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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20250226BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20250226BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250226BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250226BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
C08G59/32
C08G59/40
C08K3/013
C08L63/00
H05K1/03 610L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021023283
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125606
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019231(JP,A)
【文献】特開2019-210319(JP,A)
【文献】特開2020-132676(JP,A)
【文献】特開2019-014843(JP,A)
【文献】特開平03-139517(JP,A)
【文献】住友化学,スーパエンジニアリング・プラスチックス,スミエポキシ,2024年08月02日,https://www.sumitomo-chem.co.jp/sep/products/elm/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/32
C08G 59/40
C08K 3/013
C08L 63/00
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び
(B)活性エステル系硬化剤、を含む、樹脂組成物であって、
(B)成分が、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤を含み
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、5質量%以上30質量%以下である、樹脂組成物
【化1】
(一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。)
【請求項2】
さらに、(C)無機充填材を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(D)エラストマーを含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(E)高分子量成分を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(F)硬化促進剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分が、一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化2】
(一般式(2)中、Rはアルキル基を表す。)
【請求項7】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、本発明は、当該樹脂組成物の硬化物、並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて形成される。このような樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に開示される樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-66792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂組成物を硬化することによって形成される硬化物は、半導体装置のプリント配線板の絶縁層として用いられうる。そのため、当該硬化物は、良好な誘電正接を示すことが求められる。また、この硬化物で形成された絶縁層は、めっき導体層との間のピール強度に優れることが望ましい。さらには、デスミア処理後にクラックの発生が抑制されていることが望ましい。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、誘電正接が良好であり、ピール強度に優れ、及びデスミア処理後にクラックの発生が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート;前記樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含むプリント配線板;並びに、前記プリント配線板を含む半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明者は、(A)特定のエポキシ樹脂、及び(B)活性エステル系硬化剤を用いることで前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び
(B)活性エステル系硬化剤、を含む、樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。)
[2] さらに、(C)無機充填材を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] さらに、(D)エラストマーを含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] さらに、(E)高分子量成分を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] さらに、(F)硬化促進剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (A)成分が、一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】
(一般式(2)中、Rはアルキル基を表す。)
[7] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[9] [8]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘電正接が良好であり、ピール強度に優れ、及びデスミア処理後にクラックの発生が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート;前記樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含むプリント配線板;並びに、前記プリント配線板を含む半導体装置;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び(B)活性エステル系硬化剤を含む。
【化3】
(一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。)
【0011】
本発明では、(A)成分を含有させることにより、誘電正接が良好であり、ピール強度に優れ、及びデスミア処理後にクラックの発生が抑制された硬化物を得ることが可能となる。また、本発明では、通常、熱膨張係数(CTE)が低く、ガラス転移温度が高い硬化物を得ることもできる。
【0012】
樹脂組成物は、更に必要に応じて、(C)無機充填材、(D)エラストマー、(E)高分子量成分、(F)硬化促進剤、(G)(A)成分以外のエポキシ樹脂、(H)(B)成分以外の硬化剤、及び(I)その他の添加剤などの任意の成分を含んでいてもよい。以下、各成分について説明する。
【0013】
<(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)成分として、(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を含有する。
【化4】
(一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。)
【0014】
(A)成分を樹脂組成物に含有させることでピール強度を向上させることができ、デスミア処理後にクラックの発生を抑制できるようになる。また、その硬化物の機械的強度を向上させることも可能となる。
【0015】
(A)成分は、樹脂組成物の粘度を低減させる観点から、温度25℃で液状であることが好ましい。
【0016】
一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状、分枝状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましく、本発明の効果を顕著に得る観点からメチル基が特に好ましい。
【0017】
一般式(1)中のRの結合位置としては、ベンゼン環が窒素原子と結合している部位を基準としてオルト位で結合していることが好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂は、一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【化5】
(一般式(2)中、Rはアルキル基を表す。)
【0019】
一般式(2)中、Rはアルキル基を表し、一般式(1)中のRと同じである。
【0020】
(A)成分は、市販品を用いることができる。市販品としては、住友化学社製の「ELM-100H」、「ELM-100」等が挙げられる。(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは90g/eq.~1000g/eq.又は90g/eq.~500g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0022】
(A)成分の分子量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは150~3000、さらに好ましくは250~1500である。
【0023】
(A)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0024】
<(B)活性エステル系硬化剤>
樹脂組成物は、(B)成分として、(B)活性エステル系硬化剤を含有する。活性エステル系硬化剤を使用することで誘電正接を向上させることができ、ピール強度に優れるようになる。(B)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0026】
具体的には、(B)成分としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤等が挙げられる。中でも(B)成分としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、及びナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤から選ばれる1種以上であることがより好ましく、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤がさらに好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0027】
(B)活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤として「EXB9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB-8150-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製)、「PC1300-02-65T」(エア・ウォーター社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);「EXB-8500-65T」(DIC社製);等が挙げられる。
【0028】
(B)活性エステル系硬化剤の活性エステル基当量は、誘電正接を低くできるとともに、密着性に優れた硬化物を得る観点から、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、1当量の活性エステル基を含む活性エステル系硬化剤の質量である。
【0029】
(A)成分と(B)活性エステル系硬化剤との量比は、[活性エステル系硬化剤の活性基の合計数]/[(A)成分のエポキシ基の合計数]の比率で、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。ここで、「(A)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「活性エステル系硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する活性エステル系硬化剤の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で除した値を全て合計した値である。(A)と(B)活性エステル系硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能になる。
【0030】
(B)活性エステル系硬化剤の含有量は、誘電正接を低くできるとともに、ピール強度に優れた硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、上限は好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0031】
<(C)無機充填材>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として(C)無機充填材を含有していてもよい。(C)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、誘電正接に優れる硬化物を得ることが可能となる。
【0032】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC2050-SXF」;などが挙げられる。
【0034】
(C)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0035】
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10g、及び分散剤(サンノプコ社製「SN9228」)0.1gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」、島津製作所社製「SALD-2200」等が挙げられる。
【0036】
(C)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定することで得られる。
【0037】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;シラン系カップリング剤;フェニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0038】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0039】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0040】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0041】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0042】
(C)無機充填材の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0043】
<(D)エラストマー>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として(D)エラストマーを含有していてもよい。(D)成分としてのエラストマーは、柔軟性を有する樹脂であり、好ましくは、ゴム弾性を有する樹脂または他の成分と重合してゴム弾性を示す樹脂である。ゴム弾性としては、例えば、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて、引っ張り試験を行った場合に、1GPa以下の弾性率を示す樹脂が挙げられる。(D)成分は1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
(D)成分の一実施形態としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂を含む。これらは、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートの双方を包含する用語である。これらの構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0045】
(D)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から高分子量であることが好ましい。(D)成分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、さらに好ましくは2,000以上、2,500以上、3,000以上、4,000以上又は5,000以上である。Mnの上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下、800,000以下又は700,000以下である。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0046】
(D)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂、及び25℃で液状である樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。ここで、Tgが複数観測される樹脂について、最も低温のTgが25℃以下であれば「Tgが25℃以下の樹脂」に該当する。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により測定しうる。
【0047】
Tgが25℃以下である樹脂について、Tgは、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。Tgの下限は特に限定されないが、通常-50℃以上とし得る。また、25℃で液状である樹脂について、好ましくは20℃以下で液状であり、より好ましくは15℃以下で液状である。
【0048】
(D)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A)成分等と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、(A)成分等と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も包含する。
【0049】
官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基であることが好ましい。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、数平均分子量(Mn)は、5,000以上であることが好ましい。
【0050】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリブタジエン構造は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。また、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが、水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂を「ポリブタジエン樹脂」ということがある。ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(エポキシ化ポリブタジエン)、「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ダイセル社製の「PB3600」、「PB4700」(ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、「エポフレンドA1005」、「エポフレンドA1010」、「エポフレンドA1020」(スチレンとブタジエンとスチレンブロック共重合体のエポキシ化物)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、「R-45EPT」(ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。ポリブタジエン樹脂としてはまた、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリマー(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリマー)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリマーのブタジエン構造の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%~95質量%である。該ポリマーの詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0051】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂を「ポリ(メタ)アクリル樹脂」ということがある。ポリ(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0052】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリカーボネート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリカーボネート構造を含有する樹脂を「ポリカーボネート樹脂」ということがある。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0053】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリシロキサン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリシロキサン構造を含有する樹脂を「シロキサン樹脂」ということがある。シロキサン樹脂の具体例としては、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0054】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリアルキレン構造又はポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリアルキレン構造を含有する樹脂を「アルキレン樹脂」ということがある。また、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂を「アルキレンオキシ樹脂」ということがある。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造が特に好ましい。アルキレン樹脂及びアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0055】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリイソプレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソプレン構造を含有する樹脂を「イソプレン樹脂」ということがある。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0056】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソブチレン構造を含有する樹脂を「イソブチレン樹脂」ということがある。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0057】
(D)エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリスチレン構造を含有する樹脂を「スチレン樹脂」ということがある。スチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体等が挙げられる。スチレン樹脂の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製);スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体「FG1924」(Kraton社製)が挙げられる。
【0058】
(D)成分の他の好適な一実施形態としては、(D)成分として有機充填材を含む。有機充填材としては、ゴム成分を含む有機充填材を広く用いることができる。有機充填材に含まれるゴム成分としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系エラストマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、Tgが例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0059】
有機充填材の一実施形態としては、上記で挙げたゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型ゴム粒子である。ここでコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0060】
ゴム成分を含む有機充填材の具体例としては、例えば、チェイルインダストリーズ社製の「CHT」;UMGABS社製の「B602」;呉羽化学工業社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」、アイカ工業社製の「スタフィロイドAC3355」、「スタフィロイドAC3816」、「スタフィロイドAC3832」、「スタフィロイドAC4030」、「スタフィロイドAC3364」等が挙げられる。これらは、コア-シェル型ゴム粒子である。
【0061】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0062】
<(E)高分子量成分>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として(E)成分として、高分子量成分をさらに含んでもよい。(E)成分は1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
(E)成分の重量平均分子量(Mw)は、誘電正接がより一層優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、さらに好ましくは10000以上である。該Mwの上限は、特に限定されないが、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。(E)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0064】
(E)成分としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、(E)成分としては、誘電正接に優れる硬化物を得る観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、フェノキシ樹脂がより好ましい。
【0065】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0066】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0067】
ポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得ることができる。ポリイミド樹脂は市販品を用いてよく、例えば、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0068】
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート構造を有する樹脂である。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
【0069】
ポリカーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0070】
(E)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0071】
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として(F)硬化促進剤を含有していてもよい。(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0073】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0074】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0075】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0076】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0077】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0078】
(F)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0079】
<(G)(A)成分以外のエポキシ樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として(G)(A)成分以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0080】
(G)成分としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(G)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(G)成分には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とがある。本発明の樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。
【0082】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0083】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);「ESN-4100V」、「ESN-4100VEK75」(ナフタレン骨格エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0084】
(G)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む(G)成分の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0085】
(G)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。(G)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0086】
(G)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0087】
<(H)(B)成分以外の硬化剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(H)(B)成分以外の硬化剤を含んでいてもよい。(H)成分としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。中でも、絶縁信頼性を向上させる観点から、(H)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤のいずれか1種以上であることが好ましく、フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤のいずれかであることがより好ましく、フェノール系硬化剤を含むことがさらに好ましい。(H)成分は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0088】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0089】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0090】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0091】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0092】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0093】
(H)成分として硬化剤を含有する場合、(A)成分と(B)成分及び(H)成分との量比は、[(A)成分のエポキシ基の合計数]:[(B)成分及び(H)成分の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.05~1:3がより好ましく、1:0.1~1:2がさらに好ましい。ここで、「(A)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)成分の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)成分及び(H)成分の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)成分及び(H)成分の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(B)成分及び(H)成分として、(A)成分との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0094】
(H)成分として硬化剤を含有する場合、(A)成分とすべての(H)成分との量比は、[(A)成分のエポキシ基の合計数]:[(H)成分の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:1の範囲が好ましく、1:0.03~1:0.5がより好ましく、1:0.05~1:0.3がさらに好ましい。ここで、「(H)成分の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(H)成分の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)成分と(H)成分との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0095】
(H)成分の含有量としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0096】
<(I)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、難燃剤等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0097】
樹脂組成物は、例えば、上述した成分を、任意の順で混合することによって、製造することができる。また、各成分を混合する過程で、温度を適切に調整することにより、加熱及び/又は冷却を行ってもよい。また、各成分の混合中又は混合後に、ミキサー等の撹拌装置を用いて撹拌を行って、各成分を均一に分散させてもよい。さらに、必要に応じて、樹脂組成物に脱泡処理を行ってもよい。
【0098】
<樹脂組成物の物性、用途>
樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を組み合わせて含むので、誘電正接が良好であり、ピール強度に優れ、及びデスミア処理後にクラックの発生が抑制された硬化物を得ることができる。
【0099】
樹脂組成物の190℃で90分間熱硬化させて得られた硬化物は、低い誘電正接を有する。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の条件で樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の誘電正接Dfは、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.005以下、更に好ましくは0.004以下である。前記の硬化物の誘電正接Dfの下限値は、特に限定されないが、0.001以上でありうる。硬化物の誘電正接は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0100】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させて得られた硬化物はガラス転移温度(Tg)が高いという特性を示す。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れる絶縁層を得ることができる。ガラス転移温度としては、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0101】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させて得られた硬化物は、めっきとの間のめっきピール強度が高いという特性を示す。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、めっき導体層との間のピール強度が高い絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の方法で絶縁層及びめっき導体層の形成を行った場合、絶縁層及び導体層との間のめっきピール強度は、好ましくは0.1kgf/cm以上、より好ましくは0.2kgf/cm以上、特に好ましくは0.3kgf/cm以上でありうる。めっきピール強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、10.0kgf/cm以下でありうる。めっきピール強度は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0102】
樹脂組成物を170℃で30分間熱硬化させて得られた硬化物は、通常、デスミア後のクラックの発生が抑制されるという特性を示す。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、デスミア後のクラックの発生が抑制された絶縁層を得ることができる。デスミア後の回路基板の銅パッド部を100個観察しても、クラックの数は10個以下である。デスミア後のクラックは実施例において説明する方法によって測定できる。
【0103】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、通常、熱膨張係数(CTE)が低いという特性を示す。よって、熱膨張係数が低い絶縁層を得ることができる。熱膨張係数としては、好ましくは20ppm/℃以下、より好ましくは18ppm/℃以下、さらに好ましくは15ppm/℃以下である。下限は特に限定されないが、1ppm/℃以上等とし得る。熱膨張係数は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0104】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適であり、中でも、絶縁層形成用の樹脂組成物として特に好適である。よって、例えば、樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。また、樹脂組成物は、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。樹脂組成物はまた、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂、マルチチップパッケージ、パッケージオンパッケージ、ウェハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、システムインパッケージ等、樹脂組成物が使用されうる用途で広範囲に使用できる。
【0105】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本実施形態に係る樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層を形成するための樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適である。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に、更に再配線層が形成されてもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0106】
上述した樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも、使用することができる。
【0107】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
【0108】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
【0109】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0110】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0111】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0112】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0113】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0114】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0115】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0116】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0117】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0118】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0119】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0120】
[プリント配線板]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、上述した樹脂組成物を硬化して得られる硬化物で形成された絶縁層を含む。
【0121】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程
【0122】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0123】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0124】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0125】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0126】
積層の後に、大気圧下、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0127】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0128】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を使用してよい。樹脂組成物層は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させてもよいが、通常は、加熱により熱硬化させる。
【0129】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0130】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0131】
プリント配線板を製造する方法は、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程を、さらに含んでいてもよい。支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0132】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0133】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されない。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0134】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0135】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0136】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0137】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0138】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0139】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0140】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0141】
導体層は、メッキによって形成することが好ましい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0142】
絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0143】
[半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、上述したプリント配線板を含む。この半導体装置は、上述したプリント配線板を用いて製造することができる。
【0144】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0145】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0146】
[実施例1]
下記式で表されるエポキシ樹脂(住友化学社製、「ELM-100H」、エポキシ当量104g/eq.)3部、ビフェニル骨格エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3100」、エポキシ当量258g/eq.)3部、ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)6部、ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)8部、活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量234g/eq.)41.9部、無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)150部、有機フィラー(DOW社製、「EXL-2655」)4部、フェノキシ樹脂(「YX7553BH30」、不揮発分30%のシクロヘキサノン、MEK混合溶液)6.7部、硬化促進剤(和光純薬工業製、4-ジメチルアミノピリジン)0.1部、及び、硬化促進剤(四国化成社製のイミダゾール化合物「1B2PZ」)0.1部、MEK10部、トルエン10部を混合し、高速回転ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂ワニスを得た。
ELM-100H:
【化6】
【0147】
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂ワニスを80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0148】
[実施例2]
実施例1において、
1)ビフェニル骨格エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3100」、エポキシ当量258g/eq.)3部を用いず、
2)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)の量を6部から8部に変え、
3)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)の量を8部から9.3部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0149】
[実施例3]
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(住友化学社製、「ELM-100H」、エポキシ当量104g/eq.)の量を3部から6部に変え、
2)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)の量を6部から4部に変え、
3)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)の量を8部から5.3部に変え、
4)活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量234g/eq.)の量を41.9部から43.5部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0150】
[実施例4]
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(住友化学社製、「ELM-100H」、エポキシ当量104g/eq.)の量を3部から6部に変え、
2)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)の量を6部から7部に変え、
3)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)8部を用いず、
4)活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量234g/eq.)の量を41.9部から45.2部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0151】
[実施例5]
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(住友化学社製、「ELM-100H」、エポキシ当量104g/eq.)の量を3部から6部に変え、
2)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)の量を6部から7部に変え、
3)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)6部を用いず、
4)クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製、「LA-3018-50P」、水酸基当量151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部を加えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0152】
[実施例6]
実施例5において、クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製、「LA-3018-50P」、水酸基当量151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部を、フェノールノボラック型硬化剤(DIC社製、「LA-1356」、水酸基当量146、不揮発分60%のMEK溶液)3.3部に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0153】
[比較例1]
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(住友化学社製、「ELM-100H」、エポキシ当量104g/eq.)3部を用いず、
2)ビフェニル骨格エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3100」、エポキシ当量258g/eq.)の量を3部から1部に変え、
3)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)の量を6部から4部に変え、
4)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VKE75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)の量を6部から3部に変え、
5)アミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)2部を加え、
6)活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量234g/eq.)の量を41.9部から32.3部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
EP3950Lの構造を以下に示す。
【化7】
【0154】
[比較例2]
比較例1において、
1)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VKE75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)3部を用いず、
2)アミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)の量を2部から5部に変えた。
以上の事項以外は比較例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0155】
[比較例3]
比較例2において、アミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)5部を、ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)5部に変えた。以上の事項以外は比較例2と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0156】
[比較例4]
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(住友化学社製、「ELM-100H」、エポキシ当量104g/eq.)の量を3部から11部に変え、
2)ビフェニル骨格エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3100」、エポキシ当量258g/eq.)の量を3部から5部に変え、
3)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)の量を6部から11部に変え、
4)ナフタレン骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100VEK75」、エポキシ当量360g/eq.、不揮発分75%のMEK溶液)8部を用いず、
5)活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量234g/eq.)41.9部を3用いず、
6)クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製、「LA-3018-50P」、水酸基当量151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)34部を加えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
【0157】
[誘電正接の測定]
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、190℃にて90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物の硬化物を得た。この硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接Dfを測定した。3本の試験片について測定を行った。
【0158】
[ガラス転移温度Tg、熱膨張係数CTEの測定]
上記で得られた硬化物を、長さ20mm、幅6mmに切り出して、評価用硬化物を得た。この評価用硬化物について、リガク社製の熱機械分析装置(TMA)を用い、引張加重法で25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度で1回目のTMA曲線を得た。その後、同一の評価用硬化物について同じ測定を行い、2回目のTMA曲線を得た。2回目に得られたTMA曲線から、ガラス転移温度Tg(℃)、熱膨張係数CTE(ppm/℃)の値を求めた。
【0159】
[メッキピール強度の測定]
(1)内層回路基板の下地処理:
内層回路基板として、内層回路(銅箔)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層回路基板の両面を、メック社製「CZ8101」にて1μmエッチングして、銅表面の粗化処理を行った。
【0160】
(2)樹脂シートのラミネート:
樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。このラミネートは、樹脂シートの樹脂組成物層が内層回路基板と接するように実施した。また、このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより、実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間、熱プレスを行った。
【0161】
(3)樹脂組成物の硬化:
ラミネートされた樹脂シート及び内層回路基板を130℃で30分間加熱し、続けて170℃で30分間加熱して、樹脂組成物層を硬化して、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層回路基板及び絶縁層をこの順で備える積層基板を得た。
【0162】
(4)粗化処理:
前記の積層基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液))に、60℃で10分間浸漬した。次に、積層基板を、粗化液(アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に、80℃で20分間浸漬した。その後で、積層基板を、中和液(アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液))に、40℃で5分間浸漬した。その後、積層基板を、80℃で30分乾燥して、「評価基板A」を得た。
【0163】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ:
評価基板Aを、PdClを含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。その後、150℃にて30分間加熱して、アニール処理を行った。その後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成を行った。その後、硫酸銅電解メッキを行い、20μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を190℃にて60分間行って、「評価基板B」を得た。
【0164】
(6)メッキピール強度の測定:
評価基板Bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みを形成した。矩形部分の一端を剥がして、つかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴んだ。つかみ具により、室温中にて、50mm/分の速度で前記の矩形部分を垂直方向に引きはがし、35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)をメッキピール強度として測定した。
【0165】
[デスミア後のクラックの評価]
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが25μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂ワニスを80℃~100℃(平均90℃)で2.5分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0166】
上記で得られた厚さ25μmの樹脂シートを残銅率60%になるように直径350μmの円形の銅パッド(銅厚35μm)を400μm間隔で格子状に形成したコア材(日立化成工業社製「E705GR」、厚さ400μm)の両面にバッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。これを、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱した。さらに支持層を剥離し、得られた回路基板を、膨潤液であるアトテックジャパン(株)のスエリングディップ・セキュリガントPに60℃で10分間浸漬した。次に、粗化液であるアトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で30分間浸漬した。最後に、中和液であるアトテックジャパン社製のリダクションソリューション・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬することで粗化処理を行った。粗化処理後の回路基板の銅パッド部を100個観察し、絶縁層のクラックの有無を以下の基準で評価した。
〇:クラックが10個以下。
×:クラックが10個より多い。
【0167】
【表1】
【0168】
実施例1~6において、(C)~(H)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。