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特許7639308補助部材及び補助部材を備えた吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】補助部材及び補助部材を備えた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
A61F13/56 210
A61F13/56 213
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020193754
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082281
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余吾 奏枝
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5624428(US,A)
【文献】特開2008-161300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0236304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股下に装着される吸収性物品の左右端部から突設され、前記吸収性物品の被貼着部に貼着する貼着部が前記着用者側の面に形成されたテープに取り付けられる補助部材であって、
シート状の基材と、
前記基材の一方の面のうちの少なくとも前記補助部材の長手方向における一方の端部に設けられ、前記テープの貼着部に貼着される被貼着部と、
前記基材の他方の面のうちの少なくとも前記長手方向における他方の端部に設けられ、前記吸収性物品の被貼着部に貼着する貼着部と、
前記長手方向における一方の端部に配置された第1の非伸縮領域と、
前記長手方向における他方の端部に配置された第2の非伸縮領域と、
を備え、
前記第1の非伸縮領域が配置された前記一方の端部に前記被貼着部が設けられ、前記第2の非伸縮領域に配置された前記他方の端部に前記貼着部が設けられ、
前記基材は、前記長手方向における前記被貼着部と前記貼着部との間に、前記長手方向に伸縮可能な伸縮部を含み、
前記伸縮部は、前記第1の非伸縮領域に設けられる前記被貼着部と前記第2の非伸縮領域に設けられる前記貼着部との間に設けられ、
前記貼着部の幅は、前記被貼着部の幅よりも狭く、
前記基材は、前記補助部材を前記長手方向に伸ばしたときに、少なくとも前記貼着部の前記伸縮部側の前記補助部材の幅方向における一方の仮想端点、前記貼着部の前記伸縮部側の前記幅方向における他方の仮想端点、前記被貼着部の前記伸縮部側の前記幅方向における一方の仮想端点、及び前記被貼着部の前記伸縮部側の前記幅方向における他方の仮想端点を結ぶ仮想線で囲まれた領域を含むことを特徴とする補助部材。
【請求項2】
前記基材は、前記仮想端点を結ぶ仮想線で囲まれた領域よりも外側の領域を含むことを特徴とする請求項に記載の補助部材。
【請求項3】
前記伸縮部の幅は、前記被貼着部の幅と同じであり、
前記基材のうちの前記被貼着部と前記伸縮部を含む部分は矩形状であることを特徴とす
る請求項に記載の補助部材。
【請求項4】
前記伸縮部は、柔軟性を有する材料によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の補助部材。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項の補助部材を備えたことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補助部材及び補助部材を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品には、着用者の胴回りに固定するための面ファスナー等を備えたいわゆるテープ型と呼ばれるタイプが存在する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このタイプの吸収性物品では、例えば、吸収性物品のうちの着用者の後見頃に対応する部位の左右両側の縁にテープが設けられ、着用者の前身頃に対応する部位にフロントパッチのような被貼着部が設けられている。そして、テープを被貼着部に貼着させることにより、吸収性物品が着用者に装着された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-55996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸収性物品のテープは比較的短い。このため、着用者が吸収性物品を装着しようとする際に、例えば、着用者が拘縮を有していたり、太っていたりするなどの理由で、着用者がテープを被貼着部に届けることができず、着用者がテープを被貼着部に貼着するのが困難となることがある。
【0006】
本開示は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、テープに取り付けられる補助部材であって、着用者が吸収性物品を装着する際に着用者が吸収性物品の被貼着部にテープを貼着するのを容易にする補助部材及び補助部材を備えた吸収性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、補助部材の基材の一方の面に、テープの貼着部に貼着される被貼着部と、基材の他方の面に、吸収性物品の被貼着部に貼着する貼着部を設けることにした。
【0008】
詳細には、本発明は、着用者の股下に装着される吸収性物品の左右端部から突設され、吸収性物品の被貼着部に貼着する貼着部が着用者側の面に形成されたテープに取り付けられる補助部材であって、シート状の基材と、基材の一方の面のうちの少なくとも補助部材の長手方向における一方の端部に設けられ、テープの貼着部に貼着される被貼着部と、基材の他方の面のうちの少なくとも長手方向における他方の端部に設けられ、吸収性物品の被貼着部に貼着する貼着部と、を備える。
【0009】
なお、上記補助部材において、被貼着部が一方の端部に設けられ、貼着部が他方の端部に設けられ、基材は、長手方向における被貼着部と貼着部との間に、長手方向に伸縮可能な伸縮部を含んでもよい。
【0010】
また、上記補助部材において、貼着部の幅は、被貼着部の幅よりも狭く、基材は、補助部材を長手方向に伸ばしたときに、少なくとも貼着部の伸縮部側の幅方向における一方の
仮想端点、貼着部の伸縮部側の幅方向における他方の仮想端点、被貼着部の伸縮部側の幅方向における一方の仮想端点、及び被貼着部の伸縮部側の幅方向における他方の仮想端点を結ぶ仮想線で囲まれた領域を含んでもよい。
【0011】
また、上記補助部材において、基材は、仮想端点を結ぶ仮想線で囲まれた領域よりも外側の領域を含んでもよい。
【0012】
また、上記補助部材において、伸縮部の幅は、被貼着部の幅と同じであり、基材のうちの被貼着部と伸縮部を含む部分は矩形状であってもよい。
【0013】
また、上記補助部材において、伸縮部は、柔軟性を有する材料によって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着用者が吸収性物品を装着する際に着用者が吸収性物品の被貼着部にテープを貼着するのを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、おむつの分解斜視図である。
図3図3は、非装着状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4図4は、伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
図5図5(A)は、補助部材を一方の面側から見た平面図であり、図5(B)は、補助部材を他方の面側から見た平面図である。
図6図6は、補助部材を、幅方向の中心を長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
図7図7(A)は、長手方向に伸ばしたときの本実施形態の補助部材の状態を示す平面図であり、図7(B)は、長手方向に伸ばしたときの比較例の補助部材の状態を示す平面図である。
図8図8は、補助部材のおむつへの取り付け方法を説明する図である。
図9図9は、補助部材が取り付けられた後のおむつ及び補助部材を肌面側から見た平面図である。
図10図10は、補助部材の使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る補助部材及び補助部材を備えた吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0017】
<実施形態>
まず、補助部材が備えられる吸収性物品について説明する。
【0018】
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする
。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0019】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2F(本願でいう「吸収性物品」の「被貼着部」の一例)へ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0020】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0021】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、図3は、非装着状態におけるおむつ1を、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。図4は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する部位(図4に示す脚周り領域10L,10R)に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0022】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、吸収体6C、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、吸収体6Cは、股下領域1Bを含んで配置されている。そして、トップシート7は、吸収体6Cの吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸
収体6Cに進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として使用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0023】
バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6Cに覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに接触することになる。
【0024】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で設けられる。なお、図4に示されるように、レグギャザー3AL,3ARは、股下領域1Bの幅方向両側端部おむつ1において着用者の大腿部が位置する部位である脚周り領域10L,10Rを含んで配置されている。脚周り領域10L,10Rは、股下領域1Bの幅方向両側端部に配置される。また、弾性部材4SL,4SRの配置領域が、レグギャザー3AL,3ARである。
【0025】
また、おむつ1は、細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、着用者の大腿部が位置する部位(図4に示す脚周り領域10L,10R)に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。サイドシート8L,8Rは、おむつ1が装着状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0026】
なお、カバーシート4には、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ弾性部材4Cが弾性部材4SL,4SRよりもおむつ1の幅方向内側でおむつ1の長手方向に沿って設けられている。弾性部材4Cは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて設けられる。
【0027】
また、おむつ1は、上述したウェストギャザー3Rを形成するために、弾性部材9ERを備える。弾性部材9ERは、吸収体6Cの端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向がおむつ1の幅方向となるようにバックシート5とトップシート7の間に延設される。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0028】
吸収体6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6Cでは、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙
間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6C全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6Cの厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0029】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0030】
また、図4に示されるように、おむつ1は、後身頃領域1Rに配置され、吸収体6Cよりもおむつ1の幅方向の外側に延出する一対のサイドフラップ部11L,11R(本願でいう「左右端部」の一例)を備える。本実施形態において、サイドフラップ部11L,11Rは、おむつ1の外装面を形成するカバーシート4と、カバーシート4の肌面側に接合され、立体ギャザー3BL,3BRを形成するためのサイドシート8L,8Rと、を含んで構成されている。また、おむつ1は、一対のサイドフラップ部11L,11Rのそれぞれに接続され、前身頃領域1Fに配置されたフロントパッチ2Fに貼着された状態でおむつ1を着用者の胴回りに固定するためのテープ2L,2Rを備える。
【0031】
テープ2L,2Rは、サイドフラップ部11L,11Rに固定された基端部20L,20Rと、サイドフラップ部11L,11Rよりも幅方向の外側に延出するテープ基部21L,21Rと、を有する。基端部20L,20Rとテープ基部21L,21Rは、不織布等の1枚のシート部材によって形成されている。基端部20L,20Rは、サイドフラップ部11L,11Rを構成するカバーシート4とサイドシート8L,8Rの間に配置され、カバーシート4及びサイドシート8L,8Rの少なくともいずれか一方に接着剤で接合されている。これにより、テープ2L,2Rは、サイドフラップ部11L,11Rに接続される。一方、テープ基部21L,21Rは、サイドシート8L,8Rの縁から突出している。また、テープ基部21L,21Rの肌面側にはフック部22L,22R(本願でいう「テープ」の「貼着部」の一例)が配置されている。フック部22L,22Rは、フロントパッチ2Fに係合可能である。フロントパッチ2Fは、フック部22L,22Rが係合可能なループ部が表面に形成されている。フック部22L,22Rがフロントパッチ2Fのループ部に係合することによって、テープ2L,2Rがおむつ1の前身頃領域1Fに貼着される。
【0032】
ところで、図4に示すように、テープ2L,2Rは比較的短い。このため、着用者がおむつ1を装着しようとする際に、例えば、着用者が拘縮を有していたり、太っていたりするなどの理由で、着用者がテープ2L,2Rをフロントパッチ2Fに届けることができず、着用者がテープ2L,2Rをフロントパッチ2Fに貼着するのが困難となることがある。そこで、本実施形態では、テープ2L,2Rに補助部材が取り付けられている。
【0033】
次に、補助部材について説明する。図5(A)は、補助部材を一方の面側から見た平面図であり、図5(B)は、補助部材を他方の面側から見た平面図である。また、図6は、補助部材を、幅方向の中心を長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
【0034】
図5に示すように、本実施形態に係る補助部材12は、テープ2L,2Rに取り付けられて、実質的にテープ2L,2Rを延長させるものとして機能する部材であり、シート状の基材13と、ループ部14と、フック部15とを備えている。
【0035】
基材13は、矩形状の基部23Aと、基部23Aの一方の端から延び、延びていくほど
幅が狭くなる略テーパー形状の先端部23Bからなる。
【0036】
また、図6に示すように、基材13は、非伸縮性シート13A、伸縮性シート13B及び非伸縮性シート13Cから形成されている。非伸縮性シート13A、伸縮性シート13B及び非伸縮性シート13Cは、補助部材12の長手方向のうちの基部23Aから先端部23Bに向かう方向においてこの順に配置されている。そして、非伸縮性シート13Aの先端部23B側の端部と伸縮性シート13Bの基部23A側の端部が重なって接合されていると共に、伸縮性シート13Bの先端部23B側の端部と非伸縮性シート13Cの基部23A側の端部が重なって接合されている。これにより、基材13には、非伸縮性シート13Aからなる第1の非伸縮領域24A、非伸縮性シート13Cからなる第2の非伸縮領域24B、及び伸縮性シート13Bのうちの非伸縮性シート13A,13Cと重なっていない部分からなる伸縮領域24C(本願でいう「伸縮部」の一例)が形成されている。なお、図5に示すように、基材13のうち、基部23Aには第1の非伸縮領域24A、伸縮領域24C、及び第2の非伸縮領域24Bの一部が含まれ、先端部23Bには第2の非伸縮領域24Bの残りの部分が含まれている。
【0037】
非伸縮性シート13A,13Cは、伸縮性を殆ど有していない不織布のシート材又はプラスチックフィルムから形成されている。一方、伸縮性シート13Bは、伸縮性及び柔軟性を有する不織布のシート材から形成されている。例えば、不織布のシートの一部に糸ゴム等の弾性部材を伸長した状態で貼り付け、弾性部材が露出しないようにシートの残り部分を折り返して接着したシート材が、伸縮性及び柔軟性を有する不織布のシート材として使用できる。また、非伸縮性シート13A,13Cと伸縮性シート13Bとの接合は、接着剤を用いた接着、又はエンボス加工における加熱及び加圧や超音波による融着によって行われる。
【0038】
なお、基材13は、伸縮性シートと、伸縮性シートの補助部材12の長手方向における両端部に接合された非伸縮性シートから形成されてもよい。
【0039】
ループ部14は、テープ2L,2Rのフック部22L,22Rが係合されて面ファスナーとして機能するものであり、基材13の一方の面(図6では基材13の上面)のうちの補助部材12の長手方向における一方の端部、具体的には基部23Aの先端部23Bと反対側の端部に配置されている。ループ部14の幅は、基部23Aの幅とほぼ同じになっている。また、ループ部14は、フロントパッチ2Fのループ部と同じく、例えば、プラスチックフィルムの表面に縦横にプラスチックの糸が接着剤で接着されることによって形成されている。そして、ループ部14は、例えば、接着剤によって非伸縮性シート13A、すなわち基材13の第1の非伸縮領域24Aに接合されている。
【0040】
フック部15は、フロントパッチ2Fのループ部に係合して面ファスナーとして機能するものであり、基材13の他方の面(図6では基材13の下面)のうちの補助部材12の長手方向における他方の端部、具体的には先端部23Bの一部に配置されている。先端部23Bの幅は基部23Aの幅よりも狭いので、フック部15の幅はループ部14の幅よりも狭くなっている。また、フック部15は、テープ2L,2Rのフック部22L,22Rと同じく、例えば、プラスチックフィルムの表面に縦横にプラスチックの突起が形成されているものである。そして、フック部15は、例えば、接着剤によって非伸縮性シート13C、すなわち基材13の第2の非伸縮領域24Bに接合されている。
【0041】
このような補助部材12は、基材13の伸縮領域24Cにより、少なくとも補助部材12の長手方向において伸縮可能となっている。図7(A)は、長手方向に伸ばしたときの本実施形態の補助部材12の状態を示す平面図であり、図7(B)は、長手方向に伸ばしたときの比較例の補助部材の状態を示す平面図である。なお、比較例の補助部材は、基本
的には本実施形態の補助部材12と同じ構成を有している。但し、本実施形態の補助部材12は矩形状の基部23Aを有しているのに対して、比較例の補助部材は略テーパー形状の基部を有している、という点で相違している。
【0042】
前述したように、本実施形態の補助部材12では、基材13のうち、少なくとも第1の非伸縮領域24A及び伸縮領域24Cを含む基部23Aは矩形状を有している。このため、図7(A)に示すように、補助部材12を長手方向に伸ばしたときにも、伸縮領域24Cが長手方向に伸びて、基部23Aの形状は矩形状に維持される。また、前述したように、フック部15の幅はループ部14の幅よりも狭くなっている。このため、補助部材12を長手方向に伸ばしたときに、基材13は、第1の非伸縮領域24Aにあるループ部14の伸縮領域24C側の補助部材12の幅方向における一方の仮想の端点14A、その他方の仮想の端点14B、第2の非伸縮領域24Bにあるフック部15の伸縮領域24C側の補助部材12の幅方向における一方の仮想の端点15A、及びその他方の仮想の端点15Bを結ぶ仮想の線(図7では、隙間が広い破線)で囲まれた台形状の領域25を有している。このとき、例えば、基材13の台形状の領域25のうちのフック部15側の部分には、補助部材12の幅方向において内側、且つフック部15側に向かう応力がかかっている。
【0043】
ここで、図7(B)に示すように、比較例の補助部材30のように、基材31の基部32Aが、先端部32Bに向かうほど幅が狭くなるテーパー形状を有している場合には、補助部材30を長手方向に伸ばしたときに、基材31が、台形状の領域25よりも内側の部分を有することがある。当該内側の部分には前述した応力よりも強い応力がかかるので、当該内側の部分を起点にして基材31が撚れたり、切れたりしてしまう可能性がある。
【0044】
これに対し、本実施形態の補助部材12では、前述したように、補助部材12を長手方向に伸ばしたときにも、基材13の基部23Aが矩形状を維持しているので、基材13が台形状の領域25を有している。このため、基材13には比較的弱い応力しかかからないので、基材13が撚れたり、切れたりしてしまうのを回避することができる。更に、基材13は、台形状の領域25よりも外側の領域も有している。補助部材12を長手方向に伸ばしたときには、前述した応力によって外側の領域が、ループ部14が設けられた面側に反って、浮き上がるので、摘まみ易い部分となる。特に、基部23Aのフック部15側の両角部(図7では、隙間が広い破線で囲まれた部分)は、前述した外側の領域に該当し、しかもその外側の領域の幅が広くなっているので、より好適な摘まみ易い部分となる。
【0045】
続いて、補助部材12のおむつ1への取り付け方法について説明する。図8は、補助部材12のおむつ1への取り付け方法を説明する図である。また、図9は、補助部材12が取り付けられた後のおむつ1及び補助部材12を肌面側から見た平面図である。
【0046】
図8に示すように、おむつ1と補助部材12が別体となっている場合に、おむつ1のテープ2L,2Rのフック部22L,22Rと補助部材12のループ材14とが対向するように、補助部材12をテープ2L,2Rの近傍に配置する。そして、テープ2L,2Rのフック部22L,22Rを補助部材12のループ部14に係合させることにより、補助部材12をテープ2L,2Rに当てて、補助部材12をテープ2L,2Rに貼着させる。このとき、ループ材14の幅が比較的広いので、テープ2L,2Rのフック部22L,22Rを補助部材12のループ部14に係合させるのが容易になると共に、補助部材12をテープ2L,2Rに強く貼着させることができる。
【0047】
このようにして、図9に示すように、補助部材12のフック部15が肌面側から見える状態で、補助部材12がおむつ1に取り付けられる。なお、図8では、おむつ1と補助部材12が別体となっている場合について説明したが、製品として予めおむつ1のテープ2
L,2Rに補助部材12が取り付けられている、すなわちおむつ1と補助部材12が一体となっていてもよい。
【0048】
更に、補助部材12の使用方法について説明する。図10は、補助部材12の使用方法を説明する図である。
【0049】
補助部材12が取り付けられたおむつ1を着用者が装着する際に、補助部材12をフロントパッチ2Fに当てて、図10に示すように、補助部材12のフック部15をおむつ1のフロントパッチ2Fのループ部に係合させることにより、補助部材12をフロントパッチ2Fに貼着させる。このとき、補助部材12によって実質的にテープ2L,2Rが延長された状態になっているので、着用者が拘縮を有していたり、太っていたりしても、着用者がテープ2L,2Rをフロントパッチ2Fに貼着するのを容易にすることができる。しかも、補助部材12が伸縮領域24Cを有しているので、伸縮領域24Cが補助部材12の長手方向、言い換えるとおむつ1の幅方向に伸びることで、補助部材12が伸びる。これにより、着用者がテープ2L,2Rをフロントパッチ2Fに貼着するのをより一層容易にすることができる。また、補助部材12を長手方向に伸ばしたときに、基材13のうちの台形状の領域25よりも外側の領域の部分、例えば、前述した基部23Aのフック部15側の両角部26が反って、浮き上がることで、着用者が摘まみ易い部分を形成することができる。この摘まみ易い部分を使用することで、着用者が補助部材12をテープ2L,2Rやフロントパッチ2Fに貼り直すのを容易にすることができる。
【0050】
更にまた、補助部材12の伸縮領域24Cには、柔軟性を有する伸縮性シート13Bが配置されているので、着用者がおむつ1を装着しているときに、着用者が太っていて、着用者の肌に伸縮領域24Cが触れていたとしても、着用者が不快と感じ難くすることができる。
【0051】
<その他の実施形態>
次に、その他の実施形態について説明する。上記実施形態に係る補助部材12では、図5及び図6に示すように、ループ部14とフック部15とが重ならないように、基材13の一方の面のうちの一方の端部にループ部14が配置され、基材13の他方の面のうちの他方の端部にフック部15が配置されていたが、ループ部14及びフック部15の配置はこれに限定されない。例えば、ループ部14の一部とフック部15の一部とが重なるように、基材13の一方の面のうちの補助部材12の長手方向における一方の側にループ部14が配置され、基材13の他方の面のうちの補助部材12の長手方向における他方の側にフック部15が配置されていてもよい。また、基材13の一方の面の全体にループ部14が配置され、基材13の他方の面の全体にフック部15が配置されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態に係る補助部材12では、基材13が、非伸縮性シート13A、伸縮性シート13B及び非伸縮性シート13Cから形成されていたが、基材13の材料はこれに限定されない。例えば、基材13が非伸縮性シートのみから形成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態に係る補助部材12が取り付けられるおむつ1では、テープ2L,2Rのフック部22L,22Rがフロントパッチ2Fのループ部に係合されることにより、テープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されるものとなっていたが、テープ2L,2Rとフロントパッチ2Fとの貼着の形態はこれに限定されない。例えば、おむつ1において、フック部22L,22Rを替えて、テープ2L,2Rのテープ基部21L,21Rの一部の肌面側に、粘着剤が塗布された粘着部(本願でいう「吸収性物品」の「貼着部」の一例)が設けられると共に、ループ部を有するフロントパッチ2Fを替えて、ループ部を有しない表面が平坦なフロントパッチ2F(本願でいう「吸収性物品」の「被貼着部」の一例)が設けられてもよい。そして、テープ2L,2Rの粘着部が当該フロントパッ
チ2Fに粘着されることにより、テープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されるものでもよい。そして、テープ2L,2Rに粘着部が設けられ、平坦なフロントパッチ2Fが設けられているおむつ1に対しては、補助部材12において、ループ部14を替えて、基材13の基部23Aの端部に表面が平坦なフィルム(本願でいう「補助部材」の「被貼着部」の一例)が設けられると共に、フック部15を替えて、先端部23Bの一部に粘着剤が塗布された粘着部(本願でいう「補助部材」の「貼着部」の一例)が設けられてもよい。
【0054】
上記実施形態に係る補助部材12が取り付けられるおむつ1では、前身頃領域1Fにフロントパッチ2Fが設けられているものとなっていたが、前身頃領域1Fにフロントパッチ2Fが設けられずに、フック部22L,22Rが前身頃領域1Fのカバーシート4の一部(本願でいう「吸収性物品」の「被貼着部」の一例)に係合可能なものであってもよい。そして、フロントパッチ2Fが設けられないおむつ1に対しては、補助部材12のフック部15をおむつ1のカバーシート4の一部に係合させることにより、補助部材12をカバーシート4に貼着させる。
【符号の説明】
【0055】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F・・フロントパッチ
2L,2R・・テープ
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4KL,4KR・・括れ
4C,4SL,4SR,8EL,8ER,9ER・・弾性部材
5・・バックシート
6C・・吸収体
7・・トップシート
8・・サイドシート
10L,10R・・脚周り領域
11L,11R・・サイドフラップ部
12,30・・補助部材
13,31・・基材
13A,13C・・非伸縮性シート
13B・・伸縮性シート
14・・補助部材のループ部
14A,14B・・ループ部の伸縮領域側の仮想の端点
15・・補助部材のフック部
15A,15B・・フック部の伸縮領域側の仮想の端点
20L,20R・・基端部
21L,21R・・テープ基部
22L,22R・・テープのフック部
23A・・基部
23B・・先端部
24A,24B・・非伸縮領域
24C・・伸縮領域
25・・基材の台形の領域
26・・基部のフック部側の角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10