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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】写損判断支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20250226BHJP
【FI】
A61B6/00 550M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021032474
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133668
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良平
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0035285(US,A1)
【文献】特開2015-204921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0232872(US,A1)
【文献】特開2010-207516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段と、
を備え
前記判定手段は、前記放射線画像の診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定し、前記放射線画像の前記診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定する際に適用するアルゴリズムを前記被写体の部位に基づいて切り替え可能であり、
前記報知手段は、前記判定手段により前記診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記診断対象領域に信号飽和領域が存在することを報知し、さらに、前記判定手段により適用されたアルゴリズムの情報及び/又は前記アルゴリズムにより前記診断対象領域として認識された領域を報知する、写損判断支援装置。
【請求項2】
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段と、
前記被写体の部位、撮影方向、被写体厚の少なくとも一つの情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段と、
を備える写損判断支援装置。
【請求項3】
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段と、
前記放射線画像の撮影時の照射線量に関する情報及び前記放射線画像の撮影に用いられた放射線検出器の線量上限の情報を取得し、取得した前記照射線量に関する情報及び前記放射線検出器の線量上限の情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段と、
を備える写損判断支援装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記放射線画像の診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定し、
前記報知手段は、前記判定手段により前記診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記診断対象領域に信号飽和領域が存在することを報知する請求項2又は3に記載の写損判断支援装置。
【請求項5】
前記報知手段は、前記判定手段により前記診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、写損に関するアラートを報知する請求項1又は4に記載の写損判断支援装置。
【請求項6】
前記報知手段は、前記放射線画像の前記診断対象領域における信号飽和領域の面積に基づいて、前記アラートの報知方法を変更する請求項に記載の写損判断支援装置。
【請求項7】
前記診断対象領域に存在する信号飽和領域とその周囲の画像情報に基づいて、前記被写体を再撮影する際の撮影条件の改善値を導出する導出手段を備え、
前記報知手段は、さらに、前記導出された撮影条件の改善値、又は、前記放射線画像の撮影条件及び前記撮影条件の改善値の双方を報知する請求項1、4~6のいずれか一項に記載の写損判断支援装置。
【請求項8】
前記報知手段は、前記放射線画像に存在する信号飽和領域の位置を報知する請求項1~7のいずれか一項に記載の写損判断支援装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記放射線画像を撮像した放射線検出器の欠陥画素の位置情報を取得し、前記放射線画像における前記欠陥画素の位置に対応する領域を除外して前記判定を行う請求項1~のいずれか一項に記載の写損判断支援装置。
【請求項10】
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像、前記信号飽和領域の位置を示す情報、及び前記放射線画像の撮影条件を対応付けて保存手段に保存させる保存制御手段を備える請求項1~のいずれか一項に記載の写損判断支援装置。
【請求項11】
コンピューターを、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段、
として機能させ
前記判定手段は、前記放射線画像の診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定し、前記放射線画像の前記診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定する際に適用するアルゴリズムを前記被写体の部位に基づいて切り替え可能であり、
前記報知手段は、前記判定手段により前記診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記診断対象領域に信号飽和領域が存在することを報知し、さらに、前記判定手段により適用されたアルゴリズムの情報及び/又は前記アルゴリズムにより前記診断対象領域として認識された領域を報知する、
ログラム。
【請求項12】
コンピューターを、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段、
前記被写体の部位、撮影方向、被写体厚の少なくとも一つの情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピューターを、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段、
前記放射線画像の撮影時の照射線量に関する情報及び前記放射線画像の撮影に用いられた放射線検出器の線量上限の情報を取得し、取得した前記照射線量に関する情報及び前記放射線検出器の線量上限の情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写損判断支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野においては、被写体に放射線を照射し、被写体を透過した放射線を放射線検出器(センサー)で検出することにより得られた放射線画像が診断に利用されている。放射線検出器に到達する到達線量と放射線検出器の信号値の関係は、図1に示すように、到達線量がある閾値(飽和線量)を超えるまでは線形性が保たれているが、ある閾値を超えると線形性が悪くなり、信号値は徐々に一定値に近づいていく。飽和線量を超える線量が到達した画素を飽和画素といい、放射線画像において、飽和画素が所定画素以上密集している領域に対応する高濃度領域(高信号値領域)を信号飽和領域という(以下、飽和領域と略記する)。飽和領域では、正確な被写体の情報が得られず、診断に影響するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ブランク領域を含む被検体画像から非飽和ブランク領域と飽和ブランク領域とを区分けする手段と、対数変換された前記被検体画像と対数変換されたシェーデング画像との差分をとる手段と、この差分値から非飽和ブランク領域の画素値を設定する手段と、飽和ブランク領域の画素値を前記設定画素値に変換する手段とを備えるX線画像計測装置が記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、放射線撮影装置において、各画素に対応するセンサ出力が飽和又はオーバフローしていない状態では、その定常領域の出力を用い、飽和又はオーバフローしているときは、その飽和又はオーバフローが生ずる前後のセンサ出力の立ち上がり又は減衰領域の信号から当該飽和又はオーバフロー領域における推定出力を算出し、これらの定常出力と推定出力を合成して画像データを作成することが記載されている。
【0005】
また、例えば特許文献3には、複数の撮像素子を用いて撮影された撮影画像に対して画像処理を行う画像処理装置であって、撮影画像を、それぞれ異なる周波数帯域に制限された複数の帯域制限画像に分解する分解手段と、前記撮影画像について、撮像素子に対する入射線量が所定値以上の画素を飽和画素として検出する検出手段と、前記帯域制限画像の飽和画素からなる部分画像のコントラストを調整する調整手段と、コントラストが調整された複数の前記帯域制限画像を用いて画像を再構成する再構成手段と、を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3349004号公報
【文献】特開2003-209746号公報
【文献】特許第6429548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3では、飽和領域の信号値を補正している。しかし、補正をしてしまうと、撮影した放射線画像に飽和領域が存在していたのか否かを撮影者(ユーザー)が知ることができないため、適切な線量で撮影できたか否かを撮影者が認識することができず、次撮影以降の撮影条件の改善につながらない。
【0008】
本発明の課題は、撮影された放射線画像に飽和領域が存在するか否かをユーザーが容易に認識できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る写損判断支援装置は、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段と、
を備え
前記判定手段は、前記放射線画像の診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定し、前記放射線画像の前記診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定する際に適用するアルゴリズムを前記被写体の部位に基づいて切り替え可能であり、
前記報知手段は、前記判定手段により前記診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記診断対象領域に信号飽和領域が存在することを報知し、さらに、前記判定手段により適用されたアルゴリズムの情報及び/又は前記アルゴリズムにより前記診断対象領域として認識された領域を報知する。
【0010】
また、本発明に係る写損判断支援装置は、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段と、
前記被写体の部位、撮影方向、被写体厚の少なくとも一つの情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段と、
を備える。
【0011】
また、本発明に係る写損判断支援装置は、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段と、
前記放射線画像の撮影時の照射線量に関する情報及び前記放射線画像の撮影に用いられた放射線検出器の線量上限の情報を取得し、取得した前記照射線量に関する情報及び前記放射線検出器の線量上限の情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段と、
を備える。
【0012】
また、本発明に係るプログラムは、
コンピューターを、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段、
として機能させ、
前記判定手段は、前記放射線画像の診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定し、前記放射線画像の前記診断対象領域に信号飽和領域が存在するか否かを判定する際に適用するアルゴリズムを前記被写体の部位に基づいて切り替え可能であり、
前記報知手段は、前記判定手段により前記診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記診断対象領域に信号飽和領域が存在することを報知し、さらに、前記判定手段により適用されたアルゴリズムの情報及び/又は前記アルゴリズムにより前記診断対象領域として認識された領域を報知する。
【0013】
また、本発明に係るプログラムは、
コンピューターを、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段、
前記被写体の部位、撮影方向、被写体厚の少なくとも一つの情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段、
として機能させる。
【0014】
また、本発明に係るプログラムは、
コンピューターを、
被写体を撮影した放射線画像に信号飽和領域が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段により前記放射線画像に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、前記放射線画像に信号飽和領域が存在することを報知する報知手段、
前記放射線画像の撮影時の照射線量に関する情報及び前記放射線画像の撮影に用いられた放射線検出器の線量上限の情報を取得し、取得した前記照射線量に関する情報及び前記放射線検出器の線量上限の情報に基づいて、前記判定手段による前記判定の実施又は不実施を制御する制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、撮影された放射線画像に飽和領域が存在するか否かをユーザーが容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】飽和領域を説明するためのグラフである。
図2】医用画像システムの全体構成例を示す図である。
図3図2のコンソールの機能的構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態において図3の制御部により実行される撮影制御処理Aを示すフローチャートである。
図5図4のステップS5において実行される飽和領域判定報知処理を示すフローチャートである。
図6A】飽和領域の面積が小さい場合に図5のステップS504において検査画面上にて報知されるアラートの一例を示す図である。
図6B】飽和領域の面積が中の場合に図5のステップS504において検査画面上にて報知されるアラートの一例を示す図である。
図6C】飽和領域の面積が大きい場合に図5のステップS504において検査画面にて報知されるアラートの一例を示す図である。
図7A】診断対象領域を認識する際に適用されたアルゴリズムの報知例を示す図である。
図7B】診断対象領域を認識する際に適用されたアルゴリズムの報知例を示す図である。
図8】線量の低減目安の表示例を示す図である。
図9】線量の低減目安の算出手法を説明するための図である。
図10】第2の実施形態において図3の制御部により実行され撮影制御処理Bを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
(医用画像システム100の構成)
まず、本実施形態に係る医用画像システム100の概略構成について説明する。図2は医用画像システム100を表すブロック図である。
【0024】
本実施形態の医用画像システム100は、図2に示すように、放射線発生装置1と、放射線検出器2と、コンソール3と、PACS(Picture Archiving and Communication System)4と、撮影情報管理システム5と、を備えている。コンソール3は、放射線発生装置1及び放射線検出器2に通信可能に接続されている。また、コンソール3は、院内に敷設された通信ネットワークNを介して、PACS4、撮影情報管理システム5と通信可能である。なお、コンソール3は、通信ネットワークNを介して図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)等と接続することが可能となっていてもよい。
【0025】
放射線発生装置1は、図示を省略するが、照射指示スイッチが操作されたことに基づいて、予め設定された放射線照射条件に応じた電圧を印加するジェネレーターや、ジェネレーターから電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線(例えばX線)を生成する放射線源等を備えている。そして、放射線発生装置1は、撮影する放射線画像に応じた態様で放射線を発生させるようになっている。
【0026】
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール3等と共に移動可能な回診車として構成されたものであってもよい。
【0027】
放射線検出器2は、図示を省略するが、放射線を受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元的(マトリクス状)に配列された基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査回路、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し回路、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータ等を外部へ出力する出力部等を備えている。
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線が照射されるタイミングと同期して、照射された放射線に応じた放射線画像を生成し、コンソール3に送信するようになっている。
すなわち、放射線発生装置1の放射線源と放射線検出器2とを間を空けて対向配置し、それらの間に配置された被写体へ放射線源から放射線を照射することにより、被写体を放射線撮影して放射線画像を取得することが可能となっている。放射線撮影は、静止画撮影であってもよいし、被写体の動きを撮影する動態撮影であってもよい。
【0028】
なお、放射線検出器2は、シンチレーター等を内蔵し、照射された放射線をシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換し、変換した光に応じた電荷を発生させるもの(いわゆる間接型)であってもよいし、シンチレーター等を介さずに放射線から直接電荷を発生させるもの(いわゆる直接型)であってもよい。
また、放射線検出器2は、撮影台と一体化された専用機型のものでも、可搬型(カセッテ型)のものであってもよい。
【0029】
コンソール3は、PCや専用の装置等で構成されている。
コンソール3は、放射線撮影を制御する放射線撮影制御装置である。また、コンソール3は、写損判断支援装置としての機能を有し、放射線検出器2から送信されてきた放射線画像に飽和領域が存在するか否かを判定し、飽和領域が存在すると判定した場合に報知する機能を有する。
このコンソール3の詳細については後述する。
【0030】
PACS4は、PCや専用の装置、クラウド上の仮想サーバー及び読影用のクライアント端末で構成されている。PACS4のサーバーは、撮影された放射線画像を始めとする医用画像を患者情報(患者ID、患者氏名、年齢、性別等)及び検査情報(検査ID、検査日付、部位、撮影方向等)に対応付けて記憶し管理し、クライアント端末から要求された医用画像を表示する。
【0031】
撮影情報管理システム5は、写損(撮影が失敗した)と判断された放射線画像を保存する。具体的に、撮影情報管理システム5は、ハードディスク等の保存手段を有し、写損と判断された放射線画像を、飽和領域の位置を示す情報(例えば、座標情報等)、撮影条件(線量情報(例えば、管電圧、管電流、照射時間等)、部位、撮影方向、担当技師(撮影者)等)と対応付けて保存手段に保存する。また、撮影情報管理システム5は、保存された放射線画像を飽和領域の位置を示す情報や撮影条件と併せて表示したり、飽和領域が発生しやすい部位や、部位や撮影方向ごとの目安の照射線量を解析したりする。
【0032】
(コンソール3の構成)
次に、コンソール3の具体的構成について説明する。図3はコンソール3を表すブロック図である。
【0033】
本実施形態に係るコンソール3は、図3に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、操作部35、音出力部36と、を備えており、各部はバス37により接続されている。
なお、コンソール3に表示部34や操作部35を備えずに、コンソール3に表示部や操作部を備える表示装置(タブレット端末等)を接続するようにしてもよい。
【0034】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール3各部の動作を集中制御する。例えば、制御部31は、通信部32により図示しないRIS等から検査オーダー情報を受信すると、受信された検査オーダー情報を記憶部33に記憶させるとともに、表示部34の検査リスト画面(図示せず)に表示させる。検査オーダー情報には、検査ID、検査日付、患者情報、検査に含まれる撮影に関する情報(部位、撮影方向等)が含まれる。検査リスト画面から実施する検査の検査オーダー情報が選択されると、制御部31は、後述する撮影制御処理A等を実行する。制御部31は、記憶部33に記憶されているプログラムとの協働により後述する撮影制御処理Aを実行することにより、本発明の判定手段、導出手段、保存制御手段として機能する。
【0035】
通信部32は、通信モジュール等で構成されている。
通信部32は、放射線発生装置1、放射線検出器2、通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して接続された他の装置やシステム(PACS4、撮影情報管理システム5等)との間で各種信号や各種データを送受信する。
【0036】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
また、記憶部33には、RIS等から送信された検査オーダー情報が記憶されている。
なお、記憶部33は、放射線画像を記憶することが可能となっていてもよい。
【0037】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等で構成されている。
表示部34は、制御部31から入力される制御信号に基づいて、検査リスト画面、検査画面341(例えば、図6A図6C参照)、報知情報等を表示する。表示部34は、制御部31との協働により報知手段として機能する。
【0038】
操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示装置の表面に積層されたタッチパネル等によってユーザーが操作可能に構成されている。操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力する。
【0039】
音出力部36は、スピーカ等を備え、制御部31からの制御に応じて音(音声)を出力する。音出力部36は、制御部31との協働により報知手段として機能する。
【0040】
(動作)
次に、医用画像システム100の動作について説明する。
図4は、コンソール3において実行される撮影制御処理Aの流れを示すフローチャートである。図4に示す撮影制御処理Aは、表示部34に表示された検査リスト画面の中から操作部35により検査オーダー情報が選択された際に、コンソール3の制御部31と記憶部33に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0041】
まず、制御部31は、選択された検査オーダー情報についての検査画面341を表示部34に表示させる(ステップS1)。
検査画面341(例えば、図6A図6C参照)には、検査オーダー情報に含まれる各撮影の内容が表示された撮影選択ボタン341aの他、選択された撮影の画像読取条件や画像処理条件を設定するための設定領域341b、撮影された放射線画像をプレビュー表示するための画像表示領域341c、写損ボタン341d、出力ボタン341e等が設けられている。なお、ステップS1の段階では、画像表示領域341cにはまだ放射線画像は表示されていない。
【0042】
次いで、制御部31は、検査画面341における操作に応じて、実施する撮影の撮影条件(画像読取条件)を放射線検出器2に設定する。画像読取条件には、例えば、画素サイズ、画像サイズ等が含まれる。また、ユーザーにより放射線発生装置1の操作盤から設定された撮影条件(放射線照射条件)を放射線発生装置1から取得する(ステップS2)。放射線照射条件には、例えば、放射線源の管電圧(kV)、管電流(mA)、照射時間(ms)、SID(cm)が含まれる。
【0043】
次いで、制御部31は、操作部35の照射指示スイッチの操作に応じて放射線発生装置1及び放射線検出器2を制御して放射線撮影を実施する(ステップS3)。
放射線撮影により放射線検出器2において取得された放射線画像は、コンソール3に送信される。
【0044】
放射線検出器2から放射線画像が受信されると、制御部31は、表示部34に放射線画像を表示させる(ステップS4)。
すなわち、制御部31は、検査画面341の画像表示領域341cに受信した放射線画像を表示させる。
【0045】
次いで、制御部31は、受信した放射線画像に対して飽和領域判定報知処理を実施する(ステップS5)。
図5は、ステップS5において実行される飽和領域判定報知処理の流れを示すフローチャートである。飽和領域判定報知処理は、制御部31と記憶部33に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0046】
飽和領域判定報知処理において、まず、制御部31は、飽和領域抽出処理を実施する(ステップS501)。
飽和領域抽出処理では、例えば、放射線画像において信号値が予め定められた閾値TH以上の画素が所定画素以上(例えば、2画素×2画素以上)繋がっている画素領域を飽和領域として抽出する。上記閾値THは、実験的又は経験的に求められた値である。
ここで、信号値が予め定められた閾値TH以上の領域を全て飽和領域としてもよいが、飽和領域の面積(画素数)が小さい(面積(画素数)が所定の閾値未満。例えば、2画素×2画素未満。)場合には欠陥画素等のノイズである可能性が高いため、本実施形態では、抽出精度向上のため飽和領域からはずしている。
また、制御部31は、放射線検出器2から欠陥画素の位置情報を取得し、取得した欠陥画素の位置情報を参照して、欠陥画素に対応する位置は飽和領域の判定から除外することとしてもよい。欠陥画素は、放射線検出器2の異常により正しい信号値をとらない場合があるためである。なお、記憶部33に予め放射線検出器2の欠陥画素の位置情報を記憶しておき、制御部31は、記憶部33から欠陥画素の位置情報を取得してもよい。
【0047】
次いで、制御部31は、飽和領域抽出処理の処理結果に基づいて、受信した放射線画像に飽和領域が存在するか否かを判定する(ステップS502)。
受信した放射線画像に飽和領域が存在しないと判定した場合(ステップS502;NO)、制御部31は、図4のステップS6に移行する。
【0048】
受信した放射線画像に飽和領域が存在すると判定した場合(ステップS502;YES)、制御部31は、放射線画像の診断対象領域内に飽和領域が存在するか否かを判定する(ステップS503)。
ステップS503において、制御部31は、放射線画像の被写体の部位情報に基づいて、飽和領域が診断対象領域内に存在するか否かを判定する際に適用するアルゴリズムを切り替え可能である。放射線画像の被写体の部位情報は、検査オーダー情報に基づいて取得してもよいし、画像認識処理により放射線画像から取得してもよい。
例えば、被写体の部位が胸部、腹部、又は胸部を含む長尺撮影である場合は、放射線画像から肺野領域及びスキンラインを抽出し、スキンラインによって素抜け領域と隔てられた領域を診断対象領域と認識し、肺野領域内又はスキンライン上に飽和領域が存在する場合に、診断対象領域内に飽和領域が存在すると判定するアルゴリズムを適用する。それ以外の部位の場合は、放射線画像からスキンラインを抽出し、スキンラインによって素抜け領域と隔てられた領域を診断対象領域と認識し、スキンライン上に飽和領域が存在する場合に、診断対象領域内に飽和領域が存在すると判定するアルゴリズムを適用する。
【0049】
放射線画像の診断対象領域内に飽和領域が存在しないと判定した場合(ステップS503;NO)、制御部31は、図4のステップS6に移行する。
【0050】
放射線画像の診断対象領域内に飽和領域が存在していると判定した場合(ステップS503;YES)、制御部31は、放射線画像に飽和領域が存在していることを示すアラートを報知し(ステップS504)、図4のステップS6に移行する。
診断対象領域内の飽和領域は診断に影響する可能性が高いため、写損(撮影失敗)となる可能性が高い。そこで、ステップS504では、飽和領域が存在していること(すなわち、写損が発生している可能性があること)を示すアラートを報知する。
【0051】
アラートを報知する方法としては特に限定されない。例えば、放射線画像に飽和領域が存在していることを示す所定のアイコン(例えば、図6Aの341f)を表示部34に表示するものであってもよいし、アラート音を音出力部36から出力するものであってもよいし、ユーザーに確認を促す確認ボタン(例えば、図6Cの341g)を表示部34に表示するものであってもよい。放射線画像に飽和領域が存在していることを示すアラートを報知することで、ユーザーは、撮影された放射線画像の診断対象領域に飽和領域が含まれていること(すなわち、写損が発生している可能性があること)をユーザーが容易に認識することが可能となり、ユーザーに写損が発生しているか(再撮影の必要があるか)否かの確認を促すことができる。
【0052】
また、制御部31は、飽和領域の面積に応じて報知方法を変更してもよい。例えば、飽和領域の面積が第1の閾値以下である場合、異常度が低いと判断して、図6Aに示すようにアイコン341fの表示のみとする。飽和領域の面積が第1の閾値より大きく第2の閾値以下である場合、異常度が中と判断して、図6Bに示すようにアイコン341fの表示に加えてアラート音を出力する。飽和領域の面積が第2の閾値を超える場合は、異常度が高いと判断して、図6Cに示すように、アイコン341fとアラート音に加え、さらに確認ボタン341gを表示する(第1の閾値<第2の閾値)。
【0053】
また、制御部31は、上記のアラートとともに、図6A図6Cに示すように、飽和領域(診断対象領域内の飽和領域)の位置を報知することが好ましい。例えば、図6A図6Cに符号341hで示すように、画像表示領域341cに表示された放射線画像の飽和領域(診断対象領域内の飽和領域)に色を付す、又は飽和領域の輪郭に色を付して表示する等してユーザーが識別可能に表示する。これにより、ユーザーは、放射線画像内のどこの信号値が飽和しているのかを確認することができる。また、制御部31は、飽和領域をユーザー操作に応じて拡大表示することとしてもよい。例えば、飽和領域をユーザーが操作部35によりクリックすると、制御部31は、クリックされた飽和領域を拡大表示する。これにより、飽和領域をユーザーが容易に確認することができる。
【0054】
なお、ステップS504においては、アラートとともに、ステップS503において診断対象領域内に飽和領域が存在するか否かを判定するために適用したアルゴリズムをユーザーが認識できるように報知することとしてもよい。例えば、図7Aに示すように、適用したアルゴリズム名(図7Aの「胸部飽和検出」)を表示部34に表示することとしてもよいし、図7Bに示すように、適用したアルゴリズムで診断対象領域と認識された領域を識別可能に表示することとしてもよいし、双方を表示してもよい。これにより、コンソール3による診断対象領域の認識が誤っていないかどうかをユーザーが確認することができる。なお、適用アルゴリズムの表示は、ステップS503において行うこととしてもよい。
【0055】
また、制御部31は、放射線画像を解析して再撮影を行う際の撮影条件の改善値を導出し、撮影条件の改善値を表示部34に表示することとしてもよい。放射線画像を撮影した際の撮影条件を併せて表示することとしてもよい。
例えば、放射線画像における飽和領域の画素数(面積)、または、放射線画像内もしくは診断対象領域内における飽和領域の面積比に基づいて、撮影条件の改善値として、例えば、照射線量の低減目安量(照射線量を何パーセント減らせば飽和領域が発生しないか)を導出して、図8に示すように、照射線量の低減目安量をアラートとともに表示することとしてもよい。飽和領域の面積が大きいほど、撮影時に照射された線量は多かったと考えられるため、飽和領域の画素数、または、放射線画像内もしくは診断対象領域内における飽和領域の面積比が大きいほど、再撮影時の照射線量の低減目安量は大きくなる。
また、例えば、図9に示すように、放射線画像におけるプロファイル情報を作成し、飽和領域周囲のプロファイル情報に基づいて、照射された最大線量に対応する最大信号値を予測し(予測最大信号値とする)、予測最大信号値に基づいて、撮影条件の改善値として、再撮影時の照射線量の低減目安量を導出してアラートとともに表示してもよい。低減目安量は、例えば、飽和していない信号値の上限をA1、飽和領域の予測最大信号値をA2とすると(図9参照)、下記の(式1)によりすることができる。
低減目安量=(A2-A1)÷A1…(式1)
再撮影時の照射線量の低減目安量を表示することで、ユーザーが再撮影を行う際に適切な線量を設定して撮影することが可能となる。
【0056】
ユーザーは、検査画面341に表示された放射線画像や報知情報を確認し、診断に影響のある写損が生じているか否かを判断する。診断に影響のある写損が生じていると判断した場合、操作部35により写損ボタン341dを押下する。診断に影響のある写損が生じていないと判断した場合、操作部35により出力ボタン341eを押下する。
【0057】
図4のステップS6において、制御部31は、操作部35により写損ボタン341dが押下されたか否かを判断する(ステップS6)。
操作部35により写損ボタン341dが押下されたと判断した場合(ステップS6;YES)、制御部31は、写損が発生した放射線画像、飽和領域の位置情報及び撮影条件(線量情報(管電圧(kV)、管電流(mA)、照射時間(ms)、SID(cm))、部位情報、担当技師の情報等)を対応付けて通信部32により撮影情報管理システム5に送信し、保存手段に保存させる(ステップS7)。
写損が発生した放射線画像、飽和領域の位置情報及び撮影条件を対応付けて撮影情報管理システム5に蓄積保存しておくことで、どのような撮影条件の場合に飽和領域が発生するのかを表示したり、飽和領域が発生しやすい部位、飽和領域が発生しない照射線量の目安等を解析したりすることができ、後の撮影者の教育に役立てたりすることができる。
なお、ユーザーは、例えば、診断対象領域が放射線画像からはみ出ている等の、飽和領域の発生以外の理由によって写損ボタン341dを押下する場合がある。飽和領域が発生していない場合は、飽和領域の位置情報の送信は省略される。
そして、制御部31は、ステップS2に戻り、ステップS2~S6を繰り返し実施する。
【0058】
ステップS6において、操作部35により写損ボタン341dが押下されず、出力ボタン341eが押下されたと判断した場合(ステップS6;NO)、制御部31は、受信した放射線画像を患者情報及び検査情報(検査ID、検査日付、部位、撮影方向等)に対応付けて通信部32によりPACS4に送信し(ステップS8)、撮影制御処理Aを終了する。
【0059】
このように、本実施形態では、放射線画像の診断対象領域に飽和領域が存在している場合に、その旨を示すアラートを報知するので、撮影された放射線画像の診断対象領域に飽和領域が存在するか否かをユーザーが容易に認識することができる。その結果、適切な線量で撮影できたか否かをユーザーが認識することができ、次撮影以降の撮影条件の改善につなげることができる。また、飽和領域が生じていて診断に適さない放射線画像を診断に提供してしまうことを防止することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、飽和領域が診断対象領域に存在している場合にその旨を示すアラートを報知する場合を例にとり説明したが、制御部31は、診断対象領域に限らず、放射線画像上に飽和領域が存在する場合にその旨を示すアラートを報知することとしてもよい。診断対象領域外(例えば、被写体を介さずに放射線が到達した素抜け領域)に飽和領域がある場合は、診断には影響しないが、飽和領域が存在するか否かをユーザーが容易に認識できるようにすることで、飽和領域が存在する場合に次撮影以降の撮影条件をユーザーに改善させることができ、患者の被ばく過多が継続することを抑制することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、まず、放射線画像から飽和領域を抽出する処理を行い、抽出された飽和領域が診断対象領域内に存在するか否かを判定することとしたが、まず、放射線画像から診断対象領域を抽出し、抽出した診断対象領域内から飽和領域を抽出して診断対象領域内に飽和領域が存在するか否かを判定してもよい。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、飽和領域判定報知処理の実施/不実施を制御する例について説明する。
第2の実施形態における医用画像システム100の構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、第2の実施形態の動作について説明する。
【0063】
図10は、第2の実施形態においてコンソール3により実行される撮影制御処理Bの流れを示すフローチャートである。図10に示す撮影制御処理Bは、表示部34に表示された検査リスト画面の中から操作部35により検査オーダー情報が選択された際に、コンソール3の制御部31と記憶部33に記憶されているプログラムとの協働により実行される。制御部31は、撮影制御処理Bを実行することにより、本発明の判定手段、導出手段、制御手段、保存制御手段として機能する。
【0064】
まず、制御部31は、選択された検査オーダー情報についての検査画面341を表示部34に表示させる(ステップS21)。
【0065】
次いで、制御部31は、検査画面341における操作に応じて、実施する撮影の撮影条件(画像読取条件)を放射線検出器2に設定する。また、ユーザーにより放射線発生装置1の操作盤から設定された撮影条件(放射線照射条件)を放射線発生装置1から取得する(ステップS22)。
【0066】
次いで、制御部31は、操作部35の照射指示スイッチの操作に応じて放射線発生装置1及び放射線検出器2を制御して放射線撮影を実施する(ステップS23)。
【0067】
放射線検出器2から放射線画像が受信されると、制御部31は、表示部34に放射線画像を表示させる(ステップS24)。
ステップS21~S24の処理は、図4のステップS1~S4と同様であるので説明を援用する。
【0068】
次いで、制御部31は、飽和領域判定報知処理(図5参照)の実施/不実施を判断する(ステップS25)。
【0069】
ステップS25において、例えば、制御部31は、被写体の部位情報を取得し、取得した部位情報に基づいて、飽和領域判定報知処理の実施/不実施(実施するか否か)を判断する。例えば、被写体となった部位が胸部、腹部、腰部等の体幹部の場合、被写体が厚いため、厚い被写体でも透過するように高い線量の放射線を照射している。そのため、放射線画像に飽和領域が発生しやすい。一方、他の部位の場合は、被写体に厚さがないため、それほど高い線量の放射線は照射されず、放射線画像に飽和領域が発生しにくい。そこで、制御部31は、例えば、受信した放射線画像から部位認識を行って被写体の部位情報を取得するか、あるいは、検査オーダー情報から被写体の部位情報を取得し、被写体部位が胸部、腹部、腰部等の体幹部である場合に飽和領域判定報知処理を実施すると判断し、それ以外の部位、例えば、手、足、頭等である場合は、飽和領域判定報知処理を実施しないと判断する。これにより、飽和領域が発生する可能性が低い部位は飽和領域判定報知処理の対象外とすることができるので、処理時間の増大を防止することができる。
【0070】
または、被写体の部位情報及び撮影方向に基づいて、飽和領域判定報知処理の実施/不実施を判断することとしてもよい。体幹部の中でも、特に撮影方向が側面の場合、被写体厚が大きくなるため、より高い線量の放射線が照射される。そこで、制御部31は、被写体の部位情報及び撮影方向の情報を取得し、被写体部位が胸部、腹部、腰部等の体幹部であり、かつ、撮影方向が側面の場合に飽和領域判定報知処理を実施すると判断し、それ以外の部位や撮影方向の場合は、飽和領域判定報知処理を実施しないと判断する。これにより、さらに処理時間の増大を防止することができる。撮影方向は、部位情報と同様に、検査オーダー情報から取得してもよいし、放射線画像から画像認識により取得してもよい。
【0071】
または、撮影条件(例えば、管電圧、撮影部位)や放射線画像の画像ヒストグラムから被写体厚を推定し、被写体厚が所定の閾値以上である場合に、飽和領域判定報知処理を実施すると判断し、所定の閾値を下回る場合は、飽和領域判定報知処理を実施しないと判断することとしてもよい。これにより、被写体厚が小さく(厚みがなく)飽和領域が発生する可能性が低い場合は飽和領域判定報知処理の対象外とすることができるので、処理時間の増大を防止することができる。ここで、被写体厚の閾値は、予め設定されていてもよいし、ユーザーが操作部35により設定してもよい。被写体厚は、例えば、特開2016-202219号公報に記載のように、放射線画像における、撮影部位ごとに予め定められた2つの関心領域内の画素信号値(信号値)を投票したヒストグラムを作成し、ヒストグラムの分布における2つの基準信号値(例えば、各関心領域の代表信号値)の差ΔVcを求め、予め実験的に求められた、管電圧ごとの体厚とΔVcとの関係(関係式、テーブル等)から、被写体厚を推定することができる。
【0072】
また、テストチャートなど、診断に関係のない放射線画像を撮影した場合は、飽和領域判定報知処理を実施しないと判定することとしてもよい。これにより、無駄な処理時間を削減することができる。
【0073】
また、撮影に使用した放射線検出器2の情報と撮影時の照射線量に関する情報とに基づいて、飽和領域判定報知処理の実施/不実施を判断することとしてもよい。例えば、撮影時の照射線量が、放射線検出器2の線量上限(信号値が飽和しない放射線量の上限)以下である場合は、放射線画像に飽和領域は発生しない。そこで、制御部31は、放射線画像の撮影に用いられた放射線検出器2の情報(線量上限の情報)を当該放射線検出器2から取得し、撮影時の照射線量を放射線画像の撮影条件に基づいて取得する。そして、撮影時の照射線量が放射線検出器2の線量上限を超える場合は、飽和領域判定報知処理を実施すると判断し、撮影時の照射線量が放射線検出器2の線量上限以下の場合は、飽和領域判定報知処理を実施しないと判断する。これにより、放射線検出器2の線量上限より照射線量が低い場合は飽和領域判定報知処理の対象外とすることができるので、処理時間の増大を防止することができる。
【0074】
ステップS25において、飽和領域判定報知処理を実施すると判断した場合(ステップS25;実施)、制御部31は、ステップS26に移行して飽和領域判定報知処理を実施し、ステップS27に移行する。飽和領域判定報知処理を実施しないと判定した場合(ステップS25;不実施)、制御部31は、ステップS27に移行する。
ステップS26の飽和領域判定報知処理は、第1の実施形態で図5を用いて説明したものと同様であるので説明を援用する。ステップS27以降の処理は、図3のステップS6~S8と同様であるので説明を援用する。
【0075】
このように、第2の実施形態では、飽和領域が発生している可能性が低い場合は飽和領域判定報知処理を実施しないので、処理時間の増大を防止することができる。
【0076】
以上説明したように、コンソール3の制御部31は、被写体を撮影した放射線画像に飽和領域が存在するか否かを判定し、飽和領域が存在すると判定した場合に、当該放射線画像に飽和領域が存在することを表示部34の表示や音出力部36の音出力により報知する。
したがって、被写体を撮影した放射線画像に飽和領域が存在するか否かをユーザーが容易に認識することができる。その結果、飽和領域が存在する場合に次撮影以降の撮影条件をユーザーに改善させることができ、患者の被ばく過多が継続することを抑制することができる。
【0077】
また、例えば、制御部31は、放射線画像に存在する飽和領域の位置を、例えば表示部34の表示により報知することで、飽和領域がどの位置にどのくらいの大きさで生じているのかをユーザーが認識することが可能となり、ユーザーが再撮影が必要であるか否かを確認したり、次撮影以降の撮影条件をユーザーが容易に改善したりすることができる。
【0078】
また、例えば、制御部31は、放射線画像の診断対象領域に飽和領域が存在するか否かを判定し、診断対象領域に信号飽和領域が存在すると判定された場合に、診断対象領域に飽和領域が存在することを表示部34の表示や音出力部36の音出力により報知することで、放射線画像の診断対象領域に飽和領域が含まれているか否かをユーザーが容易に認識することができる。その結果、飽和領域が生じて診断に適さない放射線画像を診断に提供してしまうことを防止することができる。
【0079】
また、例えば、制御部31は、診断対象領域に飽和領域が存在すると判定された場合に、写損に関するアラートを表示部34の表示や音出力部36の音出力により報知することで、飽和領域が存在した場合に、写損が発生する可能性がある旨をユーザーが直ちに認識することができ、ユーザーに再撮影が必要であるか否かの確認等を促すことができる。
【0080】
また、例えば、制御部31は、放射線画像の診断対象領域における飽和領域の面積に基づいて、アラートの報知方法を変更することで、放射線画像の異常度をユーザーが直ちに認識することが可能となる。
【0081】
また、例えば、制御部31は、診断対象領域に存在する飽和領域とその周囲の画像情報に基づいて、被写体を再撮影する際の撮影条件の改善値を導出し、導出された撮影条件の改善値、又は、放射線画像の撮影条件及び撮影条件の改善値の双方を、例えば表示部34の表示により報知することで、次撮影以降の撮影条件をどのように改善したらよいのかをユーザーが容易に把握することができる。
【0082】
また、例えば、制御部31は、放射線画像の診断対象領域に飽和領域が存在するか否かを判定する際に適用するアルゴリズムを被写体の部位に基づいて切り替え可能とし、適用されたアルゴリズムの情報及び/又はアルゴリズムにより診断対象領域として認識された領域を、例えば表示部34の表示により報知することで、適用されたアルゴリズムをユーザーが認識することが可能となる。また、誤認識されていないかをユーザーが確認することができる。
【0083】
また、例えば、制御部31は、放射線画像を撮像した放射線検出器の欠陥画素の位置情報を取得し、放射線画像における欠陥画素の位置に対応する領域を除外して飽和領域が存在するか否かの判定を行うことで、欠陥画素を飽和領域と誤認識してしまうことを防止することができる。
【0084】
また、例えば、制御部31は、被写体の部位、撮影方向、被写体厚の少なくとも一つの情報を取得し、取得した情報に基づいて、飽和領域の判定の実施又は不実施を制御することで、無駄な処理時間の増大を防止することができる。
【0085】
また、例えば、制御部31は、放射線画像の撮影時の照射線量に関する情報及び放射線画像の撮影に用いられた放射線検出器の線量上限の情報を取得し、取得した照射線量に関する情報及び放射線検出器の線量上限の情報に基づいて、飽和領域の判定の実施又は不実施を制御することで、無駄な処理時間の増大を防止することができる。
【0086】
また、例えば、制御部31は、放射線画像に飽和領域が存在すると判定された場合に、放射線画像、飽和領域の位置を示す情報、及び放射線画像の撮影条件を対応付けて保存手段に保存させることで、飽和領域が存在する放射線画像を後の撮影者の教育に役立てることができる。
【0087】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、コンソール3に写損判断支援装置としての機能が備えられている場合を例にとり説明したが、写損判断支援装置はコンソール3と別体の装置であってもよい。また、写損が発生した放射線画像を保存する保存手段は、コンソール3に備えられる構成としてもよい。
【0088】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0089】
その他、医用画像システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 医用画像システム
1 放射線発生装置
2 放射線検出器
3 コンソール
4 PACS
5 撮影情報管理システム
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
36 音出力部
37 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10