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特許7639385動作環境設定装置、動作環境設定方法、及び、動作環境設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】動作環境設定装置、動作環境設定方法、及び、動作環境設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/445 20180101AFI20250226BHJP
【FI】
G06F9/445
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021023260
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125590
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】和田崎 修三
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-279360(JP,A)
【文献】特開2006-252570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される電圧入力手段と、
印加された電圧値を検出する検出手段と、
検出された検出電圧値に基づいて、情報処理資源の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した前記設定情報を用いて、前記情報処理資源に動作環境を設定する設定手段と、
を備え
前記電圧入力手段は、
抵抗値が異なる複数の第1の電気抵抗のいずれかを着脱可能な端子と、
前記第1の電気抵抗と直列に接続される所定の抵抗値を有する第2の電気抵抗と、
を備え、
前記検出手段は、直列に接続された前記第1及び第2の電気抵抗の全体に所定の電圧値の電圧が印加されたときの、前記第2の電気抵抗に印加された電圧値を検出する、
動作環境設定装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記検出電圧値が含まれる、電源ノイズによって電圧値が変動する範囲を含む第1の電圧帯に関連付けられた前記設定情報を選択する、
請求項1に記載の動作環境設定装置。
【請求項3】
前記検出電圧値に関する隣接する2つの前記第1の電圧帯の間に、前記複数の設定情報のいずれとも関連付けされていない第2の電圧帯が含まれる、
請求項に記載の動作環境設定装置。
【請求項4】
複数の前記検出電圧値の個々と、前記複数の設定情報の個々と、を関連付ける設定情報管理テーブルを記憶する記憶手段をさらに備える、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の動作環境設定装置。
【請求項5】
前記設定情報は、前記情報処理資源に関する、動作させるプロセッサのコア数、使用するメモリの容量、クロック周波数、及び、回路素子の電源電圧値の少なくともいずれかを含む、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の動作環境設定装置。
【請求項6】
前記情報処理資源をさらに備える、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の動作環境設定装置。
【請求項7】
外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される電圧入力手段を備え、
前記電圧入力手段が、
抵抗値が異なる複数の第1の電気抵抗のいずれかを着脱可能な端子と、
前記第1の電気抵抗と直列に接続される所定の抵抗値を有する第2の電気抵抗と、
備える情報処理装置によって、
直列に接続された前記第1及び第2の電気抵抗の全体に所定の電圧値の電圧が印加されたときの、前記第2の電気抵抗に印加された電圧値を検出し、
検出した検出電圧値に基づいて、情報処理資源の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した前記設定情報を用いて、前記情報処理資源に動作環境を設定する、
動作環境設定方法。
【請求項8】
外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される電圧入力手段を備え、
前記電圧入力手段が、
抵抗値が異なる複数の第1の電気抵抗のいずれかを着脱可能な端子と、
前記第1の電気抵抗と直列に接続される所定の抵抗値を有する第2の電気抵抗と、
備えるコンピュータに、
直列に接続された前記第1及び第2の電気抵抗の全体に所定の電圧値の電圧が印加されたときの、前記第2の電気抵抗に印加された電圧値を検出する検出処理と、
検出された検出電圧値に基づいて、情報処理資源の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した前記設定情報を用いて、前記情報処理資源に動作環境を設定する設定処理と、
を実行させるための動作環境設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作環境設定装置、動作環境設定方法、及び、動作環境設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
社会のIT(Information Technology)化やサービスの高度化の進展により、計算能力の向上に対する要求はますます高まっている。このような要求に応えるため、例えば多様なGPGPU(General Purpose computing with Graphic Processing Unit)等が搭載されたモジュール(カード)が計算資源として使用されるようになってきている。しかしながら、例えば同じメーカの同じ世代のモジュールであっても、モジュールを搭載するサーバの形態(例えば、ラックマウントであるのかタワー型であるのか)、あるいはモジュールに対する給電能力の違い等に対応するために、モジュールに複数のモデル(種別)を設ける必要がある。したがって、このような複数のモデルのモジュールの設計及び製造のコストを削減するために、ハードウェアやファームウェア等の共通化に関する技術が期待されている。
【0003】
このような技術に関連する技術として、特許文献1には、複数の異なる機種間でファームウェア用ROM(Read Only Memory)を共通化する装置が開示されている。この装置は、機種の異なる複数のコンピュータ装置のマザーボードに実装可能なファームウェア用ROMに、この実装可能な複数種類のマザーボードに対する共通の処理を実行するための共通プログラムデータを記憶する。そしてこの装置は、当該ROMに、この実装可能なマザーボード毎に異なる固有の処理をそれぞれ実行するためのマザーボード別固有プログラムデータと、この実装可能な各マザーボードの種類を識別するためのマザーボード識別データを記憶する。
【0004】
また、特許文献2には、製品毎に異なるファームウェアの統一化と選択的なインストールとを行う機器が開示されている。この機器では、センサからの入力信号を処理するCPU(Central Processing Unit)によって、不揮発性メモリに保持されているファームウェアを読み出して揮発性メモリに格納する起動処理を実行後、メイン処理が実行される。当該不揮発性メモリは、標準製品の仕様と、標準製品の仕様に追加仕様が付加された高機能製品の仕様とを含む統合ファームウェアを保持する。当該不揮発性メモリは、標準製品と高機能製品とのいずれかを選択するためのモデル型情報を保持する。そしてこの機器におけるCPUは、モデル型情報に基づいて、当該不揮発性メモリに保持された統合ファームウェアより、標準製品の仕様あるいは高機能製品の仕様を読み出して当該揮発性メモリに格納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-066999号公報
【文献】特開2013-073342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1及び2では、複数のモデルのモジュールの機能に対応可能なファームウェアを記憶し、モデルを識別する識別子に基づいて、識別されたモデルに関するファームウェアの部分を機能させることによって、ファームウェアを共通化している。しかしながら、特許文献1及び2は、当該識別子をROMに記憶しているので、あるモデル用に製造されたモジュールを別のモデルとして機能させることはできず、コスト削減において十分であるとは言えない。したがって、モジュールにおいてモデルの識別子を柔軟に変更できるようにすることが望ましい。
【0007】
モジュールにおいてモデルの識別子を変更する方法の一つとして、例えば、モジュールの基板上に複数の抵抗を設けてマイクロコントローラのIO(Input Output)に入力し、プルアップとプルダウンとの組み合わせにより設定する方法が考えられる。しかしながらこの場合はモデル毎に基板を分ける必要がありコストが増加する要因となる。またモデルの識別子を変更する別の方法として、モジュールにデバッグ用のケーブルを繋いでマイクロコンピュータに直接識別子を入力する方法が考えられるが、この場合はモジュールにコネクタを設ける必要があり製造コストが増加する。さらに、一般的にコネクタはモジュールに対してサイズが大きいことが多いので、モジュールにおけるブラケット等のアクセスの良い場所に当該コネクタを配置することは困難である。このため、モデルの識別子を変更する際にカバーを外す等の作業が発生し、作業コストが増加する要因となる。以上のことから、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置(モジュール)に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現することが課題である。
【0008】
本発明の主たる目的は、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現する動作環境設定装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る動作環境設定装置は、外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される電圧入力手段と、印加された電圧値を検出する検出手段と、検出された検出電圧値に基づいて、情報処理資源の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した前記設定情報を用いて、前記情報処理資源に動作環境を設定する設定手段と、を備える。
【0010】
上記目的を達成する他の見地において、本発明の一態様に係る動作環境設定方法は、外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される電圧入力手段を備える情報処理装置によって、印加された電圧値を検出し、検出した検出電圧値に基づいて、情報処理資源の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した前記設定情報を用いて、前記情報処理資源に動作環境を設定する。
【0011】
また、上記目的を達成する更なる見地において、本発明の一態様に係る動作環境設定プログラムは、外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される電圧入力手段を備えるコンピュータに、印加された電圧値を検出する検出処理と、検出された検出電圧値に基づいて、情報処理資源の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した前記設定情報を用いて、前記情報処理資源に動作環境を設定する設定処理とを実行させる。
【0012】
更に、本発明は、係る動作環境設定プログラム(コンピュータプログラム)が格納された、コンピュータ読み取り可能な、不揮発性の記録媒体によっても実現可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現する動作環境設定装置等が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るモジュール10の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る設定情報管理テーブル124が表すデータを例示する図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るモジュール10の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態の変形例に係るモジュール10Aの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る動作環境設定装置40の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の各実施形態に係るモジュールあるいは動作環境設定装置を実現可能な情報処理装置900の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るモジュール10の構成を示すブロック図である。モジュール10は、例えばサーバ等の情報処理装置におけるIOスロット等に搭載され、サーバの機能を拡張するデバイスである。モジュール10は、モジュール10の動作環境を設定する動作環境設定装置としての機能を備える。そしてモジュール10は、異なる動作環境を表す設定情報を用いることによって、複数のモデル(種別)のモジュールとして動作可能である。
【0017】
モジュール10は、大別して、電圧入力部11、マイクロコントローラ12、及び、情報処理資源13を備える。電圧入力部11は、電圧入力手段の一例である。
【0018】
情報処理資源13は、プロセッサ131及びメモリ132を備える。プロセッサ131は、例えばGPGPU等のプロセッサ(アクセラレータ)である。メモリ132は、プロセッサ131が使用するデータを記憶する。プロセッサ131及びメモリ132は、例えば、昨今のメモリ積層技術によって、シリコンインタポーザ上で接続されてもよい。
【0019】
電圧入力部11は、端子111、端子112、及び、電気抵抗113を備え、出力電圧が可変である電源20から電圧が印加される。端子111は、電源20の正極の端子と電源ケーブルにより接続される。端子112は、電源20の負極の端子と電源ケーブルにより接続される。電気抵抗113は、片側が端子111及びマイクロコントローラ12と電気的に導通可能に接続され、もう片側が端子112と電気的に導通可能に接続されている。電気抵抗113の端子112と接続された側は、電気的に接地されている。即ち、電気抵抗113の端子112と接続された側の電位は0である。電気抵抗113は、静電気等による大きな電圧がマイクロコントローラ12に印加されることを防止する機能を有する。
【0020】
マイクロコントローラ12は、例えば、モジュール10の電源の初期化、あるいは、モジュール10の動作環境の設定等を制御する機能を備える汎用のLSI(Large Scale Integration)である。
【0021】
マイクロコントローラ12は、検出部121、設定部122、記憶部123、及び、AD(Analog to Digital)コンバータ125を備える。検出部121及び設定部122は、検出手段及び設定手段の一例である。
【0022】
記憶部123は、例えば記憶容量が数キロバイトから数メガバイト程度の不揮発性のメモリであり、モジュール10のファームウェアを記憶している。当該ファームウェアは、モジュール10の全モデルで共通であることとする。記憶部123は、また、後述する設定情報管理テーブル124を記憶している。
【0023】
ADコンバータ125は、電圧入力部11が電源20から印加された電圧を表す電気信号を受信し、その電気信号のAD変換を行う。ADコンバータ125は、AD変換を行った電気信号を、検出部121に入力する。
【0024】
検出部121は、ADコンバータ125から入力された電気信号に基づいて、電圧入力部11が電源20から印加された電圧の電圧値を検出する。検出部121は、検出した検出電圧値を、設定部122に入力する。
【0025】
設定部122は、検出部121から入力された検出電圧値を、設定情報管理テーブル124と照合し、その照合結果に基づいて、情報処理資源13の動作環境を設定する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る設定情報管理テーブル124が表すデータを例示する図である。設定情報管理テーブル124は、図2に例示する通り、検出部121による検出電圧値と、モジュール10のモデルの識別子と、モデル毎の動作環境を設定する設定情報が格納された記憶部123におけるアドレスとを関連付ける情報である。
【0027】
モデル毎の動作環境を設定する設定情報は、例えば、プロセッサ131において動作させるコアの数、メモリ132において使用する記憶領域の容量、プロセッサ131の動作周波数及びVdd(回路素子の電源電圧)等の動作環境を表す情報である。モデル間におけるこのような動作環境の違いは、例えば、プロセッサ131の製造時における品質のばらつき(正常動作可能なコア数や動作周波数)、あるいは、モジュール10が搭載された装置における冷却や給電等の環境条件の違いなどによって生じる。
【0028】
図2に例示する設定情報管理テーブル124によれば、検出部121によって検出された検出電圧値が0.2V(ボルト)から0.5Vまでの電圧帯に含まれる場合、設定部122は、モジュール10がモデルAとして動作するように、情報処理資源13の動作環境を設定する。この場合、設定部122は、モジュール10をモデルAとして動作させるための設定情報が格納されている記憶部123のアドレス0x100000から、当該設定情報を読み出し、当該設定情報に基づいて情報処理資源13の動作環境を設定する。但し、「0x」は16進数であることを示す記号である。設定部122は、この際、記憶部123におけるモジュール10のモデルの識別子を記憶する所定の領域に、モデルAであることを記憶する。尚、当該所定の領域は、初期状態において、いずれかのモデルであることを記憶していないこととする。
【0029】
同様に、検出部121によって検出された検出電圧値が0.7Vから1.0Vまでの電圧帯に含まれる場合、設定部122は、モジュール10がモデルBとして動作するように、情報処理資源13の動作環境を設定する。この場合、設定部122は、モジュール10をモデルBとして動作させるための設定情報が格納されている記憶部123のアドレス0x200000から、当該設定情報を読み出し、当該設定情報に基づいて情報処理資源13の動作環境を設定する。設定部122は、この際、記憶部123におけるモジュール10のモデルの識別子を記憶する所定の領域に、モデルBであることを記憶する。
【0030】
設定部122は、モジュール10をモデルC乃至モデルFのいずれかとして動作するように情報処理資源13の動作環境を設定する場合も、上述と同様に動作する。
【0031】
図2に例示する設定情報管理テーブル124は、あるモデルに関連付けられた検出部121による検出電圧値を、0.3V幅の電圧帯(第1の電圧帯)として定義している。ユーザは、例えばモジュール10をモデルAとして動作するように設定する場合、電源20からの出力電圧を0.2乃至0.5Vの中央値である0.35Vに設定する。ユーザは、同様に、モジュール10をモデルBとして動作するように設定する場合、電源20からの出力電圧を0.7乃至1.0Vの中央値である0.85Vに設定する。
【0032】
そして、電圧入力部11が電源20によって印加される電圧の電気信号には電源ノイズが含まれるので、上述した場合において、検出部121による検出電圧値は、0.35Vあるいは0.85Vではなく、電源ノイズ分ずれた値となる。しかしながら、電源ノイズは一般的に数十ミリV程度であり、上述した0.3V幅の電圧帯は、電源ノイズによって電圧値が変動する範囲を含んでいる。設定部122は、このような設定情報管理テーブル124を用いることによって、電源ノイズにより情報処理資源13の動作環境を誤って設定することを回避可能である。
【0033】
尚、設定情報管理テーブル124における、あるモデルに関連付けられた検出部121による検出電圧値に関する電圧帯の幅は、0.3Vに限定されない。当該電圧帯の幅は、電源ノイズによって電圧値が変動する範囲を含むことが可能な値であればよい。
【0034】
図2に例示する設定情報管理テーブル124は、また、各モデルに関連付けられた検出部121による検出電圧値に関する隣接する2つの0.3V幅の電圧帯の間に、いずれのモデルとも関連付けられていない(即ちモデルが未定義である)、0.2V幅の電圧帯(第2の電圧帯)を設けている。例えば、上述した0.3V幅の電圧帯に収まらないような大きな電源ノイズが突発的に発生した場合、検出部121による検出電圧値は、モデルが未定義である0.2V幅の電圧帯に含まれるので、この場合、設定部122は、情報処理資源13の動作環境を設定せずに、検出部121は、電圧入力部11が電源20から印加された電圧の電圧値を再度検出する。設定部122は、このような設定情報管理テーブル124を用いることによって、電源ノイズにより情報処理資源13の動作環境を誤って設定することをより確実に回避可能である。
【0035】
尚、設定情報管理テーブル124における、いずれのモデルとも関連付けられていない電圧帯の幅は、0.2Vに限定されない。
【0036】
設定部122は、モジュール10が最初に起動する際に、上述した動作によって、記憶部123におけるモジュール10のモデルの識別子を記憶する所定の領域に、ユーザが指示したモデルの識別子を記憶する。モジュール10の2回目以降の起動においては、電源20による電圧入力部11に対する電圧の印加が行われずに、設定部122は、記憶部123に記憶済みであるモデルの識別子に基づいて、情報処理資源13の動作環境を設定すればよい。
【0037】
次に図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係るモジュール10の動作(処理)について詳細に説明する。
【0038】
電圧入力部11は、電源20から、複数の電圧値のうちのいずれかの電圧が印加され、印加された電圧の電気信号をADコンバータ125に入力する(ステップ101)。ADコンバータ125は、電圧入力部11から入力された、印加された電圧の電気信号をAD変換し、AD変換した電気信号を検出部121に入力する(ステップ102)。
【0039】
検出部121は、ADコンバータ125から入力された電気信号から、電圧入力部11に印加された電圧値を検出し、検出電圧値を設定部122に入力する(ステップ103)。設定部122は、検出電圧値を設定情報管理テーブル124と照合し、検出電圧値がいずれかのモデルと関連付けられているか確認する(ステップ104)。
【0040】
検出電圧値がいずれかのモデルと関連付けられていない場合(ステップS105でNo)、処理はステップS103へ戻る。検出電圧値がいずれかのモデルと関連付けられている場合(ステップS105でYes)、設定部122は、検出電圧値と関連付けられたモデルに関する設定情報を記憶部123から読み出す(ステップS106)。設定部122は、読み出した設定情報を用いて、情報処理資源13の動作環境を設定し(ステップS107)、全体の処理は終了する。
【0041】
本実施形態に係るモジュール10は、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現することができる。その理由は、モジュール10は、電源20により印加された電圧値に基づいて、情報処理資源13の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した設定情報を用いて、情報処理資源13に動作環境を設定するからである。
【0042】
以下に、本実施形態に係るモジュール10によって実現される効果について、詳細に説明する。
【0043】
複数のモデルのモジュールの機能に対応可能なファームウェアを記憶し、モデルを識別する識別子に基づいて、識別されたモデルに関するファームウェアの部分を機能させることによって、ファームウェアを共通化することが行われている。この際、例えば当該識別子をROMに記憶すると、あるモデル用に製造されたモジュールを別のモデルとして機能させることはできないので、モデルの識別子を柔軟に変更できるようにすることが望ましい。モジュールにおいてモデルの識別子を変更する方法として、例えば、モジュールの基板上に複数の抵抗を設けてマイクロコントローラのIOに入力し、プルアップとプルダウンとの組み合わせにより設定する方法が考えられる。あるいは例えば、モジュールにデバッグ用のケーブルを繋いでマイクロコンピュータに直接識別子を入力する方法が考えられる。しかしながらこれらの方法は、製造コスト及び作業コストが増加する要因となるので、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置(モジュール)に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現することが課題である。
【0044】
このような課題に対して、本実施形態に係るモジュール10は、電圧入力部11と検出部121と設定部122とを備え、例えば図1乃至図3を参照して上述した通り動作する。即ち、電圧入力部11は、外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される。検出部121は、印加された電圧値を検出する。そして設定部122は、検出された検出電圧値に基づいて、情報処理資源13の動作環境に関する複数の設定情報のいずれかを選択し、選択した設定情報を用いて、情報処理資源13に動作環境を設定する。
【0045】
即ち、本実施形態に係るモジュール10は、各モデルと関連付けられた電圧値の電圧が外部から印加されるのみで、モジュール10がそのモデルとして動作するように動作環境を設定する。これによりモジュール10は、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るモジュール10は、図2に例示する設定情報管理テーブル124を用いて、検出部121による検出電圧値が含まれる、電源ノイズによって電圧値が変動する範囲を含む第1の電圧帯に関連付けられた設定情報を選択する。そして、設定情報管理テーブル124において、検出電圧値に関する隣接する2つの第1の電圧帯の間に、複数の設定情報のいずれとも関連付けされていない第2の電圧帯が含まれている。即ち、モジュール10は、このような設定情報管理テーブル124を用いることによって、電源ノイズにより情報処理資源13の動作環境を誤って設定することをより確実に回避することができる。
【0047】
また、モジュール10に対して外部から複数の電圧値のいずれかの電圧を印加する方法は、上述した電源20を用いた方法に限定されない。
【0048】
図4は、本実施形態の変形例に係るモジュール10Aの構成を示すブロック図である。モジュール10Aは、大別して、電圧入力部11A、マイクロコントローラ12、及び、情報処理資源13を備える。尚、モジュール10Aにおいて、上述したモジュール10と同等の機能を備える構成に関しては、モジュール10のときと同一の符号を付与することにより、」その詳細な説明を省略することとする。
【0049】
電圧入力部11Aは、端子111、端子112A、及び、電気抵抗113を備える。電気抵抗113は、第2の電気抵抗の一例である。端子112Aはモジュール10Aにおける電源の配線と接続され、その電位はVdd(一般的には例えば3.3V)である。端子111及び端子112Aは、着脱可能な電気抵抗30を介して電気的に導通可能に接続される。電気抵抗30は、第1の電気抵抗の一例である。電気抵抗30は、抵抗値が異なる複数の電気抵抗のいずれかである。この場合、電気抵抗113と電気抵抗30とは直列に接続され、電気抵抗113及び電気抵抗30の全体に印加される電圧はVddとなる。そして、電気抵抗113の両端に印加される電圧がマイクロコントローラ12に入力され、その電圧値は式1に示す値となる。
(R113/(R113+R30))xVdd ・・・・・・(式1)
但し式1において、R113は電気抵抗113の抵抗値を表し、R30は電気抵抗30の抵抗値を表す。尚、「/」、「+」、「x」は、順に、除算、加算、乗算を表す演算子である。
【0050】
本変形例に係るモジュール10Aでは、着脱可能な電気抵抗30の抵抗値を調整することによって、検出部121によって検出される電圧値を、各モデルと関連付けされた値に調整することができる。したがって、本変形例に係るモジュール10Aは、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを、電源20を用いるモジュール10のときよりも、さらに簡易な構成で実現することができる。
【0051】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る動作環境設定装置40の構成を示すブロック図である。但し、説明の都合上、動作環境設定装置40に加えて情報処理資源50を図5に記載し、情報処理資源50との関係もふまえて、動作環境設定装置40の動作について説明することとする。
【0052】
本実施形態に係る動作環境設定装置40は、電圧入力部41、検出部42、及び、設定部43を備えている。電圧入力部41、検出部42、及び、設定部43は、順に、電圧入力手段、検出手段、及び、設定手段の一例である。
【0053】
電圧入力部41は、外部から複数の電圧値のいずれかの電圧が印加される。電圧入力部41は、例えば、第1の実施形態に係る電圧入力部11と同様に、電源20のような外部の電源から電圧が印加され、電圧入力部11と同様に動作する。
【0054】
検出部42は、電圧入力部41に印加された電圧値を検出する。検出部42は、例えば、第1の実施形態に係る検出部121と同様に動作する。
【0055】
設定部43は、検出部42によって検出された検出電圧値に基づいて、情報処理資源50の動作環境に関する複数の設定情報430のいずれかを選択する。そして設定部43は、選択した設定情報430を用いて、情報処理資源50に動作環境を設定する。設定部43は、例えば第1の実施形態に係る設定部122と同様に、検出電圧値を設定情報管理テーブル124のような情報と照合することによって、設定情報430を選択する。
【0056】
本実施形態に係る動作環境設定装置40は、ハードウェアやファームウェアが共通化された異なるモデルの装置に対して、モデルに応じた動作環境を設定することを低コストで実現することができる。その理由は、動作環境設定装置40は、外部から印加された電圧値に基づいて、情報処理資源50の動作環境に関する複数の設定情報430のいずれかを選択し、選択した設定情報430を用いて、情報処理資源50に動作環境を設定するからである。
【0057】
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において図1図4、及び、図5に示したモジュールあるいは動作環境設定装置における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、図1図4、及び、図5において、少なくとも、下記構成は、プロセッサによって実行される命令を含むソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・検出部121及び42、
・設定部122及び43、
・記憶部123における記憶制御機能。
【0058】
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、図6を参照して説明する。
【0059】
図6は、本発明の各実施形態に係るモジュールあるいは動作環境設定装置を実現可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、図6は、図1図4、及び、図5に示したモジュールあるいは動作環境設定装置を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
【0060】
図6に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えている。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD-ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・モニターやスピーカ、キーボード等の入出力インタフェース909。
【0061】
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。
【0062】
そして、上述した実施形態は、図6に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給してもよい。例えば、その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(図1図4、及び、図5)における上述した構成、或いはフローチャート(図3)の機能である。本実施形態に係るジョブ割当制御装置の機能は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。
【0063】
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD-ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本実施形態に係る情報処理装置に供給されるコンピュータプログラムは、そのプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
【0064】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 モジュール
10A モジュール
11 電圧入力部
11A 電圧入力部
111 端子
112 端子
112A 端子
113 電気抵抗
12 マイクロコントローラ
121 検出部
122 設定部
123 記憶部
124 設定情報管理テーブル
125 ADコンバータ
13 情報処理資源
131 プロセッサ
132 メモリ
20 電源
30 電気抵抗
40 動作環境設定装置
41 電圧入力部
42 検出部
43 設定部
430 設定情報
50 情報処理資源
900 情報処理装置
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 ハードディスク(記憶装置)
905 通信インタフェース
906 バス
907 記録媒体
908 リーダライタ
909 入出力インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6