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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021056234
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022153147
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】倉持 健太
(72)【発明者】
【氏名】藪下 聡
(72)【発明者】
【氏名】中西 智彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 洸希
(72)【発明者】
【氏名】ルーン カオ ダイ
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-011939(JP,A)
【文献】特開平07-269736(JP,A)
【文献】特開昭62-075181(JP,A)
【文献】特開2022-104381(JP,A)
【文献】特開2019-056419(JP,A)
【文献】特開2020-060269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F16K 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、前記貫通孔に挿入され、軸方向に沿って移動可能に支持されたプランジャと、前記ボビンの外周部に巻き回され、通電に伴い磁力を生じて前記プランジャを軸方向に移動させるコイルと、前記ボビンの前記貫通孔の内側に位置するコアまたはヨークとを有するソレノイドと、
第1流路と、第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に配置され、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐ中継流路とを有する流体通過流路と、前記中継流路に繋がる筒状空間を有する弁体収容部とを備え、前記ソレノイドに連結される流路部材と、
前記弁体収容部に配置され、前記プランジャとともに軸方向に沿って移動し、前記第1流路と前記第2流路との間を開状態と閉状態とに切り換え可能な柱状の弁体とを備え、
前記流路部材は、前記弁体収容部内に弁体と当接する当接部と、前記弁体を軸方向他方側へ付勢する付勢部材とを備え、
前記弁体は、軸方向一方側に径方向外側に向かって突出する拡径部を有し、
前記拡径部は、前記当接部と少なくとも軸方向に対向する対向面部を有し、前記対向面部は、前記開状態で、前記当接部と接触し、
前記当接部は、前記弁体収容部の内側面において、前記弁体を摺動可能に支持する筒状部材である電磁弁。
【請求項2】
前記対向面部、軸方向一方側から軸方向他方側に向かうに従って外径が小さくなる方向へ傾斜したテーパ面部を有し、
前記テーパ面部は、前記開状態で、前記筒状部材の軸方向一方側の端部と接触する請求項に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記対向面部は、前記開状態で、前記筒状部材と線接触にて接触する請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記対向面部は、前記開状態で、前記筒状部材と面接触にて接触する請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記拡径部は、軸方向に直交する面を備えた段部であって、前記付勢部材の軸方向他方側と接触する接触部を有し、
前記付勢部材は、前記弁体の外周側に該弁体と同心上に配置され、軸方向一方側が前記弁体収容部の軸方向一方側の端面に接し、軸方向他方側が前記拡径部に接する請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記対向面部は、軸方向から見て、前記接触部と少なくとも一部が重なる請求項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記弁体は、前記第1流路と前記第2流路との間を開状態と閉状態とに切り換える弁部を有し、
前記弁部は、前記付勢部材の内径より小さく、
前記拡径部と、前記弁部とは、前記弁体の径が縮小することなく、径が変化しないまたは広くなる部分を含み配置される請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記拡径部は、前記弁体が移動する際に前記弁体収容部の内側面に案内される請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記拡径部は、周方向に沿って連続して設けられた環状である請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項10】
筒状部材は、外周面の周方向に沿って前記弁体収容部の内側面に嵌め合う嵌め合い部を備える請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項11】
前記弁体は、軸方向他方側に前記拡径部から離間して設けられ、径方向外側に向かって突出する突出部とを有し、前記突出部は、前記弁体が移動する際に前記筒状部材の内周面に案内される請求項1~10のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項12】
前記弁体および前記筒状部材は、樹脂材料で構成される請求項1~11のいずれか1項に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスまたは水や油等の流体の流れを切り換える、すなわち、流体の通過と遮断とを切り換える電磁弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電磁弁は、例えば、エンジン等の内燃機関を備える車両に搭載されて、ブローバイガスの通過と遮断とを切り換えることができる。
この特許文献1に記載の電磁弁は、流体が通過する流路を開閉する弁体を有するノズル部と、励磁によって弁体を移動させるプランジャを有するソレノイド部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-56419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁弁では、流路が開状態の場合、弁体と弁体を摺動させるガイドとの隙間から流体がリークし、ソレノイド部が流体の影響により損傷する虞がある。
本発明の目的は、流路が開状態の場合であっても、封止性を高めることでソレノイド部の損傷を防止することができる電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、前記貫通孔に挿入され、軸方向に沿って移動可能に支持されたプランジャと、前記ボビンの外周部に巻き回され、通電に伴い磁力を生じて前記プランジャを軸方向に移動させるコイルとを有するソレノイドと、第1流路と、第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に配置され、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐ中継流路とを有する流体通過流路と、前記中継流路に繋がる筒状空間を有する弁体収容部とを備え、前記ソレノイドに連結される流路部材と、前記弁体収容部に配置され、前記プランジャとともに軸方向に沿って移動し、前記第1流路と前記第2流路との間を開状態と閉状態とに切り換え可能な柱状の弁体とを備え、前記流路部材は、前記弁体収容部内に弁体と当接する当接部と、前記弁体を軸方向他方側へ付勢する付勢部材とを備え、前記弁体は、軸方向一方側に径方向外側に向かって突出する拡径部を有し、前記拡径部は、前記当接部と少なくとも軸方向に対向する対向面部を有し、前記対向面部は、前記開状態で、前記当接部と接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電磁弁の一つの態様によれば、流路が開状態の場合であっても封止性を高めることができる。これにより、ソレノイド部の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の電磁弁(開状態)の使用状態の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の電磁弁(閉状態)の使用状態の一例を示す図である。
図3図3は、本発明の電磁弁の実施形態を示す断面図である。
図4図4は、図3中の二点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大図である。
図5図5は、本発明の電磁弁のその他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図4を参照して、本発明の電磁弁の実施形態について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定する。一例として、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。X軸と平行な方向を「軸方向(軸O1方向)」と言い、この軸を中心とする径方向を単に「径方向」と言い、前記軸を中心とする周方向を単に「周方向」と言うことがある。また、X軸方向正側を「軸方向一方側」または単に「一方側」と言い、X軸方向負側を「軸方向他方側」または単に「他方側」と言うことがある。本明細書中において、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0009】
図1図2に示すように、電磁弁1は、例えば、エンジン等の内燃機関10を備える車両100に搭載して用いられる。内燃機関10は、燃焼室111、クランク室112およびバッファ室113を有するハウジング11と、燃焼室111内に移動可能に設けられたピストン12と、クランク室112内設けられ、ピストン12の往復運動を回転運動に変換するクランク13と備える。
また、ハウジング11内では、クランク室112とバッファ室113とが内部流路114を介して接続される。
【0010】
燃焼室111には、ハウジング11の外側から外部流路14が接続される。外部流路14の途中には、スロットル弁である電磁弁15が設置される。
外部流路14の電磁弁15よりも下流側と、クランク室112とは、第1補助流路16を介して、接続される。第1補助流路16の途中には、PCV弁である電磁弁17が設置される。
【0011】
外部流路14の電磁弁15よりも上流側と、バッファ室113とは、第2補助流路18を介して、接続される。そして、第2補助流路18には、外部流路14との境界部に本発明の電磁弁1が設置される。電磁弁1は、外部流路14の開閉を切り換える弁である。電磁弁1は、車両100の通常走行時には、外部流路14を開状態(図1参照)とし、混合気AR等の漏れ(以下単に「漏れ」と言う)を検出するリーク検出時には、外部流路14を閉状態(図2参照)とする。
【0012】
図1に示すように、開状態では、混合気ARは、外部流路14を通過して、燃焼室111に流入し、燃焼に供される。これにより、ピストン12が移動することができる。また、外部流路14を通過する混合気ARの一部は、外部流路14の途中から第2補助流路18に流入し、バッファ室113、内部流路114を順に経て、クランク室112に至る。クランク室112に流入した混合気ARは、第1補助流路16を経て、外部流路14に戻ることができる。
【0013】
図2に示すように、閉状態では、内燃機関10への混合気ARの供給が停止する。そして、燃焼室111が燃焼により高圧となった際に、燃焼室111内のブローバイガスQの一部がピストン12を越えてクランク室112に流入する。その後、クランク室112内のブローバイガスQは、第1補助流路16を経て、外部流路14に流入する。このとき、漏れが生じていないならば、クランク室112内の圧力が経時的に減少することなる。そして、クランク室112内の圧力が閾値を下回った場合、漏れが生じていないと判断される。一方、漏れが生じているならば、クランク室112内での圧力が減少せずに前記閾値を下回ることがないか、または、圧力の減少傾向が緩やかとなり、前記閾値を下回るまでに時間を費やすこととる。この場合、漏れが生じていると判断される。
【0014】
図3に示すように、電磁弁1は、X軸方向負側に配置されたソレノイド2と、X軸方向正側に配置された弁機構3とを備える。以下、各部の構成について説明する。
ソレノイド2は、ボビン21と、プランジャ22と、コイル23と、ケース24と、コア25と、ヨーク26とを有する。
【0015】
ボビン21は、貫通孔211を有する筒状の部材である。貫通孔211は、X軸方向と平行な軸O1方向に沿って貫通する。また、貫通孔211の内径は、軸O1方向に沿って一定である。ボビン21は、一方側で、径方向に突出したフランジ212と、他方側で、径方向に突出したフランジ213とを有する。ボビン21は、例えば、ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂等の各種樹脂材料で構成される。
【0016】
ボビン21の外周部214には、導電性を有するコイル23が巻回される。そして、コイル23を通電状態とすることにより、すなわち、コイル23での通電に伴って、ボビン21とコア25とヨーク26とで磁気回路が構成されて、磁力が生じる。これにより、プランジャ22を軸O1方向に沿って移動させることができる。
【0017】
ボビン21の貫通孔211には、コア25とヨーク26とが挿入され、さらに内側にプランジャ22が挿入される。
コア25は、軸O1方向一方側に配置され、ヨーク26は、軸O1方向他方側に配置される。
【0018】
コア25は、全体として円筒状であり、X軸方向と平行に配置される。また、ヨーク26も、全体として円筒状であり、X軸方向と平行に配置される。コア25およびヨーク26は、鉄のような軟磁性材料からなる、すなわち、軟磁性の金属材料で構成される。これにより、プランジャ22を十分に移動させることができる程度の磁気回路を生じさせることができる。
【0019】
また、ソレノイド2は、貫通孔211内で、コア25とヨーク26とを離間させた状態で連結する連結部材201を有する。連結部材201は、円筒状であり、内側にコア25の他端部とヨーク26の一端部とが嵌め込まれる。連結部材201は、非磁性であり、錆に対する耐性を有する、例えばオーステナイト系のステンレス鋼等の金属材料で構成される。
【0020】
プランジャ22は、コア25とヨーク26とにまたがって配置され、軸O1方向に沿って一方側と他方側とに交互に移動可能、すなわち、往復動可能に支持される。
プランジャ22は、円筒状のプランジャ本体222と、プランジャ本体222に挿入されたプランジャピン221を有する。プランジャピン221は、軸O1方向一方側および他方側の双方に突出する。また、ヨーク26の他方側は、壁部262によって閉塞しており、当該壁部262にプランジャピン221が接触する、すなわち、衝突することにより、プランジャ22の他方側への移動限界が規制される。
また、プランジャ22は、コア25内では、プランジャピン221がブッシュ202によって支持され、ヨーク26内では、プランジャピン221がブッシュ203によって支持される。これにより、プランジャ22は、円滑に往復動することができる。
【0021】
ケース24は、ボビン21、プランジャ22、コイル23、コア25およびヨーク26を収納する。ケース24は、ケース本体241と、コネクタ部材242と、リング部材243とを有する。
ケース本体241は、有底筒状である。すなわち、ケース本体241は、軸O1方向一方側が開口する開口部244と、他方側を閉塞させる壁部245とを有する筒状の部材である。壁部245には、一方側からヨーク26が接する。
【0022】
リング部材243は、円環状をなし、コア25の径方向外側で、当該コア25と同心状に配置される。リング部材243は、コア25に対して一方側から接する。
ケース本体241およびリング部材243は、コア25と同様に、鉄のような軟磁性の金属材料で構成される。
コネクタ部材242は、コイル23への通電を行うコネクタ(図示せず)が接続される。コネクタ部材242は、ボビン21と同様に、例えば、樹脂材料で構成される。
【0023】
また、ソレノイド2は、ケース24内で、リング部材243とボビン21のフランジ212との間に配置されたガスケット204と、ケース本体241の壁部245とボビン21のフランジ213との間に配置されガスケット205とを有する。
ガスケット204は、リング状をなし、コア25の外周側で、当該コア25と同心状に配置される。ガスケット204は、リング部材243とボビン21のフランジ212との間で圧縮された状態となっており、これにより、リング部材243とフランジ212との間を封止することができる。
【0024】
ガスケット205は、リング状をなし、ヨーク26の径方向外側で、当該ヨーク26と同心状に配置される。ガスケット205は、ケース本体241の壁部245とボビン21のフランジ213との間で圧縮された状態となっており、これにより、壁部245とフランジ213との間を封止することができる。
なお、ガスケット204およびガスケット205は、弾性材料で構成される。弾性材料としては、特に限定されず、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料が挙げられる。
【0025】
弁機構3は、流路部材4と、弁体5と、バネ31と、連結部材32と、ガスケット33とを備える。
流路部材4は、ソレノイド2に連結される部材であり、内部に、流体であるブローバイガスQが通過可能な流体通過流路46と、流体通過流路46と繋がる弁体収容部49とを備える。なお、流路部材4は、ボビン21と同様に、例えば、樹脂材料で構成される。
【0026】
流体通過流路46は、第1流路41と、第2流路42と、第1流路41と第2流路42とを繋ぐ中継流路44とを有する。
第1流路41は、Z軸方向に沿って設けられ、Z軸方向負側に向かって開口する。また、第1流路41は、外部流路14に接続されており、当該外部流路14を介して燃焼室111に繋がる。また、流路部材4には、外部流路14を構成する配管との間を封止するガスケット45が外側から嵌められる。
【0027】
第2流路42もZ軸方向に沿って設けられ、Z軸方向正側に向かって開口する。なお、第2流路42の中心軸O42は、第1流路41の中心軸O41に対して、X軸方向正側に位置する。また、第2流路42は、例えば、第2補助流路18に接続される。
【0028】
第1流路41と第2流路42との間には、中継流路44がX軸方向、すなわち、軸O1方向に沿って設けられる。中継流路44は、第1流路41と第2流路42とを繋ぐ。例えば、電磁弁1が搭載された内燃機関10が自然吸気型のエンジンの場合、図3に示すように、ブローバイガスQは、第1流路41から中継流路44を経て第2流路42に向かって流れる。
【0029】
流体通過流路46のX軸方向負側には、弁体収容部49が隣り合って配置される。弁体収容部49は、X軸方向に沿って設けられた筒状空間48を有する。そして、筒状空間48には、弁体5がX軸方向(軸O1方向)に沿って移動可能に収容される。
また、筒状空間48は、X軸方向正側で中継流路44と繋がり、Z軸方向負側(径方向外側)で第1流路41と繋がる。ブローバイガスQは、第1流路41から第2流路42に向かって流れる際、筒状空間48および中継流路44をこの順に経る。
【0030】
図3に示すように、弁体収容部49のX軸方向負側には、連結部材32が配置される。連結部材32は、リング状をなし、弁体収容部49の外周側(径方向外側)に固定される。また、連結部材32には、ソレノイド2のケース本体241が例えばカシメによって固定される。これにより、ソレノイド2と流路部材4とが連結された状態となる。
【0031】
流路部材4とソレノイド2のリング部材243との間には、ガスケット33が圧縮された状態で配置される。また、ガスケット33は、リング状をなし、弁体収容部49と同心状に設けられる。ガスケット33により、流路部材4とリング部材243との間を封止することができ、よって、これらの間、すなわち、流路部材4とソレノイド2との間からのブローバイガスQの漏れを防止することができる。なお、ガスケット33は、ガスケット204と同様に、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成される。
【0032】
また、弁体収容部49は、弁体5に当接する当接部を有する。なお、当接部は、弁体収容部内49に配置される別部材(筒状部材47)に設けてもよい。その他の実施形態として、図5に示すように、当接部は、弁体収容部49の内側面490から径方向内側へ突出する凸状部材であってもよい。以下、別部材(筒状部材47)を備える構成を説明する。
なお、図4に示すように、当接部が別部材である場合、弁体収容部49の内側面490は、平坦面を構成している。すなわち、内側面490に凹凸、段差等が存在しない。このため、別部材が内側面490の周方向に沿って均等に接触することができる。
【0033】
図4に示すように、筒状空間48は、筒状をなし、筒状空間48に対して同心上に設けられた筒状部材47を有する。
筒状部材47は、内周面470を有し、内周面470は、弁体を摺動可能に支持することができる。これにより、筒状部材47により、弁体収容部49と弁体5との接触抵抗を減らすことができる。そのため、弁体収容部49の内側面490の加工精度を厳しくする必要性が低くなり、加工が容易となる。
【0034】
また、図3に示すように、筒状部材47は、X軸方向正側(軸O1方向一方側)が弁体5に接触し、X軸方向負側(軸O1方向他方側)がソレノイド2のリング部材243に接触する。
【0035】
図4に示すように、筒状部材47は、弁体収容部49の内側面490に嵌め合う嵌め合い部471を有する。嵌め合い部471は、2つ以上設けられることが好ましい。例えば、筒状部材47の軸O1方向一方側に一方の嵌め合い部471を設け、空隙部473を介して軸O1方向他方側に他方の嵌め合い部471を設ける。なお、嵌め合い部471は、筒状部材47の外周面472の周方向に沿って連続して設けられた環状をなす鍔状であることが好ましい。嵌め合いには、しまりばめ、中間ばめ、すきまばめがあるが、しまりばめの関係にあるものが好ましい。これにより、弁体収容部49と筒状部材47との間を封止することができる。なお、嵌め合い部471は、図3に示すように、弁体収容部内49に設置されているガスケット33に嵌め合っても良い。これにより、ガスケット33を径方向外側に押圧することができ、流路部材4とリング部材243との間をより高い気密性で封止することができる。
【0036】
なお、図4に示すように、筒状部材47の軸O1方向一方側の軸方向に直交する端面から嵌め合い部471までの外周面472は、軸O1方向一方側から軸O1方向他方側に向かうにしたがって径が大きくなるテーパ面であることが好ましい。これにより、組み立て性が向上し、容易に製造することができる。
【0037】
図4に示すように、弁体収容部49には、弁体5が収容される。弁体5は、プランジャ22とともに軸O1方向に沿って移動することができる。そして、図3に示すように、弁体5の移動により、中継流路44を開閉することができる、すなわち、中継流路44を開状態と閉状態とに切り換えることができる。開状態では、流体通過流路46内でのブローバイガスQの通過が可能となる。なお、図3は、開状態を示す。一方、閉状態では、流体通過流路46内でのブローバイガスQの通過が遮断される。
【0038】
弁体5は、拡径部51と、弁部53と、突出部55とを有する。
弁体5は、柱状をなし、その中心軸が軸O1と平行な姿勢で弁体収容部49(筒状空間48)内に配置される。弁体5は、例えば、ボビン21と同様に、例えば、樹脂材料で構成される。
【0039】
図4に示すように、拡径部51は、径方向外側に向かって突出し、弁体5の軸O1方向一方側に設けられる。拡径部51は、例えば、径方向外側に向かって突出した形状である。
拡径部51は、対向面部511と、接触部512と、とを有する。
対向面部511は、筒状部材47(当接部)と軸O1方向に対向する拡径部51の軸O1方向他方側に設けられ、開状態では、筒状部材47(当接部)と接する。これにより、拡径部51と筒状部材47(当接部)との間を封止することができ、開状態であっても、不純物を含むブローバイガスQがソレノイド2側へ流れ込むことを防止することができる。つまり、ソレノイド2のブローバイガスQによる損傷を防止することができる。
【0040】
また、対向面部511は、軸O1方向一方側から軸O1方向他方側に向かうに従って外径が小さくなる方向へ傾斜したテーパ面部513を有する。
テーパ面部513は、開状態で、筒状部材47の軸O1方向一方側の端部と接触する。これにより、拡径部51が筒状部材47に入り込むので、筒状部材47をより高い気密性で封止することができる。なお、筒状部材47の軸O1方向一方側の端部とは、面積を持ったものを含み、例えば図3の正面視において、目視可能な面である。
【0041】
なお、対向面部511は、開状態で、筒状部材47と線接触にて接触する。これにより、対向面部511と筒状部材47とが、接触状態にある際、固着または凍結によって接合することを防止することができる。
また、対向面部511は、開状態で、筒状部材47と面接触にて接触する。これにより、これにより、対向面部511と筒状部材47とが、接触状態にある際、対向面部511と筒状部材47との間をより高い気密性で封止することができる。
【0042】
接触部512は、コイルバネ31と軸O1方向に対向する拡径部51の軸O1方向一方側に設けられる。接触部512は、軸O1方向に直交する面を備えた段部514であって、コイルバネ31の軸O1方向他方側と接触する。そして、接触部512は、コイルバネ31の内径よりも大きい位置に設けられることが好ましい。これにより、コイルバネ31を安定的には配置することができる。
【0043】
また、接触部512は、軸O1方向から見て、対向面部511と少なくとも一部が重なる位置に配置されることが好ましい。これにより、コイルバネ31の力を円滑に伝達することが可能となり、接触部512と筒状部材47との間をより高い気密性で封止することができる。
【0044】
なお、拡径部51は、弁体5が移動する際に弁体収容部49の内側面490に案内されてもよい。これにより、弁体5が安定して移動することができる。
また、拡径部51は、周方向に沿って連続に設けられた環状をなす鍔状で構成されていることが好ましい。これにより、拡径部51と筒状部材47との間をより高い気密性で封止することができる。
【0045】
弁部53は、弁体5の拡径部51より軸〇1方向一方側に設けられる。弁部53は、プランジャ22との移動に伴って、中継流路44に接近して、当該中継流路44を塞いだり、中継流路44から離れて、当該中継流路44を開放したりすることができる。従って、弁部53は、中継流路44を開閉する部材として機能する。
【0046】
また、弁部53は例えば柱状または板状をなす。そして、弁部53の外径は、コイルバネ31の内径よりも小さい。これにより、弁部53がコイルバネ31に接するのが防止され、よって、弁部53で弁体5の移動が妨げられるのを防止することができる。
【0047】
なお、弁部53は、拡径部51と連続的に配置されても良い。これにより、弁部53と、拡径部51との、軸方向の配置間隔を小さくし、電磁弁を小型化できる。連続的に配置されるとは、軸〇1方向に弁体5の径が縮小することなく、径が変化しないまたは広くなる部分を含み配置されることを意味する。
【0048】
突出部55は、弁体5の拡径部51より離間した軸〇1方向他方側に設けられ、径方向外側に向かって突出する。また、突出部55は、外径が軸〇1に沿って一定の外径一定部である。なお、突出部55は、筒状部材47の内周面470に接する。これにより、弁体5が軸○1方向に沿って移動する際、突出部55が筒状部材47の内周面470に案内されて摺動し、よって、弁体5が安定して移動することができる、
【0049】
また、弁体5には、突出部55の径方向内側に凹部551が設けられる。凹部551は、弁体5の軸〇1方向他方側の面に開口する。これにより、プランジャピン221の軸〇1方向一方側の部分(先端部)223が凹部551に入り込んで、弁体5を軸〇1方向一方に向かって押圧することができる。そして、プランジャ22の押圧により、弁体5を移動させて、中継流路44を閉状態とすることができる。
【0050】
弁体5のX軸方向正側には、コイルバネ31がX軸方向に沿って配置されている。コイルバネ31は、弁体5をX軸方向負側に向かって付勢する付勢部材である。
弁体5は、コイル23への通電を解除すると、コイルバネ31での付勢力によりX軸方向負側に向かって移動する。これにより、弁部53は、中継流路44から離れて、中継流路44を開放して、開状態とすることができる。
【0051】
コイルバネ31は、弁体5の外周側に、弁体5と同心状に配置されている。そして、コイルバネ31は、X軸方向正側が弁体収容部49のX軸方向正側の端面491に接触し、X軸方向負側が弁体5の拡径部51に接触して、圧縮状態となっている。これにより、コイルバネ31は、弁体5を過不足なく安定して付勢することができる。
また、拡径部をバネ座として使用することにより、流路部材4の小型化を図ることができる。さらに、コイルバネ31と拡径部との接触面積を増大させ、デポジットが付着し得る領域の面積を削減することができる。
また、拡径部51をバネ座することにより、電磁弁1の小型化に寄与するとともに、弁体収容部49の拡径部51よりX軸方向正側において、デポジットが付着する領域を削減することもできる。
【0052】
拡径部51と弁体収容部49の内側面490との離間距離は、コイルバネ31の線径より小さいことが好ましい。これにより、コイルバネ31が拡径部51と弁体収容部49の内側面490との隙間に入り込み、コイルバネ31が弁体5から外れるのを好適に防止することができる。
ただし、拡径部51と弁体収容部49の内側面490との離間距離は、コイルバネ31の線径より小さい限りにおいて、できるだけ大きいことが好ましい。これにより、デポジットの一部を拡径部51よりX軸方向負側に移動させることができるため、拡径部51よりX軸方向正側において残存するデポジットの量をより低減することができる。
なお、拡径部51の外径は、コイルバネ31の内径より大きいことが好ましい。これにより、コイルバネ31が拡径部51と弁体収容部49の内側面490との隙間に入り込むことをより確実に防止することができる。
【0053】
ところで、電磁弁1では、弁体5は、重量ができる限り軽いのが好ましい。理由としては、弁体5の重量が比較的大きいと、弁体5の動きが鈍くなり、すなわち、弁体5の円滑な動作が阻害されて、中継流路44の開状態と閉状態との切り換えが迅速に行われないおそれがあるからである。そこで、電磁弁1では、弁体5の軽量化が図られた構成となっている。以下、軽量化の構成および作用について説明する。
【0054】
図4に示すように、弁体5には、弁部53と拡径部51との間に、縮径部56が設けられている。このように、縮径部56が弁体5に備えられている分、弁体5の軽量化を図ることができる。これにより、弁体5の円滑な動作が可能となり、よって、中継流路44の開状態と閉状態との切り換えを迅速に行うことができる。
【0055】
なお、縮径部56の側面視での形状、すなわち、軸O1方向と直交する方向(Y軸方向)から見たときの形状は、本実施形態では略長方形であるが、これに限定されず、例えば、正方形等の他の四角形、半円形等であってもよい。
【0056】
また、縮径部56は、軽量化の効果の他に、バネの円滑な作動、すなわち、伸縮動作を促す効果もある。
前述したように、流体通過流路46を通過する流体は、ブローバイガスQである。ブローバイガスQには、粘着性の不純物が含まれることがある。この場合、弁体5とバネ31との間に不純物が入り込んで、バネ31の伸縮動作を妨げる恐れがある。しかしながら、弁体5とバネ31との間に入り込んだ不純物は、弁体の往復動作に伴って縮径部に流れ込む。これにより、不純物を縮径部56で回収し、そのまま留まらせることができ、バネ31の円滑な伸縮動作が促される。
【0057】
以上、本発明の電磁弁を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電磁弁を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、電磁弁1は、前記実施形態ではエンジン等の内燃機関10を備える車両100に搭載して用いられた場合となっているが、電磁弁の適用箇所は、車両100に限定されない。また、電磁弁1によって通過と遮断とが切り換えられる流体も、気体(ブローバイガスQ)に限定されず、液体または気体と液体との混合物であってもよい。
【0058】
また、電磁弁1は、前記実施形態ではブローバイガスQが第1流路41から第2流路42に向かって流れる構成となっているが、電磁弁1の使用状態によっては、ブローバイガスQを第2流路42から第1流路41に向かって流すこともできる。
【符号の説明】
【0059】
1…電磁弁、2…ソレノイド、21…ボビン、211…貫通孔、212…フランジ、213…フランジ、214…外周部、22…プランジャ、221…プランジャピン、222…プランジャ本体、223…部分(先端部)、23…コイル、24…ケース、241…ケース本体、242…コネクタ部材、243…リング部材、244…開口部、245…壁部、25…コア、26…ヨーク、262…壁部、201…連結部材、202…ブッシュ、203…ブッシュ、3…弁機構、31…バネ、32…連結部材、33…ガスケット、4…流路部材、41…第1流路、42…第2流路、44…中継流路、45…ガスケット、46… 流体通過流路、47…筒状部材、470…内周面、471…嵌め合い部、472…外周面、473…空隙部、48…筒状空間、49…弁体収容部、490…内側面、5…弁体、51…拡径部、511…対向面部、512…接触部、513…テーパ面部、514…段部、53…弁部、55…突出部、551…凹部、56…縮径部、10…内燃機関、11…バッファ室、111…燃焼室、112…クランク室、113…バッファ室、114…内部流路、12…ピストン、13…クランク、14…外部流路、15…電磁弁、16…第1補助流路、17…電磁弁、18…第2補助流路、100…車両、AR…混合気、O1…軸、O41…中心軸、O42…中心軸、Q…ブローバイガス
図1
図2
図3
図4
図5