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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】涙道内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20250226BHJP
   A61B 1/012 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
A61B1/00 713
A61B1/012 511
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021016215
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119243
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 憲昭
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-016317(JP,A)
【文献】国際公開第2011/078160(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/050101(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/100844(WO,A1)
【文献】特開平07-095954(JP,A)
【文献】国際公開第2020/039866(WO,A1)
【文献】特表2014-514013(JP,A)
【文献】特開2008-067977(JP,A)
【文献】特開2020-138041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
涙道に挿入可能な管状の挿入部と、
前記挿入部の基端を保持する保持部を有し、前記挿入部を操作可能な操作部と、を備え、
前記挿入部の外径は、0.91mm以上0.94mm以下であり、長手方向に渡って略均一であり、
前記挿入部の長さは、30mm以上60mm以下であり、
前記挿入部の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下であ
前記保持部は、前記挿入部の基端が挿通可能な穴と、前記挿入部の基端の外表面を覆うように設けられた弾性部材と、を有し、
前記挿入部の外壁と前記穴の内壁との間に設けられた隙間が前記弾性部材によって埋められている、
涙道内視鏡。
【請求項2】
前記挿入部の内部に前記挿入部の長手方向に沿って設けられる第1の管であって、前記挿入部の先端から入射した光が通過する第1の管と、
前記挿入部の内部に前記挿入部の長手方向に沿って設けられ、前記挿入部の先端から流出する流体が通過する第2の管と、を更に備え、
前記挿入部、前記第1の管、及び前記第2の管は、夫々金属を含む材料から形成される、
請求項に記載の涙道内視鏡。
【請求項3】
前記第1の管及び前記第2の管の夫々は、前記挿入部の内壁と接するように、かつ互いに接するように設けられる、
請求項に記載の涙道内視鏡。
【請求項4】
前記第1の管と前記第2の管とは、前記挿入部の径方向に並んで設けられ、
前記第2の管の長手方向に対して直交する断面は、略半円状であり、
前記略半円状の直線部分が、前記第1の管と接する、
請求項又はに記載の涙道内視鏡。
【請求項5】
涙道に挿入可能な管状の挿入部と、
前記挿入部の基端を保持する保持部を有し、前記挿入部を操作可能な操作部と、を備え、
前記保持部は、前記挿入部の基端が挿通可能な穴と、前記挿入部の基端の外表面を覆うように設けられた弾性部材と、を有し、
前記挿入部の外壁と前記穴の内壁との間に設けられた隙間が前記弾性部材によって埋められている、
涙道内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、涙道内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
涙道の検査又は治療等の際に使用される涙道内視鏡が開発されている(例えば特許文献1-2)。特許文献1-2に示されるような涙道内視鏡には、患者の涙道へ挿入可能な挿入部が設けられている。挿入部は、管状であり、その先端には、検査対象を照らすライト、及び検査対象の表面で反射した光を集光する対物レンズ等が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4124423号公報
【文献】特許第6180449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
涙道内視鏡の管状の挿入部を例えば鼻涙管等の器官の検査または治療に使用する場合、鼻涙管等の器官に詰まった異物(例えばタンパク質の塊)を挿入部の先端で押し出すことが考えられる。このような場合、異物を挿入部が押し出す時に挿入部には曲げモーメントが生じることが考えられる。ここで、鼻涙管の検査または治療に使用される挿入部の長さは、涙点から鼻涙管の開口部まで到達可能な程長い。よって、挿入部に作用する曲げモーメントの度合いは大きくなる。よって、挿入部が変形する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、涙道内視鏡の管状の挿入部が所定長以上であり、検査又は治療対象の器官に挿入されて検査又は治療される場合に挿入部の変形を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち、本発明の一側面に係る涙道内視鏡は、涙道に挿入可能な管状の挿入部と、前記挿入部の基端を保持する保持部を有し、前記挿入部を操作可能な操作部と、を備え、前記挿入部の外径は、0.91mm以上0.94mm以下であり、長手方向に渡って略均一であり、前記挿入部の長さは、30mm以上60mm以下であり、前記挿入部の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下である。
【0008】
当該構成によれば、ユーザが挿入部を患者の涙道へ挿入し、検査又は治療対象の器官まで到達させることができる。よって、涙点から検査又は治療対象の器官までの経路、および検査又は治療対象の器官自体を検査または治療することができる。また、当該構成によれば、挿入部の長さが30mm以上60mm以下である。よって、例えば検査又は治療対象の器官に詰まった異物を挿入部の先端で押し出す場合に、挿入部に大きな曲げモーメントが生じる可能性がある。しかしながら、当該構成の挿入部の外径は、0.91mm以上0.94mm以下であり、挿入部の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下である。よって、挿入部に作用する曲げモーメントによって挿入部全体が変形することは抑制される。
【0009】
また、当該構成によれば、挿入部の外径が長手方向に渡って略均一である。よって、挿
入部の先端から基端方向へその外径が大きくなるようにテーパが設けられている場合と比較し、挿入部をスムーズに検査又は治療対象の器官まで到達させることができる。
【0010】
上記一側面に係る涙道内視鏡において、前記保持部は、前記挿入部の基端の外表面を覆うように設けられた弾性部材を有してもよい。
【0011】
当該構成によれば、挿入部の長さが30mm以上60mm以下である。よって、例えば検査又は治療対象の器官に詰まった異物を挿入部の先端で押し出す場合に、挿入部に大きな曲げモーメントが生じる可能性がある。そして、挿入部の基端には、挿入部の先端や中央に生じる曲げモーメントよりも大きな曲げモーメントが作用する。しかしながら、当該構成によれば、挿入部の基端が変形しようとする場合には、挿入部の基端の外表面を覆う弾性部材が変形するため、挿入部の基端の変形は抑制される。
【0012】
また、当該構成によれば、挿入部の外径は0.91mm以上0.94mm以下であり、挿入部の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下である。よって、曲げモーメントが挿入部の先端に作用した場合に、挿入部の中央での変形が抑制される一方で、挿入部の基端に負荷が集中することが想定される。しかしながら、当該構成によれば、挿入部の基端の外表面を覆う弾性部材によって、挿入部の基端の変形は抑制される。
【0013】
上記一側面に係る涙道内視鏡において、前記挿入部の内部に前記挿入部の長手方向に沿って設けられる第1の管であって、前記挿入部の先端から入射した光が通過する第1の管と、前記挿入部の内部に前記挿入部の長手方向に沿って設けられ、前記挿入部の先端から流出する流体が通過する第2の管と、を更に備え、前記挿入部、前記第1の管、及び前記第2の管は、夫々金属を含む材料から形成されてもよい。
【0014】
当該構成によれば、挿入部、第1の管及び第2の管は、夫々金属を含む材料からなっているため、挿入部、第1の管及び第2の管の剛性は向上する。よって、挿入部、第1の管及び第2の管の変形は抑制される。
【0015】
上記一側面に係る涙道内視鏡において、前記第1の管及び前記第2の管の夫々は、前記挿入部の内壁と接するように、かつ互いに接するように設けられてもよい。
【0016】
当該構成によれば、第1の管及び第2の管は、夫々挿入部の内壁と接するように、かつ互いに接するように設けられている。よって、挿入部、第1の管及び第2の管は、一体となって挿入部に生じる曲げモーメントに対抗することができる。よって、挿入部、第1の管及び第2の管の変形は抑制される。
【0017】
上記一側面に係る涙道内視鏡において、前記第1の管と前記第2の管とは、前記挿入部の径方向に並んで設けられ、前記第2の管の長手方向に対して直交する断面は、略半円状であり、前記略半円状の直線部分が、前記第1の管と接してもよい。
【0018】
当該構成によれば、挿入部の太さを変えずに第2の管の断面積を大きくとり、第2の管を通過する流体の流量を増大させることができる。
【0019】
上記一側面に係る涙道内視鏡において、前記挿入部の外径に対する前記挿入部のビッカース硬さの比は、421倍から500倍までの範囲であり、前記挿入部の長さに対する前記挿入部のビッカース硬さの比は、6倍から15倍までの範囲であってもよい。
【0020】
挿入部の外径に対する挿入部のビッカース硬さの比が上記の範囲であり、かつ挿入部の長さに対する挿入部のビッカース硬さの比が上記の範囲であれば、検査又は治療対象の器
官に詰まったタンパク質の塊を挿入部の先端で押し出す場合に、挿入部に曲げモーメントが生じた場合であっても、生じた曲げモーメントの値に対して充分に対抗できる挿入部の硬度を確保することができる。これにより、挿入部の変形は抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、涙道内視鏡の管状の挿入部が所定長以上であり、検査又は治療対象の器官に挿入されて検査又は治療される場合に挿入部の変形を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態にかかる涙道内視鏡の構成の一例を示している。
図2図2は、挿入部の先端の拡大図の概要を示している。
図3図3は、保持部の断面の部分拡大図を例示している。
図4図4は、涙道内視鏡が使用される場合の状況を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる涙道内視鏡1の構成の一例を示している。図1に示されるように、涙道内視鏡1は、挿入部2を備える。挿入部2の外形が剛性の高いステンレス製の外パイプ7(図2に詳細記載)により形成される。外パイプ7は、円筒状の部材であり、全長が30mm-60mm程度であり、外径の大きさが0.91mm程度である。
【0025】
また、外径の大きさは、外パイプ7の全長に渡って略均一である。また、外パイプ7は、基端から先端方向へ向けて直線状に延伸する部分と、延伸している途中で所定の方向に湾曲する部分とを備える。このような挿入部2は、外径が細く、また略均一であるため、患者の涙小管52(後述する図4参照)へ容易に挿入される。
【0026】
また、涙道内視鏡1は、挿入部2を操作可能な操作部3を備える。操作部3は、ユーザが把持可能な太さを有する。また、操作部3は、挿入部2の基端を保持して固定する保持部4を備える。
【0027】
また、操作部3は、外部装置から供給される生理食塩水(本発明の流体の一例)が通過する供給管が接続される第1接続部5を備える。また、操作部3は、外部のイメージングシステムとの間で光を授受する伝送ケーブルが接続される第2接続部6を備える。
【0028】
図2は、長手方向から見た挿入部2の先端の拡大図の概要を示している。図2に示されるように、挿入部2は、外パイプ7の内部にライトガイド8を有する。ライトガイド8は、例えば複数の照明用光ファイバが束となっているものであり、外パイプ7の長手方向に沿って設けられる。また、ライトガイド8は、操作部3の内部まで延伸しており、その先端は第2接続部6と連結されている。つまり、ライトガイド8の内部には、第2接続部6を介して外部のイメージングシステムから供給された光が通過する。そして、ライトガイド8を通過した光は、観察対象物の表面を照射する。
【0029】
また、挿入部2は、外パイプ7の内部にイメージファイバパイプ9を有する。イメージファイバパイプ9は、剛性の高いステンレス製の円筒状の部材であり、外パイプ7の内壁と接するように設けられる。また、イメージファイバパイプ9の内部には、長手方向沿って複数のイメージファイバ10が設けられている。また、イメージファイバパイプ9の先
端には、レンズ11が設けられている。
【0030】
レンズ11は、ライトガイド8の先端から照射され、観察対象物の表面において反射した光を集光する。そして、レンズ11により集光された光は、イメージファイバ10を通過する。また、イメージファイバ10は、操作部3の内部にまで延伸しており、その先端は第2接続部6と接続されている。つまり、イメージファイバ10を通過した光は、外部のイメージングシステムへ伝送される。ここで、イメージファイバパイプ9は、本発明の「第1の管」の一例である。
【0031】
また、挿入部2は、外パイプ7の内部にチャンネルパイプ12を有する。チャンネルパイプ12は、剛性の高いステンレス製の筒状の部材であり、長手方向に対して直交する断面の形状は略半円状である。チャンネルパイプ12は、外パイプ7の径方向にイメージファイバパイプ9と並ぶように設けられる。また、チャンネルパイプ12は、略半円状の直線部分がイメージファイバパイプ9の外表面と接するように設けられ、略半円状の弧部分が外パイプ7の内壁と接するように設けられている。よって、挿入部2、イメージファイバパイプ9及びチャンネルパイプ12は、夫々剛性の高い金属製材料から形成される部材であり、さらに一体となって挿入部2に生じる曲げモーメントに対抗することができる。よって、挿入部2、イメージファイバパイプ9及びチャンネルパイプ12の変形は抑制される。なお、このような挿入部2の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下となる。また、チャンネルパイプ12は、本発明の「第2の管」の一例である。
【0032】
また、チャンネルパイプ12の内部には、長手方向に沿って通水チャンネル13が設けられている。そして、通水チャンネル13は、操作部3の内部にまで延伸しており、その先端は第1接続部5と接続されている。つまり、通水チャンネル13には、外部装置から第1接続部5を介して供給される生理食塩水が流入している。これら生理食塩水は、挿入部2側の通水チャンネル13の先端から外部へ流出可能となっている。なお、操作部3には、図示しないが、外部装置から第1接続部5を介して生理食塩水を流入させ、挿入部2側の通水チャンネル13の先端から外部へ流出させる操作を行うための通水操作部が設けられている。
【0033】
ここで、チャンネルパイプ12の長手方向に対して直交する断面は、略半円状であり、略半円状の直線部分が、イメージファイバパイプ9の外表面と接している。チャンネルパイプ12の断面をこのように略半円状とすることで、断面が円形のチャンネルパイプ12を用いた場合と比較し、挿入部2の外パイプ7の径の大きさを変えずにチャンネルパイプ12の断面積を大きくとることができる。よって、通水チャンネル13の流路面積を大きくとることができ、通水チャンネル13を通過する生理食塩水の流量を増大させることができる。
【0034】
図3は、保持部4の長手方向に対して平行な断面の部分拡大図を例示している。図3に示されるように、保持部4は、挿入部2の基端が挿通可能な穴14を備える。そして、挿入部2の径方向について、挿入部2の外壁と穴14の内壁との間には隙間が設けられており、当該隙間は、ダンパ15によって埋められている。ダンパ15は、挿入部2の径方向に向かって伸縮可能な弾性部材である。
【0035】
ここで、挿入部2の先端が涙小管52、涙嚢53、又は鼻涙管54(後述する)に挿入されて検査又は治療される場合、これらの器官に詰まった異物(例えばタンパク質の塊)がある場合には、該異物を挿入部の先端で押し出すことが考えられる。このような場合、挿入部2の長さが30mm-60mm程度と長いため、挿入部2に大きな曲げモーメントが生じることが考えられる。そして特に挿入部2の基端には、挿入部2の先端や中央に生じる曲げモーメントよりも大きな曲げモーメントが生じることが考えられる。よって、挿
入部2の基端は、挿入部2の先端や中央よりも変形しやすいと考えられる。しかしながら、挿入部2の基端が変形しようとする場合に、ダンパ15が弾性変形することで、挿入部2の基端の変形は抑制される。
【0036】
また、挿入部2の外径は0.91mm程度であり、挿入部2の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下程度である。よって、曲げモーメントが挿入部2の先端に作用した場合に、挿入部2の中央での変形が抑制される一方で、挿入部2の基端に負荷が集中することが想定される。しかしながら、挿入部2の基端の外表面を覆うダンパ15が弾性変形することで、挿入部2の基端の変形は抑制される。
【0037】
次に、涙道内視鏡1の使用例を説明する。図4は、涙道内視鏡1が使用される場合の状況を示している。ユーザは涙道内視鏡1の操作部3を把持し、挿入部2の先端を目の近傍に位置する二つの涙点51のうちの何れかの涙点51から涙小管52へ挿入させる。ここで、例えば「涙道手術における内視鏡の重要性、栗橋克昭、頭頚部外科8巻1号」によると、涙小管52の全長と涙嚢53の長さとの和は、例えば16mmから30mm程度である。よって、全長が例えば30mm程度である挿入部2の挿入を更に進めると、挿入部2の先端は、涙嚢53まで達する。また、挿入部2の全長を例えば30mmよりも長い60mm程度とする場合には、挿入部2の挿入を更に進めると、挿入部2の先端は涙嚢53のさらに奥に位置する鼻涙管54の開口部に達することになる。
【0038】
ここで、挿入部2が涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54に挿入される場合に、これらの器官に詰まった異物(例えばタンパク質の塊)を挿入部2の先端で押し出すことが考えられる。このような場合、挿入部2の全長が30mm-60mm程度と長いため、挿入部2に大きな曲げモーメントが生じる可能性がある。しかしながら、挿入部2の外径は0.91mm程度であり、挿入部2の硬度は、ビッカース硬さ400HV以上450HV以下である。よって、挿入部2に作用する曲げモーメントによって挿入部2全体が変形することは抑制される。
【0039】
また、挿入部2が涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54に到達へするまでの間、ライトガイド8を通過した光が、涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54の内壁表面を照射する。その後、涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54の内壁表面において反射した光は、レンズ11を介して集光される。レンズ11により集められた光は、イメージファイバ10を通過する。その後、イメージファイバ10を通過した光は、外部のイメージングシステムへ伝送される。そして、外部のイメージングシステムにおいて、伝送された光から涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54の内壁表面の像が結像される。よって、涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54を検査または治療することができる。
【0040】
また、ユーザは、挿入部2が鼻涙管54に向かって挿入されている間、操作部3の通水操作部を操作し、外部装置から第1接続部5を介して生理食塩水を流入させ、挿入部2側の通水チャンネル13の先端から当該生理食塩水を流出させることができる。このような操作により、生理食塩水は涙小管52へ流入し、涙小管52は拡張される。よって、涙小管52への挿入部2の挿入はスムーズに行われる。また、挿入部2の外径にはテーパが設けられておらず略均一であることによっても、涙小管52への挿入部2の挿入はスムーズに行われる。
【0041】
また、涙小管52は生理食塩水によって洗浄される。よって、涙小管52、涙嚢53、または鼻涙管54の画像はより鮮明に取得可能となる。
【0042】
<その他実施形態>
挿入部2の長さは、挿入部2の外径に対する挿入部2のビッカース硬さの比が6倍から
15倍の範囲に収まるように、30mm以上60mm以下の範囲で設定してもよい。このように挿入部2の長さを設定する場合、挿入部2の先端で鼻涙管54等の器官に詰まった異物を押し出しても、押し出す際に挿入部2に作用する曲げモーメントの値に対して充分に大きい挿入部の硬度を確保することができる。よって、挿入部2の変形は抑制される。
【0043】
また、挿入部2の外径は、0.91mm以上0.94mm以下の範囲であればよい。また、上記のように挿入部2の外径の範囲を定めた場合には、挿入部2の外径に対する挿入部2のビッカース硬さの比が421倍から500倍の範囲に収まるように、挿入部2の外径を設定してもよい。このように挿入部2の外径を設定する場合、挿入部2の先端で鼻涙管54等の器官に詰まった異物を押し出しても、押し出す際に挿入部2に作用する曲げモーメントの値に対して充分に大きい挿入部の硬度を確保することができる。よって、挿入部2の変形は抑制される。
【0044】
また、外パイプ7、イメージファイバパイプ9、及びチャンネルパイプ12はステンレスとは異なる金属材料から形成されてもよい。また、外パイプ7、イメージファイバパイプ9、及びチャンネルパイプ12のうちの少なくとも一つは、金属製でなくともよい。また、外パイプ7の内壁と、イメージファイバパイプ9の外壁及びチャンネルパイプ12の外壁は、夫々接するように設けられなくともよく、チャンネルパイプ12の長手方向に対する断面形状は半円状でなくともよい。また、保持部4における挿入部2の基端の周囲には、ダンパ15が設けられていなくともよい。
【0045】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0046】
1: 涙道内視鏡
2: 挿入部
3: 操作部
4: 保持部
5: 第1接続部
6: 第2接続部
7: 外パイプ
8: ライトガイド
9: イメージファイバパイプ
10: イメージファイバ
11: レンズ
12: チャンネルパイプ
13: 通水チャンネル
14: 穴
15: ダンパ
51: 涙点
52: 涙小管
53: 涙嚢
54: 鼻涙管
図1
図2
図3
図4