(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250226BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250226BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250226BHJP
C08J 7/048 20200101ALI20250226BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/32 Z
B32B27/20 Z
C08J7/048 CES
(21)【出願番号】P 2020559991
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047543
(87)【国際公開番号】W WO2020116544
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018228408
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019159373
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】神永 純一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠也
(72)【発明者】
【氏名】武井 遼
(72)【発明者】
【氏名】星 沙耶佳
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
(72)【発明者】
【氏名】福上 美季
(72)【発明者】
【氏名】田中 歩実
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-159801(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167181(WO,A1)
【文献】特開2018-024212(JP,A)
【文献】特開2008-006637(JP,A)
【文献】特開2010-188600(JP,A)
【文献】特開平11-227090(JP,A)
【文献】特開2013-237188(JP,A)
【文献】特開2004-130811(JP,A)
【文献】特開2004-130812(JP,A)
【文献】特開2017-071693(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158794(WO,A1)
【文献】特開2001-199016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08J 7/04- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、
前記樹脂基材の第一面側に形成される酸素バリア性皮膜と、
ヒートシール可能な熱融着層と、
を備え、
前記酸素バリア性皮膜は、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、および金属アルコキシドの反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含み、かつ無機層状化合物を含有せず、
前記樹脂基材と前記酸素バリア性皮膜との間に
無機酸化物層を有し、
前記無機酸化物層が、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素で形成され、
前記樹脂基材は、基層を含む2以上の樹脂層を有し、前記2以上の樹脂層のうち、前記第一面を形成する樹脂層がアンチブロッキング剤を含まない、
ガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記樹脂基材において、前記第一面と反対側の第二面を形成する樹脂層が、アンチブロッキング剤を含む、
請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記樹脂基材がポリオレフィン系樹脂である、
請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記樹脂基材と前記
無機酸化物層との間に
下地層を有し、
前記下地層の厚みが0.01~1μmである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記樹脂基材と前記
無機酸化物層との間に
下地層を有し、
前記下地層は、主成分として有機高分子を含み、
前記有機高分子は、ポリアクリル系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの有機高分子の反応生成物の少なくとも1つを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記無機酸化物層の厚みが1~200nmである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記酸素バリア性皮膜の厚みが0.05~1μmである、
請求項1から6のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記酸素バリア性皮膜が、シランカップリング剤、およびシランカップリング剤の反応生成物の少なくとも1つをさらに含む、
請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
前記酸素バリア性皮膜が、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシ基と多価金属化合物との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。本願は、2018年12月5日に出願された日本国特願2018-228408、および2019年9月2日に出願された日本国特願2019-159373に対し優先権を主張し、その内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や品質を維持するため、内容物を変性させる気体(水蒸気、酸素、その他)の進入を防ぐ性質、つまりガスバリア性が求められる。そのため、これらの包装材料には、ガスバリア性を有するフィルム材料(ガスバリア性フィルム)が用いられる。
【0003】
ガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層を樹脂基材の表面に設けたものが知られている。ガスバリア層としては、金属箔や金属蒸着膜、ウェットコート法により形成された皮膜が知られている。前記皮膜としては、酸素バリア性を示すものとして、水溶性高分子、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂を含むコーティング剤から形成された樹脂膜や、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された無機層状鉱物複合樹脂膜が知られている(特許文献1)。
さらに、ガスバリア層として、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、水性高分子と無機層状化合物及び金属アルコキシドを含むガスバリア性複合被膜を順次積層したガスバリア層(特許文献2)や、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシ基と多価金属化合物との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含むガスバリア層(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許第6176239号公報
【文献】日本国特開2000-254994号
【文献】日本国特許第4373797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂基材の表面にウェットコート法、蒸着法、スパッタリング法等により皮膜を設けたガスバリア性フィルムは、製造ロットにより、酸素バリア性が安定しないことがあった。具体的には、ガスバリア性フィルムの酸素バリア性が、本来の酸素バリア性、つまり皮膜を構成する材料および皮膜の厚みから想定される酸素バリア性よりも劣ることがあった。特に、皮膜の厚みが薄くなると、かかる問題が生じやすい傾向があった。
【0006】
本発明は、酸素バリア性を付与するための皮膜の厚みが薄くても、本来の酸素バリア性を充分に発現でき、酸素バリア性に優れるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
〔1〕樹脂基材と、樹脂基材の第一面側に形成される酸素バリア性皮膜と、ヒートシール可能な熱融着層とを備え、樹脂基材と酸素バリア性皮膜との間に無機酸化物層を有し、この無機酸化物層が、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素で形成され、酸素バリア性皮膜は、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、および金属アルコキシドの反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含み、かつ無機層状化合物を含有せず、樹脂基材は、2以上の樹脂層を有し、2以上の樹脂層のうち、第一面を形成する樹脂層がアンチブロッキング剤を含まない、ガスバリア性フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスバリア性フィルムは、酸素バリア性を付与するための皮膜の厚みが薄くても、本来の酸素バリア性を充分に発現でき、酸素バリア性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガスバリア性フィルムの模式断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るガスバリア性フィルムの模式断面図である。
【
図3】走査電子顕微鏡で取得した比較例に係るガスバリア性フィルムの断面像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、上述した問題の原因調査のため、電子顕微鏡を使って酸素バリア性に劣るガスバリア性フィルムの表面及び断面を観察した。樹脂基材のブロッキング防止のために添加されているアンチブロッキング剤(以下、「AB剤」とも称する。)の存在箇所において、集束イオン/電子ビーム加工観察装置で断面の電子顕微鏡観察を行った結果、AB剤存在箇所の皮膜に幅数μmの欠陥が発生していることを確認した。この欠陥が、ガス透過の経路となり、酸素バリア性が充分に発現しなかったと考えられた。
樹脂基材の表面にはAB剤による凸部が存在する。コーティング剤を塗布したときに、凸部の位置で局所的に塗膜が形成されず、欠陥が生じたと考えられる。
【0011】
本発明の各実施形態は、上記知見に基づいている。以下、本発明の第一実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1は、第一実施形態に係るガスバリア性フィルム10の模式断面図である。
ガスバリア性フィルム10は、樹脂基材1と、皮膜5(酸素バリア性皮膜)とを有する。
皮膜5は、樹脂基材1の第一面1aに接して位置している。
【0012】
(樹脂基材)
樹脂基材1は、基層4を含む2以上の樹脂層を有する。具体的には、基層4と、基層4の一方の面上に位置する表層2と、基層4の他方の面上に位置する裏層3とを有する。
表層2は、樹脂基材1の第一面1aを構成している。
裏層3は、樹脂基材1において、第一面1aと反対側の第二面1bを構成している。
樹脂基材1は樹脂を含み、樹脂基材1を構成する表層2、裏層3、基層4の各層も樹脂を含む。
【0013】
基層4は、樹脂基材1の機械特性、化学的特性、熱的特性、光学特性等を調整する。機械特性とは、剛性、伸び、腰、引裂強さ、衝撃強度、突刺し強度、耐ピンホール性等である。化学的特性は、水蒸気バリア性、ガスバリア性、保香性、耐薬品性、耐油性等である。熱的特性は、融点・ガラス転移点、耐熱温度、耐寒温度、熱収縮率等である。光学特性は、透明性や光沢性等である。
【0014】
基層4の原料となる樹脂としては、入手の平易さ、水蒸気バリア性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。すなわち、樹脂基材1は、ポリオレフィン系樹脂基材であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる種類のコモノマーがランダムに共重合し均質的な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相をなすポリプロピレンである。これらのポリオレフィン系樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0015】
基層4は、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、アンチブロッキング剤(AB剤)、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適正の観点から好ましい。
基層4における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
基層4は、典型的にはAB剤を含まない。
【0016】
基層4は、単層構造でも多層構造でもよい。
基層4の厚みは、例えば、3~200μmであってよく、6~30μmであってよい。
【0017】
表層2を構成する樹脂は、基層4を構成する樹脂と同一でも異なってもよい。例えば、表層2、基層4各々を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、表層2を構成するポリオレフィン系樹脂が、基層4を構成するポリオレフィン系樹脂よりも低融点のポリオレフィン系樹脂であってもよい。これは、樹脂基材1と皮膜5の密着性を向上させるためである。表層2に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、1-ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0018】
表層2はAB剤を含まない。
表層2がAB剤を含まないことで、樹脂基材1の第一面1aに、AB剤に由来する凸部が存在しない。そのため、ウェットコート法により皮膜5を形成する際に、ガス透過の経路となる欠陥が発生することを抑制でき、優れた酸素バリア性が発現する。
【0019】
表層2は、AB剤以外の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適正の観点から好ましい。
表層2における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0020】
表層2の厚みは、例えば、0.1~10μmであってよく、さらには0.5~5.0μmであってよい。
【0021】
裏層3を構成する樹脂は、表層2を構成する樹脂と同様に、基層4を構成する樹脂と同一でも異なってもよい。例えば、裏層3、基層4各々を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、裏層3を構成するポリオレフィン系樹脂が、基層4を構成するポリオレフィン系樹脂よりも低融点のポリオレフィン系樹脂であってもよい。裏層3に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、表層2に用いることができるポリオレフィン系樹脂として挙げたものが挙げられる。
【0022】
裏層3は、
図1に示すように、AB剤6を含む。AB剤6は裏層3中に分散している。
裏層3がAB剤6を含むことで、樹脂基材1の第二面1bに局所的に、AB剤6に由来する凸部が存在する。この凸部によって、樹脂基材1やガスバリア性フィルム10のブロッキングを抑制できる。
第二面1bにおいて、AB剤6は露出していてもよいし樹脂で覆われていてもよい。
【0023】
AB剤6は固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ粒子、ゼオライト、タルク、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのAB剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。AB剤6としては、有機系ではポリメチルメタクリレート粒子、無機系ではシリカ粒子が好ましい。
【0024】
AB剤6の平均粒径は、典型的には、裏層3の厚み以下である。第二面1bの外観、裏層3の透明性、AB剤6の脱落可能性、アンチブロッキング性能を考慮すると、AB剤6の平均粒径は、0.1μm以上、5μm以下が好ましい。
ガスバリア性フィルム10においては、表層2がAB剤6を含まない。そのため、裏層3のAB剤6によるアンチブロッキング性能が高いほうが良い。アンチブロッキング性能の観点から、AB剤6の平均粒径は、2μm以上、5μm以下が特に好ましい。
AB剤6の平均粒径は、コールター法により測定される。
【0025】
裏層3におけるAB剤6の添加量は、例えば、裏層3の総質量に対して0.1~0.4質量%である。
裏層3におけるAB剤6の添加量は、具体的には以下の式により求める。
AB剤の添加量[質量%]={(i)/100}×{(ii)/100}×100
式中、(i)は、樹脂にAB剤を添加して攪拌し、押出機内に投入して混練し、溶融押出によりペレット状に形成されるマスターバッチ樹脂チップにおけるAB剤の濃度(質量%)を指す。
(ii)は、AB剤を含むマスターバッチ樹脂チップを、AB剤を含まない樹脂にブレンドするときの、裏層3を構成する樹脂ペレット総質量に対するAB剤を含むマスターバッチ樹脂チップの濃度(質量%)を示す。
【0026】
裏層3は、AB剤以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、前記した添加剤と同様のものが挙げられる。裏層3における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0027】
裏層3の厚みは、例えば、0.1~10μmであってよく、さらには0.5~5.0μmであってよい。
裏層3の厚みは、AB剤6に由来する凸部が存在しない部分の厚みである。
【0028】
樹脂基材1は、表層2、裏層3、基層4の各層を共押出で積層した共押出フィルムであることが好ましい。
樹脂基材1は、延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよい。
【0029】
樹脂基材1は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは特に水蒸気バリア性能に優れるため、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することで、ガスバリア性フィルム10の水蒸気バリア性が向上する。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等の少なくとも1種がフィルム状に加工されたものであってよい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、共押出フィルムであることが好ましい。
【0030】
二軸延伸ポリオレフィンフィルムを有する樹脂基材は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるものであってもよく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の樹脂フィルムとが積層されたものであってもよい。他の樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、およびポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。
【0031】
樹脂基材1の厚みは、用途、求められる特性等に応じて調整でき、特に制限されないが、例えば、3~200μmであってよく、さらには6~30μmであってよい。
樹脂基材1の厚みは、AB剤6に由来する凸部が存在しない部分の厚みである。
【0032】
樹脂基材1の表面(第一面1a、第二面1b)は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理およびオゾン処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理が施されていてもよい。
【0033】
(酸素バリア性皮膜)
皮膜5は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。
皮膜5は、ウェットコート法により樹脂基材1の第一面aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。なお、塗膜は湿潤膜であり、皮膜は乾燥膜である。
【0034】
皮膜5としては、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜(無機層状鉱物複合樹脂膜)が好ましい。ガスバリア層として無機層状鉱物複合樹脂膜を有するガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す、包装用材料として充分な他材料への密着強度や膜凝集強度を有する、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと耐延伸性を有する、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクがない、等の利点がある。コーティング剤については後で詳しく説明する。
【0035】
皮膜5の厚み、すなわちコーティング剤からなる塗膜の乾燥後の厚みは、要求される酸素バリア性に応じて設定され、例えば0.2~5μmであってよい。
皮膜5の厚みとしては、0.2~0.7μmが好ましく、0.3~0.5μmがより好ましい。皮膜5の厚みが0.2μm以上であれば、充分な酸素バリア性が得られやすい。
皮膜5の厚みが0.7μm以下であれば、第一面1aにおけるAB剤由来の凸部の有無が酸素バリア性に与える影響が大きく、本発明の有用性が高い。また、皮膜5の厚みが0.7μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易であり、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0036】
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
ガスバリア性フィルム10は、樹脂基材1の第一面aに皮膜5を形成することにより製造できる。
樹脂基材1としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
皮膜5は、前記したように、ウェットコート法により樹脂基材1の第一面aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知のウェットコート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件は、例えば90℃、10秒間とできる。
【0037】
(コーティング剤)
コーティング剤の好ましい一態様は、前記したように、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤である。
本態様のコーティング剤は、典型的には、水性媒体をさらに含む。
本態様のコーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂をさらに含むことが好ましい。
本態様のコーティング剤は、硬化剤をさらに含むことが好ましい。
本態様のコーティング剤は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでもよい。
【0038】
<水溶性高分子>
水溶性高分子とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質でありながら高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力に比べ水分子との分子間力が強くなり、高分子鎖の絡み合いがとかれ、水に均一に分散している状態を指す。
【0039】
水溶性高分子としては、無機層状鉱物の単位結晶間に侵入し、配位(インターカレーション)することが可能な化合物であれば特に限定されない。
水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコールおよびその誘導体等)、他のビニル系重合体(ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそのエステル、塩およびそれらの共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン類(酸化デンプン、エーテル化デンプン、デキストリン等)、極性基を有する共重合ポリエステル(スルホイソフタル酸構造を含むポリエステル等)、ウレタン系高分子、または、これらの各種重合体のカルボキシル基等が変性した官能基変性重合体等が挙げられる。
水溶性高分子は、皮膜凝集速度を考慮すると、重合度が200以上であることが好ましい。
本態様のコーティング剤に含まれる水溶性高分子は1種でもよく2種以上でもよい。
【0040】
水溶性高分子は、少なくとも、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましく、けん化度が95%以上かつ重合度が300以上のポリビニルアルコール樹脂を含むことが特に好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、300~2400が好ましく、450~2000が特に好ましい。ポリビニルアルコール樹脂は、けん化度や重合度が高いほど、吸湿膨潤性が低くなり高いガスバリア性を発揮する。ポリビニルアルコール樹脂のけん化度が95%以上であれば、充分なガスバリア性が得られやすい。また、ポリビニルアルコール樹脂の重合度が300以上であれば、酸素バリア性および皮膜凝集強度が優れる。一方、重合度が2400以下であれば、コーティング剤の粘度が充分に低く、他の成分と均一に混合することが容易であり、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合が生じにくい。
【0041】
<無機層状鉱物>
無機層状鉱物とは、極めて薄い単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。無機層状鉱物としては、水中で膨潤および、またはへき開する化合物が好ましく、中でも、水への膨潤性を有する粘土化合物が好ましい。より具体的には、無機層状鉱物は、単位結晶層間に水を配位し、吸収および、または膨潤する性質を有する粘土化合物であることが好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2-に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等がO2-およびOH-に対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
【0042】
無機層状鉱物の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられ、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等のカオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物、白雲母、金雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の雲母またはマイカ族粘土鉱物、等が挙げられる。これらの無機層状鉱物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機層状鉱物としては、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
【0043】
無機層状鉱物の大きさは、平均粒径が10μm以下で、厚みが500nm以下であることが好ましい。平均粒径が10μm以下で、厚さが500nm以下であれば、コーティング剤から形成される皮膜中で無機層状鉱物が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性および膜凝集強度が高くなる。
無機層状鉱物の平均粒径の下限は、例えば1μmである。
無機層状鉱物の厚みの下限は、例えば10nmである。
無機層状鉱物の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定される。
無機層状鉱物の厚みは、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される。
【0044】
無機層状鉱物は、少なくとも、平均粒径が1~10μmで、厚さが10~100nmである水膨潤性合成雲母を含むことが特に好ましい。水膨潤性合成雲母は、水溶性高分子および水性ポリウレタン樹脂との相溶性が高く、天然系の雲母に比べて不純物が少ない。そのため、無機層状鉱物として水膨潤性合成雲母を用いると、不純物に由来するガスバリア性の低下や膜凝集力の低下を招きにくい。また、水膨潤性合成雲母は、結晶構造内にフッ素原子を有することから、コーティング剤から形成される皮膜のガスバリア性の湿度依存性を抑制することにも寄与する。加えて、水膨潤性合成雲母は、他の水膨潤性の無機層状鉱物に比べて高いアスペクト比を有するため、迷路効果がより効果的に働き、コーティング剤から形成される皮膜のガスバリア性を特に高く発現させる。
【0045】
<水性媒体>
水性媒体としては、水、水溶性または親水性有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は通常、水または水を主成分として含むものである。
水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
水溶性または親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリル類の二トリル類等が挙げられる。
コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂を含む場合、水性媒体は、酸基を中和する中和剤(塩基)を含んでよく、含まなくてもよい。通常は中和剤が含まれる。
【0046】
<水性ポリウレタン樹脂>
水性ポリウレタン樹脂は、酸基を有するポリウレタン樹脂(以下、「酸基含有ポリウレタン樹脂」とも記す。)と、ポリアミン化合物とを含む。
コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂を含んでいれば、コーティング剤の樹脂基材1への濡れ性、およびコーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材1への密着強度に優れる。さらに、水性ポリウレタン樹脂が、酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有することで、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を発現する。
【0047】
水性ポリウレタン樹脂を構成する酸基含有ポリウレタン樹脂(アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂)の酸基は、水性ポリウレタン樹脂を構成するポリアミン化合物のアミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等)と結合可能である。酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。酸基は、酸基含有ポリウレタン樹脂の末端に位置していてもよく、側鎖に位置していてもよいが、少なくとも側鎖に位置していることが好ましい。
【0048】
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性または水分散性を付与できる範囲で選択することができるが、通常、5~100mgKOH/gであり、10~70mgKOH/gであることが好ましく、15~60mgKOH/gであることがより好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が5mgKOH/g未満であると、酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶性または水分散性が不充分になり、水性ポリウレタン樹脂と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性の低下を生じる可能性がある。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が100mgKOH/g超であると、コーティング剤から形成される皮膜の耐水性や酸素バリア性の低下を招く可能性がある。よって、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が5~100mgKOH/gの範囲内であることで、コーティング剤の分散安定性の低下およびコーティング剤から形成される皮膜の耐水性や酸素バリア性の低下を回避できる。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、JIS K 0070に準じた方法により測定される。
【0049】
酸基含有ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基(尿素基)濃度の合計は、15~60質量%以上であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が15質量%以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が60質量%以下であれば、コーティング剤から形成される皮膜の柔軟性がより優れる。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。
ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。
なお、酸基含有ポリウレタン樹脂として2種以上の混合物を用いる場合、ウレタン基濃度およびウレア基濃度は、反応成分の仕込み、すなわち各成分の使用割合を基準として算出できる。
【0050】
酸基含有ポリウレタン樹脂は、通常、少なくとも剛直な単位(炭化水素環で構成された単位)と短鎖単位(例えば、炭化水素鎖で構成された単位)とを有する。すなわち、酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位は、通常、ポリイソシアネート成分、ポリヒドロキシ酸成分、ポリオール成分や鎖伸長剤成分(特に、少なくともポリイソシアネート成分)に由来して、炭化水素環(芳香族および非芳香族炭化水素環のうち少なくとも1つ)を含む。
【0051】
酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、通常、10~70質量%であり、好ましくは15~65質量%であり、より好ましくは20~60質量%である。酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合が10質量%以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合が70質量%以下であれば、コーティング剤から形成される皮膜の柔軟性がより優れる。
【0052】
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、適宜選択可能であるが、800~1,000,000が好ましく、800~200,000がより好ましく、800~100,000がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が1,000,000以下であれば、コーティング剤の粘度上昇を抑制できる。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が800以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0053】
酸基含有ポリウレタン樹脂は、酸素バリア性を高めるため、結晶性であってもよい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点が100℃以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、典型的には200℃以下、さらには180℃以下、さらには150℃以下である。上記各項目の好ましい範囲を満たす場合、酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点が200℃よりも高くなることは実質的に可能性が低い。
したがって、酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100~200℃が好ましく、110~180℃がより好ましく、120~150℃がさらに好ましい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0054】
水性ポリウレタン樹脂では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物と、を結合させることにより、酸素バリア性を発現させる。
水性ポリウレタン樹脂を構成するポリアミン化合物としては、酸基と結合し、かつ酸素バリア性を向上できるものであれば特に限定されるものではなく、2以上の塩基性窒素原子を有する種々の化合物が用いられる。塩基性窒素原子は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合しうる窒素原子であり、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等のアミノ基における窒素原子が挙げられる。ポリアミン化合物とポリウレタン樹脂の酸基との結合はイオン結合(例えば、第3級アミノ基とカルボキシル基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を有するポリアミン化合物が好ましい。
【0055】
ポリアミン化合物の具体例としては、例えばアルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類等が挙げられる。アルキレンジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン等のC2~C10アルキレンジアミン等が挙げられる。
ここで、Cは炭素数を意味する。ポリアルキレンポリアミン類としては、例えばテトラアルキレンポリアミン、2以上の塩基性窒素原子を有するケイ素化合物(シランカップリング剤等)が挙げられる。前記ケイ素化合物としては、例えば2-(N-(2-アミノエチル)アミノ)エチルトリメトキシシラン、3-(N-(2―アミノエチル)アミノ)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
ポリアミン化合物のアミン価は、100~1900mgKOH/gが好ましく、150~1900mgKOH/gがより好ましく、200~1900mgKOH/gがさらに好ましく、200~1700mgKOH/gが特に好ましく、300~1500mgKOH/gが最も好ましい。ポリアミン化合物のアミン価が100mgKOH/g以上であれば、水性ポリウレタン樹脂のガスバリア性がより優れる。ポリアミン化合物のアミン価が1900mgKOH/g以下であれば、水性ポリウレタン樹脂の水分散安定性がより優れる。
【0057】
ポリアミン化合物のアミン価は、以下の方法により測定される。
「アミン価の測定方法」
試料を0.5~2g秤量する(試料量Sg)。秤量した試料にエタノール30gを加え、溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行う。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点として、このときの滴定量(AmL)を用い、以下の計算式を用いてアミン価を求める。
計算式:アミン価(mgKOH/g)=A×f×0.2×56.108/S
【0058】
水性ポリウレタン樹脂において、ポリアミン化合物の含有量は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、ポリアミン化合物の塩基性窒素原子のモル比(酸基/塩基性窒素原子)が10/1~0.1/1となる量が好ましく、5/1~0.2/1となる量がより好ましい。酸基/塩基性窒素原子が10/1~0.1/1であれば、酸基含有ポリウレタンの酸基とポリアミン化合物との架橋反応が適切におこり、コーティング剤から形成される皮膜が、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を発現できる。
【0059】
水性ポリウレタン樹脂は、通常、水性媒体に溶解または分散した状態で形成される。水性媒体は前記したとおりである。
水性ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂が水性媒体に溶解した水溶液の形態であってよく、ポリウレタン樹脂が水性媒体に分散した水分散体の形態であってもよい。
【0060】
水分散体において、分散粒子(ポリウレタン樹脂粒子)の平均粒径は、特に限定されず、好ましくは20~500nmであり、より好ましくは25~300nmであり、さらに好ましくは30~200nmである。分散粒子の平均粒径が500nm以下であれば、分散粒子と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性が良好で、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。分散粒子の平均粒径が20nm以上であれば、水分散体を得ることが容易である。
平均粒径は、水を分散媒とし、固形分濃度が0.03~0.3質量%の状態で、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製 FPAR-10)にて計測される値である。
【0061】
水性ポリウレタン樹脂は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。水性ポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、アセトン法、プレポリマー法等の、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が適用可能である。ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、スズ系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中において、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分および鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、酸基含有ポリウレタン樹脂を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性または水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物とポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解させ、または分散させた後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液または水分散体を調製できる。このようにして得られた酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液または水分散体にポリアミン化合物を添加し、必要に応じて加熱することにより、水溶液または水分散体の形態の水性ポリウレタン樹脂を調製できる。加熱する場合、加熱温度は、30~60℃が好ましい。
【0062】
<硬化剤>
硬化剤は、コーティング剤中の成分(水溶性高分子、無機層状鉱物、水性ポリウレタン樹脂等)との反応性を有する。
コーティング剤中に硬化剤を含有することで、コーティング剤からなる塗膜と樹脂基材1との密着性をより強固にできる。
【0063】
硬化剤の種類は、コーティング剤中の成分との反応性を持つものであれば特に限定されない。
硬化剤としては、シランカップリング剤、またはエポキシ化合物が好ましい。
【0064】
シランカップリング剤としては、一般に用いられているものを使用でき、例えばケイ素原子に結合したアルコキシ基と有機反応基とを有する化合物が挙げられる。
シランカップリング剤のアルコキシ基は、加水分解してシラノール基を生成し、無機化合物との反応、吸着等の相互作用効果を発揮する。前記コーティング剤では、無機層状鉱物とシランカップリング剤とが相互作用することで、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度が向上する。また、シランカップリング剤の有機反応基が水溶性高分子、水性ポリウレタン樹脂等の有機成分と反応することで、コーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材1への密着強度が向上する。したがって、コーティング剤がシランカップリング剤を含むことで、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材1や他の基材との密着性を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることが可能である。
【0065】
シランカップリング剤としては、例えばRSiX3(ここで、Rは有機反応基であり、Xはアルコキシ基である。)で表される化合物が挙げられる。有機反応基としては、例えばアミノ基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、イソシアヌレート基等を有するものが挙げられる。(メタ)アクリル基は、アクリル基およびメタアクリル基の両方を示す。アルコシキ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0066】
シランカップリング剤としては、有機反応基がコーティング剤中の成分との反応性を持つものが好ましい。例えば、ビニル基を持つシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基を持つシランカップリング剤として、2(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。アミノ基を持つシランカップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。メルカプト基を持つシランカップリング剤として、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリル基を持つシランカップリング剤として、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。イソシアネート基を持つシランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアヌレート基を持つシランカップリング剤として、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基は、水性ポリウレタン樹脂や水溶性高分子が持つ水酸基と良好な反応性を有するため、コーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材1への密着強度が特に強く発揮される。
【0068】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定することなく使用可能である。
エポキシ化合物は、水性ポリウレタン樹脂の末端水酸基等と反応し、強固な結合を形成する。したがって、コーティング剤がエポキシ化合物を含むことで、皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材1や他の基材との密着力を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることが可能である。また、反応速度が適正な領域内であるために、硬化剤添加後の可使用期間も長い。
【0069】
エポキシ化合物は、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物でもよく、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物でもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤以外の単官能エポキシ化合物として、例えば、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの単官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキセンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらの多官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
エポキシ化合物としては、複雑で強固な架橋構造を形成できる点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤、または多官能エポキシ化合物が好ましい。
多官能エポキシ化合物としては、より複雑な架橋構造の形成が可能である点から、3官能以上のエポキシ化合物が好ましい。
【0072】
<各成分の含有割合>
コーティング剤中の水溶性高分子の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、25~80質量%であることが好ましく、30~75質量%であることがより好ましく、35~70質量%であることが特に好ましい。水溶性高分子の含有量が25~80質量%であれば、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度を保ちつつ、高湿度環境下でのバリア性を効果的に発揮することができる。
【0073】
コーティング剤中の無機層状鉱物の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、5~60質量%であることが好ましく、7~45質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが特に好ましい。無機層状鉱物の含有量が5~60質量%であれば、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度を保ちつつ、高湿度環境下でのバリア性を効果的に発揮することができる。
【0074】
コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂を含む場合、コーティング剤中の水性ポリウレタン樹脂と水溶性高分子との固形分での質量比(水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子)は、5/95~85/15であることが好ましく、10/90~75/25であることがより好ましく、15/85~70/30であることが特に好ましい。水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子が85/15以下であれば、塗工時にムラが発生しにくい。塗工時のムラは、外観の悪化やバリア性の低下にもつながる。水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子が5/95以上であれば、樹脂基材1への濡れ性が良好で、塗工時にはじきむらが発生しにくい。はじきむらは、酸素バリア性の低下につながる可能性がある。水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子が5/95~85/15であることで、コーティング剤の樹脂基材1への濡れ性が良好で、ムラなくコーティング剤を塗工することができ、外観やバリア性の良好な皮膜を形成できる。
【0075】
コーティング剤が硬化剤を含む場合、コーティング剤中の硬化剤の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、0.5~30質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。硬化剤の含有量が0.5~30質量%であれば、樹脂基材1への良好な濡れ性を保ちつつ、コーティング剤から形成される皮膜の凝集力および樹脂基材への密着強度を充分に高めることができる。
【0076】
コーティング剤中、水溶性高分子と無機層状鉱物と水性ポリウレタン樹脂と硬化剤との合計の含有量は、コーティング剤中の全固形分に対して、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。この合計の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0077】
コーティング剤の23℃における粘度は、10~80mPa・sであることが好ましく、10~50mPa・sであることが好ましい。
コーティング剤の粘度は、E型粘度計により測定される値である。
【0078】
本態様のコーティング剤は、水溶性高分子と、無機層状鉱物と、必要に応じて水性ポリウレタン樹脂と、必要に応じて硬化剤と、必要に応じて他の成分と、必要に応じてさらなる水性媒体等を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
硬化剤は、他成分と一緒に混合しても、樹脂基材1へ塗工する直前に添加してもよい。
【0079】
(作用効果)
以上説明したガスバリア性フィルム10にあっては、表層2、裏層3および基層4を有する樹脂基材1と、樹脂基材1の第一面1aに接して位置する皮膜5とを有し、表層2がAB剤を含まないので、皮膜5の厚みが薄くても、皮膜5に欠陥を生じない。その結果、皮膜5が本来の酸素バリア性を充分に発現でき、酸素バリア性に優れる。また、皮膜5の厚みを薄くできるので、ガスバリア性フィルム10を低コストで提供できる。
また、本実施形態では、裏層3がAB剤を含むので、樹脂基材1やガスバリア性フィルム10のブロッキングを抑制できる。
【0080】
皮膜5の厚みが薄くても本来の酸素バリア性を充分に発現できる理由は、以下のように考えられる。
ブロッキングを防止するためにAB剤が含有された樹脂基材は、表面に凸部を有する。このような樹脂基材にウェットコート法によりコーティング剤を塗布すると、特に塗布量が少ない場合、凸部の位置で局所的に塗膜が形成されず、欠陥となる。この欠陥がガス透過の経路となり、酸素バリア性が充分に発現しなかったと考えられる。
ガスバリア性フィルム10においては、表層2がAB剤を含まないので、AB剤による凸部が第一面1aに存在せず、凸部による皮膜5の欠陥を抑制できる。よって本来の酸素バリア性を充分に発現すると考えられる。
【0081】
本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、裏層3が、AB剤6を含まなくてもよい。樹脂基材1の製造やガスバリア性フィルム10の取り扱い性の点では、裏層3はAB剤6を含むことが好ましい。
ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に配置される。ガスバリア性フィルムが融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、ヒートシールによって密封可能なものとなる。
熱融着層は、例えば、樹脂基材1の第一面1aに皮膜5を設けた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。熱融着層は、樹脂基材1の第二面1b上に積層してもよく、皮膜5上に積層してもよい。
【0082】
本発明の第二実施形態について説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係るガスバリア性フィルム200の模式断面図である。
ガスバリア性フィルム200は、樹脂基材20と下地層27と無機酸化物層28と皮膜25(酸素バリア性皮膜)とを有する。なお下地層27および無機酸化物層28のいずれか一方は無くても構わない。
下地層27は、樹脂基材20の第一面20aに接して位置し、その反対面に無機酸化物層28または皮膜25が接して位置する。
無機酸化物層28は、樹脂基材20の第一面20aまたは下地層27に接して位置し、その反対面に皮膜25が接して位置している。
【0083】
(樹脂基材)
樹脂基材20は、基層24を含む2以上の樹脂層を有する。具体的には、基層24と、基層24の一方の面上に位置する表層22と、基層24の他方の面上に位置する裏層23とを有する。
表層22は、樹脂基材20の第一面20aを構成している。
裏層23は、樹脂基材20において、第一面20aと反対側の第二面20bを構成している。
樹脂基材20は樹脂を含み、樹脂基材20を構成する表層22、裏層23、基層24の各層も樹脂を含む。
【0084】
基層24は、樹脂基材20の機械特性、化学的特性、熱的特性、光学特性等を調整する。機械特性とは、剛性、伸び、腰、引裂強さ、衝撃強度、突刺し強度、耐ピンホール性等である。化学的特性は、水蒸気バリア性、ガスバリア性、保香性、耐薬品性、耐油性等である。熱的特性は、融点・ガラス転移点、耐熱温度、耐寒温度、熱収縮率等である。光学特性は、透明性や光沢性等である。
【0085】
基層24の原料となる樹脂としては、入手の平易さ、水蒸気バリア性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。すなわち、樹脂基材20は、ポリオレフィン系樹脂基材であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる種類のコモノマーがランダムに共重合し均質的な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相をなすポリプロピレンである。これらのポリオレフィン系樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0086】
基層24は、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、アンチブロッキング剤(AB剤)、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適正の観点から好ましい。
基層24における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
基層24は、典型的にはAB剤を含まない。
【0087】
基層24は、単層構造でも多層構造でもよい。
基層24の厚みは、例えば、3~200μmであってよく、6~30μmであってよい。
【0088】
表層22を構成する樹脂は、基層24を構成する樹脂と同一でも異なってもよい。例えば、表層22、基層24各々を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、表層22を構成するポリオレフィン系樹脂が、基層24を構成するポリオレフィン系樹脂よりも低融点のポリオレフィン系樹脂であってもよい。これは、樹脂基材20と皮膜25の密着性を向上させるためである。表層22に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、1-ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0089】
表層22はAB剤を含まない。
表層22がAB剤を含まないことで、樹脂基材20の第一面20aに、AB剤に由来する凸部が存在しない。そのため、ウェットコート法により皮膜25を形成する際に、ガス透過の経路となる欠陥が発生することを抑制でき、優れた酸素バリア性が発現する。
【0090】
表層22は、AB剤以外の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適正の観点から好ましい。
表層22における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0091】
表層22の厚みは、例えば、0.1~10μmであってよく、さらには0.5~5.0μmであってよい。
【0092】
裏層23を構成する樹脂は、表層22を構成する樹脂と同様に、基層24を構成する樹脂と同一でも異なってもよい。例えば、裏層23、基層24各々を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、裏層23を構成するポリオレフィン系樹脂が、基層24を構成するポリオレフィン系樹脂よりも低融点のポリオレフィン系樹脂であってもよい。裏層23に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、表層22に用いることができるポリオレフィン系樹脂として挙げたものが挙げられる。
【0093】
裏層23は、
図1に示すように、AB剤26を含む。AB剤26は裏層23中に分散している。
裏層23がAB剤26を含むことで、樹脂基材20の第二面20bに局所的に、AB剤26に由来する凸部が存在する。この凸部によって、樹脂基材20やガスバリア性フィルム200のブロッキングを抑制できる。
第二面20bにおいて、AB剤26は露出していてもよいし樹脂で覆われていてもよい。
【0094】
AB剤26は、固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ粒子、ゼオライト、タルク、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのAB剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。AB剤26としては、有機系ではポリメチルメタクリレート粒子、無機系ではシリカ粒子が好ましい。
【0095】
AB剤26の平均粒径は、典型的には、裏層23の厚み以下である。第二面20bの外観、裏層23の透明性、AB剤26の脱落可能性、アンチブロッキング性能を考慮すると、AB剤26の平均粒径は、0.1μm以上、5μm以下が好ましい。
ガスバリア性フィルム200においては、表層22がAB剤26を含まない。そのため、裏層23のAB剤26によるアンチブロッキング性能が高いほうが良い。アンチブロッキング性能の観点から、AB剤26の平均粒径は、2μm以上、5μm以下が特に好ましい。
AB剤26の平均粒径は、コールター法により測定される。
【0096】
裏層23におけるAB剤26の添加量は、例えば、裏層23の総質量に対して0.1~0.4質量%である。
裏層13におけるAB剤26の添加量は、具体的には以下の式により求める。
AB剤の添加量[質量%]={(i)/100}×{(ii)/100}×100
式中、(i)は、樹脂にAB剤を添加して攪拌し、押出機内に投入して混練し、溶融押出によりペレット状に形成されるマスターバッチ樹脂チップにおけるAB剤の濃度(質量%)を指す。
(ii)は、AB剤を含むマスターバッチ樹脂チップを、AB剤を含まない樹脂にブレンドするときの、裏層23を構成する樹脂ペレット総質量に対するAB剤を含むマスターバッチ樹脂チップの濃度(質量%)を示す。
【0097】
裏層23は、AB剤以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、前記した添加剤と同様のものが挙げられる。裏層23における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0098】
裏層23の厚みは、例えば、0.1~10μmであってよく、さらには0.5~5.0μmであってよい。
裏層23の厚みは、AB剤26に由来する凸部が存在しない部分の厚みである。
【0099】
樹脂基材20は、表層22、裏層23、基層24の各層を共押出で積層した共押出フィルムであることが好ましい。
樹脂基材20は、延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよい。
【0100】
樹脂基材20は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは特に水蒸気バリア性能が優れるので、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することで、ガスバリア性フィルム200の水蒸気バリア性が向上する。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等の少なくとも1種がフィルム状に加工されたものであってよい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、共押出フィルムであることが好ましい。
【0101】
二軸延伸ポリオレフィンフィルムを有する樹脂基材は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるものであってもよく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の樹脂フィルムとが積層されたものであってもよい。他の樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、およびポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。
【0102】
樹脂基材20の厚みは、用途、求められる特性等に応じて調整でき、特に制限されないが、例えば、3~200μmであってよく、さらには6~30μmであってよい。
樹脂基材20の厚みは、AB剤26に由来する凸部が存在しない部分の厚みである。
【0103】
樹脂基材20の表面(第一面20a、第二面20b)は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理およびオゾン処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理が施されていてもよい。
【0104】
(下地層)
下地層27は、樹脂基材20と、無機酸化物層28または酸素バリア性皮膜25との間に設けられる。
下地層27は、有機高分子を主成分として含有する層であり、プライマー層と呼ばれることもある。下地層27を設けることによって、無機酸化物層28または皮膜25の成膜性や密着強度を向上させることができる。
【0105】
下地層27における有機高分子の含有量は、例えば70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。前記有機高分子としては、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられ、樹脂基材20と無機酸化物層28或いは皮膜25との密着強度の耐熱水性を考慮すると、ポリアクリル系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれら有機高分子の反応生成物の少なくとも1つを含むことが好ましい。
また下地層27は、シランカップリング剤や有機チタネートまたは変性シリコーンオイルを含んでいてもよい。
【0106】
前記有機高分子としてさらに好ましくは、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類とイソシアネート化合物との反応により生成したウレタン結合を有する有機高分子、および/または高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類とシランカップリング剤またはその加水分解物のような有機シラン化合物との反応生成物を含む有機高分子が挙げられる。
【0107】
ポリオール類としては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリスチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択される少なくとも一種が挙げられる。アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られるものであってもよい。アクリル酸誘導体モノマーとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
【0108】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材20と無機酸化物層28または皮膜25との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤又は硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、及びこれらの誘導体が挙げられる。上述のイソシアネート化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0109】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。有機シラン化合物は、これらのシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。有機シラン化合物は、上述のシランカップリング剤及びその加水分解物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0110】
下地層27は、有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、樹脂基材20の第一面a上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、例えば、硬化促進剤、酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を含有してもよい。硬化促進剤として、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等を例示できる。酸化防止剤として、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等を例示できる。
【0111】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて樹脂基材20の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば50~200℃に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、下地層27を形成することができる。
【0112】
下地層27の厚さは、特に制限されず、例えば、0.005~5μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
下地層27の厚みとしては、0.01~1μmが好ましく、0.01~0.5μmがより好ましい。下地層27の厚みが0.01μm以上であれば、樹脂基材20と無機酸化物層28または皮膜25との十分な密着強度が得られ、酸素バリア性も良好となる。下地層27の厚みが1μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易であり、また、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0113】
(無機酸化物層)
無機酸化物層28の構成物質としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。特に酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素が、生産性に優れ、かつ耐熱、耐湿熱での酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れることから好ましい。無機酸化物層28は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
無機酸化物層28の厚みは、1~200nmが好ましい。厚みが1nm以上であれば、優れた酸素バリア性と水蒸気バリア性が得られ、厚みが200nm以下であれば、製造コストを低く抑えられるとともに、折り曲げや引っ張りなどの外力による亀裂が生じ難く、バリア性の劣化を抑えられる。
無機酸化物層28は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等の公知の成膜方法によって形成できる。
【0114】
(酸素バリア性皮膜)
皮膜25は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。
皮膜25は、下地層27または無機酸化物層28の上にウェットコート法によりコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。塗膜は、湿潤膜であり、皮膜は、乾燥膜である。
【0115】
皮膜25としては、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む皮膜(有機無機複合皮膜)が好ましい。さらにシランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方をさらに含む皮膜が好ましい。
【0116】
有機無機複合膜に含まれる金属アルコキシド及びその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0117】
有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量は、例えば、40~70質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の下限は50質量%であってもよい。同様の観点から、有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の上限は65質量%であってもよい。
【0118】
有機無機複合膜に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000~180000である。
【0119】
ポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0120】
有機無機複合膜における水溶性高分子の含有量は、例えば、15~50質量%である。有機無機複合膜における水溶性高分子の含有量の下限は、酸素透過度を一層低減する観点から20質量%であってもよい。有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量の上限は、酸素透過度を一層低減する観点から45質量%であってもよい。
【0121】
有機無機複合膜に含まれるシランカップリング剤及びその加水分解物としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤及びその加水分解物としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン、及びこれらの加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0122】
シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方は、有機官能基として、エポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。
【0123】
有機官能基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、皮膜25の酸素バリア性と、下地層27または無機酸化物層28との接着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤及びその加水分解物のエポキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とは、相互作用によって、酸素バリア性と下地層27または無機酸化物層28との接着性に特に優れる皮膜25を形成することができる。
【0124】
有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量は、例えば、1~15質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の下限は2質量%であってもよい。同様の観点から、有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の上限は12質量%であってもよい。
【0125】
前記有機無機複合膜には、層状構造を有する結晶性の無機層状化合物を含んでいても構わない。無機層状化合物としては、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、又はマイカ族等に代表される粘土鉱物が挙げられる。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機層状化合物の粒径は、例えば0.1~10μmである。無機層状化合物のアスペスト比は、例えば50~5000である。
【0126】
無機層状化合物としては、層状構造の層間に水溶性高分子が入り込むこと(インターカレーション)によって、優れた酸素バリア性と密着強度を有する皮膜を形成できることから、スメクタイト族の粘土鉱物が好ましい。スメクタイト族の粘土鉱物の具体例としては、モンモリトロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト、水膨潤性合成雲母等が挙げられる。
【0127】
また、酸素バリア性皮膜25の別の好ましい例として、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシ基と多価金属化合物(B)との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含む皮膜(ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜)が挙げられる。この場合、ポリカルボン酸系重合体(A)と多価金属化合物(B)を混合したコーティング剤を塗布、加熱乾燥することで形成されるポリカルボン酸の多価金属塩皮膜であっても、ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してA皮膜を形成した上に、多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してB皮膜を形成し、A/B層間で架橋反応させて形成されるポリカルボン酸の多価金属塩皮膜であっても構わない。
【0128】
[ポリカルボン酸系重合体(A)]
ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体としては、たとえば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらのポリカルボン酸系重合体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0129】
成分としては、上記の中でも、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性の観点から、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸及びクロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましい。アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体は特に好ましい。
上記重合体において、前記アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位の割合は、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい(ただし、重合体を構成する全構成単位の合計を100mol%とする)。
上記重合体は、単独重合体でも、共重合体でもよい。
上記重合体が、上記構成単位以外の他の構成単位を含む共重合体である場合、他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位などが挙げられる。
【0130】
ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、2,000~10,000,000の範囲内が好ましく、5,000~1,000,000がより好ましい。数平均分子量が2,000未満では、得られるガスバリア性フィルムは充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると、皮膜25を形成する際のコーティング剤の粘度が高くなり、塗工性が損なわれる場合がある。
上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0131】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してA皮膜を形成した後にB皮膜を形成する場合には、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基の一部が予め塩基性化合物で中和されていてもよい。ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシ基の一部を予め中和することにより、A皮膜の耐水性や耐熱性をさらに向上させることができる。
塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。
多価金属化合物としては、後述する多価金属化合物(B)の説明で例示する化合物を用いることができる。一価金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0132】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤には各種添加剤を加えることができ、バリア性能を損なわない範囲で架橋剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、アンチブロッキング剤、静電防止剤、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤などがあげられる。
【0133】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒は水性媒体が好ましい。水性媒体としては、水、水溶性または親水性有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は通常、水または水を主成分として含む。
水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
水溶性または親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリル類の二トリル類等が挙げられる。
【0134】
[多価金属化合物(B)]
多価金属化合物は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と反応してポリカルボン酸の多価金属塩を形成する化合物であれば特に限定されず、酸化亜鉛粒子、酸化マグネシウム粒子、マグネシウムメトキシド、酸化銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを単独或いは複数を混合して用いてもよい。酸素バリア性皮膜の酸素バリア性の観点から酸化亜鉛が好ましい。
【0135】
酸化亜鉛は紫外線吸収能を有す無機材料であり、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は特に限定されない。ガスバリア性、透明性、コーティング適性の観点から、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0136】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してB皮膜を形成する場合は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化亜鉛粒子のほかに、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な樹脂、この溶媒に可溶又は分散可能な分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等が挙げられる。
【0137】
上記の中でも、コーティング剤に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂を含有することが好ましい。これにより、コーティング剤の塗工性、製膜性が向上する。このような樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0138】
また、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な分散剤を含有することが好ましい。これにより、多価金属化合物の分散性が向上する。分散剤としては、アニオン系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤としては、(ポリ)カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、芳香族リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の各種界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0139】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤に添加剤が含まれている場合には、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70~99:1の範囲内であることが好ましく、50:50~98:2の範囲内であることがより好ましい。
【0140】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。また、これらの溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また製造性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0141】
ポリカルボン酸系重合体(A)と多価金属化合物(B)を混合したコーティング剤を塗布、乾燥してポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を形成する場合には、前記したポリカルボン酸系重合体(A)と前記した多価金属化合物(B)と、水またはアルコール類を溶媒として、該溶媒に溶解或いは分散可能な樹脂や分散剤、および必要に応じて添加剤を混合して、コーティング剤として、公知のコーティング方法にて塗布、乾燥することで、ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を形成することができる。コート法として、例えばキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0142】
酸素バリア性皮膜25の厚みは、要求される酸素バリア性に応じて設定され、例えば0.05~5μmであってよい。
皮膜25の厚みとしては、0.05~1μmが好ましく、0.1~0.5μmがより好ましい。皮膜25の厚みが0.05μm以上であれば、充分な酸素バリア性が得られやすい。皮膜25の厚みが1μm以下であれば、第一面20aにおけるAB剤由来の凸部の有無が酸素バリア性に与える影響が大きく、本発明の有用性が高い。また、皮膜25の厚みが1μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易であり、また、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0143】
ガスバリア性皮膜として、前記の有機無機複合皮膜や、前記のポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を有するガスバリア性フィルムは、ボイル処理やレトルト殺菌処理を行っても優れた酸素バリア性を保持する。したがって、シーラントフィルムをラミネートして、ボイル・レトルト処理用包装材料としても、十分な密着強度やシール強度を有する。さらに、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと、耐屈曲性や耐延伸性に優れ、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクもない等の利点がある。
【0144】
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
ガスバリア性フィルム200は、樹脂基材20の第一面aに、下地層27または無機酸化物層28または下地層27と無機酸化物層28の双方を形成した後、下地層27または無機酸化物層28の上に酸素バリア性皮膜25を形成することにより製造できる。
樹脂基材20としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0145】
下地層27は、前記したように、ウェットコート法により樹脂基材20の第一面aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知のウェットコート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件は、例えば90℃、10秒間とできる。
【0146】
無機酸化物層28は、樹脂基材20の第一面a、または下地層27上に、前記した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等により成膜することで得られる。
【0147】
酸素バリア性皮膜25は、下地層27、または無機酸化物層28の上に、ウェットコート法により前記したコーティング剤からなる塗膜を形成し、乾燥することにより得られる。
ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知のウェットコート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件は、例えば90℃、10秒間とできる。
酸素バリア性皮膜25は、一度の塗布、乾燥により形成してもよいし、同種のコーティング剤或いは異種のコーティング剤により、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成してもよい。
【0148】
樹脂基材の表面にAB剤による凸部が存在すると、AB剤による凸部が樹脂基材の両面(第一面および第二面)に存在する。この凸部の位置で局所的に無機酸化物層または酸素バリア性皮膜に欠陥が生じることで、ガス透過の経路ができて、バリア性が充分に発現していなかったと考えられる。
【0149】
(作用効果)
ガスバリア性フィルム200においては、表層22がAB剤を含まないので、AB剤による凸部が第一面20aに存在せず、凸部による無機酸化物層28および皮膜25の欠陥を抑制できる。よって本来のバリア性を充分に発現すると考えられる。
また、本実施形態では、裏層23がAB剤を含むので、樹脂基材20やガスバリア性フィルム200のブロッキングを抑制できる。このとき、AB剤の粒径よりも基層21の厚みが大きいと、AB剤が表層の凹凸に与える影響が基層により十分に抑制されるため、無機酸化物層28および皮膜25の欠陥抑制と、ブロッキング抑制とを高いレベルで両立できる。
【0150】
本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、裏層23が、AB剤26を含まなくてもよい。樹脂基材20の製造やガスバリア性フィルム200の取り扱い性の点では、裏層23はAB剤26を含むことが好ましい。
ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に配置される。ガスバリア性フィルムが熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、ヒートシールによって密封可能なものとなる。
【0151】
熱融着層は、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。熱融着層は、樹脂基材20の第二面20b上に積層してもよく、皮膜25に積層してもよい。
【実施例】
【0152】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0153】
<製造例1>
メタキシリレンジイソシアネート(以下、「mXDI」と記載することがある。)45.5g、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と記載することがある。)93.9g、エチレングリコール24.8g、ジメチロールプロピオン酸13.4gおよび溶剤としてメチルエチルケトン80.2gを混合し、窒素雰囲気下、70℃にて5時間反応させ、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を調製した。
次に、このカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を、40℃にて、トリエチルアミン9.6gにより中和した。このカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を、ホモディスパーにより、水624.8gに分散させて、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタノール21.1gで鎖伸長反応を行い、メチルエチルケトンを留去することにより、固形分25質量%、平均粒径90nm、酸価26.9mgKOH/gの酸基含有ポリウレタン樹脂の水分散体を得た。
次に、この酸基含有ポリウレタン樹脂の水分散体と、ポリアミン化合物としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(アミン価544mgKOH/g)とを、酸基と塩基性窒素原子のモル比が1/1となる比率で混合して、製造例1の水性ポリウレタン樹脂を得た。
【0154】
<製造例2>
酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(以下、「成分(C)」とも記す。)として、製造例1の水性ポリウレタン樹脂を用いた。
水溶性高分子(以下、「成分(D)」とも記す。)として、ポリビニルアルコール樹脂(商品名:ポバールPVA-105、クラレ社製、けん化度98~99%、重合度500のポリビニルアルコール)を用いた。
無機層状鉱物(以下、「成分(E)と記すことがある。)として、水膨潤性合成雲母(コープケミカル社製、ソマシフMEB-3)を用いた。
成分(C)、成分(D)、および成分(E)を、表1に示す固形分配合比率で配合し、80℃にて加熱、混合した後、室温まで冷却し、溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9質量%となるようにイオン交換水とイソプロパノールで希釈し、さらに硬化剤(以下、「成分(F)」とも記す。)として、水溶性ポリイソシアネート(三井化学社製、タケネートWD-725)を添加してコーティング剤を調製した。なお、成分(F)は、後述する実施例1~3、比較例1~2におけるコーティング剤の塗工直前に添加した。
【0155】
【0156】
<実施例1>
樹脂基材として、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムAを用いた。この二軸延伸ポリプロピレンフィルムAは、表層1層(厚さ1μm)/基層3層(厚さ18μm)/裏層1層(厚さ1μm)がこの順に積層された合計5層の共押出フィルムである。二軸延伸ポリプロピレンフィルムAの第一面(表層側の表面)のみにコロナ処理を行った。裏層には、AB剤として平均粒径4μmのシリカ粒子を、裏層の総質量に対して2000ppmとなるように添加した。
この樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例2のコーティング剤を塗工して塗膜を形成した。この樹脂基材を、90℃のオーブンに10秒間通過させて塗膜を乾燥させて皮膜を形成し、実施例1のガスバリア性フィルムを得た。
【0157】
<実施例2>
実施例1で用いたのと同じ樹脂基材に対し、コーティング剤の塗布量を増加させることで皮膜を実施例1よりも厚く形成し、実施例2のガスバリア性フィルムを得た。
【0158】
<実施例3>
実施例1で用いたのと同じ樹脂基材に対し、コーティング剤の塗布量を減少させることで皮膜を実施例1よりも薄く形成し、実施例3のガスバリア性フィルムを得た。
【0159】
<比較例1>
樹脂基材として、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムBを用いた。この二軸延伸ポリプロピレンフィルムBは、表層1層(厚さ1μm)/基層3層(厚さ18μm)/裏層1層(厚さ1μm)がこの順に積層された合計5層の共押出フィルムである。二軸延伸ポリプロピレンフィルムBの第一面(表層側の表面)のみにコロナ処理を行った。表層には、AB剤として平均粒径4μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子を、表層の総質量に対して1500ppmとなるように添加した。裏層には、AB剤として平均粒径4μmのシリカ粒子を、裏層の総質量に対して2000ppmとなるように添加した。
この樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例2のコーティング剤を塗工して塗膜を形成した。この樹脂基材を90℃のオーブンに10秒間通過させて塗膜を乾燥させて皮膜を形成し、比較例1のガスバリア性フィルムを得た。
【0160】
<比較例2>
比較例1で用いたのと同じ樹脂基材に対し、コーティング剤の塗布量を増加させることで皮膜を比較例1よりも厚く形成し、比較例2のガスバリア性フィルムを得た。
【0161】
<評価>
・酸素バリア性
実施例1~3および比較例1~2のガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN-2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、60%RHの雰囲気下で酸素透過度(OTR)(cc/(m2・day・atm))を測定した。結果を表2に示す。
【0162】
・水蒸気バリア性
実施例1~3および比較例1~2のガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN-W-3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度(WVTR)(g/(m2・day))を測定した。結果を表2に示す。
・皮膜の厚み
実施例1~3および比較例1~2のガスバリア性フィルムについて、走査電子顕微鏡(商品名:JSM6700F、日本電子製)を用いて皮膜の厚みを測長した。結果を表2に示す。
【0163】
【0164】
表2に示すように、実施例1~3のガスバリア性フィルムは、良好な酸素バリア性が発現していた。特に実施例1は、実施例2よりも皮膜の厚みが薄いにもかかわらず、実施例2と同等の酸素バリア性が発現していた。
樹脂基材の表層にAB剤を含む比較例1のガスバリア性フィルムは、実施例1~3に比べて、酸素ガスバリア性が劣っていた。
比較例2のガスバリア性フィルムは、比較例1よりも皮膜を厚膜化したことで酸素バリア性が向上したが、その酸素バリア性は、実施例1~2よりも劣っていた。走査電子顕微鏡(SEM)で取得した比較例2のガスバリア性フィルムの断面写真を
図3に示す。厚く形成した皮膜5であっても、表層にAB剤6が存在することにより局所的亀裂が生じていることがわかる。
【0165】
以下に示す実施例および比較例は、第二実施形態に係るものである。
<製造例3>
アクリルポリオールとしてアクリディックCL-1000(DIC(株)社製)を、イソシアネート系化合物としてTDIタイプ硬化剤コロネート2030(東ソー(株)社製)を用いて、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物の配合比を固形分重量比6:4となるよう配合し、希釈溶剤(酢酸エチル)を用いて下地層形成用の混合液A(固形分:2質量%)を調整した。
【0166】
<製造例4>
ポリビニルアルコール樹脂(PVA 商品名:ポバールPVA-105、クラレ社製、けん化度98~99%、重合度500のポリビニルアルコール)を溶解した水溶液、およびテトラエトキシシラン(TEOS)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS 商品名:KBM-403 信越化学工業(株)社製)をそれぞれ0.02mol/Lの塩酸で加水分解した水溶液を用意した。この水溶液は、加水分解前の重量比でPVA:TEOS:GPTMSが40:50:10となるように配合されている。この水溶液に、希釈溶剤としてイソプロピルアルコールを加え、溶剤成分が、質量比として水:イソプロピルアルコールが90:10となるように調整し、コーティング剤B(5質量%)を調整した。
【0167】
<実施例4>
樹脂基材として、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムAを用い、第一面(表層側の表面)のみにコロナ処理を行った。裏層には、AB剤として平均粒径4μmのシリカ粒子を、裏層の総質量に対して2000ppmとなるように添加した。
この樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4のコーティング剤Bを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで実施例4のガスバリア性フィルムを得た。
【0168】
<実施例5>
コーティング剤Bの塗布量を増加させることで皮膜を実施例4よりも厚く形成したこと以外は実施例4と同様にして、実施例5のガスバリア性フィルムを得た。
【0169】
<実施例6>
コーティング剤Bの塗布量を減少させることで皮膜を実施例4よりも薄く形成したこと以外は実施例4と同様にして、実施例6のガスバリア性フィルムを得た。
【0170】
<実施例7>
実施例4で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4のコーティング剤Bを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで実施例7のガスバリア性フィルムを得た。
【0171】
<実施例8>
コーティング剤Bの塗布量を増加させることで皮膜を実施例7よりも厚く形成したこと以外は実施例7と同様にして、実施例8のガスバリア性フィルムを得た。
【0172】
<実施例9>
コーティング剤Bの塗布量を減少させることで皮膜を実施例7よりも薄く形成したこと以外は実施例7と同様にして、実施例9のガスバリア性フィルムを得た。
【0173】
<実施例10>
実施例4で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4のコーティング剤Bを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで実施例10のガスバリア性フィルムを得た。
【0174】
<比較例3>
樹脂基材として、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムBを用い、第一面(表層側の表面)のみにコロナ処理を行った。表層には、AB剤として平均粒径4μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子を、表層の総質量に対して1500ppmとなるように添加した。裏層には、AB剤として平均粒径4μmのシリカ粒子を、裏層の総質量に対して2000ppmとなるように添加した。
この樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4のコーティング剤Bを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで比較例3のガスバリア性フィルムを得た。
【0175】
<比較例4>
コーティング剤Bの塗布量を増加させることで皮膜を比較例3よりも厚く形成したこと以外は比較例3と同様にして、比較例4のガスバリア性フィルムを得た。
【0176】
<比較例5>
コーティング剤Bの塗布量を減少させることで皮膜を比較例3よりも薄く形成したこと以外は比較例3と同様にして、比較例5のガスバリア性フィルムを得た。
【0177】
<比較例6>
比較例3で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4のコーティング剤Bを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで比較例6のガスバリア性フィルムを得た。
【0178】
<比較例7>
コーティング剤Bの塗布量を増加させることで皮膜を比較例6よりも厚く形成したこと以外は比較例6と同様にして、比較例7のガスバリア性フィルムを得た。
【0179】
<比較例8>
比較例3で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4のコーティング剤Bを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで比較例8のガスバリア性フィルムを得た。
【0180】
<評価>
・酸素バリア性
実施例4~10、および比較例3~8で得たガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN-2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下で酸素透過度(OTR)(cc/(m2・day・atm))を測定した。
【0181】
・水蒸気バリア性
実施例4~10、および比較例3~8で得たガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN-W-3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(WVTR)(g/(m2・day))を測定した。
【0182】
・皮膜の厚み
実施例4~10、および比較例3~8で得たガスバリア性フィルムについて、走査電子顕微鏡(商品名:JSM6700F、日本電子製)を用いて皮膜の厚みを測長した。
実施例の評価結果を表3に、比較例の評価結果を表4に、それぞれ示す。
【0183】
【0184】
【0185】
表3に示すように、実施例4~10のガスバリア性フィルムは、良好な酸素バリア性が発現していた。特に実施例4および7は、それぞれ実施例5および8よりも皮膜の厚みが薄いにもかかわらず、同等の酸素バリア性が発現していた。
樹脂基材の表層にAB剤を含む比較例3のガスバリア性フィルムは、実施例4~6に比べて、酸素ガスバリア性が劣っていた。
比較例4のガスバリア性フィルムは、比較例3よりも皮膜を厚膜化したことで酸素バリア性が向上したが、その酸素バリア性は、実施例4~6よりも劣っていた。
比較例5のガスバリア性フィルムは、比較例3よりも皮膜を薄膜化したことで酸素バリア性が悪化し、その酸素バリア性は、実施例4~6よりも著しく劣っていた。
比較例6-8のガスバリア性フィルムは、実施例7-10より酸素バリア性が劣っていた。これは、樹脂基材の表層にAB剤が突出していることにより、無機酸化物層に欠損が生じたことによると考えられた。
【0186】
<製造例5>
数平均分子量200,000のポリアクリル酸水溶液(東亞合成社製 アロンA-10H、固形分濃度25質量%)20gに蒸留水58.9gを加えて希釈した。その後、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS アルドリッチ社製)0.44gを添加し、撹拌を行い均一な溶液とし、コーティング液Cを調整した。
【0187】
<製造例6>
酸化亜鉛微粒子水分散液(住友大阪セメント社製 ZE143)100gと硬化剤Liofol HAERTER UR 5889-21(Henkel社製)2gとを混合して金属粒子層形成用の混合液Dを得た。
【0188】
<実施例11>
樹脂基材として、実施例4と同一のものを用いた。
この樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例5のコーティング液Cを塗工して塗膜を形成し、80℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで酸素バリア性皮膜を形成した。次いで、形成した酸素バリア性皮膜上に、グラビア印刷機を用いて、製造例6の混合液Dを塗工して塗膜を形成し、50℃のオーブンに15秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの金属粒子層を形成し実施例11のガスバリア性フィルムを得た。
【0189】
<実施例12>
コーティング液Cの塗布量を増加させることで皮膜を実施例11よりも厚く形成したこと以外は実施例11と同様にして、実施例12のガスバリア性フィルムを得た。
【0190】
<実施例13>
コーティング液Cの塗布量を減少させることで皮膜を実施例11よりも薄く形成したこと以外は実施例11と同様にして、実施例13のガスバリア性フィルムを得た。
【0191】
<実施例14>
実施例11で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例5のコーティング液Cを塗工して塗膜を形成し、80℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで酸素バリア性皮膜を形成した。次いで、形成した酸素バリア性皮膜上に、グラビア印刷機を用いて、製造例6の混合液Dを塗工して塗膜を形成し、50℃のオーブンに15秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの金属粒子層を形成し、実施例14のガスバリア性フィルムを得た。
【0192】
<実施例15>
コーティング液Cの塗布量を増加させることで皮膜を実施例14よりも厚く形成したこと以外は実施例14と同様にして、実施例15のガスバリア性フィルムを得た。
【0193】
<実施例16>
コーティング液Cの塗布量を減少させることで皮膜を実施例14よりも薄く形成したこと以外は実施例14と同様にして、実施例16のガスバリア性フィルムを得た。
【0194】
<実施例17>
実施例11で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例5のコーティング液Cを塗工して塗膜を形成し、80℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで酸素バリア性皮膜を形成した。次いで、形成した酸素バリア性皮膜上に、グラビア印刷機を用いて、製造例6の混合液Dを塗工して塗膜を形成し、50℃のオーブンに15秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの金属粒子層を形成し実施例17のガスバリア性フィルムを得た。
【0195】
<比較例9>
樹脂基材として、比較例3と同一のものを用いた。
この樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例5のコーティング液Cを塗工して塗膜を形成し、80℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで酸素バリア性皮膜を形成した。次いで、形成した酸素バリア性皮膜上に、グラビア印刷機を用いて、製造例6の混合液Dを塗工して塗膜を形成し、50℃のオーブンに15秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの金属粒子層を形成し比較例9のガスバリア性フィルムを得た。
【0196】
<比較例10>
コーティング液Cの塗布量を増加させることで皮膜を比較例9よりも厚く形成したこと以外は比較例9と同様にして、比較例10のガスバリア性フィルムを得た。
【0197】
<比較例11>
コーティング液Cの塗布量を減少させることで皮膜を比較例9よりも薄く形成したこと以外は比較例9と同様にして、比較例11のガスバリア性フィルムを得た。
【0198】
<比較例12>
比較例9で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例3の混合液Aを塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、形成した下地層上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例5のコーティング液Cを塗工して塗膜を形成し、80℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで酸素バリア性皮膜を形成した。次いで、形成した酸素バリア性皮膜上に、グラビア印刷機を用いて、製造例6の混合液Dを塗工して塗膜を形成し、50℃のオーブンに15秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの金属粒子層を形成し比較例12のガスバリア性フィルムを得た。
【0199】
<比較例13>
コーティング液Cの塗布量を増加させることで皮膜を比較例12よりも厚く形成したこと以外は比較例12と同様にして、比較例13のガスバリア性フィルムを得た。
【0200】
<比較例14>
比較例9で用いたのと同じ樹脂基材の第一面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物層を形成した。さらに形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例5のコーティング液Cを塗工して塗膜を形成し、80℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで酸素バリア性皮膜を形成した。次いで、形成した酸素バリア性皮膜上に、グラビア印刷機を用いて、製造例6の混合液Dを塗工して塗膜を形成し、50℃のオーブンに15秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの金属粒子層を形成し比較例14のガスバリア性フィルムを得た。
【0201】
実施例7~17、および比較例6~14のガスバリア性フィルムについては、ボイル・レトルト処理用包装材料とした場合を想定した検討を行った。
<ボイル・レトルト処理用包装材料の作成>
実施例7~17、および比較例6~14のガスバリア性フィルムに、接着剤を用いたドライラミネーションによりCPP(ポリプロピレンフィルム)を貼り合わせ、ガスバリア性フィルム/接着剤/CPPの構成を有するボイル・レトルト処理用包装材料を想定したラミネートフィルムを作製した。ドライラミネーションには、HIRANO TECSEED社製マルチコーターTM-MCを使用した。接着剤は、酸素バリア性被膜上に配置した。接着剤として、三井化学ポリウレタン社製2液硬化型接着剤 タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を使用した。CPPとして、東レフィルム加工社製ポリプロピレンフィルム トレファンZK93KM(60μm)を使用した。得られたラミネートフィルムを、40℃にて3日間養生した。
【0202】
各例のラミネートフィルムを120℃の熱水中で30分間加熱殺菌処理し、上記と同様の手順で酸素バリア性および水蒸気バリア性を評価した。
実施例7~17の熱水処理後の結果を表5に、比較例6~14の熱水処理後の結果を表6に、それぞれ示す。
実施例11~17および比較例9~14は、熱水処理によりバリア性を発揮する構成のため、熱水処理後のデータのみ示している。
【0203】
【0204】
【0205】
表5に示すように、実施例のガスバリア性フィルムを用いたラミネートフィルムは、いずれも加熱殺菌処理後に良好な酸素バリア性を示した。特に実施例7、実施例11、および実施例14は、それぞれ実施例8、実施例12、および実施例15よりも皮膜の厚みが薄いにもかかわらず、同等の酸素バリア性が発現していた。
比較例のガスバリア性フィルムを用いたラミネートフィルムは、いずれも実施例のガスバリア性フィルムを用いたラミネートフィルムに比べて、加熱殺菌処理後の酸素ガスバリア性が劣っていた。これは、樹脂基材の表層にAB剤を含むことによるものと考えられた。
比較例10のガスバリア性フィルムは、比較例9よりも皮膜を厚膜化したことで加熱殺菌処理後の酸素バリア性が向上したが、その酸素バリア性は、実施例11~13よりも劣っていた。
比較例11のガスバリア性フィルムは、比較例9よりも皮膜を薄膜化したことで加熱殺菌処理後の酸素バリア性が悪化し、その酸素バリア性は、実施例11~13よりも著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明のガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れたガスバリア性を安定的に示し、また、包装用材料として充分な密着強度や膜凝集強度を有する。さらに、酸素バリア性皮膜の薄膜化による原材料コストの削減が可能となる。
本発明のガスバリア性フィルムは、例えば包装用材料として好適に利用可能である。本発明のガスバリア性フィルムを包装用材料として用いることで、内容物の品質保持性を高めることができる。
【符号の説明】
【0207】
1、20 樹脂基材
1a、20a 第一面
1b、20b 第二面
4、24 基層
5、25 皮膜(酸素バリア性皮膜)
6、26 アンチブロッキング剤
10、200 ガスバリア性フィルム
27 下地層
28 無機酸化物層