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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】回路装置、電子機器及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
H04L1/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021019425
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122306
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】マズロエイ セブダニ マムード
(72)【発明者】
【氏名】アナンド クマー アナンダバイラバサミー
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀樹
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072460(JP,A)
【文献】特開2020-027176(JP,A)
【文献】特開2017-111219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効画像データに対して既知画像データが追加された処理対象画像データが入力され、前記処理対象画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像処理が施された前記有効画像データである処理後有効画像データと、前記画像処理が施された前記既知画像データである処理後既知画像データとを出力する画像処理回路と、
前記処理後既知画像データからCRC値を求めるCRC演算回路と、
前記CRC演算回路が求めた前記CRC値と、前記画像処理が正常である場合の前記処理後既知画像データの前記CRC値であるCRC期待値とを比較することで、前記画像処理の正誤を判定する判定回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載された回路装置において、
前記処理対象画像データに対応した画像領域は、前記有効画像データに対応した有効画像領域と、前記有効画像データが表示されない領域である非表示領域とを含み、
前記既知画像データは、前記非表示領域に追加されていることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載された回路装置において、
前記非表示領域は、ブランキング期間に対応した領域であることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項2に記載された回路装置において、
前記有効画像領域は、第1~第m有効画像領域(mは2以上の整数)に分割され、
前記非表示領域は、前記第1~第m有効画像領域の間の領域を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記CRC期待値を予め記憶するレジスターを含むことを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載された回路装置において、
CRC抽出回路を含み、
記非表示領域に、前記既知画像データと共に前記CRC期待値が追加された前記処理対象画像データが、前記画像処理回路に入力され、
前記CRC抽出回路は、
前記画像処理が施される前の前記処理対象画像データから前記CRC期待値を抽出し、抽出した前記CRC期待値を前記判定回路へ出力することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記有効画像データに対して前記既知画像データを追加して、前記処理対象画像データを出力する既知画像追加回路を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記画像処理回路が出力した処理後画像データから前記処理後既知画像データを除去することで、前記処理後有効画像データを抽出する既知画像除去回路を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載された回路装置において、
前記画像処理回路である第1画像処理回路と、
第2画像処理回路と、
を含み、
前記第1画像処理回路は、
前記処理対象画像データが入力され、前記処理対象画像データに対して、前記画像処理である第1画像処理を行うことで、前記処理後有効画像データである第1処理後有効画像データと、前記処理後既知画像データである第1処理後既知画像データとを含む第1処理後画像データを出力し、
前記第2画像処理回路は、
前記第1処理後画像データに対して第2画像処理を行うことで、前記第2画像処理が施された前記第1処理後有効画像データである第2処理後有効画像データと、前記第2画像処理が施された前記第1処理後既知画像データである第2処理後既知画像データとを含む第2処理後画像データを出力することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項9に記載された回路装置において、
前記CRC演算回路であって、前記CRC値である第1CRC値を演算する第1CRC演算回路と、
前記判定回路であって、前記第1CRC値と、前記CRC期待値である第1CRC期待値とを比較することで、前記第1画像処理の正誤を判定する第1判定回路と、
前記第2処理後既知画像データから第2CRC値を求める第2CRC演算回路と、
前記第2CRC演算回路が求めた前記第2CRC値と、前記第2画像処理が正常である場合の前記第2処理後既知画像データの前記第2CRC値である第2CRC期待値とを比較することで、前記第2画像処理の正誤を判定する第2判定回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項11】
有効画像データを受信する受信回路と、
前記有効画像データに対して既知画像データを追加して、処理対象画像データを出力する既知画像追加回路と、
第1~第n画像処理回路(nは2以上の整数)と、
第1~第nCRC演算回路と、
第1~第n判定回路と、
既知画像除去回路と、
送信回路と、
を含み、
前記第1~第n画像処理回路の第1画像処理回路は、
前記処理対象画像データに対して第1画像処理を行うことで、前記第1画像処理が施された前記有効画像データである第1処理後有効画像データと、前記第1画像処理が施された前記既知画像データである第1処理後既知画像データとを含む第1処理後画像データを出力し、
前記第1~第n画像処理回路の第i画像処理回路(iは2以上n以下の整数)は、
第i-1処理後画像データに対して第i画像処理を行うことで、前記第i画像処理が施された第i-1処理後有効画像データである第i処理後有効画像データと、前記第i画像処理が施された第i-1処理後既知画像データである第i処理後既知画像データとを含む第i処理後画像データを出力し、
前記第1~第nCRC演算回路の第kCRC演算回路(kは1以上n以下の整数)は、
第k処理後既知画像データから第kCRC値を求め、
前記第1~第n判定回路の第k判定回路は、
第1~第k画像処理が正常である場合の前記第k処理後既知画像データの前記第kCRC値である第kCRC期待値と、前記第kCRC演算回路が求めた前記第kCRC値とを比較することで、第k画像処理の正誤を判定し、
前記既知画像除去回路は、
第n処理後画像データから第n処理後既知画像データを除去することで、第n処理後有効画像データを抽出し、
前記送信回路は、
前記既知画像除去回路が抽出した前記第n処理後有効画像データを送信することを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載された回路装置は、ヘッドアップディスプレイを制御するヘッドアップディスプレイコントローラーであることを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載された回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
有効画像データに対して既知画像データが追加された処理対象画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像処理が施された前記有効画像データである処理後有効画像データと、前記画像処理が施された前記既知画像データである処理後既知画像データとを出力し、
前記処理後既知画像データからCRC値を求め、
求めた前記CRC値と、前記画像処理が正常である場合の前記処理後既知画像データの前記CRC値であるCRC期待値とを比較することで、前記画像処理の正誤を判定することを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、電子機器及び画像処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
データの送受信において、CRCを用いて通信エラーを検査する技術が知られている。CRCはCyclic Redundancy Checkの略である。この技術において、データを受信する装置は、CRC期待値と、受信データから求めたCRC値とを比較することで、送信データに対して受信データに誤りが発生していないかを検査する。このような技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-164869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送受信されるデータが画像データであり、データを受信する装置が画像処理装置であるとする。この場合、データを送信する装置は、送信画像データと共に、その送信画像データのCRC期待値を送信する。データを受信する画像処理装置は、CRC期待値と、受信画像データから求めたCRC値とを比較することで、送信画像データに対する受信画像データの正誤を判断できる。このような正誤判断は、通信の前後において装置が画像データを変化させないことが前提となっており、その前提が満たされる場合においてのみ利用可能である。しかし、画像処理装置内の画像処理モジュールには画像データを変化させるものがあり、そのような画像処理モジュールが出力するデータに対しては、CRCを用いた正誤判断を用いることができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、有効画像データに対して既知画像データが追加された処理対象画像データが入力され、前記処理対象画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像処理が施された前記有効画像データである処理後有効画像データと、前記画像処理が施された前記既知画像データである処理後既知画像データとを出力する画像処理回路と、前記処理後既知画像データからCRC値を求めるCRC演算回路と、前記CRC値と、前記処理後既知画像データのCRC期待値とを比較することで、前記画像処理の正誤を判定する判定回路と、を含む回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、有効画像データを受信する受信回路と、前記有効画像データに対して既知画像データを追加して、処理対象画像データを出力する既知画像追加回路と、第1~第n画像処理回路(nは2以上の整数)と、第1~第nCRC演算回路と、第1~第n判定回路と、既知画像除去回路と、送信回路と、を含み、前記第1~第n画像処理回路の第1画像処理回路は、前記処理対象画像データに対して第1画像処理を行うことで、前記第1画像処理が施された前記有効画像データである第1処理後有効画像データと、前記第1画像処理が施された前記既知画像データである第1処理後既知画像データとを含む第1処理後画像データを出力し、前記第1~第n画像処理回路の第i画像処理回路(iは2以上n以下の整数)は、第i-1処理後画像データに対して第i画像処理を行うことで、前記第i画像処理が施された第i-1処理後有効画像データである第i処理後有効画像データと、前記第i画像処理が施された第i-1処理後既知画像データである第i処理後既知画像データとを含む第i処理後画像データを出力し、前記第1~第nCRC演算回路の第kCRC演算回路(kは1以上n以下の整数)は、第k処理後既知画像データから第kCRC値を求め、前記第1~第n判定回路の第k判定回路は、前記第k処理後既知画像データの第kCRC期待値と、前記第kCRC値とを比較することで、第k画像処理の正誤を判定し、前記既知画像除去回路は、第k処理後画像データのうち前記第k処理後既知画像データを除去することで、第k処理後有効画像データを抽出し、前記送信回路は、前記既知画像除去回路が抽出した前記第k処理後有効画像データを送信する回路装置に関係する。
【0007】
また本開示の更に他の態様は、上記のいずれかに記載された回路装置を含む電子機器に関係する。
【0008】
また本開示の更に他の態様は、有効画像データに対して既知画像データが追加された処理対象画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像処理が施された前記有効画像データである処理後有効画像データと、前記画像処理が施された前記既知画像データである処理後既知画像データとを出力し、前記処理後既知画像データからCRC値を求め、前記CRC値と、前記処理後既知画像データのCRC期待値とを比較することで、前記画像処理の正誤を判定する画像処理方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回路装置の構成例。
図2】処理対象画像データを説明する図。
図3】有効画像データと既知画像データの配置の変形例。
図4】回路装置の第1詳細構成例。
図5】画像処理方法のフローチャート。
図6】回路装置の変形構成例。
図7】回路装置の第2詳細構成例。
図8】ソフトウェアツールを実行する処理装置の構成例。
図9】電子機器の第1構成例。
図10】電子機器の第2構成例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.回路装置
図1は、回路装置100の構成例である。回路装置100は、画像処理回路10とCRC演算回路20と判定回路30とレジスター40とを含む。
【0012】
処理装置等が出力する画像データに対して順次に複数の画像処理が行われた後、表示装置に表示される場合において、その順次に行われる複数の画像処理を画像処理パイプラインと呼ぶこととする。回路装置100は、そのような画像処理パイプラインを構成する1又は複数の回路装置のうちの1つである。回路装置100は、例えば複数の回路素子が半導体基板に集積された集積回路装置である。
【0013】
画像処理回路10には、処理対象画像データTGINが入力される。図2は、処理対象画像データTGINを説明する図である。処理対象画像データTGINは、有効画像データIMINに対して既知画像データKIPが追加された画像データとなっている。有効画像データIMINは、画像処理パイプラインにより処理された後に表示装置に表示される画像データである。既知画像データKIPは、本実施形態においてCRCによる正誤判断を行うために予め用意された画像データであって、表示装置には表示されない。
【0014】
処理対象画像データTGINの1フレームの総画素数をVH×VVとし、有効画像データIMINの画素数をAH×AVとする。このとき、AH×AVの領域を有効画像領域ADRとし、VH×VVの領域内であって且つ有効画像領域ADR以外の領域を、ブランキング期間に対応した非表示領域VDRとする。既知画像データKIPは非表示領域VDRに追加されており、図2ではハッチングを付して示している。なお、図2では非表示領域VDRの全体に既知画像データKIPが追加されているが、非表示領域VDRの一部のみに既知画像データKIPが追加されていてもよい。
【0015】
VHは、水平総画素数であり、ブランキング期間を含む水平走査方向の総画素数を意味する。水平総画素数はVirtual Horizontal Resolutionとも呼ばれる。AHは、水平アクティブ画素数であり、Actual Horizontal Resolutionとも呼ばれる。VVは、垂直総ライン数であり、ブランキング期間を含む1フレームの総ライン数を意味する。垂直総ライン数はVirtual Vertical Resolutionとも呼ばれる。AVは、垂直アクティブライン数であり、Actual Vertical Resolutionとも呼ばれる。なお、ブランキング期間等の期間と画素数とは、画素クロックの1パルスを1画素と考えることで、等価に扱うことが可能である。
【0016】
図1において、画像処理回路10は、処理対象画像データTGINに対して、画像の内容を変化させる画像処理を行い、その結果である処理後画像データTGQを出力する。有効画像データIMINと既知画像データKIPの両方が画像処理されるので、処理後画像データTGQは、画像処理された有効画像データIMINである処理後有効画像データに、画像処理された既知画像データKIPである処理後既知画像データが追加された画像データとなっている。画像の内容を変化させる画像処理とは、画像データを構成する画素データを変化させる画像処理であって、画像データのフォーマット等を変更する等の画素データそのものを変化させない処理を含まない。画像の内容を変化させる画像処理は、例えば、ガンマ補正処理、FRC処理、OSD処理、スケーリング処理、ホワイトバランス処理、画像合成処理、又はこれらのうち任意の2以上の処理の組み合わせ等である。FRCはFrame Rate Controlの略である。OSDはOn-Screen Displayの略である。
【0017】
CRC演算回路20は、処理後画像データTGQのうちの処理後既知画像データからCRC値CCを演算する。CRC演算回路20は、例えば、非表示領域VDRに存在する処理後既知画像データの全体からCRC値CCを求める。或いは、CRC演算回路20は、非表示領域VDRのうち一部の領域における処理後既知画像データからCRC値CCを求めてもよい。その場合、CRC演算回路20は、1フレームにおいて複数箇所の領域における処理後既知画像データから複数のCRC値CCを求めてもよい。例えば、CRC演算回路20は、各ラインの処理後既知画像データから、ライン毎のCRC値CCを求めてもよい。
【0018】
レジスター40は、CRC値CCの期待値であるCRC期待値CEを予め記憶している。処理後既知画像データがどのような画像データとなるかは、画像処理回路10の処理パラメーター等から予めシミュレートすることが可能であり、その処理後既知画像データから求められるCRC期待値CEも予め演算しておくことが可能である。このようにして用意されたCRC期待値CEが、例えば外部の処理装置から予めレジスター40に書き込まれている。
【0019】
判定回路30は、CRC値CCとCRC期待値CEとを比較することで、画像処理回路10における画像処理の正誤を判定する。即ち、判定回路30は、CRC値CCとCRC期待値CEとが一致する場合には、画像処理が正常に終了し、正常な処理後有効画像データが得られたと判定する。判定回路30は、CRC値CCとCRC期待値CEとが一致しない場合には、画像処理に異常が発生し、正常な処理後有効画像データが得られなかったと判定する。画像処理の異常としては、例えばショート又はノイズ等によるデータ異常が想定される。判定回路30は、判定結果を判定信号DTQとして出力する。
【0020】
なお、VH×VVの領域における有効画像データIMINと既知画像データKIPの配置は図2に限定されない。図3に変形例の一例を示す。図3において、有効画像領域は、水平走査方向に3つの領域ADR1、ADR2、ADR3に分割されており、それぞれ画素数はAH1×AV、AH2×AV、AH3×AVである。AH1+AH2+AH3=AHであり、例えばAH1=AH2=AH3であるが、AH1とAH2とAH3は互いに異なっていてもよい。領域ADR1、ADR2、ADR3は、1フレームの有効画像データが3つに分割された有効画像データIMIN1、IMIN2、IMIN3に対応している。領域ADR1と領域ADR2の間、及び領域ADR2と領域ADR3の間は、非表示領域VDRの一部となっている。画像処理パイプラインの後において既知画像データが除去される際に、3つに分割された有効画像データが連結される。
【0021】
図3のような配置を用いることで、ノイズ等による一時的な処理異常が検出されやすくなる。一方、ショート等による非一時的な処理異常に対しては図2又は図3のいずれの配置が用いられてもよい。これら図2又は図3の配置は、例えば、想定される処理異常又は検出したい処理異常に応じて予め設定される。CRC演算回路20は、その設定情報に基づいて、処理後画像データTGQのVH×VVの領域のうち処理後既知画像データが配置される非表示領域VDRを判断し、その非表示領域VDRの処理後既知画像データからCRC値CCを演算できる。
【0022】
以上の本実施形態では、回路装置100は画像処理回路10とCRC演算回路20と判定回路30とを含む。画像処理回路10は、有効画像データIMINに対して既知画像データKIPが追加された処理対象画像データTGINが入力され、処理対象画像データTGINに対して画像処理を行う。画像処理回路10は、画像処理が施された有効画像データIMINである処理後有効画像データと、画像処理が施された既知画像データKIPである処理後既知画像データとを出力する。CRC演算回路20は、処理後既知画像データからCRC値CCを求める。判定回路30は、CRC値CCと、処理後既知画像データのCRC期待値CEとを比較することで、画像処理の正誤を判定する。
【0023】
本実施形態によれば、画像の内容を変化させる画像処理であっても、CRCを用いて画像処理の正誤判定を実施できる。画像処理パイプラインにおいて種々の画像処理が行われるが、いずれの画像処理回路に対してもCRC判定を適用できる。これにより、画像処理パイプラインのいずれの画像処理回路において異常が発生したのかを検出可能となる。また、画像処理パイプラインを通してエラー検出手法をCRC判定に統一できるため、各画像処理に対して専用のエラー検出手法を開発する必要がなくなり、エラー検出手法の開発が簡素化される。
【0024】
なお、図1では1つの画像処理回路10のみ示しているが、その前段に別の画像処理回路が設けられていてもよい。その場合、前段の画像処理回路が出力する処理後画像データが処理対象画像データとして画像処理回路10に入力されることになる。即ち、画像処理回路10に入力される既知画像データは、前段の画像処理回路によって画像処理された後の既知画像データであってもよい。前段の画像処理の内容、及び画像処理回路10が行う画像処理の内容は、各々の画像処理パラメーターによって知ることが可能である。このため、後述するソフトウェアツール等を用いて、画像処理回路10が出力する処理後既知画像データを予め計算することが可能であり、その処理後既知画像データからCRC期待値を予め求めておくことが可能である。
【0025】
また本実施形態では、処理対象画像データTGINに対応した画像領域は、有効画像データIMINに対応した有効画像領域ADRと、有効画像データIMINが表示されない領域である非表示領域VDRとを含む。既知画像データKIPは、非表示領域VDRに追加されている。
【0026】
有効画像データIMINは表示画像に応じて変化することから、処理後有効画像データのCRC期待値を事前に知ることができない。本実施形態によれば、非表示領域VDRに既知画像データKIPが追加されることで、表示画像とは関係のない既知画像データKIPをCRC判定に用いることが可能となっている。即ち、処理後既知画像データのCRC期待値を事前に求めておくことが可能となっている。
【0027】
なお、処理対象画像データTGINに対応した画像領域とは、1フレーム分の処理対象画像データTGINに対応した画像領域のことであり、図2又は図3におけるVH×VVの領域である。非表示領域VDRは、上述したようにブランキング期間に対応した領域であり、処理対象画像データTGINに対応した画像領域において有効画像領域ADR以外の領域と言うこともできる。また、画像領域とは、水平走査方向の画素位置をxとし、垂直走査方向の画素位置をyとしたときのxy平面における領域を意味する。画素位置xとyは、画素クロック、水平同期信号及び垂直同期信号によって管理される。即ち、垂直同期信号に基づいてフレームが管理され、そのフレームにおける水平同期信号に基づいてライン数つまり画素位置yが管理され、各水平走査期間における画素クロックのパルス数に基づいて画素位置xが管理される。
【0028】
また本実施形態では、非表示領域VDRは、ブランキング期間に対応した領域である。
【0029】
ブランキング期間は、有効画像データが存在しない期間であることから、ブランキング期間に対応した非表示領域VDRに既知画像データKIPが追加されたとしても、その既知画像データKIPは表示装置に表示されない。このような非表示領域VDRを用いることで、既知画像データKIPを用いたCRC判定が可能となっている。
【0030】
なお、ブランキング期間に対応した領域とは、有効画像領域ADR以外の領域であり、例えば図2のようにフロントポーチ期間及びバックポーチ期間に対応した領域である。但し、ブランキング期間に対応した領域は図2に限定されず、図3のようにフロントポーチ期間及びバックポーチ期間に対応した領域以外にも、有効画像領域ADR1~ADR3の間の領域等を含んでもよい。
【0031】
また本実施形態では、有効画像領域は、第1~第m有効画像領域ADR1~ADRmに分割されてもよい。mは2以上の整数である。非表示領域は、第1~第m有効画像領域ADR1~ADRmの間の領域を含んでもよい。なお、図3にはm=3の例が示されている。
【0032】
本実施形態によれば、第1~第m有効画像領域ADR1~ADRmの間の領域にも既知画像データKIPが追加され、CRC演算回路20は、その既知画像データKIPからCRC値CCを演算できる。これにより、図2の例に比べて、既知画像データKIPがより分散されて配置されるため、ノイズ等による一時的なエラーが検出されやすくなる。
【0033】
また本実施形態では、回路装置100はレジスター40を含む。レジスター40は、CRC期待値CEを予め記憶する。
【0034】
本実施形態によれば、レジスター40は、後述するソフトウェアツール等により予め求められたCRC期待値CEを、記憶しておくことができる。そして、その予めレジスター40に記憶されたCRC期待値CEを用いて、判定回路30がCRC判定を実行できる。
【0035】
2.第1詳細構成例
図4は、回路装置100の第1詳細構成例である。回路装置100は、処理回路110と受信回路120と送信回路130とインターフェース回路140とを含む。以下、図1と異なる部分について説明し、図1と同様な部分についての説明を適宜に省略する。
【0036】
処理回路110は、画像処理回路10とCRC演算回路20と判定回路30とレジスター40と既知画像追加回路50と既知画像除去回路60とを含む。処理回路110はロジック回路である。例えば、処理回路110に含まれる各回路が個別のロジック回路により構成されてもよい。或いは、処理回路110がDSP等のプロセッサーであり、各回路の機能が記述されたプログラムや命令セットが不図示のメモリーに記憶され、そのプログラムや命令セットをプロセッサーが実行することで、各回路の機能が実現されてもよい。DSPはDigital Signal Processorの略である。
【0037】
受信回路120は、回路装置100の外部の処理装置から有効画像データIMINを受信する。受信回路120は、様々な通信インターフェースの受信回路であってよいが、一例としてはLVDS、DVI、ディスプレイポート、GMSL又はGVIF等の受信回路である。LVDSはLow voltage differential signalingの略であり、DVIはDigital Visual Interfaceの略であり、GMSLはGigabit Multimedia Serial Linkであり、GVIFはGigabit Video InterFaceの略である。
【0038】
既知画像追加回路50は、有効画像データIMINに対して既知画像データKIPを追加することで処理対象画像データTGINを生成する。既知画像データKIPは、外部の処理装置等から受信回路120又はインターフェース回路140を介して不図示のメモリーに予め書き込まれており、既知画像追加回路50は、そのメモリーに記憶された既知画像データKIPを非表示領域VDRに追加する。なお、既知画像追加回路50が省略されてもよい。その場合、外部の処理装置は、既知画像データKIPを追加した処理対象画像データTGINを回路装置100に送信し、受信回路120は、受信した処理対象画像データTGINを画像処理回路10に出力する。
【0039】
既知画像除去回路60は、処理後画像データTGQの非表示領域VDRから処理後既知画像データを除去することで、処理後有効画像データを抽出する。既知画像除去回路60は、抽出した処理後有効画像データIMQを出力する。
【0040】
送信回路130は、回路装置100の後段の装置に処理後有効画像データIMQを送信する。送信回路130は、様々な通信インターフェースの送信回路であってよいが、一例としてはLVDS、DVI、ディスプレイポート、GMSL又はGVIF等の送信回路である。
【0041】
インターフェース回路140は、回路装置100のホスト装置と回路装置100との間の通信を行う。ホスト装置は、有効画像データIMINを回路装置100に送信する処理装置と同じであってもよいし、異なってもよい。インターフェース回路140は、ホスト装置からCRC期待値CEを受信し、そのCRC期待値CEをレジスター40に書き込む。またインターフェース回路140は、レジスター40に書き込まれたCRC期待値CEを用いて判定回路30が判定した判定信号DTQを、ホスト装置に出力する。インターフェース回路140は、様々な通信インターフェースのインターフェース回路であってよいが、一例としてはI2C又はSPI等のインターフェース回路である。I2CはInter Integrated Circuitの略であり、SPIはSerial Peripheral Interfaceの略である。
【0042】
図5は、回路装置100が実行する画像処理方法のフローチャートである。画像処理方法はステップS1~S6を含む。
【0043】
ステップS1において、既知画像追加回路50が有効画像データIMINに既知画像データKIPを追加することで処理対象画像データTGINを生成する。ステップS2において、画像処理回路10が処理対象画像データTGINに対して画像処理を行い、その結果を処理後画像データTGQとして出力する。ステップS3において、CRC演算回路20が、処理対象画像データTGINの処理後既知画像データからCRC値CCを演算する。またステップS4において、判定回路30がレジスター40からCRC期待値CEを取得する。ステップS5において、判定回路30がCRC値CCとCRC期待値CEを比較することで画像処理の正誤を判定する。ステップS6において、既知画像除去回路60が処理後画像データTGQから処理後既知画像データを除去することで、処理後有効画像データを抽出する。なお、後述する図7のように回路装置100が複数の画像処理回路を含む場合には、その画像処理回路の数だけ図5のステップS2~S5が繰り返される。
【0044】
以上の本実施形態では、回路装置100は既知画像追加回路50を含む。既知画像追加回路50は、有効画像データIMINに対して既知画像データKIPを追加して、処理対象画像データTGINを出力する。
【0045】
本実施形態によれば、既知画像追加回路50が、表示画像に応じた有効画像データIMINに対して、表示画像とは関係のない既知画像データKIPを追加することで、その既知画像データKIPを用いたCRC判定が可能となる。
【0046】
また本実施形態では、回路装置100は既知画像除去回路60を含む。既知画像除去回路60は、画像処理回路10が出力した処理後画像データTGQから処理後既知画像データを除去することで、処理後有効画像データを抽出する。
【0047】
本実施形態によれば、画像処理パイプライン後において表示装置に表示されない既知画像データが除去されることで、表示装置に表示される有効画像データのみを回路装置100の後段の装置に送信できる。
【0048】
3.変形構成例
図6は、回路装置100の変形構成例である。この変形構成例では、回路装置100は、図1のレジスター40に代えてCRC抽出回路70を含む。この変形構成例は、図4の第1詳細構成例、又は後述する図7の第2詳細構成例のいずれにも適用可能である。
【0049】
図6で、処理対象画像データTGINの非表示領域VDRには、既知画像データKIPと共にCRC期待値CEが追加されている。図4のように回路装置100が既知画像追加回路50を含む場合には、既知画像追加回路50が有効画像データIMINに対して既知画像データKIPとCRC期待値CEを追加する。外部の処理装置が処理対象画像データTGINを回路装置100に送信する場合には、外部の処理装置が有効画像データIMINに対して既知画像データKIPとCRC期待値CEを追加することで処理対象画像データTGINを生成する。
【0050】
CRC抽出回路70は、処理対象画像データTGINの非表示領域VDRからCRC期待値CEを抽出し、そのCRC期待値CEを判定回路30に出力する。
【0051】
なお、画像処理回路10の前段に別の画像処理回路が設けられる場合には、CRC抽出回路70は、画像処理回路10に入力される処理対象画像データからCRC期待値CEを抽出してもよいし、いずれの画像処理も施される前の最初の既知画像データを含む処理対象画像データからCRC期待値CEを抽出してもよい。前者の場合には、前段の画像処理を考慮して、画像処理回路10に入力される時点において正しいCRC期待値CEとなるデータが非表示領域VDRに追加される。後者の場合には、いずれの画像処理も施される前の最初の既知画像データを含む処理対象画像データにおいて、非表示領域VDRにCRC期待値CEが追加されている。
【0052】
以上の本実施形態では、CRC期待値CEは、非表示領域VDRに、既知画像データKIPと共に追加されている。
【0053】
本実施形態によれば、図1のレジスター40に予めCRC期待値CEを記憶させておく必要がなく、CRC抽出回路70が処理対象画像データTGINからCRC期待値CEを取得できる。例えば、外部の処理装置が既知画像データと共にCRC期待値を処理対象画像データに追加して回路装置100に送信してもよい。この場合、回路装置100の既知画像追加回路50は省略される。
【0054】
4.第2詳細構成例
図7は、回路装置100の第2詳細構成例である。回路装置100は、処理回路110と受信回路120と送信回路130とインターフェース回路140とを含む。以下、図1又は図4と異なる部分について説明し、図1又は図4と同様な部分についての説明を適宜に省略する。
【0055】
処理回路110は、第1画像処理回路11と第2画像処理回路12と第3画像処理回路13と第1CRC演算回路21と第2CRC演算回路22と第3CRC演算回路23と第1判定回路31と第2判定回路32と第3判定回路33とレジスター40と既知画像追加回路50と既知画像除去回路60とを含む。なお、処理回路110は第1~第n画像処理回路と第1~第nCRC演算回路と第1~第n判定回路とを含んでよい。nは2以上の整数である。図7にはn=3の例を示している。
【0056】
レジスター40は、第1CRC期待値CE1と第2CRC期待値CE2と第3CRC期待値CE3とを記憶している。
【0057】
第1画像処理回路11は、処理対象画像データTGINに対して第1画像処理を行い、その結果を第1処理後画像データTGQ1として出力する。第1画像処理は、画像の内容を変化させる画像処理である。第1処理後画像データTGQ1は、有効画像データIMINに対して第1画像処理が施された結果である第1処理後有効画像データと、既知画像データKIPに対して第1画像処理が施された結果である第1処理後既知画像データとを含む。
【0058】
第1CRC演算回路21は、第1処理後既知画像データから第1CRC値CC1を演算する。第1判定回路31は、第1CRC値CC1と第1CRC期待値CE1とを比較することで、第1画像処理の正誤を判定し、判定結果を第1判定信号DTQ1として出力する。
【0059】
第2画像処理回路12は、第1処理後画像データTGQ1に対して第2画像処理を行い、その結果を第2処理後画像データTGQ2として出力する。第2画像処理は、画像の内容を変化させる画像処理である。第2画像処理は、例えば第1画像処理とは種類が異なる画像処理であってもよいし、或いは第1画像処理と種類が同じであり且つ画像処理パラメーターが異なる画像処理であってもよい。第2処理後画像データTGQ2は、第1処理後有効画像データに対して第2画像処理が施された結果である第2処理後有効画像データと、第1処理後既知画像データに対して第2画像処理が施された結果である第2処理後既知画像データとを含む。このように、第2詳細構成例では、前段の第1画像処理回路11が出力した第1処理後既知画像データが、その次の第2画像処理回路12において既知画像データとして用いられる。第2画像処理回路12は、その既知画像データに対して第2画像処理を施すことで第2処理後既知画像データを出力する。
【0060】
第2CRC演算回路22は、第2処理後既知画像データから第2CRC値CC2を演算する。第2判定回路32は、第2CRC値CC2と第2CRC期待値CE2とを比較することで、第2画像処理の正誤を判定し、判定結果を第2判定信号DTQ2として出力する。
【0061】
第3画像処理回路13は、第2処理後画像データTGQ2に対して第3画像処理を行い、その結果を第3処理後画像データTGQ3として出力する。第3画像処理は、画像の内容を変化させる画像処理である。第3画像処理は、例えば第1画像処理又は第2画像処理とは種類が異なる画像処理であってもよいし、或いは第1画像処理又は第2画像処理と種類が同じであり且つ画像処理パラメーターが異なる画像処理であってもよい。第3処理後画像データTGQ3は、第2処理後有効画像データに対して第3画像処理が施された結果である第3処理後有効画像データと、第2処理後既知画像データに対して第3画像処理が施された結果である第3処理後既知画像データとを含む。このように、第2詳細構成例では、前段の第2画像処理回路12が出力した第2処理後既知画像データが、その次の第3画像処理回路13において既知画像データとして用いられる。第3画像処理回路13は、その既知画像データに対して第3画像処理を施すことで第3処理後既知画像データを出力する。
【0062】
第3CRC演算回路23は、第3処理後既知画像データから第3CRC値CC3を演算する。第3判定回路33は、第3CRC値CC3と第3CRC期待値CE3とを比較することで、第3画像処理の正誤を判定し、判定結果を第3判定信号DTQ3として出力する。
【0063】
インターフェース回路140は、第1判定信号DTQ1と第2判定信号DTQ2と第3判定信号DTQ3とをホスト装置に送信する。
【0064】
以上の本実施形態では、回路装置100は受信回路120と既知画像追加回路50と第1~第n画像処理回路と第1~第nCRC演算回路と第1~第n判定回路と既知画像除去回路60と送信回路130とを含む。受信回路120は、有効画像データIMINを受信する。既知画像追加回路50は、有効画像データIMINに対して既知画像データKIPを追加して、処理対象画像データTGINを出力する。第1画像処理回路11は、処理対象画像データTGINに対して第1画像処理を行うことで、第1処理後画像データTGQ1を出力する。第1処理後画像データTGQ1は、第1画像処理が施された有効画像データIMINである第1処理後有効画像データと、第1画像処理が施された既知画像データKIPである第1処理後既知画像データとを含む。iを2以上n以下の整数とする。第i画像処理回路は、第i-1処理後画像データTGQi-1に対して第i画像処理を行うことで、第i処理後画像データTGQiを出力する。第i処理後画像データTGQiは、第i画像処理が施された第i-1処理後有効画像データである第i処理後有効画像データと、第i画像処理が施された第i-1処理後既知画像データである第i処理後既知画像データとを含む。kを1以上n以下の整数とする。第kCRC演算回路は、第k処理後既知画像データから第kCRC値CCkを求める。第k判定回路は、第k処理後既知画像データの第kCRC期待値CEkと、第kCRC値CCkとを比較することで、第k画像処理の正誤を判定する。既知画像除去回路60は、第n処理後画像データTGQnから第n処理後既知画像データを除去することで、第n処理後有効画像データを抽出する。送信回路130は、既知画像除去回路60が抽出した第n処理後有効画像データIMQを送信する。
【0065】
本実施形態によれば、第1~第n画像処理回路が画像処理パイプラインに含まれ、その画像処理パイプライン上の各画像処理回路に対して、CRC判定によるエラー検出が行われる。これにより、画像処理パイプラインのいずれの画像処理回路において異常が発生したのかを検出可能となる。また、画像処理パイプラインを通してエラー検出手法をCRC判定に統一できるため、各画像処理に対して専用のエラー検出手法を開発する必要がなくなり、エラー検出手法の開発が簡素化される。
【0066】
5.ソフトウェアツール
図8は、CRC期待値を生成するためのソフトウェアツールを実行する処理装置300の構成例である。処理装置300は、プロセッサー310と記憶装置320とを含む。処理装置300は、例えばパーソナルコンピューター等の情報処理装置、或いはタブレット型端末等の携帯型情報処理端末である。
【0067】
記憶装置320は、例えば半導体メモリー、ハードディスクドライブ又は光学ディスクドライブである。記憶装置320は、既知画像データKIPと、エリアパラメーターARPと、第1~第n画像処理パラメーターPAR1~PARnと、ソフトウェアツールプログラムSTLとを記憶している。エリアパラメーターARPは、既知画像データKIPが配置される非表示領域VDRの位置を示す。第1~第n画像処理パラメーターPAR1~PARnは、第1~第n画像処理の動作又は内容等を設定するための設定パラメーターである。ソフトウェアツールプログラムSTLは、CRC期待値を生成する処理が記述されたプログラムである。
【0068】
プロセッサー310は、CPU、マイクロコンピューター又はDSP等である。CPUはCentral Processing Unitの略であり、DSPはDigital Signal Processorの略である。プロセッサー310は、記憶装置320から読み出したソフトウェアツールプログラムSTLを実行することで、既知画像データKIPから第1~第nCRC期待値CE1~CEnを求める。例えば、ソフトウェアツールプログラムSTLには第1~第n画像処理回路及び第1~第nCRC演算回路における処理内容が記述されている。プロセッサー310がソフトウェアツールプログラムSTLを実行することで第1~第n画像処理回路と同様な処理を実行し、第1~第n処理後既知画像データを取得し、第1~第nCRC演算回路と同様な処理を実行し、第1~第nCRC値を演算する。プロセッサー310は、この第1~第nCRC値を第1~第nCRC期待値CE1~CEnとして出力する。
【0069】
6.電子機器
図9は、回路装置100が適用される電子機器500の第1構成例である。電子機器500は、処理装置510と電気光学装置520とを含む。
【0070】
電気光学装置520は液晶ディスプレイ又はELディスプレイ等である。ELはElectro Luminescenceの略である。電子機器500は、上記のようなディスプレイを搭載した様々な機器であってよいが、一例としては車載クラスターパネルに設けられたディスプレイ、パーソナルコンピューター等の情報処理装置、又はタブレット型端末等の携帯型情報処理端末である。
【0071】
電気光学装置520は表示コントローラー521とドライバー522と電気光学パネル523とを含む。処理装置510は、CPU、マイクロコンピューター又はDSP等であり、表示画像の画像データを表示コントローラー521に送信する。表示コントローラー521は画像データに対して画像処理を行い、その結果の画像データと共に表示制御信号をドライバー522に出力する。表示制御信号は例えば垂直同期信号、水平同期信号及び画素クロック信号である。ドライバー522は、受信した画像データと表示制御信号に基づいて電気光学パネル523を駆動する。
【0072】
本実施形態の回路装置100は、例えば図9において表示コントローラー521に適用できる。
【0073】
図10は、回路装置100が適用される電子機器500の第2構成例である。電子機器500は、処理装置510とHUD530とを含む。HUDはHead Up Displayの略である。
【0074】
HUD530は、HUDコントローラー531と投影装置532とを含む。処理装置510は、表示画像の画像データをHUDコントローラー531に送信する。HUDコントローラー531は画像データに対して画像処理を行い、その結果の画像データと共に表示制御信号を投影装置532に出力する。投影装置532は、例えばドライバーと液晶表示パネルと光源と光学装置とを含む。ドライバーは、HUDコントローラー531から受信した画像データと表示制御信号に基づいて液晶表示パネルに画像を表示させる。光源は液晶表示パネルに投影光を出射し、液晶表示パネルを透過した投影光は光学装置に入射する。光学装置は、液晶表示パネルを透過した投影光をスクリーンに投影する。スクリーンは例えば移動体のフロントガラスであるが、専用のスクリーンが設けられてもよい。移動体は自動車、飛行機又は船舶等である。
【0075】
本実施形態の回路装置100は、例えば図10においてHUDコントローラー531に適用できる。
【0076】
以上に説明した本実施形態の回路装置は、画像処理回路とCRC演算回路と判定回路とを含む。画像処理回路は、有効画像データに対して既知画像データが追加された処理対象画像データが入力され、処理対象画像データに対して画像処理を行うことで、画像処理が施された有効画像データである処理後有効画像データと、画像処理が施された既知画像データである処理後既知画像データとを出力する。CRC演算回路は、処理後既知画像データからCRC値を求める。判定回路は、CRC値と、処理後既知画像データのCRC期待値とを比較することで、画像処理の正誤を判定する。
【0077】
本実施形態によれば、画像の内容を変化させる画像処理であっても、CRCを用いて画像処理の正誤判定を実施できる。画像処理パイプラインにおいて種々の画像処理が行われるが、いずれの画像処理回路に対してもCRC判定を適用できる。これにより、画像処理パイプラインのいずれの画像処理回路において異常が発生したのかを検出可能となる。また、画像処理パイプラインを通してエラー検出手法をCRC判定に統一できるため、各画像処理に対して専用のエラー検出手法を開発する必要がなくなり、エラー検出手法の開発が簡素化される。
【0078】
また本実施形態では、処理対象画像データに対応した画像領域は、有効画像データに対応した有効画像領域と、有効画像データが表示されない領域である非表示領域とを含んでもよい。既知画像データは、非表示領域に追加されていてもよい。
【0079】
本実施形態によれば、非表示領域に既知画像データが追加されることで、表示画像とは関係のない既知画像データをCRC判定に用いることが可能となっている。即ち、処理後既知画像データのCRC期待値を事前に求めておくことが可能となっている。
【0080】
また本実施形態では、非表示領域は、ブランキング期間に対応した領域であってもよい。
【0081】
ブランキング期間は、有効画像データが存在しない期間であることから、ブランキング期間に対応した非表示領域に既知画像データが追加されたとしても、その既知画像データは表示装置に表示されない。このような非表示領域を用いることで、既知画像データを用いたCRC判定が可能となっている。
【0082】
また本実施形態では、有効画像領域は、第1~第m有効画像領域に分割されてもよい。mは2以上の整数である。非表示領域は、第1~第m有効画像領域の間の領域を含んでもよい。
【0083】
本実施形態によれば、第1~第m有効画像領域の間の領域にも既知画像データが追加され、CRC演算回路は、その既知画像データからCRC値を演算できる。これにより、有効画像領域が分割されない場合に比べて、既知画像データがより分散されて配置されるため、ノイズ等による一時的なエラーが検出されやすくなる。
【0084】
また本実施形態の回路装置は、CRC期待値を予め記憶するレジスターを含んでもよい。
【0085】
本実施形態によれば、レジスターは、後述するソフトウェアツール等により予め求められたCRC期待値を、記憶しておくことができる。そして、その予めレジスターに記憶されたCRC期待値を用いて、判定回路がCRC判定を実行できる。
【0086】
また本実施形態では、CRC期待値は、非表示領域に、既知画像データと共に追加されていてもよい。
【0087】
本実施形態によれば、レジスターに予めCRC期待値を記憶させておく必要がなく、処理対象画像データからCRC期待値を取得することが可能となる。
【0088】
また本実施形態の回路装置は既知画像追加回路を含んでもよい。既知画像追加回路は、有効画像データに対して既知画像データを追加して、処理対象画像データを出力してもよい。
【0089】
本実施形態によれば、既知画像追加回路が、表示画像に応じた有効画像データに対して、表示画像とは関係のない既知画像データを追加することで、その既知画像データを用いたCRC判定が可能となる。
【0090】
また本実施形態の回路装置は既知画像除去回路を含んでもよい。既知画像除去回路は、画像処理回路が出力した処理後画像データから処理後既知画像データを除去することで、処理後有効画像データを抽出してもよい。
【0091】
本実施形態によれば、画像処理パイプライン後において表示装置に表示されない既知画像データが除去されることで、表示装置に表示される有効画像データのみを回路装置の後段の装置に送信できる。
【0092】
また本実施形態の回路装置は、上記画像処理回路である第1画像処理回路と、第2画像処理回路と、を含んでもよい。第1画像処理回路は、処理対象画像データが入力され、処理対象画像データに対して、画像処理である第1画像処理を行うことで、処理後有効画像データである第1処理後有効画像データと、処理後既知画像データである第1処理後既知画像データとを含む第1処理後画像データを出力してもよい。第2画像処理回路は、第1処理後画像データに対して第2画像処理を行うことで、第2画像処理が施された第1処理後有効画像データである第2処理後有効画像データと、第2画像処理が施された第1処理後既知画像データである第2処理後既知画像データとを含む第2処理後画像データを出力してもよい。
【0093】
また本実施形態の回路装置は、上記CRC演算回路である第1CRC演算回路と、上記判定回路である第1判定回路と、第2CRC演算回路と、第2判定回路とを含んでもよい。第1CRC演算回路は、上記CRC値である第1CRC値を演算してもよい。第1判定回路は、第1CRC値と、上記CRC期待値である第1CRC期待値とを比較することで、第1画像処理の正誤を判定してもよい。第2CRC演算回路は、第2処理後既知画像データから第2CRC値を求めてもよい。第2判定回路は、第2CRC値と、第2処理後既知画像データの第2CRC期待値とを比較することで、第2画像処理の正誤を判定してもよい。
【0094】
また本実施形態の回路装置は、有効画像データを受信する受信回路と、既知画像追加回路と、第1~第n画像処理回路と、第1~第nCRC演算回路と、第1~第n判定回路と、既知画像除去回路と、送信回路と、を含んでもよい。nは2以上の整数である。既知画像追加回路は、有効画像データに対して既知画像データを追加して、処理対象画像データを出力してもよい。第1~第n画像処理回路の第1画像処理回路は、処理対象画像データに対して第1画像処理を行うことで、第1画像処理が施された有効画像データである第1処理後有効画像データと、第1画像処理が施された既知画像データである第1処理後既知画像データとを含む第1処理後画像データを出力してもよい。第1~第n画像処理回路の第i画像処理回路は、第i-1処理後画像データに対して第i画像処理を行うことで、第i画像処理が施された第i-1処理後有効画像データである第i処理後有効画像データと、第i画像処理が施された第i-1処理後既知画像データである第i処理後既知画像データとを含む第i処理後画像データを出力してもよい。iは2以上n以下の整数である。第1~第nCRC演算回路の第kCRC演算回路は、第k処理後既知画像データから第kCRC値を求めてもよい。kは1以上n以下の整数である。第1~第n判定回路の第k判定回路は、第k処理後既知画像データの第kCRC期待値と、第kCRC値とを比較することで、第k画像処理の正誤を判定してもよい。既知画像除去回路は、第n処理後画像データから第n処理後既知画像データを除去することで、第n処理後有効画像データを抽出してもよい。送信回路は、既知画像除去回路が抽出した第n処理後有効画像データを送信してもよい。
【0095】
これらの本実施形態によれば、複数の画像処理回路が画像処理パイプラインに含まれ、その画像処理パイプライン上の各画像処理回路に対して、CRC判定によるエラー検出が行われる。これにより、画像処理パイプラインのいずれの画像処理回路において異常が発生したのかを検出可能となる。また、画像処理パイプラインを通してエラー検出手法をCRC判定に統一できるため、各画像処理に対して専用のエラー検出手法を開発する必要がなくなり、エラー検出手法の開発が簡素化される。
【0096】
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載された回路装置を含む。
【0097】
また本実施形態の画像処理方法は、有効画像データに対して既知画像データが追加された処理対象画像データに対して画像処理を行うことで、画像処理が施された有効画像データである処理後有効画像データと、画像処理が施された既知画像データである処理後既知画像データとを出力する。画像処理方法は、処理後既知画像データからCRC値を求める。画像処理方法は、CRC値と、処理後既知画像データのCRC期待値とを比較することで、画像処理の正誤を判定する。
【0098】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置又は電子機器等の構成又は動作等、又は画像処理方法の処理手順等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10…画像処理回路、11…第1画像処理回路、12…第2画像処理回路、13…第3画像処理回路、20…CRC演算回路、21…第1CRC演算回路、22…第2CRC演算回路、23…第3CRC演算回路、30…判定回路、31…第1判定回路、32…第2判定回路、33…第3判定回路、40…レジスター、50…既知画像追加回路、60…既知画像除去回路、70…CRC抽出回路、100…回路装置、110…処理回路、120…受信回路、130…送信回路、140…インターフェース回路、300…処理装置、310…プロセッサー、320…記憶装置、500…電子機器、510…処理装置、520…電気光学装置、521…表示コントローラー、522…ドライバー、523…電気光学パネル、530…HUD、531…HUDコントローラー、532…投影装置、ADR…有効画像領域、CC…CRC値、CC1…第1CRC値、CC2…第2CRC値、CC3…第3CRC値、CE…CRC期待値、CE1…第1CRC期待値、CE2…第2CRC期待値、CE3…第3CRC期待値、DTQ…判定信号、DTQ1…第1判定信号、DTQ2…第2判定信号、DTQ3…第3判定信号、IMIN…有効画像データ、IMQ…処理後有効画像データ、KIP…既知画像データ、TGIN…処理対象画像データ、TGQ…処理後画像データ、TGQ1…第1処理後画像データ、TGQ2…第2処理後画像データ、TGQ3…第3処理後画像データ、VDR…非表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10