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特許7639340捲回体およびポリオレフィン微多孔膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】捲回体およびポリオレフィン微多孔膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20250226BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20250226BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20250226BHJP
【FI】
C08J9/28 102
C08J9/28 CES
H01G11/52
H01M50/417
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020536302
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2020024297
(87)【国際公開番号】W WO2021033413
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019151487
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 由起子
(72)【発明者】
【氏名】大友 崇裕
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143640(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056385(WO,A1)
【文献】特開2015-208893(JP,A)
【文献】特開2020-093927(JP,A)
【文献】特開2020-164791(JP,A)
【文献】特開2015-208894(JP,A)
【文献】特開2019-143008(JP,A)
【文献】特開2020-164825(JP,A)
【文献】特開2020-111469(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194504(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104791(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
H01G11/00-11/86
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが16μm以上30μm以下であり、空孔率が40%以上60%以下であり、曲路率が1.00以上1.42以下であり、絶縁破壊電圧が155V/μm以上300V/μm以下であるポリエチレン樹脂を主成分とするポリオレフィン微多孔膜を外径280mm以上に捲回してなる捲回体であって、該捲回体の表層膜厚に対する巻芯膜厚の変化量が0%以上0.8%以下である捲回体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン微多孔膜の平均細孔径が20nm以上30nm以下である、請求項1に記載の捲回体。
【請求項3】
(a)~(f)の工程を含むことを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
(a)超高分子量ポリエチレンを20質量%以上80質量%以下の割合で含むポリエチレン樹脂を主成分とするポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを含む樹脂溶液を溶融混錬して押し出し、未延伸ゲル状シートを得る工程
(b)前記未延伸ゲル状シートを、95℃以上115℃以下で予熱する予熱工程
(c)前記予熱工程の温度より1℃以上15℃以下の範囲で高い温度まで段階的に昇温させてシート搬送方向に延伸し、縦延伸シートを得る縦延伸工程
(d)前記縦延伸シートを、縦延伸工程の温度より1℃以上20℃以下の範囲で高い温度で縦延伸工程の延伸倍率以上でシート幅方向に横延伸し、二軸延伸シートを得る工程
(e)前記二軸延伸シートから成膜用溶剤を抽出する抽出工程
(f)前記抽出工程の後に、前記二軸延伸シートを一軸方向に延伸する工程
【請求項4】
前記ポリオレフィン微多孔膜は、厚さが16μm以上30μm以下であり、空孔率が40%以上60%以下であり、曲路率が1.00以上1.42以下であり、絶縁破壊電圧が155V/μm以上300V/μm以下である、請求項3に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン微多孔膜が、重量平均分子量が5×10 以上の超高分子量ポリエチレンを20質量%以上80質量%以下の割合で含み、重量平均分子量が1×10 以上5×10 以下のポリエチレンをさらに含むポリエチレン混合物からなる、請求項1または2に記載の捲回体。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂が、重量平均分子量が5×10 以上の超高分子量ポリエチレンを20質量%以上80質量%以下の割合で含み、重量平均分子量が1×10 以上5×10 以下のポリエチレンをさらに含むポリエチレン混合物からなる、請求項3または4に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜、ポリオレフィン微多孔膜捲回体及び微多孔膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜(以下、微多孔膜と略記する場合がある。)は、ろ過膜、透析膜などのフィルター、電池用セパレータや電解コンデンサー用のセパレータなどの種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィンを樹脂材料とする微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度などに優れ、シャットダウン特性を有するため、近年、二次電池用セパレータとして広く用いられている。
【0003】
特にリチウムイオン二次電池は、携帯電話、電動工具、電気自動車等に幅広く使用され、
高出力、高容量化が進んでおり、セパレータ用途として、微多孔膜の低抵抗化や低コスト化が求められている。中でも高出力を行うために、微多孔膜の抵抗が低い事が要求され、空孔率が高い微多孔膜の開発が求められる。さらに、微多孔膜製造工程において、材料切り替えロスを小さくするため、微多孔膜の長尺化と長尺化に伴う微多孔膜の捲回体における巻数の増加により捲回体のロール径の大口径化が予測される。
【0004】
なお、本明細書でいう大口径とは280mm以上の径をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/043331号
【文献】国際公開第2015/194504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、空孔率が高く、大口径の微多孔膜捲回体は、製造工程において巻芯に近い部分ほど巻締まりによる内圧が高まり、膜が圧縮され、表層部と巻芯部での膜厚差と空孔率の差が生じ易い。
【0007】
そのため、高空孔率で且つ大口径の微多孔膜捲回体では今後ますます表層部と巻芯部での膜厚差と空孔率の差の小さい微多孔膜の捲回体が要求されることが予想される。
【0008】
一方、高空孔率化を図れば絶縁破壊電圧性が低下する傾向にあり、両者の両立は困難であった。
【0009】
特許文献1には、電極の膨張及び収縮下においても性能の変化が少ないセパレータとして、温度60℃、圧力4MPa、10分の条件にて加圧圧縮処理を行ったときにおける透気抵抗度変化率が小さいセパレータが開示されているが、サブミクロン領域でラダー構造であり、ミクロン領域で三次元網目状構造をとるハイブリッド構造が形成されており、細孔径の大きい箇所を含み絶縁破壊電圧までは考慮されていない。
【0010】
特許文献2には、温度90℃、圧力5.0MPaの加圧圧縮処理後の膜厚変化率が小さいセパレータが開示されているが、空孔率が40%以下であるため、高出力を行うには膜の抵抗が高く性能の改善が必要であった。
【0011】
すなわち、本発明は空孔率が高く、且つ絶縁破壊電圧が高い、大口径の捲回体であっても表層部と巻芯部での膜厚差の小さい微多孔膜を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高度な製膜技術によって、微多孔膜のフィブリル構造を制御し本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りの構成を有する。
(1)厚さが16μm以上30μm以下であり、空孔率が40%以上60%以下であり、曲路率が1.00以上1.42以下であり、絶縁破壊電圧が155V/μm以上300V/μm以下であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
(2)平均細孔径が20nm以上30nm以下である、(1)に記載のポリオレフィン微多孔膜。
(3)(1)または(2)に記載のポリオレフィン微多孔膜を外径280mm以上に捲回してなることを特徴とする捲回体。
(4)(a)~(f)の工程を含むことを特徴とする、(1)または(2)に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法
(a)超高分子量ポリエチレンを20質量%以上80質量%以下の割合で含むポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを含む樹脂溶液を溶融混錬して押し出し、未延伸ゲル状シートを得る工程、
(b)前記未延伸ゲル状シートを、95℃以上115℃以下で予熱する予熱工程、
(c)前記予熱工程の温度より1℃以上15℃以下の範囲で高い温度まで段階的に昇温させてシート搬送方向に延伸し、縦延伸シートを得る縦延伸工程、
(d)前記縦延伸シートを、縦延伸工程の温度より1℃以上20℃以下の範囲で高い温度で、縦延伸工程の延伸倍率以上でシート幅方向に横延伸し、二軸延伸シートを得る工程、
(e)前記二軸延伸シートから成膜用溶剤を抽出する抽出工程、
(f)前記抽出工程の後に、前記二軸延伸シートを一軸方向に延伸する工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、高空孔率であるにも関わらず、捲回体の巻芯部のような加圧条件においても膜厚の変化率が小さく、且つ、絶縁破壊電圧の高いリチウムイオン二次電池のセパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のポリオレフィン微多孔膜について説明する。
【0016】
(樹脂)
本発明のポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂を主成分とする。ポリエチレン樹脂の含有量はポリオレフィン樹脂の全質量を100質量%として、70質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。ポリエチレンとしては、単一物でもよいが、2種類以上のポリエチレンからなるポリエチレン混合物であることが好ましい。
【0017】
ポリエチレン混合物としては、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。なお、ポリエチレンは、1種を単独で、または2種以上を併用して用いてもよい。これらは、使用目的に応じて、適宜、選択することができる。
【0018】
ポリエチレン混合物としては、重量平均分子量(Mw)が5×10以上の超高分子量ポリエチレンとMwが1×10以上5×10以下のポリエチレンからなる混合物が好ましい。ポリエチレン混合物中の超高分子量ポリエチレンの含有量は圧縮時の膜厚変化の観点から25~50質量%が好ましい。ポリエチレン混合物中の超高分子量ポリエチレンの含有量はより好ましくは28~45質量%、更に好ましくは30~40質量%である。超高分子量ポリエチレンがポリエチレン混合物中に25質量%以上存在することで、平均流量孔径(貫通孔径)を小さくすることができ、圧縮時の膜厚変化率を抑えることができる。また、分子量分布(Mw/Mn(数平均分子量))は、押出成型性、安定した結晶化制御による物性コントロールの観点から、1以上20以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。
【0019】
(成膜用溶剤)
成膜用溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に混合できる物質またはポリオレフィン樹脂を溶解できる物質であれば特に限定されない。成膜用溶剤としては液体溶剤及び固体溶剤のいずれも使用できる。液体溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分が挙げられる。溶剤含有量が安定したゲル状シートを得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。固体溶剤は融点が80℃以下のものが好ましく、このような固体溶剤としてパラフィンワックス、セリルアルコール、ステアリルアルコール、ジシクロヘキシルフタレート等が挙げられる。液体溶剤と固体溶剤を併用してもよい。
【0020】
(製造方法)
本発明では、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを加熱溶融混練し、得られた樹脂溶液をダイより押出し、冷却することにより未延伸ゲル状シートを形成し、得られた未延伸ゲル状シートを予熱した後にシート搬送方向である縦方向に延伸し、次いで搬送方向に対し垂直方向である横方向に延伸して二軸延伸シートを得て、前記成形用溶剤を除去し、乾燥することによって微多孔膜を得る。縦方向と横方向の延伸を同時に行う同時延伸法の場合、縦方向と横方向の延伸時に段階的な温度差を設ける事が難しいことから、本発明の課題を達成するには逐次軸延伸法が好ましい。
【0021】
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法について逐次延伸法を例に具体的に説明する。
【0022】
(a)未延伸ゲル状シートを得る工程
(混合、混練)
超高分子量ポリエチレンを20質重量%以上80重質量%以下の割合で含むポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを含む樹脂溶液を溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤の溶融混錬する方法は特に限定されないが、二軸押出機中で行うのが好ましい。二軸押出機内のポリオレフィン溶液の温度の好ましい範囲は樹脂によって異なり、例えば、ポリエチレン組成物は140~250℃、押出機内のポリオレフィン溶液の温度については押出機内部もしくはシリンダ部に温度計を設置することで間接的に把握し、目標温度となるようシリンダ部のヒーター温度や回転数、吐出量を適宜調整する。成膜用溶剤は混練開始前に加えてもよく、混練中に途中から添加する事もできる。溶融混練にあたってはポリオレフィン樹脂の酸化を防ぐために酸化防止剤を加えることが好ましい。
【0023】
(押出し及びキャスト)
押出機内で溶融、混練されたポリオレフィン樹脂溶液を冷却することにより未延伸ゲル状シートを形成する。未延伸ゲル状シートの形成方法として、例えば日本国特許第2132327号公報および日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。
【0024】
冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却は35℃以下まで行うのが好ましい。冷却により、成膜用溶剤によって分離されたポリオレフィンのミクロ相を固定化することができる。冷却速度が上記範囲内であると結晶化度が適度な範囲に保たれ、延伸に適した未延伸ゲル状シートとなる。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。
【0025】
(b)予熱工程
予熱工程では、成膜用溶剤を含んだ未延伸ゲル状シートを縦延伸温度に到達するまで複数の金属ロールを通過させることによって徐々に加熱する。一般に複数の金属ロールを通過させることで予熱するがセラミック、テフロン(登録商標)をコーティングしたロールでも良い。予熱工程を経ることで延伸工程において未延伸ゲル状シートの温度斑なく延伸が可能となり、物性斑や急激な温度変化による破断を抑制できる。しかし、本発明では予熱工程における縦延伸工程に入る直前の温度は縦延伸工程の温度より-15度以上-1℃以下の温度であり、好ましくは-12℃以上-3℃以下、さらに好ましくは-10℃以上-5℃以下の温度である。なお、縦延伸工程に入る直前の温度から縦延伸工程の温度を引いた温度を予熱温度差と略記する場合がある。予熱温度は具体的には95℃~115℃の範囲とする。縦延伸時にゲル状シートの内部と表面の温度差を設けることが重要である。未延伸ゲル状シートが予熱工程を経ることで膜厚方向における中央部の細孔径が表層部に比べて比較的小さくでき、小さい曲路率を保ちながら両立が困難な絶縁破壊電圧を向上させることができる。
【0026】
(c)縦延伸工程
縦延伸工程は、未延伸ゲル状シートを縦方向に延伸することでポリオレフィンの高分子鎖が延伸方向に配向される。縦延伸工程は延伸工程、熱固定工程に区分され各々温度を調整する。縦延伸は周速の異なる複数の金属ロールを通過させることによって行う。未延伸ゲル状シートは予熱部を通過後の縦延伸工程の最初の延伸ロールに接する際、最初の延伸ロールとの接触面積及び接触時間を極力小さくし、表層と内層の高分子の配向を調整することが重要である。
【0027】
予熱工程から最初に接する延伸ロールとゲル状シートが接する時間は3秒以下が好ましい。より好ましくは2秒以下、さらに好ましくは1.5秒以下が好ましい。この範囲とすることによって流動パラフィンのような熱伝導率の小さい成膜用溶剤を用いると膜厚方向における中央部の温度と表層部の温度を一定差保ちながら縦延伸することができる。
【0028】
縦延伸は段階的に低倍率から高倍率へと2段階以上で行うことが好ましい。縦延伸工程の延伸倍率は、未延伸ゲル状シートの温度は低すぎると縦延伸時の延伸応力が極めて大きくなり、延伸が不安定となることから、最初の延伸倍率は1.1倍以上3倍以下が好ましく、より好ましくは1.2倍以上2倍以下が好ましい。2段目以降の縦延伸倍率は前段目縦延伸倍率の1.5倍以下が好ましく、所望の延伸倍まで段数を増やして延伸するのが好ましい。こうすることによって破断を抑制できる。縦延伸の総縦延伸倍率は5倍以上12倍以下が好ましく、より好ましくは5.5倍以上11倍以下が好ましい。総縦延伸倍率とは各段階の延伸倍率の和である。このような縦延伸倍率では強度と孔径の両方のバランスを得やすい。
【0029】
縦延伸の予熱温度と縦延伸温度の差を上記範囲に保ちながら延伸倍率を適宜調整することで開孔をコントロールし、微多孔膜の曲路長を小さくし、微細な孔径を均一に揃えることができる。以上のようにすることで表面が比較的大孔径で中心部が比較的小孔径のフィブリル構造を得ることができ、耐圧縮性と高い絶縁破壊電圧を両立できる。
【0030】
(d)二軸延伸シートを得る工程
(横延伸工程)
縦延伸工程で得られた縦延伸シートを幅方向に延伸を行う。
横延伸は得られた横延伸シートの両端部をクリップで把持しながらテンター装置で総縦延伸倍率より高い倍率で延伸を行う。具体的には6倍以上13倍以下で延伸する事が好ましく、より好ましくは6.5倍以上12倍以下が好ましい。横延伸度温度とはテンター内の温度であり、縦延伸の温度より1℃から10℃高い温度で延伸を行う。縦延伸と横延伸の倍率と温度は下記式(a)および(b)を満たすことが好ましい。
(a)横延伸倍率≧縦延伸倍率
(b)横延伸温度≧縦延伸温度
【0031】
式(a)および(b)を満足させることによって、縦延伸で縦方向に配向した高分子を、幅方向に延伸する横延伸工程は、縦延伸温度より高く、かつ、延伸倍率を大きくすることにより、縦方向、横方向のフィブリルの太さを揃えることで、高い絶縁破壊電圧を維持することができる。
【0032】
式(b)の横延伸温度と縦延伸温度の差は横延伸温度-縦延伸温度で表し1℃以上、10℃以下が好ましく、3℃以上、6℃以下がさらに好ましい。
【0033】
(e)成膜用溶剤の抽出工程
このようにして得られた二軸延伸シートは洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の抽出を行う。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、成膜用溶剤を抽出すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の抽出方法は公知の方法を利用することができる。例えば日本国特許2132327号明細書や特開2002-256099号公開に開示の方法を利用することができる。
【0034】
(熱固定)
成膜用溶剤を抽出したフィルムは結晶を安定化させラメラを均一にさせるため、熱処理を行う。
【0035】
熱処理方法としては、熱固定処理又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、膜を加熱中に縦方向や横方向に熱収縮させる熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法が挙げられる。熱固定処理又は熱緩和処理は少なくとも一軸方向に1.1倍以上2倍以下の倍率で延伸を行い微多孔膜の強度を高める。微多孔膜の熱処理は横延伸温度より1℃以上20℃以下高い温度で行うのが好ましい。
【0036】
(捲回工程)
得られた微多孔膜をABS製の外径150mmから450mmの巻芯に10Nから60Nの巻取張力で捲回させ、ジャンボロールを採取した。ジャンボロールの張力の好ましい張力は10N以上60N以下が好ましく、より好ましくは15N以上55N以下が好ましい。巻取張力が低すぎると巻きずれが発生しやすくなり、巻取張力が高すぎると巻き締まりによりシワやフィルムの変形が発生しやすくなる。
【0037】
(スリット工程)
ジャンボロールに巻き取られた微多孔膜を所望の長さと幅にスリットする。スリット工程はジャンボロールから1回のスリットで必要な幅と長さにスリットを行ってもよく、ジャンボロールから2回から4回に分けてスリットを行ってもよい。スリット回数は異物混入の確立が上がることから5回以下が好ましい。スリット張力は膜厚と幅により調整を行い、0.1N以上50N以下が好ましい。より好ましくは0.5N以上45N以下、さらに好ましくは1.0N以上40N以下が好ましい。巻取張力が低すぎると巻きずれが発生しやすくなり、巻取張力が高すぎると巻き締まりによりシワやフィルムの変形が発生しやすくなる。
【0038】
(その他の工程)
得られた微多孔膜は、必要に応じて、微多孔質層以外のその他の層を設け、積層多孔質膜とすることもできる。その他の層としては、例えば、フィラーと樹脂バインダとを含むフィラー含有樹脂溶液や耐熱性樹脂溶液を用いて形成される多孔層を挙げることができる。
【0039】
(特性)
本実施形態のポリオレフィン微多孔膜は、延伸温度や延伸倍率などの前記条件を満たすことによって、高い空孔率でありながら、耐圧縮性と高い破壊電圧を有することができる。
【0040】
以下、本実施形態のポリオレフィン微多孔質膜の各特性について説明する。
【0041】
(膜厚(μm))
膜厚は表示分解能が0.01μmまでの測定機器で測定できる。接触式を用いる場合は微多孔膜の空孔を押しつぶさないで測定を行う事が望ましく、測定力は0.01N以上0.15N以下で測定できる。ポリオレフィン微多孔膜は16μm以上30μm以下であり、好ましくは16μm以上、25μm以下である。近年、電池が高出力化しており、16μm以下の薄い微多孔膜を使用するものもあるが、16μm未満とすると、製造工程において巻芯に近い部分ほど巻締まりによる表層部と巻芯部での膜厚差を小さくしやすくなるが、電池の安全性を担保するためにコーティングを行う事が多く、厚みを16μm以上とすることで、コーティング工程を行わずに安全性を担保したセパレータを得ることができる。また、膜厚を30μm以下とすることで、電池容量を確保することができ、捲回体の表層部と巻芯部の厚み変化量を小さくすることができる。
【0042】
(空孔率(%))
空孔率とは、物質の全体積に占める空間の体積の割合で定義され、具体的には微多孔膜の膜厚と質量を測定し、樹脂の密度の値を用いて空孔率を算出する。樹脂の密度はJIS K 7112:1999に準じて測定できる。ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は40%以上60%以下が好ましい。電池が高出力化した際に空孔率が40%未満であると、膜の抵抗が大きくなり、微多孔膜を電池セパレータと用いた場合、良好な出力特性を得られない。また、空孔率は60%以上になると、膜の抵抗が小さく良好な出力特性が得られるが、膜厚変化量が大きくなる場合があり、膜厚の変化量が大きいとサイクル特性が悪化する恐れがある。
【0043】
空孔率は、より好ましくは、45%以上55%以下、更に好ましくは48%以上53%以下である。
【0044】
(膜厚変化量(%))
膜厚変化量は、表層膜厚に対し巻芯膜厚の変化量で、以下の式で表される。
膜厚変化量(%)=(表層膜厚-巻芯膜厚)/表層膜厚×100
【0045】
膜厚変化量は0%以上0.8%以下が好ましく、より好ましくは、0%以上0.7%以下、更に好ましくは0%以上0.6%以下である。
【0046】
膜厚変化量が上記の範囲であると、微多孔膜製造工程において、微多孔膜の捲回体における巻数を増やすことができる。
【0047】
(曲路率)
曲路率は微多孔膜の厚みと平均実効孔路長との比で、曲路率=平均実効孔路長/微多孔膜の膜厚の式で表される。曲路率はポロシメーターを用いて測定できる。ポロシメーターは非水銀圧入法、水銀圧入法のどちらの方法を用いても測定できるが、有害な水銀を使用しない非水銀圧入法を用いることが望ましい。
【0048】
曲路率は1.00以上1.42以下が好ましい。曲路率が低い方が良好な耐圧縮性を得られる。より好ましくは、1.05以上1.40以下、更に好ましくは1.10以上1.38以下である。曲路率が1.42を超えると耐圧縮性が悪化する可能性が高くなる。曲路率は1.00に近いほど出力特性が良く、一方、曲路率が高いほうが安全性では有利となるため、安全性とのバランスから上記の範囲がよい。曲路率は圧入法による。
【0049】
(絶縁破壊電圧(V/μm))
絶縁破壊電圧はJIS C2110-1:2016に準じて測定できる。膜厚1μ当たりの絶縁破壊電圧は155V/μm以上300V/μm以下が好ましく、より好ましくは160V/μm以上290V/μm以下が好ましく、更に好ましくは165V/μm以上280V/μm以下が好ましい。絶縁破壊電圧が155V/μm以下であると、静電気により放電が発生しても、微多孔膜にピンホールが開きにくくなる。また、絶縁破壊電圧が300V/μmを超えると微多孔膜の平均細孔径が小さくなりすぎるため、電解液が浸透しにくくなる。
【0050】
(平均細孔径(nm))
平均細孔径の測定はパームポロメーターを用いて測定できる。パームポロメーターはポロシメーターと異なり、細孔の最も細い部分を選択的に測定できる。ポリオレフィン微多孔膜のパームポロメーターより求めた平均細孔径は、20nm以上30nm以下が好ましく、より好ましくは22nm以上28nm以下が好ましく、更に好ましくは23nm以上27nm以下が好ましい。膜の孔径を上記の範囲にコントロールすることで、高い絶縁破壊電圧を保持できる。
【0051】
〔測定方法〕
【0052】
(膜厚(μm)の測定)
膜厚は、微多孔膜の任意の位置から縦方向110cm、横方向6cmに切り出し、試験片を作製した。この試験片を縦方向に5cm間隔で20点を厚み接触厚さ計により測定し、平均することにより、当該試験片の厚みとした。厚み測定機は測定力0.01Nのミツトヨ(Mitsutoyo)製ライトマチックVL-50B(測定子超硬球面測定子φ9.5mm)を用いた。測定環境は23±2℃の範囲内で測定を行った。
【0053】
(膜厚変化率(%)の測定)
60mm幅にスリットしたポリオレフィン微多孔膜をABS製の外径200mm、内径76.2mmの巻芯に外径280mmになるまで巻き取り捲回体を得た。このポリオレフィン微多孔膜の捲回体を23±2℃にて2週間保存し、表層から2mの点を起点とし、巻き内方向に50mm間隔で20点膜厚を測定し平均値を表層膜厚とした。
【0054】
ポリオレフィン微多孔膜の捲回体を切開し、巻芯から10mの点を起点とし、巻き外方向に5cm間隔で20点膜厚を測定し平均値を巻芯膜厚とした。なお、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は捲回状態から解放後、5分後に測定を行った。
膜厚変化率(%)=(表層膜厚-巻芯膜厚)/表層膜厚×100
【0055】
(空孔率(%)の測定)
95mm角の試料を用意し、その試料体積(cm)と試料質量(g)を測定し得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算した。密度はJIS K 7112:1999に準じて測定した0.99g/cmを用いた。
空孔率=(1-試料質量/(樹脂密度×試料体積))×100
【0056】
(透気抵抗度(sec/100cm)の測定)
旭精工(株)社製のデジタル型王研式透気抵抗度試験機EGO1を使用して、本発明のポリオレフィン製積層微多孔膜を測定部にシワが入らないように固定し、JIS P-8117(2009)に従って測定した。試料は5cm角とし、測定点は試料の中央部の1点として、測定値を当該試料の透気抵抗度[秒]とした。同様の測定を任意のフィルム位置から採取した10個の試験片について行い、10個の測定値の平均値を当該ポリオレフィン製微多孔膜の透気抵抗度とした。
【0057】
(引張強度(kPa)および引張伸度(%)の測定)
各方向に対応する引張強度については、幅10mmのJIS K7127、試験片タイプ2に準拠した形状に裁断を行い、微多孔膜にマーキングを行わず、チャック間隙20mm、試験速度100mm/minの条件で測定した。測定環境は23±2℃の範囲内で測定を行った。
【0058】
(曲路率の測定)
POROUS MATERIALS, INC.製 純水圧入ポロシメーター(商品名、型式:WIP-3k-A-1)を用いて精製水にて測定した。
【0059】
純水圧入ポロシメーターを用いて、微多孔膜の細孔比容積、比表面積、空孔率、透過係数を測定し、上記接触厚み計で膜厚を用いて式(a)から曲路率が求められる。膜厚は、微多孔膜の任意の位置から長手方向5cm、幅方向5cmの正方形に切り出し、試験片を作製した。この試験片の任意の5点を厚み接触厚さ計により測定し、平均することにより、当該試験片の厚みとした。厚み測定機は測定力0.01Nのミツトヨ(Mitsutoyo)製ライトマチックVL-50B(測定子超硬球面測定子φ9.5mm)を用いた。
【0060】
【数1】
【0061】
:平均実効孔路長 l:膜厚 ε:空孔率 V:細孔比容量 SBET:比表面積 k:透過係数
【0062】
(絶縁破壊電圧(V/μm)の測定)
春日電機株式会社製直流式耐圧試験機を用いて、100V/secで印加し、試験片が絶縁破壊する電圧を20回測定し平均値を上記接触厚み計で測定した膜厚で割り、1μm当たりの値に換算して絶縁破壊電圧とした。
【0063】
上部電極は縁端部に半径3mmの丸みを付けた直径25mmの50gの黄銅製円柱を使用し、下部電極は黄銅製平板を使用した。微多孔膜を100mm×100mmにカットし、下部電極、微多孔膜、上部電極の順に配置し測定を行った。
【0064】
(平均細孔径(nm)の測定)
POROUS MATERIALS, INC.製のパームポロメーター(商品名、型式:CFP-1500A)を用いて、Dry-up、Wet-upの順で測定した。Wet-upには表面張力が既知のGalwick(商品名)で十分に浸した微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径をバブルポイント細孔径(最大孔径)とした。平均細孔径については、Dry-up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet-up測定の曲線が交わる点の圧力から孔径を換算した。圧力と孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
【0065】
式中、「d(μm)」は微多孔膜の孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数である。
【0066】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
UHMwPE及びHDPEのMwは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC-150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o-ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 wt%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数
を用いて作成した。
【0067】
(実施例1)
Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHPE)30質量%及びMwが5.6×10の高密度ポリチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)70質量%からなるポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。得られた混合物28.5質量部を強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]71.5質量部を供給し、230℃及び250rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン樹脂溶液を調製した。
【0068】
前記ポリオレフィン樹脂溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り、引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。
【0069】
未延伸ゲル状シートを113℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より6℃高い119℃で直径200mmの縦延伸ロールを用い、未延伸ゲル状シート内部まで温度が上昇する前に縦方向に1.3倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総縦延伸倍率5.6倍で延伸した。次いで、3本の冷却ロールを通過させ、シートを50℃になるように冷却し、縦延伸シートを形成した。この時、予熱工程から最初に接する縦延伸ロールに未延伸ゲル状シートが接する時間を内部まで温度が上昇しないように2.0秒となるように搬送速度を調整した。
【0070】
得られた縦延伸シートの両端部をクリップで把持し、125℃に設定したテンター装置で横方向に8.9倍延伸し、二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートを塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。
【0071】
得られた乾燥後の二軸延伸シートをテンター方式延伸機にて、130℃まで加温し、延伸機入口幅に対して、1.44倍となるよう再延伸し、その後再延伸装置入り口幅に対して横倍率1.31となるように調整して熱処理を行い、厚さ19.5μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。スリットの巻取張力を4Nで60mm幅にスリットを行い樹脂製の外径203mmの巻芯に巻き取り、外径303mmの電池用セパレータの捲回体を得た。
【0072】
(実施例2)
Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン25質量%及びMwが5.6×10の高密度ポリチレン(密度0.955g/cm、融点135℃)75質量%からなるポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。得られた混合物28.5質量部を強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]71.5質量部を供給し、230℃及び250rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン樹脂溶液を調製した以外は実施例1と同様にし、厚さ19.3μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0073】
(実施例3)
Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン40質量%及びMwが5.6×10の高密度ポリチレン(密度0.955g/cm、融点135℃)60質量%からなるポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した以外は実施例1と同様にし、厚さ19.5μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0074】
(実施例4)
実施例1の未延伸ゲル状シートを115℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より4℃高い119℃で直径200mmの縦延伸ロールを用い、縦方向に延伸した以外は実施例1と同様にし、厚さ19.5μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0075】
(実施例5)
実施例1の未延伸ゲル状シートを109℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より13℃高い122℃で直径200mmの縦延伸ロールを用い、縦方向に延伸した以外は実施例1と同様にし、厚さ19.6μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0076】
(実施例6)
実施例1の縦延伸シートを120℃に設定したテンター装置で横方向に8.9倍延伸した以外は実施例1と同様にし、厚さ19.4μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0077】
(実施例7)
実施例1の未延伸ゲル状シートを113℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より6℃高い119℃で直径150mmの縦延伸ロールを用い、予熱工程から最初に接する縦延伸ロールに未延伸ゲル状シートが接する時間が1.0秒となるように搬送速度を調整して、縦方向に1.3倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総縦延伸倍率5.62倍で延伸した。それ以外は実施例1と同様にし、厚さ19.4μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0078】
(実施例8)
実施例1の未延伸ゲル状シートを113℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より6℃高い119℃で直径250mmの縦延伸ロールを用い、予熱工程から最初に接する縦延伸ロールに未延伸ゲル状シートが接する時間が3.0秒となるように搬送速度を調整して、縦方向に1.3倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総縦延伸倍率5.62倍で延伸した。それ以外は実施例1と同様にし、厚さ19.5μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0079】
(実施例9)
実施例1と同じポリオレフィン樹脂溶液を二軸押出機からTダイに供給し、押出し形成体を30℃に温調した冷却ロールで引き取り、引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。得られた未延伸ゲル状シート縦方向に1.8倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総縦延伸倍率7.8倍で延伸した。未延伸ゲル状シートを総縦延伸倍率7.8倍にした以外は実施例1と同様にし、厚さ20.0μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0080】
(実施例10)
実施例1のポリオレフィン樹脂溶液を二軸押出機からTダイに供給し、押出し形成体を
30℃に温調した冷却ロールで引き取り、引き取りながら冷却し、厚みが実施例1の80%になるように未延伸ゲル状シートを形成した。未延伸ゲル状シートの厚み以外は実施例1と同様にし、厚さ16.0μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0081】
(比較例1)
実施例1のポリオレフィン樹脂溶液を二軸押出機からTダイに供給し、押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り、引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。得られた未延伸ゲル状シートを117℃に設定したテンター装置で縦方向に5倍、横方向に5倍同時延伸を行い、二軸延伸シートを得た。二軸延伸シートを得た後は実施例1と同様にし、厚さ19.5μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0082】
(比較例2)
Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン18質量%及びMwが5.6×10の高密度ポリチレン(密度0.955g/cm、融点135℃)82質量%からなるポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。得られた混合物30質量部を強混練タイプの二軸出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]70質量部を供給し、230℃及び250rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン樹脂溶液を調製した以外は実施例1と同様にし、混合物を調製した以外は実施例1と同様にし、厚さ19.2μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0083】
(比較例3)
実施例1の未延伸ゲル状シートを119℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度と同じ119℃で直径300mmの縦延伸ロールを用い、十分に内部まで加温されるようにするため、予熱工程から最初に接する縦延伸ロールに未延伸ゲル状シートが接する時間が6.0秒となるように搬送速度を調整して、縦方向に1.3倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総合倍率5.62倍で延伸した。それ以外は実施例1と同様にし、厚さ19.5μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0084】
(比較例4)
実施例1の未延伸ゲル状シートを113℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より12℃高い125℃で縦方向に1.3倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総合倍率5.62倍で延伸した。次いで、3本の冷却ロールを通過させ、シートを50℃になるように冷却し、縦延伸シートを形成した。
【0085】
得られた縦延伸シートの両端部をクリップで把持し、縦延伸温度≧横延伸温度となるように縦延伸温度より12℃下げた113℃に設定したテンター装置で横方向に8.9倍延伸し、二軸延伸シートを得た。それ以外は実施例1と同様にし、厚さ19.4μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0086】
(比較例5)
実施例1の未延伸ゲル状シートを予熱し、縦方向に延伸する倍率を1.8倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総縦延伸倍率7.8倍で延伸した以外は実施例1と同様に縦延伸シートを形成した。
【0087】
得られた縦延伸シートの両端部をクリップで把持し、縦延伸倍率≧横延伸倍率となるように125℃に設定したテンター装置で横方向に6.8倍延伸し、二軸延伸シートを得た。二軸延伸シートを得た後は、実施例1と同様にし、厚さ19.4μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。このポリオレフィン微多孔膜を用いて、実施例1と同様に捲回体を得た。
【0088】
(比較例6)
実施例1のポリオレフィン樹脂溶液を二軸押出機からTダイに供給し、押出し形成体を
30℃に温調した冷却ロールで引き取り、引き取りながら冷却し、厚みが実施例1の60%になるように未延伸ゲル状シートを形成した。
【0089】
未延伸ゲル状シートを113℃の予熱ロールを通過させ、表面温度が予熱温度より7℃高い120℃で直径200mmの縦延伸ロールを用い、未延伸ゲル状シート内部まで温度が上昇する前に縦方向に1.8倍、1.8倍、2.4倍と3段階に分割し、総縦延伸倍率7.8倍で延伸した。次いで、3本の冷却ロールを通過させ、シートを50℃になるように冷却し、縦延伸シートを形成した。この時、予熱工程から最初に接する縦延伸ロールに未延伸ゲル状シートが接する時間を2.0秒となるように搬送速度を調整した。
【0090】
得られた縦延伸シートの両端部をクリップで把持し、115℃に設定したテンター装置で横方向に8.9倍延伸し、二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートを塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。
【0091】
得られた乾燥後の二軸延伸シートをテンター方式延伸機にて、130℃まで加温し、延伸機入口幅に対して、1.44倍となるよう再延伸し、その後再延伸装置入り口幅に対して横倍率1.31となるように調整して熱処理を行い、厚さ11.9μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。スリットの巻取張力を3.5Nで60mm幅にスリットを行い樹脂製の外径203mmの巻芯に巻き取り、外径268mmの電池用セパレータの捲回体を得た。
【0092】
実施例1~10および比較例1~6で得られたポリオレフィン微多孔膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1~3に記載した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】