(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】圧電駆動装置の異常検知方法、圧電駆動装置、及びロボット
(51)【国際特許分類】
H02N 2/14 20060101AFI20250226BHJP
H02N 2/12 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H02N2/14
H02N2/12
(21)【出願番号】P 2020195033
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】梶野 喜一
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116447(JP,A)
【文献】特開2020-182365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/14
H02N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に配置されている薄膜の圧電素子と、を有し、
前記圧電素子は、容量が低下すると駆動電圧の周波数特性が変化し、
駆動制御信号で前記圧電素子の振幅を制御する圧電駆動装置の振動異常を検知する方法であって、
前記駆動制御信号に対する実際の駆動波形である
前記駆動電圧が、想定値に対して規定値以上離れたとき異常と判断する、
圧電駆動装置の異常検知方法。
【請求項2】
前記圧電駆動装置は、前記駆動制御信号を出力する電圧制御部と、前記電圧制御部から出力された矩形パルスをアナログ波形に変換するDA変換部と、前記DA変換部で変換されたアナログ波形を前記駆動制御信号に基づいて増幅する波形増幅部と、を有する、
請求項1に記載の圧電駆動装置の異常検知方法。
【請求項3】
前記圧電素子の薄膜の厚さは、50nm以上、20μm以下である、
請求項1又は請求項2に記載の圧電駆動装置の異常検知方法。
【請求項4】
前記駆動制御信号は、PWM幅である、
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の圧電駆動装置の異常検知方法。
【請求項5】
前記振動異常を検知したら報知する、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の圧電駆動装置の異常検知方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板の上に配置されている薄膜の圧電素子と、
駆動制御信号を出力し、前記圧電素子の振幅を制御する回路部と、
前記駆動制御信号により生成される実際の駆動波形である駆動電圧と想定値とを比較することにより振動異常を検知する検知部と、
を有
し、
前記圧電素子は、容量が低下すると前記駆動電圧の周波数特性が変化する
圧電駆動装置。
【請求項7】
前記圧電素子の薄膜の厚さは、50nm以上、20μm以下である、
請求項6に記載の圧電駆動装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の圧電駆動装置を有する圧電モーターを備えている、
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置の異常検知方法、圧電駆動装置、及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電体の振動を利用する圧電モーターが開発されている。このような圧電モーターとして、例えば特許文献1には、圧電体の入力電圧が印加されていない部分に、モニター用電極を設け、圧電体の振動によって生じる電圧をモニターし、このモニター電圧を評価して異常検知を行い、異常が検知された時に、例えば警告やモーターの停止をすることで、超音波モーターの損傷を回避する保護装置を備えた超音波モーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波モーターは、異常を検知し保護するために、モニター用電極と、異常検知回路及び保護回路を有する保護装置と、が必要となり、低コスト化を図るのが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
圧電駆動装置の異常検知方法は、基板と、前記基板の上に配置されている薄膜の圧電素子と、を有し、駆動制御信号で前記圧電素子の振幅を制御する圧電駆動装置の振動異常を検知する方法であって、前記駆動制御信号に対する駆動電圧により前記振動異常を検知する。
【0006】
圧電駆動装置は、基板と、前記基板の上に配置されている薄膜の圧電素子と、駆動制御信号を出力し、前記圧電素子の振幅を制御する回路部と、前記駆動制御信号により生成される駆動電圧により振動異常を検知する検知部と、を有する。
【0007】
ロボットは、上記に記載の圧電駆動装置を有する圧電モーターを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る圧電駆動装置を備える圧電モーターの概略構成を示す平面図。
【
図2】第1実施形態に係る圧電駆動装置の概略構成を示す平面図。
【
図8】圧電素子の異常検知方法を示すフローチャート図。
【
図9】圧電素子の異常を判断する駆動電圧特性を示す図。
【
図10】第2実施形態に係る圧電駆動装置を備えたロボットの概略構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る圧電駆動装置3について、圧電駆動装置3を備える圧電モーター1を一例として挙げ、
図1~
図5を参照して説明する。
尚、説明の便宜上、以降の各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」、X方向のプラス側を「上」、X方向のマイナス側を「下」とも言う。
【0010】
圧電モーター1は、
図1に示すように、円盤状をなしその中心軸Oまわりに回転可能な被駆動部材としてのローター2と、ローター2の外周面21に当接し、ローター2を中心軸Oまわりに回転させる圧電駆動装置3と、を有する。また、圧電モーター1は、圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4をローター2に向けて付勢する付勢部材5と、圧電アクチュエーター4の駆動を制御する制御装置7と、を有する。このような圧電モーター1では、圧電アクチュエーター4が屈曲振動すると、その振動がローター2に伝わり、ローター2が中心軸O回りで、矢印B1で示すように時計回り又は矢印B2で示すように反時計回りに回転する。
【0011】
また、本実施形態では、ローター2にエンコーダー9が設けられており、エンコーダー9によって、ローター2の挙動、特に、回転量および角速度が検出できる。
【0012】
圧電アクチュエーター4は、
図2に示すように、振動体41と、振動体41を支持する支持部42と、振動体41と支持部42とを接続する接続部43と、振動体41に接続され、振動体41の振動をローター2に伝達する凸部44と、を有する。
【0013】
振動体41は、X方向を厚さ方向とし、Y軸およびZ軸を含むY-Z平面に広がる板状をなし、Y方向に伸縮しながらZ方向に屈曲することによりS字状に屈曲振動する。また、振動体41は、X方向からの平面視で、伸縮方向であるY方向を長手とする長手形状となっている。
【0014】
また、振動体41は、基板60と、基板60上に配置され、振動体41を屈曲振動させるための駆動用の5つの圧電素子6A~6Eと、を有する。
【0015】
圧電素子6Cは、振動体41のZ方向の中央部において、振動体41の長手方向であるY方向に沿って配置されている。また、圧電素子6Cに対して振動体41のZ方向のプラス側には、圧電素子6Aと圧電素子6Bとが振動体41のY方向に並んで配置され、Z方向のマイナス側には、圧電素子6Dと圧電素子6Eとが振動体41のY方向に並んで配置されている。また、これら圧電素子6A~6Eは、それぞれ、通電によって振動体41のY方向に伸縮する。また、圧電素子6Aと圧電素子6Eとが互いに電気的に接続されており、圧電素子6Bと圧電素子6Dとが互いに電気的に接続されている。
【0016】
圧電素子6A,6Eと、圧電素子6Cと、圧電素子6B,6Dと、にそれぞれ位相の異なる同周波数の駆動電圧V(交番電圧)を印加し、これらの伸縮タイミングをずらすことにより、振動体41をその面内においてS字状に屈曲振動させることができる。
【0017】
圧電素子6A~6Eは、それぞれ、
図3に示すように、基板60上に配置された第1電極61と、第1電極61上に配置された圧電体62と、圧電体62上に配置された第2電極63と、を有する。尚、第2電極63上には、電極間のショートを防止するための絶縁層64が設けられている。圧電素子6A~6Eの第1電極61は、共通電極であり、圧電体62及び第2電極63は、それぞれ、圧電素子6A~6Eに個別に設けられている。尚、第2電極63は、駆動制御信号Vxに基づき、圧電素子6A~6Eの各圧電体62を振動させる駆動用電極である。
【0018】
圧電体62の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、50nm以上、20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、7μm以下であることがより好ましい。このことから、圧電素子6A~6Eは、薄膜圧電素子であるとも言える。尚、圧電体62の厚さが50nmより小さいと、圧電破壊が生じ易くなるため、駆動電圧Vを高くすることができず、その分、圧電アクチュエーター4の出力が小さくなる場合がある。一方、圧電体62の厚さが20μmより大きいと、圧電体62にクラックが生じる可能性が高まり、駆動電圧Vが高くなる場合がある。
【0019】
圧電体62の構成材料としては、特に限定されず、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電セラミックスを用いることができる。また、圧電体62としては、上述した圧電セラミックスの他にも、ポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いてもよい。
【0020】
また、圧電体62の形成方法としては、特に限定されず、ゾル-ゲル法やスパッタリング法を用いて形成してもよい。本実施形態の圧電体62は、ゾル-ゲル法を用いて形成した薄膜である。従って、基板60の上に薄膜の圧電素子6A~6Eが配置されている。これにより、例えば、バルク材料から形成する場合と比べて薄い圧電体62が得られ、容量Cの大きい圧電素子6A~6Eを得ることができ、更に、圧電駆動装置3の薄型化を図ることができる。
【0021】
支持部42は、接続部43を介して振動体41を支持している。支持部42は、X方向からの平面視で、振動体41のY方向のマイナス側を囲むU字形状となっている。また、接続部43は、振動体41の屈曲振動の節となる部分、具体的には振動体41のY方向の中央部と支持部42とを接続している。
【0022】
支持部42と接続部43には、1つの共通電極用配線81と、5つの駆動電極用配線82A,82B,82C,82D,82Eが設けられている。また、支持部42のY方向のマイナス側の端部には、1つの共通電極用端子83と、5つの駆動電極用端子84と、がZ方向に沿って並んで配置されている。
【0023】
共通電極用配線81の一方の端部は、圧電素子6A~6Eの第1電極61と電気的に接続されており、共通電極用配線81の他方の端部は、共通電極用端子83と電気的に接続されている。5つの駆動電極用配線82A,82B,82C,82D,82Eのそれぞれの一方の端部は、圧電素子6A,6B,6C,6D,6Eの第2電極63と電気的に接続されており、5つの駆動電極用配線82A,82B,82C,82D,82Eのそれぞれの他方の端部は、駆動電極用端子84と電気的に接続されている。
【0024】
圧電素子6A~6Eの第1電極61と電気的に接続されている共通電極用端子83は、外部配線85を介して、制御装置7と電気的に接続され、GNDに接地されている。また、圧電素子6A~6Eの第2電極63と電気的に接続されている5つの駆動電極用端子84は、外部配線86を介して、制御装置7と電気的に接続されている。
【0025】
凸部44は、振動体41の先端部に設けられ、振動体41からY方向のプラス側へ突出している。そして、凸部44の先端部は、ローター2の外周面21と接触している。そのため、振動体41の振動は、凸部44を介してローター2に伝達される。
【0026】
圧電素子6A,6Eに位相0°の駆動電圧Vを印加し、圧電素子6Cに位相が90°ずれている駆動電圧Vを印加し、圧電素子6B,6Dに位相が180°ずれている駆動電圧Vを印加すると、圧電素子6A,6Eが振動体41の外側に向って変形すると、圧電素子6B,6Dは、振動体41の内側に向って変形する。逆に、圧電素子6A,6Eが振動体41の内側に向って変形すると、圧電素子6B,6Dは、振動体41の外側に向って変形する。そのため、振動体41がZ方向にS字状に変位する。また、圧電素子6Cは、Y方向に伸縮振動する。そのため、
図4に示すように、振動体41がY方向に伸縮振動しつつZ方向にS字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、凸部44の先端が矢印A1で示すように反時計回りに楕円軌道を描く楕円運動(回転運動)する。このような凸部44の楕円運動によってローター2が送り出され、ローター2が矢印B1で示すように時計回りに回転する。
【0027】
なお、本実施形態では、振動体41をY-Z平面内で変位する面内振動である屈曲振動と伸縮振動を用いて凸部44の先端を楕円運動させ、ローター2を駆動しているが、これに限定されず、振動体41をY-Z平面外で変位する面外振動によって振動し、凸部44の先端を楕円運動させ、ローター2を駆動しても構わない。
【0028】
また、圧電素子6A,6Eと圧電素子6B,6Dとに印加する駆動電圧Vを切り換えると、すなわち位相0°の駆動電圧Vを圧電素子6B,6Dに印加し、位相が90°ずれている駆動電圧Vを圧電素子6Cに印加し、位相が180°ずれている駆動電圧Vを圧電素子6A,6Eに印加すると、
図5に示すように、振動体41がY方向に伸縮振動しつつZ方向にS字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、凸部44が矢印A2で示すように時計回りに楕円運動する。このような凸部44の楕円運動によってローター2が送り出され、ローター2が矢印B2で示すように反時計回りに回転する。
【0029】
付勢部材5は、凸部44をローター2の外周面21に向けて付勢する部材である。付勢部材5は、圧電アクチュエーター4を支持する基部51に設けられたばね部513をY方向に撓ませた状態で付勢部材5を筐体等に固定することにより、ばね部513の復元力を利用して凸部44をローター2の外周面21に向けて付勢することができる。
【0030】
制御装置7は、圧電素子6A~6Eに交番電圧である駆動電圧Vを印加することにより、圧電アクチュエーター4の駆動を制御する。
また、制御装置7は、駆動制御信号Vxに対する駆動電圧Vにより圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する機能を有する。
【0031】
次に、制御装置7における圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する回路及び検知方法について、
図6~
図9を参照し説明する。
【0032】
制御装置7は、駆動制御信号Vxを出力し、圧電素子6A~6Eの振幅を制御し、圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する回路部70を有する。回路部70は、
図6に示すように、圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する検知部72を有する電圧制御部71と、DA変換部73と、波形増幅部74と、を有する。
【0033】
電圧制御部71は、圧電素子6A~6Eの振幅を制御する駆動制御信号Vxを出力し、波形増幅部74での駆動電圧Vの振幅幅を決める。尚、駆動制御信号Vxは、PWM(Pulse Width Modulation)幅である。尚、PWM幅とは、パルス波のデューティー比を変化させて変調した信号である。PWM幅を用いることで簡単な回路構成とすることができる。
検知部72は、回路部70で発生される電圧信号である駆動電圧Vと実際の駆動波形である駆動電圧Vとを比較し、圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する。尚、検知部72は、ソフトウェアで構成することができるので、新たに異常検知専用の回路が不要となる。
DA変換部73は、電圧制御部71から出力された矩形パルスをアナログ波形に変換する。
波形増幅部74は、DA変換部73で変換されたアナログ波形を駆動制御信号Vxに基づいて増幅し、圧電素子6A~6Eに印加する駆動電圧Vを生成し、圧電素子6A~6Eの振幅を制御する。
【0034】
圧電素子6A~6Eに接続された回路部70は、駆動制御信号Vxが一定の場合、
図7に示すような周波数特性を有する。圧電素子6A~6Eが正常に駆動している場合は、駆動周波数f1において、駆動電圧V1を発生する。それに対し、圧電素子6A~6Eに容量Cが低下するという異常が生じると周波数特性が変化し、駆動周波数f1において、駆動電圧V2と増大する。そのため、正常時の駆動電圧V1と異常時の駆動電圧V2とを検知部72で比較することで、圧電素子6A~6Eの振動異常を検知することができる。従って、駆動制御信号Vxに対する駆動電圧Vが、想定値Vsに対して規定値以上離れたとき異常と判断する。また、振動異常と検知したら報知する。
【0035】
尚、駆動周波数f1は、DA変換部73の有するインダクターLと圧電素子6A~6Eの有する容量Cとにより、以下の(1)式で決定される。
f1=1/(2π(LC)1/2) (1)
【0036】
また、本実施形態の圧電素子6A~6Eは、薄膜で形成されているので、バルクに比べ、容量Cを大きくすることができる。バルクの場合、容量Cが小さいので容量調整のために並列に別途コンデンサーを追加する必要がある。圧電素子6A~6Eの容量Cに対し追加コンデンサーの比率が増えてくると圧電素子6A~6Eの容量変化に対し共振周波数の変化が緩やかになり電圧変化が小さくなる。そのため、本実施形態の圧電素子6A~6Eを薄膜で形成することで、圧電素子6A~6Eの容量変化に対する電圧変化を大きくし、圧電素子6A~6Eの振動異常の検知精度を向上させている。
【0037】
制御装置7における圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する検知方法は、
図8に示すように、先ず、ステップS101において、電圧制御部71から駆動制御信号Vxを出力し、圧電素子6A~6Eを駆動する。
【0038】
次に、ステップS102において、想定値Vsである波形増幅部74から出力された駆動電圧Vが規定値以上離れていないか検知部72で判断する。つまり、
図9に示すように、例えば、駆動制御信号Vx1において、想定値Vsがワーニング下限値Wminより大きいか、ワーニング上限値Wmax未満かを判定する。想定値Vsがワーニング下限値Wminからワーニング上限値Wmaxまでの範囲内であれば、正常と判断し、「Yes」として、ステップS101に戻り、駆動制御信号Vxを出力し、圧電素子6A~6Eを駆動する。想定値Vsがワーニング下限値Wminからワーニング上限値Wmaxまでの範囲外であれば、異常と判断し、「No」として、ステップS103に進み、ワーニング信号を発呼し、振動異常であることを外部に報知する。
【0039】
次に、ステップS104において、想定値Vsである波形増幅部74から出力された駆動電圧Vが規定値以上離れていないか検知部72で判断する。つまり、
図9に示すように、例えば、駆動制御信号Vx1において、想定値Vsがエラー下限値Eminより大きいか、エラー上限値Emax未満かを検知部72で判定する。想定値Vsがエラー下限値Eminからエラー上限値Emaxまでの範囲内であれば、正常と判断し、「Yes」として、ステップS101に戻り、駆動制御信号Vxを出力し、圧電素子6A~6Eを駆動する。想定値Vsがエラー下限値Eminからエラー上限値Emaxまでの範囲外であれば、異常と判断し、「No」として、ステップS105に進み、エラー信号を発呼し、振動異常であることを外部に報知する。尚、本実施形態における規定値とは、ワーニング下限値Wmin、ワーニング上限値Wmax、エラー下限値Emin、エラー上限値Emaxの何れかである。
【0040】
その後、ステップS106において、電圧制御部71の駆動制御信号Vx出力を停止し、更に、圧電駆動装置3を停止する。
【0041】
上述したような圧電駆動装置3及び圧電駆動装置3の異常検知方法によれば、駆動制御信号Vxに対する駆動電圧Vにより圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する検知部72をソフトウェアで構成した制御装置7を備えているので、新たに異常検知専用の回路を設けることなく、低コストで圧電素子6A~6Eの振動異常を検知することができる。また、圧電素子6A~6Eの振動異常に伴う圧電モーター1の損傷を回避することができる。
【0042】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る圧電駆動装置3を備えているロボット1000について、
図10を参照して説明する。尚、以下の説明では、圧電駆動装置3を備えた圧電モーター1を適用した構成を例示して説明する。
【0043】
ロボット1000は、
図10に示すように、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うことができる。ロボット1000は、6軸ロボットであり、床や天井に固定されるベース1010と、ベース1010に回動自在に連結されたアーム1020と、アーム1020に回動自在に連結されたアーム1030と、アーム1030に回動自在に連結されたアーム1040と、アーム1040に回動自在に連結されたアーム1050と、アーム1050に回動自在に連結されたアーム1060と、アーム1060に回動自在に連結されたアーム1070と、これらアーム1020,1030,1040,1050,1060,1070の駆動を制御する制御装置1080と、を有する。
【0044】
また、アーム1070にはハンド接続部が設けられており、ハンド接続部にはロボット1000に実行させる作業に応じたエンドエフェクター1090が装着される。また、各関節部のうちの全部または一部には圧電モーター1が搭載されており、この圧電モーター1の駆動によって各アーム1020,1030,1040,1050,1060,1070が回動する。なお、圧電モーター1は、エンドエフェクター1090に搭載され、エンドエフェクター1090の駆動に用いられてもよい。
【0045】
制御装置1080は、コンピューターで構成され、例えば、プロセッサー(CPU)、メモリー、I/F(インターフェイス)等を有する。そして、プロセッサーが、メモリーに格納されている所定のプログラムを実行することで、ロボット1000の各部の駆動を制御する。なお、前記プログラムは、I/Fを介して外部のサーバーからダウンロードしてもよい。また、制御装置1080の構成の全部または一部は、ロボット1000の外部に設けられ、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の通信網を介して接続された構成となっていてもよい。
【0046】
このようなロボット1000は、前述したように、圧電モーター1を備えている。すなわち、ロボット1000は、圧電アクチュエーター4と、圧電アクチュエーター4の振動を制御する制御装置7と、を備え、圧電アクチュエーター4を振動させて圧電アクチュエーター4に当接するローター2を駆動する圧電駆動装置3を有している。このうち、制御装置7は、ソフトウェアで構成された圧電素子6A~6Eの振動異常を検知する検知部72を有する。そのため、圧電素子6A~6Eの振動異常を検知した場合に、圧電駆動装置3等を停止することで、圧電モーター1の損傷を回避することができる。その結果、信頼性に優れた高性能のロボット1000を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…圧電モーター、2…ローター、3…圧電駆動装置、4…圧電アクチュエーター、5…付勢部材、6A,6B,6C,6D,6E…圧電素子、7…制御装置、9…エンコーダー、21…外周面、41…振動体、42…支持部、43…接続部、44…凸部、51…基部、60…基板、61…第1電極、62…圧電体、63…第2電極、70…回路部、71…電圧制御部、72…検知部、73…DA変換部、74…波形増幅部、81…共通電極用配線、82A,82B,82C,82D,82E…駆動電極用配線、83…共通電極用端子、84…駆動電極用端子、85,86…外部配線、513…ばね部、1000…ロボット、A1,A2,B1,B2…矢印、Emax…エラー上限値、Emin…エラー下限値、f1…駆動周波数、O…中心軸、V,V1,V2…駆動電圧、Vs…想定値、Vx…駆動制御信号、Wmax…ワーニング上限値、Wmin…ワーニング下限値。