の炭化水素基、好ましくは炭素数1~20の炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、側鎖を含んでいてもよいし、脂肪族環を含んでいてもよいし、芳香族環を含んでいてもよい。Xは、芳香族環を含むことが好ましく、置換又は無置換のアリール基を含むことがより好ましく、置換又は無置換のアリール基が更に好ましく、無置換のアリール基が特に好ましい。また、Yは、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基が好ましく、置換又は無置換のアルキル基がより好ましい。好適な一実施形態においては、上記式(C1)に示すかご型構造において、複数あるXがいずれもフェニル基である。より好適な一実施形態においては、上記式(C1)に示すかご型構造において、複数あるXがいずれもフェニル基であり、複数あるYがいずれもアルキル基、例えばメチル基である。
【0047】
Zは、3価の炭化水素基が好ましい。3価の炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。好ましい3価の炭化水素基は、3価の脂環式基及び3価の飽和脂肪族基が挙げられる。3価の脂環式基は、架橋構造の環であってもよく、1つの-CH-が-O-で置き換えられてもよい。Zの好ましい例としては、下記の式(1)~(7)で表される基が挙げられる。
【0048】
【化4】
【0049】
かご型PSQは、上述したように例示されるかご型構造を有する限り限定されず、(C-1)反応性かご型PSQであってもよいし、(C-2)非反応性かご型PSQであってもよい。反応性かご型PSQとは、分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有するかご型PSQをいう。非反応性かご型PSQとは、反応性官能基不含のかご型PSQをいう。
【0050】
反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得る観点からは、かご型PSQは、(C-1)反応性かご型PSQを含むことが好ましく、より好ましくは、かご型PSQは、(C-1)反応性かご型PSQである。
【0051】
反応性かご型PSQが有する反応性官能基は、本発明の目的に照らし、一般的には、樹脂組成物が硬化する際に反応性を示す官能基をさす。反応性官能基は、加熱又は光照射によってその反応性を発現するものであってもよい。(A)成分のエポキシ樹脂が熱硬化性であることから、(C-1)反応性かご型PSQが有する反応性官能基も、加熱によって反応性を発現することが好ましい。(C-1)反応性かご型PSQが反応性官能基を有することで、(A)成分で構成される架橋構造に(C)成分を組み入れることが可能となる。反応性官能基の数は、1分子当たり1つ以上、好ましくは2つ以上であり、その上限は分子中に導入可能である限り制限されない。一実施形態において、(C-1)反応性かご型PSQは、2つの反応性官能基を有するDDSQである。
【0052】
反応性官能基としては、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基及びビニル基並びにこれらの基のいずれか1種以上の基を含有する基(例えば、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基)が挙げられる。「酸無水物基」とは、別に断らない限り、-CO-O-CO-を含む基を表す。
【0053】
反応性官能基は、かご型構造の一部をなしていてもよいし、かご型構造に直接的に結合されていてもよいし、任意の連結基を介して結合されていてもよい。剛性及び耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、反応性官能基がかご型構造の一部をなしていることが好ましく、より好ましくは、上述した式(C1)のかご型構造におけるZを含んで構成されることが好ましい。好適な一実施形態では、(C-1)反応性かご型PSQが有する反応性官能基が酸無水物基である。より好適な一実施形態では、(C-1)反応性かご型PSQが有する酸無水物基が、-CO-O-CO-を含み、かつ、前記の式(1)~(7)に示す構造のいずれかを含む。
【0054】
上記式(1)~(7)に示す構造は、いずれも、3つの結合手を有する構造である。好ましくは、酸無水物基は、上記式(1)~(7)に示す構造のいずれかの構造に含まれる3つの結合手のうちの2つの結合手、より好ましくは互いに隣接する2つの炭素原子が有する2つの結合手と、-CO-O-CO-とが互いに連結することによって構成されている。さらに好適な一実施形態では、(C-1)反応性かご型PSQが有する酸無水物基は、上述した式(C1)のかご型構造におけるZを含んで構成されており、上記式(1)~(7)に示す構造のいずれかを含む。この場合、酸無水物基は、上記式(1)~(7)に示す構造のいずれかの構造に含まれる3つの結合手のうちの2つの結合手、好ましくは互いに隣接する2つの炭素原子が有する2つの結合手と、-CO-O-CO-とが互いに連結することによって構成されており、かつ、残りの結合手を介して上述した式(C1)のかご型構造に含まれるSi原子と結合していること(つまり、式(C1)のかご型構造中のZが酸無水物基の一部をなしていること)が好ましい。
【0055】
(C-1)反応性かご型PSQとしては市販品を用いることができる。斯かる市販品としては、日本材料技研社製の2官能性のダブルデッカー型シルセスキオキサン「脂環式ダブルデッカーシルセスキオキサン-DDSQ-01」又は「シルセスキオキサン脂環式酸二無水物DDSQ」、CAS番号:948849-07-8)を挙げることができる。(C-1)反応性かご型PSQは、例えば特許文献1に記載の方法に倣って製造したものであってもよい。
【0056】
(C-2)非反応性かご型PSQは、例えば、上述した(C-1)反応性かご型PSQが有する反応性官能基を非反応性の基に置換することによって製造することができる。非反応性かご型PSQを得るために、(C-1)反応性かご型PSQを含む任意のモノマー組成物を調製し、モノマー同士を重合させてもよい。
【0057】
(C-1)反応性かご型PSQの含有量は、(C-2)非反応性かご型PSQの含有量よりも多いことが好ましい。一実施形態において、(C-2)非反応性かご型PSQは不含である。この場合、(C-1)成分を(C)成分と読み替えてもよい。
【0058】
(C)成分の含有量は、0質量%超であり、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0059】
(C)成分の含有量(質量部)は、例えば、(A)成分の含有量(質量部)に対して、10倍以下、9倍以下、又は8倍以下とすることができる。(C)成分が(C-1)成分を含む場合、(C-1)成分の含有量は、(C-1)成分が有する反応性官能基の合計数が(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数に対して20倍以下、3倍以下、1.5倍以下、かつ、0.01倍以上、0.05倍以上、0.1倍以上となるように決定されることが好ましい。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、(A)エポキシ樹脂の各々の不揮発分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。(C-1)反応性かご型PSQの反応性官能基の合計数とは、(C-1)反応性かご型PSQの各々の不揮発分質量を反応性官能基当量で除した値をすべての反応性かご型PSQについて合計した値である。
【0060】
(C)成分と(B)成分の含有量の合計は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、上限は特に限定されないが、例えば95質量%以下であり、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得る観点からは、好ましくは85質量%以下、より好ましくは83質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。(C)成分の含有量(質量部)の(B)成分の含有量(質量部)に対する質量割合(質量%)は、0質量%超であり、好ましくは(C)成分と(B)成分の含有量の合計が上述した範囲を満たすように決定されるが、本発明の効果を顕著に得る観点から、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上、300質量%以下、250質量%以下又は200質量%以下とし得る。
【0061】
(C)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち(B)成分を除いた成分をいう。
【0062】
<(D)硬化剤>
樹脂組成物は、(D)硬化剤を含有していてもよい。(D)成分としては、(A)成分を硬化する機能を有するものを用いることができる。ただし、(D)成分からは、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に該当するものは除かれる。(D)成分は、(C)成分が(C-1)成分を含む場合であっても含まない場合であっても樹脂組成物に含有され得るが、(C)成分が(C-1)成分不含である場合、樹脂組成物が(D)成分を含むことが好ましい。樹脂組成物が(A)エポキシ樹脂とともに(D)硬化剤を含有することで、耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。めっき密着性に優れる硬化物を得る観点からは、樹脂組成物が(D)硬化剤を含有することが好ましい。
【0063】
(D)硬化剤としては、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及び、シアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上の硬化剤などが挙げられる。めっき密着性により優れる硬化物を得る観点からは、活性エステル系硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0064】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0065】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0066】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9451」、「EXB―9460」、「EXB―9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「HPC-8000L-65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8150L-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HP-B-8151-62T」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0067】
フェノール系硬化剤(活性エステル化合物を除く)及びナフトール系硬化剤(活性エステル化合物を除く)としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造又はクレゾールノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0068】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「KA-1160」等が挙げられる。
【0069】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-05」、「V-07」、「V-09」、「Elastostab H01」等が挙げられる。
【0070】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。ベンゾオキサジン系硬化剤は、ベンゾオキサジン構造を有する化合物である。ベンゾオキサジン構造とは、置換若しくは非置換のベンゾオキサジン環(例えば、1,2-ベンゾオキサジン環、1,3-ベンゾオキサジン環)、又は、一部の二重結合が水素化されたベンゾオキサジン環(例えば、3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン環)をいう。
【0071】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(例えば、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物(「BPDA」)、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製のリカシッドシリーズ「BT-100」、「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」等が挙げられる。
【0072】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0073】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0074】
(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:20の範囲が好ましく、1:0.05~1:3がより好ましく、1:0.1~1:1.5がさらに好ましい。ここで、(D)硬化剤の反応基とは、活性エステル基、活性水酸基等であり、(D)硬化剤の種類によって異なる。(D)硬化剤の反応基の合計数とは、(D)硬化剤の各々の不揮発分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、本発明の所期の効果を高めることができる。
【0075】
(C)成分が(C-1)成分を含む場合、(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤及び(C-1)反応性かご型PSQとの量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基及び反応性かご型PSQの反応性官能基の合計数]の比率で、1:0.01~1:20の範囲が好ましく、1:0.05~1:3がより好ましく、1:0.1~1:1.5がさらに好ましい。(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤及び(C-1)反応性かご型PSQとの量比を斯かる範囲とすることにより、本発明の所期の効果を高めることができる。
【0076】
(D)成分の含有量は、上述した(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤との量比の範囲又は上述した(A)エポキシ樹脂と(D)硬化剤及び(C-1)反応性かご型PSQとの量比の範囲を満たすように決定されることが好ましい。(D)成分の含有量は、0質量%以上であり、めっき密着性に優れる硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上又は3質量%以上、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下としうる。
【0077】
樹脂組成物が(D)成分をさらに含む場合において、(C)成分が(C-1)成分を含むときは、(C-1)成分の含有量と(D)成分の含有量の合計に対する、(D)成分の含有量の質量割合が、めっき密着性に優れる硬化物を得る観点から、10質量%以上、15質量%以上又は20質量%以上とし得る。また、同質量割合は、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、90質量%以下、80質量%以下又は70質量%以下とし得る。
【0078】
<(E)ラジカル重合性化合物>
樹脂組成物は、(E)成分として、ラジカル重合性化合物を含有していてもよい。ただし、(E)成分からは、(A)成分~(D)成分に該当するものは除かれる。(E)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。樹脂組成物が(E)成分を含む場合、後述する(F)成分を含有することが好ましい。
【0079】
(E)成分は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する。(E)成分としては、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する限り特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分との組み合わせにおいて、低誘電正接の硬化物をもたらす観点から、(E)成分は、ラジカル重合性不飽和基として、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する化合物を含むことが好ましく、中でも、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基から選ばれる1種以上を含む化合物を含むことがより好ましい。ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂の例としては、SABIC社製「SA9000-111」が挙げられる。
【0080】
(E)成分は、マレイミド樹脂、スチリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アリル樹脂、及びブタジエン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましく、マレイミド樹脂、及びスチリル樹脂のいずれかであることがより好ましい。
【0081】
(E)成分は、分子中にラジカル重合性不飽和基を2個以上有する化合物を含むことがより好ましい。上限については特に制限はないが、10個以下等とし得る。
【0082】
マレイミド樹脂は、分子中に下記式(E-1)で表されるマレイミド基を含有する。
【化5】
・・・(E-1)
【0083】
マレイミド樹脂の1分子当たりのマレイミド基の数は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは2個以上で、より好ましくは3個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましくは6個以下、さらに好ましくは3個以下である。
【0084】
マレイミド樹脂は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを有することが好ましく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を有することがより好ましい。
【0085】
脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0086】
芳香族炭化水素基としては、1価及び2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基及びアリーレン基がより好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、フェニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、フェニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基がより好ましい。アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0087】
マレイミド樹脂において、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、マレイミド基の窒素原子は、1価又は2価の芳香族炭化水素基と直接結合していることが好ましい。ここで、「直接」とは、マレイミド基の窒素原子と芳香族炭化水素基との間に他の基がないことをいう。
【0088】
マレイミド樹脂は、例えば下記式(E-2)により表される化合物を含むことが好ましい。
【0089】
【化6】
・・・(E-2)
式(E-2)中、R31及びR36はマレイミド基を表し、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Dはそれぞれ独立に2価の芳香族基を表す。m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、aは1~100の整数を表す。
【0090】
式(E-2)中のR32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。
【0091】
アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0092】
アリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0093】
アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく先述のものとしてよいが、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0094】
式(E-2)中のDは2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、ビフェニレン基がより好ましい。2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、式(E-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0095】
m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2であり、1がよりさらに好ましい。
【0096】
aは1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0097】
マレイミド樹脂は、式(E-3)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化7】
・・・(E-3)
式(E-3)中、R37及びR38はマレイミド基を表す。a1は1~100の整数を表す。
【0098】
a1は、式(E-2)中のaと同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0099】
マレイミド樹脂は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」等が挙げられる。
【0100】
マレイミド樹脂は、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかを含む化合物を含むことが好ましい。
【0101】
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基として有していてもよい。
【0102】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0103】
マレイミド樹脂は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の両方を含む化合物を含むことも好ましい。
【0104】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0105】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、置換基を有していないことが好ましいが、置換基を有していてもよい。置換基としては先述のとおりであるが、好適な例として、不飽和炭化水素基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基は、単独で含んでいても、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0106】
マレイミド樹脂は、上述した炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基がマレイミド基の窒素原子に直接結合している化合物を含むことが好ましい。
【0107】
一実施形態において、マレイミド樹脂は、下記一般式(E-4)で表される化合物を含む。
【化8】
・・・(E-4)
一般式(E-4)中、Mは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0108】
Mは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Mのアルキレン基は、上記した炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様である。Mの置換基としては、上記の炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基が有していてもよい置換基と同様であり、置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0109】
Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(Rは水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(E-5)で表される基である。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(E-6)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【0110】
【化9】
・・・(E-5)
【0111】
【化10】
・・・(E-6)
【0112】
Lにおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0113】
Lにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~20のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0114】
Lにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~20のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0115】
Lにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0116】
Lにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基が有していてもよい置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0117】
Lにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0118】
中でも、一般式(E-4)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0119】
一般式(E-4)で表される化合物は、一般式(E-7)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化11】
・・・(E-7)
一般式(E-7)中、Mはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。tは1~10の整数を表す。
【0120】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Mは、一般式(E-4)中のMと同様である。
【0121】
Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Zにおけるアルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0122】
Zが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、先述のものとしてよいが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(E-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0123】
Zが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基が有していてもよい置換基と同様である。
【0124】
Zが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【0125】
【化12】
【0126】
【化13】
【0127】
一般式(E-4)で表される化合物は、一般式(E-8)で表される化合物、及び一般式(E-9)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【0128】
【化14】
・・・(E-8)
一般式(E-8)中、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、R40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。t1は1~10の整数を表す。
【0129】
【化15】
・・・(E-9)
一般式(E-9)中、M、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、Mはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、u1及びu2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0130】
及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M及びMは、一般式(E-4)中のMが表す炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様であり、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0131】
40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(E-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。R40としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0132】
40における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化16】
【0133】
、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M、M及びMは、一般式(E-4)中のMが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0134】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Mは、一般式(E-7)中のZが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(E-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0135】
が表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化17】
【0136】
41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R41及びR42は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0137】
u1及びu2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0138】
マレイミド樹脂の具体例としては、以下の(E1)~(E3)の化合物を挙げることができる。但し、マレイミド樹脂はこれら具体例に限定されるものではない。式中、nは1~10の整数を表す。
【0139】
【化18】
・・・(E1)
【0140】
【化19】
・・・(E2)
【0141】
【化20】
・・・(E3)
【0142】
マレイミド樹脂の具体例としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI1500」(式(E1)の化合物)、「BMI1700」(式(E2)の化合物)、「BMI689」(式(E3)の化合物)等が挙げられる。
【0143】
マレイミド樹脂のマレイミド基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含む化合物の質量である。
【0144】
スチリル樹脂は、分子中にスチリル基及びビニルフェニル基から選択される1種以上の基を有し、ビニルフェニル基を有することが好ましい。ビニルフェニル基とは、以下に示す構造を有する基である。
【化21】
(*は結合手を表す。)
【0145】
スチリル樹脂は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、2個以上のビニルフェニル基を有することがより好ましい。
【0146】
スチリル樹脂は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、非芳香族環、例えば脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、2価の環状基は、複数有していてもよい。
【0147】
2価の環状基は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0148】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0149】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(xii)又は(xiii)が挙げられる。
【化22】
(2価の基(xii)、(xiii)中、R51、R52、R55、R56、R57、R61、及びR62は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R53、R54、R58、R59、及びR60は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0150】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素原子数が6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。R51、R52、R55、R56、R57、R61、及びR62としては、メチル基を表すことが好ましい。R53、R54、R58、R59、及びR60は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0151】
また、2価の環状基は、複数の2価の環状基を組み合わせてもよい。2価の環状基を組み合わせた場合の具体例としては、下記の式(E4)で表される2価の環状基(2価の基(a)が挙げられる。
【化23】
・・・(E4)
(式(E4)中、R71、R72、R75、R76、R77、R81、R82、R85及びR86は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R73、R74、R78、R79、R80、R83及びR84は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。d1及びd2は、0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。)
【0152】
71、R72、R85及びR86は、式(xii)中のR51と同じである。R73、R74、R83及びR84は、式(xii)中のR53と同じである。R75、R76、R77、R81、及びR82は、式(xiii)中のR55と同じである。R78、R79、及びR80は、式(xiii)中のR58と同じである。
【0153】
d1及びd2は0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。d1及びd2としては、1~100の整数を表すことが好ましく、1~50の整数を表すことがより好ましく、1~10の整数を表すことがさらに好ましい。d1及びd2は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0154】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0155】
ビニルフェニル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基が好ましい。
【0156】
スチリル樹脂は、下記式(E-10)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化24】
・・・(E-10)
(式(E-10)中、R91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環B1は、2価の環状基を表す。)
【0157】
91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記の2価の連結基と同様である。
【0158】
環B1は、2価の環状基を表す。環Bとしては、上記の2価の環状基と同様である。
【0159】
環B1は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0160】
以下、スチリル樹脂の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化25】
(q1は、式(E4)中のd1と同じであり、q2は、式(E4)中のd2と同じである。)
【0161】
スチリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」等が挙げられる。スチリル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
スチリル樹脂の数平均分子量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、1500以下である。下限は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、1000以上である。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0163】
(メタ)アクリル樹脂は、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物を含む。(メタ)アクリル樹脂としては、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、1分子あたり2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましい。用語「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。
【0164】
(メタ)アクリル樹脂は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、非芳香族環、例えば脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。中でも、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、脂環式構造を含む環状基であることが好ましい。
【0165】
2価の環状基は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0166】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0167】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(i)~(xi)が挙げられる。中でも、2価の環状基としては、(x)又は(xi)が好ましい。
【化26】
【0168】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0169】
(メタ)アクリロイル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。
【0170】
(メタ)アクリル樹脂は、下記式(E-11)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化27】
・・・(E-11)
(式(E-11)中、R101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、R102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環B2は、2価の環状基を表す。)
【0171】
101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、アクリロイル基が好ましい。
【0172】
102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、(メタ)アクリロイル基が結合していてもよい2価の連結基と同様である。
【0173】
環B2は、2価の環状基を表す。環B2としては、上記の2価の環状基と同様である。環B2は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0174】
(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化28】
【0175】
(メタ)アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」、日本化薬社製「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」、新中村化学工業社製の「NKエステルDCP」等が挙げられる。
【0176】
(メタ)アクリル樹脂の(メタ)アクリロイル基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは30g/eq.~400g/eq.、より好ましくは50g/eq.~300g/eq.、さらに好ましくは75g/eq.~200g/eq.である。(メタ)アクリロイル基当量は、1当量の(メタ)アクリロイル基を含む化合物の質量である。
【0177】
アリル樹脂は、分子中にアリル基を少なくとも1つ有する。アリル樹脂は、1分子中に2個以上のアリル基を有することがより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下とし得る。
【0178】
また、アリル樹脂は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、アリル基に加えて、ベンゾオキサジン環、フェノール環、イソシアヌル環、及び環状構造を有するカルボン酸誘導体のいずれかを有することが好ましい。
【0179】
ベンゾオキサジン環を有するアリル樹脂は、ベンゾオキサジン環の窒素原子及びベンゼン環のいずれかと結合していることが好ましく、窒素原子と結合していることがより好ましい。
【0180】
フェノール環を有するアリル樹脂としては、例えば、アリル基を含むクレゾール樹脂、アリル基を含むノボラック型フェノール樹脂、アリル基を含むクレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0181】
イソシアヌル構造を有するアリル樹脂は、イソシアヌル構造の窒素原子とアリル基とが直接結合していることが好ましい。イソシアヌル構造を有するアリル樹脂としては、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
【0182】
環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル樹脂としては、環状構造を有するカルボン酸アリルが好ましい。環状構造としては、非芳香族環、例えば脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、環状基は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0183】
環状構造を有するカルボン酸としては、例えば、イソシアヌル酸、ジフェン酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル樹脂としては、例えば、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジフェン酸ジアリル、ジフェン酸アリル、オルトジアリルフタレート、メタジアリルフタレート、パラジアリルフタレート、シクロヘキサンジカルボン酸アリル、シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。
【0184】
アリル樹脂は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、明和化成社製「MEH-8000H」、「MEH-8005」(フェノール環を有するアリル樹脂);四国化成工業社製「ALP-d」(ベンゾオキサジン環を有するアリル樹脂);四国化成工業社製「L-DAIC」(イソシアヌル環を有するアリル樹脂);日本化成社製「TAIC」(イソシアヌル環を有するアリル樹脂(トリアリルイソシアヌレート));大阪ソーダ社製「MDAC」(シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を有するアリル樹脂);日触テクノファインケミカル社製「DAD」(ジフェン酸ジアリル);大阪ソーダ社製「ダイソーダップモノマー」(オルトジアリルフタレート)等が挙げられる。
【0185】
アリル樹脂のアリル基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。アリル基当量は、1当量のアリル基を含む化合物の質量である。
【0186】
ブタジエン樹脂は、ブタジエン骨格を有する。ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ブタジエン樹脂としては、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ブタジエン樹脂、酸無水物基含有ブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ブタジエン樹脂及びウレタン基含有ブタジエン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂がより好ましい。
【0187】
ブタジエン樹脂の具体例としては、日本曹達社製の「JP-100」、CRAY VALLEY社製の「Ricon100」、「Ricon150」、「Ricon130MA8」、「Ricon130MA13」、「Ricon130MA20」、「Ricon131MA5」、「Ricon131MA10」、「Ricon131MA17」、「Ricon131MA20」、「Ricon 184MA6」等が挙げられる。
【0188】
(E)成分の含有量は、0質量%以上であり、本発明の所期の効果を高める観点、特には低誘電正接の硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0189】
(E)成分の含有量は、本発明の所期の効果を高める観点、特には低誘電正接の硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0190】
<(F)重合開始剤>
本発明において、樹脂組成物は、(F)成分として、重合開始剤をさらに含んでもよい。ただし、(F)重合開始剤からは、(A)成分~(E)成分に該当するものは除かれる。(F)重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。(F)成分としての重合開始剤の典型例は、過酸化物系重合開始剤である。
【0191】
(F)成分としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0192】
(F)成分の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチル(登録商標)C」、「パーブチル(登録商標)A」、「パーブチル(登録商標)P」、「パーブチル(登録商標)L」、「パーブチル(登録商標)O」、「パーブチル(登録商標)ND」、「パーブチル(登録商標)Z」、「パーヘキシル(登録商標)D」、「パークミル(登録商標)P」、「パークミル(登録商標)D」等が挙げられる。
【0193】
樹脂組成物が(F)成分を含む場合、(F)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0194】
<(G)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、任意の成分として、(G)熱可塑性樹脂を含有する場合がある。ただし、(G)熱可塑性樹脂からは、(A)成分~(F)成分に該当するものは除かれる。(G)熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0195】
(G)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、中でも、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる樹脂が好ましい。
【0196】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0197】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0198】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含むモノマー成分を重合してなる重合体を意味する。アクリル樹脂を構成するモノマー成分には、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーに加えて、(メタ)アクリルアミド系モノマー、スチレン系モノマー、官能基含有モノマー等が共重合成分として含まれていてもよい。アクリル樹脂の具体例としては、東亜合成社製の「ARUFON UP-1000」、「ARUFON UP-1010」、「ARUFON UP-1020」、「ARUFON UP-1021」、「ARUFON UP-1061」、「ARUFON UP-1080」、「ARUFON UP-1110」、「ARUFON UP-1170」、「ARUFON UP-1190」、「ARUFON UP-1500」、「ARUFON UH-2000」、「ARUFON UH-2041」、「ARUFON UH-2190」、「ARUFON UHE-2012」、「ARUFON UC-3510」、「ARUFON US-6100」、「ARUFON US-6170」などが挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0199】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0200】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0201】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0202】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0203】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0204】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0205】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「Noryl(登録商標)SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0206】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0207】
(G)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0208】
(G)熱可塑性樹脂の含有量は、0質量%以上であり、本発明の効果を顕著に得る観点からは、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、本発明の効果が損なわれない限り上限は限定されないが、例えば50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下としうる。
【0209】
<(H)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、任意の成分として、(H)硬化促進剤を含有する場合がある。(H)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂の硬化反応を促進させる機能を有する。ただし、(H)硬化促進剤からは、(A)成分~(G)成分に該当するものは除かれる。(H)硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0210】
(H)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、(H)硬化促進剤としては、より高い光反射率を達成する観点から、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、リン系硬化促進剤がより好ましい。
【0211】
リン系硬化促進剤としては、より高い光反射率を達成する観点から、ホスホニウム塩及びホスフィンからなる群より選ばれる1以上を含むことが好ましい。
【0212】
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0213】
ホスフィンとしては、例えば、トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物等が挙げられる。
【0214】
リン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、北興化学工業社製の「TBP-DA」等が挙げられる。
【0215】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0216】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」、四国化成社製の「1B2PZ」、「1B2PZ-10M」等が挙げられる。
【0217】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0218】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0219】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0220】
(H)硬化促進剤の含有量は、0質量%以上であり、本発明の効果を顕著に得る観点又は硬化時間を制御する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、例えば、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
【0221】
<(I)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、不揮発成分として、さらに任意の添加剤を含有する場合がある。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(I)その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(I)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。例えば、光硬化性成分及びその助剤は、通常、本発明の樹脂組成物の熱硬化性が損なわれない量で含まれる。
【0222】
<(J)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。(J)有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(J)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(J)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0223】
(J)有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下等であり得る。
【0224】
本発明において、樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A)成分、(B)成分及び(C)成分、また、必要に応じて(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、(H)成分、(J)成分を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0225】
<樹脂組成物の物性、用途>
先述のとおり、本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)無機充填材を含有する場合であっても、(C)かご型シルセスキオキサン化合物を含有することにより、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。反りの発生が抑制されていること(低反り性)は、後述する<低反り性の評価>欄に記載の方法で評価できる。本発明の樹脂組成物は、例えば、190℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物に生じる反り量は、1.0cm以下、好ましくは1.0cm未満、より好ましくは0.9cm以下である。誘電特性は、後述する<誘電特性(誘電率、誘電正接)の評価>欄に記載の方法で評価できる。本発明の樹脂組成物は、例えば、200℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物の誘電率(Dk)が、好ましくは3.2未満であり、より好ましくは3.10以下であり、さらに好ましくは3.00以下である。同硬化物の誘電正接(Df)が、好ましくは0.0045以下であり、より好ましくは0.0043以下であり、さらに好ましくは0.0041以下である。好適な一実施形態において、200℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物の誘電率(Dk)が、好ましくは3.2未満であり、かつ、誘電正接(Df)が、好ましくは0.0045以下である。
【0226】
また、本発明の樹脂組成物の一実施態様では、めっき密着性に優れる硬化物を得ることができるという傾向を示す。めっき密着性は、後述する<めっき密着性の評価>欄に記載の方法で評価できる。本発明の樹脂組成物は、例えば、当該樹脂組成物を130℃、30分間、続けて170℃、30分間熱硬化させて得られる硬化物のピール強度が、好ましくは0.34kgf/cm以上であり、より好ましくは0.34kgf/cm超であり、さらに好ましくは0.345kgf/cm以上であり、特に好ましくは0.370kgf/cm以上である。
【0227】
本発明の樹脂組成物は、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層用途、特には層間絶縁用途の樹脂組成物としても好適に使用することができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、層間絶縁層を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板のソルダーレジスト層の絶縁用途の樹脂組成物(ソルダーレジスト層形成用樹脂組成物)としても好適に使用することができる。
【0228】
樹脂組成物は、反りの発生が抑制され、かつ、誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0229】
また、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0230】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0231】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
【0232】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
【0233】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0234】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0235】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0236】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0237】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0238】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0239】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0240】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0241】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0242】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0243】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0244】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0245】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0246】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0247】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0248】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0249】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0250】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0251】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0252】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0253】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0254】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0255】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0256】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」、「スウェリングディップ・セキュリガントP」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0257】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0258】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0259】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0260】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0261】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0262】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0263】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物層の硬化物を含む絶縁層を含んでいてもよい。このような半導体装置としては、例えば、プリント配線板そのもの、半導体チップパッケージ、マルチチップパッケージ、パッケージオンパッケージ、ウェハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、システムインパッケージ等が挙げられる。
【0264】
半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される。
【0265】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0266】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例
【0267】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0268】
-実施例1~8及び比較例1-
以下、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された成分を含有する樹脂組成物の態様について、実施例及び比較例を例示的に示す。
【0269】
[実施例1]
(1)樹脂ワニスAの調製
(A)成分としてのエポキシ樹脂a1(三菱ケミカル社製のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂「YX4000HK」、エポキシ当量:194g/eq.)5部と、(A)成分としてのエポキシ樹脂a2(DIC社製のナフタレン型エポキシ樹脂「HP-4032SS」、エポキシ当量:144g/eq.)2部と、(A)成分としてのエポキシ樹脂a3(ダイセル社製のエステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂「セロキサイド2021P」、エポキシ当量:137g/eq.)2部と、(G)成分としての熱可塑性樹脂g(三菱ケミカル社製のフェノキシ樹脂「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=35000)33.3部とを、混合溶剤(ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部)中で、撹拌しながら溶解させた。これにより、エポキシ樹脂含有溶液を得た。
【0270】
エポキシ樹脂含有溶液へ、(B)成分としての無機充填材b(信越化学工業社製のN-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシランで表面処理されたアドマテックス社製の球形シリカ「SC-C2」、比表面積:5.9m/g、平均粒径:0.77μm)175部と、(C-1)成分としての結合性官能基を有するかご型シルセスキオキサン(日本材料技研社製の2官能性ダブルデッカー型シルセスキオキサン化合物「脂環式ダブルデッカーシルセスキオキサン-DDSQ-01」又は「シルセスキオキサン脂環式酸二無水物DDSQ」(以下、「反応性かご型PSQ-c1」ともいう)、CAS番号:948849-07-8、酸無水物基当量:909g/eq.の不揮発成分50質量%のシクロヘキサノン溶液)96部と、(H)成分としての硬化促進剤h(四国化成社製のイミダゾール系硬化促進剤「1B2PZ」(1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)の不揮発成分10質量%のMEK溶液)2部とを添加し、混合し、さらに、高速回転ミキサーで均一に分散した。これにより、分散液を得た。
【0271】
なお、反応性かご型PSQ-c1は、以下の構造式で表される化合物である。
【0272】
【化29】
【0273】
上述したようにして、(A)~(C)成分を少なくとも含有する樹脂組成物の樹脂ワニスを調製した。以下、このように調製される樹脂ワニスを「樹脂ワニスA」ともいう。
【0274】
(2)樹脂シートBの作製
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、以下「離型PET」ということがある。)を用意した。
【0275】
樹脂ワニスAを、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが25μmとなるよう、離型PET上にダイコーターにて均一に塗布し、80℃で1分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートを得た。以下、このように作製される樹脂シートを「樹脂シートB」ともいう。
【0276】
[実施例2]
実施例1において、(B)成分としての無機充填材bの配合量を175部から40部に変更し、かつ、(G)成分としての熱可塑性樹脂g(不揮発成分30質量%)の配合量を33.3部から13.2部に変更し、かつ、(H)成分としての硬化促進剤h(不揮発成分10質量%)の配合量を2部から1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0277】
[実施例3]
実施例1において、(B)成分としての無機充填材bの配合量を175部から105部に変更し、かつ、(C-1)成分としての反応性かご型PSQ-c1の配合量を48部から18部に変更し、かつ、(G)成分としての熱可塑性樹脂g(不揮発成分30質量%)の配合量を33.3部から19.8部に変更し、かつ、エポキシ樹脂含有溶液に、さらに、(D)成分としての硬化剤d1(DIC社製の活性エステル系硬化剤「HPC-8150-62T」、活性基当量:229g/eq.、不揮発成分62質量%のトルエン溶液)12.1部を添加した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0278】
[実施例4]
実施例3において、(D)成分としての硬化剤d1(不揮発成分62質量%)12.1部を、硬化剤d2(DIC社製の活性エステル系硬化剤「HPC-8000-65T」、活性基当量:223g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)19.8部に変更した。
以上の事項以外は実施例3と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0279】
[実施例5]
実施例1において、(B)成分としての無機充填材bの配合量を175部から205部に変更し、かつ、(G)成分としての熱可塑性樹脂g(不揮発成分30質量%)の配合量を33.3部から36.3部に変更し、かつ、(H)成分としての硬化促進剤h(不揮発成分10質量%)の配合量を2部から4部に変更し、かつ、エポキシ樹脂含有溶液に、さらに、(E)成分としてのラジカル重合性化合物e1(日本化薬社製のビフェニルアラルキル型マレイミド化合物「MIR-3000-70MT」、不揮発成分70質量%のMEK/トルエン混合溶液)14.3部と、(F)成分としての硬化促進剤f(日油社製「パーヘキシル(登録商標)D」)0.2部とを添加した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0280】
[実施例6]
実施例5における(E)成分としてのラジカル重合性化合物e1(不揮発成分70質量%)14.3部を、実施例6では、ラジカル重合性化合物e2(デザイナーモレキュールズ社製のマレイミド化合物「BMI689」(ダイマージアミンに由来する骨格を有するN-アルキルビスマレイミド、溶剤不含)10部に変更した。
以上の事項以外は実施例5と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0281】
[実施例7]
実施例5における(E)成分としてのラジカル重合性化合物e1(不揮発成分70質量%)14.3部を、実施例7では、ラジカル重合性化合物e3(SABIC社製「SA9000-111」、数平均分子量(Mn):1850~1950、溶剤不含)10部に変更した。
以上の事項以外は実施例5と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0282】
[実施例8]
実施例5において、(E)成分としてのラジカル重合性化合物e1(不揮発成分70質量%)14.3部を、実施例8では、ラジカル重合性化合物e4(三菱ガス化学社製のビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル「OPE-2St 2200」、不揮発成分65%のトルエン溶液)15.4部に変更し、かつ、(F)成分としての硬化促進剤fの配合量を0.2部から0.01部に変更した。
以上の事項以外は実施例5と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0283】
[比較例1]
実施例1において、(C-1)成分としての反応性かご型PSQ-c1の配合量を48部から0部(すなわち、不含)に変更し、かつ、エポキシ樹脂含有溶液に、さらに、(D)成分としての硬化剤d3(新日本理化社製の酸無水物系硬化剤「リカシッド BT-100」(1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物))48部を添加した。すなわち、(C-1)成分としての反応性かご型PSQ-c1に代えて、酸無水物系硬化剤を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、(C)成分不含の樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製した。
【0284】
続いて、各種測定方法・評価方法について説明する。
【0285】
<低反り性の評価>
(1)樹脂シートのラミネート
実施例及び比較例で作製した各樹脂シートBを9.5cm角のサイズに切り出し、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、10cm角に切り取った三井金属鉱業製銅箔「3EC-III(厚さ35μm)」の粗化面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、120℃で30秒間、圧力0.74MPaにて圧着させることにより、樹脂組成物層付き金属箔を作製し、その後支持体であるPETフィルムを剥離した。
【0286】
(2)樹脂組成物層の硬化
上記(1)で得られた樹脂組成物層付き金属箔の四辺を、樹脂組成物層が上面になるように厚さ1mmのSUS板にポリイミドテープで貼りつけ、190℃、90分間の硬化条件で樹脂組成物層を硬化させた。
【0287】
(3)反り量の測定
上記(2)で得られた樹脂組成物層付き金属箔の四辺のうち、三辺のポリイミドテープを剥離し、SUS板から最も高い点の高さを求めることにより反り量を求め、以下の基準で評価した。
○:反り量の大きさが1cm未満。
×:反り量の大きさが1cm以上。
【0288】
<めっき密着性の評価>
1.測定用サンプルの作製
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をメック社製「CZ8101」にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0289】
(2)支持体付き樹脂シートのラミネート
作製した各樹脂シートから保護フィルムを剥がし、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
【0290】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた樹脂シートを130℃、30分間、続けて170℃、30分間の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した。
【0291】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内層回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬し、その後80℃で30分乾燥した。この基板を「評価基板C」とした。
【0292】
(5)セミアディティブ工法によるめっき
評価基板Cを、PdClを含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解めっきを行い、20μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を200℃にて60分間行った。この基板を「評価基板D」とした。
【0293】
2.引き剥がし強度(ピール強度)の測定及び評価
評価基板Dの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0294】
また、測定したピール強度を、以下の基準で評価した。
○:0.34kgf/cm以上
×:0.34kgf/cm未満
【0295】
<誘電特性(誘電率、誘電正接)の評価>
実施例及び比較例で作成した各樹脂シートBから、保護フィルムを剥がして、200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離した。得られた硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電率(Dk)、誘電正接(Df)を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0296】
また、誘電特性について以下の基準で評価した。
〇:誘電率が3.2未満であり、かつ、誘電正接が0.0045以下
×:誘電率が3.2以上、及び、誘電正接が0.0045超の少なくとも一方を満たす
【0297】
実施例1~8及び比較例1の結果を表1に示す。
【0298】
【表1】
【0299】
実施例1~8において、(G)成分を含有しない場合であっても、非反応性のかご型PSQを含有する場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。