(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20250226BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B62D21/00 B
B62D25/20 C
B62D25/20 E
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2021007737
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】片山 伸哉
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-4849(JP,A)
【文献】特開2011-213246(JP,A)
【文献】特開2005-41247(JP,A)
【文献】特開2011-162159(JP,A)
【文献】特開2005-247178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270871(US,A1)
【文献】特開2013-63758(JP,A)
【文献】特開平8-239056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面を形成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの前部に位置するサスペンションフレームと、
前記サスペンションフレームの車幅方向中央よりも車幅方向外側において該サスペンションフレームに固定され車両後方に延びるフロアサイドメンバとを備え、
前記フロアサイドメン
バは、
前記サスペンションフレームから車幅方向外側に分岐し車幅方向外側に凸の弧状になっている第1部位と、
前記サスペンションフレームから車幅方向内側に分岐し車幅方向内側に凸の弧状になっている第2部位とを有することを特徴とす
る車両下部構造。
【請求項2】
前記フロアサイドメンバの第1部位の側面に第2部位の端面が接続されていて、
前記フロアサイドメンバの第2部位には、その下面から第1部位に向かって張り出し第1部位の下面に重なって接続される張出部が形成されていて、
前記第1部位の下面および前記第2部位の下面は、前記サスペンションフレームに近付くほど高くまたは低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項
1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記サスペンションフレームは、前記フロアサイドメンバの第2部位の張出部に重なっていて、これにより、前記フロアサイドメンバの第1部位、第2部位およびサスペンションフレームが、重なって接続されていることを特徴とする請求項
2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、
前記サイドシルよりも車両前方に位置するフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバと前記サイドシルとを連結するトルクボックスとを備え、
前記フロアサイドメンバは、前記トルクボックスに接続されていることを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項5】
当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びて前記フロアサイドメンバの第1部位よりも車幅方向外側に配置されるサイドシルと、
前記フロアパネルの下側で車幅方向に延びて前記フロアサイドメンバの第2部位よりも車両後方に配置されるロアクロスメンバと、
前記車両の後端から車両前方に延び前記ロアクロスメンバに接続されるリヤサイドメンバとを備え、
前記第1部位の後端部は、前記サイドシルの車幅方向内側の側面に接続されていて、
前記第2部位の後端部は、前記ロアクロスメンバに連結されていることを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項6】
当該車両下部構造はさらに、前記フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって上方に隆起して延びるセンタートンネルを備え、
前記フロアサイドメンバの第2部位は、前記サスペンションフレームから前記センタートンネルに次第に接近し隣接するように車両後方に延びていることを特徴とする請求項
1から
5のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項7】
当該車両下部構造はさらに、前記センタートンネルの内部に配置され該センタートンネルの2つの側壁の間を車幅方向に架橋する架橋部を備え、
前記架橋部は、前記フロアサイドメンバの第2部位のうち最も車幅方向内側に凸となっている箇所に隣接していることを特徴とする請求項
6に記載の車両下部構造。
【請求項8】
当該車両下部構造はさらに、前記フロアパネルの上側で車幅方向に延びるアッパクロスメンバを備え、
前記第1部位のうち最も車幅方向外側に凸となっている箇所と前記第2部位のうち最も車幅方向内側に凸となっている箇所は、前記フロアパネルを介して前記アッパクロスメンバに重なっていて前記フロアパネルとともに前記アッパクロスメンバの下面に接合されていることを特徴とする請求項
1から
7のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項9】
車両の床面を形成するフロアパネル
と、
前記フロアパネルの前部に位置するサスペンションフレームと、
前記サスペンションフレームの車幅方向中央よりも車幅方向外側において該サスペンションフレームに固定され車両後方に延びるフロアサイドメンバと
、
前記サスペンションフレームよりも後方に配置され前記フロアパネルの車幅方向中央から車幅方向外側に向かって車幅方向に延びるクロスメンバと、を備え、
前記フロアサイドメンバは
、
前記サスペンションフレームから車幅方向外側
に分岐する第1部位と、
前記サスペンションフレームから車幅方向内側に分岐
する第2部位と、
前記サスペンションフレームから前記第1部位と前記第2部位との間に分岐して車両後方に延びて前記クロスメンバに接続されている第3部位とを有することを特徴とする車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、例えばフロントサスペンションのサスペンションフレームと、車両前部で車両前後方向に延びるフロントサイドメンバと、フロアパネルの下側で車両前後方向に延びるフロアサイドメンバとを有する車両下部構造を備える。かかる車両下部構造では、サスペンションフレームを、フロントサイドメンバやフロアサイドメンバなどの複数の部材で支持することにより、車両前部の剛性を高めつつ、車両前部に伝達された衝撃を車両全体に分散して振動を抑制している。
【0003】
一方、車両旋回時には車幅方向に振動や荷重(例えば、遠心力や慣性力)が発生する。車幅方向の振動や荷重を分散することで、例えばフロアパネルの振動を抑制して車両のNV(Noise and Vibration)特性を向上させ、さらに車両の操舵安定性を高めることができる。このため、車両下部構造の車幅方向に作用する振動や荷重も分散することが求められている。
【0004】
特許文献1には、サスペンションメンバ13と、センターサイドメンバ32とを備えた車体構造が記載されている。センターサイドメンバ32は、車幅方向外側に配置されたサイドシル29の車幅方向内側に配置されていて、車体前部に配置された前側骨格部材51と車体後部に配置された後側骨格部材53とを連結する。
【0005】
特許文献1では、センターサイドメンバ32を、車両後方に行くに従って車幅方向外側に向かうように延在すると共に、センターサイドメンバ32の強度をサイドシル29の強度よりも大きく設定しているため、センターサイドメンバ32によって車体剛性が向上する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の車体構造では、センターサイドメンバ32にサスペンションメンバ13の前後方向延設部45が接続されている。このため、センターサイドメンバ32は、車両旋回時にサスペンションメンバ13に伝達される車幅方向成分を有する荷重(車両の遠心力や慣性力など)や振動を、サスペンションメンバ13の前後方向延設部45を介して受けることになる。しかしながら、特許文献1では、かかる荷重や振動の軽減のための工夫が特になされていない。そのため、車両旋回時などに発生するサスペンションメンバ13(サスペンションフレーム)およびフロアパネルの振動を抑制することができず、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることが困難である。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、サスペンションフレームおよびフロアパネルの振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる車両下部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの前部に位置するサスペンションフレームと、サスペンションフレームの車幅方向中央よりも車幅方向外側においてサスペンションフレームに固定され車両後方に延びるフロアサイドメンバとを備え、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから分岐して車両後方に延びる少なくとも2つの部位を有し、少なくとも2つの部位のうち1つの部位は、サスペンションフレームから車幅方向外側または車幅方向内側に分岐していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サスペンションフレームおよびフロアパネルの振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる車両下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る車両下部構造を示す下面図である。
【
図2】
図1の車両下部構造の一部を斜め下方から見下ろした状態を示す図である。
【
図3】
図1の車両下部構造の他の一部を斜め下方から見上げた状態を示す図である。
【
図4】
図1の車両下部構造の変形例を示す図である。
【
図5】
図1の車両下部構造の他の変形例を示す図である。
【
図6】
図1の車両下部構造のさらに他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの前部に位置するサスペンションフレームと、サスペンションフレームの車幅方向中央よりも車幅方向外側においてサスペンションフレームに固定され車両後方に延びるフロアサイドメンバとを備え、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから分岐して車両後方に延びる少なくとも2つの部位を有し、少なくとも2つの部位のうち1つの部位は、サスペンションフレームから車幅方向外側または車幅方向内側に分岐していることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、フロアサイドメンバにサスペンションフレームを固定している。このため、フロアサイドメンバは、例えば車両旋回時などにサスペンションフレームに作用する車幅方向成分を有する荷重(車両の遠心力や慣性力など)や振動を受けることになる。そこで上記構成のフロアサイドメンバは、サスペンションフレームから分岐して車両後方に延びる少なくとも2つの部位を有し、そのうちの1つの部位をサスペンションフレームから車幅方向外側または車幅方向内側に分岐させている。
【0014】
このため、フロアサイドメンバでは、サスペンションフレームから受けた荷重や振動を、サスペンションフレームから分岐して車両後方に延びる少なくとも2つの部位に伝達して車両後方に効率的に分散させて逃がすことができる。また、1つの部位が車幅方向内側に分岐して車両後方に延びていると、フロアパネルの車幅方向内側が補強されるので、フロアパネルのフロア振動を抑制したり、捩り剛性を高めたりすることができる。一方、1つの部位が車幅方向外側に傾斜して車両後方に分岐していると、車幅方向外側に荷重や振動を逃がすことができ、さらに、この1つの部位よりも車幅方向内側に位置する他の部位によって、フロアパネルの車幅方向内側が補強することができる。このため、フロアパネルのフロア振動や捩り振動を抑制することができる。したがって上記構成によれば、車両旋回時などに発生するサスペンションフレームおよびフロアパネルの振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる。
【0015】
上記のフロアサイドメンバの少なくとも2つの部位は、サスペンションフレームから車幅方向外側に分岐し車幅方向外側に凸の弧状になっている第1部位と、サスペンションフレームから車幅方向内側に分岐し車幅方向内側に凸の弧状になっている第2部位とを有するとよい。
【0016】
このようにフロアサイドメンバでは、第1部位および第2部位が弧状になっている。なお弧状とは、円の一部である円弧状に限らず、楕円の一部である弧状も含んでいる。このため上記構成では、サスペンションフレームから第1部位および第2部位に伝達される振動や荷重が、第1部位および第2部位で局所的に集中することを回避することができ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0017】
上記のフロアサイドメンバの第1部位の側面に第2部位の端面が接続されていて、フロアサイドメンバの第2部位には、その下面から第1部位に向かって張り出し第1部位の下面に重なって接続される張出部が形成されていて、第1部位の下面および第2部位の下面は、サスペンションフレームに近付くほど高くまたは低くなるように傾斜しているとよい。
【0018】
このようにフロアサイドメンバでは、第1部位の側面に第2部位の端面が接続され、さらに第1部位の下面と、第2部位の下面から第1部位に向かって張り出した張出部とが重なって接続されることで、第1部位と第2部位の接続剛性を高めることができる。なお接続とは、各部材を接合する形態やボルトで共締めする形態を含む。
【0019】
また、フロアサイドメンバでは、第1部位の下面と第2部位の下面がサスペンションフレームに近づくほど高くまたは低くなるように傾斜しているため、第1部位の下面および第2部位の下面のうち最も高いまたは低い位置でサスペンションフレームを固定することができる。
【0020】
さらに一例として、第1部位の下面の後端部および第2部位の下面の後端部と、第1部位の下面および第2部位の下面のうちサスペンションフレームが固定される箇所とが異なる高さに設定されている場合を想定する。このような場合であっても、上記構成では、第1部位の下面と第2部位の下面がサスペンションフレームに近づくほど高くまたは低くなるように傾斜しているため、サスペンションフレームから第1部位の下面の後端部および第2部位の下面の後端部に向かって荷重や振動を効率的に伝達することができる。
【0021】
上記のサスペンションフレームは、フロアサイドメンバの第2部位の張出部に重なっていて、これにより、フロアサイドメンバの第1部位、第2部位およびサスペンションフレームが、重なって接続されているとよい。
【0022】
上記構成によれば、サスペンションフレーム、フロアサイドメンバの第1部位の下面および第2部位の張出部を、例えば重ねて接合したり、ボルトなどで共締めしたりすることで接続することができる。このため、サスペンションフレーム、フロアサイドメンバの第1部位および第2部位の接続剛性を高めることができる。また、サスペンションフレーム、フロアサイドメンバの第1部位の下面および第2部位の張出部を上下方向に重ねて接続するため、サスペンションフレームからフロアサイドメンバの第1部位および第2部位に荷重や振動を伝達しやすくなる。
【0023】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシルと、サイドシルよりも車両前方に位置するフロントサイドメンバと、フロントサイドメンバとサイドシルとを連結するトルクボックスとを備え、フロアサイドメンバは、トルクボックスに接続されているとよい。
【0024】
これにより、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームに加えて、フロントサイドメンバとサイドシルとを連結するトルクボックスにも接続されている。このため、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから受けた荷重や振動をトルクボックスまで伝達して分散させて逃がすことができる。
【0025】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びてフロアサイドメンバの第1部位よりも車幅方向外側に配置されるサイドシルと、フロアパネルの下側で車幅方向に延びてフロアサイドメンバの第2部位よりも車両後方に配置されるロアクロスメンバと、車両の後端から車両前方に延びロアクロスメンバに接続されるリヤサイドメンバとを備え、第1部位の後端部は、サイドシルの車幅方向内側の側面に接続されていて、第2部位の後端部は、ロアクロスメンバに連結されているとよい。
【0026】
このように、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから分岐した第1部位の後端部が剛性の高いサイドシルに接続され、第2部位の後端部がロアクロスメンバに連結されている。このため、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから受けた荷重や振動を、第1部位および第2部位を介してサイドシルおよびロアクロスメンバまで伝達して分散させて車両全体に逃がすことができる。また、第1部位が剛性の高いサイドシルに接続されるので、第1部位の振動を抑制することができる。
【0027】
なお一例として、第1部位の後端部がサイドシルだけでなくロアクロスメンバにも連結されていて、さらに第2部位の後端部が第1部位の後端部に連結されている場合、第2部位の後端部は、ロアクロスメンバに間接的に連結されている。この場合には、フロアサイドメンバは、第2部位を介してロアクロスメンバだけでなくサイドシルにも荷重や振動を伝達して分散させることができる。また、第2部位の後端部がロアクロスメンバに直接的に連結されている場合には、フロアサイドメンバは、第2部位を介してロアクロスメンバだけでなくさらにリヤサイドメンバにも荷重や振動を伝達して分散させることができる。
【0028】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって上方に隆起して延びるセンタートンネルを備え、フロアサイドメンバの第2部位は、サスペンションフレームからセンタートンネルに次第に接近し隣接するように車両後方に延びているとよい。
【0029】
これにより、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから第2部位に伝達された荷重や振動を、センタートンネルまで伝達して分散させることができる。このため、フロアパネルのフロア振動を抑制することができる。また、フロアパネルの振動面をセンタートンネルによって車幅方向に区画することができるので、フロアパネルの面振動を抑制することができる。なお第2部位がセンタートンネルに隣接するとは、第2部位がセンタートンネルに接触せず近接して配置されたり、センタートンネルに当接あるいは接続されたりしている形態を含む。
【0030】
上記の車両下部構造はさらに、センタートンネルの内部に配置されセンタートンネルの2つの側壁の間を車幅方向に架橋する架橋部を備え、架橋部は、フロアサイドメンバの第2部位のうち最も車幅方向内側に凸となっている箇所に隣接しているとよい。
【0031】
これにより、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから第2部位に伝達された荷重や振動を、センタートンネルのうち内部に架橋部が配置されて剛性が高くなっている部位に伝達することができる。またセンタートンネルの内部に架橋部を配置することでフロアパネルの剛性を高めることができる。したがって、フロアパネルのフロア振動を抑制することができる。
【0032】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの上側で車幅方向に延びるアッパクロスメンバを備え、第1部位のうち最も車幅方向外側に凸となっている箇所と第2部位のうち最も車幅方向内側に凸となっている箇所は、フロアパネルを介してアッパクロスメンバに重なっていてフロアパネルとともにアッパクロスメンバの下面に接合されているとよい。
【0033】
これにより、フロアサイドメンバは、サスペンションフレームから第1部位および第2部位に伝達された荷重や振動を、アッパクロスメンバまで伝達して分散させることができる。また、フロアサイドメンバの第1部位と第2部位がアッパクロスメンバによって連結されるので、これら各部材の剛性を高めることができ、これら各部材の振動を抑制することができる。
【実施例】
【0034】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また本実施例において、接続とは、接続対象の部材同士が一体である形態や、別々の部材をつなぎ合わせる接合という形態を含む。
【0035】
図1は、本発明の実施例に係る車両下部構造100を示す下面図である。図中では車両下部構造100を車両下方から見た状態を示している。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0036】
車両下部構造100は、車両の床面を形成するフロアパネル102と、フロントサスペンション104とを備える。フロントサスペンション104は、例えばフロントサスペンションフレーム106と、一対のサスペンションタワー108、110とで構成されている。
【0037】
フロントサスペンションフレーム106は、フロアパネル102の下側の前部に位置する部材であって、本体部112と、一対の前方延長部114、116と、一対の後方延長部118、120とを有する。前方延長部114、116は、本体部112の車幅方向外側において本体部112から車両前方に延びる部位である。後方延長部118、120は、本体部112の車幅方向外側において本体部112から車両後方に延びる部位である。
【0038】
フロントサスペンションフレーム106には、車両旋回時などに発生する車幅方向成分を有する荷重(車両の遠心力や慣性力など)や振動が伝達される。そこで車両下部構造100では、フロントサスペンションフレーム106に車両旋回時などに伝達される荷重や振動を車両後方に効率的に分散させて逃がすとともに、フロアパネル102の車幅方向内側を補強する構成を採用した。
【0039】
すなわち車両下部構造100は、一対のフロアサイドメンバ122、124を備える。フロアサイドメンバ122、124は、フロントサスペンションフレーム106に固定されるサスフレ固定部126、128を有する。フロアサイドメンバ122、124は、サスフレ固定部126、128を介してフロントサスペンションフレーム106に伝達される荷重や振動を受ける。
【0040】
フロアサイドメンバ122、124のサスフレ固定部126、128には、図示のように、フロントサスペンションフレーム106の車幅方向中央の本体部112よりも車幅方向外側に位置する後方延長部118、120の例えば後端部130、132が固定される。
【0041】
フロアサイドメンバ122、124はさらに、第1部位134、136と第2部位138、140とを有する。第1部位134、136および第2部位138、140は、サスフレ固定部126、128に固定されたフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132から分岐して車両後方に延びる部位である。
【0042】
第1部位134、136は、フロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132から車幅方向外側に分岐し車幅方向外側に凸の弧状になっている。第2部位138、140は、フロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132から車幅方向内側に分岐し車幅方向内側に凸の弧状になっている。なお弧状とは、円の一部である円弧状に限らず、楕円の一部である弧状も含んでいる。
【0043】
このため車両下部構造100では、フロアサイドメンバ122、124がサスフレ固定部126、128を介してフロントサスペンションフレーム106から受けた荷重や振動を、フロントサスペンションフレーム106から分岐して車両後方に延びる第1部位134、136および第2部位138、140に伝達して車両後方に効率的に分散させて逃がすことができる。また車両下部構造100では、フロアサイドメンバ122、124の第2部位138、140が車幅方向内側に分岐して車両後方に延びているため、フロアパネル102の車幅方向内側を補強することができる。このため、フロアパネル102のフロア振動を抑制したり、捩り剛性を高めたりすることができる。したがって車両下部構造100によれば、車両旋回時などに発生するフロントサスペンションフレーム106およびフロアパネル102の振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる。
【0044】
また車両下部構造100では、第1部位134、136および第2部位138、140が弧状である。このため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126、128を介して第1部位134、136および第2部位138、140に伝達される振動や荷重が、第1部位134、136および第2部位138、140で局所的に集中することを回避することができ、振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0045】
車両下部構造100はさらに、一対のサイドシル142、144と、一対のフロントサイドメンバ146、148とを備える。サイドシル142、144は、フロアパネル102の縁に沿って車両前後方向に延びていて、フロアサイドメンバ122、124の第1部位134、136よりも車幅方向外側に配置される。フロントサイドメンバ146、148は、サイドシル142、144よりも車両前方に位置していて車両前後方向に延びている。
【0046】
車両下部構造100はさらに、一対のトルクボックス150、152と、連結部材154とを備える。トルクボックス150、152は、フロントサイドメンバ146、148とサイドシル142、144とを連結する。連結部材154は、トルクボックス150、152同士を連結する。
【0047】
フロアサイドメンバ122、124では、第1部位134、136の前端部156、158が、トルクボックス150、152と連結部材154との接合面159(
図2参照)を跨ぐようにして、トルクボックス150、152および連結部材154を下方から接続している。これにより、トルクボックス150、152と連結部材154の接続剛性を高めることができる。また、フロントサスペンションフレーム106から左右いずれかの側のサスフレ固定部126、128を介して第1部位134、136に伝達された振動や荷重を、第1部位134、136の前端部156、158から連結部材154を介して反対側のトルクボックス150、152に分散させて逃がすことができる。
【0048】
またフロアサイドメンバ122、124では、第2部位138、140の前端部160、162が、トルクボックス150、152を下方から接続している。このため、フロアサイドメンバ122、124では、サスフレ固定部126、128を介して第2部位138、140に伝達された振動や荷重を、第2部位138、140の前端部160、162からトルクボックス150、152に分散させて逃がすことができる。
【0049】
このように、フロアサイドメンバ122、124では、サスフレ固定部126、128において、第1部位134、136の前端部156、158がトルクボックス150、152および連結部材154に接続され、第2部位138、140の前端部160、162がトルクボックス150、152に接続されている。このため、フロアサイドメンバ122、124では、サスフレ固定部126、128を介して第1部位134、136および第2部位138、140に伝達された振動や荷重を、例えば
図1の矢印A、Bに示すようにサスフレ固定部126、128から四方に分散させて逃がすことができる。
【0050】
車両下部構造100はさらに、ロアクロスメンバ164と、一対のリヤサイドメンバ166、168とを備える。ロアクロスメンバ164は、フロアパネル102の下側で車幅方向に延びていてフロアサイドメンバ122、124の第2部位138、140よりも車両後方に配置され、さらにサイドシル142、144同士を連結する。リヤサイドメンバ166、168は、車両の後端170から車両前方に延びていてロアクロスメンバ164に接続される。なおリヤサイドメンバ166、168には、不図示の後輪用の揺動するサスペンションが固定される一対のサスペンション固定部171、173が接続されている。
【0051】
フロアサイドメンバ122、124の第1部位134、136の後端部172、174は、サイドシル142、144の車幅方向内側の側面176、178およびロアクロスメンバ164に接続されている。第2部位138、140の後端部180、182は、第1部位134、136の後端部172、174に接続され、これらの後端部172、174を介してロアクロスメンバ164に間接的に連結されている。
【0052】
このように、フロアサイドメンバ122、124は、フロントサスペンションフレーム106から分岐した第1部位134、136の後端部172、174が剛性の高いサイドシル142、144に接続され、第2部位138、140の後端部180、182がロアクロスメンバ164に間接的に連結されている。
【0053】
このため、フロアサイドメンバ122、124は、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126、128を介して伝達された荷重や振動を、第1部位134、136および第2部位138、140を介してサイドシル142、144およびロアクロスメンバ164まで伝達して分散させて車両全体に逃がすことができる。
【0054】
また、第1部位134、136が剛性の高いサイドシル142、144に接続されるので、第1部位134、136の振動を抑制することができる。さらにフロアサイドメンバ122、124は、第2部位138、140の後端部180、182がロアクロスメンバ164に間接的に連結されているため、第2部位138、140を介してロアクロスメンバ164だけでなくサイドシル142、144にも荷重や振動を伝達して分散させることができる。
【0055】
車両下部構造100はさらに、センタートンネル184と、架橋部186と、アッパクロスメンバ188とを備える。センタートンネル184は、フロアパネル102の車幅方向の中央で車両前後方向にわたって上方に隆起して延びている。架橋部186は、センタートンネル184の内部に配置されていて、センタートンネル184の2つの側壁190、192の間を車幅方向に架橋する。アッパクロスメンバ188は、フロアパネル102の上側で車幅方向に延びていて、サイドシル142、144同士を連結する。
【0056】
フロアサイドメンバ122、124の第2部位138、140は、フロントサスペンションフレーム106から分岐して、図示のようにセンタートンネル184に次第に接近し隣接するように車両後方に延びている。このためフロアサイドメンバ122、124は、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126、128を介して第2部位138、140に伝達された荷重や振動を、センタートンネル184まで伝達して分散させることができる。これにより、フロアパネル102のフロア振動を抑制することができる。
【0057】
また、フロアパネル102の振動面をセンタートンネル184によって車幅方向に区画することができるので、フロアパネル102の面振動を抑制することができる。なおここでは、第2部位138、140は図示のようにセンタートンネル184に接触せず近接して配置されているが、これに限られず、センタートンネル184に当接あるいは接続されていてもよい。
【0058】
架橋部186は、フロアサイドメンバ122、124の第2部位138、140のうち最も車幅方向内側に凸となっている箇所194、196に隣接している。これにより、フロアサイドメンバ122、124は、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126、128を介して第2部位138、140に伝達された荷重や振動を、センタートンネル184のうち内部に架橋部186が配置されて剛性が高くなっている部位に伝達することができる。また、センタートンネル184の内部に架橋部186を配置することでフロアパネル102の剛性を高めることができる。したがって、フロアパネル102のフロア振動を抑制することができる。
【0059】
さらにフロアサイドメンバ122、124では、第1部位134、136のうち最も車幅方向外側に凸となっている箇所198、200と第2部位138、140のうち最も車幅方向内側に凸となっている箇所194、196は、フロアパネル102を介してアッパクロスメンバ188に重なっていて、フロアパネル102とともにアッパクロスメンバ188の下面に接合されている。
【0060】
これによりフロアサイドメンバ122、124は、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126、128を介して第1部位134、136および第2部位138、140に伝達された荷重や振動を、アッパクロスメンバ188まで伝達して分散させることができる。また、フロアサイドメンバ122、124の第1部位134、136および第2部位138、140がアッパクロスメンバ188によって連結されるので、これら各部材の剛性を高めることができ、これら各部材の振動を抑制することができる。
【0061】
図2は、
図1の車両下部構造100の一部を斜め下方から見下ろした状態を示す図である。図中では、フロアサイドメンバ122のサスフレ固定部126およびその周辺の構成を示している。なお図示は省略するが、フロアサイドメンバ124のサスフレ固定部128およびその周辺も同様の構成を有する。
【0062】
フロアサイドメンバ122では、第1部位134の側面202に第2部位138の端面204が接続されている。さらに第2部位138には、その下面206から第1部位134に向かって張り出した張出部208が形成されている。第2部位138の張出部208は、第1部位134の下面210に重なって接続されている。さらにフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118の後端部130は、図示のように、フロアサイドメンバ122の第2部位138の張出部208に重なって接続されている。
【0063】
これにより車両下部構造100では、サスフレ固定部126において、フロアサイドメンバ122の第1部位134の下面210、第2部位138の張出部208およびフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118の後端部130を、例えば重ねて接合したり、図示のようにボルト212などで共締めしたりすることで接続することができる。
【0064】
このため、フロントサスペンションフレーム106、フロアサイドメンバ122の第1部位134および第2部位138の接続剛性を高めることができる。また、フロアサイドメンバ122の第1部位134の下面210、第2部位138の張出部208およびフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118の後端部130を上下方向に重ねて接続するため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126を介してフロアサイドメンバ122の第1部位134および第2部位138に荷重や振動を伝達しやすくなる。
【0065】
車両下部構造100はさらに、図中に点線で示す補強部材214、216を備える。補強部材214、216は、フロアサイドメンバ122の第1部位134の内部のうち、サスフレ固定部126に上下方向に重なる位置に配置されている。また補強部材214、216は、第1部位134の内部で壁面として機能し、第1部位134の側面202、下面210およびフロアパネル102の下面218とともに略直方体の閉断面構造を形成する。このようにフロアサイドメンバ122では、補強部材214、216によって第1部位134の内部に閉断面構造を形成することができるため、サスフレ固定部126の周辺の剛性を高めて振動を抑制することができる。
【0066】
図3は、
図1の車両下部構造100の他の一部を斜め下方から見上げた状態を示す図である。図中では、フロアサイドメンバ124のサスフレ固定部128およびその周辺の構成を示している。なお図示は省略するが、フロアサイドメンバ122のサスフレ固定部126およびその周辺も同様の構成を有する。
【0067】
フロアサイドメンバ124では、図示のように第1部位136の下面220および第2部位140の下面222が、第1部位136の後端部174および第2部位140の後端部182から、フロントサスペンションフレーム106の後方延長部120の後端部132に近付くほど低くなるように傾斜している。なお図中の点線C、Dは、第1部位136の後端部174および第2部位140の後端部182の高さをそれぞれ示している。
【0068】
このようにフロアサイドメンバ124では、第1部位136の下面220と第2部位140の下面222が後端部174、182からフロントサスペンションフレーム106に近づくほど低くなるように傾斜している。このため車両下部構造100では、第1部位136の下面220および第2部位140の下面222のうち最も低い位置にサスフレ固定部128を設定することができ、このサスフレ固定部128にフロントサスペンションフレーム106を固定することができる。また、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部128を介してフロアサイドメンバ124の第1部位136および第2部位140に伝達された荷重や振動を、第1部位136の下面220の後端部174および第2部位140の下面222の後端部182に向かって効率的に伝達することができる。
【0069】
なおここでは、フロアサイドメンバ124の第1部位136の下面220および第2部位140の下面222は、第1部位136の後端部174および第2部位140の後端部182から、フロントサスペンションフレーム106に近付くほど低くなるように傾斜しているが、これに限られず、フロントサスペンションフレーム106に近付くほど高くなるように傾斜してもよい。このようにすれば、第1部位136の下面220および第2部位140の下面222のうち最も高い位置にサスフレ固定部128を設定することができ、このサスフレ固定部128にフロントサスペンションフレーム106を固定することができる。
【0070】
図4は、
図1の車両下部構造100の変形例を示す図である。変形例の車両下部構造100Aは、フロアサイドメンバ122A、124Aとロアクロスメンバ164Aとを備える点で上記の車両下部構造100と異なる。
【0071】
フロアサイドメンバ122A、124Aは、第1部位134A、136Aと第2部位138A、140Aとを有する。第1部位134A、136Aおよび第2部位138A、140Aは、サスフレ固定部126A、128Aに固定されたフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132から分岐して車両後方に延びる部位である。
【0072】
第1部位134A、136Aは、
図1に示すリヤサイドメンバ166、168と一体化している。第1部位134A、136Aは、
図4に示すようにフロントサスペンションフレーム106から車幅方向外側に分岐し車幅方向外側に凸の弧状になり、さらにサイドシル142、144の車幅方向内側でサイドシル142、144に沿って車両後方に延びている。なおリヤサイドメンバ166、168の一部に相当する部位166A、168Aは、
図4に示すように第1部位134A、136Aおよびロアクロスメンバ164Aに接続されている。
【0073】
ロアクロスメンバ164Aは、車幅方向に延びていてサイドシル142、144に代えて、フロアサイドメンバ122A、124Aの第1部位134A、136A同士を連結している。また第2部位138A、140Aは、フロントサスペンションフレーム106から車幅方向内側に分岐し車幅方向内側に凸の弧状になり、さらに後端部180A、182Aにおいて第1部位134A、136Aおよびロアクロスメンバ164Aに直接的に接続されている。
【0074】
このため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126A、128Aを介してフロアサイドメンバ122A、124Aの第2部位138A、140Aに伝達された荷重や振動を、第2部位138A、140Aの後端部180A、182Aを介して、第1部位134A、136Aおよびロアクロスメンバ164Aに伝達して分散させることができる。
【0075】
さらに車両下部構造100Aでは、フロアサイドメンバ122A、124Aの第1部位134A、136Aに伝達された荷重や振動を、第1部位134A、136Aを介してサイドシル142、144に伝達したり、さらに車両後方に伝達したりすることができる。このように車両下部構造100Aでは、フロントサスペンションフレーム106から受けた荷重や振動を、フロントサスペンションフレーム106から分岐して車両後方に延びる第1部位134A、136Aおよび第2部位138A、140Aに伝達して車両後方に効率的に分散させて逃がすことができる。
【0076】
また車両下部構造100Aでは、フロアサイドメンバ122A、124Aの第2部位138A、140Aが車幅方向内側に分岐して車両後方に延びているため、フロアパネル102の車幅方向内側を補強することができる。このため、フロアパネル102のフロア振動を抑制したり、捩り剛性を高めたりすることができる。したがって車両下部構造100Aによれば、車両旋回時などに発生するフロントサスペンションフレーム106およびフロアパネル102の振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる。
【0077】
図5は、
図1の車両下部構造100の他の変形例を示す図である。変形例の車両下部構造100Bは、フロアサイドメンバ122B、124Bとロアクロスメンバ164Bを備える点で上記の車両下部構造100と異なる。
【0078】
フロアサイドメンバ122B、124Bは、第1部位134B、136Bと第2部位138B、140Bとを有する。第1部位134B、136Bおよび第2部位138B、140Bは、サスフレ固定部126B、128Bに固定されたフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132から分岐して車両後方に延びる部位である。
【0079】
第1部位134B、136Bは、
図1に示すリヤサイドメンバ166、168と一体化している。第1部位134B、136Bは、図示のようにフロントサスペンションフレーム106から車幅方向外側に分岐し車幅方向外側に凸の弧状になり、さらにサイドシル142、144の車幅方向内側でサイドシル142、144に沿って車両後方に延びている。
【0080】
ロアクロスメンバ164Bは、車幅方向に延びていてサイドシル142、144に代えて、フロアサイドメンバ122B、124Bの第1部位134B、136B同士を連結している。またロアクロスメンバ164Bは、両端部224、226を有する。この両端部224、226は、図示のように車幅方向外側に向かうほど車両前後方向に拡張された形状を有する。さらに第2部位138B、140Bは、フロントサスペンションフレーム106から車幅方向内側に分岐し車幅方向内側に凸の弧状になり、さらに後端部180B、182Bにおいてロアクロスメンバ164Bの両端部224、226に直接的に接続されている。
【0081】
このため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126B、128Bを介してフロアサイドメンバ122B、124Bの第2部位138B、140Bに伝達された荷重や振動を、第2部位138B、140Bの後端部180B、182Bからロアクロスメンバ164Bの両端部224、226に伝達して、第1部位134B、136Bおよびロアクロスメンバ164Bに分散させることができる。
【0082】
さらに車両下部構造100Bでは、フロアサイドメンバ122B、124Bの第1部位134B、136Bに伝達された荷重や振動を、第1部位134B、136Bを介してサイドシル142、144に伝達したり、さらに車両後方に伝達したりすることができる。このように車両下部構造100Bでは、フロントサスペンションフレーム106から受けた荷重や振動を、フロントサスペンションフレーム106から分岐して車両後方に延びる第1部位134B、136Bおよび第2部位138B、140Bに伝達して車両後方に効率的に分散させて逃がすことができる。
【0083】
また車両下部構造100Bでは、フロアサイドメンバ122B、124Bの第2部位138B、140Bが車幅方向内側に分岐して車両後方に延びているため、フロアパネル102の車幅方向内側を補強することができる。このため、フロアパネル102のフロア振動を抑制したり、捩り剛性を高めたりすることができる。したがって車両下部構造100Bによれば、車両旋回時などのフロントサスペンションフレーム106およびフロアパネル102の振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる。
【0084】
図6は、
図1の車両下部構造100のさらに他の変形例を示す図である。変形例の車両下部構造100Cは、フロアサイドメンバ122C、124Cとロアクロスメンバ164Cを備える点で上記の車両下部構造100と異なる。
【0085】
フロアサイドメンバ122C、124Cは、第1部位134C、136Cと第2部位138C、140Cに加え、センターサイドメンバ228、230とを有する。第1部位134C、136C、第2部位138C、140Cおよびセンターサイドメンバ228、230は、サスフレ固定部126C、128Cに固定されたフロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132から分岐して車両後方に延びる部位である。
【0086】
第1部位134C、136Cは、フロントサスペンションフレーム106から車幅方向外側に分岐して直線状に傾斜し、さらにサイドシル142、144の車幅方向内側でサイドシル142、144に沿って車両後方に延びている。また第1部位134C、136Cは、後端部232、234がサイドシル142、144およびロアクロスメンバ164Cに接続されている。
【0087】
このため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126C、128Cを介してフロアサイドメンバ122C、124Cの第1部位134C、136Cに伝達された荷重や振動を、第1部位134C、136Cの後端部232、234からサイドシル142、144およびロアクロスメンバ164Cに伝達して分散させることができる。
【0088】
第2部位138C、140Cは、フロントサスペンションフレーム106から車幅方向内側に分岐して直線状に傾斜し、さらにセンタートンネル184に隣接するように車両後方に延びている。また第2部位138C、140Cは、後端部180C、182Cがロアクロスメンバ164Cに接続されている。
【0089】
このため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126C、128Cを介してフロアサイドメンバ122C、124Cの第2部位138C、140Cに伝達された荷重や振動を、第2部位138C、140Cの後端部180C、182Cからロアクロスメンバ164Cに伝達して分散させることができる。
【0090】
センターサイドメンバ228、230は、フロントサスペンションフレーム106から第1部位134C、136Cと第2部位138C、140Cの間に分岐し車両後方に直線状に延びていて、さらに途中で車幅方向外側に直線状に傾斜している。またセンターサイドメンバ228、230は、後端部236、238がロアクロスメンバ164Cに接続されている。
【0091】
このため、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126C、128Cを介してフロアサイドメンバ122C、124Cのセンターサイドメンバ228、230に伝達された荷重や振動を、センターサイドメンバ228、230の後端部236、238からロアクロスメンバ164Cに伝達して分散させることができる。
【0092】
なおセンターサイドメンバ228、230は、フロントサスペンションフレーム106から分岐して車両後方に直線状に延びる途中で、車幅方向外側に直線状に傾斜しているが、これに限定されず、車幅方向外側に傾斜することなく、フロントサスペンションフレーム106から分岐して後端部236、238まで直線状に延びるようにしてもよい。
【0093】
サスフレ固定部126C、128Cは、第1部位134C、136C、第2部位138C、140Cおよびセンターサイドメンバ228、230が上下方向に重ねられて接合されて形成されている。さらにサスフレ固定部126C、128Cには、フロントサスペンションフレーム106の後方延長部118、120の後端部130、132が下方から重ねられる。このため、サスフレ固定部126C、128Cは、フロントサスペンションフレーム106を接合したり、あるいはボルトなどで共締めしたりすることで、フロントサスペンションフレーム106を固定することができる。
【0094】
このように車両下部構造100Cでは、フロントサスペンションフレーム106からサスフレ固定部126C、128Cを介してフロアサイドメンバ122C、124Cに伝達された荷重や振動を、フロントサスペンションフレーム106から分岐して車両後方に延びる第1部位134C、136C、第2部位138C、140Cおよびセンターサイドメンバ228、230に伝達して車両後方に効率的に分散させて逃がすことができる。
【0095】
また車両下部構造100Cでは、フロアサイドメンバ122C、124Cの第2部位138C、140Cが車幅方向内側に分岐して車両後方に延びているため、フロアパネル102の車幅方向内側を補強することができる。このため、フロアパネル102のフロア振動を抑制したり、捩り剛性を高めたりすることができる。したがって車両下部構造100Cによれば、車両旋回時などのフロントサスペンションフレーム106およびフロアパネル102の振動を抑制して、車両の操舵安定性およびNV特性を向上させることができる。
【0096】
なお車両下部構造100Cでは、フロアサイドメンバ122C、124Cが、フロントサスペンションフレーム106から第1部位134C、136C、第2部位138C、140Cおよびセンターサイドメンバ228、230に分岐する構成としたが、これに限定されない。一例として、フロアサイドメンバ122C、124Cは、フロントサスペンションフレーム106から第1部位134C、136Cと、センターサイドメンバ228、230のような車両後方に延びる適宜のメンバとに分岐したり、この適宜のメンバと第2部位138C、140Cとに分岐したりしてもよい。
【0097】
すなわち上記車両下部構造100、100A、100B、100Cの各フロアサイドメンバ122、124、122A、124A、122B、124B、122C、124Cは、フロントサスペンションフレーム106から分岐して車両後方に延びる少なくとも2つの部位を有していて、少なくとも2つの部位のうち1つの部位は、フロントサスペンションフレーム106から車幅方向外側または車幅方向内側に分岐していればよい。この1つの部位が車幅方向外側に分岐していれば、車幅方向外側に振動や荷重を逃がすことができ、車幅方向内側に分岐していれば、車幅方向内側に振動や荷重を逃がすことができ、さらにフロアパネル102の車幅方向内側を補強することもできる。
【0098】
また上記車両下部構造100、100A、100B、100Cでは、各フロアサイドメンバ122、124、122A、124A、122B、124B、122C、124Cをフロアパネル102の下面に配置したが、これに限られず、フロアパネル102の上面に配置してもよい。さらに各フロアサイドメンバ122、124、122A、124A、122B、124B、122C、124Cは、各部位を別部材で構成したが、これに限られず、各部位を一体化した構成としてもよい。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、車両下部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
100、100A、100B、100C…車両下部構造、102…フロアパネル、104…フロントサスペンション、106…フロントサスペンションフレーム、108、110…サスペンションタワー、112…本体部、114、116…前方延長部、118、120…後方延長部、122、122A、122B、122C、124、124A、124B、124C…フロアサイドメンバ、126、126A、126B、126C、128、128A、128B、128C…サスフレ固定部、130、132…後方延長部の後端部、134、134A、134B、134C、136、136A、136B、136C…第1部位、138、138A、138B、138C、140、140A、140B、140C…第2部位、142、144…サイドシル、146、148…フロントサイドメンバ、150、152…トルクボックス、154…連結部材、156、158…第1部位の前端部、159…接合面、160、162…第2部位の前端部、164、164A、164B、164C…ロアクロスメンバ、166、168…リヤサイドメンバ、166A、168Aリヤサイドメンバの部位、170…車両の後端、171、173…サスペンション固定部、172、174、232、234…第1部位の後端部、176、178…サイドシルの側面、180、180A、180B、180C、182、182A、182B、182C…第2部位の後端部、184…センタートンネル、186…架橋部、188…アッパクロスメンバ、190、192…センタートンネルの側壁、194、196…第2部位の箇所、198、200…第1部位の箇所、202…第1部位の側面、204…第2部位の端面、206、222…第2部位の下面、208…第2部位の張出部、210、220…第1部位の下面、212…ボルト、214、216…補強部材、218…フロアパネルの下面、224、226…ロアクロスメンバの両端部、228、230…センターサイドメンバ、236、238…センターサイドメンバの後端部