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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】繊維構造物および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20250226BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20250226BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20250226BHJP
   D02G 3/26 20060101ALI20250226BHJP
   D03D 15/292 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/41 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/49 20210101ALI20250226BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20250226BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20250226BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20250226BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
D06M15/53
D01F8/14 B
D02G3/04
D02G3/26
D03D15/292
D03D15/41
D03D15/49 100
D04B1/16
D04B21/16
D06M15/277
D06M15/333
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021028561
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129752
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅井 直希
(72)【発明者】
【氏名】主森 敬一
(72)【発明者】
【氏名】秋月 健司
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-007030(JP,B2)
【文献】特開平09-241949(JP,A)
【文献】特開2000-220049(JP,A)
【文献】特表2022-552948(JP,A)
【文献】特開2004-003042(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073898(WO,A1)
【文献】特開昭50-094293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/00 - 8/18
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D06M 13/00 - 15/715
D03D 1/00 - 27/18
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維と短繊維束から構成された複合紡績糸を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であって、
前記長繊維の潜在トルク方向と前記複合紡績糸の撚り方向が逆方向であり、かつ前記長繊維がバイメタル型の潜在捲縮性複合繊維又は偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維であり、
繊維表面に
親水性成分および/または
炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤
が担持されてなり、
防汚性評価後のソイルリリース性が3級以上である繊維構造物。
【請求項2】
ポリエーテル成分が繊維表面に担持されてなり、
前記ポリエーテル成分のサイズ排除クロマトグラフィーから得られるポリエチレングリコール換算重量平均分子量が1500~4000g/molの範囲であり、
ポリエチレングリコール換算重量平均分子量の同換算数平均分子量に対する比が1.00~1.35の範囲である請求項1に記載の繊維構造物。
【請求項3】
繊維表面の少なくとも1部に、親水性成分としてポリオキシアルキレン基を有するフッ素系撥水撥油性樹脂とポリビニルアルコールを含む樹脂被膜を有する請求項1または2に記載の繊維構造物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の繊維構造物を少なくとも一部に用いてなる繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造物および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋や河川中のプラスチックごみが生物に取り込まれることによる、生態系への悪影響が懸念されている。特に懸念されているのはプラスチック容器が紫外線などにより微細化され、マイクロサイズのプラスチック片となったものであるが、全てのプラスチック製品に対しても、廃棄物の削減やマイクロプラスチック問題との関連性有無が議論されている。
【0003】
一方、現在販売されている繊維製品には、合成繊維が多く用いられ、洗濯時に裁断部などから合成繊維が洗濯屑として脱落する場合があり、発生した洗濯屑は洗濯機の糸屑回収装置等で回収されている。
【0004】
合成繊維や天然繊維の短繊維などの複数の繊維種を組み合わせてなる短短複合紡績糸や、短繊維と長繊維からなる複合紡績糸は、様々な繊維種の長所を取り入れることができるため、ビジネスシャツやユニフォームなどの幅広い用途に用いられている。
【0005】
また、防汚加工を行うことで、汚れを除去しやすくする方法等が提案されてきた(特許文献1、2)。
【0006】
一方、近年ではユーザーの着用快適性を高めるべく、ポリウレタン系弾性長繊維との複合紡績糸を用いることで、紡績糸特有の独特の風合いや性能を持ちつつ、紡績糸では発現が難しかったストレッチ性を有する織物なども開発されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2019/073898号
【文献】特開2004-137617号公報
【文献】特開2020-169401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら合成繊維や天然繊維の短繊維などの複数の繊維種を組み合わせてなる短短複合紡績糸や、短繊維と長繊維からなる複合紡績糸を用いた繊維構造物は、長繊維単独繊維構造物と比較して、洗濯等の物理衝撃によって短繊維の脱落に起因する繊維屑量が多い傾向にある。
【0009】
特許文献1、2に記載の防汚加工のみでは、汚れの除去性に優れるため、短時間の洗濯での汚れを除去できるため、洗濯時に発生する繊維屑量が少なくできるものの、生地のストレッチ性(伸縮性)に劣るため、着心地が悪いものであった。これを改良するために特許文献1、2に記載の技術を特許文献3に記載の伸縮性織物に適用すると、ポリウレタン系弾性繊維は他の合成繊維と比較して、親油性が高い糸種であるため、油性汚れが付着すると繊維に浸透し、防汚加工を施したとしても、汚れを洗浄するために長時間の洗濯が必要となり、結果として繊維屑量が増加してしまう傾向があった。
【0010】
したがって、本発明は、合成繊維を含む繊維製品に関し、ポリウレタン繊維含有に近い優れたストレッチ性を有しながら、優れた汚れの除去性を有することにより、短時間で汚れを除去することができ、結果として洗濯時に発生する繊維屑量が少ない繊維製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明は下記の構成を採用する。
【0012】
(1)長繊維と短繊維束から構成された複合紡績糸を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であって、
前記長繊維の潜在トルク方向と前記複合紡績糸の撚り方向が逆方向であり、かつ前記長繊維がバイメタル型の潜在捲縮性複合繊維又は偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維であり、
防汚性評価後のソイルリリース性が3級以上である繊維構造物。
【0013】
(2)ポリエーテル成分が繊維表面に担持されてなり、
前記ポリエーテル成分のサイズ排除クロマトグラフィーから得られるポリエチレングリコール換算重量平均分子量が1500~4000g/molの範囲であり、
ポリエチレングリコール換算重量平均分子量の同換算数平均分子量に対する比が1.00~1.35の範囲である(1)に記載の繊維構造物。
【0014】
(3)繊維表面の少なくとも1部に、親水性成分としてポリオキシアルキレン基を有するフッ素系撥水撥油性樹脂とポリビニルアルコールを含む樹脂被膜を有する(1)または(2)に記載の繊維構造物。
【0015】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の繊維構造物を少なくとも一部に用いてなる繊維製品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリウレタン繊維含有に近い優れたストレッチ性を有しながら、優れた汚れの除去性を有することにより、短時間で汚れを除去することができ、結果として洗濯時に発生する繊維屑量が少ない繊維製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、バイメタル型の潜在捲縮性複合繊維の一例であり、異なるポリマーが貼り合わされていることを説明するための繊維横断面の概念図である。
図2図2は、偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維の一例であり、その繊維断面における重心位置を説明するための繊維横断面の概念図である。
図3図3は、偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維における繊維径(D)と最小厚み(S)を説明するための繊維断面の概念図である。
図4図4は、偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維の繊維断面におけるIFR(繊維断面におけるA成分、B成分の界面の曲率半径)を説明するための繊維断面の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る繊維構造物は、該繊維構造物の少なくとも一部に長繊維と短繊維束から構成された複合紡績糸を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に用いる繊維構造物は、特に限定されず、織物であっても編物であってもよい。該繊維構造物が織物である場合、織組織としては特に限定されず、例えば平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。また、該繊維構造物が編物である場合、編組織としては特に限定されず、例えば丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッシェル編を含む)、パイル編、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織などが挙げられる。
【0020】
繊維構造物は、長繊維と短繊維束から構成された複合紡績糸を少なくとも一部に用いていれば、該複合紡績糸以外に、合成繊維や天然繊維を含有してもよい。
【0021】
合成繊維としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート繊維、ポリアルキレンテレフタレートのジカルボン酸成分あるいは、ジオール成分として、例えば、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸等の共重合、ジエチレングリコール等のジオール成分を用いた共重合体からなる繊維、ポリエチレングリコールなどをブレンドした変性ポリアルキレンテレフタレート繊維等の芳香族ポリエステル系繊維、L-乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維が挙げられ、なかでもポリエステル系繊維が好ましく挙げられる。また、環境影響の観点から、リサイクルポリエステルを使用することが好適である。
【0022】
ここでいうリサイクルポリエステルとは、使用後に回収されたポリエステルを解重合し、再重合してなるポリエステル、いわゆるケミカルリサイクルポリエステルや使用後に回収されたポリエステルを選別・粉砕し、洗浄後に溶融し、再ペレット化してなるポリエステル、いわゆるマテリアルリサイクルポリエステルを指す。資源の再利用、環境問題といった観点からポリエステル繊維を用いる場合は回収されたポリエステル樹脂を可能な限り多く含有することが好ましい。好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。上限としては100質量%でも構わないが、糸強度の点からは90質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
繊維の横断面形状は、真円断面に加えて、扁平断面、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形断面、一部に凹凸部を持ったダルマ断面、Y型断面、星型断面等の様々な断面形状をとることができる。
【0024】
また、合成繊維には、ヒンダードフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ベリノン系、キナクリドン系などの有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタンなどの粒子、静電剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0025】
天然繊維としては特に限定されず、例えば綿やウール、レーヨン、キュプラ繊維等が挙げられる。これらは紡績糸、混繊糸、交織、交編、混綿等いずれの形態で含まれていても構わない。
【0026】
本発明では、ストレッチ性、防汚性、繊維屑量低減の観点より、バイメタル型または、偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維の長繊維と短繊維束から構成された複合紡績糸を使用する。
【0027】
なお、ストレッチ性向上のためにはポリウレタン系繊維を使用することが一般的であるが、ポリウレタン系繊維は親油性が高く、防汚性が低下する傾向にあるため、本発明においては使用しないことが好ましい。使用するとしても0.1質量%以下、さらには、0.01質量%以下にすることが好ましい。
【0028】
そして長繊維としては、バイメタル型または、偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維であることが重要である。
【0029】
ここでいうバイメタル型の潜在捲縮性複合繊維は、図1に示すように、異なるポリマーであるA成分1、B成分2が貼り合わされた横断面を有する複合繊維であって、A成分1、B成分2として、固有粘度や共重合成分、共重合率等が異なるポリマーを用いて貼り合わせ、それらの弾性回復特性や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。固有粘度差を有するバイメタル型複合の場合、紡糸、延伸時に高固有粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まると言ってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。
【0030】
ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多い(伸長特性に優れ、見映えが良い)、コイルの耐へたり性が良い(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(弾発性に優れ、フィット感がよい)等である。これらの要求を全て満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば適度な張り腰、ドレープ性、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材とすることができる。
【0031】
ここで、コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性および回復性を有するものが、コイル特性の観点から好ましい。
【0032】
良好なストレッチ性を達成するために好適なポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリフェニレンサルファイド、およびこれらの共重合ポリマーが挙げられる。これらの分子量を変更して高分子量ポリマーと、低分子量ポリマーを使用する、あるいは一方成分をホモポリマーとし、他方成分を共重合ポリマーとして使用することもできる。
【0033】
また、ポリマー組成が異なる組み合わせについても、例えば、A成分/B成分でポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートなどの種々の組み合わせが挙げられる。
【0034】
中でも高収縮成分として、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略記する)を主体としたポリエステルを用いることで、代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する)やポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略記する)繊維と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、優れた弾性回復性、伸長回復性が得られる。これは、PBTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ-ゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0035】
ここで、本発明におけるPBTとは、テレフタル酸またはその誘導体を主たる酸成分とし、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を主たるグリコール成分として重縮合して得られるポリエステルである。ただし、全酸成分または全グリコール成分中20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、低収縮成分(低粘度成分)には高収縮成分であるPBTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成能のあるPETが好ましい。
【0037】
また、両成分の複合比率は製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分(質量比)=75:25~35:65の範囲が好ましく、65:35~45:55の範囲がより好ましい。
【0038】
また、偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維は、図2に示すように、芯成分であるA成分3の周囲が鞘成分であるB成分4で覆われた横断面を有する複合繊維であって、A成分3、B成分4として、上記のバイメタル型の潜在捲縮性複合繊維と同様に、固有粘度やポリマー種、共重合成分、共重合率等が異なることによる収縮特性の差を有する2種ポリマーが接合してなる複合断面を有するものである。なかでもポリマー特性が異なる2種のポリマーが実質的に分離せず接合された状態で存在し、A成分がB成分を完全に覆っていることが好ましい。
【0039】
図2において、網掛け部分がB成分4であり、白抜き部分がA成分3であって、複合繊維断面におけるA成分の重心点が重心点a5であり、複合繊維断面の重心が重心点C6である。
【0040】
上記偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維においてはA成分3の重心点a5と複合繊維断面の重心点C6が離れていることが好ましく、これにより熱処理後に繊維が高収縮成分側に大きく湾曲することになる。このため、複合繊維が繊維軸方向に湾曲し続けることにより、3次元的なスパイラル構造をとり、良好な捲縮発現することになるのである。ここで、重心位置が離れているほどより良好な捲縮が発現し、良好なストレッチ性能が得られるのである。
【0041】
本発明で用いる偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維には、A成分3を覆っているB成分4の最小となる厚みS7と繊維径(複合繊維の直径)D8の比S/Dが0.01~0.1であることが好ましい。より好ましくは、0.02~0.08である。この範囲であれば、耐摩耗性などに優れ、十分な捲縮発現力とストレッチ性能を得ることが出来る。
【0042】
図3に示した繊維断面を用いて更に詳細に説明する。
【0043】
ここで偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維を繊維軸に対して垂直方向に切断した際の横断面において、B成分が最薄となる部分の長さが最小厚みS7である。
【0044】
さらに、最小厚みSの1.05倍以内の厚みとなる部分の周囲長が複合繊維の全体の周囲長の1/3以上を占めていることが好ましい。これは、繊維の輪郭に沿ってA成分が存在していることを意味しており、同一面積比の従来の偏心芯鞘複合繊維と比較すると、本発明が、繊維断面においてそれぞれの成分の重心位置がより離れており、微細なスパイラルを形成し、良好な捲縮を発現する。より好ましくは、最小厚みSの1.05倍以内の厚みとなる部分の周囲長を繊維全体の周囲長の2/5以上とすることで捲縮斑がなく良好なストレッチ性能が得られる。
【0045】
さらに、繊維断面におけるA成分とB成分の界面の曲率半径IFR9として、繊維径D8を2で除した値Rとしたとき下記式1を満足することが好ましい。ここで言う曲率半径IFR9とは、図4に示したように繊維横断面において、A成分を覆っているB成分の厚みの最大厚みとなるA成分とB成分の界面の曲率に接する円(鎖線)の半径を指す。
(IFR/R)≧1・・・(式1)
【0046】
これは、界面がより直線に近いことを意味している。本発明は従来の貼り合わせ型捲縮繊維の断面に近い形態でA成分とB成分の界面を直線に近い曲線とすることで、従来の偏心芯鞘複合繊維ではなし得なかった高い捲縮を発現することができるので好ましい。より好ましくは、1.2以上である。
【0047】
ここで言うA成分を覆っているB成分の厚みが最小となる最小厚みSおよび繊維径D、界面の曲率半径IFR、A成分とB成分の面積比は、以下のように求める。
【0048】
すなわち、偏心芯鞘複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差を利用して、A成分とB成分の接合部のコントラストを明確にすることができる。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の外接円径を測定した値が本発明で言う繊維径Dに相当する。ここで、10本以上の観察が不可能の場合は、他の偏心芯鞘複合繊維を観察し、これらも含めて合計で10本以上を観察すればよい。ここで言う外接円径とは、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に2点以上で最も多く外接する真円の径を意味する。
【0049】
また、繊維径Dを測定した画像を用いて、10本以上の繊維について、A成分を覆っているB成分の最小となる厚みを測定した値が、本発明で言う最小厚みSに相当する。さらには、これら繊維径Dと最小厚みS、曲率半径IFRについては、単位をμmとして測定し、少数第3位以下を四捨五入する。以上の操作を撮影した10画像について、測定した値およびその比(S/D)の単純な数平均値を求める。
【0050】
また、A成分とB成分の面積比は上述で撮影した画像、および画像解析ソフト三谷商事社製「WinROOF2015」を用いて、繊維全体の面積およびA成分、B成分の面積を求めた後、面積比を求める。
【0051】
複合紡績糸に用いる短繊維束を構成する単繊維としては、前記合成繊維、天然繊維としてあげたものを用いることができる。
【0052】
なかでも好ましくは、環境影響の観点から、合成繊維としては、ポリエステル(より好ましくはリサイクルポリエステル)を使用し、天然繊維としては、綿やウール、レーヨン、キュプラを使用することが好適である。
【0053】
上記短繊維は、特に限定はないが、リング精紡機、空気精紡機、MVS機などの通常の紡績機を用いて、フリース状の短繊維束とすることができる。
【0054】
本発明で用いる複合紡績糸は、長繊維と短繊維束から構成されるが、芯糸として、長繊維を使用し、鞘糸として短繊維束を使用した長短複合糸であることが好ましい。
【0055】
上記長短複合糸の紡績方法としては、リング精紡、空気精紡等を好ましく用いることができるが、ストレッチバック性や品位の観点から、リング精紡がより好ましく用いられる。
【0056】
本発明で用いる長短複合糸の番手は特に限定されないが、長短複合紡績糸を製造する上で、短繊維の断面構成繊維本数が50本以上となるよう番手を決定するのが好ましい。またヨリ数Tは一般的な長短複合紡績糸よりやや低めに設定するのがよく、T(回/2.54cm)=K(綿番手)1/2(K:ヨリ係数)においてK=3.0~4.0の範囲が好ましい。
【0057】
本発明において、長繊維/短繊維の質量比が長繊維/短繊維=15~85/85~15であることが好ましい。この範囲内にあることで、長短両繊維を使用したことによる複合効果が顕著に発揮される。
【0058】
ここでいう潜在トルク方向とは、長繊維(バイメタル型または偏心芯鞘型複合繊維からなる繊維束)が潜在的に有するトルクのことを意味し、紡績時の撚りによるトルクとは異なる。
【0059】
本発明における繊維構造物は、長繊維に対して短繊維束を撚り合わせる際に、長繊維の潜在トルク方向と、逆方向になるように短繊維束を紡績することで良好なストレッチ性を発現することができる。例えば、長繊維の潜在トルク方向が、Z方向だった場合、短繊維束をS方向で撚り合わせて紡績することで、撚り方向とは逆方向のトルクが発生するため、長繊維の潜在トルク方向と相乗効果で強い捲縮が生まれ、より強いストレッチ性を発現することができる。
【0060】
また、本発明で用いるバイメタル型または偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維の単繊維繊度は、1.1~10dtexが好ましく、より好ましくは1.1~6dtexである。単繊維繊度を1.1dtex以上3.0dtex以下とすることで、捲縮によるストレッチ性とシボ抑制の実効を得ることができる。
【0061】
短繊維の繊度についても特に限定されないが、紡積性を考慮すると0.6~5 dtexの範囲内にすることが好ましい。短繊維の繊維長については各種紡績方法に応じた繊維長とするのがよいが、例えば空気精紡またはリング精紡を用いる場合は、その紡績原理を考慮すると25mm~51mmが好適に使用でき、30mm~44mmの範囲内とするのがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明で用いられる前記複合紡績糸を構成するバイメタル型または偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維は、20%伸張時の伸長回復率が80%以上であることが好ましい。この伸長回復率が80%以上であれば、例えば、リング精紡機にて複合紡績糸にした際、優れたストレッチバック性と捲縮発現性により、短繊維成分と強固に絡み合い、芯鞘型構造の形態安定性に優れ、膨らみ感、高ストレッチを有する、いわゆる長短複合紡績糸を得ることができ、織物としたとき良好なストレッチ性を得ることができる。
【0063】
本発明で用いられるバイメタル型または偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維の総繊度は、20dtexから100dtexが好ましい。総繊度が20dtex未満では短繊維束の特性が複合紡績糸の特長となってしまい、本発明の効果を発揮することが難しくなる。また、総繊度が100dtexを超えると短繊維束の構成本数が少なくなり、芯糸が複合紡績糸の鞘部に露出してしまう。シャツ地に用いられる特に好適な複合紡績糸に用いる長繊維として好ましい総繊度は、25dtexから60dtexである。
【0064】
さらに本発明で用いられるバイメタル型または偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維のフィラメント数は、総繊度と短繊維繊度により決定されるが、織物としたときの曲げに対する柔らかさや風合いの点から、6フィラメントから46フィラメントが好ましく、ストレッチ性と加工時のシボ抑制効果から、さらに好ましくは12フィラメントから36フィラメントである。
【0065】
また、本発明においては、通常上記の繊維構造物に対し、本発明で規定するソイルリリース性(SR性)を満たすよう、防汚加工などの機能加工が施される。防汚加工を行うことで、より少ない洗濯時間で汚れを除去できるようになり、繊維屑量の低減につながるため、好適である。
【0066】
防汚加工の方法については、特に制限はないが、ソイルリリース性(洗濯時の汚れの除去性)(SR性)を向上させてもよいし、汚れの付着防止性(SG性)を向上させてもよい。また、それら両方を組み合わせてもよい。
【0067】
SR性を向上させる方法としては、SR性向上に寄与する親水性成分を繊維表面に担持させる方法が挙げられる。
【0068】
SG性を向上させる方法としてはフッ素系撥水剤等の撥水撥油に優れた剤を繊維表面に付与する方法(撥水加工)が挙げられる。
【0069】
SR性とSG性の両方を向上させるには、ポリオキシアルキレン基等の親水性成分を有するフッ素系撥水剤等の弱撥水撥油性有する剤を付与する方法(弱撥水撥油加工)が挙げられる。
【0070】
一方で、非フッ素系撥水剤のように撥油性を持たない撥水剤のみでは、汚れの除去性低下を招くため、不適である。
【0071】
本発明においては、上記防汚加工の他、制電、難燃、吸湿、制電、抗菌、柔軟仕上げ、その他公知の機能加工等の併用を行ってもよい。
【0072】
上記に例示した洗濯時の汚れの除去性(SR性)を向上させるためのSR性向上に寄与する親水性成分を繊維表面に担持させる方法としては、具体的には繊維表面にポリエーテルやポリカルボン酸、ポリスルホン酸およびその塩、カチオン性界面活性剤などの親水性成分を付与する方法が挙げられる。なかでもポリエステル系繊維構造物の繊維表面に分子量分布(分子量のばらつき)の小さいポリエーテル成分を担持させることが、防汚性、繊維屑量低減の観点から、好ましい。
【0073】
分子量分布は、分子量のバラつきを示す数値であって、ポリエチレングリコール換算重量平均分子量のポリエチレングリコール換算数平均分子量に対する比(重量平均分子量/数平均分子量)から求められる。分子量分布を狭くする、すなわち分子量のばらつきを小さくすることで本発明で規定する防汚性を満たすようになる。なかでも1.00~1.35、なかでも1.00~1.25といった比較的分子量の揃ったポリエーテルを用いることが、より優れた防汚性を付与する観点から好ましい。さらに好ましくは1.00~1.20である。
【0074】
さらに用いられるポリエーテル成分のサイズ排除クロマトグラフィーから得られるポリエチレングリコール換算重量平均分子量は、本発明で規定する防汚性を満たす程度に大きいのがよく、なかでも1500~4000g/molといった比較的高分子量ポリエーテルを用いることが、より優れた防汚性を付与する観点から好ましい。より好ましくは2000~4000g/molである。
【0075】
ポリエーテル成分を繊維表面に担持させる方法としては、浴中処理、Pad法等でポリエーテル成分を含む加工剤で後加工する方法のほかに、ポリエステル系繊維構造物を構成する繊維を構成するベースポリマーにポリエーテルもしくは、ポリエーテル基を有する共重合可能な単量体を共重合もしくはグラフト重合させる方法や繊維への練り込みといった原糸改質等が考えられるが、原糸改質の場合、糸強度等の物性が大きく変化したり、汚れが繊維内部に浸透しやすくなる可能性があるため、物性を損なわず、選択的に表面を改質できる浴中処理、Pad法等の後加工での処理が好ましい。
【0076】
本発明においてポリエーテル成分は、ポリエーテル、あるいはポリエーテル基を含む化合物におけるポリエーテル基部分を意味する。ポリエーテル成分は、1分子あたりに2つ以上のエーテル結合を有する化合物、分子中に存在するポリエーテル基を指す。本発明の繊維構造物にポリエーテル成分を担持するために用いることができる化合物としては、例えばポリアルキレングリコール、セルロース、ポリアルキレングリコールとポリエステルからなるブロック共重合体などが挙げられるが、本発明の規定を満たす限りこれに限定されない。なかでもポリエステル系繊維との親和性が高く、耐洗濯性等の耐久性の観点から、ポリアルキレングリコール単位からなるセグメントAとポリエステルなどの前記ポリアルキレングリコールと共重合可能なポリマー単位からなるセグメントBを共重合したポリエーテルエステルブロック共重合体が好ましい。
【0077】
上記セグメントAを構成するポリアルキレングリコール単位としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールから生成する単位などが好ましくあげられ、なかでもポリエチレングリコールから生成する単位がより好ましく挙げられる。
【0078】
上記のセグメントBを構成する好ましい例であるポリエステル単位としては、テレフタル酸/またはイソフタル酸とアルキレングリコールからなる重合体単位などが好ましくあげられる。
【0079】
なお、これらのブロック共重合体のポリエステルとポリエーテルの共重合比は任意であるが、より優れた防汚性を付与する観点から、ポリエステル単位:ポリエーテル単位(質量比)=1:1~1:30であることが好ましい。より好ましくは、ポリエステル単位:ポリエーテル単位(質量比)=1:1~1:10である。さらに好ましくは、ポリエステル単位:ポリエーテル単位(質量比)=1:1~1:3である。
【0080】
また、SR性向上に寄与する親水性成分を繊維表面に担持させる加工については、加工後の繊維構造物として、いわゆる撥水度1級、撥油性0級以上、JIS L 1907-滴下法(2010年)で測定される吸水性3秒以下を示すようにすることが好ましく、なかでも、吸水性1秒以下であると、汚れに対する汚れ除去性が改良される点でより好ましい。
【0081】
汚れの付着防止性(SG性)を向上させる撥水加工としては、上記のとおり、撥水撥油性に優れた剤を用いることが好ましい。撥水加工に用いる撥水剤としては、炭素数が7以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤、(たとえばダイキン工業(株)製“ユニダイン”TG-5546、“ユニダイン”TG-5601、旭硝子(株)製“アサヒガード”AG-E061、“アサヒガード”AG-E081)、などのフッ素系撥水剤が挙げられ、これらを繊維表面に付与することが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。なかでも炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤が好ましい。なお近年パーフルオロオクタン酸及びパーフルオロオクタンスルホン酸は使用を避ける傾向にあることから、繊維構造物中のパーフルオロオクタン酸及びパーフルオロオクタンスルホン酸の含有量として5ppm未満であることが望ましい。
【0082】
撥水剤とともに架橋剤を併用することにより洗濯耐久性を付与することが出来る。このような架橋剤としては、DIC(株)製“アミディア”M-3(トリメチロールメラミン)やMBX-31(ブロックドイソシアネート)などが好ましい。
【0083】
さらに架橋剤の反応促進のために触媒を用いることができる。このような触媒としては、DIC(株)製“キャタリスト”ACX(アミン系触媒)が好ましい。
【0084】
撥水剤を繊維構造物に付与せしめる方法としては、浴中処理、Pad法等の後加工する方法のほかに、繊維への練り込みといった原糸改質等が考えられる。しかし、原糸改質の場合、糸強度等の物性が大きく変化する可能性があるため、物性を損なわないPad法等の後加工での処理が好ましい。
【0085】
汚れの付着防止性(SG性)を向上させる撥水加工後の繊維構造物は、強撥水撥油性であることが好ましい。また、繊維構造物が強撥水撥油性であるとは、繊維構造物の撥水度が4級以下であり、撥油性が5級以上であり、さらに、JIS L 1907-滴下法(2010年)で測定される吸水性が60秒以上であることをいう。
【0086】
また、SG性とSR性の両方を向上させる方法として上記のとおりポリオキシアルキレン基等の親水性成分を有する フッ素系撥水剤等の弱撥水撥油性を有する剤を付与する方法(弱撥水撥油加工)や吸水撥油性を有する剤を付与する方法(吸水撥油加工)等が好ましいが、なかでも、繊維表面の少なくとも1部にポリオキシアルキレン基を有するフッ素系撥水撥油成分とポリビニルアルコールを含む被膜を繊維表面に形成させることが好ましい。
【0087】
ポリオキシアルキレン基を有するフッ素系撥水撥油成分としては、上記のとおり弱撥水性かつ撥油性を有することが好ましく、具体的にはパーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーと、親水性官能基を有するビニルモノマー(親水性ビニルモノマー)から誘導された繰返単位を有する含フッ素共重合体であることが好ましい。
【0088】
パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーとしては、炭素数6以下のパーフルオロ基を有するビニルモノマーが好ましく用いられ、更に好ましくはCH=C(CH)C(=O)OCHCH(CFCFから誘導される繰り返し単位を含むものが用いられる。
【0089】
フッ素系弱撥水撥油性樹脂としては、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸含有量が検出限界未満であることが好ましい。検出限界未満であるとは、下記に示す高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)によるパーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸と、それら前駆体、塩類のそれぞれの測定濃度が、いずれも5ng/g未満であることを指す。
装置:LC-MS/MSタンデム型質量分析計TSQ-7000(サーモエレクトロン)
高速液体クロマトグラフLC-10Avp(島津製作所)
カラム:Capcellpak C8 100mm×2mmi.d.(5μm)
移動層:A;0.5mmol/L酢酸アンモニウム B;アセトニトリル
流速:0.2mL/min
試料注入量:3μL
CP温度:220℃
イオン化電圧:4.5kv
イオンマルチ:1300v
イオン化法:ESI-Negative
【0090】
ポリビニルアルコールの平均重合度としては、通常100から3500が挙げられるが、好ましくは200から1500が用いられる。
【0091】
上記親水性ビニルモノマーとしては、スルホニル基、スルホニル塩基、カルボキシル基、カルボキシル塩基、アンモニウム基、アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基等の親水性官能基を含むビニルモノマーが挙げられるが、中でも下記一般式(II)で表されるビニルモノマーが好ましい。
CH=CRC(=O)O-(RO)n-R (II)
【0092】
式中Rは通常Hもしくは炭素数1~4のアルキル基であり、HもしくはCHであることが好ましい。-(RO)n-はオキシアルキレン基あるいは、ポリオキシアルキレン基を示す。Rは通常、炭素数2~5のアルキレン基であることが好ましく、CHCH、CHCHCHもしくはCH(CH)CHであることが親水性を一層好ましい範囲に制御できる点でより好ましい。Rは通常HもしくはCHを示す。nは重合度であり、1~20を示す。
【0093】
上記好ましく用いられる含フッ素共重合体におけるパーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーと親水性ビニルモノマーの比率としては、本発明で規定する範囲を満たす限り制限はないが、以下の方法で、弱撥水撥油性、吸水撥油性となるように制御するのがよい。その制御は以下の方法でおこなうことができる。すなわち親水性官能基を含むビニルモノマーの比率を増大させることで、撥水性を抑制することができ、撥油性を大きくするには、パーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーの比率を増大させればよい。
【0094】
また、同じ比率であっても親水性官能基を含むビニルモノマーについて、親水性を上げればよい。その方法としては、親水性官能基の割合を増大させるか、親水性官能基として、より親水性の高い官能基を選択することで撥水性を下げることができる。親水性官能基としてオキシアルキレン基(より好ましくはオキシエチレン基)あるいはポリオキシアルキレン基(より好ましくはポリオキシエチレン基)であることが好ましい。ポリオキシアルキレン基を用いる場合、その重合度が大きい方が、親水性を上げることができる。
【0095】
またパーフルオロアルキル基を有するビニルモノマーにおけるパーフルオロアルキル基の炭素数を大きくすることで撥油性を挙げることも可能である。
【0096】
弱撥水撥油加工後の繊維構造物は、弱撥水撥油性であることが好ましい。また、繊維構造物が弱撥水撥油性であるとは、繊維構造物の撥水度が2級以下であり、撥油性が2級以上であり、さらに、JIS L 1907-滴下法(2010年)で測定される吸水性が40秒以上であることをいう。
【0097】
吸水撥油加工後の繊維構造物は、吸水撥油性であることが好ましい。また、繊維構造物が吸水撥油性であるとは、繊維構造物の撥水度が2級以下であり、撥油性が2級以上であり、さらに、JIS L 1907-滴下法(2010年)で測定される吸水性が40秒未満であることをいう。ここで、吸水撥油性である繊維構造物の撥水度は1級以下であることが好ましい。
【0098】
繊維構造物は、弱撥水撥油性であることがより好ましい。また、繊維構造物が弱撥水撥油性である場合において、繊維構造物の汚れ除去性の洗濯耐久性がより優れたものとなるとの理由により、繊維構造物のJIS L 1907-滴下法(2010年)で測定される吸水性が60秒以上であることがより好ましい。また、繊維構造物が弱撥水撥油性である場合において、汚れのつきにくさと洗浄水との親和性とのバランスの点から、繊維構造物の撥油性は7級以下であることがより好ましい。
【0099】
ポリビニルアルコールの平均重合度としては、通常100から3500が挙げられるが、好ましくは200から1500が用いられる。
【0100】
ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるものであってよい。ポリビニルアルコールのケン化度としては、通常70から99%が好ましく挙げられるが、80から95%がより好ましく用いられる。
【0101】
平均重合度とケン化度は、それぞれJIS K 6726(1994年)3.7項、3.5項に準じて測定して得られる値である。
【0102】
本発明で用いるフッ素系撥水撥油成分とポリビニルアルコールの使用割合は、フッ素系撥水撥油成分の固形分質量100に対して、ポリビニルアルコールの質量が通常5から60、好ましくは10から40である。
【0103】
本発明で用いるポリビニルアルコールには水酸基、あるいはさらに酢酸基以外の官能基が含まれていてもよく、例えばアセトアセチル基、スルホニル基、スルホニル塩基、カルボキシル基、カルボキシル塩基、4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基等が挙げられる
該フッ素撥油性樹脂とポリビニルアルコールの繊維に対する固形分固着量は、0.2から1.0質量%、好ましくは0.4から0.8質量%である。このように好ましい範囲であると、汚れ除去性能を充分に発現することができ、風合いも柔らかく、好ましい。
【0104】
また、撥水剤と同様に、架橋剤を併用することにより洗濯耐久性を付与することが出来る。このような架橋剤としては、DIC(株)製“アミディア”M-3(トリメチロールメラミン)やMBX-31(ブロックドイソシアネート)などが好ましい。
【0105】
さらに架橋剤の反応促進のために触媒を用いることができる。このような触媒としては、DIC(株)製“キャタリスト”ACX(アミン系触媒)が好ましい。
【0106】
また、本発明においては抗菌加工の併用を行ってもよい。繊維構造物に付着した皮脂等の汚染物を栄養源とし、バイオフィルムと呼ばれる、繊維に強固に蓄積した汚れを形成することを抑制できるため、好ましい。抗菌剤の種類は限定されないが、ピリジン系抗菌剤、銀系抗菌剤などがあげられ、なかでもピリジン系抗菌剤が好ましい。
【0107】
ピリジン系抗菌剤としては特に限定されるものではなく、例えば、2-クロロ-6-トリクロロメチルピリジン、2-クロロ-4-トリクロロメチル-6-メトキシピリジン、2-クロロ-4-トリクロロメチル-6-(2-フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4-クロロフェニル)ピリジルメタノール、2,3,5-トリクロロ-4-(n-プロピルスルフォニル)ピリジン、2-ピリジルチオール-1-オキシド亜鉛、ジ(2-ピリジルチオール-1-オキシド)等のピリジン系化合物、N-トリクロロメチルチオフタルイミド、N-1,1,2,2-テトラクロロエチルチオテトラヒドロフタルイミド、N-トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド、N-トリクロロメチルチオ-N-(フェニル)メチルスルファミド、N-トリクロロメチルチオ-N-(4-クロロフェニル)メチルスルファミド、N-(1-フロロ-1,1,2,2-テトラクロロエチルチオ)-N-(フェニル)メチルスルファミド、N-(1,1-ジフロロ-1,2,2-トリクロロエチルチオ)-N-(フェニル)メチルスルファミド、N,N-ジクロロフロロメチルチオ-N’-フェニルスルファミド、N,N-ジメチル-N’-(p-トリル)-N’-(フロロジクロロメチルチオ)スルファミド等のハロアルキルチオ系化合物、1-ジヨードメチルスルフォニル-4-クロロベンゼン、3-ヨード-2-プロパルギルブチルカルバミン酸、4-クロロフェニル-3-ヨードプロパルギルホルマール、3-エトキシカルボニルオキシ-1-ブロム-1,2-ジヨード-1-プロペン、2,3,3-トリヨードアリルアルコール等の有機ヨード系化合物、4,5-ジクロロ-2-シクロヘキシル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンズチアゾール亜鉛等のチアゾール系化合物および1H-2-チオシアノメチルチオベンズイミダゾール、2-(2-クロロフェニル)-1H-ベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系化合物等を使用することができる。
【0108】
抗菌剤を含有せしめる方法としては、浴中処理、Pad法等の後加工する方法のほかに、繊維への練り込みといった原糸改質等が考えられる。しかし、原糸改質の場合、糸強度等の物性が大きく変化する可能性があるため、物性を損なわない浴中処理、Pad法等の後加工での処理が好ましい。
【0109】
繊維構造物を繊維製品にする場合、必要に応じて裁断等を行うことができる。この裁断方法は特に限定されないが、超音波溶断を選択することが好ましい。該裁断方法では裁断部が溶着することで、繊維のほつれおよび該部から脱落する繊維屑の発生を抑制することができる。
【0110】
かくして得られる繊維構造物は、ビジネスシャツやユニフォーム、スポーツ、カジュアルウェアや寝具等、様々な用途に用いることかできる。
【実施例
【0111】
(ポリエチレングリコール換算重量平均分子量測定方法)
以下の条件でポリエチレングリコール換算重量平均分子量を測定した。
装置:ゲル浸透クロマトグラフ GPC(島津製作所製 LC-20AD)
検出器:示差屈折率検出器 RI (Waters 製RI-8020 型,感度32x)
カラム :TSKgel G3000PWXL(東ソー製)
溶媒 :0.1M塩化ナトリウム水溶液
流速 :0.8 mL/min
カラム温度 :23℃
注入量:0.1 mL
標準試料:ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド
データ処理:島津製作所製 Prominence GPCシステム
【0112】
試料の調製方法を以下に示す。
1.ポリエステル系繊維構造物5gとアンモニア水30mL試験管に加え、密栓する。
2.120℃で5時間加熱し、放冷する。
3.開栓し、精製水30mLを加えた後、6M塩酸をテレフタル酸由来の沈殿物が生じるまで加え、遠心分離する。
4.上澄み液を採取し、塩酸濃度が0.1Mになるよう調製する。
5.0.45μmフィルターでろ過し、分子量測定に用いた。
【0113】
なお、ポリエチレンテレフタレート繊維を使用し、かつポリエーテル成分がポリエチレングリコール成分である場合、上記測定には、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール成分が検出される場合があるが、この場合は測定の趣旨を鑑み、ポリエチレングリコール成分を評価の対象とする。
【0114】
(NMR測定)
上記ポリエチレングリコール換算重量平均分子量の測定で試料の調製方法1~3と同じ操作を行い、得られる上澄み液5mLを乾固させたのち、50%重水素化クロロホルム/重水素化ヘキサフルオロ2-プロパノール1mLに溶解させたものをNMRチューブに入れ、以下の測定方法でH-NMR測定を行った。
【0115】
NMRのスペクトルチャートで内部基準テトラメチルシラン由来のピークを0ppmとしたとき、3.7~3.8ppmに強いピークが検出されることにより、ポリエチレングリコール成分が存在することが分かる。
【0116】
H-NMR測定方法)
[条件]
装置名 :ECA400 (日本電子製)
測定核 :1H
観測周波数 :399.78 MHz
溶媒 :重水素化クロロホルム+重水素化ヘキサフルオロ2-プロパノール(1/1 v/v)
内部標準 :テトラメチルシラン(TMS)
[詳細]
測定法:Single pulse
スペクトル幅: 8000 Hz
パルス幅:6.45 μs(45°パルス)
パルス待ち時間:15.0 s
データポイント:32768
【0117】
(ポリエステル/ポリエーテルの共重合比測定方法)
1.ポリエステル系繊維構造物5gとHFIP/クロロホルム混合溶媒30mLを試験管に加え、密栓する。
2.攪拌し、上記溶媒にポリエステル系繊維構造物を溶解させる。
3.溶液をろ過し、可溶部のみを乾固させる。
4.水30mLを乾固物に加え、攪拌した後、ポリエステル繊維由来の沈殿物を遠心分離し、水に溶解したポリエーテル成分が重合したポリマーのみが上澄み液に溶解した状態とする。
5.上澄み液を採取し、上記のNMR測定のピーク強度比をもとに共重合比を計算する。
【0118】
(撥水度)
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(2009年)に規定される方法により、スプレー法により評価を行い、撥水度について級判定した。級判定についてはn=3回の評価で実施した。撥水度の級は1級から5級まで有り、数値が大きいほど、撥水性が高いことを示す。判定基準はJIS L 1092に添付の判定写真により判別する。
【0119】
(撥油性)
AATCC 118法に規定される方法で測定し、撥油性について級判定した。撥油性の級は1級から8級まで有り、数値が大きいほど、撥油性が高いことを示す。判定基準はAATCC 118法に添付の判定写真により判別する。級判定についてはn=3回の評価の平均値とした。
【0120】
(吸水性)
JISL1907(2010年度版)吸水速度法(滴下法)に従って吸水性を評価した。
【0121】
(伸長回復率)
自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、1dtex当たり0.0826cNの初荷重をかけた状態で20cmのつかみの間隔に取り付け、引張速度を20cm/minとして、20%の伸度まで引き伸ばし、直ちに、同じ速度で除重した。完全に除重した後、直ちに、初荷重まで引き伸ばし、このときの回復伸びを伸長回復率とした。
【0122】
(織物伸長率)
JIS L-1096の伸長率A法(定速伸長法)でタテ方向、ヨコ方法の織物伸長率を測定した。
【0123】
(ソイルリリース性評価)
JIS-L1919「繊維製品の防汚性試験方法」(2006年度版)のC法に準じた油性汚れに対すソイルリリース性能を評価した。JIS-L1919「繊維製品の防汚性試験方法」(2006年度版)のC法に規定されている親油性汚染物質-2の成分を使用した汚染物質(オイルレッド分率0.1%)を作製し、以下の手順で試験を実施した。
【0124】
方形ろ紙の上にPETフィルムを置き、その上に8cm×8cmにカットした布帛をのせた。10cmの高さから油性汚れを0.1mL滴下し、30秒放置した。円形ろ紙を乗せてろ紙の自重で汚れを吸い取った。さらに、ろ紙の位置をずらしてろ紙が汚れていない部分で再度汚れを吸い取った。ろ紙が汚れを吸い取らなくなるまでこの操作を繰り返した。ろ紙が汚染部分に触れない場合はろ紙の両端を持ち、なるべく加重をかけないようにろ紙と汚れを接触させて吸い取った。その後、汚染した布帛を縫い合わせて、約40cm×約40cmのサイズにし、汚染剤滴下後一時間以内にISO6330C4N法の洗濯条件の洗い時間を半分にして洗濯を行った。例外として比較例6、7、8に関しては、通常の洗濯時間で洗濯を行った。
【0125】
汚染した布帛が足りない場合は、捨て布を縫い合わせた。JIS L0805(2005年度版)汚染色用グレースケールを用いてD65光源下で防汚性級判定を行った。1級から5級まであり、数値が大きいほど、ソイルリリース性が高いことを示す。着用快適性や繊維屑量低減の観点から、ソイルリリース性として高い方が好ましい。
【0126】
(繊維屑の質量測定)
あらかじめ質量を測定したポリカーボネートメンブレン(K040A047A 孔径0.4μm、アドバンテック東洋株式会社製)を用いて繊維屑を含む水溶液を吸引濾過した。濾過後のポリカーボネートメンブレンと繊維屑を105℃で1時間乾燥後、質量を測定し、濾過前の質量との差を繊維屑量とした。
【0127】
(生地片の繊維屑発生量測定方法)
タテ32cm、ヨコ32cmに生地片をカットし、周囲を巾20mmの目止めテープ E302(東レ・コーテックス(株)製)を布の端から1.0cmの範囲に、目止めテープの半分がはみ出した状態で仮接着した。四辺を仮接着後、反対側から同様に目止めテープを接着し、布の端を目止めテープ2枚で挟みこむ形とした。目止めテープと布の端の接着部を、縫糸に、本縫いミシン(縫糸はポリエステルフィラメントを使用、運針数:13針/3.0cm)で縫い、剥がれないようにした。さらに、エアー駆動式全自動転写用プレス HP-4536A-12(株式会社ハシマ製)を使用し、0.6MPa、130℃で5秒間プレスし、本接着を行い、試験片(有効評価面積:900cm)を作製した。
【0128】
洗濯機に被洗物、負荷布、洗剤を入れずにISO 6330 C4N法に従い、洗濯を行い、洗濯機を洗浄する。洗濯機の排水口に目開き10μmのナイロンスクリーン NY10-HC(フロン工業(株)製)を用いて製造した捕集袋を取り付けた状態で、作製した生地片サンプル2枚を洗濯機に入れ、ISO6330C4N法の洗濯条件の洗い時間を半分にして洗濯を行った。例外として比較例6、7、8に関しては、通常の洗濯時間で洗濯を行った。ただし、洗剤と負荷布は使用しないものとする。又、洗濯機に備えつけの糸屑回収用のフィルター類はとりはずして使用し、洗濯後、ナイロンスクリーンに付着した繊維屑を純水で回収し、あらかじめ質量を測定したポリカーボネートメンブレンフィルター(K040A047A アドバンテック東洋(株))を用いて吸引濾過する。濾過後のポリカーボネートメンブレンと繊維屑を105℃で1時間乾燥、質量を測定し、濾過前の質量との差を繊維屑発生量とする。
【0129】
(実着用テスト)
実施例および比較例に記載の繊維構造物を用いて作製したYシャツを着用し、オフィスワーク7時間、休憩時間1時間(食事(カレーライス一人前)30分を含む)を行った後で、家で洗濯を行い、次の日にまた着用するという流れを計10日間続けたのち、着心地と、食事中等に付着した汚れの取れやすさ、繰り返し使用後の不快臭という3つの観点で評価を行った。また、10日間の着用評価において、基本洗濯における洗濯時間を半分にして洗濯しつつ、汚れが気になるときは、着用者の裁量で通常の洗濯時間で行ってもよいこととした。また、洗濯後は日陰で吊り干しを7時間行い、乾燥したのに、アイロンがけ等行わず、そのまま翌日着用した。そして、それぞれA、B、C、D、の4段階で評価し、着心地に関しては、Aが最も着心地がよいこと、Dが最も着心地が悪いことを意味し、汚れの取れやすさに関しては、Aが最も汚れの除去性に優れること、Dが最も汚れの除去性に劣ることを意味し、繰り返し使用後の不快臭に関しては、Aが繰り返し使用後の不快臭が発生しなかったこと、Dが繰り返し使用後の不快臭が発生したことを意味する。詳細については以下に示す。
【0130】
(着心地)
A:ストレッチ性に優れるため、着心地がとてもよかった。
B:ストレッチ性にやや優れるため、着心地がよかった。
C:ストレッチ性にやや乏しく、着心地が悪かった。
D:ストレッチ性に乏しく、着心地がとても悪かった。
【0131】
(汚れの取れやすさ)
A:洗濯時間を半分にして洗濯を行っても汚れが除去できた。
B:洗濯時間を半分にして洗濯を行うと、少し汚れが残ったが、ほぼ除去できた。
C:洗濯時間を半分にして洗濯を行うと、汚れが残り、通常の洗濯時間でも少し汚れが残ってしまった。
D:洗濯時間を半分にして洗濯を行うと、汚れが残り、通常の洗濯時間でもほぼ汚れが残ってしまった。
【0132】
(繰り返し使用後の不快臭)
A:繰り返し着用時の不快臭がしにくかった。
B:繰り返し着用時の不快臭が少し発生した。
C:繰り返し着用時の不快臭が発生した。
D:繰り返し着用時の不快臭が顕著に発生した。
【0133】
(ポリエーテル成分を含むポリエステル系樹脂の製造)
ポリエステルからなるハードセグメントとしてテレフタル酸およびエチレングリコールのポリエステル成分を、ポリエーテル成分からなるソフトセグメントとしてポリエチレングリコール成分を任意の割合で混合し、同時に縮合反応させることで、ポリエステル系樹脂を得た。
【0134】
(実施例1)
生地として、タテ糸にフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)65%/綿35%、S方向の撚数867T/mの45番手リング紡績糸、ヨコ糸に、芯糸として長繊維のPET:PBTの質量比50:50になるように紡糸したZ方向の潜在トルクを有するPET/PBT 30dtex/24Fバイメタル型の潜在捲縮性複合繊維を、鞘糸として短繊維束のフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)65%/綿35%を使用して、S方向で撚数1024T/mとした45番手複合リング紡績糸を使用した、織密度タテ:133本/2.54cm、ヨコ:76本/2.54cmになるように製織した平織物(目付:175g/m)を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行った。
【0135】
そして溶媒を水とし、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体(共重合ポリエステル)、固形分10質量%);30g/Lと、“ニッカノン(登録商標)”ZP-700(日華化学(株)製、ピリジン系抗菌剤、固形分19%);10g/Lと酢酸0.5g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例1で得た繊維構造物の測定、評価結果は表1に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例1で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0136】
(実施例2)
実施例1と同一生地を使用した。
【0137】
“パラジン”KFS-100(京浜化成(株)製、弱撥水撥油タイプのフッ素系撥油性樹脂、固形分10%、ポリオキシエチレン基含有、撥水性2級、撥油性6級、吸水性60秒以上)(ポリオキシアルキレン基含有フッ素系撥水撥油性樹脂)90g/Lと、ポリビニルアルコール(固形分10%、平均重合度500、ケン化度90%)18g/L、“アミディア(登録商標)”M-3(DIC(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)、4.5g/L、“キャタリスト”ACX(DIC(株)製 触媒 固形分3%)0.75g/Lを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例2で得た繊維構造物の測定、評価結果は表1に示す。
また、実施例2で得た繊維構造物は、撥水度2級、撥油性6級、吸水性60秒以上であった。
【0138】
(実施例3)
実施例1と同一生地を使用した。
【0139】
溶媒を水とし、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤である“ユニダイン”TG-5546(ダイキン工業(株)製)30g/Lと、架橋剤である“アミディア(登録商標)”M-3(DIC(株)製)3.0g/L、架橋剤用の触媒として“キャタリスト”ACX(DIC(株)製)1.0g/L、浸透剤である2-イソプロパノール(ナカライテスク(株)製)10g/L、を含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例3で得た繊維構造物の測定、評価結果は表1に示す。
また、実施例3で得た繊維構造物は、撥水度4級、撥油性7級、吸水性60秒以上であった。
【0140】
(実施例4)
生地として、タテ糸にフルダルPET65%/綿35%、撚数867T/2.54cmの45番手紡績糸、ヨコ糸に、長繊維としてPET:PBTの質量比50:50になるように紡糸したZ方向のトルクを有するPET/PBT 30dtex/24F偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維を、短繊維束としてフルダルPET65%/綿35%を使用して、S方向で撚数1024T/2.54cmとした45番手複合紡績糸を使用した、織密度タテ:133本/2.54cm、ヨコ:76本/2.54cmになるように製織した平織物(目付:150g/m2)を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行った。
【0141】
そして溶媒を水とし、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体、固形分10%);30g/Lと、“ニッカノン(登録商標)”ZP-700(日華化学(株)製、ピリジン系抗菌剤、固形分19%);10g/Lと酢酸0.5g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例4で得た繊維構造物の測定、評価結果は表1に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例4で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0142】
(実施例5)
実施例1と同一生地を使用した。
【0143】
溶媒を水とし、上記のポリエーテル成分を含むポリエステル系樹脂の製造方法に基づき、重量平均分子量1700g/molのポリエチレングリコールを使用し、ポリエステル成分とポリエチレングリコール成分の質量比1:3で製造したポリエステル系樹脂P-1;2g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例5で得た繊維構造物の測定、評価結果は表1に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例5で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性2秒であった。
【0144】
(実施例6)
実施例1と同一生地を使用した。
【0145】
溶媒を水とし、上記のポリエーテル成分を含むポリエステル系樹脂の製造方法に基づき、質量平均分子量5800g/molのポリエチレングリコールを使用し、ポリエステル成分とポリエチレングリコール成分の質量比1:3で製造したポリエステル系樹脂P-2;2g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例6で得た繊維構造物の測定、評価結果は表2に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例6で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性2秒であった。
【0146】
(実施例7)
実施例1と同一生地を使用した。
【0147】
“パラジン”KFS-100(京浜化成(株)製、弱撥水撥油タイプのフッ素系撥油性樹脂、固形分10%、ポリオキシエチレン基含有、撥水性2級、撥油性6級、吸水性60秒以上)90g/Lと、18g/L、“アミディア(登録商標)”M-3(DIC(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)、4.5g/L、“キャタリスト”ACX(DIC(株)製 触媒 固形分3%)0.75g/Lを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例7で得た繊維構造物の測定、評価結果は表2に示す。また、実施例6で得た繊維構造物は、撥水度2級、撥油性6級、吸水性60秒であった。
【0148】
(実施例8)
生地として、タテ糸にフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)100%、撚数867T/mの45番手紡績糸、ヨコ糸に、長繊維としてPET:PBTの質量比50:50になるように紡糸したZ方向の潜在トルクを有するPET/PBT 30dtex/24Fバイメタル型の潜在捲縮性複合繊維を、短繊維束としてフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)100質量%を使用して、S方向で撚数1024T/mとした45番手複合紡績糸を使用した、織密度タテ:133本/2.54cm、ヨコ:76本/2.54cmになるように製織した平織物(目付:175g/m)を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行った。
【0149】
そして溶媒を水とし、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体、固形分10%);30g/Lと、“ニッカノン(登録商標)“ZP-700(日華化学(株)製、ピリジン系抗菌剤、固形分19%);10g/Lと酢酸0.5g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例8で得た繊維構造物の測定、評価結果は表2に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例8で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0150】
(実施例9)
生地として、タテ糸にフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)35%/綿65%、S方向の撚数867T/mの45番手紡績糸、ヨコ糸に、芯糸として長繊維のPET:PBTの質量比50:50になるように紡糸したZ方向のトルクを有するPET/PBT 30dtex/24Fバイメタル型潜在捲縮性複合繊維を、短繊維束としてフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)35質量%/綿65質量%を使用して、S方向で撚数1024T/mとした45番手複合紡績糸を使用した、織密度タテ:133本/2.54cm、ヨコ:76本/2.54cmになるように製織した平織物(目付:175g/m)を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行った。
【0151】
そして溶媒を水とし、“アミディア(登録商標)”M-3(DIC(株)製、メラミン樹脂単量体80質量%水溶液);5g/Lと、“キャタリストACX”(DIC(株)製、メラミン樹脂反応触媒);1g/Lと、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体、固形分10質量%);30g/Lと、“ニッカノン(登録商標) “ZP-700(日華化学(株)製、ピリジン系抗菌剤、固形分19質量%);10g/Lと酢酸0.5g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例9で得た繊維構造物の測定、評価結果は表2に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例9で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0152】
(実施例10)
芯糸として長繊維のPET:PBTの質量比50:50になるように紡糸したZ方向のトルクを有するPET/PBT 30dtex/24F偏心芯鞘型の潜在捲縮性複合繊維を、短繊維束としてフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)65質量%/綿35質量%を使用して、S方向で撚数1024T/2.54cmとした45番手複合紡績糸を使用した丸編生地を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行った。
【0153】
そして溶媒を水とし、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体、固形分10質量%);30g/Lと酢酸0.5g/Lと“アミディア(登録商標)”М―3(DIC(株)製、)を含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。実施例10で得た繊維構造物の測定、評価結果は表2に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、実施例10で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0154】
(比較例1)
生地として、タテ糸にフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)65質量%/綿35質量%で、S方向で撚数867T/2.54cmの45番手の紡績糸、ヨコ糸に、芯糸にポリウレタン系繊維(スパンデックスT-127、30dtex)(PU)を、短繊維束としてフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)35質量%/綿65質量%を使用して、S方向で撚数1024T/2.54cmとした45番手複合紡績糸を使用した、織密度タテ:133本/2.54cm、ヨコ:76本/2.54cmになるように製織した平織物(目付:175g/m)を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行った。
【0155】
そして溶媒を水とし、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体、固形分10質量%);30g/Lと、“ニッカノン(登録商標)”ZP-700(日華化学(株)製、ピリジン系抗菌剤、固形分19質量%);10g/Lと酢酸0.5g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで繊維構造物を得た。比較例1で得た繊維構造物の測定、評価結果は表3に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、比較例1で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0156】
(比較例2)
実施例1と同一生地を使用し、特に加工を行わず、繊維構造物を得た。比較例2で得た繊維構造物の測定結果は表3に示す。
また、比較例2で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性5秒であった。
【0157】
(比較例3)
実施例1と同一生地を使用した。
【0158】
“ネオシード(登録商標)”NR-158(日華化学(株)製、非フッ素系撥水樹脂、固形分:非公開)50g/Lと、“アミディア(登録商標)”M-3(DIC(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80質量%)4.5g/L、“キャタリスト”ACX(DIC(株)製 触媒 固形分3質量%)0.75g/Lを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで本発明における繊維構造物を得た。比較例3で得た繊維構造物の測定、評価結果は表3に示す。
また、比較例3で得た繊維構造物は、撥水度4級、撥油性0級、吸水性60秒以上であった。
【0159】
(比較例4)
生地として、タテ糸とヨコ糸にフルダルPET短繊維(繊維長38mm、繊度0.89dtex)65質量%/綿35質量%でS方向の撚数867T/mの45番手の紡績糸を使用した織密度タテ:139本/2.54cm、ヨコ:76本/2.54cmになるように製織した平織物(目付:175g/m)を使用した。この生地を常法で精練漂白、中間セットを行い、特に加工を行わず、本発明における繊維構造物を得た。比較例4で得た繊維構造物の測定、評価結果は表3に示す。
また、比較例4で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性20秒であった。
【0160】
(比較例5)
比較例4と同一生地を使用した。
【0161】
そして溶媒を水とし、TM-SS21(松本油脂製薬(株)製、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とアルキレングリコールからなるポリエステル単位とポリアルキレングリコール単位とからなるブロック共重合体、固形分10質量%);30g/Lと、“ニッカノン(登録商標)“ZP-700(日華化学(株)製、ピリジン系抗菌剤、固形分19質量%);10g/Lと酢酸0.5g/Lとを含む加工液に、上記の生地を浸漬し、ピックアップ率が90質量%となるように絞ったのち130℃で2分間加熱処理した後、170℃で1分間加熱処理を行うことで繊維構造物を得た。比較例5で得た繊維構造物の測定、評価結果は表3に示す。
なお、ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール成分の存在が確認できた。
また、比較例5で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0162】
(比較例6)
比較例1と同一生地を使用し、特に加工を行わず、繊維構造物を得た。比較例6で得た繊維構造物について、洗濯時間を変えて評価した測定、評価結果は表4に示す。
また、比較例6で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性10秒であった。
【0163】
(比較例7)
比較例1と同一生地、同一の加工を行い、繊維構造物を得た。比較例7で得た繊維構造物について、洗濯時間を変えて評価した測定、評価結果は表4に示す。
また、比較例7で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性1秒であった。
【0164】
(比較例8)
比較例4と同一生地を使用し、特に加工を行わず、繊維構造物を得た。比較例8で得た繊維構造物について、洗濯時間を変えて評価した測定、評価結果は表4に示す。
また、比較例8で得た繊維構造物は、撥水度1級、撥油性0級、吸水性20秒であった。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【符号の説明】
【0169】
1.A成分
2.B成分
3.A成分
4.B成分
5.重心点a
6.重心点C
7.最小厚みS
8.繊維径D
9.曲率半径IFR
図1
図2
図3
図4