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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021011894
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115342
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 敬之
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-066988(JP,A)
【文献】特開2018-122707(JP,A)
【文献】特開2016-030490(JP,A)
【文献】特開2017-001584(JP,A)
【文献】特開2019-199210(JP,A)
【文献】特開2018-167717(JP,A)
【文献】特開2011-143795(JP,A)
【文献】特開2010-006095(JP,A)
【文献】特開2016-137749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0189322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド面を有するトレッドを備えたタイヤであって、
上記トレッドが、
(1)上記タイヤの赤道面よりも表側に位置する第一周方向溝、
(2)上記赤道面よりも裏側に位置する第二周方向溝、
及び
(3)上記第二周方向溝よりも裏側に位置する第三周方向溝
を有しており、
上記第一周方向溝(1)が、
(1-1)表側壁及び裏側壁を有するメインセクション
並びに
(1-2)上記表側壁から上記トレッド面に至っており、その傾斜角度θ1sが上記表側壁の傾斜角度θ1fよりも大きいサブセクション
を有しており、
上記メインセクションの幅W1mが、上記第二周方向溝の幅W2よりも小さく、かつ上記第三周方向溝の幅W3よりも小さく、
上記サブセクションの幅W1s(mm)が下記数式を満たすタイヤ。
1.0 * cosθ1f ≦ W1s ≦ 5.0 * cosθ1f
【請求項2】
上記メインセクションの幅W1mの、上記トレッド面の幅Twに対する比率が、1.0%以上5.0%以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
上記表側壁の傾斜角度θ1fが0°以上45°以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
上記サブセクションの傾斜角度θ1sが40°以上80°以下である請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
上記第二周方向溝が表側壁及び裏側壁を有しており、
上記裏側壁の傾斜角度θ2b(degree)の、上記トレッド面の幅Tw(mm)に対する比率が5%以上20%以下であり、
上記表側壁の傾斜角度θ2fの、上記裏側壁の傾斜角度θ2bに対する比率が60%以上90%以下である、請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
上記第三周方向溝が表側壁及び裏側壁を有しており、
上記裏側壁の傾斜角度θ3b(degree)の、上記トレッド面の幅Tw(mm)に対する比率が5%以上20%以下であり、
上記表側壁の傾斜角度θ3fの、上記裏側壁の傾斜角度θ3bに対する比率が60%以上90%以下である、請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
トレッド面を有するトレッドを備えたタイヤであって、
上記トレッドが、
(1)上記タイヤの赤道面よりも表側に位置する第一周方向溝、
(2)上記赤道面よりも裏側に位置する第二周方向溝、
及び
(3)上記第二周方向溝よりも裏側に位置する第三周方向溝
を有しており、
上記第一周方向溝(1)が、
(1-1)表側壁及び裏側壁を有するメインセクション
並びに
(1-2)上記表側壁から上記トレッド面に至っており、その傾斜角度θ1sが上記表側壁の傾斜角度θ1fよりも大きいサブセクション
を有しており、
上記メインセクションの幅W1mが、上記第二周方向溝の幅W2よりも小さく、かつ上記第三周方向溝の幅W3よりも小さく、
(4)上記第二周方向溝から裏側に向かって延びており、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズと、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる深さとを有する表側三角溝
及び
(5)上記第三周方向溝から表側に向かって延びており、表側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズと、表側に向かうに従って徐々に小さくなる深さとを有する裏側三角溝
をさらに備えており、
上記表側三角溝の幅Wtfの、上記第二周方向溝及び上記第三周方向溝に挟まれたリブの幅Wrに対する比が、0.10以上0.30以下であり、
上記裏側三角溝の幅Wtbの、上記リブの幅Wrに対する比が、0.10以上0.30以下である、タイヤ。
【請求項8】
トレッド面を有するトレッドを備えたタイヤであって、
上記トレッドが、
(1)上記タイヤの赤道面よりも表側に位置する第一周方向溝、
(2)上記赤道面よりも裏側に位置する第二周方向溝、
及び
(3)上記第二周方向溝よりも裏側に位置する第三周方向溝
を有しており、
上記第一周方向溝(1)が、
(1-1)表側壁及び裏側壁を有するメインセクション
並びに
(1-2)上記表側壁から上記トレッド面に至っており、その傾斜角度θ1sが上記表側壁の傾斜角度θ1fよりも大きいサブセクション
を有しており、
上記メインセクションの幅W1mが、上記第二周方向溝の幅W2よりも小さく、かつ上記第三周方向溝の幅W3よりも小さく、
(4)上記第二周方向溝から裏側に向かって延びており、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズと、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる深さとを有する表側三角溝
及び
(5)上記第三周方向溝から表側に向かって延びており、表側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズと、表側に向かうに従って徐々に小さくなる深さとを有する裏側三角溝
をさらに備えており、
上記表側三角溝の底の傾斜角度θtfが40°以上70°以下であり、
上記裏側三角溝の底の傾斜角度θtbが40°以上70°以下である、タイヤ。
【請求項9】
(6)上記表側三角溝と上記裏側三角溝とを連結するサイプ
を、さらに備えた請求項7又は8に記載のタイヤ。
【請求項10】
上記サイプの深さDpが2.0mm以上である請求項9に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は、タイヤのトレッドパターンの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイヤのトレッドは、周方向溝及び傾斜溝を有している。周方向溝は、タイヤと路面との間の水を、主として前後方向に排出する。傾斜溝は、この水を主として横方向に排出する。これらの溝は、タイヤのウェットグリップ性能に寄与する。
【0003】
特開2018-167717公報には、3つの周方向溝を有するタイヤが記載されている。1つの周方向溝は、赤道に対して表側に位置している。2つの周方向溝は、赤道に対して裏側に位置している。換言すれば、このタイヤのトレッドパターンは、赤道に対して非対称である。このトレッドパターンは、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能に寄与しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-167717公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタイヤのグリップ性能には、改善の余地がある。さらに、従来のタイヤの耐摩耗性にも、改善の余地がある。本発明の目的は、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性に優れたタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、トレッド面を有するトレッドを有する。このトレッドは、
(1)上記タイヤの赤道面よりも表側に位置する第一周方向溝、
(2)上記赤道面よりも裏側に位置する第二周方向溝、
及び
(3)上記第二周方向溝よりも裏側に位置する第三周方向溝
を有する。この第一周方向溝(1)は、
(1-1)表側壁及び裏側壁を有するメインセクション
並びに
(1-2)上記表側壁から上記トレッド面に至っており、その傾斜角度θ1sが上記表側壁の傾斜角度θ1fよりも大きいサブセクション
を有する。メインセクションの幅W1mは、第二周方向溝の幅W2よりも小さく、かつ第三周方向溝の幅W3よりも小さい。
【0007】
好ましくは、メインセクションの幅W1mの、トレッド面の幅Twに対する比率は、1.0%以上5.0%以下である。
【0008】
好ましくは、表側壁の傾斜角度θ1fは、0°以上45°以下である。好ましくは、サブセクションの傾斜角度θ1sは、40°以上80°以下である。
【0009】
好ましくは、サブセクションの幅W1s(mm)は、下記数式を満たす。
1.0 * cosθ1f ≦ W1s ≦ 5.0 * cosθ1f
【0010】
第二周方向溝は、表側壁及び裏側壁を有しうる。好ましくは、この裏側壁の傾斜角度θ2b(degree)の、トレッド面の幅Tw(mm)に対する比率は、5%以上20%以下である。好ましくは、表側壁の傾斜角度θ2fの、裏側壁の傾斜角度θ2bに対する比率は、60%以上90%以下である。
【0011】
第三周方向溝は、表側壁及び裏側壁を有しうる。好ましくは、この裏側壁の傾斜角度θ3b(degree)の、トレッド面の幅Tw(mm)に対する比率は、5%以上20%以下である。好ましくは、表側壁の傾斜角度θ3fの、裏側壁の傾斜角度θ3bに対する比率は、60%以上90%以下である。
【0012】
好ましくは、タイヤは、
(4)第二周方向溝から裏側に向かって延びており、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズと、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる深さとを有する表側三角溝
及び
(5)第三周方向溝から表側に向かって延びており、表側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズと、表側に向かうに従って徐々に小さくなる深さとを有する裏側三角溝
をさらに有する。
【0013】
好ましくは、表側三角溝の幅Wtfの、第二周方向溝及び第三周方向溝に挟まれたリブの幅Wrに対する比は、0.10以上0.30以下である。好ましくは、裏側三角溝の幅Wtbの、リブの幅Wrに対する比は、0.10以上0.30以下である。
【0014】
好ましくは、表側三角溝の底の傾斜角度θtfは、40°以上70°以下である。好ましくは、裏側三角溝の底の傾斜角度θtbは、40°以上70°以下である。
【0015】
好ましくは、タイヤは、
(6)表側三角溝と裏側三角溝とを連結するサイプ
をさらに有する。好ましくは、このサイプの深さDpは、2.0mm以上である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤでは、複数の周方向溝がウェットグリップ性能に寄与する。これらの周方向溝は、トレッドの剛性を大幅には阻害しない。従ってこのタイヤは、ドライグリップ性能に優れる。これらの周方向溝は、トレッドの偏摩耗を助長しない。このタイヤは、耐摩耗性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤが車両と共に示された正面図である。
図2図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
図3図3は、図1のタイヤのトレッドパターンの一部が示された展開図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った拡大断面図である。
図5図5は、図3のV-V線に沿った拡大断面図である。
図6図6は、図3のVI-VI線に沿った拡大断面図である。
図7図7は、図3のVII-VII線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1には、タイヤ2が車両4と共に示されている。車両4は、ボディ6及び車軸8を有している。タイヤ2は、いずれも図示されないホイール及びハブを介して車軸8に連結されている。図1における左側は、タイヤ2の表側(Face side)である。この表側は、車両4の幅方向外側でもある。図1における右側は、タイヤ2の裏側(Back side)である。この裏側は、車両4の幅方向内側でもある。
【0020】
図2には、図1のタイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部が示されている。図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図2において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。後述されるトレッドパターンを除けば、このタイヤ2の形状は、赤道面CLに対して鏡面対称である。この一点鎖線CLは、軸方向における、このタイヤ2の中心線でもある。
【0021】
このタイヤ2は、トレッド10、一対のサイドウォール12、一対のビード14、カーカス16、ベルト18、バンド20及びインナーライナー22を有している。タイヤ2は、他の種々の部材を有しうる。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、典型的には四輪自動車に装着される。
【0022】
トレッド10は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド10は、路面と接触するトレッド面24を形成する。トレッド10の材質は、架橋されたゴム組成物である。トレッド10が、ベースと、このベースを覆うキャップとを有してもよい。トレッド10が、3以上の層を有してもよい。トレッド10は、複数の溝34、36、38を有している。これらの溝34、36、38により、トレッドパターンが形成されている。トレッドパターンの構成は、後に詳説される。
【0023】
それぞれのサイドウォール12は、トレッド10から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール12の一部は、トレッド10と接合されている。このサイドウォール12は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール12は、カーカス16の損傷を防止する。
【0024】
それぞれのビード14は、サイドウォール12よりも軸方向内側に位置している。このビード14は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを有している。コア26はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス28は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0025】
カーカス16は、両側のビード14の間に架け渡されており、トレッド10及びサイドウォール12に沿っている。カーカス16は、並列された多数のコードとトッピングゴムとを有している。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス16はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0026】
ベルト18は、トレッド10の半径方向内側に位置している。ベルト18は、カーカス16と積層されている。ベルト18は、カーカス16を補強する。ベルト18は、内側層30及び外側層32を有している。内側層30及び外側層32のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとを有している。それぞれのコードは、赤道面CLに対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層30のコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、外側層32のコードの赤道面CLに対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0027】
バンド20は、ベルト18の半径方向外側に位置している。このバンド20は、コードとトッピングゴムとを有している。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド20は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0028】
図3は、図1のタイヤ2のトレッドパターンの一部が示された展開図である。図3において、上下方向は周方向である。上方向は、タイヤ2の進行方向(つまり前側)でもある。図3において、左側は表側であり、右側は裏側である。このトレッドパターンは、第一周方向溝34、第二周方向溝36及び第三周方向溝38を有している。これらの周方向溝により、トレッド面24は4つのリブに区画されている。具体的には、トレッド面24は、第一リブ40、第二リブ42、第三リブ44及び第四リブ46を有している。第一リブ40は、第一周方向溝34の表側に位置している。第二リブ42は、第一周方向溝34と第二周方向溝36とに挟まれている。第三リブ44は、第二周方向溝36と第三周方向溝38とに挟まれている。第四リブ46は、第三周方向溝38の裏側に位置している。図3において、符号Twはトレッド10の幅を表し、符号Wrは第三リブ44の幅を表す。幅Tw及び幅Wrは、軸方向に沿って測定される。
【0029】
このトレッドパターンは、それぞれが第一周方向溝34よりも表側に位置する複数の第一横溝48を有している。このトレッドパターンは、それぞれが第一周方向溝34から表側に向かって延びる複数の第二横溝50と、それぞれが第一周方向溝34から裏側に向かって延びる複数の第三横溝52とを有している。このトレッドパターンは、それぞれが第二周方向溝36から表側に向かって延びる複数の第四横溝54を有している。このトレッドパターンは、それぞれが第三周方向溝38から裏側に向かって延びる複数の第五横溝56を有している。このトレッドパターンは、それぞれが第三周方向溝38よりも裏側に位置する複数の第六横溝58を有している。
【0030】
このトレッドパターンでは、図3に示されたユニット60のパターンが、周方向に繰り返されている。従って、横溝のピッチは、一定である。トレッドパターンが、横溝のピッチのバリエーションを有してもよい。
【0031】
第一周方向溝34は、周方向に沿って延在している。従って第一周方向溝34は、環状である。第一周方向溝34は、赤道面CLよりも表側に位置している。このトレッドパターンでは、赤道面CLよりも表側に位置する周方向溝の数は、1である。
【0032】
図4は、図3のIV-IV線に沿った拡大断面図である。図4には、第一周方向溝34の近傍が示されている。図4における上下方向は、トレッド面24の法線方向である。図4において、左側は表側であり、右側は裏側である。この第一周方向溝34は、メインセクション62とサブセクション64とを有している。図4において符号66は、メインセクション62とサブセクション64との境界を示す。サブセクション64は、メインセクション62の表側(図4の左側)に位置している。メインセクション62は、底面68、表側壁70及び裏側壁72を有している。
【0033】
表側壁70は、底面68よりも表側に位置している。表側壁70は、底面68から起立している。表側壁70は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、底面68から離れるに従って表側に向かう方向である。図4において符号θ1fは、法線方向に対する表側壁70の傾斜角度(degree)を表す。
【0034】
裏側壁72は、底面68よりも裏側に位置している。裏側壁72は、底面68から起立している。裏側壁72は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、底面68から離れるに従って裏側に向かう方向である。図4において符号θ1bは、法線方向に対する裏側壁72の傾斜角度(degree)を表す。本実施形態では、傾斜角度θ1bは、傾斜角度θ1fと同じである。第一周方向溝34が、傾斜角度θ1bが傾斜角度θ1fと異なるメインセクション62を有してもよい。
【0035】
図4において符号W1mは、メインセクション62の幅(mm)を表す。幅W1mは、境界66における法線と、裏側壁72のエッジ74における法線との、距離である。
【0036】
サブセクション64は、表側壁70からトレッド面24に至っている。サブセクション64は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、境界66から離れるに従って表側に向かう方向である。図4において符号θ1sは、法線方向に対するサブセクション64の傾斜角度(degree)を表す。傾斜角度θ1sは、表側壁70の傾斜角度θ1fよりも大きい。
【0037】
図4において符号W1sは、サブセクション64の幅(mm)を表す。幅W1sは、境界66における法線と、サブセクション64のエッジ76における法線との、距離である。
【0038】
図3に示されるように、第二周方向溝36は、周方向に沿って延在している。従って第二周方向溝36は、環状である。第二周方向溝36は、赤道面CLよりも裏側に位置している。本実施形態では、第二周方向溝36は、赤道面CLと離れている。第二周方向溝36が、赤道面CLを跨いでもよい。この場合、第二周方向溝36の軸方向中心は、赤道面CLよりも裏側に位置する。換言すれば、本発明では、溝の軸方向中心が基準とされて、この溝の所属するゾーンが判定される。
【0039】
図5は、図3のV-V線に沿った拡大断面図である。図5には、第二周方向溝36の近傍が示されている。図5における上下方向は、トレッド面24の法線方向である。図5において、左側は表側であり、右側は裏側である。この第二周方向溝36は、底面78、表側壁80及び裏側壁82を有している。
【0040】
表側壁80は、底面78よりも表側に位置している。表側壁80は、底面78から起立している。表側壁80は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、底面78から離れるに従って表側に向かう方向である。図5において符号θ2fは、法線方向に対する表側壁80の傾斜角度(degree)を表す。
【0041】
裏側壁82は、底面78よりも裏側に位置している。裏側壁82は、底面78から起立している。裏側壁82は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、底面78から離れるに従って裏側に向かう方向である。図5において符号θ2bは、法線方向に対する裏側壁82の傾斜角度(degree)を表す。本実施形態では、傾斜角度θ2bは、傾斜角度θ2fよりも大きい。タイヤ2が、傾斜角度θ2bが傾斜角度θ2fと同じである第二周方向溝36を有してもよい。タイヤ2が、傾斜角度θ2bが傾斜角度θ2fよりも小さい第二周方向溝36を有してもよい。
【0042】
図5において符号W2は、第二周方向溝36の幅(mm)を表す。幅W2は、表側壁80のエッジ84における法線と、裏側壁82のエッジ86における法線との、距離である。
【0043】
図3に示されるように、第三周方向溝38は、周方向に沿って延在している。従って第二周方向溝36は、環状である。第三周方向溝38は、赤道面CLよりも裏側に位置している。第三周方向溝38は、第二周方向溝36よりも裏側に位置している。このトレッドパターンでは、赤道面CLよりも裏側に位置する周方向溝の数は、2である。
【0044】
図6は、図3のVI-VI線に沿った拡大断面図である。図6には、第三周方向溝38の近傍が示されている。図6における上下方向は、トレッド面24の法線方向である。図6において、左側は表側であり、右側は裏側である。この第三周方向溝38は、底面88、表側壁90及び裏側壁92を有している。
【0045】
表側壁90は、底面88よりも表側に位置している。表側壁90は、底面88から起立している。表側壁90は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、底面88から離れるに従って表側に向かう方向である。図6において符号θ3fは、法線方向に対する表側壁90の傾斜角度(degree)を表す。
【0046】
裏側壁92は、底面88よりも裏側に位置している。裏側壁92は、底面88から起立している。裏側壁92は、法線方向に対して傾斜している。この傾斜の方向は、底面88から離れるに従って裏側に向かう方向である。図6において符号θ3bは、法線方向に対する裏側壁92の傾斜角度(degree)を表す。本実施形態では、傾斜角度θ3bは、傾斜角度θ3fよりも大きい。タイヤ2が、傾斜角度θ3bが傾斜角度θ3fと同じである第三周方向溝38を有してもよい。タイヤ2が、傾斜角度θ3bが傾斜角度θ3fよりも小さい第三周方向溝38を有してもよい。
【0047】
図6において符号W3は、第三周方向溝38の幅(mm)を表す。幅W3は、表側壁90のエッジ94における法線と、裏側壁92のエッジ96における法線との、距離である。
【0048】
図3に示されるように、このトレッドパターンは、複数の表側三角溝98、複数の裏側三角溝100及び複数のサイプ102を有している。これらの表側三角溝98、裏側三角溝100及びサイプ102は、赤道面CLよりも裏側に位置している。
【0049】
それぞれの表側三角溝98は、第二周方向溝36に連続している。表側三角溝98は、第二周方向溝36から裏側に向かって延びている。表側三角溝98は、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズを有している。トレッド面24の法線方向から見られた表側三角溝98の輪郭は、概して三角形である。図3において符号Wtfは、表側三角溝98の幅(mm)を表す。幅Wtfは、トレッド面24の法線と垂直な方向に沿って測定される。
【0050】
それぞれの裏側三角溝100は、第三周方向溝38に連続している。裏側三角溝100は、第三周方向溝38から表側に向かって延びている。裏側三角溝100は、表側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズを有している。トレッド面24の法線方向から見られた裏側三角溝100の輪郭は、概して三角形である。本実施形態では、裏側三角溝100の輪郭形状は、表側三角溝98の輪郭形状と合同である。本実施形態では、裏側三角溝100の数は、表側三角溝98の数と同じである。図3において符号Wtbは、裏側三角溝100の幅(mm)を表す。幅Wtbは、トレッド面24の法線と垂直な方向に沿って測定される。
【0051】
それぞれのサイプ102は、表側三角溝98と裏側三角溝100とを連結している。このサイプ102により、表側三角溝98と裏側三角溝100とのペアが形成されている。本実施形態では、サイプ102は、軸方向に対して傾斜している。具体的には、サイプ102は、裏側に向かうに従って前側に向かう方向に、延在している。本実施形態では、サイプ102の数は、表側三角溝98の数と一致しており、裏側三角溝100の数とも一致している。複数のサイプ102により、第三リブ44が複数のエレメント104に区画されている。
【0052】
図7は、図3のVII-VII線に沿った拡大断面図である。VII-VII線の方向は、サイプ102の延在方向と概ね一致する。図7には、第二周方向溝36、表側三角溝98、サイプ102、裏側三角溝100及び第三周方向溝38が示されている。
【0053】
表側三角溝98の底104は、法線方向に対して傾斜している。この底104は、裏側に向かうに従ってトレッド面24に向かう方向に、延在している。換言すれば、表側三角溝98は、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる深さを有している。図7において符号θtfは、法線方向に対する表側三角溝98の底104の傾斜角度(degree)を表す。
【0054】
裏側三角溝100の底106は、法線方向に対して傾斜している。この底106は、表側に向かうに従ってトレッド面24に向かう方向に、延在している。換言すれば、裏側三角溝100は、表側に向かうに従って徐々に小さくなる深さを有している。図7において符号θtbは、法線方向に対する裏側三角溝100の底106の傾斜角度(degree)を表す。本実施形態では、傾斜角度θtbは、傾斜角度θtfと同じである。タイヤ2が、傾斜角度θtbが傾斜角度θtfと異なるトレッド10を有してもよい。
【0055】
図7において符号Dpは、サイプ102の深さ(mm)を表す。この深さは、小さい。さらに、図3から明らかなように、サイプ102の幅は、極めて小さい。従って、サイプ102を挟んで対峙する一方のトレッドゴムと他方のトレッドゴムとの距離は、極めて小さい。一方のトレッドゴムが他方のトレッドゴムに当接してもよい。サイプ102が小さな深さDp及び小さな幅を有するので、このサイプ102は第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。
【0056】
タイヤ2が、サイプ102を含まないトレッドパターンを有してもよい。タイヤ2が、表側三角溝98及び裏側三角溝100を含まないトレッドパターンを有してもよい。
【0057】
このトレッド面24では、メインセクション62の幅W1m(図4参照)は、第二周方向溝36の幅W2(図5参照)よりも小さく、かつ第三周方向溝38の幅W3(図6参照)よりも小さい。このトレッド面24の、赤道面CLよりも裏側には、幅が大きい2つの周方向溝が存在している。ウェット路面をタイヤ2が走行するとき、この路面とトレッド面24との間の水は、第二周方向溝36及び第三周方向溝38により、効率よく排出される。第二周方向溝36及び第三周方向溝38は、タイヤ2のウェットグリップ性能に寄与しうる。
【0058】
トレッド面24の赤道面CLよりも表側に存在する周方向溝の数は、わずかに1である。しかも、この周方向溝のメインセクション62の幅W1mは、小さい。さらに、サブセクション64は、浅い。従って、赤道面CLよりも表側におけるトレッド10の剛性は、大きい。車両4が旋回するとき、トレッド10のうち赤道面CLよりも表側の部分に、大きな接地圧がかかる。この接地圧を受けても、トレッド10の過剰な変形は生じない。このタイヤ2は、ドライグリップ性能及び耐摩耗性に優れる。
【0059】
第一周方向溝34はサブセクション64を有しているので、第一リブ40の弾性変形に起因するメインセクション62へのゴムの侵入が、このサブセクション64によって阻止される。従って、接地圧がかかった状態でのメインセクション62の断面積は、十分に大きい。このタイヤ2では、接地圧がかかってもメインセクション62の排水性は、阻害されない。このタイヤ2は、ウェットグリップ性能に極めて優れる。
【0060】
サブセクション64によってメインセクション62へのゴムの侵入が阻止されるので、この侵入に起因するゴムの偏摩耗が生じない。このタイヤ2は、耐摩耗性に優れる。
【0061】
本発明に係るタイヤ2は、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐摩耗性に優れる。このタイヤ2は、サーキットでの走行、及び公道での走行に適している。このタイヤ2は特に、サーキットでの走行に適している。
【0062】
図3において、符号L1は第一周方向溝34の軸方向中心までの赤道面CLからの距離を表し、符号L2は第二周方向溝36の軸方向中心までの赤道面CLからの距離を表し、符号L3は第三周方向溝38の軸方向中心までの赤道面CLからの距離を表す。これらの距離L1、L2及びL3は、軸方向に沿って測定される。これらの距離L1、L2及びL3が適正であるタイヤ2は、諸性能に優れる。距離L1のトレッド10の半幅(Tw/2)に対する比率は、25%以上60%以下が好ましい。距離L2のトレッド10の半幅(Tw/2)に対する比率は、5%以上25%以下が好ましい。距離L3のトレッド10の半幅(Tw/2)に対する比率は、35%以上65%以下が好ましい。
【0063】
リブと路面との間には、水膜が生じやすい。表側三角溝98は、第三リブ44と路面との間の水を、第二周方向溝36へと案内する。この表側三角溝98は、水膜の発生を抑制する。前述の通り表側三角溝98は、裏側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズを有している。従って、この表側三角溝98は、第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。図3及び7から明らかなように、表側三角溝98の周方向に沿った断面積は、表側に向かうに従って徐々に大きくなる。従って、この表側三角溝98は、水を第二周方向溝36へと円滑に案内する。
【0064】
裏側三角溝100は、第三リブ44と路面との間の水を、第三周方向溝38へと案内する。この裏側三角溝100は、水膜の発生を抑制する。前述の通り裏側三角溝100は、表側に向かうに従って徐々に小さくなる周方向サイズを有している。従って、この裏側三角溝100は、第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。図3及び7から明らかなように、裏側三角溝100の周方向に沿った断面積は、裏側に向かうに従って徐々に大きくなる。従って、この裏側三角溝100は、水を第三周方向溝38へと円滑に案内する。
【0065】
サイプ102は、第三リブ44と路面との間の水を表側三角溝98又は裏側三角溝100へと案内する。このサイプ102は、ウェットグリップ性能に寄与する。サイプ102は、第三リブ44の剛性を適度に下げる。従ってこのサイプ102は、摩擦係数が低い路面でのグリップ性能に寄与しうる。
【0066】
メインセクション62の幅W1m(図4参照)の、トレッド面24の幅Twに対する比率は、1.0%以上5.0%以下が好ましい。この比率が1.0%以上である第一周方向溝34は、排水性能に優れる。この観点から、この比率は1.5%以上がより好ましく、2.0%以上が特に好ましい。この比率が5.0%以下である第一周方向溝34は、トレッド10の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、この比率は4.5%以下がより好ましく、4.0%以下が特に好ましい。トレッド面24の幅Twは車両4のエンジンの排気量に相関し、そしてこの排気量は旋回時にタイヤ2にかかる力に相関する。換言すれば、トレッド面24の幅Twは、旋回時にタイヤ2にかかる力に相関する。この観点から、本発明では、それぞれの溝の幅及び傾斜角度の、トレッド面24の幅Twに対する比率を、規定している。
【0067】
幅W1mは2.5mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく。4.5mm以上が特に好ましい。幅W1mは13.0mm以下が好ましく、12.0mm以下がより好ましく、11.5mm以下が特に好ましい。
【0068】
第一周方向溝34の表側壁70の傾斜角度θ1fは、45°以下が好ましい。傾斜角度θ1fが45°以下であるトレッド10では、排水性と剛性とが両立されうる。この観点から、傾斜角度θ1fは35°以下がより好ましく、30°以下が特に好ましい。タイヤ2の製造容易の観点から、傾斜角度θ1fは、0°以上が好ましい。
【0069】
第一周方向溝34の裏側壁72の傾斜角度θ1bは、45°以下が好ましい。傾斜角度θ1bが45°以下であるトレッド10では、排水性と剛性とが両立されうる。この観点から、傾斜角度θ1bは35°以下がより好ましく、30°以下が特に好ましい。タイヤ2の製造容易の観点から、傾斜角度θ1bは、0°以上が好ましい。
【0070】
サブセクション64の傾斜角度θ1sは、40°以上80°以下が好ましい。傾斜角度θ1sがこの範囲内であるサブセクション64は、排水性、剛性及び耐摩耗性に寄与しうる。傾斜角度θ1sは45°以上がより好ましく、50°以上が特に好ましい。傾斜角度θ1sは75°以下がより好ましく、70°以下が特に好ましい。
【0071】
サブセクション64の幅W1sは、0.5mm以上3.0mm以下が好ましい。幅W1sがこの範囲内であるサブセクション64は、排水性、剛性及び耐摩耗性に寄与しうる。この観点から、幅W1sは0.6mm以上がより好ましく、0.7mm以上が特に好ましい。幅W1sは2.0mm以下がより好ましく、1.5mm以下が特に好ましい。
【0072】
サブセクション64の傾斜角度θ1sとメインセクション62の表側壁70の傾斜角度θ1fとの差(θ1s-θ1f)は、10°以上55°以下が好ましい。差(θ1s-θ1f)がこの範囲内であるタイヤ2は、排水性、剛性及び耐摩耗性に優れる。差(θ1s-θ1f)は15°以上がより好ましく、20°以上が特に好ましい。差(θ1s-θ1f)は50°以下がより好ましく、45°以下が特に好ましい。
【0073】
サブセクション64の幅W1sは、好ましくは、下記の数式を満たす。
1.0 * cosθ1f ≦ W1s ≦ 5.0 * cosθ1f
換言すれば、cosθ1fに対する幅W1s(mm)の比は、1.0以上5.0以下である。この数式を満たすタイヤ2は、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能に優れる。この比は1.5以上がより好ましく、2.0以上が特に好ましい。この比は4.5以下がより好ましく、4.0以下が特に好ましい。
【0074】
第二周方向溝36の幅W2(図5参照)は、10mm以上20mm以下が好ましい。幅W2が10mm以上である第二周方向溝36は、排水性に寄与する。この観点から、幅W2は12mm以上がより好ましく、13mm以上が特に好ましい。幅W2が20mm以下である第二周方向溝36は、トレッド10の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、幅W2は18mm以下がより好ましく、17mm以下が特に好ましい。
【0075】
第二周方向溝36の幅W2の、メインセクション62の幅W1mに対する比(W2/W1m)は、1.5以上2.5以下が好ましい。この比(W2/W1m)がこの範囲内であるタイヤ2は、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能に優れる。この比(W2/W1m)は1.7以上がより好ましく、1.8以上が特に好ましい。この比(W2/W1m)は2.3以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。
【0076】
第二周方向溝36の裏側壁82の傾斜角度θ2b(degree)の、トレッド面24の幅Tw(mm)に対する比率は、5%以上が好ましい。車両4が旋回するとき、タイヤ2には大きな横力がかかる。この横力の方向は、表側から裏側に向かう方向である。比率が5%以上であるトレッド10では、横力に対する剛性が大きい。このタイヤ2は、ドライグリップ性能に優れる。この観点から、この比率は10%以上がより好ましく、13%以上が特に好ましい。この比率は、20%以下が好ましい。傾斜角度θ2bは13°以上が好ましく、25°以上がより好ましく、33°以上が特に好ましい。傾斜角度θ2bは、50°以下が好ましい。
【0077】
第二周方向溝36における、表側壁80の傾斜角度θ2fの裏側壁82の傾斜角度θ2bに対する比率は、90%以下が好ましい。この比率が90%以下である第二周方向溝36の断面積は、十分に大きい。この第二周方向溝36は、ウェットグリップ性能に寄与しうる。この観点から、この比率は85%以下がより好ましく、80%以下が特に好ましい。この比率は、60%以上が好ましい。傾斜角度θ2fは5°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上が特に好ましい。傾斜角度θ2fは、45°以下が好ましい。
【0078】
第三周方向溝38の幅W3(図6参照)は、10mm以上20mm以下が好ましい。幅W3が10mm以上である第三周方向溝38は、排水性に寄与する。この観点から、幅W3は12mm以上がより好ましく、13mm以上が特に好ましい。幅W3が20mm以下である第三周方向溝38は、トレッド10の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、幅W3は18mm以下がより好ましく、17mm以下が特に好ましい。
【0079】
第三周方向溝38の幅W3の、メインセクション62の幅W1mに対する比(W3/W1m)は、1.5以上2.5以下が好ましい。この比(W3/W1m)がこの範囲内であるタイヤ2は、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能に優れる。この比(W3/W1m)は1.7以上がより好ましく、1.8以上が特に好ましい。この比(W3/W1m)は2.3以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。
【0080】
第三周方向溝38の裏側壁92の傾斜角度θ3b(degree)の、トレッド面24の幅Tw(mm)に対する比率は、5%以上が好ましい。車両4が旋回するとき、タイヤ2には大きな横力がかかる。この横力の方向は、表側から裏側に向かう方向である。比率が5%以上であるトレッド10では、横力に対する剛性が大きい。このタイヤ2は、ドライグリップ性能に優れる。この観点から、この比率は10%以上がより好ましく、13%以上が特に好ましい。この比率は、20%以下が好ましい。傾斜角度θ3bは13°以上が好ましく、25°以上がより好ましく、33°以上が特に好ましい。傾斜角度θ3bは、50°以下が好ましい。
【0081】
第三周方向溝38における、表側壁90の傾斜角度θ3fの裏側壁92の傾斜角度θ3bに対する比率は、90%以下が好ましい。この比率が90%以下である第三周方向溝38の断面積は、十分に大きい。この第三周方向溝38は、ウェットグリップ性能に寄与しうる。この観点から、この比率は85%以下がより好ましく、80%以下が特に好ましい。この比率は、60%以上が好ましい。傾斜角度θ3fは5°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上が特に好ましい。傾斜角度θ3fは、45°以下が好ましい。
【0082】
表側三角溝98の幅Wtf(図3参照)の、第三リブ44の幅Wrに対する比(Wtf/Wr)は、0.10以上0.30以下が好ましい。この比(Wtf/Wr)が0.10以上である表側三角溝98は、排水性に寄与しうる。この観点から、この比(Wtf/Wr)は0.12以上がより好ましく、0.13以上が特に好ましい。この比(Wtf/Wr)が0.30以下である表側三角溝98は、第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、この比(Wtf/Wr)は0.25以下がより好ましく、0.22以下が特に好ましい。幅Wtfは3.0mm以上が好ましく、5.0mm以上がより好ましく、6.0mm以上が特に好ましい。幅Wtfは15.0mm以下が好ましく、12.0mm以下がより好ましく、10.0mm以下が特に好ましい。
【0083】
表側三角溝98の底の傾斜角度θtf(図7参照)は、40°以上70°以下が好ましい。傾斜角度θtfが40°以上である表側三角溝98は、排水性に寄与しうる。この観点から、傾斜角度θtfは45°以上がより好ましく、48°以上が特に好ましい。傾斜角度θtfが70°以下である表側三角溝98は、第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、傾斜角度θtfは60°以下がより好ましく、55°以上が特に好ましい。
【0084】
裏側三角溝100の幅Wtb(図3参照)の、第三リブ44の幅Wrに対する比(Wtb/Wr)は、0.10以上0.30以下が好ましい。この比(Wtb/Wr)が0.10以上である裏側三角溝100は、排水性に寄与しうる。この観点から、この比(Wtb/Wr)は0.12以上がより好ましく、0.13以上が特に好ましい。この比(Wtb/Wr)が0.30以下である裏側三角溝100は、第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、この比(Wtb/Wr)は0.25以下がより好ましく、0.22以下が特に好ましい。幅Wtbは3.0mm以上が好ましく、5.0mm以上がより好ましく、6.0mm以上が特に好ましい。幅Wtfは15.0mm以下が好ましく、12.0mm以下がより好ましく、10.0mm以下が特に好ましい。
【0085】
裏側三角溝100の底の傾斜角度θtb(図7参照)は、40°以上70°以下が好ましい。傾斜角度θtbが40°以上である裏側三角溝100は、排水性に寄与しうる。この観点から、傾斜角度θtbは45°以上がより好ましく、48°以上が特に好ましい。傾斜角度θtbが70°以下である裏側三角溝100は、第三リブ44の剛性を大幅には阻害しない。この観点から、傾斜角度θtbは60°以下がより好ましく、55°以上が特に好ましい。
【0086】
サイプ102の深さDp(図7参照)は、2.0mm以上が好ましい。このサイプ102は、排水性に寄与しうる。この観点から、深さは2.5mm以上がより好ましく、2.8mm以上が特に好ましい。第三リブ44の剛性の観点から、深さDpは5.0mm以下が好ましい。
【0087】
溝の面積率Psは、10%以上30%以下が好ましい。面積率Psが10%以上であるトレッドパターンは、排水性に優れる。この観点から、面積率Psは13%以上がより好ましく、15%以上が特に好ましい。面積率Psが30%以下であるトレッド10は、剛性に優れる。この観点から、面積率Psは25%以下がより好ましく、22%以下が特に好ましい。面積率Psは、展開図(例えば図3)における全ての溝の合計面積の、トレッド面24の仮想面積に対する比率である。仮想面積とは、溝が全く存在しないと仮定されたときのトレッド面24の面積である。
【0088】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例
【0089】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0090】
[実施例1]
図1-7に示された空気入りタイヤを製造した。このタイヤのサイズは、255/40R18であった。このタイヤのトレッドパターンの詳細が、下記の表1に示されている。このタイヤにおいて、トレッド面の幅Twは254mmであり、第三リブの幅Wrは40mmであった。
【0091】
[実施例2-4]
第一周方向溝のサブセクションの仕様を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-4のタイヤを得た。
【0092】
[実施例5-9]
第一周方向溝のメインセッションの仕様を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5-9のタイヤを得た。
【0093】
[実施例10-13]
第二周方向溝及び第三周方向溝の仕様を下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10-13のタイヤを得た。
【0094】
[実施例14-21]
表側三角溝及び裏側三角溝の仕様を下記の表4及び5に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例14-21のタイヤを得た。
【0095】
[実施例22及び23]
サイプの仕様を下記の表6に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例22及び23のタイヤを得た。
【0096】
[実施例24]
サイプを設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例24のタイヤを得た。
【0097】
[実施例25]
表側三角溝、裏側三角溝及びサイプを設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例25のタイヤを得た。
【0098】
[比較例1]
サブセクションを有さない第一周方向溝を設けた他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0099】
[比較例2]
サブセクションを有さない第一周方向溝を設け、かつメインセッションの仕様を下記の表7に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0100】
[比較例3]
第一周方向溝を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0101】
[比較例4]
第一周方向溝、第二周方向溝及び第三周方向溝の仕様を下記の表7に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例4のタイヤを得た。
【0102】
[排水性能]
タイヤを、そのサイズが「18×8.5J」であるリムに組み込んだ。このタイヤに、内圧が220kPaとなるように、空気を充填した。このリムを、排気量が2000ccである四輪駆動の車両に装着した。深さが5mmである水たまりを有する路面にて車両を旋回させ、横力を測定した。この結果が、比較例2が100とされた指数で、下記の表1-7に示されている。指数が大きいタイヤは、排水性能に優れている。
【0103】
[ウェットグリップ性能]
前述の排水性能のテストに際し、ドライバーにグリップ性能を評価させた。この結果が、比較例2が100とされた指数で、下記の表1-7に示されている。指数が大きいタイヤは、ウェットグリップ性能に優れている。
【0104】
[操縦安定性]
前述の排水性能のテストに際し、ドライバーに操縦安定性を評価させた。この結果が、比較例2が100とされた指数で、下記の表1-7に示されている。指数が大きいタイヤは、操縦安定性に優れている。
【0105】
[ドライグリップ性能]
ドライ路面のサーキットコースにて前述の車両を走行させ、ドライバーにグリップ性能を評価させた。この結果が、比較例2が100とされた指数で、下記の表1-7に示されている。指数が大きいタイヤは、ドライグリップ性能に優れている。
【0106】
[耐摩耗性]
ドライ路面のサーキットコースにて、前述の車両を走行させた。走行距離が20kmに達したときにトレッド面を目視で観察し、偏摩耗の程度を評価した。この結果が、比較例2が100とされた指数で、下記の表1-7に示されている。指数が大きいタイヤは、耐摩耗性に優れている。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
表1-7に示されるように、各実施例のタイヤの合計点は、大きい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係るタイヤは、種々の車両に装着されうる。
【符号の説明】
【0116】
2・・・タイヤ
4・・・車両
6・・・ボディ
8・・・車軸
10・・・トレッド
24・・・トレッド面
34・・・第一周方向溝
36・・・第二周方向溝
38・・・第三周方向溝
40・・・第一リブ
42・・・第二リブ
44・・・第三リブ
46・・・第四リブ
62・・・メインセクション
64・・・サブセクション
68・・・第一周方向溝の底面
70・・・第一周方向溝の表側壁
72・・・第一周方向溝の裏側壁
78・・・第二周方向溝の底面
80・・・第二周方向溝の表側壁
82・・・第二周方向溝の裏側壁
88・・・第三周方向溝の底面
90・・・第三周方向溝の表側壁
92・・・第三周方向溝の裏側壁
98・・・表側三角溝
100・・・裏側三角溝
102・・・サイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7