(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20250226BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20250226BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
B66C13/46 F
B66C23/88 D
B66C13/00 D
(21)【出願番号】P 2021005849
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笹原 大介
(72)【発明者】
【氏名】西脇 也寸男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167221(JP,A)
【文献】特開2019-147685(JP,A)
【文献】特開2018-095370(JP,A)
【文献】特開2012-056753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0307965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/46
B66C 23/88
B66C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を揚重する揚重装置
及び3次元計測器と通信を行なう制御部を備えた揚重支援システムであって、
前記3次元計測器は、前記揚重装置のジブ先端から下方を臨む第1計測器と、前記揚重装置の旋回フレームから側方を臨む第2計測器と、を備え、
前記制御部が、
前記揚重装置から、前記吊荷の吊下げ位置情報を取得し、
前記
第1計測器及び前記第2計測器から、前記吊荷の形状を含む3次元計測情報を取得し、
前記
取得した3次元計測情報を統合して、前記吊下げ位置情報に応じた位置の前記吊荷のサイズについて、
前記第1計測器による水平方向の大きさと、前記第2計測器で鉛直方向の大きさとを特定することを特徴とする揚重支援システム。
【請求項2】
吊荷を揚重する揚重装置
及び3次元計測器と通信を行なう制御部を備えた揚重支援システムを用いて、揚重支援を行なう方法であって、
前記3次元計測器は、前記揚重装置のジブ先端から下方を臨む第1計測器と、前記揚重装置の旋回フレームから側方を臨む第2計測器と、を備え、
前記制御部が、
前記揚重装置から、前記吊荷の吊下げ位置情報を取得し、
前記
第1計測器及び前記第2計測器から、前記吊荷の形状を含む3次元計測情報を取得し、
前記
取得した3次元計測情報を統合して、前記吊下げ位置情報に応じた位置の前記吊荷のサイズについて、
前記第1計測器による水平方向の大きさと、前記第2計測器で鉛直方向の大きさとを特定することを特徴とする揚重支援方法。
【請求項3】
吊荷を揚重する揚重装置
及び3次元計測器と通信を行なう制御部を備えた揚重支援システムを用いて、揚重支援を行なうためのプログラムであって、
前記3次元計測器は、前記揚重装置のジブ先端から下方を臨む第1計測器と、前記揚重装置の旋回フレームから側方を臨む第2計測器と、を備え、
前記制御部を、
前記揚重装置から、前記吊荷の吊下げ位置情報を取得し、
前記
第1計測器及び前記第2計測器から、前記吊荷の形状を含む3次元計測情報を取得し、
前記
取得した3次元計測情報を統合して、前記吊下げ位置情報に応じた位置の前記吊荷のサイズについて、
前記第1計測器による水平方向の大きさと、前記第2計測器で鉛直方向の大きさとを特定する手段として機能させることを特徴とする揚重支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚重作業を支援する揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
資機材を運搬する場合に、タワークレーン等の揚重装置を用いることがある。このような揚重装置を用いた作業の安全性を考慮した技術も検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示された技術においては、クライミングクレーンで作業を行う現場に3次元計測センサを設置して現場の3次元計測を行ない、3次元計測センサが計測した3次元計測データを情報処理装置に送信する。そして、情報処理装置に設けた吊荷判別手段によって、吊荷の位置及び大きさを3次元計測データから自動的に判別するとともに、吊荷の位置及び大きさに基づいてクライミングクレーンの制御を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3次元計測センサでは、的確に吊物を判定できない場合がある。例えば、吊荷の先に背景物が存在する場合、吊荷と背景物とを識別することができないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための揚重支援システムは、吊荷を揚重する揚重装置及び3次元計測器と通信を行なう制御部を備える。そして、前記制御部が、前記揚重装置から、前記吊荷の吊下げ位置情報を取得し、前記3次元計測器から、前記吊荷の形状を含む3次元計測情報を取得し、前記3次元計測情報において、前記吊下げ位置情報に応じた位置の前記吊荷のサイズを特定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、揚重作業において、効率的かつ的確な搬送を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図11に従って、揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、建築現場において、揚重装置(タワークレーン)を利用する場合に用いる揚重支援システムとして説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態では、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30を用いる。制御ユニット10は、揚重装置としてのタワークレーンC1に設けられる。ここでは、建築現場において、複数のタワークレーンC1(移動構造物)を用いる場合を想定する。
【0010】
図5に示すように、仮想空間500には複数の構造物502の3次元モデルが配置される。そして、構造物502の一つであるタワークレーンC1のマストC10の上には、旋回フレームC11(旋回部)が載置されており、旋回フレームC11に運転席C12が設けられている。オペレータの操作によって揚重作業を行なう場合には、タワークレーンC1の運転席C12で、旋回フレームC11の旋回操作やジブC13(ブーム)の起伏(傾斜角)操作、フックC14の上下操作を行なう。そして、フックC14に吊り下げられた吊荷C15を搬送する。なお、遠隔操作や自動運転操作と、オペレータの操作とを組み合わせることも可能である。
【0011】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信ルートを確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0014】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0015】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリ(コンピュータ可読媒体)を含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリは、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0016】
(システム構成)
次に、
図1を用いて、揚重支援システムの各機能を説明する。
タワークレーンC1に設けられる制御ユニット10は、3次元計測器12、撮像装置13及び駆動制御部14を備える。
【0017】
図5に示すように、2つの3次元計測器12a,12bを用いる。3次元計測器12aは、タワークレーンC1のジブC13の先端に設けられて、下方向の周囲の3次元計測情報を取得する。3次元計測器12bは、旋回フレームC11において、ジブC13側に設けられて、水平方向の周囲の3次元計測情報を取得する。3次元計測器12a,12bは、例えば、レーザ光を用いて、周囲に存在する物体(障害物)を検知する。この3次元計測器12a,12bには、例えば、3次元計測情報としての3次元点群情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)技術を用いることができる。このLiDARは、例えば、レーザ光を1次元で振って形成されたスキャン面を、法線方向に360度で旋回させることができる。或いは、LiDARは、前方の限られた範囲でレーザ光を左右上下に振り動かすことにより、周囲の障害物について3次元点群情報を取得することができる。
【0018】
撮像装置13は、タワークレーンC1のジブC13の先端に設けられて、下方のフックC14及び吊荷C15を含む動画を撮影する。
駆動制御部14は、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に応じた駆動制御を行なう。
そして、
図1の制御ユニット10は、3次元計測器12a,12bによる3次元点群情報、撮像装置13による動画、駆動制御部14の駆動情報を支援サーバ20に送信する。
【0019】
支援サーバ20は、制御ユニット10から取得した情報を用いて、揚重作業を支援するコンピュータシステムである。この支援サーバ20は、制御部21、設計情報記憶部22、評価情報記憶部23、揚重情報記憶部24を備える。
【0020】
制御部21は、後述する処理(情報取得段階、経路作成段階、領域設定段階、搬送管理段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、情報取得部211、経路作成部212、領域設定部213、搬送管理部214等として機能する。
【0021】
情報取得部211は、制御ユニット10から各種情報を取得する。本実施形態では、制御ユニット10から3次元計測情報、ジブC13先端の下方の動画を取得する。この3次元計測情報により、周囲の障害物を検知することができる。また、動画により、吊荷C15を確認することができる。更に、情報取得部211は、制御ユニット10から、ジブC13の起伏操作情報、旋回フレームC11の旋回操作情報、フックC14の上下操作等の稼働情報を取得する。このフックC14の上下操作における吊下げワイヤの巻上げ長さにより、ジブC13の先端から吊荷C15までの距離を算出できる。
【0022】
経路作成部212は、設計情報記憶部22に記録された建築現場の3次元モデル、3次元計測器12で計測した3次元点群情報を用いて、搬送経路を作成する。この経路作成部212は、荷幅に応じてオフセットが設定されたオフセットテーブルを備える。オフセットは、障害物に対して、接触しないように余裕を持たせる距離である。そして、経路作成部212は、障害物からオフセットだけ離れた領域に、搬送経路を設定可能な搬送領域マップを設ける。この搬送領域マップにおいては、マップを構成する分割領域(ポリゴン)毎に評価値がマッピングされる。この評価値は、障害物から分割領域までの距離に応じて、接触時のリスクを評価した個別値を合計した値である。このため、経路作成部212は、距離に応じて個別値を算出するための個別値算出情報を保持している。そして、経路作成部212は、搬送領域マップ内において、評価値が低く、効率的な搬送経路を作成する。
【0023】
搬送管理部214は、作成した搬送ルートにより、タワークレーンC1を動作させる。この搬送管理部214は、吊荷のサイズ(寸法や重量)に応じて、搬送速度(通常速度)を決定するための速度決定テーブルを備える。この速度決定テーブルにおいては、サイズが大きい程、遅い搬送速度が設定されている。更に、搬送管理部214は、搬送速度に対して監視範囲を決定するための範囲決定テーブルを備える。この範囲決定テーブルにおいては、搬送速度が速い程、大きな監視範囲が設定されている。本実施形態では、搬送速度を減速する第1監視範囲と、搬送を停止する第2監視範囲を決定する。第1監視範囲は第2監視範囲の外側に配置される。
【0024】
設計情報記憶部22には、BIM(Building Information Modeling)等を用いて作成した3次元設計データが記録される。この3次元設計データは、3次元CADを用いて、建築現場の設計を行なった場合に記録される。3次元モデル情報としての3次元設計データは、プロジェクト情報、要素モデル、属性情報、配置情報を含んで構成される。
【0025】
プロジェクト情報は、建築現場の名称、経度・緯度、建築現場の方位等に関する情報を含む。
要素モデルは、建築現場に用いる各建築要素(構成部材)の3次元モデル(BIMオブジェクト)に関する情報である。
【0026】
属性情報は、この要素モデルの属性情報である。この属性情報には、仕様(要素ID、要素種別、規格、寸法、面積、体積、素材等)に関する情報が含まれる。
配置情報は、各要素モデルを配置する座標に関する情報を含む。更に、配置情報においては、この座標に対して、各要素モデルが配置される配置予定年月日が関連付けられている。
【0027】
評価情報記憶部23には、評価管理データが記録される。この評価管理データは、評価情報が登録された場合に記録される。評価管理データは、要素種別情報、スコア情報を含んで構成される。
【0028】
要素種別情報は、設計データに含まれる可能性がある各建築要素を特定するための識別子に関する情報である。なお、要素種別には、3次元点群情報により特定した障害物も含まれる。
スコア情報は、各建築要素の重要度に関する情報である。吊荷との接触を避ける建築要素や、3次元点群には高いスコアを設定しておく。
【0029】
揚重情報記憶部24には、制御ユニット10の吊荷に関する揚重管理データが記録される。この揚重管理データは、管理端末30から、各種情報を取得した場合に記録される。揚重管理データは、作業ID、クレーンID、吊上げ位置、吊下し位置、搬送物、予定経路、実績経路に関する情報を含んで構成される。
【0030】
作業IDは、各揚重作業を特定するための識別子に関する情報である。
クレーンIDは、この各揚重作業において用いるタワークレーンC1を特定するための識別子に関する情報である。
【0031】
吊上げ位置情報、吊下し位置情報は、管理者によって指定された吊上げ位置(搬送開始位置)、吊下し位置(搬送目標位置)に関する情報である。
搬送物情報は、揚重対象の資機材を特定するための識別子に関する情報である。
【0032】
予定経路情報は、経路生成を行なった場合に記録される。予定経路情報は、搬送領域マップを用いて作成した搬送経路に関する情報である。
実績経路情報は、旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に基づいて、吊荷C15が通過した実績ルートに関する情報である。
【0033】
管理端末30は、建築現場の管理者が用いるコンピュータ端末である。管理者は、運転席C12のオペレータによる操作の代わりに、管理端末30を用いて、建築現場におけるタワークレーンC1を遠隔操作して揚重作業を指示する。
【0034】
(揚重支援処理)
次に、
図3~
図11を用いて、支援サーバ20において、揚重作業時に行なわれる揚重支援方法の処理手順を説明する。
【0035】
まず、
図3に示すように、支援サーバ20の制御部21は、設計情報取得処理を実行する(ステップS101)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、現在年月日をシステムタイマから取得し、設計情報記憶部22を用いて、配置予定年月日が現在年月日以前の要素モデルを特定する。そして、情報取得部211は、仮想空間内に、特定した要素モデルを配置する。更に、情報取得部211は、周囲に配置された他のタワークレーンC1の制御ユニット10から稼働情報を取得する。次に、稼働情報に応じて、他のタワークレーンC1のマストC10やジブC13等の移動構造物の要素モデルを配置する。そして、搬送管理部214は、仮想空間を表示した管理画面を、管理端末30の表示装置H13に出力する。
【0036】
次に、支援サーバ20の制御部21は、属性情報によるスコアリング処理を実行する(ステップS102)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、設計情報記憶部22の属性情報から、仮想空間内に配置された各要素モデルの要素種別を取得する。そして、情報取得部211は、評価情報記憶部23から、要素種別に対応したスコアを取得する。
【0037】
次に、支援サーバ20の制御部21は、マッピング処理を実行する(ステップS103)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、タワークレーンC1の制御ユニット10から、3次元計測器12で計測したタワークレーンC1周囲の3次元点群情報を取得する。そして、経路作成部212は、管理画面に表示された仮想空間に配置された要素モデルに加えて、点群データを配置して表示する。
【0038】
図6には、管理画面510において、タワークレーンC1の周囲の点群データ511が表示されている。この点群データ511は、例えば、地表に置かれた資機材等を検知したものである。また、管理画面には、撮像装置13によって撮影された吊荷C15の動画画面512が含まれる。
【0039】
次に、支援サーバ20の制御部21は、高さ設定処理を実行する(ステップS104)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、3次元点群情報を用いて、仮想空間に配置された構造物(固定構造物)の要素モデルの存在を確認する。そして、経路作成部212は、存在が確認された固定構造物において、最高位置を特定する。そして、経路作成部212は、固定構造物の最高位置に、余裕高さ(例えば5m)を加算した揚重高さを算出する。この場合、経路作成部212は、ジブC13によりフックC14を巻上げ可能な高さ以下で、搬送を行なう揚重高さを決定する。
【0040】
次に、支援サーバ20の制御部21は、搬送情報の設定処理を実行する(ステップS105)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、管理端末30に搬送入力画面を出力する。この場合、管理者は、管理端末30を用いて、搬送物に関する情報を入力する。例えば、搬送物の名称を入力する。更に、管理画面を用いて、搬送開始位置及び搬送目標位置を入力する。ここでは、表示装置H13に表示された管理画面の仮想空間において、搬送開始位置及び搬送目標位置を指定する。この場合、経路作成部212は、指定された搬送開始位置及び搬送目標位置の座標を特定する。そして、経路作成部212は、作業IDを付与し、管理画面から取得した搬送物情報を含めた揚重管理データを揚重情報記憶部24に記録する。
【0041】
次に、支援サーバ20の制御部21は、吊荷の点群情報の取得処理を実行する(ステップS106)。具体的には、制御部21の領域設定部213は、駆動制御部14に対して、フックC14の上下操作を指示して、吊荷C15を、所定の高さまで吊り上げる。この場合、地上物との距離を確保できるまでの高さを用いる。そして、領域設定部213は、駆動制御部14から、吊下げ位置情報として、フックC14の上下操作情報及びジブC13の起伏操作情報を取得する。そして、領域設定部213は、フックC14の上下操作による吊下げワイヤの巻上げ長さから、ジブC13の先端からフックC14までの吊下げ長さ(後述する距離L1)を算出する。更に、領域設定部213は、上下操作情報、起伏操作情報(起伏角度)を用いて、旋回フレームC11からフックC14までの距離(後述する距離L2)を算出する。そして、領域設定部213は、タワークレーンC1の制御ユニット10から、3次元計測器12a,12bで計測したタワークレーンC1周囲の3次元点群情報を取得する。この3次元点群情報には、吊荷の他に背景物が含まれる。
【0042】
図7は、撮像装置13から取得した撮影画像520である。この撮影画像520には、フックC14、吊荷C15の画像の他に、周囲の構造物(背景物)の画像も含まれる。
図8の全景530に示すように、3次元計測器12a,12bからレーザ光531,532を照射して、3次元点群情報を取得する。この場合、3次元計測器12aは、タワークレーンC1のジブC13の先端から、下方向の3次元計測情報を取得する。また、3次元計測器12bは、旋回フレームC11から、水平方向の周囲の3次元計測情報を取得する。これにより、距離L1、L2で吊り下げられた吊荷C15について、3次元計測器12aは、水平方向の大きさに関する3次元計測情報を取得し、3次元計測器12
bは、鉛直方向の大きさに関する3次元計測情報を取得する。
【0043】
次に、支援サーバ20の制御部21は、クラスタリング処理を実行する(ステップS107)。具体的には、制御部21の領域設定部213は、3次元計測器12a,12bから取得した各3次元点群情報において、公知のクラスタリング処理により、点群のまとまり(クラスタ)を特定する。そして、領域設定部213は、3次元計測器12aから取得した3次元点群情報の中で、各クラスタまでの距離と、ジブC13の先端からフックC14までの距離L1とを用いて、フックC14の下方の吊荷C15に対応するクラスタを特定する。また、領域設定部213は、3次元計測器12bから取得した3次元点群情報の中で、各クラスタまでの距離と、旋回フレームC11からの距離L2とを用いて、フックC14、吊荷C15に対応するクラスタを特定する。
【0044】
図9は、3次元計測器12から取得した3次元点群情報540である。ここで、3次元点群情報540のクラスタリング処理により、点群のクラスタを特定する。そして、3次元点群情報540の中で、吊下げ長さに応じた距離に存在するフックC14、吊荷C15のクラスタ541,542を特定することができる。なお、クラスタ543は、他のタワークレーンC1のジブC13の点群である。また、クラスタ544,545は、周囲の構造物の点群である。
【0045】
次に、支援サーバ20の制御部21は、吊荷のサイズの特定処理を実行する(ステップS108)。具体的には、制御部21の領域設定部213は、各クラスタまでの距離を用いて、3次元点群情報の縮尺を決定する。そして、領域設定部213は、3次元計測器12a,12bから取得した各3次元点群情報に含まれる吊荷C15のクラスタの長さを算出し、縮尺を用いて吊荷のサイズを特定する。ここでは、3次元計測器12aから取得した3次元点群情報により水平方向のサイズ(荷幅)、3次元計測器12bから取得した3次元点群情報により鉛直方向のサイズ(高さ)を算出する。
【0046】
次に、支援サーバ20の制御部21は、荷幅に応じたオフセットの設定処理を実行する(ステップS109)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、オフセットテーブルを用いて、搬送物のサイズに基づいてオフセットを算出する。この場合、搬送物が何れの方向を向いても、収まる範囲でオフセットを設定する。
【0047】
次に、支援サーバ20の制御部21は、揚重経路の作成処理を実行する(ステップS110)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、揚重高さで搬送可能領域において、搬送領域マップを作成する。この搬送領域マップは、複数の分割領域により構成される。経路作成部212は、各分割領域の代表位置(例えば重心)毎に、各障害物からの距離に基づいて、個別値算出情報を用いて個別値を算出する。そして、経路作成部212は、算出した個別値を合計して、各分割領域における評価値を算出する。この場合、障害物からの距離が近い場合や、スコアが高い場合、高い評価値が設定される。
【0048】
次に、経路作成部212は、搬送領域マップを用いて、経路上の各分割領域の評価値の合計が低く、最短距離のパスにより、フック位置(移動開始位置)→吊荷移動元位置(搬送開始位置)→吊荷移動先位置(搬送目標位置)の3次元の搬送経路を生成する。この場合、水平移動平面では、ノード(例えば、分割領域P1の重心)とリンクからなるグラフに対して、経路探索アルゴリズムを適用する。経路探索アルゴリズムとしては、例えば、「A*(A-star)探索アルゴリズム」を用いることができる。このA*探索アルゴリズムは、移動開始位置→搬送開始位置→搬送目標位置までのパスを見つけるグラフ探索問題において、探索の道標となるコスト関数を用いる。コスト関数では、スタートからn地点までのコストと、n地点からゴールまでの予想されるコスト(評価値)の合計が低い搬送経路を特定する。そして、経路作成部212は、生成した搬送経路を、予定経路情報として、揚重管理データに関連付けて揚重情報記憶部24に記録する。
【0049】
次に、支援サーバ20の制御部21は、監視範囲の設定処理を実行する(ステップS111)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、速度決定テーブルを用いて、吊荷のサイズに応じた搬送速度を決定する。更に、搬送管理部214は、範囲決定テーブルを用いて、搬送速度から監視範囲を決定する。
【0050】
図10の全景550に示すように、吊荷の吊下げ領域W0に応じて、その周囲には、監視範囲(W1,W2)が設定される。この吊下げ領域W0は、3次元計測器12a,12bから取得した3次元点群情報を用いて算出したサイズ(荷幅、高さ)により生成する。第1監視範囲W1は搬送速度を減速させるための減速領域であり、第2監視範囲W2は搬送を一旦停止させるための停止領域である。本実施形態では、ジブC13が延在する水平方向に平行な辺を有する直方体形状の第1監視範囲W1及び第2監視範囲W2を設定する。この直方体形状の上端は、ジブC13の高さ位置とする。また、直方体形状の下端は、吊下げ領域W0から所定長さだけ低い位置とする。そして、第1監視範囲W1は、第2監視範囲W2から所定距離を離して、第2監視範囲W2を内包する大きさ及び位置に設定される。第2監視範囲W2は、吊下げ領域W0から所定距離を離して、吊下げ領域W0を内包する大きさ及び位置に設定される。
【0051】
次に、
図4に示すように、支援サーバ20の制御部21は、搬送開始処理を実行する(ステップS201)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、管理端末30の表示装置H13に、開始確認画面を出力する。開始確認画面には、開始要否(「はい」又は「いいえ」)の選択ボタンが含まれる。そして、搬送管理部214は、開始確認画面において「はい」ボタンの押下を検知した場合、タワークレーンC1の制御ユニット10の駆動制御部14に対して、搬送開始を指示する。
この場合、支援サーバ20の制御部21は、周囲状況の監視処理を実行する(ステップS202)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、タワークレーンC1の制御ユニット10から、3次元計測器12a,12bで計測したタワークレーンC1周囲の3次元点群情報を取得する。
【0052】
次に、支援サーバ20の制御部21は、障害検知かどうかについての判定処理を実行する(ステップS203)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、3次元点群情報において、監視範囲に含まれる障害物の有無を確認する。監視範囲に含まれる3次元点群(障害物)が存在する場合には、障害検知と判定する。一方、監視範囲に含まれる3次元点群が存在しない場合には、障害検知なしと判定する。
【0053】
障害検知なしと判定した場合(ステップS203において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、通常搬送処理を実行する(ステップS204)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、駆動制御部14に対して、速度決定テーブルを用いて決定した通常速度での搬送を指示する。ここで、マストC10から搬送目標位置までの水平距離(第1距離)が、マストC10から搬送開始位置までの水平距離(第2距離)と異なる場合には、マストC10から吊荷C15までの水平距離が第2距離になるように、ジブC13の起伏操作を、旋回フレームC11の旋回操作と同時に行なう。
【0054】
一方、障害検知と判定した場合(ステップS203において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、減速領域かどうかについての判定処理を実行する(ステップS205)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、検知した障害物の配置と監視範囲との位置関係を特定する。障害物が第1監視範囲W1に含まれる場合には、減速領域と判定する。
【0055】
減速領域と判定した場合(ステップS205において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、減速搬送処理を実行する(ステップS206)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、通常速度に対して減速速度での搬送を指示する。この減速速度は、例えば、通常速度に対して、1以下の所定割合を乗算することにより算出することができる。搬送管理部214は、駆動制御部14に対して、減速速度での搬送を指示する。
【0056】
一方、障害物が第2監視範囲W2に含まれており、停止領域と判定した場合(ステップS205において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、停止処理を実行する(ステップS207)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、駆動制御部14に対して、旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作の停止を指示する。
この場合、
図11に示すように、搬送管理部214は、管理画面560に、停止を示すメッセージ561を出力する。
【0057】
次に、支援サーバ20の制御部21は、障害消失かどうかについての判定処理を実行する(ステップS208)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、タワークレーンC1の3次元計測器12a,12bで計測した3次元点群情報において、第2監視範囲W2に含まれる障害物が消失したかどうかを確認する。例えば、障害と特定したクレーンが第2監視範囲W2から外れた場合には、障害消失と判定する。
【0058】
障害が消失していないと判定した場合(ステップS208において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、停止処理(ステップS207)を継続する。
一方、障害消失と判定した場合(ステップS208において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、搬送経路の作成処理(ステップS110)から処理をやり直す。この場合、タワークレーンC1の制御ユニット10から、3次元計測器12a,12bで計測したタワークレーンC1周囲の3次元点群情報を取得する。そして、現在のフック位置を搬送開始位置として、搬送目標位置までの搬送経路を作成する。これにより、障害物の現状に基づいて、搬送経路を作成し直す。
【0059】
通常搬送処理(ステップS204)、減速搬送処理(ステップS206)の実行時には、支援サーバ20の制御部21は、旋回終了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS209)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、タワークレーンC1のフックC14が、搬送目標位置の上方に到達した場合には、旋回終了と判定する。
【0060】
旋回終了でないと判定した場合(ステップS209において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、周囲状況の監視処理(ステップS202)以降の処理を繰り返して実行する。
【0061】
一方、旋回終了と判定した場合(ステップS209において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、荷下ろし処理を実行する(ステップS210)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、駆動制御部14に対して、搬送目標位置に達するまでフックC14の降下を指示する。
【0062】
次に、支援サーバ20の制御部21は、実績経路の記録処理を実行する(ステップS211)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に応じて、実際に吊荷C15が通過した経路に関する実績経路情報を生成し、揚重情報記憶部24に記録する。更に、この実績経路情報には、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作の操作情報を含める。
【0063】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、設計情報取得処理(ステップS101)、属性情報によるスコアリング処理(ステップS102)を実行する。これにより、3次元モデル情報に基づいて、障害物を特定することができる。また、制御部21は、周囲に配置された他のタワークレーンC1の制御ユニット10から稼働情報を取得して、他のタワークレーンC1のマストC10やジブC13の要素モデルを配置する。これにより、移動により配置位置が変化する障害物を特定することができる。更に、属性情報を用いたスコアリングにより、仮想空間内に配置された資機材のスコアを用いて、各要素の重み付けを行なうことができる。
【0064】
(2)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、マッピング処理(ステップS103)、高さ設定処理(ステップS104)を実行する。これにより、タワークレーンC1の周囲に、実際に存在する障害物を検知することができる。
【0065】
(3)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、吊荷の点群情報の取得処理(ステップS106)、クラスタリング処理(ステップS107)、吊荷のサイズの特定処理(ステップS108)を実行する。これにより、吊り下げられている吊荷の大きさを特定することができる。例えば、吊り下げ状態によって、大きさが異なる場合にも、実際の状況に応じた吊下げ領域を特定することができる。そして、荷幅に応じて、的確なオフセットや監視範囲を設定することができる。
【0066】
(4)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、搬送情報の設定処理(ステップS105)、搬送経路の作成処理(ステップS110)を実行する。これにより、搬送開始位置から搬送目標位置までの効率的な搬送経路を作成することができる。
【0067】
(5)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、搬送開始処理(ステップS201)、周囲状況の監視処理(ステップS202)を実行する。これにより、突発的に発生した障害物を検知することができる。そして、障害検知なしと判定した場合(ステップS203において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、通常搬送処理を実行する(ステップS204)。これにより、効率的に搬送を行なうことができる。
【0068】
(6)本実施形態では、減速領域と判定した場合(ステップS205において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、減速搬送処理を実行する(ステップS206)。これにより、障害物との接触の可能性がある場合に、容易に回避することができる。
【0069】
(7)本実施形態では、停止領域と判定した場合(ステップS205において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、停止処理を実行する(ステップS207)。これにより、障害物との接触の可能性が高い場合に、回避することができる。
【0070】
(8)本実施形態では、障害消失と判定した場合(ステップS208において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、搬送経路の作成処理(ステップS110)以降の処理を実行する。これにより、現在の状況を考慮して、効率的な搬送経路を作成することができる。例えば、タワークレーンC1周囲の3次元点群情報を参照して、効率的かつ的確な搬送経路を作り直すことができる。
【0071】
(9)本実施形態では、3次元計測器12aを、タワークレーンC1のジブC13の先端に設ける。これにより、上方から、吊荷C15の水平方向の幅を特定することができる。また、3次元計測器12bは、旋回フレームC11において、ジブC13側に設ける。これにより、水平方向から、吊荷C15の鉛直方向の高さを特定することができる。そして、幅及び高さにより、吊物全体の大きさを特定することができる。
【0072】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、揚重装置としてタワークレーンを想定したが、揚重により搬送する装置であれば、タワークレーンに限定されるものではない。
【0073】
・上記実施形態では、3次元計測器12a,12bには、例えば、障害物の3次元点群情報を取得するLiDAR技術を用いる。障害物の所在地を特定できる技術であれば、LiDAR技術を用いる場合に限定されるものではない。例えば、2つの撮像素子の視野角を用いて、障害物の位置を特定する3次元カメラを用いることも可能である。この場合、情報取得部211は、撮影画像における画像認識により、要素種別を特定するようにしてもよい。この場合には、評価情報記憶部23を用いて、要素種別に応じたスコア情報を取得することができる。
【0074】
・上記実施形態では、3次元計測器12a,12bを、それぞれタワークレーンC1のジブC13の先端、旋回フレームC11に設ける。3次元計測器12の設置場所は、これらに限定されるものではない。例えば、ジブC13の先端や旋回フレームC11に加えて或は代えて、ジブC13の旋回と連動する部分(旋回部)であるマストC10、運転席C12に設けて3次元点群情報を取得するようにしてもよい。これにより、多様な方向から、吊荷C15のサイズを特定することができる。
また、ジブC13の先端、旋回フレームC11に設けた3次元計測器12aのみを用いて、荷幅のみを特定してもよい。この場合には、荷幅及びフックC14から吊荷C15までの高さにより、吊下げ領域W0を生成する。
【0075】
・上記実施形態では、フックC14には、吊荷C15が吊り下げられている。ここで、吊荷C15を、吊物旋回装置を介して吊り下げるようにしてもよい。この吊物旋回装置としてはスカイジャスター(登録商標)を用いることができる。この吊物旋回装置は、フライホイールを回転可能に支持するジンバル枠に、フライホイールを傾動可能に支持する。そして、吊物旋回装置は、回転するフライホイールを傾動させることにより生じるジャイロ効果を利用して、吊荷C15の方向を制御する。そして、吊荷の点群情報の取得処理(ステップS106)において、吊荷C15の方向を変更した複数の3次元点群情報を取得する。この場合、吊荷C15の位置において、方向を変化させた点群クラスタの中で、最も大きい点群クラスタを特定し、この点群クラスタにより、吊荷C15のサイズを特定する。これにより、異なる方向に配置された点群クラスタを用いて、吊荷C15の的確なサイズを特定することができる。
【0076】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、搬送情報の設定処理を実行する(ステップS105)。ここでは、表示装置H13の管理画面の仮想空間において、搬送開始位置及び搬送目標位置を指定する。指定方法は、管理画面の仮想空間を用いた選択に限定されるものではない。例えば、設計情報記憶部22に記録された要素モデルを選択することにより指定してもよい。この場合には、BIMデータに記録された属性情報に基づいて重心位置を算出し、この重心位置において吊り下げるようにする。この場合、経路作成部212は、要素モデルを用いて、この重心位置での吊り下げによる荷幅を算出する。
【0077】
また、位置情報取得装置を用いて、指定するようにしてもよい。位置情報取得装置としては、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いることができる。この場合には、建築現場における作業員が所持するデバイスや、搬送対象物の資機材に貼付されたデバイスを用いて、搬送対象物の位置を特定する。
【0078】
また、搬送予定テーブルに、予め搬送開始位置及び搬送目標位置を設定しておいてもよい。この場合、管理端末30において、搬送予定テーブルにおける指定に基づいて、搬送情報を設定する。また、搬送予定テーブルに、搬送予定時刻を登録しておき、予定時刻になった場合に、管理端末30に搬送指示の確認を促すメッセージを出力してもよい。
【0079】
・上記実施形態では、フックC14の周囲に、監視範囲(W1,W2)を設定する。吊荷の吊下げ領域に近いほど、移動を制限する範囲であれば、監視範囲は2つに限定されるものではない。
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、吊荷の点群情報の取得処理を実行する(ステップS106)。吊荷の点群情報を取得するタイミングは、この段階に限定されるものではない。例えば、吊荷C15を所定の高さまで吊り上げた状態で、マッピング処理(ステップS103)を行なう。この場合には、タワークレーンC1周囲の3次元点群情報とともに、吊荷C15の3次元点群情報を取得する。
そして、支援サーバ20の制御部21は、クラスタリング処理(ステップS107)、吊荷のサイズの特定処理(ステップS108)の後、吊荷のサイズに応じて、支援サーバ20の制御部21が、高さ設定処理(ステップS104)を実行するようにしてもよい。
【0080】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記制御部が、
前記特定した吊荷のサイズに応じて、障害物を回避可能な搬送可能領域を特定し、
前記搬送可能領域において、前記障害物との距離に基づいて算出される評価値が基準値以下の搬送経路を設定することを特徴とする請求項1に記載の揚重支援システム。
【0081】
(b)前記制御部が、
前記特定した吊荷のサイズに応じて、吊荷位置に対して注意喚起範囲を設定し、
揚重中に取得した3次元計測情報において、前記注意喚起範囲に障害物を検知した場合には、障害対応処理を実行することを特徴とする請求項1又は(a)に記載の揚重支援システム。
【0082】
(c)前記3次元計測器は、前記揚重装置のジブの先端から、吊荷に向けて下方向の3次元計測情報を取得することを特徴とする請求項1、(a)又は(b)に記載の揚重支援システム。
(d)前記3次元計測器は、前記揚重装置の旋回部から、吊荷に向けて水平方向の3次元計測情報を取得する下方に向けて配置されていることを特徴とする請求項1、(a)~(c)のいずれか一つに記載の揚重支援システム。
【0083】
(e)前記吊荷には吊物旋回装置に接続されており、
前記吊物旋回装置により、前記吊荷を旋回させ、前記旋回された状態で複数の3次元計測情報を取得し、
前記制御部が、前記複数の3次元計測情報において、最も大きい形状を前記吊荷のサイズとして特定することを特徴とする請求項1、(a)~(d)のいずれか一つに記載の揚重支援システム。
【符号の説明】
【0084】
C1…タワークレーン、C10…マスト、C11…旋回フレーム、C12…運転席、C13…ジブ、C14…フック、C15…吊荷、10…制御ユニット、12,12a,12b…3次元計測器、13…撮像装置、14…駆動制御部、20…支援サーバ、21…制御部、211…情報取得部、212…経路作成部、213…領域設定部、214…搬送管理部、22…設計情報記憶部、23…評価情報記憶部、24…揚重情報記憶部、30…管理端末。